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直接投資 ,労働賦存 とイノベーシ ョン

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(1)

経営 と経済 83巻 第3 200312 171

直接投資 ,労働賦存 とイノベーシ ョン

か お る

Abstract

Weargueforeigndirectinvestmentinview ofdynamicgenerale quilibrium.Usingthemodelinwhichthecostdisadvantageofdirectin‑

vestmentisalteredwithrelativelaborendowments,weexaminehow thedifferenceinlaborendowmentsrelatestoinnovationandeconomic growth.Andweexploreitsinfluencetothewelfare.Wefindthatthe similaritiesinlaborendowmentscouldincreasetherateofinnovation, butdecreasethewelfare.

KeywordS:foreigndirectinvestment,innovation,laborendowments

1 は じ め に

本論文の 目的は,動学的一般均衡の観点か ら,構造の相異なる2国間の直 接投資およびイノベーシ ョンの関係 について検討することにある。従来か ら, 直接投資の決定要因およびその影響 に関する研究成果は数多 く生み出されて いる。 しか し,一般均衡の枠組みのなかで, とくに経済成長 との関連性の視 点から議論がおこなわれるようになったのは,比較的新 しい1)0

最近の研究成果のひ とつGlassand Saggi(2002)は,すでに内生的経済 1)Ethier(1986),HorstmannandMarkusen(1987,1996),MarkusenandVenables

(1998),Saggi (1999)な どを参照.Saggi (2002)で包括的なサーベ イが提供 されている.

(2)

成長理論 において標準 となった技術進歩型の成長モデル と,直接投資に関す OLI(ownership,locationandinternalization)フレームワー クを組み合 わせ,動学的視点か ら直接投資 とイノベーシ ョンの関係を分析す るためのモ デルを提示 している。そ こでは,対称的な 2国を分析対象 とする とき,直接 投資の促進はイノベーシ ョン率を上昇 させ る, とい う結論がえられている。

本論文 では,GlassandSaggi(2002)で提示 されたモデルを基礎 に, と くに直接投資の問題 を考 えるうえで重要 と思われる 2つの要素を とりあげ, それ らについて相異なる構造 をもつ 2国モデルを構築する。そ して,2国の 構造の違 いが直接投資をつうじイノベーシ ョンおよび経済厚生に どの ような 影響 をお よばすかを議論する。

本論文 で注 目する 2国の構造上の相違 とは,技術移転モー ド構成および労 働賦存量である。いま,他国への財供給 およびそれに付随する技術移転のモー ドとして,直接投資 とライセンシングを考 える。2つのモー ドの うち どち ら により依存するか とい う点について 2国が異なる環境にあるとき,イノベー シ ョン率お よびその変化は 2国間で相異なるもの とな りうる。

また,GlassandSaggi(2002)では2国の規模 が等 しい場合 についての み考察がおこなわれたが,本論文では 2国間に労働賦存量の差が存在すると 前提する。そ うすることで,規模の異なる 2国間,具体的には先進国 と途上 国間の関係を議論することが可能 にな る。EthierandMarkusen(1996) ど従来の多 くの研究で も,労働賦存量は直接投資の決定要因 として重要であ る と指摘 されている。本論文 において,動学的視点か ら労働賦存量 と直接投 資および イノベーシ ョン との因果関係 を考察することがで きる。

以下,2節で分析の基礎 となるモデルを提示する。モデルの導 出過程 につ いては高木 (2004)に詳細を示 しているので, ここではおもに結果を述べる に とどめ る。3節では,は じめに3.1項 において,直接投資の条件 をあ らわ す直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージがパ ラメータとしてあたえられる 場合について考 える。 これはGlassandSaggi(2002)が想定 したケースを

(3)

直接投資,労働賦存とイノベーション 173 一部拡張 した ものに相当 し,高木 (2004)において詳細な分析を行 っている。

ここではお もに,高木 (2004)で確認 された結果部分を提示する。そのあ と 3.2項において,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージがパ ラメータでな

く,2国間の労働賦存量の差に依存 して変化 しうる場合について検討する0 労働賦存量の相違によってイノベーシ ョンにどの ような影響が生 じるかにつ いて,3.1項 に示 した結果を用いることで容易に確認で きる。最後の4節で は,2国間の労働賦存量の差 と経済厚生の関係について考察する。 3節のイ ノベーシ ョンにおよぼされる影響 と対比するとき,興味深い結果が導出され る。

2 モ デ ル

2.1

経済は2国か ら構成 され,それぞれを下付 き添字Hお よびFを付 して区 別する。まず,代表的消費者の意思決定については,内生的成長理論の もっ

とも標準的な定式化を採用する。

各消費者が加法分離的な異時点間選考をもつ とき,異時点間予算制約の も とでその生涯効用が最大 となるよう財の需要量が決定 される。その結果は Ei(i)/Ei(i)‑r(i)‑Pによって規定 される。Ei(i)は時点 ‖こおけるi国の総 支出である。任意の時点tEi(i)‑Eiであることを利用すれば,利子率r(i) は時間に関 して一定,かつ2国共通の主観的時間選好率p>0に一致する2).

この とき,i国全体の代表的個人の予算制約式 として

2)Ei(i)‑Ei,∀tの取 り扱 いについては議論の余地があ るoGrossmanandHelpman (1991)では,総支出をニ ューメレル としてこの関係式を用いている。GlassandSaggi (2002)では, 2国の賃金を ともに等 しい 1に規準化す ることで,最適化問題の一環 と して代表的個人は生涯支出を一生にわた って均等に配分で きる, としている。本論文で の取 り扱いについては高木 (2004)に示 しているが,簡単にいえば,定常状態均衡で2 国の相対賃金が時間に関 して一定 となる ときEi(i)‑Eiが導出される.

(4)

Ei‑PAi(0)+wiLi (1 )

がえられる。ただ し,Ai(0)は初期時点のi国の資産残高,u)ii国の賃金, Liは任意の時点で一定の i国の労働賦存量である. (1)を含め これ以降,時

間をあ らわす添字 tの明記を省略する。

ここで,支出構造 に関 して2国は対称的 と仮定する。すなわち,2国間の 支出シ ェアおよび初期時点の資産残高シ ェアは互いに等 しく,EH‑EF‑E/2 およびAH(0)‑AF(0)‑A(0)/2とする。EおよびA(0)は,2国全体の支出 E≡EH+EFおよび初期時点の資産残高A(0)…AH(0)+AF(0)である.

以上の想定の もとで,(1)か ら,WHLH‑u)FLF,すなわち 2国間の労働所 得は等 しいもの となる。 さらに2国の労働賦存量についてLH<LFを仮定す ると, 2国の賃金についてwH>uJFが導出される。つま り2国間には労働賦 存量の差 に起因 して賃金格差が生 じることになる。以下では,2国間の相対 賃金を u)≡uJF/u)H<1によってあ らわす. この ときu)をパ ラメー タとしてあ

つかうことができる。

2.2財生産および技術移転

財生産 お よびイノベーシ ョンの定式化 については,GrossmanandHel pman(1991)第4章な どに代表 される品質向上型R&Dモデルに したがう。

2国全体で1に規準化 された製品ブラン ドが存在 し,さらに各製品ブラン ド内では差別化 された品質をもつ財がそれぞれ異なる企業によって供給 され るとする。イノベーシ ョンに成功 した企業は最高品質の財を,またそれ以外 の企業は品質の1ランク低い財を製造できるとする。 この とき,各製品ブラ ン ド内で財の供給をめ ぐり企業間のベル トラン競争が生 じる。結果 として, 最高品質の財の製造技術をもつ企業は, リミット ・プライシング行動を とる

ことで 自らの利潤を最大化 し,かつ他の企業を市場から排除できる。

結局,イノベーシ ョンに成功 し最高ランクの生産技術をもつ企業のみが独

(5)

直接投資,労働賦存 とイノベーシ ョン 175

占的に財を製造 し供給 で きる。 2国それぞれに, イノベーシ ョンに成功 し最 高品質の財 を製造で きる技術を もつ企業が同数の 去ずつある とすれば,2 全体で製造活動 をお こな う企業数は 1,またそれに等 しい数の差別化財が市 場に供給 されることになる。

財製造 に要する生産要素 を労働のみ とす る とき,i国で製造 ・供給 され る 財 の価格 は ,その限界費用 すなわち賃金 wiにマ ックア ップを上乗 せ した pilu)iと設定 され る.ただ し,l>1は,2国かつすべての製 品ブ ラン ド

に等 しい差別化財間の品質格差 をあ らわす。消費者の最適化行動 を考慮す る と,i国 におけ る財需要総量 ,お よび各財 に対 す る需要量 はxi‑Ei/Pi Ei∂/u)iとな る。ただ し ∂は,1/)<1で定義 されるパ ラメー タである。

各企業は, 自らが所属する国へ財 を供給する と同時に,直接投資あるいは ライセンス契約を通 じ他国へ も独 占的に財 を供給 で きる とする。 この とき, 直接投資を選択する企業が獲得で きる利潤 7Tr は

%M‑苦[2(1‑a)‑

∈ i

∂] (2 )

である. ∈i>0,i国を本拠 とす る企業が他国へ直接投資をお こな うため に要す る,単位生産あた りのいわゆ るコス ト ・デ ィスア ドバンテージであ り, ここではパ ラメータ として取 り扱 う。あ きらかに,2国間の直接投資 コス ト ・ デ ィスア ドバンテージgiの大小のみに依存 して,2国間の直接投資 に従事 する企業が獲得す る利潤 に差が生 じる。

一方 ,ライセンス契約を選択する企業が獲得で きる利潤7TiLは

(1‑a)(1+♂)

i= (3)

である。0<β<1は,ライセンス契約の もとで技術 を供与す る企業が受 け とる利潤シ ェアであ り,2国間で等 しい値 を とるパ ラメー タとする。 この と き,賃金格差が存在する として も,ライセンシングに従事する企業の利潤は

2国間で同 じとなる。

(6)

i国を本拠 とする企業の うち直接投資を選択する企業のシ ェアを ヮiとし, 残 りの企業すなわちシ ェア 1‑ワiはすべてライセンシングを選択すると想定 する。財製造をおこなう各企業が直接投資およびライセンシングのいずれに 従事するかはあ らか じめ定まってお り,また技術移転モー ドのスイッチング

が生 じる可能性はない, とする。 この とき, ワiは一定 とできる。

2.3イノベーシ ョン制約と労働制約

R&Dに必要な生産要素は労働のみであ り,イノベーシ ョン 1単位に投入 される労働を 2国共通に a単位 とする。またi国において直接投資およびラ イセンシングに従事する企業 (が供給する財)をターゲ ットとするR&D 単位時間あた りイノベーシ ョン集約度を,それぞれ EiMぉよぴ EiLであ らわ 3)。すなわち,i国で単位時間について労働 a単位が投入されるとき,確 llk(kM,L)でイノベーシ ョンが成功する。R&Dを担 う企業は,直接投 資あるいはライセンシングの どち らの タイプで もターゲ ットとして選ぶこと がで き,その期待利潤を最大化するようイノベーシ ョン集約度 Elkを決定す る。

以上の設定の もとで,均衡においてイノベーシ ョンが生 じるために必要 と されるR&D企業の 自由参入条件は

# a・kM,L・iH・F (4) とあ らわされる。

直接投資 ターゲ ッ ト型R&D2国全体の平均 イノベーシ ョン集約度を

EM(?HEH"価 ,F"),およびライセンシング ・ターゲ ット型R&D2

1

国全体の平均 イノベーシ ョン集約度をEL… 再 二 肴 [(1‑7H) (1‑㌍)EFL]

3)以下では,直接投資お よびライセンシングに従事する企業 (が供給する財)をターゲ ットとす るイノベーシ ョンを,簡略化 して,直接投資 ターゲ ット型 イノベーシ ョンおよ びライセンシング .ターゲ ット型イノベーシ ョン とよぶ。

(7)

直接投資,労働賦存 とイノベーシ ョン 177

と定義するoただ し 頼 ・ ワニ‡ (TH・),すなわち 2国全体の直接投資 に従事する企業のシ ェアである。ライセンス契約 においてライセンス供与企 業が獲得す る利潤シ ェア βを2国共通 と仮定する とき, (3)および(4)か ら, ライセンシング ・ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度 liLは 2国間で等 し

く,EHL‑ EFL‑ ELとで きる。

(2)および(4)を組み合わせることで,直接投資に従事する企業が満たすべ き条件

苦[2(1‑a)一gi∂]‑a(p・Ei"),iH,F (5)

が,さらに(5)か ら,2国全体 として直接投資 に従事する企業が満たすべ き 条件

号 [2(1‑∂ト (∂]‑α(頼 〟) (6)

が導出される。ただ しこは,直接投資に ともな う2国全体の平均 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ ∈≡吉 (H∈H F)であるo同様 に(3)および(4)か ら, ライセンシングに従事する企業が満たすべ き条件

号(1+0)(1‑a)‑a(p・ ,L) (7)

が導出され る。

さらに,i国の (平均) イノベーシ ョン率を lim EiM +(1‑でi)EiL,また 2国全体の総 (平均) イノベーシ ョン率を E≡ヮEM+(1‑か)ELと定義する。

この とき と‑i (EH・EF)を確認できるo

最後 に,2国全体の労働制約はつぎのようにあ らわされる。まず,R&D 投入される労働 は 2国全体でaEであ り,一方,財製造 については,単位生 産あた り労働投入 1単位が必要 とすれば・2国全体でxH+xF Ei (1.忘)

となる。 これ らの合計が 2国全体の労働供給に等 しい とき,

(8)

a[ヮEM・(117),L].E+ (1票 )‑L (8)

が導 出され る.L≡LH+LF2国全体の労働賦存量であ り,任意の時点で 一定 とす る。

2.4均衡解

(6),(7)お よび(8)か ら,2国全体の総支出E,2国全体の直接投資 ター ゲ ット型 イノベーシ ョン集約度 EM,およびライセンシング・ターゲ ット型イ

ノベーシ ョン集約度 ELの均衡値が以下の とお り導出される.

E‑ M

)[2(1‑∂)g∂]

αM

)(1+0)(1‑∂) αM

‑P

(9)

(10)

(ll)

ただ し,M ≡ii Eu) ∂+N‑2∂およびN≡2‑g87‑(卜 0)(11 8)(1‑7)で ある。

i国のイノベーシ ョン率 Ei,(5),(7)および(9)を利用 して )(Ni‑2)

αM ‑p,i‑H,F (12) ただ し,Ni≡2‑giヮi(1‑0)(1‑∂)(11りi), と導 出される。 この ときN‑

(NH・NF)を確認で きるo最後 に, 2国全体の総 イノベーシ ョン率 ‑ その定義 と(10)および(ll),または(12)か ら

)(N‑2)

αM (13)

となる。

結局, (6), (7)お よび(8)が本モデルの基本方程式であ り,それ らから導

(9)

直接投資 ,労働既存 とイノベーシ ョン 179

出される(9)〜(ll)によって他の変数 も決定 され る。な串,支 出お よび イノ ベーシ ョン率が正であるために,条件Nil2∂>0が満たされ る ときN‑2∂

>0およびM >0をえる。

3 相対賃金格差 とイノベーシ ョン

3.1パラメータとしての直接投資条件

2国の平均直接投資 コス ト ・ディスア ドバンテージ (をか りにパラメータ とみなす。 とくに2国の直接投資 コス ト ・ディスア ドバンテージがたがいに 等 しい,すなわちH‑EFとすれば,Ei‑ (お よび(5)か ら, (雷‑(‑lM

すなわち直接投資 ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度 も2国間で一致 す 4)。以上の前提の もとで,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ (およ 2国の相対賃金Wの変化が2国それぞれお よび2国全体へお よばす影響 について,高木 (2004)で分析を試 みている。本論文の中心をなす3.2項 に おいて必要 となる部分のみを示せば,以下の とお りである5)0

まずパラメータ この変化 について

̲

∂ (

∂EM

∂(

M2り>O (14‑1)

[1票 . (1+0)(118)(1‑7)]<0 (14‑2) (1・0)(1‑)ヮ,0 (14‑3)

4)さらに2国間の直接投資 に従事する企業シ ェアが等 しい,TH7F‑りとすれば, EH‑

CF‑(,すなわち 2国のイノベーシ ョン率 もたがいに等 しく総 (平均)イノベーシ ョン率 に一致する。 これはGlassandSaggi(2002)が想定 したケースである。

5)分析結果それぞれの詳細については,高木 (2004)を参照。

(10)

:̲:

‑ ‑ !

二 昔

㍉ ‑く

(

α M 2

(14‑4)

% H ‑一 [ TH (1・0)(1‑∂)(7H‑TF)] (145)

%F‑‑T ll TF ‑ i (leo)(1‑∂)(TH‑ TF)] (146) が導 出され GlassandSaggi(2002)propositionlと同 じ結論 が確認 さ れる。すなわち,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ この低下が2国に 等 し くお こる とき,直接投資 ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度 EMは上昇 し,ライセンシング ・ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度 lLは低下する0 また, ;の低下 に対 す る前者の効果 (EM の上昇) が後者の効果 (ELの低 下)を相対的に上回 り,総 イノベーシ ョン率 Eの上昇が生 じる.

つ ぎに,2国の直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバ ンテージが等 し くない場 合 について,i国の直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ

g i

のみの変化に

対 し

3g. ,0

Ei 晋 <o および霊 一 晋 ,o a(

亮 一者 <o

;iニー 持 票 ‡ (Njl2)]<0

也 ‑;i ii (Njl2),0

(151)

( 15 ‑2)

(153)

(154)

(155) が導出される。先に示 した ように,2国に等 しい直接投資 コス ト ・デ ィスア

ドバンテージ

; i ‑

;の低下に対する2国の イノベーシ ョン率 Eiの変化は,技

(11)

直接投資 ,労働既存 とイノベー シ ョン 181

術移転モー ドの構成 でiQこ依存する ((14‑5)お よび(14‑6))のに対 し,2 のいずれかのみの直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ Eiの低下 に対 し ては,それが生 じる国のイノベーシ ョン率 Jiを上昇させ,相手国のイノベー シ ョン率 liを低下させる ((15‑4)および(155))0

最後 に,2国間の相対賃金uJの変化が各変数におよばす影響 については

LE‑旦au) M2 ,o

jaL"u) 志 [2(1‑a)一GB],0

31aw 篭 ㌍ (1.0)(1‑a),0

旦頴 (N‑2),0

auJ 慧 ㌍ 志 (Ni‑2∂),0・iH,F

(16 ‑ 1 )

(162)

(163)

(164)

(165)

が導 出され る。相対賃金 Wの上昇は,2国の支出E増大による財製造の期 待利潤増大 に ともない,すべてのイノベーシ ョン集約度の上昇を もた らす。

3.2相対賃金格差と直接投資

ここであ らためて,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージについて考 え る。直接投資コス ト ・ディスア ドバンテージ とは,規模,法 ・制度,経営資 源などの他国に関する情報が不十分であること等のために,他国において多 国籍企業を操業 ・運営するにあたって避け られない,企業に とっての追加的 コス トであ る6)。それは,さまざまな環境変化 とともに変化 しうると考 えら れるか ら,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージをパラメータ として取 り

6)直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージの概念およびその基礎 となる折衷理論 (eclec tictheory)については,Markusen (2002),洞 口 (1992)な どを参照。

(12)

扱 うのはあ くまで便宜上のひ とつの手段 と解釈すべ きであろう。

本論文では,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージを変化 させ うる要因 の うち, とくに2国間の規模の違い,すなわち2国の労働賦存量の差 に注 目 する。他国へ進 出す る企業が直面する諸問題の うち相手国の需要行動 に起因 する問題 については,2国間の支出構造 を対称的 と仮定することで考察の対 象外 とで きる。 したがって, ここで とりあげる問題は, もっぱ ら労働の, と

くに量的相違 と相関を もつもの といえる。

多国籍企業をつうじて他国へ進 出しようとする企業は,立地条件の違 いを 克服するために余分のコス トを負担す る必要がある。 ここで,2国間の労働 賦存量の差が小 さいほど,2国の経済環境は頬似 し他国進 出の障壁は小 さい と考 える。その とき他国進 出に要する費用,すなわち直接投資 コス ト ・ディ スア ドバンテージも小さい, とみることができる。

ところで,2.1項 に示 した ように,2国の労働賦存量 をパ ラメー タ と取 り 扱 うとき,本モデルの設定の も とでuJ≡wF/u)H‑LH/LF<1をえる。すなわ ち,2国の労働賦存量の差は同時に2国の賃金の差 に反映される。 したがっ て上の議論 とあわせれば,2国の相対賃金Wが上昇す るほ ど2国の賃金格 差は小 さ く,また2国は労働賦存量が よ り類似 した国 どうLであることを意 味する。

そ こで,i国の各企業が直接投資 に よ り他国へ進 出するのに ともな うコス ト ・デ ィスア ドバンテージ ;iを,相対賃金uJの上昇 によって2国 ともに低 下する,すなわち,

∈iEi(W),El:≡ <O,iH,F (17) と規定す る。 この ときさらに,2国の平均直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバン テージの定 ‑去 (HEH+FGF)および で≡古 (TH+7F)

・‑uw),′‑ 慧 一 (TH∈十7FL)<0 (18)

(13)

直接投資,労働賦存 とイノベーシ ョン 183

をえる。すなわち, 2国の労働賦存量の格差縮小 に ともなって 2国の直接投 資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージがいずれ も低下する,とい う前提の もとで, 相対賃金 Wの上昇は2国の平均直接投資 コス ト ・Iデ ィスア ドバンテージ

の低下 をもた らす。

以上の想定の もとで,基本方程式は, ∈がパ ラメー タでな く(18)によって 規定 される点を除いて,3.1項 と同様 に(6), (7)お よび(8)で構成 される。 し たがって, 2国間の労働賦存量の差の縮小,すなわち 2国の相対賃金の上昇 が各経済変数へ及ぼす効果 については,3.1項 に示 した結果 を組 み合わせれ ば容易 に導 出で きる。

相対賃金 u)の変化 がE,EM,ELお よび Jにお よばす影響 について,つぎ の結果をえる

旦篭 ㌍ ( +ヮE,) (191)

̲9LM̲(L+ap)a

au) aM 2

と̲(L+ap)a auJ aM2

(志 [2(1‑a)一g][ +(1・0)(1‑7)(I‑a)]E'),0

(19 ‑2 )

(志+76')(1・0)(11∂)

αM2 [志 (N‑2∂)1票 876,],0

(19‑3)

(19‑4)

(19‑1)(19‑4)3.1項 に示 した(16‑1)(16‑4)を比較す る とき,い くつ かの点を確認で きる。まず,相対賃金u)の上昇は,2国全体の直接投資 夕一 ゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度 lMお よび 2国全体の総 イノベーシ ョン率C

をかな らず上昇 させ る。相対賃金u)上昇 に ともな う財製造の期待利潤増大 か らR&D企業が直接投資 ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン集約度を上昇 させ る のに加 え,相対賃金W 上昇が平均直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ この低下を引 き起 こし,それがさらに直接投資 ターゲ ット型 イノベーシ ョン

(14)

を誘発するからである。

一方,相対賃金 W上昇がライセンシング ・ターゲ ッ ト型 イノベーシ ョン におよぼす影響 については確定的ではない.相対賃金 W上昇に よる平均直 接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ ∈の低下は,直接的 にライセンシン グ ・ターゲ ット型 イノベーシ ョンに影響をおよばすわけではない。 しかし, 相対賃金 W上昇に ともなう支出Eの変化を通 じて,ライセンシング ・ター ゲ ット型 イノベーシ ョン集約度 ELは間接的に変化 しうる.いいかえれば, ライセンシン ・ターゲ ット型イノベーシ ョン集約度が どの ように変化する かは,相対賃金 Wの上昇によって支出Eが どの ように変化するかに依存す る。 もし支出が増大 (減少)するな らば,それはR&Dをおこな う企業に と って財需要増大 (減少)による期待利潤の増加 (減少)を意味するから,ラ イセンシング ・ターゲ ット型のイノベーシ ョンを促進 (抑制)させる誘因 と なる。なお,支出Eの変化については4節で考察する。

ところで,相対賃金 W変化に対するE, EM,ELおよび Eの変化について は,平均直接投資 コス ト ・ディスア ドバンテージ ;に関する制約(18)が満た されていれば十分であ り,2国それぞれの直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバン テージ ;iに関する制約(17)をかな らず Lも必要 としない点に注 目したい。

相対賃金uJの変化 に ともない,直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ i2国 ともに同 じ方向へ変化する必然性はない。 またか りに質的に同じ方 向の変化であった として も,量的な変化程度が一致するとは限 らない。その 点か らいえば,相対賃金 Wの上昇によ り,2国のいずれかの直接投資 コス ト ・ディスア ドバンテージがか りに上昇するとして も, もう一方の国の直接 投資コス ト ・デ ィスア ドバンテージが十分低下 し2国全体 として平均直接投 資 コス ト ・ディスア ドバンテージ 亡が低下すれば,上記の結果をえることが できる。

いいかえれば, 2国全体のイノベーシ ョン率 Eや イノベーシ ョン集約度

EM および ELへの影響の観点からは,2国全体 として直接投資 コス ト ・ディ

(15)

直接投資,労働賦存とイノベーション 185 スア ドバンテージが どの ように変化するかが重要であ り,2国おのおのの直 接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージがか りに逆方向へ変化する と想定 して

も結果は同 じとい うことになる。

つぎに,相対賃金 Wの変化 に対 す る 2国それぞれの イノベーシ ョン率 Ei

の変化 について検討 す る。 2国全体の労働賦存量Lが不変の もとで2国の 労働賦存量L,iの格差 が縮小す る とき,2国は少 な くとも支 出お よび労働賦 存について同 じ構造 に近づ くといえる。 しか し,製造企業の うち直接投資 に 従事す る企業のシ ェア m・が 2国間で等 し くないな らば,それは 2国の産業 構造が異なることを意味する。その とき 2国の直接投資 コ不 ト ・デ ィスア ド バンテージ Ei,お よび 2国の イノベーシ ョン率 Eiはかな らず Lも一致 す る

とは限 らない。

(12)か ら

h ・=(L+ap)a

aw aM2 [(志.76')(Ni‑ 2∂ト iEl:M],iH,F (20)

がえ られ るO ここではあ らか じめ(17)を,すなわち相対賃金 Wの上昇が2 国 ともに直接投資 コス ト デ ィスア ドバンテージ ∈iを低下 させ る, と前提す る.その とき,相対賃金 Wの変化 に対す る 2国の イノベーシ ョン率 Eiの変 化は,相対賃金 W上昇 に ともな う支 出Eの変化 に依存す る。1/W2+('>

0の とき,すなわち 4節でみるように相対賃金 u)の上昇 に よって支 出Eの 増大が もた らされる とき,2国 ともにイノベーシ ョン率 Eiの上昇が生 じる.

しか し逆 に1/W2+(′<0の とき,すなわち相対賃金 Wの上昇 に よ り支 出 Eの減少が生 じる場合 には,2国の イノベーシ ョン率 Eiの変化 は,相対賃 Wの上昇 に ともな う,その国 自身の直接投資 コス ト デ ィスア ドバンテー ジ giの低下 の程度 に依存す る。相対賃金 Wの上昇 に対 しもしi国の直接投 資 コス ト・デ ィスア ドバンテージ giの低下が十分 に大 きい (小 さい)な らば, (20)右辺の[ ]>(<)0とな り,i国の イノベーシ ョン率 Eiは上昇 (低下)す る.結局,相対賃金 Wの上昇 によ り支出Eの減少 が生 じる場合 には,2

(16)

のイノベーシ ョン率が異なる方向に変化 しうる可能性があるといえる0 上の結果はつぎの ような見方をす ることもで きる。か りに ∈;<0および

Ej‑0が成 り立つ とする。すなわち,相対賃金u)の変化に対 し,i国に とっ ては直接投資による他国進出条件の変化が生 じるのに対 し,j国に とっては ほ とんどそれが生 じない, と想定する。 この とき(20)を変形することで

h ̲ (L+ap)

∂uJ aM2

および alj

百品

(志 (Nil2)17iEi[1 ∂.i (Nj‑2)]),0 (211)

(. iTiEi)(Nj‑2) (2112) をえる。

i国では支出の変化にかかわ らずそのイノベーシ ョン率 Eiが上昇するのに 対 し,j国では支出の変化,いいかえれば相手国 (i国)の直接投資コス ト ・ デ ィスア ドバンテージ Eiの変化程度 に依存 して,イノベーシ ョン率 Ejの変 化が決 まる。相対賃金Wの上昇に対 し相手 国 (i国)の直接投資 コス ト ・ ディスア ドバンテージ giがそれほど変化 しないな らば, 自国 (j国)は支出 増大 に ともな う財需要の増加の恩恵 を受け,イノベーシ ョン率 Ejが上昇す

る. しか し,相手国 (i国)の直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ gi が十分大 きく低下すれば, 自国 (j国)は支出減少 に ともなう財需要減少の 結果,む しろイノベーシ ョン率 ljは低下することになる。

以上か ら,賃金格差の縮小によって2国全体の総 イノベーシ ョン率 Eが上 昇するにもかかわ らず, 2国の うちどち らかの国がイノベーシ ョン率の低下 を被 る可能性を確認で きる。そしてそれに該当するのは,賃金格差縮小によ る直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージの低下が生 じに くい国 といえる。

賃金が相対的に高い国,すなわち労働賦存量が相対的に小さい国を先進国, もう一方の国を途上国 とみなし,加えて 2国間の規模の差が縮小 した として も途上国に とっては直接投資 コス ト ・ディスア ドバンテージの変化,すなわ

(17)

直接投資,労働賦有 とイノベーシ ョン 187

ち直接投資のための追加的 コス トの変化が生 じに くい と想定する。 これは, 上記の議論 においてi国を先進国 (i‑H),j国を途上国 U‑F), とみなす ことと同じである。 この とき,賃金格差縮小によ り先進国ではイノベーシ ョ ン率の上昇が,一方,途上国ではイノベーシ ョン率の低下が生 じる可能性が 示唆される。

4 厚生分析

最後 に,2国間の賃金格差縮小に対する支出Eの変化 を検討 し,さ らに その結果を利用 して, 2国問の労働賦存量 と経済厚生の関係について考察す る。

まず3.2項の設定において,(19‑1)か ら確認 されるように,相対賃金u)の 上昇は支出Eの増大 をもた らす とは限 らない。3.1項でみた とお り相対賃金 uJの上昇に よる支 出増大効果が生 じる一方で,相対賃金u)の上昇は平均直 接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテージ 亡を低下 させ,それが支 出Eを減少 させる。 これ ら2つの効果の程度によって支出が どの ように変化するかは異 なる。

相対賃金 u)の変化 に ともな う平均直接投資 コス ト ・デ ィスア ドバンテー ジ この変化程度が相対的に小 さい (大 きい)な らば,すなわち1/W2(′>

(<)0が成 り立 つ とき,支 出増大効果 が上 回 り (下 回 り),支 出Eは増大 (減少)する。支出構造については 2国間で完全に対称的 と仮定 しているか ら,2国全体の支出Eおよび2国それぞれの支出E/2は同じ方 向へ変化す る。

つぎに,代表的個人の各製品ブラン ドに対する消費量 か ま,2.1項および 2.2項の考察か ら2国共通であ り,

E l+W

r=・r= :i I(I 2ざ1

参照

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