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地域性と発育・発達の関係について 第一報

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地域性と発育・発達の関係について 第一報

吉  本

  〔研究目的〕

 近年における児童生徒の体位の向上にはめざましいものがある。生活水準の向上に伴う生活 様式の変化,食生活の改善による栄養摂取の向上等がそれらの原因の主たるものであろう。し かしながら,全国的に体位の向上はみられるというものの,以前として,九州各県が全国的に 下位グループに属する事も,文部省統計において報告されている。 (昭和45年度学校保健統計 調査報告書)そこで筆者らはそれらの原因究明のために先に本学附属生徒の実体について報告 した(長崎大学教育学部教育科学研究報告昭和46年松村他)。その中で附属生徒の体位は九州 地区に住んでいるとはいえ,すべてにおいて全国平均を上回っている事を報告した。この事 は,先の文部省統計報告とくいちがっている点である。にもかかわらず,九州地区が劣ってい るという事実があるとすれば,当然,附属生以外で体位の劣っているところが他になくてはな らない。そこで今回,それらの原因を探る一手段として,離島における児童生徒の体位の実体 を調査する事で本研究を進めた。

〔研究方法〕

 調査の方法としては,昭和51年生まれの(これらの生徒は昭和46年に中学校を卒業した者達 である。)離島僻地校の生徒について,身長,体重,胸囲,座高について各学校の保健調査書 より,入学時から中学校5年まで縦断的に求め,統計処理を行った。尚,比較対照の意味で,

昭和引年生まれ長崎大学附属中学校生(以下附属生とする)についても,同様の調査を行っ た。調査期間としては,昭和46年8月から11月にかけてであり,調査した生徒はすべて昭和51 年生まれの生徒で小学校入学から中学校5年まで資料が完全であって者達である。

 〔調査対照校〕

附 属 生 二級僻地校生   対馬厳原中学校    鶏 知   五島奈留    玉ノ浦    岩瀬浦 四級僻地校生

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対馬佐須奈中学校

津和崎 比田勝

東  部 西  部

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男子 男子 男子

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(2)

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五級僻地校生

  対馬志多賀中学校

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男子 男子

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52〃

11〃

19〃

〔資料整理の手順〕

㈲ 得られたデータについて学校別,性別,項目別に平均及び標準偏差を求めた。(表1,

 2,5,4,5,6,7,8,)

ω 同様に,それらを僻地等級別に,平均及び標準偏差を求め,更に僻地校全体についても  求め直した。比較対照としての附属生についても同様の統計処理を行った。(表9,10)

 尚,9,10表には比較として昭和51年生まれの全国平均と,後記する比較の全国平均の値  も記載してある。

(ウ)表9,10より比体重,比胸囲,比座高ローレル指数を求め,それらを男女別,僻地校別  等に表11に示した。

国 一方,表9,10より各学年間の発育量を各項目別に求めた。

〔結 果〕

 身長,体重,胸囲,座高についての結果を男女別にグラフ1〜8に示す。グラフの縦軸は。㍑

(晦)でそれらの値を,横軸には,学年を小学校1年から中学校5年までをJ1〜M5で示し た。尚,グラフ中,小学5年次のところで各グループ群の別を示した。右より附属生,二級僻 地校生,四級僻地校生,五級僻地校生,僻地校生平均の順である。また,それらの各高さはそ の値を示し,その中に±%標準偏差をプロットした。又,各附属生中に示す○印は全国平均を 文部省統計報告書より縦断的に求めたものである。一方図9〜16に比体重,比胸囲,比座高,

ローレル指数を男女別,グループ群別にプロットした。縦軸はその指数を,横軸は学年を示 し,グラフ中○印は附属生を,△印は僻地校生を,[]印は全国平均を示している。

〔結果及び考察〕

 表9〜10及びグラフ1〜8により,実数値についてそれらを比較すると,男子の身長の場 合,附属生のそれは全国平均に比較して2cη〜4c皿大きく,低学年より高学年になる程,その 差が開く傾向にあるのに対して,僻地校生は全国平均と比較すると附属生とは逆に,全学年に わたって下回り,1cη〜5日置位劣っている。

 女子の場合,附属生は男子の場合と同様に全国平均より大きいが,その差は1c窺〜2cηで全 学年を通じてあまり差に変化はみられない。また,僻地校生は男子と同様に全国平均より劣っ ており,全学年を通じて1c那〜2c加の差であった。

 体重の場合,男子は身長の場合と同様に附属生は全学年を通じ全国平均より2Kg〜5Kg逆に 全国平均を下回り,高学年になる程,その差が開く傾向であった。また女子の場合は,附属生 は全国平均を1Kg位上回っているが,全学年を通じてあまりその差は変らないし,僻地校生は

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本) 89

1Kg位劣っているものの,あまり差に変化はみられない。

 胸囲の場合,男子において附属生は,低学年次には全国平均より下回っているが,中学期よ り逆に1c配〜2cη上回っている。一コ口僻地校生は全学年を通じて,全国平均より劣ってはい て,それが中学期に入ってやや,その差が開く結果であった。

 また女子の場合,附属生は学年を通じ,やや全国平均を上回る時もあるが全体的には1c視位 下回っている。一方僻地校生は全体的には全国平均より下回っているが,ほとんど差がみられ ないという結果であった。

 座高の場合,男子においては,附属生は身長,体重と同様に全国平均を上回り,1c皿〜2c祝 位すぐれていたが,全学年を通じてはあまり,その差に変化はみられない。一方,僻地校生は 全学年を通じて,全国平均より1cη位劣っているという結果であった。また女子の場合,男子 と異なり低学年においては全国平均を上回っているが,中学校2年,5年忌には逆に下回って いた。一方,僻地校生は全学年を通じ全国平均をやや,下回る結果であった。

 次にそれらの実数値を指数化した比体重,比胸囲,比座高及びローレル指数について,表11 とグラフ9〜16で示し,それらをグループ別,男女別に比較すると,比体重の場合,男子附属 生は全国平均を全般的に上回っているものの,大差はみられない。一方,僻地校生は附属生と は逆に1%位劣っている。また,女子の場合,附属生は小学次は全国平均をわずかに上回って いるものの,中学次にはわずかであるが,逆に下回っている。一方,僻地校生の場合は,全般 的に全国平均より下回っているが,中学校5年春において,附属生ならびに全国平均より上回 っているのがみられた。比体重の場合,附属生は全般的に,全国平均よりド回り,反して僻地 校生は逆にそれらを上回っていた。また,女子の場合も男子と同様の結果であった。

 次に比座高の場合,附属生男子は全学年を通じて全国平均より下回っているが,大差はなか った。一方,僻地校生は附属生とは逆に低学年次に全国平均をやや,上回っているが中学次に 入ると全国平均とほとんど差はなかった。また,女子の場合も男子の場合と同様の結果であっ

た。

 ローレル指数の場合,男子附属生は全学年を通じて,全国平均を下回っているが,僻地校生 は低学年次には全国平均を上回っているが,小学校5年次から中学校2年にかけては,逆に,

全国平均を下回っている結果であった。また,女子の場合は,附属生は全国平均を小学校2年 次より下回り,学年を経るに従ってその差は大きくなっている。一方,僻地校生は,低学年次 には全国平均をやや上回り,小学校4年次には逆に,わずかに下回る結果であった。

 以上の事をまとめると,男子の場合,附属生の体位の特色は最近の都会型の細身脚長のタイ プであるのに対して,僻地校生は,平均の値に実数値的には劣っているが,指数化された体型 としてはあまり,全国平均より大きな差がみられないといえる。一方,女子の場合,附属生は 男子と同様に細身脚長の体型を示すのに対して,僻地校生の場合はこれまでいわれていたずん

ぐり型の体型からまだ脱皮していない傾向がうかがえる。

 そこで更に,考察を進めるためにグループごとの年間発育量を求め,それを表12に示した。

それによると,身長の場合,男子附属生は中学校2年〜3年次を除き全般的に,その量は大き く,最大発育期は全国平均と同じ中学校1年〜2年次であった。一方,僻地校生は,低学年次 に全国平均より下回るのがみられるのに対し,中学校1年〜5年次にかけては,逆に上回って いた。また,最大発育量は附属生や全国平均と同じく中学校1年〜2年にかけてであった。ま た,女子の場合,附属生は小学校時代の発育量が大きく,全国平均をかなり上回っているのに 対して,僻地校生の場合は全国平均と大きな差はみとあられなかった。三者の最大発育期は,

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重の発育量をみると,男子附属生は全国平均を全般的に上回っているのに対して,僻地校生は 身長と同様に低学年次には全国平均をやや,下回っているのに対して,中学校1年次より逆に 上回っている結果であった。一方,体重の最大発育量は全国平均及び僻地校生が,中学校2年

〜3年にかけてであるのに対して,附属生は,1年早い中学校1年〜2年次であった。また,

女子の場合は,附属生は小学校次には全国平均を上回っているが,中学校次には逆に,下回っ ているのに対して,僻地校生は逆に,小学校次には全国平均を下回っているが中学校次には逆 に,それを上回っているという興味ある結果を得た。また,これらの最大発育量は,全国平均 及び僻地校生平均が小学校6年〜中学校1年次にかけてであったのに対して,附属生は1年早 い小学校5年〜6年次であった。これらは身長と同様に,男子と比べると2年位早い時期であ った。次に,胸囲の場合,男子附属生は小学校1年〜4年次にかけては全国平均を下回ってい るが,小学校4年〜中学校1年次には逆に大きく上回り,中学校1年間3年次にかけて再び,

下回るという結果であった。一方,僻地校生は,全国平均を下回っているが,中学校1〜5年 次にかけて上回っていた。これらの最:大発壷井は,附属生は小学校6年〜中学校1年次である のに対して,僻地校生及び全国平均は2年位遅れた中学校2年〜5年次であった。また,女子 の場合,附属生は小学校4年次までは全国平均と比べ,わずかに劣っているが,小学校4年〜

5年次にかけて逆に全国平均を上回り,それらが中学校1年次までみられた。一方,僻地校生 の場合は,全般的にやや,全国平均を下回り,中学校1年次より逆に上回るという結果であっ た。これらの最大発育量は,附属生や全国平均が小学校6年〜中学校1年次にかけてであるの に対して,僻地校生はそれらより1年置遅れる傾向にあった。更に,座高の場合,男子附属生 は中学校1年次までは全国平均を上回っているが,以後,逆に下回っていたのに対して,僻地 校生は途中,いくつか下回っている時期もあるが,全般的に全国平均を上回っていた。それら の最大発育量は,附属生は小学校6年〜中学校1年次にかけてであるのに対し,全国平均は1 年位遅れた中学校1年遅2年次にかけて,僻地校生は更に1年遅れた中学校2年〜5年次にか

けてであった。また,女子の場合,三者共,同様の発育量であるが,それらの発育量が増大す る小学校5年〜中学校1年次にかけて,附属生の発育量は他の二者より大きいという結果であ り,それら残りの二者には大差はみとめられなかった。ただし,それらの最大発育の時期は附 属生・全国平均が小学校6年〜中学校1年にかけてであるのに対し,僻地校生は1年位早い傾 向にあった。これらの事をまとめてみると,発育量において男子附属生は,全般的に全国平均 を上回り,その最大発育量も1〜2年早く現われるという結果であるのに対し,僻地校生は全 般的に全国平均をやや下回っているがその最大発育量の時期は座高を除いて全国平均と大差は みとめられなかった。一方,女子の場合,全般的に男子より1〜2年早い時期に最大発育量時 期があらわれ,早熟の傾向がみられた。

 附属生と全国平均を比較した場合,二者の発育の型は大差はないが,発育量が増大する時 に,附属生の値が大きいという結果であった。一方,僻地校生は全国平均とほとんど変わらな いが,身長を除き,その発育量の増大するときにやや低い傾向がみられた。

 以上の事から,これまで対比して述べてきた附属生と僻地校生の発育,発達の時代的な経過 を知るたあに,先に引用した文部省統計報告書により全国平均と比較する事を試みた。方法と

しては,報告書に横断的に求あられている身長,体重の各項目について縦断的に求めなおし,

今回調査した附属生,僻地校生の発育経過の実数値に最も近い年代を求めるというものであ る。それらの結果を表9及び10の各項目の全国平均値欄の下に示し,原則として,上段は僻地

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本) 91

回忌に類似したもの,下段には附属生に類似したものを示した。

 それらによると,男子附属生の場合,身長は昭和57年生れの人と(この事は附属生が昭和51 年生れであるめで,6年あとに生れた人と同じ発育の型を示すことになり,云いかえれば,6 年早い成長過程を示している事である。)類似しており,同様に体重,座高においては,昭和 56年生れの人と類似し,いつれも早い傾向がみられる。しかし,胸囲の場合はあまり類似した 例がみられず,昭和26年生れの場合と昭和29年生れの場合の例を挙げておいた。それらによる と,それらの場合と異なり,低学年次に低く,高学年次に高いという附属生として特徴的な型 であると思われる。一方,僻地校生は,身長,体重においては昭和25年生れと類似し,胸囲は 昭和26年生れと,座高は更に遅れて昭和2ろ年生れと類似していた。また同様に,女子について 比較してみると,附属生は,身長については類似している例がみられず,相当に早熟化が進ん でいるといえる。また,体重については昭和55年生れと,座高は昭和55年生れといつれも早い 発育様相を示したが,胸囲については逆に昭和26年生れと,全く逆に遅れた発育様相を示し

た。

 一方,僻地校生の場合は,身長,体重については昭和26年生れといつれも,5〜6年遅れて いる発育様相を示した。

〔結 論〕

 以上の事から総合してみると,附属生男子は全国平均に比較して体位は5,6年先行しすぐれ ていると言え,かつ細身脚長の傾向があるのに対して僻地校男子は逆に実数値的には劣ってい るとは言え,指数的には全国平均に似ており,その遅れは5〜6年とみられる。また,僻地校 女子の場合も男子と同様に附属生と実数値的には胸囲を除き,全国平均より5〜6年先行して いるのに対して,胸囲が逆に全国平均より5〜6年遅れているという事で,細身(やせ型)の 傾向が強くみられる。この事は運動能力と併せて考える必要もあるが注目しておく必要がある 様である。一方,僻地校生は,全国平均と比較すると男子と同様に実数値的には全国平均より 劣っているとは言え,指数的にはあまり変らず,その遅れは5〜6年を思われる。以上の事か ら,附属生は都会地にみられる体位と変らず,むしろ,その傾向が強いようであり,僻地校生 は以前と同様に全国平均より劣っているが,5〜6年の遅れで発育しているという事が判明し た。先にも述べたように,これらの事はphysical−resourceとperformanceとしての比較 であるとすれば当然,運動能力等の比較も行なわなくてはならないが,今回はそれらのワンス テップとしての実体について調査し,研究してみた訳である。目的のところで述べた様に,九 州地区の体位の遅れが,離島地区でその芽がみられる事がこれまでの報告,並びに本研究で更 に確認され,それらの遅れも大体において推測できた。今後は更にこれらの原因を究明するた めに,遺伝,環境等の調査を行い,これらの原因を探りたい。しかし,ここで一言述べておか ねばならない事は,今回の研究結果でみられた様に実数値が低い事がすなわち,劣っていると いう判断を下すのでなく,performanceとしての効率を考えた場合,問題.はむしろ, unbalance に発育している附属生にも注目する必要がありそうという事が云えそうである。

 以上,本研究を進めるにあたり,資料整理に御協力いただいた関係各学校の学校長,並びに 体育,保健担当の先生方に感謝の意を表し,結果を報告すると同時に,忌禅のない御批判と,

今後の御協力を切にお願いいたしたい。尚,資料収集に御助力いただいた本学部松村,佐伯の 両氏に感謝の意を表する。

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本) 93

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本) 95

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本)97

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地域性と発育・発達の関係について 第一報(吉本)99

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長崎大学教育学部教育科学研究報告 第20号

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参照

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