・ 再生過程の重ね合わせとハザード関数
(昭和45年5月30日 原稿受理)
電子工学教室矢鳴虎夫
電子工学教室 磯 泰 行
The superposition of renewal proccesses and the hazard function.
Torao YANARU
Yasuyuki ISO 1
The superposition of pulse trains is studied in terms of the hazard function of pulse interva1. The component pulse trains are supposed to be mutually independent,
ordinary renewal processes, all with the same probability distribution of pulse intervals.
The pulse interval hazard functions of superposed pulse trains are calculated in two cases.
First, the component trains have special Erlangian distribution of pulse intervals.
Second, the pulse interval hazard function of component trains are of the form
ρ(1一θ一aつ(ρ,a>0).
The results are compared with the hazard functions of spike trains from
auditory nerve fibers in cat.
との差異はか∫の方がわかりやすい。本論文で 1・ま え が き は,たがいに独立なρコの再生過程の重ね合わ 筆者らはさきに単一聴神経のパルス列を,いく せであるパルス列について・パルス間隔のか∫を つかの独立なパルス列の重ね合わせと見る見解を 求め・これらをGrayの結果と比較する。以後 提案した。この見解の根拠の一つにGrayの研究 説明の便宜上Grayによる乃・∫を私九とし・重 がある。GrayはKiangらによって求められた猫 ね合わせによるパルス列のパルス間隔の拓∫を の単一聴神経の自発放電パターンの記録をもとに 乃イ》という記号で表現する・
して,パルス間隔のバザー一ド関数(hazard fun一 拓ムは大体次の二つの形に分けられる。
ction,か∫)を求めている。この乃・∫の形はパル (型式1):ほぼ1ミリ秒間までに急激に立上がり ス列め重ね合わせを暗示している1)。 その後は直線的に増加する。
パルス列の重ね合わせについては,COx・)や (型式2):原点から数10ミリ秒かかってゆっくり Ten Hoopen3)の研究があり,成分パルス列が再 立上がり,後はほぼ直線的に増加していく。
生過程であるときには,重ね合わせパルス列のパ 九五の計算は2種類の成分パルス列について行 ルス間隔の確率密度関数(probability density った。一つは・パルス間隔が特殊アーラン分布を function,〃・4・∫)が求められている。か∫とρ・4・∫ なす再生過程の場合で・もう一つはパルス間隔の は確率分布のたがいに等価な表現形式であるが, か∫がφ(x)一ρ(1一θ}aつ(a,ρ>0)で表わされ 重ね合わせパルス列の特徴を知るにはか∫の方 る場合である。第1の場合は,かゐの型式1に非 が便利であると思われる。特にボアソレパルス列 常によく似たものが得られたが,型式2の傾向の
ものは得られない。第2の場合はパラメーターの れ成分再生過程の平均パルス間隔,パルス間隔の 選び方で型式2にかなり似かよったものが実現出 か∫およびぷプとする。ところで(5)式で一般的 来た。 な過程における乃イとρ・4イの関係が与えられて いるので,φ(x)に(6 )式の0(x)を適用すると,
2・再生過程の重ね合わせ理論 重ね合わせ過程のパルス柵のρ.妬〃ωは
a1 ア露灘㌘剛隔励ヅと 〃(x)一の(卿一∫1⑭〕
一般にランダムパルス列で正値確率変数万が
㌫竺慧と㌶㌶㌫‡ =卿P}1)聯}Fω
㌦≧字ム)σ)×{{ξ隠 σ)
φ(x)耐鋤(x<鶯∠κlx<万)(2)で㌻㌫ルス列のパルス間隔が特殊アーラ
ぜ篇麟㍗)(2 )ン分獅蕊二
したがって⑭とφ(x)との関係は ∫(x)=(a−・)! (8)
φω=πx)/F(x) (3) の場合を考える。ここにρは正の実数であり,a となる・.ここにF(x)はサバイバF関数 は正の撒・である。このとき
(survlver function,∫・∫)であり
_念二〔隠次のようぷけ輌噌恥一
C・xによ鳳たカ・いに独立で同一分布をもつ 一『鷺穎(磨 (・・)
ク個の再成過程を重ね合わせて得られる過程の
か五,の(x)は また(3)式よりφ(x)一∫(x)/F(x)であるから(8).
ψ(x)一訓∫贈血}四・F(κ)](6)(9)式を用いて
あるいは φ(x)=磐撒(ρx)一 (11)
一)+(P−・) 轣F篇(θ)よつて重二過程 _)は(9Σ
で与えられる*。ここにμ,φ(x),F(x)はそれぞ (10)・(11)式を(6 )式に代入して得られる。すな 一 .. 一 わち
*ただし各成分過程はcoxのいわゆるordinary re−
newal Processとする。 *一般に特殊アーラン分布の階数といわれている。
ψω一Aユ』二: 斗弓)(・響1…(i弓)}
芸θ (ρx)γ (171 ,__』 ,,一、 .、 一 _ゐ , A _ __、, . ←㊦r. _)
で与えられる,,また,成分過程の平均パルス間隔
!ちは (17 )
吋㍍)∋㌧砦:ぬ一丁 (ただしγ(・・α)ヲ1め∫:・−1 ・α一1・1〃)
とも表現されるが数値計算の都合上(17)式の表現 . (13)・
ですすめる。したがって となるので,同一分布のものをP個重ね合わせ
た過程の平均パルス騙μ・は明らかに の(x)一[ρ(・…・つ
炉蒜 (14) +一 ρ三三…一一]
である.こ四で(・2)式を規格化してやると 記{(・+証晋)…(・葡
卿)一ナ惑(る「 で_これを(7)式に代入してぷ
砲→難訪}⑮雪ヱ1ご剛
(ただし y一旦,の。(ア μρ)⇒る)) +一 ρ告ヨ となつて,(・2)式はρにくな関数(・5)式で ㍊(・+:)ピ蓼)・:百÷)
表現出来る。
議膨繕㌦ ×[;{G:)嘩1…叫
である場合を考える.このとき 嘉{(1+旦 ρ)(・+誓)…(・+㌣)
(4 )式より (19)
F(x)一・塑Lρ{x−÷(・一・一・つ}] となる・
となる・一分』は ;、三:誓:蕊(、5)__ス
∫:Fω⇒戸卜ρ卜÷(1−e−aり}]w㌶麓遼籔纂欝籔㍗
一÷叫一ρ{x−÷(・イ・つ}]當㌘㌶1票ぽ燃篭琵
Φ。(y) ス間隔がこれ以上の大きさとなる確率は0.1てい P−1
0.5 大となる・ただしa>5でρ一1・2の場合はスケ
(a図) 一ルの都合で描いていない。
0 1 2 3y 次に図2,図3は第2章の(18),(19)式を各々
Φ,、(y)
卍5
(b図)
1.0
0.5
Φη(y)
1.5 1.0 0.5
P I P 2
5 0 5
0 1 2 3
P=1 P−2
P一
1
0 1 2 3
P1・2 @ ρ一5のときとρ一10の場創こついて,・とクの
申 5
組合わせを変えて数値計算した結果をグラフにし __㍑8 たものである。これらの図から
P 50
a−5 i)の(x)/ρρな単調な増加関数であり,・の増 加にしたがって立上りが速くなる。
0 1 2 3y ii)φ(x)/ρρはρに対して収束関数であり,ρ P=1P一2 @ が50にもなるとほとんど収束する
(c図)
Ol23▼ 一 ρρ ρ
ユ
ロラ い ロ
Φn(y) iii)の(0)/ρρはρ, aが大きくなる程大きい 1.5
… 値となるが,ρが大きくなると逆に小さい値とな 1・o l:…8 るn
o・5 ・ 15 iv)〃(x)はρの増加とともに原点の近傍に
⑭・ C1 P,膓・・ @襟㌫、見_る.次の_れら
Φ。(y) 1‥5
図1,2,3とか五と比較してみる。
1.5
レ く
1.O ll一ζ6 4・Grayの結果との比較および考察
o.5 ar20 図4および図5はそれぞれの右肩にのせた九五
(・図) 。 を時間軸を平均パルス間隔で規格化して連続的な
0 1 2 3
曲線にかきかえたものである。このようにすると
(ぷ級㌢駕㍊麺巖 分布が一櫛こ統一されるし,ま姻・の数値講
の結果とそのまま比較されるので便利である。図 x/μρが3までの様子を描いたものである。これ 4には,ほぼ1ミリ秒あたりから直線的に増加す
らの図の性質として次のようなことがいえる。 るものを型式1として上げた。
i)aの増加とともに全体的に曲線の勾配が上 また図5には数10ミリ秒かかってゆっくり立 がっていく。 上がるものを型式2に属するものとしてまとめて ii) 曲線はaの増加にともなって上に凸から みた。
下に凸にかわっていく。 さて図4を図1に対応させて眺めてみると,生 iii)ρを増加すればかぎりなく一定値1に近 物ニューロンの不応期間の影響があると思われる ずく(ρ・4・∫はかぎりなく指数関数に近ずく) ほぼ1ミリ秒程度までを無視すれば,階数aが また図面はx/μρが3まで描いているが,パル 5より大きいところでρを5前後の値に選ぶな
1:; (1, 7璽エρ一・・・ρρ)
P 50 む
, 一・/潟{(・+旦)(・…還1...(・+竺)})
1,0
Φ(x)
亘}
0 80
葺(x)
0
(a図) 1.o (b図)
Φ(x)
2 Pρ
0 80
∬(x)
1 0
×50msec
X50msec(c図) (d図)
1・050,100 7 1・0
Φ(x)
「・万
0 80
∬(x)
0
Φ(x)
1 Pρ
__■− 0
80 a−50
50
∬(x)
10
50msec
O
X50 msec X50msec
図2 (18),(19)式にもとずくパルス間隔のゐ・九とρ・∂ザ (ρ=・5の場合)(曲線上の数はρの値である)
ら,ほとんど同一パターンを実現出来そうであ く似たパクーンが実現出来そうである。
る。しかし図5のような型式に対しては,図1で ところでρ<aである成分過程のか∫はパラ はa−2,ρ一2のときいくらか近いという程度で メーターが1と2の間のガソマ分布にある程度近 このような特殊アーラン分布の重ね合わせでは説 いパターンを,重ね合わせ過程のρ・4イにもた 明出来そうにない。 らすと考えられる。このガンマ分布に近いパター しかし図5の(a),(b)図などは図3の(d)図(ρ ンが我々の聴覚モデルから得られることはすでに 一10,a−100)でρが2から5の間でかなりよ 報告した4 。実際,図6は我々の聴覚モデルで相
1.0 (a図) 1.0
Φl!;= ㍊
0
ε0
∬(.、)
0
0
80
旺(x)
(b図)
50,100
O
X50 msec X50 msec
(clヌD (dじくD
1・0 50」00 1・0 、o一
Φ(x)
Pρ
0
80
∬(x)
0
Φ(x)
1 Pρ
0
80
a−50
10 ∬(x)
O
X 50msec X 50 msec 図3 (18),(19)式にもとずくパルス間隔のか九と.ρ・4・ノ
(ρ=10の場合) (曲線上の数はρの値である)
対閾値*を1に近い値にして,ほぼ同じような自 がない。)この結果から,確かに型式2のパターン 発生ランダムパルス列をもつ5つのユニットを重 は実験的にも可能であることが保証される。ただ ね合わせて得たものである。 図5の(c)図のようにゆっくり立上った後かなり
(測定区間が少々大きいためバラツキが大きいが の勾配で直線的に増加するものについては,図 特徴はとらえられる。30ミリ秒以上はあまり意味 2,図3だけでは説明困難で更に検討を要する。
_ ____ _. .__ 以上の考察を綜合して大体次のようなことが結論 *文献(4)の中で用いたパラメーター されよう。
0,5
(}1
μ 1.5
1,0 0.5
0 1 2 3 X//ご
0 し0
300
, OX l ・ 062.5mscc
1 1
HAZARD FUNC「「10N
1 10 20 30 40 50ms c i μ=11 5msec 図6 聴覚モデルによる重ね合わせ
0 1 2 3x/μ Grayにより提供された数個の乃・ゐは大まか 図4 型式1に属するか九 に2つの型式に分けられ,その双方とも再生過程 C FPはほぼ1msecの間隔を示す) の重ね合わせによって実現出来る。とくに型式1 ようなパターンは階数の大きい特殊アーラン分布
謬 ㌻莞ll: を1㌫㌶;㌶誘翼㌫ス
O X 62,5m・ec 間隔の乃・∫が指数関数のもので実現出来る。た
1.0 μ一45.5msec だ,用いたかムの数がわずかであることと,デ o 5 一タが統計的なものであることを考えて,これだ
体を特徴ずけることははなはだ危険であろう。
やコロ い コ エのパ(blケ 洲ITN°「…㌍1.『ご三200 尚,本稿は独立な同じパルス間隔の分布をもつ
慧
… ・ P・1・・ 再生過程の重ね合わせだけについて述べた。実験 .』・O X 62.5msec によるパルス列や,生物ニューロンのパルス列な1.0 一
どとの,さらに詳細な比較検討にはもっと一般的
・・ @ μニ27 °⊇ な過程の重ね⇔髄研究する必要があろう。
0 1 2 3X/μ
参 考 文 献
(,図) ∴◇i←『即 ユ)P・…RG・ay−A・…i・・i・al…ly・i・・f
,φ(X) 4°G26 1°° ・lec…ph・・i・1・gi・al d…f・・…・udi…y…v・
μ nbers in cat M.LT. Technlcal Report 451,
1.5 1.0 0.5
, °ズ62・5msec (1966).
, 2) D.R. Cox Renewal theory ,, chap.6, John 1 μ一89msec Wiley&Sons Inc, New York(1962).
, 3) M.Ten Hoopen et al The superposition
ロ ロ コ
of random sequences of events , Blometrlka O 1 2 3 X/μ
53,3 and 4, p.383(1966).
図5 型式2に属する竺ノ9 4)Y.Iso et al・・A model for spike generation (…印はほぼ1msecの間隔を示す) in primary auditory neuron・・Bulletin of the Kyushu Institute of Technology, No,19(1969).