仲神 宏子 審査結果の要旨
論文審査の結果の要旨
仲神宏子氏(産科婦人科学)の学位審査委員会は、平成 30 年 12 月 4 日に毛呂山キャンパス本 部棟 1 階の大学院講義室にて公開で開催された。オブザーバーとして代表指導教員の石原理先生、 指導教員の梶原健先生が同席された。主査 田坂大象、副査 安田政実教授、高井泰教授、長谷川 幸清教授の審査委員全員が出席し、申請書類により、申請者の資格条件が満たされていることを 確認した。次に申請者による申請論文に関しての発表が行われた、発表後、審査委員と申請者と の間で質疑応答が行われた。 発表要旨 羊水塞栓(AFE)は、羊水が母体血中へ流入することによって急性循環不全、汎血管内凝固症候群を 合併し、致死的な転帰を取り得る稀な妊娠合併症である。AFEの生前診断は極めて困難で、確定診 断は、通常、剖検時に肺内に胎児由来の扁平上皮などを証明することによってなされる。このた めAFEの生前診断は極めて困難である。今回、後方視的に、子宮を摘出された症例の病理標本を、 HE染色、アルシアンブルー(Alc)染色に加えて、抗STN(シアリルTn抗原)抗体を用いた免疫染色によっ て検討することによって、子宮筋層血管内の胎児由来成分、羊水成分がAFEに特異的か否かを検討 した研究である。16例が集積され、臨床的診断基準によりAFE3例、非AFE13例に分けられた。診断 名を伏せられた2名の病理医により各症例の胎児由来成分、羊水成分の陽性・陰性が判定された。 いずれの染色法でも、AFE、非AFE症例を区別することはできなかった。子宮筋層血管中の胎児由 来成分、羊水成分がAFEに特異的な所見ではないことが明らかとなった。 質疑応答の要約 1) 対象症例は具体的にどのように抽出したのか。 →まず病理で子宮を摘出した症例を全て抽出し 16 例が得られた。診療録で臨床的診断基準に より羊水塞栓(AFE)の診断基準を満たすもの 3 例と、満たさないもの 13 例によって分類した。 2) アルシアンブルー(Alc)染色は、AFE 群全例で陽性であったが、非 AFE 群では一部の症例での み陽性であった。何らか定量的に評価する方法はなかったのか。 →Alc 染色は、筋肉内でも陽性となる事が知られており、本研究では、Alc の陽性をいかに評 価するかで、研究開始時に議論があったが、Alc 染色の陽性を血管内で陽性初見を認めた場合 に限った。このため、定性的な評価しかできていない。 3) Alc 染色が陽性だった症例と陰性だった症例では、出血量に差が無かったか。 →Alc 染色が陰性だった症例でも大量出血が見られており、Alc 染色の陽性、陰性と出血量の 間には相関はないと考えた。4) AFE を評価する際に、STN 抗体とともに Zinc coproporphyrin1(Zn-CP1)が評価されているよう だが、Zn-CP1 はどのようなもので、今回は評価しなかったのか。
→Zn-CP1は母体血中には少なく、胎児の胆汁由来で胎便中に排泄され羊水中に存在する 特異物質であるが、今回は Zn-CP1 については評価できていない。