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著者 帶山 桜

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Academic year: 2021

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[書評] 平田オリザ著 『わかりあえないことから  コミュニケーション能力とは何か』

その他のタイトル Book Review

著者 帶山 桜

雑誌名 人間健康学研究 : Journal for the study of health and well‑being

巻 10

ページ 41‑42

発行年 2015‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00023248

(2)

【書評】

平田オリザ著

『わかりあえないことから コミュニケ ーション能力とは何か』

日本のコミュニケーション教育の在り方

大学に入学して約1年が経ったが、この1年間で 最も大切であり、この学部で学ぶことによって身に ついたと感じたものがある。それは、コミュニケー ション能力だ。入学して間もないころ、ほとんどの 授業で周りの人とコミュニケーションをとる時間を 与えられた。今までの人生で、知らない人しかいな い環境に飛び込んだことがあまり無いうえに人見知 りである私にとって、この時間は苦痛であった。そ もそも、コミュニケーションをとるといっても何を すればいいのかさえ分かっていなかったのである。

そんな思いを胸に抱えながら、人間健康学部で学び、

ようやく自分の伝えたいことをうまく相手に伝え、

言葉や思いのキャッチボールがスムーズにできるよ うになったのだが、コミュニケーション能力とは何 なのか何の為に必要なのか、という疑問はいまだ晴 れないままであった。

平田オリザの「わかりあえないことから コミュ ニケーション能力とは何か」では、漠然とコミュニ ケーション能力がやみくもに求められている現代の 日本で、人々はいったいそこに何を欲しているのか、

近頃の若者はコミュニケーション能力がないと嘆か れているが本当にそうなのだろうか、子供の気持ち がわからないと嘆く教師や親が多いが何が問題なの だろうか、この三つの問題提起に対する答えを様々 な例や筆者の考えなどを用いて読者に分かりやすく 述べられている。

筆者がこの本の中で強く主張していることは、現 代の日本で企業が求めるコミュニケーション能力は ダプルバインドの状態にあるということである。表 向きでは、企業は新入社員に「グローバル・コミュ ニケーション・スキル」つまり、「異文化理解能力」

を要求しているのだが、日本企業では、もう一つ求 められている能力があるのだ。それは、空気を読む、

輪を乱さない、などといった、日本社会における従 来型のコミュニケーション能力である。この、あき

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らかな矛盾を、要求している側が気付いていないと いうのが、何より始末の悪いことであるということ だ。また、近年若者のコミュニケーション能力がな いと言われている原因についてはこのように述べて いる。コミュニケーションに対する欲求、あるいは 必要性が低下しているのではないか。すでに成長の 止まった社会で生きている今の若者は、他者と競争 する必要が無いため、衝突を避け、気の合った小さ な仲間同士でしか話さない、行動しない、といった 学生生活を送ってきたのである。ということは、す でにお互いのことをよく理解したうえで分かり合う、

察しあうといった温室の中のコミュニケーションで 育てられたということである。そもそも「伝えたい」

という感情は、「伝わらない」ということを経験する ことによりわいてくるものである。ところが、今の 若者は「伝わらない」という経験をほとんどしない まま成長してしまうので、コミュニケーションの必 要性が低下しているという現実に陥ったのである。

さらに、コミュニケーション問題の顕在化、コミュ ニケーション能力の多様化も大切なポイントとなる。

ここで筆者は若者全体のコミュニケーション能力は 向上しており、だからこそ見えてくる問題があるの だと主張している。コミュニケーション能力が向上 したことにより今までは問題にならなかったレベル の口下手な生徒が問題になってしまうということだ。

筆者は、本書で再三、日本の教育のありかたにつ いて述べている。国語の授業で聞く、話すに関連し たコミュニケーション教育を行っているだけではい つまでたっても今と変わらないため、慣れが大切で あり、そのためにも参加型、体験型のコミュニケー ション教育が必要であると。この意見には、私も賛 成である。現在、子供が普通に生活していく中で、

親や教師以外の大人と関わる機会は極端に少ないと 感じる。そうして育ってきたにも関わらず、卒業と 同時にたくさんの大人の中に放り込まれるのである。

このことを考えると、コミュニケーションをとるの が苦手だと感じる人が少なくないのも不思議ではな い。小さい時から、慣れのトレーニングを行うこと が、今のコミュニケーション能力を重視する社会で 必要になると考える。

本書を精読し、初めにもっていた疑問が完全に晴 れたわけではないが、コミュニケーション能力とは、

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42  人間健康学研究第10

その国々の文化や環境、地域によって考え方が異な るもので、社会へ出て他者と共存する為に必要なも のであると解釈した。日本におけるコミュニケーシ ョン能力と海外におけるコミュニケーション能力と では、大きく異なり、日本は少数派の考えであると

いうことを忘れてはならない。このように、コミュ ニケーション能力について改めて考える機会は、こ れから社会へ出ていく若者にとって非常に重要なこ

とであると考えさせられる一冊であった。

帯 山 桜 ( 人

1 4 ‑ 5 7 )

参照

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