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女子大学生の中年期女性嫌悪の研究

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(1)

女子大学生の中年期女性嫌悪の研究

著者 上西 さよ子

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 5

ページ 81‑90

発行年 2005

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010026/

(2)

〔東京家政大学 臨床相談センター紀要 第5集 p.81〜90,2005〕

女子大学生の中年期女性嫌悪の研究

上 西 さよ子

      AStudy of

Dislike of Middle Aged Women by Female University Students

Sayoko UENISHI

要約

 現在まで、大学生の中年期嫌悪に関する研究はみあたらない。

そこで、本研究では中年期嫌悪尺度を作成し、大学生に見いだされる疾患の早期発見との関連を試みた。作成し た中年期嫌悪尺度の因子構成は、因子1「若さ喪失恐怖」、因子2P性役割への思い込み」の2因子から成った。中 年期嫌悪が過度に高い学生は若さ喪失恐怖と性役割への思い込みが強いといえ、過剰適応や不安との関連が考え られた。そこで、本研究では中年期嫌悪の質問紙を実施する際、摂食障害の傾向と不安傾向の実施を試みたとこ ろ、中年期嫌悪尺度では、女子学生と男子学生に有意な差が見られ、女子学生は中年期嫌悪と摂食障害、不安と の間に関連が見られた。一方、男子学生も摂食障害との間に関連が見られた。

 過度な中年期嫌悪は青年期の大学生の心理的健康と関連があるのではないかと思われる。

キーワード:中年期嫌悪、若さ喪失恐怖、性役割への思い込み

1.はじめに

 大学生と話をしていると、中年期に対してあま りよいイメージを抱いていないことが分かる。大 学生のこのネガティブなイメージはよくみられる

もので、大なり小なり青年期の中年期嫌悪はごく 普通にあると思われるが、これまで心理学で研究 テーマとされることはほとんど無かった。

 大学生の中年イメージにおける中年期嫌悪の中 核には「若さ喪失恐怖」がある。「若さ」を失いた くない気持ちと、「若さ」を失ってしまう不安があ り、一方で「あんな中年になりたくない」という 思いがあると思われる。

 また、自分が信じる役割への思い込みが強く、

その役割に過剰に適応しようとするあまり自分ら しさを抑圧したり、役割のイメージと違う他者に 対して嫌悪感を持つのではないかと思われる。

 いくっかの論文で、中年期前の女性による中年

期イメージとして、そのネガティブな面について 述べられたもの1)2)があるが、それらは本研究で得

られたイメージとほぼ一致している。

 中年期のイメージは将来自らがなりうる可能性 のある姿でもあるのだが、過度にネガティブな中 年期に対する嫌悪は、将来に対して明るい展望を 持ちにくいと同時に将来に対する不安の現われで

もあると思われる。

 現実に理想とするような中年像があればそれは 将来への見通しや、希望となるのだろうが、ネガ ティブなイメージの中年期の人たちを多く目にす ればするほど、また、自分の理想と違いが大きい ほど嫌悪や不安は高まると思われる。

 中年期嫌悪は主に青年期に多く見られるので、

嫌悪自体何ら問題はないとおもわれる。しかし、

それが過度になればどうだろうか。いずれは失っ てしまう「若さ」に執着し、自己の価値として重

(3)

視したとき、「若さ」や「美」を中心に自分を評価 することになる。

 結果として、自己の基盤を外面的なものや他か らの評価におくことになる。それでは安定した一 貫性のある自己が築けなくなり、ささいなことが

きっかけで動揺を来たしやすいと思われる。

 社会から女性に期待されるメッセージは「美」

や「若さ」であり、男性に求められるのは「経済 力」や「社会的地位」であることは多々あるが、

中年期嫌悪の中核が「若さ喪失恐怖」にあること からすると、中年期嫌悪は男性より女性図1>に強

くあらわれると思われる。

 また、大学生男女による、中年期のイメージに っいては「太る」ことがあげられている。「中年期

=太る」ということも嫌悪の対象になっているこ とが考えられる。特に青年期においては「太る」

ことを忌避するあまり摂食障害となることもある。

摂食障害の原因の一っとして、「痩せた体型」を 賞賛する社会的圧力があるとする論文がある。3)

特に女性にとって「若さ」と「美」は対をなすもの であることを考えると、「若さ喪失恐怖」が中核 にある中年期嫌悪はこの点から摂食障害との関連 が考えられる。

 最近では体型やダイエットはもはや若い女性だ けの問題ではなく男性や中年期女性にまで及んで いる4)5)ことや、「若さ」に対する「老化」への不安 は男女を問わず見られることを考えるときより広 がりをもったものとしてその関連が考えられる。

 本研究では中年期嫌悪の質問紙を実施する際、

摂食障害(EAT。26)および不安(STAI〈A−trait>)

の質問紙を実施した。

これらの間に何らかの関連が得られたとき、青年 期の中年期嫌悪という現象も、女性は「若く」「美 しい」ほうがよいという社会的圧力によるストレ スと考えることもできるのではないだろうか。

III.対象と方法

1.予備調査:2001年11月、埼玉県内のT女子 大学21名(平均年齢21歳)及び神奈川県内のN 大学男性13名(平均年齢19歳)にそれぞれ同性 の中年期に対する「イメージ」「嫌なところ」「親 と中年期イメージは同じかどうか」「理想の中年 期像とは」「女(男)が年をとることにっいて」

「若い女性と中年期女性では社会でどちらがとく か」「おばさん(おじさん)みたいといわれたとき どんな気持ちになるか」など自由記述により回答 を求めた。その結果と関連論文6)等を参考に、中 年期嫌悪尺度を作成した。

2.本調査:2002年5月、埼玉県内のT大学文学 部教育学科1,2年の男女81名(男性34名、女性 47名、平均年齢19.1歳)に、心理学の講義時間 中に質問紙(①中年期嫌悪、②EAT−26、③STAI

(A−trait))を実施した。

皿.結果

1.予備調査における中年期イメージについては ほとんどがネガティブなものである。主なものを 男女別にまとめると以下のようになる。

・男性:髪の毛が薄くなる(ハゲる)、太る、腹が     出る、油、汗、臭い、酒、タバコ、リス     トラ、ストレス、嫌らしい、セクハラ、

    のけ者、影が薄い、疲れている、暗い、

    運動不足、背広(スーツ)、サラリーマン、

    オヤジ

・女性:中年太り、更年期障害、白髪、シワ、化     粧が濃い、派手、ショートカットにくる     くるパーマ、うるさい(おしゃべり、声     が大きい、噂好き)、集団行動、図々し     い(人目を気にしない、女を捨ててる、

    恥じらいがない)、諦めている、疲れて

(4)

女子大生の中年期女性嫌悪

㊥(憂㊧

自分らしさ抑圧 ← 過剰適応

かわいい 静かな おしゃれな 優雅な 繊細な 愛嬌のある 献身的な 色気のある 従順

←誕}→(冷無視))

ネガティブな行動 → 俗化鱒

老けた うるさい 人目を気にしない 生活じみている 恥じらいがない 諦めている 疲れている 女を捨てている 図々しい

゜ ここでの母性は「出産能力」を指す

鱒 世間体や世俗的な価値にしがみついて妥協したり.自分が本心で価値があると思う方向へ進めず、世間体や名誉などより  世俗的な価値観に流されること。 岡本悠子 2002 「中年期女性における自己発見」 教育と医学 VoL50(4)

       図1.青年期女性の中年期女性嫌悪 いる、元気、たくましい、生活じみてい

る、主婦、母親

2.本調査

①中年嫌悪尺度23項目について主因子法、バリ マックス回転で2因子(因子1:若さ喪失恐怖、

因子2:性役割への思い込み)を抽出した。共通 性の低い1項目及び2因子に負荷の高い4項目を 削除し18項目とした。18項目の信頼性係数は、

因子1(12項目:若さ喪失恐怖)はα=.83、因子 2(6項目:性役割への思い込み)はα=.69であっ

た。表D

(5)

②中年期嫌悪の2因子にっいて因子別に男女合計 点をt検定した結果、因子1(若さ喪失恐怖)に

有意な差(t−2.213,p−,030)がみられた。表2)

③中年期嫌悪の2因子とEAT−26とSTAI(A−Trait)

の相関を調べた結果、因子1とEAT−26、 STAI

(A−Trait)に相関が見られた。また、男女別に因 子1、2とEAT−26、 STAI(A−Trait)の相関を調 べた結果、女性は因子1と因子2、EAT−26、

STAI(A−Trait)に、また、因子2とEAT−26に 相関が見られ、男性は因子1とEAT−26に相関が

見られた。表3)

④中年期嫌悪の各因子得点から高・中・低群に分 け、男女別にEAT−26とSTAI(A−Trait)にっい て高群と低群でt検定した。女性は因子1におい てEAT−26、 STAI(A−Trait)とも有意な差(EA T−26:t==2.276,p=.030、 STAI(A−Trait):t=

2.757,p=.010)がみられた。表4)

⑤EAT−26とSTAI(A−Trait)の男女別t検定で

は、EAT−26:t == L391、 p;.168、 STAI(A−Trait):

t=1.436、p−.155 となり、有意な差は見られな かった。

⑥中年期に対する「気持ち」:「おばさん(おじさ ん)みたい」といわれたときどんな気持ちになる か4件法(1.すごく嫌だ、2.嫌だ、3.何とも思 わない、4.うれしい)で尋ねたところ、「1.すご く嫌だ」と「2.嫌だ」の合計は女性89%、男性 65%であった。

⑦父親・母親イメージ:「お母さん」(「お父さん」)

と中年期女性(男性)イメージについて、「同じ」

か「違う」か尋ねたところ「同じ」と答えたのは女 性:21%、男性:50%であった。

⑧EAT−26について、ガーナーら(1979)による原 版に基づき「いつも」を3点、「非常にひんぱん」

を2点、「しばしば」を1点として、それ以下を0 点として採点し、基準値20点以上の得点を示し たものを問題食行動として採点した結果、女性4

人(8.5%)、男性5人(14.7%)であった。

IV。考察

 予備調査での大学生の中年イメージはネガティ ブなものが多いが、実際に中年期の人たちはその 様なネガティブな状況なのだろうか。そうだとす ればそれは何故なのか。中年期とはどのような時 表1.中年期嫌悪因子分析

       項目 因子   になるのは恐ろしい

若さを失うのは嫌だ 年をとるのは恐怖だ 中年になるのは嫌だ

中年は女(男)のピークを過ぎている

女性(男性)にとって若いということは大きな魅力だ 年をとるごとに喪失感があり不安になる

中年になったときの方が充実していると思う 年をとることでよいことは一つもない 人の評価がとても気になる

「おばさん」(「おじさん」)は女(男)らしくない すぐ人に頼ることを考えてしまう

1 0.827 0.779 0.726 0.712 0.692 0.620 0.600

−0.600 0.558 0.449 0.418 0.377

2 0」97 0.190 0.038 0.172 0.106 0.268 0.151 0.244

−O.202 0.023 0.278

−O.045

共通性

0.723 0.643 0.529 0.537 0.490 0.457 0.383 0.419 0.352 0.202 0.252 0.144

 =かb女性男性bしさを・めb ている 中年になったときの方が収入が上がっていると思う 中年になったときの方が社会的地位が上がっていると思う プロポーズは男性から言う

男性(女性)の前では女性(男性)の前より女性(男性)らしくなる 女性(男性)が女性(男性)らしくないのは嫌だ

0.128

−0.210

−0.187 0.157 0.242 0.110

0.590 0.583 0.580 0.523 0.458 0.443

0.365 0.384 0.371 0.299 0.260 0.209

 与寄与率(%)

累積寄与率(%)

5.107 28.370 28.370

1.920 10,666 39.036 N=81 信頼性係数因子1:α・=.83、因子2:α・=.69

(6)

女子大生の中年期女性嫌悪

表2.中年期嫌悪因子別男女鹸定

N 平均値 標準偏差  t値 自由度 有意確率(両側)

因子1 男性     女性

34.000     29.912 47.000    33.489

8.415     −・2.213 6,143

79.0000.030*

因子2  男性     女性

34.000    14.206 47,000    14,894

2.717    −1.205    79.000 2,398

0.232

*P〈.05

表3.中年期嫌悪因子1.因子2とEAT−26、

  STAI(A−Trait)の相関 男女計  因子i  因子2

    子子因因

EAT STAl

    EAT   STAl

O.179     0.366**    0,253**

0.109     0.001     0.022     0.183     −0,155     0.103     0.167          0.062          0.584

N;81

性子女因

2

因子1  因子2

EAT STAI

     EAT   STAI

O.309*     0.344*     0.345*

O.034     0.018      0.017     0.406**    −O.031     0.005     0.834         −0.001          0.994

N=47

性子男因

因子1  因子2

EAT STAI

0.041 0.816

EAT   STAl

O.345*     0.121 0.046      0,496

−O.040    −0306 0.821      0.079

    0.078     0.660

N=34

*p<.05 **p<、Ol

期なのかにっいてまず考えていきたい。

 中年期がどの様な時期なのかといえば、一般に 中年期は、男女を問わず、身体的にも、社会的、

心理的にも、また家族発達の側面から見ても、変 化の多い時期である。身体的には、体力の衰えを 感じ始め、職業的には、自分の能力や地位の拡大 に限界が見え始めるときであり、若い頃に設定し

た自らの「人生の夢」とその達成度にっいて、改 あて問い直されるときでもある。多くの家庭では、

子供たちは思春期・青年期に達し、自立しようと している。中年期の入り口において体験されるこ の様な変化、っまり体力の衰えや老いの自覚、仕 事における限界感の認識、親役割の喪失などは、

自己の有限性の自覚であり、「アイデンティティ 危機」の時でもある。

 現代の中年において特筆すべき事は、企業で働 く中年世代の多くがいわゆる「会社人間」の世代 だと評されることである。また、背景として日本 古来の大家族制が急速に消滅し、核家族が主流と なり、兄弟の少ない家庭に育ち、テレビの中で成 長した最初の日本人であり、電話やマイカーが当 たり前のものとなり、自己所有の住宅があって当 然と思った世代でもある。

 大学生がイメージする中年期男性は、サラリー マンで、スーッには酒やタバコ、整髪料のにおい がしみ込んでいて、親世代の父親とは対照的に家 族の中で影が薄く、リストラやセクハラ問題に悩 んでいる。そこには、現代の中年期男性の姿が浮 かび上がっている。

 中年期女性にっいては、女子大学生の中年期イ メージが主に主婦のイメージであるため、専業主 婦を中心に述べてみたい。

 中年期女性におけるアイデンティティ危機の原 因と考えられるのが、第一に「主婦であること」

に対する評価のあいまいさである。家事は、無償・

(7)

表4.中年期嫌悪各因子得点別高・中・低群分けによる、EAT−26、 STAI(A−Trait)高・低群t検定

因子1(女性)  N 平均値 標準偏差  t値 EAT−26 高低 群群 農U︻e 64.375    14.137

53.200     13.132

2.276  29

自由度 有意確率(両側)

       0.030*

STAI(A−Trait:局君羊

      低群

ハhU︻.V

56.500 48.000

8.438      2.757     29 8.726

0.010*

因子2(女性)  N 平均値 標準偏差  t値 EAT−26  高群

      低群

STAI(A−Trait)高群

      低群

aU仁U農U直U 63.250 53.813 52.000 52.938

18.887      1.675 12.287

7.607    −0.275 11.328

自由度 有意確率(両側)

30

30

0.104

0.785

因子1(男性)  N 平均値 標準偏差  t値

EAT−26      局君羊

      低群

STAI(A−Trait)高群

      低群

11111111 つ︾rO7ーΩ﹂7ーに﹂り乙nUり乙47−0σ0戸◎00σ

64︻U4

17.528     2,009 14.604

11.217     0.165 12.054

自由度 有意確率(両側)

20

20

0.058

0.871

因子2(男性)  N 平均値 標準偏差  t値 EAT−26  局群

      低群

STAI(A−trait)高群

      低群

1011

1011

54.500 55.727 46.400 52.818

自由度 有意確率(両側)

16.528     −O,153     19 19.900

8.540    −1.213     19 14.586

0.880

0.240

   *P<.05

無限の労働である上に、家事労働に与えられるの は、経済的報酬ではなく、子どもや夫の愛情や感 謝という私的で心理的な報酬のみである。しかも、

それは常に表現されるとは限らない。むしろ、当 たり前のこととして表現されないことの方が多い。

第二は専業主婦の多くに見られる、アイデンティ ティの委譲ともいえる「他者を通じて生きる」態 度である。「人のために何かをしてやれるか」だけ を評価の基準にしていると、その人が自分を必要 としなくなったとき、評価の基準は崩れてしまう。

「世話」役割は、私たちの日常生活を維持してい くために不可欠なものでありながら、残念なこと に今日の社会ではあまり重要視されて来なかった

のではないだろうか。7}

 自分を生かすより他人を通じて生きる立場は

「自己犠牲」のひずみとして、自分の犠牲に感謝 しない相手への攻撃、恨みなどになりやすく、欲 求不満に陥りやすい。8)

 このように、中年期女性の多くは家事や介護な どの大部分を引き受け不安定な評価のもとで危機 に陥りやすいことが考えられる。

 その一方で、教育や家計にっいて、妻がかなり の権限を握っている明白な性別役割分業の実体が ある。家庭での夫の影は薄く夫が主導権を発揮し なくても問題がない状況、いわゆる夫不在の家庭 が多くなっている。女性たちは、夫を家庭内で無

(8)

女子大生の中年期女性嫌悪

力化しておくことで、自らの権力を保持し、夫は 家庭責任を軽減されて好きなだけ企業戦士でいる

ことが出来た。9)

 一見するとお互いに好都合な状況ではあるが、

相互のコミュニケーション不足をまねき中年期危 機のおおきな原因にもなっていると思われる。

 女子大学生がイメージする中年期の主婦たちの 状況としては以上のようなことであるが、女子大 学生の目に映る多くの中年期女性は、自己を内省 したり問い直したりすることなく、「本当の自分 とは何か」という内なる声に耳を傾けることもな く、無力感、空虚感、怒りゃ、諦めをネガティブ な行動で表出しているにすぎないようだ。青年期 女性から見ると「女を捨てている」ようにみえた り、「居直っている」ように見えたり、「恥じらい を無くしている」ように見えている。

 男子大学生は女子大学生と同じように、中年期 に対して良いイメージはないものの、中年期男性 を「男らしくない」とは思っていない。これは、

今日の男性の「会社人間」としてのライフコース を考えれば、会社人間であることはむしろ男性像 そのものであるから、「ああなりたくないな」とい う思いはあるものの「男らしくない」とは思えな いのだと思われる。青年期の若者から見れば、疲 れてちょっと不潔感はあるものの、サラリーマン の姿は現代の男性像そのものである。

 青年期による中年期イメージは、中年期の背景 をよく表していると思われる。

 男性と比べ、女性の「若さ喪失恐怖」が高いこ とについて、社会的、文化的な 女らしさ が圧 倒的に「美と若さ」と母性に集約される事が多い ことによると思われる。そうした視点で考えると

「女性の中年」とはこれらが要求される年齢以降 のことになり、社会の中で非常に生きにくい。中 年期女性は「若さも美もない」という、社会から

の感情から逃げられないでいる状況があると思わ

れる。10)

 青年期では評価の対象となった「美と若さ」は、

中年期では存在そのものの否定になってしまう危 険さえある。「若い女性」から「おばさん」への変 化はおおきく、そこに「若さ喪失恐怖」があると 思われる。

 予備調査における、「若い女性」と「中年期女性」

とでは、社会でどちらが得だと思いますか」とい う問いに対して、約81%(21人中17人)が「若 い女性」と答え、理由として、「なんだかんだ言っ ても男性社会であり、男性は若い女性が好きだか

ら」とか「若い女性」は「未来があって可能性があ る」「若くてキレイだから」というものだった。

残りの19%(21人中4人)は「どちらとも言えな い」(2人)、「中年女性は人生の先輩だから、尊敬 するべき」(1人)、「図々しいから」(1人)というも のであった。回答者である若い女性は、「社会は 男性優位社会であり、男性は、そして社会は若い 女性が好きである」という事実を実感している。

その事は取りも直さず若さがなくなったときの状 況についてある程度予想出来るということである。

 女性は男性と比較して、「若い1ということで社 会的に優遇される経験が多いと思われる。

 「青年期女子は、相手の反応を自己を測る物差 しとして使い、自己の行動や外観にっいて他者の 評価を頼りに自己を見っめている。特にこの時期 の女子の大きな関心事は、男子に注目してもらえ るかどうかで、男子の目にとまり肯定的に見ても らいたいと願っている」(Myra&David,1994/

1996)。「異性からどう見られているかという意識 の強さが過剰な女性らしさになる」。 1)と述べられ ていている。

 現代において、過剰な女性らしさの追求は、摂 食障害の一因と考えられている。その根底には脆

(9)

弱な自我機能が存在し(中村、1997)、自信がなく、

周囲の人の言動を全て自己の評価に結びっけてし まう、としている。

 社会的な評価基準に自分を適応させることで評 価を得ようとすることは一般的によくみられる。

しかし、過剰に適応すると、自分らしさがなくな り不安定になると思われる。

 社会が期待する女性らしさは、意欲的に生きた いと思うほど「自分らしく生きること」と「女性 らしく生きること」の間にギャップを感じる事が 多い。「自分らしさ」を強く志向するほど、「信念 を持った」「行動力のある」「意志の強い」「決断 力のある」といった「男性らしさ」の特性をもっ ようになり、女性としての「自分らしさ」の形成 を困難にする。

 「自分らしく生きること」と「女性らしく生きる こと」の間にある溝を何とか自分なりに埋めよう と模索するため男性と比べ葛藤が多い。12)

 結果的に、「女性らしさ」を意識しすぎて過剰適 応していると「自分らしく」生きられなくなる。

しかし、「女性としての自分」を認あずに「自分ら しさ」の確立は困難であり、大人としての自分ら しい生き方を選択することは難しい。

 中年期嫌悪は社会が求める女性らしさに関連し ている。社会の求める「女性らしさ」に過剰適応 することで摂食障害傾向が高まるとともに、「女 性らしさ」と「自分らしさ」が葛藤することや、

他者からの評価を気にするあまり「自分らしさ」

がなくなり不安定になることが考えられる。

 近年、男性の場合にも男性らしさの呪縛を指摘 する声があり、社会が期待する男性らしさに違和 感をもったり、必要以上に男性らしさにとらわれ て不適応を起こす男性もいる。今回の調査でも、

EAT−26で男女に有意な差が見られなかった事は 驚きである。その中で男性の中年期嫌悪因子1と

EAT.26に相関が見られた事は、男女差の縮小を 示す1つと捉えられるのではないかと思われる。

女性にとっても男性にとっても、社会の要請する

「女性らしさ」や「男性らしさ」を「自分らしさ」

を損なうことなくいかに取り入れるかが「自分」

を形成する上で重要なのではないか。

 男性と比べると、女性にとって「若さ」が重要 なものとなっていると考えられるが、重要であれ ばあるほど失う事に対して不安が伴う。結果とし て、女性の場合、因子1「若さ喪失恐怖」が因子2

「役割への思い込み」やEAT−26、 STAI(A−trait)

と相関が見られたと考えられる。さらに、中年期 嫌悪得点は女性の方が有意に高いことからして、

中年期嫌悪尺度から過剰適応やアイデンティティ に関してより情報が得られるのは女性であると思 われる。今後の社会環境の変化、男女平等意識の 高まりや経済変動に伴う雇用の変化などから青年 期の中年期イメージにも変化があると考えられる。

その時は女性にとってもあまり有効な結果が得ら れないかも知れないし、逆に男性からも有効な結 果が得られるようになるかも知れない。

 中年期嫌悪尺度にっいてその最大の利点を挙げ るならば、中年期嫌悪が一般的であるため、自分 の気持ちをかくす必要がない質問紙であると同時 に、心理的にどの部分を測定しているのかについ て被験者に取って分かりずらいため、より被験者 の気持ちに近い形でデータが収集できると思われ る点である。

 社会全体としては、青年期から見て魅力的な中 年期がイメージ出来にくい社会であるようだ。中 年期が魅力的ではない社会とは、どんな社会なの だろうか。

 医学、経済の進歩に伴い、私たちは、世界一の 長寿国となったが、加齢に対するイメージは貧し い国となってしまったのではないだうかと懸念さ

(10)

女子大生の中年期女性嫌悪

れる。

V.今後の課題

 調査の被験者数が81名であり、その数が少な いことがあげられる。従って、結果に偏りが出て いることが考えられる。今後は被験者数を多くす るとともに、中年期のイメージが各年代において 違いがあることが予想されるので、男女別、年代 別にデータを集め内容にっいても比較検討してい

くことが必要である。

 また、調査対象が一大学の学生に限定されてい たので、今回の結果を一般化することは避けなけ ればならない。さらに、中年期像自体、変化しな い一定のイメージ像であるとは考えにくく、環境 や時代の変化により改善がなされることも示唆さ

れる。

 中年期嫌悪にっいては先行研究がないため、本 研究も手探り状態であった。「自分らしさ」や「女 性らしさ」「男性らしさ」などについて、さらなる 検討が必要だと思われる。

VI.付記

 本論文は修士論文に加筆、修正したものである。

 本研究をすすめるにあたり、ご協力いただきま した大学生の方々に心より感謝申し上げます。デー タ収集の折には平澤尚孝助教授のお力添えをいた だきましたこと、心より感謝申し上げます。

 また、折にふれて様々なアドバイスをください ました諸先生方をはじめご指導くださいました近 喰ふじ子教授、吉澤一弥助教授に大変お世話なり 心より感謝申し上げます。

引用文献・参考文献

1)村山尚子 1996 「中年期女性の夢と現実」

  教育と医学 Vol.44(10)

2)吉村薫 1997 「美の基準と中年期」 女性ライフ   サイクル研究 Vol.7

3)長谷川洋子、橋本宰、佐藤豪 1999 「対人関係に   おける基本的構えが摂食障害傾向及びボディ・イ   メージのゆがみに与える影響」 健康心理学研究   Vo1.12(2) p.13

4)後藤美代子、鈴木道子、佐藤玲子、菅野美千代   2002 「女子学生と中年期女性の体型認識」と「ダ   イエット」に関する実体と意識調査」 日本食生活   学会誌 Vol.12 No.4

5)早野洋美 2002 「男子大学生の摂食障害傾向に関   する心理学的研究」 心理臨床学研究

  Vol.20 No.1

6)窪田容子 1997 「プレ中年期女性の中年期イメー   ジ」女性ライフサイクル研究  Vol.7

7)岡本祐子 1996 「中年期女性の危機と発達」

  教育と医学 VoL44(10)

8)袖井孝子・直井道子編 1979 中高年女性学   垣内出版 p.65

9)河上婦志子 1994「中年期女性のフェミニズム」

  人文研究所報  Vol.27

10)清水博子 1998 「中年期女性を追いっある「女ら   しさの病」 望星 VoL29(2)

11)鈴木幹子、伊藤祐子 2001 「女子青年における女   性性受容と摂食障害傾向」青年心理学研究 Vol.13   P.34

12)岡本祐子、松下美知子編 2002 新女性のための   ライフサイクル心理学 福村出版 pp.84−86

(11)

Abstract

    Until now, no study has ever attempted to examine the subject of the dislike of middle−aged peo−

ple among adolescent university students.

    Adislike scale was constnlcted by preliminary research based on stUdents images.

    Factor 1. The fear of the loss of youth, and

    Factor 2. Empathy fbr the role of masculine gender and feminine gender

were the result of factor analysis. The stUdents who received a high score fbr the dislike of middle−

aged people had excessive fear of the loss of youth and empathy of gender. It is likely that this fear points to instability in oneself, and empathy of gender indicates stereotype and too much a(ijustment to society. Three types of written inquiries were made in order to examine the comection among the dislike of middle−aged people, eating disorder predisposition and anxiety predisposition in students.

The fbllowing results were obtained:Female students have a correlation between dislike and eating disorder and anxiety. Male students have a correlation between dislike and eating disorder.

    Female students have high scores in the dislike of middle−aged women. The study clearly shows the di脆rence in disliking middle。aged people between female students and male students. Female stu−

dents are aware of their dislike of middle−aged women, and they know how to be involved in society.

    Thus, these facts make it clear that disliking is important fbr adolescent female students and their life course in the fUtUre,

Key words:Dislike of Middle−aged People, The Fear of the Loss of Youth, Empathy        f()rthe Role of Masculine Gender and Feminine Gender

参照

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