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小児の 神 経 芽 腫

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(1)

小児がん

185 でんし冊子

小児の

し ん

け い

し ゅ

受診から診断、治療、長期フォローアップへの流れ

患者さんとご家族の明日のために 目 次

■基礎知識

1.はじめに 神経芽腫を理解するために .. 2

2.神経芽腫がんとは... 3

3.症状 ... 3

4.統計 ... 4

5.発生要因 ... 4

6.「小児の神経芽腫」参考文献 ... 4

■検査 1.小児の神経芽腫の検査 ... 5

2.検査の種類 ... 5

■治療 1.リスク分類と治療の選択 ... 7

2.手術(外科治療) ... 12

3.放射線治療 ... 14

4.化学療法(薬物療法) ... 14

5.転移・再発 ... 15

■療養 1.経過観察 ... 16

2.晩期合併症 ... 17

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■基礎知識

1.はじめに ― 神経芽腫を理解するために ―

神経芽腫は、交感神経節や副腎髄質などから発生することがわかっています(図 1)。

交感神経節は、脊椎(せきつい)に沿ってあり、頭蓋骨(ずがいこつ)の底部か ら尾骨まで縦に連なる神経線維の束(交感神経幹)の中に並んでいる交感神経の集 まりです。内臓の働きを調節したり、血管を収縮させたりする自律神経の 1 つです。

副腎髄質は、左右の腎臓の上にある副腎の中心部で、アドレナリンやノルアドレ ナリンという物質を分泌(ぶんぴ)して、体のストレス反応などの調節を行ってい ます。なお、副腎の表層部は副腎皮質といいます。

図1 神経芽腫の発生に関連する主な部位と臓器

(3)

■基礎知識

2.神経芽腫とは

神経芽腫は、小児がんの 1 つであり、体幹(手足を除いた体の軸となる部分)の 交感神経節や副腎髄質に多く発生します。約 65%が腹部でみられ、その半数が副腎 髄質であり、頸部(けいぶ)、胸部、骨盤部などからも発生します(図1)。腫瘍に は、悪性度の高いものや、自然に小さくなっていくもの(自然退縮)など、さまざ まな種類があります。

神経芽腫の患者さんの約 70%は診断時に転移がみられますが、1 歳半未満の乳児 では、進行期でも予後が良好であることが多く、一部の腫瘍では自然退縮すること も知られています。

3.症状

初期の段階では、ほとんどが無症状です。進行してくると、おなかが腫(は)れ て大きくなったり、おなかを触ったときに硬いしこりが触れてわかる場合もありま す。

幼児では骨・骨髄に転移のある進行例が多く、発熱、貧血、血小板減少、不機嫌、

歩かなくなる、眼瞼(がんけん:まぶた)の腫れや皮下出血など、転移した場所に よってさまざまな症状があらわれます。縦隔(じゅうかく:左右の肺に挟まれた場 所)から発生すると咳や息苦しさ、肩から腕の痛みなどがみられることがあります。

腫瘍が脊柱管の中に進展して、脊髄(せきずい)を圧迫する場合、下肢麻痺(ま ひ)を生じることもあります。また、特異的な症状として、眼球クローヌス/ミオ クローヌス症候群(OMS:opsoclonus-myoclonus syndrome)といって、目をき ょろきょろさせたり、自分の意志とは無関係な目の動きをしたりすることがありま す。

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■基礎知識

4.統計

神経芽腫は 0~4 歳で診断されることがほとんどであり、この年齢層でかかる割 合は 10 万人に約 2 人です(0 歳が最も多い)。小児がんの中では白血病、脳腫瘍、

リンパ腫に次いで多い腫瘍で、小児がん全体の 10%弱を占めます。

■基礎知識

5.発生要因

神経芽腫の発生要因は、多くの場合は不明であり、遺伝ではありません。ごくま れに、ある遺伝子の突然変異が親から子へと受け継がれることが原因の場合があり ます。しかし、この突然変異がなぜ起こるのかは、まだよくわかっていません。

この遺伝子突然変異を有する患者さんでは、神経芽腫が低年齢で発生することが 多く、副腎髄質に複数の腫瘍がみられる場合があります。

6.「小児の神経芽腫」参考文献

1) 日本小児血液・がん学会編.小児がん診療ガイドライン 2016 年版, 金原出版

2) JPLSG 長期フォローアップ委員会 長期フォローアップガイドライン作成ワーキンググループ 編. 小児がん治療後の長期フォローアップガイドライン 2013 年, 医薬ジャーナル社

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■検査

1.小児の神経芽腫の検査

視診と触診に加え、尿検査・血液検査が行われます。そして、腫瘍発生部位の確 認や病期分類のために超音波(エコー)検査や CT 検査、MRI 検査、遠隔転移巣の 診断のために MIBG シンチグラフィ、骨転移の確認のために X 線写真撮影、骨シン チグラフィなどの画像検査が行われます。骨髄転移の有無を調べるために、骨髄検 査も行われます。また、病理診断と分子生物学的診断のために組織生検(腫瘍の一 部を切り取ること)が行われます。

2.検査の種類

1)尿検査・血液検査

神経芽腫の腫瘍細胞は、神経伝達物質であるカテコールアミンを産生します。カ テコールアミンは、体内で代謝されると、バニリルマンデル酸(VMA)とホモバニ リン酸(HVA)となって尿中に排泄されるため、尿検査でこれらの値を調べます。

ただし、一部の神経芽腫では VMA、HVA の量が増えないことがあります。

ほかに血液中の腫瘍マーカーである神経特異エノラーゼ(NSE)、乳酸脱水素酵素

(LDH)、フェリチンなどが高値を示すこともあるため、血液検査が行われます。骨 髄に転移している場合は、貧血や血小板減少が認められることがあります。

2)画像検査

超音波(エコー)検査や CT 検査、MRI 検査は腫瘍発生部位を見極めることや病 期分類に役立ちます。また MIBG シンチグラフィは、ノルアドレナリンと似た性質 を持つメタヨードベンジルグアニジン(MIBG)という物質が腫瘍部位に集まること から、発生部位の確認だけでなく、遠隔転移巣の診断にも役立ちます。

ごくまれに、MIBG が腫瘍部位に集まらないこともありますが、その際には PET 検査が有用な場合もあります。骨転移の確認のために X 線写真撮影や骨シンチグラ フィなども行われます。

(6)

■検査

3)骨髄検査

診断された当初は、骨髄まで腫瘍細胞が浸潤(しんじゅん)しているかを調べる ために、左右の腸骨(腰の骨)から骨髄液を吸引して、顕微鏡による診断を行いま す。

4)病理診断

確定診断は、腫瘍摘出や生検により採取した腫瘍組織を顕微鏡で診断(病理診断)

して決定します。病理組織は、国際神経芽腫病理分類(INPC:International Neuroblastoma Pathology Classification、詳細後述:表3)に従って分類され、

神経芽腫が治癒する確率(予後)の判定に重要です。

(7)

■治療

1.リスク分類と治療の選択

1)リスク分類

神経芽腫の治療法は、リスク分類に従って選択されます。一般的には、国際神経 芽腫リスク分類(INRG リスク分類)が用いられます。この分類では、以下(1)~

(6)の組み合わせにより、超低リスク、低リスク、中間リスク、高リスクの 4 つ のリスクグループに決定されます(表1)。

(1)病期(腫瘍の進行の程度) (4)MYCN 遺伝子の増幅

(2)診断時年齢(月齢) (5)染色体異常

(3)病理分類(組織分類) (6)核 DNA 量(腫瘍細胞の染色体数)

表1 国際神経芽腫リスク分類(INRG リスク分類)

INRG 病期

診断時年齢

(月齢) INPC 組織分類 MYCN 増幅

染色体異常

(11q 欠失)

核 DNA 量

(染色体数)

治療前 リスクグループ 病期

L1/L2 神経節腫 成熟型;

神経節芽腫 混在型

超低リスク

病期 L1 神経節腫 成熟型;

神経節芽腫 混在型を除くすべて

なし

あり 高リスク

病期 L2

18 カ月 未満

神経節腫 成熟型;

神経節芽腫 混在型を除くすべて なし なし 低リスク

あり 中間リスク

18 カ月 以上

神経節芽腫 結節型 または 神経芽腫

分化型 なし なし 低リスク

あり

中間リスク 低分化型

または 未分化型

なし

あり 高リスク

病期 M

18 カ月

未満 なし 高 2 倍体 低リスク

2 倍体 中間リスク

あり

高リスク 18 カ月

以上

病期 MS 18 カ月

未満 なし なし 超低リスク

あり

高リスク

あり

Copyright 日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016 年版」(金原出版)より作成

(8)

■治療

表1に示した INRG リスク分類で検討される内容は以下の通りです。

(1)病期(腫瘍の進行の程度)

国際神経芽腫リスクグループ病期分類(INRG 病期分類、表2)によって、病期 L1、病期 L2、病期 M、病期 MS の 4 つに分類されます。原発腫瘍の広がり、画像 検査所見から推定する手術(外科治療)のリスク(IDRF※)の有無、骨・骨髄など の転移巣の有無から決められます。病期 MS は乳児に限定された分類です。

※IDRF(image-defined risk factor)とは、局所のみの神経芽腫について、画像検査所見から手 術のリスクを推定し、初期手術として摘出を行うか、生検のみで留めるのかを決める指標です。

表2 INRG 病期分類

病期 L1 遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRF を有さない 病期 L2 遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRF を有する 病期 M 遠隔転移を有する腫瘍(病期 MS を除く)

病期 MS 月齢 18 カ月未満で、皮膚、肝、骨髄にのみ転移を有する腫瘍 Copyright

日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016 年版」(金原出版)より作成

(2)診断時年齢(月齢)

一般的に、1 歳半未満の乳児期に発症した患者さんは比較的よく治りますが、1 歳半以上で発症した患者さんは治りにくく、強力な治療が必要となります。その ため、INRG リスク分類(表1)では 18 カ月未満と 18 カ月以上で分けられてい ます。

(3)病理分類(組織分類)

病理分類(組織分類)は、治療前に採取した腫瘍組織を顕微鏡で観察して行い ます。国際神経芽腫病理分類(INPC:International Neuroblastoma Pathology Classification、表3)に従って、主に 4 つのグループに分けられます。

(9)

■治療

表3 INPC 組織分類(Shimada System)

以下の 4 つのグループとそれぞれの亜分類に分ける(亜分類の記載は省略)

1.神経芽腫(シュワンストローマ減少型)、ストローマ減少型

2.神経節芽腫、混在型(シュワンストローマ豊富型)、ストローマ豊富混在型 3.神経節腫(シュワンストローマ優位型)

4.神経節芽腫、結節型

(シュワンストローマ豊富型/ストローマ優位型およびストローマ減少型の複合)

Copyright 日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016 年版」(金原出版)より作成

(4)遺伝子の増幅

腫瘍細胞が持つ特徴の中で、治りやすさ(予後)との関係が一番強い因子です。

腫瘍組織の遺伝子検査の結果、MYCN 遺伝子が増えている場合は腫瘍の悪性度が高 いといわれています。しかし、高リスクの神経芽腫に対する治療が強力になった現 在では、MYCN 遺伝子の増幅があるからといって、必ずしも、治りにくいというわ けではありません。

(5)染色体異常

腫瘍細胞の染色体の形を見ると、1 番染色体短腕(1p)や 11 番染色体長腕(11q)

が欠失している場合や、17 番染色体長腕(17q)が増えている場合は治りにくいこ とが明らかになってきました。INRG リスク分類(表1)では、11 番染色体長腕(11q)

欠失を目安として採用しています。

(6)核 DNA 量(腫瘍細胞の染色体数)

人間の体細胞は、23 本の染色体を 2 セット持つ 2 倍体です。神経芽腫の腫瘍細 胞は、2 倍体腫瘍と、染色体数がそれ以上存在する高 2 倍体腫瘍に分類されます。

進行期の患者さんでは 2 倍体腫瘍が多くみられ、治りにくくなると考えられていま す。

(10)

■治療

2)リスクグループによる治療の選択

図2は、神経芽腫に対する治療アルゴリズムを示したものです。INRG リスク分 類を用いて治りやすさに関連する判定(予後因子判定)を行い、リスクグループに 基づいて治療法が決められます。担当医と治療方針について話し合うときの参考に してください。

図2 神経芽腫の治療アルゴリズム

※分化誘導療法、免疫療法(抗 GD2 抗体)、大量 MIBG 治療は、わが国ではいずれも臨床試験など の研究段階の医療であり、保険の適用がされていません(2017 年 10 月現在)。

Copyright

日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016 年版」(金原出版)より作成

(11)

■治療

低リスク群では、手術(外科治療)で腫瘍をすべて摘出できた場合は、治療とし ては手術のみで、その後は経過観察を行います。手術で腫瘍をすべて摘出できない 場合には、低用量の化学療法が行われます。また、1 歳未満で発症した患者さんで は自然退縮(腫瘍が自然に小さくなっていく)することもあるため、無治療経過観 察が選択される場合もあります。

中間リスク群では、生検後に中等度の化学療法(薬物療法)を行ってから、原発 腫瘍を摘出するための手術を行う治療法が一般的ですが、標準治療は確立していま せん。

高リスク群では、腫瘍が周囲の臓器や血管を巻き込んでいることや、転移がある 場合が多くあります。治療としては、化学療法を先行し、周囲の臓器をできるだけ 温存した手術と局所の放射線治療、大量化学療法と自家造血幹細胞移植を行います。

多施設での臨床試験として治療を行うことも多く、経験のある医療機関で治療を行 う必要があります。

また、神経芽腫が再発した場合には、まだ推奨される治療法は確立していません。

臨床試験に基づく試験的治療を行うこともあります。

(12)

■治療

2.手術(外科治療)

1)手術の概要

手術はその目的から、大きく 2 つに分けられます。1 つは、神経芽腫の確定診断 とその悪性度判定のために、腫瘍の一部を切除して調べる手術(生検)で、もう 1 つは腫瘍(手術部分)を目で見ながら切除する手術(腫瘍摘出術)になります。

なお、神経芽腫は必ずしも手術で腫瘍すべてを摘出しなくてもよい場合があり、

リスクや病状に応じて適切な手術方針が立てられます。神経芽腫の集学的治療(化 学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた治療)に精通し ている医療機関で、神経芽腫における外科治療の経験が豊富な外科チームによる治 療を受けることが勧められます。

2)開腹または開胸による腫瘍摘出術

腹壁や胸壁を大きく切開して広げ、手術部分を目で見ながら腫瘍を摘出する手術 のことです。この摘出術は、腫瘍を切除するときに最も多く用いられる方法で、特 に化学療法(薬物療法)後の 2 回目の手術で腫瘍周囲のリンパ節などを一緒に切除 するときには、必ず用いられます。

また、側腹部あるいは背部から腹壁を切開する後腹膜経路の腫瘍摘出術もあり、

副腎に発生した早期の神経芽腫で、周囲臓器や血管などの巻き込みがなく、比較的 容易に腫瘍が摘出できると考えられるときなどに用いられることがあります。

3)内視鏡(腹腔鏡または胸腔鏡)による腫瘍摘出術

内視鏡処置用の手術器具を挿入するために、1cm 程度の穴(孔)を 3~4 カ所空 けて、その小さな穴を通して行う手術です。腫瘍の部位や大きさ、血管への浸潤(し んじゅん)の有無によって、実施が検討されることがあります。

(13)

■治療

4)乳児(1歳半未満)神経芽腫の手術(外科治療)

尿検査(VMA・HVA の上昇の検出)から神経芽腫が見つかった患者さんは、転移 のない早期である場合が多く、大部分は腫瘍自体の悪性度も高くありません。その ような場合の治療の主体は、手術で腫瘍を切除することになります。

摘出した腫瘍自体の悪性度が高くなければ、手術後に化学療法(薬物療法)や放 射線治療を追加する必要はありません。しかし、脊髄(せきずい)圧迫症状や肝臓 への浸潤に続いて起こる呼吸障害などがある場合には化学療法(薬物療法)を行い ます。

また、尿検査で発見された一部の腫瘍に対しては、手術や化学療法(薬物療法)

も行わず、自然退縮(腫瘍が自然に小さくなっていく)を期待して経過観察のみ(無 治療経過観察)を行う場合もあります。担当医からの十分な説明と親の理解、その 後の注意深い観察が必要となります。

無治療経過観察の場合を除いて生検を行い、腫瘍の悪性度を判定することが必要 です。

5)術後合併症

開腹手術の場合、術後に癒着(ゆちゃく)性腸閉塞の合併症を起こすことがあり ます。

また、頸部や縦隔(じゅうかく:左右の肺に挟まれた場所)の交感神経節から発 生した神経芽腫では、手術をした側の縮瞳(瞳孔の縮小した状態)、眼瞼(がんけん:

まぶた)の垂れ下がり、顔面の発汗の減少を主な特徴とするホルネル症候群がみら れることがあります。

さらに、副腎や腎臓近くの後腹膜から発生した腫瘍を摘出した場合、手術によっ て腎動脈(腎臓に血液を送る動脈)が傷つくことで腎萎縮を合併することがありま す。

(14)

■治療

3.放射線治療

進行期の神経芽腫(高リスク群)に対しては、手術後に微細に残っている腫瘍を なくすため、および骨転移部位への局所療法として、放射線治療を行います。

放射線を照射する範囲や放射線の量は、それまでの治療に対する反応や、手術の 結果などを基に決められます。多くの場合、治療期間は 2~3 週程度になります。

一般的には X 線による治療が行われていますが、陽子線という放射線を用いること もあります。また、病気が再発したときに、対症的な治療として、放射線治療を行 うこともあります。

4.化学療法(薬物療法)

INRG リスク分類(表1)によって分けられた低リスク群(超低リスクを含む)、

中間リスク群、高リスク群ごとに、次のような化学療法が行われます。

1)低リスク群(超低リスクを含む)

低リスク群でも、手術で腫瘍をすべて摘出できない患者さんには低用量の化学療 法が行われます。

手術で腫瘍をすべて摘出できない一部の患者さんや、脊髄(せきずい)圧迫症状、

肝臓への浸潤による呼吸障害などがある患者さんについては、ビンクリスチン、シ クロホスファミドなどを用いた低用量の化学療法を短期間行い、腫瘍を縮小させて から手術により摘出を試みる場合があります。

2)中間リスク群

中間リスク群に対する標準治療は確立していませんが、生検後に中等度の化学療 法を実施し、腫瘍を縮小させてから、原発腫瘍の摘出術を行う治療法が一般的に行 われています。

(15)

■治療

3)高リスク群

化学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた集学的治療 が行われます。

高リスク群では、寛解導入療法(大量化学療法を行うまでの化学療法)として、

一般的にシスプラチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビン クリスチンなどからなる多剤併用療法が行われます。その後、自家造血幹細胞移植

(あらかじめ保存しておいた自分の造血幹細胞を移植する方法)を併用した大量化 学療法が検討されます。腫瘍摘出術は、大量化学療法の前ないし後で行います。ま た、放射線治療は、一般的に大量 化学療法後に行います。

海外では大量化学療法後の治療として、分化誘導療法や免疫療法(抗 GD2 抗体)、

併用療法として大量 MIBG 治療などが行われていますが、わが国ではいずれも研究 段階であり、保険の適用がされていません(2017 年 10 月現在)。

5.転移・再発

転移とは、腫瘍細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そ こで成長することをいいます。再発とは、治療の効果により腫瘍がなくなった後、

再び腫瘍が発生することをいいます。

原発部位の再発だけでなく、骨などの転移巣として再発することもあります。再 発した場合に推奨される特定の治療法は定まっていませんが、骨に転移した場合は 放射線治療を行います。

再発は、それぞれの患者さんで状態が異なりますので、症状や体調あるいは患者 さんやご家族の希望に応じて治療やケアの方針を決めていきます。

診断時に低リスク群または中間リスク群であった場合は、再発の状況によって治 療法はさまざまですが、それに見合った治療を行うことにより、ある程度良好な予 後が期待されます。一方、診断時に高リスク群であった場合の再発では、確立した 救援療法はありませんが、個別の状況に応じた治療法が検討されます。

(16)

■療養

1.経過観察

神経芽腫の治療には、低リスク群で無治療経過観察の患者さんや、高リスク群で 化学療法(薬物療法)、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた強 力な集学的治療を行う患者さんなど、患者さんごとにいろいろな治療が行われてい ますので、それぞれの患者さんに応じた経過観察が必要になります。

治療終了後も体調の変化や晩期合併症の有無、再発していないかの確認のため、

定期的に通院して経過観察を行いますが、治療終了後の経過が長くなるにつれて通 院の間隔は延びていくのが一般的です。治療終了 5 年以降は 1 年に 1 回程度の通院 となることが多いようです。

(17)

■療養

2.晩期合併症

晩期合併症は、患者さんの成長や、治療終了後の時間の経過に伴って治療の影響 によって起こる症状のことです。どのような晩期合併症が出現するかは、病気の種 類、受けた治療、治療を受けた年齢などに関連し、症状の程度も異なります。

神経芽腫は、比較的低年齢の患者さんが多く、進行期の神経芽腫(高リスク群)

では放射線治療や大量化学療法が行われるため、晩期合併症には特に注意が必要と 考えられます。

化学療法(薬物療法)としてシスプラチンを用いることが多く、シスプラチン特 有の晩期合併症である腎障害、高音域聴覚障害(鈴虫の鳴き声など高い音が聞きづ らくなること)などに注意が必要です。シクロホスファミドは、性腺障害の大きな 原因となります。また、高リスク群では、大量化学療法を行うため、成長障害や歯 牙の発育障害などにも注意が必要です。二次がん(神経芽腫とは別の種類のがんや 白血病を生じること)の発症にも、注意しなければなりません。

さらに、放射線治療では、原発部位や転移部位に対して 10Gy(グレイ:放射線 の吸収線量の単位)以上の照射を行った場合に、その部位の臓器の形態や機能につ いての経過観察が必要になります。

また、副腎髄質の原発腫瘍を手術で摘出した場合、手術によって腎動脈(腎臓に 血液を送る動脈)が傷つくことで、遅れて腎動脈に狭窄(きょうさく)が起こり、

腎萎縮を合併することがあります。その場合、高血圧や腎機能障害を併発するため、

注意が必要です。腎臓の機能が低下している場合、腎臓で産生されるエリスロポエ チン(赤血球をつくるのを助けるホルモン)の分泌(ぶんぴ)が減少し、貧血とな ることがあります。

詳しい情報は「小児がん情報サービス」をご覧 ください。

●協力者(五十音順): 松本 公一(国立成育医療研究センター小児がんセンター)

米田 光宏(大阪市立総合医療センター小児医療センター 小児外科)

国立がん研究センターがん対策情報センター 患者・市民パネル

2017 年 11 月作成(185E-201802-1)

参照

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