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本件は, 発明の名称を 光学情報読取装置 とする特許第 号 ( 以下 本件特許 という ) に係る特許権 ( 以下 本件特許権 という ) を有していた原告が, 被告において業として被告製品を製造等する行為は原告の本件特許権を侵害すると主張して, 特許法 0 条 1 項に基づき, 被

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1 平成30年1月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成28年(ワ)第32038号 特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成29年11月9日 判 決 5 原 告 株式会社デンソーウェー ブ 同訴訟代理人弁護士 櫻 林 正 己 同訴訟代理人弁理士 碓 氷 裕 彦 被 告 カ シ オ 計 算 機 株 式 会 社 10 同訴訟代理人弁護士 窪 田 英 一 郎 同 乾 裕 介 同 今 井 優 仁 同 中 岡 起 代 子 主 文 15 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載1ないし3の光学情報読取装置(以下,順に「被 20 告製品1ないし3」といい,これらを「被告製品」と総称する。)を製造し,輸入 し,輸出し,譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,被告製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,2億円及びこれに対する平成28年9月30日から支払 済みまで年5分の割合による金員を支払え。 25 第2 事案の概要

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2 本件は,発明の名称を「光学情報読取装置」とする特許第3823487号(以 下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有して いた原告が,被告において業として被告製品を製造等する行為は原告の本件特許 権を侵害すると主張して,特許法100条1項に基づき,被告製品の製造・販売 等の差止めを,同条2項に基づき,被告製品の廃棄を,民法709条に基づき, 5 損害賠償金2億円(一部請求)及びこれに対する不法行為後である平成28年9 月30日(訴状送達日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 害金の支払を求める事案である。なお,原告は,本件特許権の存続期間の満了後, 上記差止請求及び廃棄請求に係る訴えを取り下げたが,被告はこれに同意しなか った。 10 1 争いのない事実等(下記⑴ないし⑸は当事者間に争いがない。) (1) 当事者 ア 原告は,情報処理,情報通信に関するソフトウェアの開発及び機器・シス テムの開発・製造・販売等を業とする株式会社である。 イ 被告は,各種電子計算機,電子記録装置その他情報機器,その他電子応用 15 機器及び関連する部品の製造販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権 原告は,以下の本件特許権を有していたが,平成29年10月27日の終了 をもって存続期間が満了した。 登録番号 第3823487号 20 発明の名称 「光学情報読取装置」 出願日 平成9年10月27日 登録日 平成18年7月7日 訂正審決日 平成27年7月2日(同審決はその後確定) (3) 特許請求の範囲の記載 25 本件特許に係る特許請求の範囲における請求項1の記載は以下のとおりで

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3 ある(以下,請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 【請求項1】 「複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に 結像させる結像レンズと,前記読み取り対象の画像を受光するために前記読 取位置に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数 5 の受光素子が2次元的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが 設けられた光学的センサと,該光学的センサへの前記反射光の通過を制限す る絞りと,前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2 値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果 を出力するカメラ部制御装置と,を備える光学情報読取装置において,前記 10 読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射 するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳 位置までの距離を相対的に長く設定し,前記光学的センサの中心部に位置す る受光素子からの出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素 子からの出力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して, 15 露光時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能とな るようにしたことを特徴とする光学情報読取装置。」 (4) 構成要件の分説 本件発明の構成要件は,以下のとおり分説できる。 A 複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取位置に 20 結像させる結像レンズと, B 前記読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その 受光した光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的 に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた光学的セン サと, 25 C 該光学的センサへの前記反射光の通過を制限する絞りと,

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4 D 前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基づいて2値化し, 2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力す るカメラ部制御装置と, E を備える光学情報読取装置において, F 前記読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レン 5 ズに入射するよう,前記絞りを配置することによって,前記光学的センサか ら射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定し, G 前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記 光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値以上と なるように,前記射出瞳位置を設定して,露光時間などの調整で,中心部に 10 おいても周辺部においても読取が可能となるようにした H ことを特徴とする光学情報読取装置。 (5) 被告の行為 被告は,被告製品を,業として,製造し,輸入し,販売し,輸出し,販売の 申出等をしている。 15 (6) 被告製品の構成 原告は,被告製品の構成が別紙被告製品説明書記載のとおりであると主張す るのに対し,被告は,その一部につき争っている。具体的には,「このコンピュ ータチップにおける処理は,読み出された信号について,閾値に基づいて『0』 もしくは『1』に2値化し,2値化した信号の中から所定の周波数成分比を検 20 出し,検出結果を出力するものである。」(上記説明書8頁下線部)について「被 告製品では,そもそも光学的センサからの出力信号を増幅しないため,その後 の2値化,周波数成分比の検出の処理の対象となる信号がない」とすべきであ る旨を主張し,「また,被告製品では,露光時間などの調整で,中心部において も周辺部においても適切な読み取りが可能である」(上記説明書9頁下線部) 25 について「被告製品では,周辺部の出力の落ち込みという課題を,マイクロレ

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5 ンズの受光素子に対する位置をオフセットすることにより解決している」とす べきである旨を主張する。 2 争点 (1) 本件発明の技術的範囲への被告製品の属否 ア 文言侵害の成否(順に争点1-1ないし1-4という。) 5 被告製品が本件発明の構成要件A,C,E,Hを充足することは当事者間 に争いがない。 (ア) 構成要件Bの充足性 (イ) 構成要件Dの充足性 (ウ) 構成要件Fの充足性 10 (エ) 構成要件Gの充足性 イ 均等侵害の成否(争点1-5) (2) 本件特許に係る無効理由の存否 ア 進歩性欠如(順に争点2-1ないし2-7という。) (ア) ICX084AL を用いた2次元バーコードリーダを主引用例とするもの 15 (イ) 2次元コードリーダ(IT4400)を主引用例とするもの (ウ) 乙5(特開平7-254037号公報)を主引用例とするもの (エ) 乙6(特開平9-270501号公報)を主引用例とするもの (オ) 乙7(特開平8-334691号公報)を主引用例とするもの (カ) 乙8(米国特許第5331176号明細書)を主引用例とするもの 20 (キ) 乙9(特開平7-73266号公報)を主引用例とするもの イ 記載要件違反(順に争点2-8及び2-9という。) (ア) 明確性要件違反(①「所定の周波数成分比の検出」,②「相対的に長く 設定し」,③「所定値」) (イ) 実施可能要件違反(①「所定の周波数成分比の検出」,②「所定値」,③ 25 「相対的に長く設定し」)

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6 (3) 原告の損害額(争点3) 3 争点に対する当事者の主張 (1) 本件発明の技術的範囲への被告製品の属否 ア 文言侵害の成否(争点1-1ないし1-4)について (ア) 構成要件Bの充足性(争点1-1)について 5 【原告の主張】 a 光学的センサに関する本件発明の構成要件Bは,「前記読み取り 対象の画像を受光するために前記読取位置に配置され,その受光し た光の強さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元 的に配列されると共に,当該受光素子毎に集光レンズが設けられた 10 光学的センサ」というものである。しかるところ,被告製品のCMOS イメージセンサも,「前記読み取り対象の画像を受光するために前 記読取位置に配置され」ているものであり,「その受光した光の強 さに応じた電気信号を出力する複数の受光素子が2次元的に配列 され」ており,「当該受光素子毎に集光レンズが設けられ」ている。 15 すなわち,被告製品のCMOSイメージセンサは,構成要件Bの「光学 的センサ」の要件を全て充足している。 b 本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の実施例に おいて「CCD エリアセンサ」が記載されているからといって,本件発 明の「光学的センサ」が,実施例の「CCD エリアセンサ」に限定され 20 るものではない。 本件特許の出願当時(平成9年),未だ2次元コードは普及してお らず,光学情報読取装置はバーコード(1次元)の読み取りを行うも のが普通であった。そして,バーコードの読み取りでは,1次元方向 の読み取りができればよいため,バーコード読取装置の光学的セン 25 サは「CCD ラインセンサ」であった。

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7 本件発明はそのような背景の下,「マイクロレンズ付き CCD エリア センサ」を2次元コードの読取装置に利用することに着目するとと もに,その際,見出された課題を解決するためになされたものであ る(段落【0003】)。 このような本件特許の出願当時の状況に鑑みれば,本件明細書の 5 実施例で光学的センサとして CCD エリアセンサが記載され,CMOS イ メージセンサが記載されていないのは,むしろ当然である。 c 被告製品のCMOSイメージセンサは,被告主張のとおり増幅器を含 むため,構成要件D,すなわち「光学的センサからの出力信号を増 幅して,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定 10 の周波数成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置」 のうち,「カメラ部制御装置」の機能の一部(出力信号の増幅)も 取り込んでいる。 しかし,追加の機能を備えたからといって,「光学的センサ」で ないことの理由にはならない。 15 【被告の主張】 a 構成要件Bは,「読み取り対象の画像を受光するために前記読取位置 に配置され,その受光した光の強さに応じた電気信号を出力する」「2 次元的に配列された」「複数の受光素子」と,「受光素子毎に集光レンズ」 を備えた光学的センサであることを要件としている。 20 原告は,「光学的センサ」に対応するいくつかの説明において,「受光 素子」という言葉を用いており,「受光素子」があたかも「光学的セン サ」であるかのように主張する。 しかし,構成要件Bの光学的センサは,複数の受光素子とマイクロレ ンズを備えたものであり,光学的センサと受光素子は同じものではない。 25 したがって,受光素子を「光学的センサ」であると解釈することは誤り

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8 である。 b 本件明細書には,光学的センサとして,CCD エリアセンサが開示され ているにすぎず(段落【0029】等),それ以外に「光学的センサ」の 例は記載されておらず,「光学的センサ」についてのそれ以上の説明も 存在しない。 5 CCD エリアセンサは,イメージセンサと呼ばれる,対象物体の光の像 をその光の強度に応じた電気信号に変換して出力する装置の一種であ る。イメージセンサには,CCD を用いたセンサ(CCD イメージセンサ) と,CMOS イメージセンサと呼ばれるセンサの2種類が存在する。本件明 細書に記載されている CCD エリアセンサは,CCD イメージセンサの一種 10 である。他方,被告製品では CMOS イメージセンサが使用されている。 c 被告製品が使用している CMOS イメージセンサは,受光素子で受光し た光を電荷に変換して蓄積し,個々の画素内にある増幅器によって電圧 に変換し,増幅された電圧が,垂直信号線に転送され,その後水平信号 線に送られる。そして,被告製品の CMOS イメージセンサは,アナログ 15 デジタル変換回路を備えており,この回路により8ビット/ピクセルの デジタルデータに符号化され,出力される。 以上のとおり,被告製品において,本件明細書における「CCD イメー ジセンサ」に対応する構成要素は,CMOS イメージセンサである。したが って,被告製品において,「光学的センサ」に該当するものを挙げると 20 すれば,それは CMOS イメージセンサである。 (イ) 構成要件Dの充足性(争点1-2)について 【原告の主張】 a 構成要件Dは,「前記光学的センサからの出力信号を増幅して, 閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数 25 成分比を検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置と」である。

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9 したがって,「カメラ部制御装置」は,①前記光学的センサからの出 力信号を増幅する機能を持ち,②閾値に基づいて2値化する機能を 有し,③2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出する 機能を備え,④検出結果を出力する機能を有するものである。 しかるところ,被告製品では,「カメラ部制御装置の前記光学的 5 センサからの出力信号を増幅する機能」は,CMOSイメージセンサの 増幅器が受け持っている。 そして,カメラ部制御装置の閾値に基づいて2値化する機能は, 被告製品ではコンピュータチップが受け持つ。 コンピュータチップには,CMOSイメージセンサで増幅された信号 10 が出力線を介して入力され,同チップで,閾値に基づいて「0」も しくは「1」に2値化される。ここで,閾値に基づき「0」もしく は「1」に2値化するのは,2次元コードが「明」と「暗」の2色 からなるバイナリーコードであるので,2次元コードを読み取る上 で必須の機能であり,2次元コードの読み取りを行う被告製品は当 15 然備えている。 また,カメラ部制御装置の2値化された信号の中から所定の周波 数成分比を検出する機能も,被告製品では,コンピュータチップが 受け持っている。 周波数成分比検出は,2次元コードに書き込まれたデータを検出 20 することであり,2次元コードの位置検出パターンの検出に限定さ れないが,位置検出パターンの検出も含まれる。2次元コードの読 み取りができる被告製品のコンピュータチップは,この周波数成分 検出機能(データ読取機能)を当然備えている。 そして,カメラ部制御装置の検出結果を出力する機能も,被告製 25 品では,コンピュータチップが受け持っている。カメラ部制御装置

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10 で検出した検出結果は出力されてはじめて2次元コード読取装置と して機能する。2次元コードの読み取りを行う被告製品でも,検出 結果の出力機能を当然備えている。 b 「光学的センサからの出力信号を増幅」について 本件発明の光学的センサの特徴は,読取位置に2次元配置された 5 マイクロレンズ付き受光素子が備えられていることであり,この受 光素子からの出力を増幅するのに,CCDエリアセンサのように外部の 増幅器を用いるのか,CMOSイメージセンサのように内部の増幅器を 用いるかは,実質的な相違ではない。したがって,被告製品では, CMOSイメージセンサの増幅器部分が,カメラ部制御装置の一部を構 10 成している。 c 「2値化」及び「周波数成分比検出」がアナログ信号のハード ウェア処理に限定されるかについて 本件発明のカメラ部制御装置には「前記光学的センサからの出力 信号を増幅」する機能が求められるが,その機能は被告製品ではCMOS 15 イメージセンサの増幅器が受け持っている。更に,被告製品の CMOS イメージセンサでも,内部の増幅器はアナログ信号の増幅を行って いる。したがって,被告製品のCMOSイメージセンサは,本件発明のカ メラ部制御装置の増幅機能を有している。 被告は,本件明細書の段落【0031】,図4に記載された実施 20 例に照らせば,本件発明においては,アナログ信号をAGCアンプ で増幅し,2値化されたアナログ信号の中から周波数成分比をハー ドウェア的に検出するものと解すべきところ,被告製品では,CMOS イメージセンサからはアナログデジタル変換回路で変換されたデジ タルデータが出力され,これがソフトウェア的に処理されているか 25 ら,構成要件Dを充足しない旨主張する。

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11 しかし,被告の上記主張は,本件発明において,増幅されたアナ ログ信号をハードウェア的に検出するものが記載されていることに 基づき,実施例限定を主張するものにすぎない。 本件発明は,2次元配置されたマイクロレンズ付き受光素子を2 次元コードの読取装置に用いる上での工夫(絞りの位置を工夫して 5 光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定するな どして,周辺部においても良好な読取を可能としたところ)に発明 としての特徴があり,2値化処理や周波数成分比検出をハード的に 行うかソフト的に行うかは,本件発明の特徴部分ではない。被告の 主張は,本件発明の特徴的部分ではない部分について,技術の進歩 10 に付随して構成要件該当性を欠いているとの主張に帰着するにすぎ ず,本件発明の本質に照らせば,設計上の微差の類いでしかない。 前記aのとおり,被告製品では,カメラ部制御装置の閾値に基づ いて2値化する機能,及びカメラ部制御装置の2値化された信号の 中から所定の周波数成分比を検出する機能は,いずれもコンピュー 15 タチップが受け持っている。 d 「閾値に基づいて2値化」について 構成要件Dでは,「閾値に基づいて2値化」するとされているだ けで,閾値が「一定の値」でなければならないとはされていない。 2次元コードはバイナリーコードであり,「白」か「黒」か,「明 20 るい」か「暗い」か,「0」か「1」かを判断することは必須であ り,その判断に用いるのが閾値である。 被告製品もバイナリーコードである2次元コードを読み取ってい る。ソフトウェア的に処理しているとしても,閾値を用いて「0」 か「1」かを判断していることは明白である。 25 e 「所定の周波数成分比を検出」について

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12 周波数成分比検出は2次元コードに書き込まれたデータを検出 することであり,2次元コードの位置検出パターンの検出に限定 されることはないが,位置検出パターンの検出も含まれる。 2次元コードの読み取りができる被告製品のコンピュータチップ は,周波数成分検出機能(データ読取機能)を当然備えている。 5 【被告の主張】 a 「光学的センサからの出力信号を増幅」について 「光学的センサ」は,被告製品の CMOS イメージセンサと対応させて 考えるべきである。そして,「増幅」とは「振動電流又は電圧の振幅を増 加させて大きいエネルギーの振動とすること」を意味するが,その対象 10 はアナログ信号であり,デジタルデータが増幅されることはない。つま り,被告製品の CMOS イメージセンサからの出力であるデジタルデータ が増幅されることはない。 このように,被告製品では,構成要件Dの「前記光学的センサからの 出力信号を増幅」していない。それ故,その後に行われる「閾値に基づ 15 いて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出し, 検出結果を出力する」こともしていない。 なお,「光学的センサ」とは,CCD エリアセンサ等のセンサ全体を意味 し,それぞれの受光素子は「光学的センサ」ではない。したがって,受 光素子に蓄積された電荷は「光学的センサ」の出力ではないから,受光 20 素子に蓄積された電荷が増幅されたとしても,これは「光学的センサか らの出力を増幅」したことにはならない。 b 「2値化」及び「周波数成分比検出」がアナログ信号のハードウェ ア処理に限定されるかについて 構成要件Dは,「光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に基 25 づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出

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13 し,検出結果を出力する」ことを要件とするが,これが何を意味するか は,特許請求の範囲の文言のみからは理解できない。 構成要件Dは,訂正により追加されたものであるが,本件明細書の段 落【0031】に同訂正の根拠があるとされており,これ以上の説明は ない。同段落の記載に基づけば,構成要件Dの「光学的センサからの出 5 力信号を増幅し」は,本件明細書の「補助アンプ56にて走査線信号を 増幅すること」に対応し,構成要件Dの「閾値に基づいて2値化し」は, 本件明細書の「2値化回路57」において「上記走査線信号を,閾値に 基づいて2値化」することに対応し,構成要件Dの「2値化された信号 の中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力する」は,「周波 10 数分析器58」において,「2値化された走査線信号の中から所定の周 波数成分比を検出し,その検出結果は画像メモリコントローラ61に出 力」することに対応する。 また,実施例において,CCD エリアセンサ41からの出力は,AGC ア ンプ52で増幅された後,2つのルート(「補助アンプ-2値化回路- 15 周波数分析器ルート」及び「A/D 変換器ルート」)で処理されるところ, 構成要件Dは,前者の処理ルートを特許請求の範囲に記載したものであ る。 他方で,被告製品においては,CMOS イメージセンサ内で A/D 変換回路 にアナログからデジタルに変換されたデータが CMOS イメージセンサの 20 外部に出力され,かかるデジタルデータがソフトウェア的に処理される ため,「補助アンプ-2値化回路-周波数分析器ルート」を有していな い。したがって,被告製品は構成要件Dを有しない。 c 「閾値に基づいて2値化」について 「閾値」とは,その値を境にして動作や意味などが変わる値を意味す 25 る,いわば境目の値を示すものであり,ある一定の値を意味している。

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14 そのため,可変の値は,もはや「閾値」とはいえない。 被告製品では,2次元コードのデジタルデータをソフトウェアによる 複雑なアルゴリズムにより処理し,2次元コードが置かれた場所の明る さが同じであっても,同じグレースケール値のグレーを白と判断したり 黒と判断したりする。そのため,被告製品では,2次元コードが置かれ 5 た場所の明るさによって定まる「明」と「暗」の間の境目の値である閾 値をもとに2値化していない。 d 「所定の周波数成分比を検出」について 「所定」とは「定まっていること。定めてあること。」(乙50)を意 味することからすると,少なくとも定められた周波数成分の比率を検出 10 することが「所定の周波数成分比」の検出を意味するといえる。一方, データが記載される領域は,そのデータの内容によってパターンが変化 するため,定められた周波数成分比の検出は行われない。 仮に,別件の特許出願の内容等から,「所定の周波数成分比」の「検出」 を,2次元コードの位置検出パターンから得られる暗:明のモジュール 15 幅の比率1:1:3:1:1を検出することと解釈しても,被告製品で は,暗:明のモジュール幅の比率1:1:3:1:1を検出せずとも, 二次元コードが読み取れる(乙49の実験参照)ため,いかなる意味に おいても,「所定の周波数成分比」の「検出」を行っておらず,構成要件 Dの「2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出」を充たさ 20 ない。 (ウ) 構成要件Fの充足性(争点1-3)について 【原告の主張】 a 構成要件Fのとおり,本件発明の光学的センサから射出瞳位置までの 距離は,「読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後で結像レンズ 25 に入射するよう,絞りを配置する」ことによって,そうでない配置(例

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15 えばレンズ間に配置)と比較して相対的に長く設定される。 そして,本件発明との対比で必要なことは,被告製品の射出瞳位置の 絶対値ではなく,被告製品の射出瞳位置が本件発明の要件を備えない配 置に比して相対的に長く設定されていることである。 被告製品のレンズ形状,配置においては,レンズ間に被告製品の絞り 5 をそのまま配置することを想定することは難しいので,絞りを「ガラス レンズの下方」(光学的センサ側)に配置したと仮定した場合(射出瞳位 置に相当するのは絞りの位置そのもの)と比較すれば,被告製品におい ては,読み取り対象からの反射光が絞りを通過した後に結像レンズに入 射するように絞りを配置したことにより,光学的センサから射出瞳位置 10 までの距離は,相対的に長く設定されている。 b 射出瞳までの距離は,本件明細書の段落【0009】欄で定義して いるとおり,光学的センサから射出瞳までの距離であり,射出瞳は, 絞りよりも像側(光学的センサ側)にある光学系によって物体空間 に生じる絞りの虚像(exit pupil)である。つまり,射出瞳までの距 15 離は,光学的センサから見て絞りの像がどの位置に見えるかである。 被告製品の2枚のレンズ間に絞りを配置する例において,射出瞳 位置は絞りの位置近くに設定して設計することが多いため,そのよ うに設定すると,現状の被告製品では,光学的センサから絞りまで の距離は9mm程度であるところ,光学的センサからレンズ間まで 20 の距離は7mm程度となるので,レンズの屈折を考慮したとしても, 光学的センサから見える絞りの位置は,絞りがレンズの前にある被 告製品の方が,レンズ間に絞りがある比較例より遠くに見える(射 出瞳位置までの距離が長い)ことが理解できる。 【被告の主張】 25 a 構成要件Fは,「前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対

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16 的に長く設定」することを要件とする。しかし,「相対的に長く」の意味 は不明確であり,充足・非充足を論じるための前提を欠く。 b 原告の前記主張aは,本件明細書の記載と合致しないものである。 すなわち,本件明細書には,「課題を解決するための手段及び発明の 効果」の項目に,「結像レンズの複数のレンズ間に介装されていた場合 5 (図6(a)参照)と比べて,複数のレンズで構成される結像レンズより も前に配置した場合(図6(b)参照)には,光学的センサから絞りまでの 光学的な距離が相対的に長くなる。」との記載があり(段落【0009】), 「発明の実施の形態」の項目に,「結像レンズの複数のレンズ間に介装 されていた場合(図6(a)参照)と比べて,複数のレンズで構成される結 10 像レンズ(図3の34b,34cが相当する)よりも前に配置した場合 (図6(b)参照)には,CCD エリアセンサ41から絞り34aまでの光学 的な距離が相対的に長くなる。」との記載があり(段落【0040】),図 6もこれに沿った描写となっている。ここでは,比較の対象はあくまで, 絞りが「結像レンズの複数のレンズ間に介装されていた場合」であり, 15 それ以外の場合と比較することについては本件明細書には何ら記載が 存在しない。 構成要件Fの「相対的に長く設定し」の文言が,レンズ間に絞りを配 置した場合との比較における「相対的な長さ」を意味するにもかかわら ず,被告製品においてレンズ間に絞りを配置した場合を想定することが 20 できないのであれば,そもそも被告製品においては比較対象となる場合 が存在せず,したがって,被告製品は構成要件Fを充足しないという結 論にならざるを得ない。 (エ) 構成要件Gの充足性(争点1-4)について 【原告の主張】 25 a 「出力の比が所定値以上」及び「射出瞳位置を設定」について

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17 本件発明における「所定値」とは,ある一定の値を意味するのではな く,周辺部においても適切な読み取りができる程度の値を意味している。 そして,出力レベルを所定レベル以上にするために,本件発明が採用し た手段は,「前記光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長 く設定」することであり,この点,被告製品も同様の構成を採用してい 5 る。すなわち,被告製品では,絞りはレンズ群の前に配置されており, それにより射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定できており, 更に周辺部でも良好な読み取りができているので,センサ周辺部に ある受光素子からの出力レベルは所定レベル以上に設定されており, 構成要件Gを備えている。 10 被告は,被告製品では,オフセットを採用したCMOSイメージセンサ (以下「オフセットマイクロレンズ付きCMOSイメージセンサ」とい う。)や「ソフトウェア処理」により,光学的センサの中心部にお いても周辺部においても読み取りを可能としているとも主張する。 しかし,本件発明は,レンズ配置を工夫することにより所定の発明 15 の効果を生じさせるものであるところ,オフセットマイクロレンズ 付きCMOSイメージセンサや,ソフトウェア処理によってそれなりの 効果があるにしても,本件発明の効果を享受した上で,それらの処 理をしているにすぎず,本件発明の構成を備え,発明の効果を得て いることについて変わりはない。 20 b 「露光時間などの調整で…適切な読取りが可能となる」点について 構成要件Gは,構成要件AないしFを備える光学情報読取装置 (構成要件H)の効果を記載しているものである。 構成要件Gの射出瞳位置の設定は,構成要件Fのレンズ配置により 射出瞳位置までの距離を「相対的に長く設定」したことを前提にし, 25 それに加えて,センサ周辺部にある受光素子からの出力レベルが所定

(18)

18 レベル以上になるように調整するとしている。そして,構成要件Gの 「所定値以上」とは,ある「特定の値以上」を示すのではなく,「本件 発明の効果が得られる所定レベル以上」であればよい。換言すれば, 本件発明の効果が得られれば,この構成要件Gの所定値以上の要件を 満たしている。 5 【被告の主張】 a 「出力の比が所定値以上」及び「射出瞳位置を設定」について (a) 原告は,構成要件Gの「所定値」について,「ある一定の値を意味す るのではなく,周辺部においても適切な読み取りができる程度の値を 意味している」と主張し,被告製品では周辺部においても適切な読み 10 取りができているから,「出力の比」は「所定値以上」であることを充 たすと主張する。しかし,構成要件Gは,「出力の比」は「所定値以上」 とすることを要件としており,単に周辺部においても適切な読み取り ができていることは,かかる要件を充たしていることを意味しない。 原告は,被告製品が構成要件Gを充たすことについて何ら立証できて 15 いない。 (b) 仮に,原告主張のように,「所定値」が,ある一定の値を意味するの ではなく,周辺部においても適切な読み取りができる程度の値であれ ばよいと解するなら,本件明細書図5(c)の従来例に示されるような 値も本件発明における「所定値」に含まれることになり,従来例と比 20 べて何ら改善されていないものも本件発明の技術的範囲に含まれる ことになる。しかし,かかる解釈は不合理であり,採用し得ない。 本件明細書には,「所定値」について特段手がかりとなる記載はな いが,原告による訂正審判請求書(甲4の1)記載の図面を手がかり として,センサの中心部を1とした場合の閾値を計算したところ,閾 25 値は約0.9であった。

(19)

19 本件発明の課題や上記の訂正審判請求書の説明からすれば,本件発 明は,センサの周辺部のセンサの出力がセンサ中心部の出力とほぼ同 様(0.9以上)になることを求めるものと解される。 これに対し,被告製品では,CMOS イメージセンサの中心部に位置す る受光素子からの出力に対する CMOS イメージセンサの周辺部に位置 5 する受光素子からの出力の比は0.9を下回るものとなっており,上 記の出力比が「所定値」以上となっていないため,構成要件Gを充た さない。 (c) 被告製品は,マイクロレンズ(集光レンズ)が受光素子ごとに設け られた CMOS イメージセンサを用いているが,マイクロレンズを用い 10 たことによるイメージセンサの周辺部の出力の落ち込みという本件 発明と同様の課題を,マイクロレンズの受光素子に対する位置をオフ セットすることにより解決している。 このように,被告製品では,「オフセットマイクロレンズ付き CMOS イメージセンサ」や「ソフトウェア処理」等により,光学的センサの 15 中心部においても周辺部においても適切な読み取りを実現している。 そのため,被告製品においては,上記の出力比が「所定値以上となる ように,前記射出瞳位置を設定」する必要はなく,また,実際にも, 被告製品はそのような構成を採用していない。 b 「露光時間などの調整で…適切な読取りが可能となる」点について 20 特許庁の合議体が審理事項通知書(乙75)において示した見解から も明らかなとおり,構成要件Gの「所定値」とは,構成要件AないしF を備える光学情報読取装置の効果ではなく,構成要件Fとは異なる「射 出瞳位置」の設定条件について規定したものであり,別個独立の要件を 定めたものである。また,原告も,構成要件FとGとが「射出瞳位置」 25 の設定について異なる条件を定めたものであることを認めている(乙7

(20)

20 6)。したがって,被告製品における光学的センサの中心部に位置する 受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受光素 子からの「出力の比」がいくつか,かかる「出力の比」が,いかなる「所 定値以上に」該当するのかについては,構成要件Fの絞りの位置とは別 の立証が必要となることは明らかである。 5 イ 均等侵害の成否(争点1-5)について 【原告の主張】 受光素子からの出力を,光学的センサとは別個の「カメラ部制御装 置」において増幅し,閾値に基づいて2値化し,2値化された信号の 中から所定の周波数成分比を検出し,検出結果を出力することに代え 10 て,受光素子からの信号(電荷)を増幅,デジタル信号として出力す る機能を有する光学的センサ(CMOSイメージセンサ)を用いて,同光 学的センサからの信号をデジタル処理,検出し,検出結果を出力する ことは,前者と均等である。 (ア) 第1要件(発明の非本質的部分) 15 本件発明の本質的部分は,2次元コードリーダにおいて,素子ご とに集光レンズを設けた受光素子を2次元配置した光学的センサを 採用した点(構成要件B)と,この光学的センサの採用に伴う問題 点を解決するために,絞りを複数のレンズの前に配置して射出瞳位 置までの距離を相対的に長く設定し(構成要件F),この射出瞳位 20 置の設定により中心部においても周辺部においても読取可能とした 点にある(構成要件G)。つまり,本件発明の本質は,上記光学的 構成の部分にある。 他方で,本件発明におけるカメラ部制御装置の機能である,光学 的センサからの出力信号を増幅すること,閾値に基づく2値化,2 25 次元コードの読取り結果を出力する上で必要となる所定の成分比検

(21)

21 出,2次元コードの読取り結果の出力は,これらの一連の流れによ り光学処理後のデータの読み取り処理等ができれば足り,光学的セ ンサと別のアンプによって増幅機能が果たされなければ本件発明の 目的を達成できないということはない。 すなわち,本件明細書の実施例のように「CCDエリアセンサを用 5 い,そこからの微弱な信号を,カメラ部制御装置において増幅する」 か,被告製品のように「CMOSイメージセンサ内において,光学的セ ンサに相当する機能部分からの電荷(信号)を,同センサ内の増幅 機能を有する部分で増幅する」かは,本件発明の本質的部分ではな いから,第1要件を充足する。 10 (イ) 第2要件(置換可能性) 本件発明の作用効果は,絞りを複数のレンズの前に配置して射出 瞳位置までの距離を相対的に長く設定し(構成要件F),この射出 瞳位置の設定により中心部においても周辺部においても読取可能と した(構成要件G)点にある。 15 2次元コードの読み取りを行うに際し,光学的センサからの出力 信号を,同センサと別個のカメラ部制御装置で増幅して信号の読み 取りを行うことに代えて,光学的センサ内に増幅機能部分を備える CMOSイメージセンサを使用して,光学的センサに相当する受光素子 部分の信号(電荷)をCMOSイメージセンサ内の増幅機能部分で増幅し 20 て,読み取り信号を出力することは置換可能であり,置換しても,信 号を光学的に読み取り,その信号を増幅して処理でき,上記の本件発 明の作用効果を奏する。 そして,被告製品も絞りが2枚のレンズの前に配置されて射出瞳 位置までの距離が相対的に長くなっており,中心部においても周辺 25 部においても読取可能となっているので,本件発明の作用効果を奏

(22)

22 している。したがって,本件は第2要件を充足する。 (ウ) 第3要件(置換容易性) CMOSイメージセンサが周知技術となっている本件での侵害行為の 時点で,CCDエリアセンサを用いて光学情報を取得し,そこからの信 号をカメラ部制御装置に備わった増幅機能を使用して増幅すること 5 に代えて,同じ光学情報の読み取り,同信号の増幅機能を果たすもの として開発されたCMOSイメージセンサを用いる程度のことは,当業 者において,極めて容易に置換可能な事柄である。したがって,本件 は第3要件を充足する。 (エ) 第4要件(公知技術から容易想到でないこと) 10 構成要件Dについて,2次元コードの読み取りを行うカメラ部制 御装置が,受光素子と別の素子でなければならないと解釈しても, 公知技術から容易想到ではない。 このカメラ部制御装置の増幅機能部分が,受光素子と同じ素子の 中に含まれたとしても,容易想到性の議論に何らの影響を及ぼさな 15 い。すなわち,2次元コードリーダの読み取りを行うに際し受光素 子からの微弱信号を増幅する必要はあるが,カメラ部制御装置の内 部で信号を増幅するか,又は増幅済みの信号をカメラ部制御装置が 2値化するかによって,公知技術との対比における進歩性の議論に 差は生じない。したがって,本件は第4要件を充足する。 20 (オ) 第5要件(意識的除外) 構成要件Dのカメラ部制御装置は訂正により加えられた要件であ るが,被告製品はカメラ部制御装置を備えている。 すなわち,カメラ部制御装置が増幅された信号を2値化するに際し て,カメラ部制御装置の内部で増幅し,その後の処理をするか,光学 25 的センサ内で信号の増幅を行い,カメラ部制御装置に相当するコンピ

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23 ュータチップにおいて,その増幅済みの信号を用いるのかは,正に設 計上の微差にすぎず,カメラ部制御装置が増幅済みの信号を用いる構 成が,訂正審判手続で意識的に除外された事実はない。したがって, 本件は第5要件を充足する。 【被告の主張】 5 少なくとも本件発明の構成要件Dは,本件発明の本質的部分であり,訂 正審判手続において意識的に除外されたものであるため,均等侵害につい ては,第1要件及び第5要件を充たさない。また,被告製品は公知技術から 容易に推考できたものであるため,第4要件も充たさない。 (ア) 第1要件について 10 a 構成要件B,F,Gの光学的構成については,原告が訂正審判請求書 において自らが提出した公知資料(乙12ないし14)に開示されてお り,この点は,知的財産高等裁判所の判決(甲7)でも認定されている。 したがって,このような構成要件B,F,Gを含む周知技術である光学 的構成のみが,本件発明の本質的部分といえないことは明らかである。 15 b 原告は,訂正審判手続において,上記の各公知資料等はビデオカメラ 等に関するものであるから,これらの公知資料等から,本件発明のカメ ラ部制御装置(構成要件D)を備える2次元コード等の形状を把握する 光学情報読取装置は容易に想到し得ないことを繰り返し主張した。原告 のかかる主張や,構成要件A,B,C,F,Gの光学的構成が周知技術 20 であることを考慮すると,本件発明の本質的部分は,少なくとも,構成 要件Dを有する光学情報読取装置に上記の光学系を組み合わせた点に あると考えられる。 c 以上のとおり,光学的センサからの出力信号を増幅すること等を要件 とする構成要件Dも発明の本質的部分であるから,第1要件を充たさな 25 い。

(24)

24 (イ) 第4要件について 本件発明は公知技術から容易に想到し得るので無効とされるべきも のであり,本件特許の出願当時,イメージセンサとして,CCD センサと ともに CMOS イメージセンサも知られていたため(乙67),CMOS センサ 内部で増幅する構成を有する被告製品も同様に公知技術から容易に想 5 到し得るものであった。したがって,第4要件も充たさない。 (ウ) 第5要件について a 原告は,訂正審判において,構成要件Dを加えた(甲4の1)ほか, 3つの公知資料を提出し,本件発明は構成要件Dを備える2次元コード 等の形状を把握する光学情報読取装置であるのに対し,これらの公知資 10 料は構成要件Dを備えないビデオカメラ等である点が異なるとして本 件発明は公知資料を組み合わせても容易に想到し得るものではない旨 主張した。かかる訂正審判の経緯からみても,特許請求の範囲を減縮し て公知資料を回避するために構成要件Dが加えられたといえ,構成要件 Dに係る構成を備えない製品を特許請求の範囲から意識的に除外した 15 ものであることは明らかである。 なお,原告は,訂正により構成が付加されたにもかかわらず意識的除 外がなされていないことの根拠として,本件発明と被告製品の相違点は 設計上の微差にすぎないことを挙げるが,「設計上の微差であれば意識 的除外はない」とはいえない。 20 b 以上のとおり,本件発明の構成要件Dは,公知文献を回避するために 加えられた要件であることは明らかであり,構成要件Dの文言を充足し ない被告製品の構成は意識的に除外されたものといえる。したがって, 第5要件を充たさない。 (2) 本件特許に係る無効理由の存否 25 ア 進歩性欠如

(25)

25 (ア) ICX084AL を用いた2次元バーコードリーダを主引用例とする進歩性欠 如の有無(争点2-1)について 【被告の主張】 a 「日経エレクトロニクス」は,電子・情報・通信などエレクトロニク ス分野の技術情報を扱う専門誌であり,これらの分野の当業者にとって 5 は著名な雑誌であった。乙55(平成7年9月25日に発行された雑誌 「日経エレクトロニクス」の写し)には,ソニー株式会社の広告が掲載 されており,ICX084AL(内蔵フィルター白黒)のほか,CCD イメージセ ンサ6種が販売されたことが示されている。したがって,本件特許の出 願前の上記同日に,ICX084AL が日本国内で販売され,また日本国内で公 10 然に知られていたことは明らかである。 乙43にも,白黒の ICX084AL を含む複数の製品がソニーから平成7 年に販売されることが記載されており,乙43の記事の内容も乙55に 合致することから,乙43も信用性の高い記事であるといえる。また, ICX084AL がオンチップマイクロレンズを搭載したこと等の乙43と同 15 様の内容が,ソニーの平成7年6月19日のプレスリリースにも報じら れている(乙64)。 このほか,本件特許出願前に頒布された乙55の ICX084AL 等の広告 記事にも記載されたとおり,ICX084AL の用途の一つが,2次元コードリ ーダであった。ICX084AL のデータシートにも,用途として2次元バーコ 20 ードリーダ等における使用に適しているとの記載が存在する(乙42, 発行日は平成7年3月1日)。 なお,被告は,2次元コードリーダである IT4400 を購入し,公証人 の立会の下,分解調査したところ,ICX084AL には受光素子ごとに集光レ ンズが設けられていることを確認した(乙56)。 25 したがって,本件特許の出願前に,ICX084AL を2次元バーコードリー

(26)

26 ダに使用した光学情報読取装置も日本国内で知られ,または公然実施さ れていたことは明らかといえる。 なお,乙43ないし乙45は,「ICX084AL」がどのような構成をもつも のであったかを示す証拠(記事)であり,それ自体を特許法29条1項 3号における「刊行物」として主張するものではないため,その刊行物 5 性や頒布日は問題とならない。 また,原告は,2次元配置のマイクロレンズ付き CCD を用いた2次元 コードリーダは仮想のものにすぎないとも主張するが,2次元配置のマ イクロレンズ付き CCD は本件特許出願前に日本国内で販売されており, かかる公知センサ ICX084AL は2次元コードリーダに使用されることが 10 知られていたのであり,仮にこのようなコードリーダが実際に製品とし て存在しなかったとしても,そのような使用が知られていた以上,公知 センサ ICX084AL を用いた2次元コードリーダは知られていたのであっ て,仮想例ではない。 b 以上のとおり,ICX084AL を2次元バーコードリーダに用いることは本 15 件特許出願前に公知となっていたのであるから,ICX084AL を用いた2次 元バーコードリーダそれ自体もまた,本件特許出願前に公然知られ,ま たは公然実施された発明(特許法29条1項1号又は2号)となってい たものである(以下,当該発明を「公知発明1」という。)。 c 公知発明1と本件発明の対比について 20 本件発明と公知発明1を対比すると,両者の相違点は以下のとおりで ある。 (相違点1) 本件発明は,「複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光 を所定の読取位置に結像させる結像レンズ」と,「該光学的センサへの 25 前記反射光の通過を制限する絞りと」を備え,「前記読み取り対象から

(27)

27 の反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう, 前記絞りを配置することによって,前記光学的センサから射出瞳位置 までの距離を相対的に長く設定し」ているのに対して,公知発明1は, かかる構成を備えるとは限らない点。 (相違点2) 5 本件発明は,「前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの 出力に対する前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出 力の比が所定値以上となるように,前記射出瞳位置を設定して,露光 時間などの調整で,中心部においても周辺部においても読取が可能と なるようにしている」のに対し,公知発明1は,かかる構成を備えると 10 は限らない点。 (相違点3) 本件発明は,「前記光学的センサからの出力信号を増幅して,閾値に 基づいて2値化し,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を 検出し,検出結果を出力するカメラ部制御装置」を備えるのに対し,公 15 知発明1は,かかる構成を備えるとは限らない点。 d(a) 相違点1について 2次元バーコードリーダが,読取対象からの反射光を光学的センサ で読み取るために,絞りや複数のレンズを備えることは周知であった (乙7,乙8,乙9,乙25,乙34)。 20 また,受光素子ごとに集光レンズが設けられた光学的センサを光学 情報読取装置に使用する場合,光学的センサの中心部にある集光レン ズに比べて,周辺部にある集光レンズに入射する光束が斜めから入射 し,入射光束が受光素子に有効に入射しなくなる結果,周辺部の光量 が不足するという問題点は当業者に周知であり(乙6,乙7,乙10 25 ないし乙18),この問題点を解決する構成として,その射出瞳位置

(28)

28 を遠くすることは,かかる光学的センサを扱う当業者にとって技術常 識であった。そして,射出瞳位置を遠くするために,対象からの反射 光が絞りを通過した後でレンズに入射するように絞りを配置するこ とも周知慣用技術にほかならず(乙7,乙11ないし乙17),射出瞳 位置を結像面からなるべく離した構造として,全てのレンズの前面 5 (読取対象側)に絞りを配置した構成も周知の構成であった(乙11 ないし乙15)。なお,これらの構成を開示する文献の用途として,ビ デオカメラやスチルカメラが挙げられているが,集光レンズが設けら れた光学的センサを使用した場合の問題点は,ビデオカメラやスチル カメラに特有のものではなく,受光素子ごとに集光レンズが設けられ 10 た光学的センサを使用した装置一般にあてはまるものであった。さら に,2次元コードはビデオカメラやテレビカメラで読み取られること も周知であり(乙35ないし乙38),受光素子ごとに集光レンズが 設けられた光学的センサを使用した際の課題やその解決手段は,2次 元コードの読み取りを含む光学情報読取装置を扱う当業者にも広く 15 知られていた。 なお,原告は,乙6,乙7,乙10ないし乙18は,いずれも2次 元コードを用途とするものではないと主張するが,本件発明は2次元 コードリーダに限定されるものではなく,光学情報読取装置であり, 乙6,乙7等には光学情報読取装置が開示されている。 20 したがって,当業者は,ICX084AL を備えた2次元バーコードリーダ を設計するにあたり,当然に,周辺部の光量が不足するという課題を 認識し,射出瞳位置を遠くするために,対象からの反射光が絞りを通 過した後でレンズに入射するように絞りを配置する構成を採用し得 たといえる。つまり,ICX084AL を備えた2次元バーコードリーダに, 25 「複数のレンズで構成され,読み取り対象からの反射光を所定の読取

(29)

29 位置に結像させる結像レンズ」と,「該光学的センサへの前記反射光 の通過を制限する絞りと」を備え,「前記読み取り対象からの反射光 が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,前記絞り を配置する」という周知技術を組み合わせることは容易に想到し得る ものであった。 5 なお,「光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設 定し」の「相対的」の意味は不明確であり,それ自体が無効理由を構 成する。この点について原告は,「読み取り対象からの反射光が前記 絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう,絞りを配置」し ていないものと比べて,相対的に長いとの意味であると主張するよう 10 であり,「読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した後で前記 結像レンズに入射するよう,絞りを配置」するものであればかかる要 件も同時に充たすと主張するようである。かかる原告の主張を前提と すれば,ICX084AL を備えた二次元バーコードリーダに周知技術を組 み合わせた場合,「読み取り対象からの反射光が前記絞りを通過した 15 後で前記結像レンズに入射するよう,絞りを配置」することとなるた め,「光学的センサから射出瞳位置までの距離を相対的に長く設定」 (構成要件F)する構成も同時に有することとなる。 したがって,公知発明1に周知慣用技術を組み合わせることにより 相違点1に係る事項は容易に想到し得る。 20 (b) 相違点2について 「前記光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対す る前記光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が 所定値以上となる」の「所定値」の文言は不明であり,この点は無効 理由を構成する。 25 また,本件明細書には,このような出力比となるための射出瞳位置

(30)

30 の設定につき,絞りをレンズよりも読取対象側に配置する以上の説明 はない。 この点について,原告は,「読み取り対象からの反射光が前記絞り を通過した後で前記結像レンズに入射するよう,絞りを配置」してお けば,「光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対す 5 る光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定 値以上となるように,射出瞳位置を設定」されることとなると主張す る。仮に,かかる原告の主張に基づけば,ICX084AL を備えた2次元バ ーコードリーダに周知技術を組み合わせた場合,「読み取り対象から の反射光が前記絞りを通過した後で前記結像レンズに入射するよう, 10 絞りを配置」する構成となるため,「光学的センサの中心部に位置す る受光素子からの出力に対する光学的センサの周辺部に位置する受 光素子からの出力の比が所定値以上となるように,射出瞳位置を設定」 する構成となる(構成要件Gの一部)といえる。 なお,かかる構成要件が何らかの意味をもつとしても,光学情報読 15 取装置においては,光学的センサの周辺部の受光量が不足すると正し く情報を読み取れないことが指摘されており(乙26,乙27,乙3 2,乙39),周辺部の出力を中心部の出力に比べてある程度の値以 上となるように確保することは当業者が当然に心得る技術常識にす ぎないものであった。そのため,射出瞳位置の設定にあたり,「前記 20 光学的センサの中心部に位置する受光素子からの出力に対する前記 光学的センサの周辺部に位置する受光素子からの出力の比が所定値 以上となる」とすることは当業者にとって当然の事項であった。 同様に,光学的センサの中心部及び周辺部においても,適切な読み 取りがなされるように設計することは,光学的センサを使用した光学 25 情報読取装置を扱う当業者にとって当然に心得る技術常識にすぎな

(31)

31 いものであり(乙26,乙27,乙32,乙39),光学的センサに おいて露光時間を制御して適切な読み取りを行うことも周知慣用技 術にほかならないものであった(乙8,乙9,乙25,乙34)。 したがって,公知発明1に上記相違点2に係る事項を採用すること は,当業者であれば適宜に採用し得る周知慣用技術の付加にすぎない 5 ものであり,容易に想到し得るものである。 (c) 相違点3について CCD 等のイメージセンサを用いた場合において,CCD の出力を増幅 するプリアンプやAGCアンプを設けることは一般的に採用されて おり(乙8,乙25ないし乙31,乙33),2次元バーコードリー 10 ダにおいても CCD センサからの出力を増幅することは周知慣用技術 であった(乙8,乙25ないし乙31)。 また,光学情報読取装置において,読取対象が白・黒等の2値の情 報である場合に,画像を2値化することも一般的に採用されている事 項であり(乙9,乙24,乙26,乙28,乙30ないし乙32,乙 15 35),2次元コードも2値の情報であることから,2次元バーコー ドリーダにおいても,光学的センサの出力を2値化することは周知慣 用技術であった(乙9,乙24,乙26,乙28,乙30ないし乙3 2,乙35)。 なお,「所定の周波数成分比」との文言は不明確であり,それ自体 20 が本件特許の無効理由を構成する。しかしながら,仮に,乙24の図 4に示されるような位置決めマークを有する2次元コードを読み取 った際の特定の比率を検出することが「所定の周波数成分比の検出」 であるとしても,このような位置決めマークを有する2次元コードが 知られており(乙24,乙5,乙41),かかる2次元コードを読み 25 取る際には,2値化された信号の中から所定の周波数成分比を検出す

(32)

32 ることも公知であった(乙24,乙5)。 さらに,2次元バーコードリーダにおいて,信号処理回路を制御す るためにCPU等を設けることも本件特許出願前に一般的に採用さ れている周知慣用技術であった(乙5,乙9,乙24ないし乙27, 乙29)。 5 以上より,相違点3に係る事項は,公知発明1に,出力信号を増幅 し,2値化する周知技術,及び,2値化された信号の中から所定の周 波数成分の検出を行う制御回路を設ける公知技術を組み合わせるこ とにより容易に想到し得るものである。 e 以上のとおり,本件発明は,公知発明1(ICX084AL を使用した2次元 10 コードリーダの発明)に,周知慣用技術(乙8,乙11,乙25等)及 び乙5や乙24に記載の公知技術(又は周知技術)を組み合わせたもの にすぎず,これらに基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるか ら進歩性を欠き,無効とすべきものである。 【原告の主張】 15 a 乙55(「日経エレクトロニクス」の平成7年9月25日号)から読 み取ることができるのは,同雑誌にソニー社の CCD の広告があること, CCD のタイプ名に「ICX084AL」等があること,同 CCD の用途として,電 子スチルカメラ,PC画像入力,2次元バーコードリーダ,FA用カメ ラなどがあることであるが,同広告には,「ICX084AL」がマイクロレン 20 ズ付きであることの説明はない。 広告の CCD の用途の例示として2次元バーコードリーダが挙げられて いるものの,実際に広告に記載されたソニー社製 CCD が2次元コードリ ーダに用いられているわけではなく,「このような用途も考えられます」 ということが示されているだけである。 25 b 被告は,乙42,乙43,乙56などから,上記「ICX084AL」がマイ

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33 クロレンズ付きである旨主張する。しかし,乙42は,発行日も定かで なく,記載された CCD がマイクロレンズ付きであるという説明もない。 また,乙43はインターネット上の画面にすぎず,出願時の特許法では 刊行物に該当せず,しかも,米国内での販売を示しているだけである。 乙56は,「ICX084AL」を用いた製品の分解実験の事実実験公正証書で 5 あるが,仮に乙56のとおり分解実験がされたとしても,そもそも乙5 6の分解実験に使用された製品(乙56製品)の出所自体が不明である。 乙56製品は,現在,米国で販売されている製品(インターネットで購 入が可能である)であり,本件特許の出願前に日本国内で販売されたも のではないものと推測される。 10 そうすると,最近米国で販売された乙56製品に「ICX084AL」が用い られ,その CCD がマイクロレンズを備えたものであることを証明しても, 本件特許出願時に「ICX084AL」を用いた2次元コードリーダが,日本国 内で公知公用であったことの証明にはならない。 このほか,乙44,乙45についてみても,乙44は刊行物性も頒布 15 日も不明で天体望遠鏡の用途に用いられる例が開示されているだけで あり,乙45もいつのものか不明の製品の写真にすぎず,マイクロレン ズ付きであるかどうかも不明である。 以上によれば,日本国内における公知資料としては,乙55の広告が 「ソニー社製 CCD の考えられる用途の一例として2次元バーコードリー 20 ダを挙げている」だけであり,実際に「ICX084AL」を使用した2次元バ ーコードリーダが日本国内で知られていたとも,公然実施されていたと も認められない。 c 仮に,乙55を主引用例としても,前述のとおり,乙55には,「CCD を2次元バーコードリーダーに用いることもできる」ということが示さ 25 れているだけで,本件発明の課題などは全く明らかでない。

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34 被告は,2次元配置のマイクロレンズ付き CCD を用いた2次元コード リーダの存在を前提とし,それを「公知発明1」とした上で,本件発明 との一致点・相違点を認定し進歩性を論じているが,この「公知発明1」 は仮想のものにすぎない。 また,被告は,周辺部の光量不足は当業者に周知であったとも主張す 5 るが,引用する乙6,乙7,乙10ないし乙18は,いずれも2次元コ ードリーダを用途とするものではない。エリアセンサを使用した「2次 元コードリーダ」におけるセンサ周辺部の光量不足に起因する読み取り の課題とその解決手段は,本件発明の発明者が初めて見出したものであ る。 10 (イ) 2次元コードリーダ(IT4400)を主引用例とする進歩性欠如の有無(争 点2-2)について 【被告の主張】 a 本件特許出願前に,2次元コードリーダ IT4400 は,以下のとおり, 日本国内で販売され,公然に知られていた。 15 Welch Allyn 社(以下「ウェルチアレン社」という。)は,米国の会社 であり,1996年(平成8年)2月に,米国で,2次元コードを読み 取ることのできるコードリーダ Image Team 4400 (IT4400)の販売を開 始した(乙65の2,4,6)。IT4400 は,日本にも輸出され,本件特 許出願前,アイニックス株式会社(以下「アイニックス社」という。)を 20 含む数社が輸入し,アイニックス社はこれを日本の顧客に販売した(乙 65)。 アイニックス社は,平成9年7月から,ウェルチアレン社の2次元 コードリーダ IT4400 の販売を開始した。アイニックス社は,購入した IT4400 を自社で使用するほか,同月にキーエンス,ウェルキャット, 25 JBCC 等の顧客に販売した(乙65の5)。

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また,乙66は,Honeywell International Inc.(以下「ハネウェ ル社」という。)が入手した IT4400 の日本の顧客への販売を示すリス トである。同リストには,アイニックス社に,1997年(平成9年) 6月にモデル名 44001(4400LR-131)を6台販売したこと,同年7月に 同モデルを20台販売したことが示されているが,アイニックス社の 5 台帳(乙65の5)にも,同月7日付けで同モデル6台が入庫したこ と,同年8月7日付けで同モデル20台が入庫したことが記載され, 当該リスト(乙66)とアイニックス社の台帳(乙65の5)の記載 は合致している。 なお,原告の前身であるシステム機器株式会社は,本件特許出願前 10 に日本国内で IT4400 を購入していたのであるから,原告は,IT4400 が本件特許出願前に日本国内で販売されていたことを当然知ってい たと考えられる。 b IT4400 には,長距離読取に適した LR タイプと,高密度読取に適し た HD タイプの2種類があり(乙77の1),いずれもアイニックス社 15 により本件特許出願前に日本国内において販売されていた。 被告代理人が入手した IT4400(乙56,乙77の7)は LR タイプ であり,ハネウェル社が入手した IT4400(乙45,乙77の8),ゼ ブラ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社が入手した IT4400(甲24) は,アイニックス社が販売した製品と同一のものであった(乙77の 20 1)。 なお,これらの製品の製造年月は,その製品のラベルから,平成9 年5月(乙56,乙77の7),同年7月(乙77の8),同年7月(甲 24,乙77の8)である。甲25の製品は,平成10年7月とラベ ルに記載されているが,製造月が異なっても,同一の公知センサ(Sony 25 社製の ICX084AL)及び絞りを含むレンズ構成が採用されていることか

参照

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