• 検索結果がありません。

不動産100_記念特集_齊藤三.ec7

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "不動産100_記念特集_齊藤三.ec7"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

 福岡大学都市空間情報行動研究所(FQBIC) ([7])では,これまで,都心部内の渡り歩き行動 である回遊行動に着目し,回遊行動研究の分野を 開拓してきた。消費者行動に焦点をあて,まちづ くり政策を消費者のマイクロな行動の観点から評 価していく,いわば,消費者志向のまちづくりの ための政策評価の科学的方法の開拓を試みてきた といえる。([39],[58],[56])  一方,最近,スマートシティや屋内測位,複雑 系ネットワークなどの分野で,スマホなどのICT 技術を用いたさまざまな「巨大情報」の入手可能 性が高まり,いわゆる「ビッグデータ」に注目が 集まるとともに,再び,社会科学や人間行動への 関心が高まりつつある。([2],[4],[11],[31],[22], [9])  本稿では,これまでの筆者らの回遊行動研究を 回顧しつつ,こうした新しい動きと回遊行動研究 とがなぜ関連し,今後どのような展開を図ってい くべきなのか,に焦点をあて,まちづくり研究の 将来の方向性と不動産学の未来を展望したい。

人間行動への関心の回帰

 近年,いろいろな分野で人間行動への関心が高 まっている。いくつか例をあげれば,まず,スマー ト グ リ ッ ド 関 連 で は,ARPA・Eで 採 択 さ れ た Stanford大 学 のBehavioralInitiativesforEnergy Efficiencyプロジェクト([2])。また,携帯電話の 利用者10万人の6か月間の匿名化した利用データ

 

100号記念特集 

 

 

「不動産学の新しい課題—今後の100号を予想する」【各論】

まちづくりにビッグデータサイエンスを

―都市エクイティ研究と不動産学の未来―

Incorporating big data sciencesinto strategictown management: Town equity researchesand the future ofrealestate sciences Saburo SAITO:Fukuoka University Institute ofQuantitative Behavioral

InformaticsforCity and Space Economy

斎藤 参郎

 In orderto addressplanning themessuch assmartgrid and midtown revitalization we need to have a framework to view a city.We stressthe importance to analyze ourcity from the unified viewpointof consumerbehaviors.To do thisenablesusnotonly to disentangle how variousaspectsofourcity are related with each otherbutto constructa scientificmethod to assesshow variouspoliciesenhance the value of our city. We call this the town equity research. Moreover, with recent advanced mobile technologieslike smartphonesand location servicesutilized to obtain micro─data ofhuman behaviors, the town equity research forstrategictown managementwillopen an ample research frontierforreal estate sciencesasbig data sciences.

keywords:回遊行動,都市エクイティ,まちづくり,スマートシティ,ビッグデータ,一致推定法, 来街地ベース調査法,マーケティング,政策評価,科学的方法

(2)

から,利用基地局(セル)の位置データを用いて, 人 々 の 移 動 パ タ ー ン を 解 明 し よ う と し た 研 究 ([11]),紙幣の動きから人々の移動がベキ乗則に したがうことを解明しようとした研究([4])など を契機に,雑誌NatureやScienceで盛んに取り上 げられるようになった複雑系ネットワークの研究 分野([31],[6])。ユビキタスコンピューティング やセンシングの分野では,Weiser論文([57])の20 周 年 を 記 念 し た,雑 誌Pervasive Computing の 2012年最初の特集([32],[22],[9])。日本でも, 同様の動きは,ユビキタスの坂村・越塚研究室に よる「歩行者コンテキスト認識」([33])や東京大 学CSIS柴崎研究室の「人の流れプロジェクト」 ([53]),オートGPSを用いた広域観光行動分析 ([60])などがある。また,シームレス測位や屋内 測位の分野でも,JAXAによる日本発の屋内測位 技術であるIMES(IndoorMessaging System)の コンソーシアムの設立([13])やGoogleのIndoor Mapsサービスの導入など([12]),活発な動きが ある([18])。  人間行動への関心といっても,特徴的な点は, いずれも携帯やスマートメーターなどのセンサー を通して得られる「ビッグデータ」の可能性を見 据えて何ができるかを考えている点である。  実際,Stanfordプロジェクトの刺激的な点は, 電力の技術システムそのものを,その一部に人間 行動を含むものとして再定義し,リアルタイムプ ライシングや情報フィードバックによって,人々 の行動変容を引き起こし,電力の需要抑制を図っ ていこうとするところにある1。Beyea[3]によれ ば,ア メ リ カ は オ バ マ 政 権 の グ リ ー ン ニ ュ ー ディールによって,今後,4,5年で4千万台, また,ヨーロッパでも今後10年間で2億4千5百 万台のスマートメーターが導入され,アメリカ全 世帯の電力使用を1秒単位で記録すると,約50ペ タ(1ペタ=10の6乗ギガ)バイトのデータにもな るとしている2。これらの動きを,Lazerら[21]は, 「コンピューテーショナル・ソーシャル・サイエン ス(計算社会科学)」と呼んでいる。  これまでのエージェントシミュレーションなど 多数の主体の相互作用をモデル化する試みはあっ たが,それらとビッグデータとの大きな違いは, 直接,多数の主体の行動結果を観測・記録し, フィードバックできる点である。これが制御の仕 組みと結びつくと,電力の需要抑制など,制御の 範囲を大きく拡大できることになる3

回遊行動マイクロデータと経済効果

 このような動きは,これまでFQBICが推進して きた回遊行動マイクロデータの大量収集や都市エ クイティ研究,また,ハイパーテキストシティ構 想やまちづくりマーケティングの考え方と次の点 で密接に関連する([38],[36],[34],[45])。  まず,マイクロな行動データを大量に収集する 点,それも,個々の行動主体が,見える化やフィー ドバックによって提供される電力使用状況などの 情報環境と,どのような相互作用をおこなったの かの過程自体を記録しようとする点,さらには, 行動主体と情報環境との相互作用の過程に介入し, 行動主体の行動変容を引き起こそうとする点であ る。唯一の違いといえば,このような環境をまち づくりにどのように活用するのかという点である。  そもそもFQBICが回遊行動に着目したのは,日 本のまちづくりに確とした科学的な理論が欠如し ているとの認識からである([37])。これまでのま ちづくりでは,さまざまな人々が,いろいろなま まちづくりにビッグデータサイエンスを 日本不動産学会誌/第26巻第1号・2012.6 39日本での行動変容の試みには,筆者も参加しているハウステンボス実証事業がある([52],[54])。ICTとスマートグリッ ド の 融 合 に つ い て は[17]が 詳 し い。住 宅 や ビ ル の エ ネ ル ギ ー 使 用 を 最 適 化 す る た め のHEMS(Home Energy ManagementSystem),BEMS(Building Energy ManagementSystem)や 太 陽 光 発 電PV(Photovoltaic)な ど の 技 術 は [23],[16],系統電力については[59]を参照されたい。

同様に,大規模データで東日本大震災直後の小売店の価格変化を扱ったものに[1]がある。また,GIS学会でも,マイク

ロジオデータの大規模データへの関心が集まっている([5])。

(3)

ちについて,あのまちはすばらしい,などと経験 や直観にもとづいて,評価してきた。しかし,そ れらに通底する理論や考え方がない限り,まちづ くりの理論を科学的に積み上げることはできない。  デザイン重視の考え方に欠けているのは,熊 田・斎藤[20]による活動効果型評価図式の視点, つまり,まちづくりはそこに住み活動する人々の 行動を最適化し,まちを訪れる人々の来訪価値を 高めるものでなければならない,との視点である。 そこから消費者志向,マーケティング志向のまち づくりの研究が生まれてきた。  その基礎が,都心などの来街地でおこなう消費 者回遊行動調査である。回遊行動調査では,消費 者の回遊行動履歴を,立ち寄った場所,そこでの 目的と支出額の3つの組が,回遊の途上で,どの ように変化するか,場所・目的・支出選択の3つ の同時選択の組が時間軸上でどのように変化した かの連鎖として記録する。これが回遊行動履歴マ イクロデータである。その特徴は,立ち寄ったが 購入しなかったなどの消費者の選択も含む,異業 種店舗にまたがる拡張POSデータ([34])であるこ と,また,消費者がどこで何をいくら買ったかの, 行先選択と消費選択の同時選択データとしてもみ ることができる点である。  これらの回遊行動履歴マイクロデータの特徴か ら,回遊行動研究に一つの展開が生まれた。  回遊を促進することが,大きな経済効果を生む ことの発見である。  都心100円バスは年間109億円,都心カフェが年 間187億円,地下鉄七隈線の開業が年間177億円の 増収効果を福岡都心部にもたらしているなどがそ の例である([49],[42],[50])。  いずれの計測例も,これらを利用した人が,回 遊による立寄り先や都心への来街頻度を増加させ, 増加した立寄り先や来街で落とす支出額を,都心 への支出増大効果と捉え,年間で集計したもので ある([58])。

人の流れを正確に測る一致推定法

 一方,回遊行動研究に,回遊行動調査の来街地 ベースとしての調査方法の考察から,人の流れを 計測する理論的方法の確立という新たな展開が あった。それは,アルゴリズム特許([35])にもなっ ている来街地ベース回遊パターンの一致推定法で ある([44],[43],[39])。  図1はその核となる式である。その意味を雑音 消去のヘッドフォンとのアナロジーで解説しよう。  回遊行動調査は,都心部に複数のサンプリング 地点を設け,そこへの来訪者のなかから無作為に 被験者を選択し,約15分間の聞き取りをおこなう 来街地ベース調査である。来街地ベースの無作為 抽出調査であるから,都心に10回来る人と,1回 日本不動産学会誌/第26巻第1号・2012.6 まちづくりにビッグデータサイエンスを 40 図1 来街地ベース回遊パターンの一致推定法(特許第3793447号)

(4)

の人とでは,10回の方が,1回の人よりも,10倍 被験者となりやすい。同様に,サンプリング地点 でも,よく行く場所,行かない場所,また,若年 層ほど立寄り箇所数が多いなどの違いがある。  これらを無視し,各サンプリング地点で得られ たデータを合体して,単純に集計するとバイアス (Choice─based bias)が生じてしまう。一致推定法 では,これらの違いを被験者各人が持つ固有の波 (雑音)と解釈し,それを打ち消す波を重みとして 各人に与えて集計することで,正確な回遊パター ンを推計しようとするものである。  最近,この特許から意外な展開が始まった。  一致推定法は,人々の回遊パターン,つまり, 密度を推定する。したがって,どこか1箇所で, 実数で何人そこに来訪しているかがわかれば,そ の密度の比率を用いて拡大すれば,まち全体に何 人が来街し,どのように回遊しているかが実数 ベースでわかってしまうのである。  これは,革新的なことであった。何故なら,1 日当たり何百万人が行きかうとされる大都市はも ちろんのこと,地方中核都市でも一体何人の人が 買物,レジャー,食事で都心部を訪れ,どのよう な人の流れをつくっているのか,ほとんど把握で きていないのが現状だからである。それが,たと えば,丸ビルへの来訪者数がわかると,丸の内地 区全体で,ネットで何人が来街し,どのように回 遊しているかが推計できることになる([39])。  多様な消費者の回遊行動マイクロデータにもと づく回遊促進といったマイクロな行動変化の計測 と経済効果,さらには,1箇所の来街者数の情報 から,まち全体の入込来街者数を推定する理論的 方法が確立されたことで,精度の高い,まちづく り政策の評価が期待できることになった4  実際,熊本市の通町筋で開催された城下まつり の集客数が何人で,まつりへの参加者が回遊する ことで,どのような波及効果をまちなかにもたら したのかなどの推定が可能になった([47],[28])。

都市エクイティとまちづくりマーケティング,

ハイパーテキストシティ構想

 このような研究の中から,鍵となる「都市エク イティ」の概念が生まれてきた。「都市エクイ ティ」とは,「ブランドエクイティ」からの筆者の 造語であるが,「来訪者の心の中に醸成された都 市の魅力資産価値」と定義する5(定義の詳細は, [15]の斎藤の記述を参照)。  実は,筆者は,2004年に福岡大学で開催された 本学会秋季全国大会において,「都市エクイティ」 概念と都市エクイティ研究を提唱した。その後, 都市エクイティ研究会を学会内に組織し,関連す る本学会主催の公開シンポジウムを4回開催して いる([25],[26],[27],[28])。  結論からいえば,「都市エクイティ」とは,消費 者の観点からみた,「まちの価値」に他ならない。 このように考えると,まちづくりの目的とは,「ま ちを一つの事業体としてみて,都市エクイティを 最大化すること」と捉え直すことができる。  別言すれば,来訪者の来訪価値を最大化するこ とが,まちの価値を最大化することであり,まち づくりや不動産開発の目的も,「一体どのような 機能と施設でまちや不動産を構成すれば,来訪者 の来訪価値を最大化することができるのか」の問 に還元できる。「都市エクイティ」概念の意義は, これまで曖昧であった,まちづくりの目的を明確 にし,まちの価値を計測可能な概念とするととも に,回遊行動マイクロデータにもとづけば,まち の価値の計測を実際に試みることができることを 示した点にある6([36],[41],[42],[40])。  しかし,まちの魅力は来訪者にとって,一様で はなく,各人各様に異なるはずである。したがっ て,どのような施策がまちの価値をどのように高 めるのかをみるためには,どのような施策をとれ まちづくりにビッグデータサイエンスを 日本不動産学会誌/第26巻第1号・2012.6 41ベトナムなど公表データの少ない開発途上国でも一致推定法が有効であることがわかってきた([48],[56])。2004年の秋季全国大会では都市エクイティに関する 2つのワークショップで研究の展望が行われた([14],[15])。都市エクイティは,まちづくりでの市場機構の活用との関連でも議論されている([19],[29])。

(5)

ば,どのような来訪者の,どのような来訪価値を, どのように高めるのか,これを子細に精査し,ノ ウハウとして蓄積し,施策に活かしていく必要が ある。それがまちづくりマーケティングである。  FQBICでは,設立時の2000年より,「ネット化 した都市空間情報とユーザが知的モバイル端末を 通して意味的相互作用のできる都市」を「ハイパー テキストシティ」と定義し,ハイパーテキストシ ティ構想の実現にむけ,さまざまな提言をおこな うとともに,来訪者への知的な情報提供の仕組み を研究課題としてきた([34],[45])。  ハイパーテキストシティ構想の意図は,ICTを 活用したまちづくりマーケティングの方法の構築 であり,ユーザと都市空間情報との意味的相互作 用の過程自体をログとして記録することで,まち に来訪した消費者の行動履歴を体系的に収集し, その行動文法を明らかにするとともに,的確な情 報をフィードバックし,現場での来訪者の意思決 定を効果的に支援することで,来訪者各人の来訪 価値を最大化することをねらった構想である。  中心市街地を想定した,このようなハイパーテ キストシティの実現には,少なくとも1箇所の歩 行者数の計測装置とともに,スマホやタブレット 端末をもった来訪者と,GPSやIMES,WIFIによ る位置情報と連携したエアタグやNFCタグを配 した都市空間情報との,相互作用を引き起こすプ ラットホームが必要である。さらには,このプラッ トホームを通して,来訪者各人の相互作用が価値 あるものとなるように支援し,まちの価値を最大 化するように誘導するための機構が必要である。  これをTEMS(Town Equity Management System)と呼ぼう。TEMSは,まちの価値を最大 化するための戦略的まちづくりに不可欠の装置と なる。  このような視点に立つと,スマートグリッドで のHEMS,BEMSなどの最近の動きと都市エクイ ティ研究のねらいが密接に交差してくることが分 かる。

まちづくり政策評価の科学的方法

 これまで,イベントなど,さまざまな中心市街 地活性化策が実施されてきた。しかし,自分のま ちに一体何人が訪れているのか,これを把握して いる中心市街地は皆無といってよい。まち単位で, 一体,何人の入込者数があるのか,これを知らず して,さまざまな活性化策が,一体どのような効 果をもったのか,評価できるのだろうか?  回遊行動マイクロデータを梃子としたFQBIC のこれまでの研究は,まちづくり政策の評価のた めの科学的方法の開発の試みであったともいえる。  とくに,そのねらいは,いかに情報提供によっ て,回遊を促進し,まちの活性化に結び付けるか にあった。しかし,これまでの情報技術環境では, どのような情報が,消費者にどのような行動変容 を引き起こし,どのような回遊を誘発したのかを 検証することは非常に困難であった。しかし,こ の状況は劇的に改善する。そこではどのような情 報提供が,どのような来訪者に,どのような効果 を持ったのかを明確にフォローできる時代とな る7  最近の筆者らの研究の一例をあげよう。 図2 イベントによる集客のリフティング効果このような方向の研究に[8]がある。

(6)

 福岡県大川市の春の大川木工まつり([30])への 来訪者に,木工まつりがなければ来なかったか否 かを聞き,まつりがなければ来なかった人とそう でない人で,大川市への普段の出向頻度を比較し たところ,木工まつりがなければ来なかった人の 出向頻度が有意に低く,木工まつりが,大川市へ 普段,出向頻度の低い人たちを引き寄せている集 客効果があることがわかった([46])。  これまで,個人レベルで,このようなイベント の集客効果を計測した例は皆無であった。これが 初めて明らかになったことで,さらに進んで,ど のような人に集客効果が高かったのか,テレビ CMの効果等々,マイクロ行動レベルで,イベン ト施策の効果を評価できるようになった。本事例 はICT技術を利用した例ではないが,重要なこと は,日々のまちづくりマーケティングの活動それ 自身が,実験だということである8。そこで発見し た事実や知識をノウハウとして形式知化し,次世 代のまちづくりのための経営資産として蓄積して いくこと,これが大切である。TEMSは,それを 支援する仕組みとなる。

不動産学の未来—日本のまちづくりをパッ

ケージとしてアジアに売り込めるか?—

 最近,日本の水ビジネスなどのインフラ技術や スマートグリッドなどの再生可能・省エネ技術を パッケージとしてアジアに売り込む動きがある。  しかし,日本企業は,スマートグリッドについ て,技術を売り込むだけで,どのような都市を目 指すのか,まちづくりの目的を語らないため,外 国企業に敗退しているとの報告もある([24])。  ここに,まちづくりの目的を,都市エクイティ の最大化と真正面から捉え,さまざまな施策が, まちの価値を高めることにどのように寄与してい るのか,これを計測し,評価する科学的方法の開 発に注力してきた日本の不動産学の出番と未来が ある。  これからの都市エクイティ研究では,TEMSを パッケージ化すべきであろう。  ま ず は,事 業 主 体 が 明 確 な 商 業 複 合 ビ ル や ショッピングモール,アウトレットモールを取り 上げ,どのような情報提供と施設構成がその空間 価値,まちの価値を,どのように高めるのかの事 実 を 丹 念 に 解 明 し,そ れ ぞ れ のEMS(Equity ManagementSystem)としてパッケージ化する。 EMSを導入することで,商業ビルやモールの不 動産価値がどのように高まるのかが明確になれば, その導入が加速するであろう。  さらには,中心市街地のような,複数の事業主 体が複雑に絡まった,まちの再生に,TEMSの展 開を図っていく必要があり,ビッグデータサイエ ンスが活用される場面は大きい。  アジアには,100万から1000万程度の中規模の都 市が沢山ある。彼らにとって,日本の中心市街地 形成の経験とノウハウは貴重なものといえる。  単に経験や例を指し示すのみではなく,日本が 回遊にもとづいたまちづくりの理論を科学的に論 拠づけ,アジア発のまちづくりの理論として,世 界に発信すれば,それを体化したパッケージとし てのTEMSは大きな競争力を持つはずである。 参考文献 [1] 阿部修人,森口千晶(2011)「震災直後の超過需要 への対応」日本経済新聞2011年11月21日朝刊24 面経済教室

[2] Advanced Research Project Agency・Energy (ARPA.e)“Stanford University:Behavioral

Initiatives for Energy Efficiency 2010─2013”, Large─Scale Energy Reductions Through Sensors,Feedback,& Information Technology http://arpa─e.energy.gov/ProgramsProjects/ OtherProjects/BuildingEfficiency/LargeScale EnergyReductionsthroughSensorsFee.aspx [3] Beyea,J.(2010),“The SmartElectricity Grid

まちづくりにビッグデータサイエンスを

日本不動産学会誌/第26巻第1号・2012.6 43

開発経済学におけるRCT (Randomized Controlled Trials)をもちいた,エビデンスにもとづいた政策評価や政策形成に

(7)

and Scientific Research”, Science, vol328,. pp. 979─978

[4] Brockmann,D.,Hufnagel,L.,Geisel,T.(2006), “The Scaling Law ofHuman Travel”,Nature,

Vol439,. pp.462─465

[5] 地理情報システム学会 (2011) 鹿児島全国大会 特別セッション「マイクロジオデータの普及と 利活用」http://geodata.csis.u─tokyo.ac.jp/wp/? p=117

[6] Dorogovtsev,S.N.(2010) Lectureson Complex Networks,Oxford University Press

[7] FQBIC(福 岡 大 学 都 市 空 間 情 報 行 動 研 究 所) http://www.qbic.fukuoka─u.ac.jp

[8] Froehlich,J.,et.al.,(2006)“Voting With Your Feet:An Investigative Study ofthe Relation ship Between Place VisitBehaviorand Prefer ence”,ProceedingsofUbiComp,pp.333─350 [9] Froehlich, J., et. al.,(2011), “Disaggregated

End─Use Energy Sensing forthe SmartGrid”,

IEEE PervasiveComputing,vol10,. pp.28─39 [10] 福岡経済同友会福岡支部(2008)『住んでよし,訪

れてよし,の国際都市「福岡」の創造~回遊が 楽しめる都心~』提言書i+37pp

[11] Gonzalez,M.C.,Hidalgo,C.A.,Barabasi,A.L. (2008),“Understanding IndividualHuman

Mobility Patterns”,Nature,Vol453,. pp.779─782 [12] Google Japan (2011) IndoorGoogle Maps,

http://googlejapan.blogspot.jp/2011/11/google_ 9109.html

[13] IMESコンソーシアム(2011)「設立のご案内」 http://www.jsforum.or.jp/info/2011/imes.html [14] 石橋健一,両角光男,斎藤参郎(2005)「消費者 行動と都市エクイティⅡ」,日本不動産学会誌, vol19,. pp.152─161 [15] 栫井昌邦,出口敦,斎藤参郎(2005)「消費者行 動と都市エクイティⅠ」,日本不動産学会誌, vol19,. pp.143─151 [16] 柏木孝夫(2010)『スマート革命─自動車・家電・ 情報通信・住宅・流通にまで波及する500兆円 市場』日経BP社 [17] 加藤敏春(2010)『スマートグリッド革命─エネ ルギー・ウェブの時代』 エヌティティ出版 [18] 河合基伸(2012)「活用始まる屋内測位 高精度 で広がる用途」日経エレクトロニクス 2012.2.20, pp.65─71 [19] 北詰恵一(2010)「報告に対するコメント」inワー クショップ「歴史まちづくりにおける市場機構 の活用」,日本不動産学会誌, Vol24,. No.3,p.9 [20] 熊田禎宣,斎藤参郎(1975)「計画組織設計理論へ のアプローチ」都市問題研究,Vol.27,pp.44─62 [21] Lazer,D.et.al.,(2009),“ComputationalSocial

Science”,Science,Vol323,. pp.721─723

[22] Lukowicz,P.,Pentland,A.S.,Ferscha,A.(2012) , “From ContextAwarenessto Socially Aware Computing”,IEEE PervasiveComputing,Vol1.1,

no.1,pp.32─40. [23] 諸住哲(2010)『図解 ビジネス情報源 スマートグ リッド 業界動向と主要企業がひと目でわかる』 アスキー・メディアワークス [24] 中島募,山根小雪,北爪匡(2011)「スマートシ ティ3つの落とし穴 日本企業が勝機を逃がす 理由」日経ビジネス 2011,12.5 pp46─50 [25] 日本不動産学会設立20周年記念シンポジウム 「都市再生と都市エクイティ」(2004年11月20日 開催,福岡市)日本不動産学会誌,vol19,. pp.5─29 [26] 日本不動産学会公開シンポジウム「子孫に伝え たい魅力あるまちづくり─個性のあるまちブラ ンドの醸成─」(2007年1月29日開催,東京), Vol21,. No.1,pp.5─49 [27] 日本不動産学会公開シンポジウム「まちブランド の再構築による都市再生」(2008年6月6日開催, 大阪),日本不動産学会誌,Vol22,. No.3,pp.7─32. [28] 日本不動産学会設立25周年記念シンポジウム 「九州新幹線全線開業と熊本都心のまちづくり ~途中駅のまちからハブ機能のまちへ~」(2010 年9月11日開催,熊本市),日本不動産学会誌, Vol24,. No.3,pp.33─61 [29] 西嶋淳(2010)「まちづくりにおける市場機構活 用の基本的な考え方」,ワークショップ「歴史ま ちづくりにおける市場機構の活用」,日本不動産 学会誌,Vol24,. No.3,p.8 [30] 大川家具工業会(2011)「春の大川木工まつり」 http://www.okawa.or.jp/tenji/mk2011sp/index. html

[31] Song, C., Koren, T., Wang, P., Barabasi, A.L. (2010),“Modeling the Scaling Properties of Human Mobility”,NaturePhysics,Vol6,.pp.818 ─823

[32] SpecialTheme (2012)“We, iser’sVision:20 Years Later”,IEEE PervasiveComputing,vol11,. no.1,

(8)

pp.14─60

[33] 坂村・越塚研究室「歩行者コンテキスト認識」 http://www.sakamura─lab.org/modules/ projects/index.php?content_id=15

[34] 斎藤参郎(2005)「回遊による都市再生─行動か ら情報へ─」日本不動産学会誌,vo.19,pp.8─17 [35] 斎 藤 参 郎(2006)「回 遊 行 動 調 査 装 置 及 び ナ ビ ゲーションシステム」特許公報 特許第3793447 号,2006年7月5日 [36] 斎藤参郎(2007)「まちブランドの評価と消費者 行動」日本不動産学会誌,Vol21,. No.1,pp.12─20 [37] 斎藤参郎(2008)「福岡は世界に先駆け,アジア 的な回遊性の視点に立つまちづくりの理論を発 信すべき」in 福岡経済同友会[10],pp.34─36 [38] 斎藤参郎(2008)「回遊と都市エクイティ」日本 不動産学会誌,Vol.22,No.3,pp.15─19 [39] 斎藤参郎(2010)「人の流れを正確に測ることか らまちづくりを始めよう─消費者志向のまちづ くりと都市エクイティ─」,月刊不動産流通,不 動産流通研究所,No.335,pp.8─9 [40] 斎藤参郎(2010)「都市エクイティとまちづくり」, ワークショップ「歴史まちづくりにおける市場機 構 の 活 用」,日 本 不 動 産 学 会 誌, Vol24,. No.3, pp.6─7 [41] 斎藤参郎・石橋健一・熊田禎宣(2001)「機会費 用による中心商業地河川の価値の計測の試み─ 北九州市都心紫川への消費者回遊行動アプロー チの応用─」地域学研究,日本地域学会,Vol.31, No.1,pp.323─337 [42] 斎藤参郎・栫井昌邦・中嶋貴昭・五十嵐寧史・ 木口知之(2008)「消費者行動アプローチによる 都心カフェの経済効果の計測:都心カフェ利用 者の回遊行動特性に着目して」,福岡大学経済学 論叢,福岡大学,Vol52,. No.3,4,pp.435─458 [43] 斎藤参郎・中嶋貴昭(2003)「来街地ベース調査 によるODパターンの一致推定法の応用─福岡 市大名地区での回遊パターンの推定─」,地域学 研究,日本地域学会,Vol33,. No.3,pp.173─203 [44] 斎藤参郎・中嶋貴昭・栫井昌邦(2001)「来街地 ベースパーソントリップ調査によるODパタンの 一致推定法」,地域学研究,日本地域学会,Vol31,. No.3,pp.191─208 [45] 斎 藤 参 郎・中 嶋 貴 昭・栫 井 昌 邦・五 十 嵐 寧 史 (2008)「ハイパーテキストシティ構想─リアル GISと都市エクイティ─」,第7章 in 熊田・山本 編『環境市民による地域環境資源の保全─理論 と実践─』古今書院,pp.131─146 [46] 斎藤参郎・蔡傑・山城興介・岩見昌邦・今西衞 (2011)「大川木工まつりを例とした大規模イベ ントの集客効果の計測」,日本地域学会第38回年 次大会発表論文,日本地域学会 [47] 斎藤参郎・佐藤貴裕・山城興介(2010)「消費者 行動からみた都心でのイベント効果の計測~く まもと城下まつりにおける熊本市都心部への効 果~」,日本地域学会第47回年次大会提出論文, 日本地域学会

[48] Saito, S., Tran, H. N. et. al.(2012)“On the accuracy ofon─site consistentOD estimation method in estimating the actual numbers of consumershop─around movementswithin the city center of Hanoi, Vietnam”, To appear in

Studiesin RegionalScience,Japan Section of RegionalScience Association International [49] 斎藤参郎・山城興介(2001)「回遊行動からみた 都心100円バスの経済効果の推計─福岡都心部 におけるケーススタディー─」地域学研究,日 本地域学会,Vol.31,No.1,pp.57─75 [50] 斎 藤 参 郎・山 城 興 介・中 嶋 貴 昭・五 十 嵐 寧 史 (2007)「地下鉄開通による都心への経済効果の 予測─消費者行動アプローチにもとづく福岡都 心部でのケーススタディ─」,地域学研究,日本 地域学会,Vol37,. No.3,pp.841─854 [51] 澤田康幸(2011)「開発経済学深化の原動力」日本 経済新聞2011年12月5日朝刊22面経済教室 [52] 新エネルギー導入促進協議会(2011)「平成23年 度次世代エネルギー技術実証事業補助金採択結 果─電力需要抑制のモデル化と高自給率コミュ ニティの計画・運用体系化に関する実証事業─」 http://www.nepc.or.jp/topics/2011/0926.html http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/110926/ 110926_2.pdf

[53] 柴崎研究室(CSIS)「人の流れプロジェクト」 http://shiba.iis.u─tokyo.ac.jp/?page_id=407 [54] 双日株式会社(2011)「長崎県ハウステンボスで

次 世 代 エ ネ ル ギ ー 技 術 の 実 証 事 業 を 開 始」 ニューズリリース

http://www.sojitz.com/jp/news/releases/ 20111108.html

[55] 東 京 大 学 空 間 情 報 科 学 研 究 セ ン タ ー(CSIS) (2010)「デジタル実験フィールド」によるリアル

まちづくりにビッグデータサイエンスを

(9)

タイム空間情報科学研究の発展」シンポジウム http://www.csis.u─tokyo.ac.jp/japanese/ research_activities/symposium/2010─df/ [56] Tran,H.N.(2012) Evaluating theeffectsof

the redevelopment of retail facilities from consumer shop─around behaviors at city centercommercialdistrict:An empiricalstudy in Hanoi, Vietnam, Doctoral Dissertation, Fukuoka University

[57] Weiser,M.(1991),“The Computerforthe 21st Century”,ScientificAmerican,vol.265,pp.66─

75 [58] 山城興介(2012)『消費者行動アプローチにもと づく交通政策の評価に関する研究』福岡大学博 士学位論文 [59] 横山明彦(2010)『スマートグリッド』 電気新聞 ブックス―エネルギー新書 [60] ゼンリンデータコム,じゃらんリサーチセン ター(2011)「位置情報を活用した次世代観光地 分析」,とーりまかし,vol26, . pp.4─9,じゃらん リサーチセンター

参照

関連したドキュメント

災害に対する自宅での備えでは、4割弱の方が特に備えをしていないと回答していま

 回報に述べた実験成績より,カタラーゼの不 能働化過程は少なくともその一部は可三等であ

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

基本目標2 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり.

近年は人がサルを追い払うこと は少なく、次第に個体数が増える と同時に、分裂によって群れの数

Q7 

その問いとは逆に、価格が 30%値下がりした場合、消費量を増やすと回答した人(図