博 士 ( 獣 医 学 ) 曽 田 公 輔
学 位 論 文 題 名
Studies on the development of vaccine and molecular basis of pathogenicity of avian influenza viruses for chicken
(鳥インフルエンザウイルスのワクチン開発および 病 原 性 の 分 子 基 盤 に 関 す る 研 究 )
学位論文内容の要旨
1997年以 来 、H5また はH7ウ イル スの 感染 に因 る 高病 原性 鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が続いてい る 。著 者は イ ンフ ルエ ンザAウ イル スの自然宿主であ る野生水禽に維持されてい るH5またはH7ウイルスと HPAIウイ ルス問でへマグルチニン(HA)の抗原性が類似している ことを見出した。本結果に基 づき、野生水 禽 か ら 分 離さ れた 非病 原 性鳥 イン フル エ ンザ ウイ ルス を元 に 、A/duck/Hokkaido/Vac‑1/2004(H5N1) [Vac‑1/04(H5N1)]、A/duck/HokkaidoNac‑3/2007(H5N1) 、 お よ びA/duck/Hokkaidoハtac‑2/2004
(H7N7) [Vac‑2/04(H7N7)]を ワク チン候補株として 作出した。ホルマリン不活 化したVac‑1/04(H5N1) を100pg皮 下 接 種 し た マ ウ ス は 、 致 死 量 のHPAIウ イ ル スVietnam/1194/2004(H5N1) の攻 撃に 耐 過し た 。Vac‑1/04(H5N1)お よびVac‑2/04(H7N7)によっ て試製したワクチンを接種 したニワ卜りおよびサル は 、HPAIウイ ルス の攻 撃 に耐 過し た。 以 上の 結果 は野 生水 寓 から 分離 した 非病 原 性ウ イル スがHPAIウ イルスに因る感染症に対するワクチン株として有用であることを示している。
一方で 、ワクチンの濫用はHPAIウイルスの見えない流行拡大を助長する恐れがある。ワクチン接種に依存し HPAI対策 の基本である摘発淘汰が疎かとなっている地域では、抗原変異ウイルスの出現を招くと共に、人の感 染例が増 加している。本研究で確立したワクチン株と流行株間の交差反応性を調べると共に、世界各国が摘発 淘汰を基本とした対策を行い、鳥インフルエンザを封じ込める必要がある。
H5ま たはH7ウイ ルス に因 るHPAIに加 え、 近年 低 病原 性H9N2ウイルスによる鳥 インフルエンザの発生が アジア‐ 中近東で続いており、家禽 に甚大な被害を及ぼしている 。従ってH9ウイルスがH5およびH7ウイルス のように家禽に対する高い病原性を獲得し得るかどうかを確認しておくことは防疫上重要である。本研究におい て、H9ウ イルスのHA開裂部位にHPAIウイルスに見られる塩基性ア ミノ酸の連続配列を人工的に導入し、さら にヒヨコ の気嚢内で10代継代したウ イルスrgY55sub‑P10 (H9N2)はニワトりに対して静脈内接種病原性を示し た。HA開裂部位に導入した塩基性アミノ酸、および継代によって起こったアミノ酸の置換がニワトりに対する高い 病原性に 関与するものと考えられる 。rgY55sub‑P10 (H9N2)はMDCK細胞における増殖に外来性 のトリプシン
(ニワトりの呼吸器・腸管に局在)を必要としなかったが、本株を鼻腔内に接種したニワトりはH5ウイルスを接種し た場合と異なり全く症状を示さなかった。以上の知見はニワ卜リ体内のユビキタスなプロテア―ゼによるHAの開 裂活性化 はウイルスの全身感染に必要であるが、十分条件ではないことを示している。著者は、H5ウイルスは H9ウイルスに比べ、ニワ卜りの血管内皮細胞で効率的に増殖してウイルス血症を引き起こし、さらに脳に侵入し て高い病原性を発揮するものと考察している。
本研究 では、H9N2ウイルスが静脈内接種病原性を獲得し得ることが明らかとなった。H9ウイルスはニワトり に細菌と 共感染すると、鼻腔内接種病原性が増強することを岸田らは明らかにした。HA開裂部位に塩基性アミ ノ酸の置換変異を有するウイルスが実際に野外のニワトりから分離されており、このようなウイルスが鶏群内で 感染を繰 り返すことによって、静脈内接種病原性に加え鼻腔内接種病原性を獲得する恐れがあるので、家禽の 疫学監視を続ける必要がある。
本研究で得られた成績は野生水禽および家禽におけるインフルエンザサ―ベイランスが、1.自然界および家 禽飼養環境中のウイルスの抗原性を把握する、2. HPAIに対するワクチン株を得る、3.新たなHPAIウイルスの 出現予測、のために重要であることを示している。
ー752 ‑
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 喜 田 宏 副 査 准 教 授 迫田義 博 副 査 教 授 梅 村 孝 司 副 査 教 授 高 田 礼 人
学位論文題名
Studies on the development of vacane and molecular basis of pathogenicity of avian influenza viruses for chicken
(鳥インフルエンザウイルスのワクチン開発および 病 原 性 の 分 子 基 盤 に 関 す る 研 究 )
1997年以来、H5ま たはH7ウイルスの感染に因る 高病原性鳥インフルエンザ (HPAl)の発生が続いて いる。著者はインフル エンザAウイルスの自然宿主 である野生水禽に維持されて いるH5またはH7ウイル スとHPAIウイルス間で へマグルチニン(HA)の抗原性が類似していることを見出した。本結果に基づき、野 生水禽から分離された 非病原性鳥インフルエンザウ イルスを元に、Nduck/HokkaidoNac‑1/2004 (H5N1) [Vac‑1/04 (H5N1)] 、 /Vduck/HokkaidoNac−3/2007 (H5N1)、およびNduck/HokkaidoNac‑2/2004 (H7N7) [Vac‑2/04 (H7N7)]をワクチン候補株として作出した。ホルマリン不活化したVac‑1/04 (H5N1)を 100pg皮 下接 種したマウス は、致死量のHPAIウイルスVietnam/1194/2004 (H5N1)の 攻撃に耐過した。
Vac‑1/04 (H5N1)およ びVac‑2/04 (H7N7)によって試製したワクチンを接種したニワトりおよびサルは、
HPAIウイルスの攻撃に 耐過した。以上の結果は野生 水寓から分離した非病原性ウイルスがHPAIウイルス 感染症に対するワクチン株として有用であることを示している。
H5ま た はH7ウイ ルス に因 るHPAIに加 え、 近年 低 病原 性H9N2ウイルスによる鳥 インフルエンザの 発生がアジア・中近東 で続いており、家禽に甚大な被害を及ぼしている。従ってH9ウイルスがH5およびH7 ウイルスのように家禽に対する高い病原性を獲得し得るかどうかを確認しておくことは防疫上重要である。
著者 はH9ウ イル スのHA開 裂部 位 にHPAIウ イル スに 見 られ る塩 基性アミノ酸の連続 配列を人工的に導 入し、さらにヒヨコの気嚢内で10代継代した。継代したウイルスrgY55sub―P10 (H9N2)はニワトりに対して 静脈内接種病原性を示 した。この成績はHA開裂部位に導入した塩基性アミノ酸、および継代によって起こ ったアミノ酸の置換がニワトりに対する高い病原性に関与することを示している。rgY55sub‑P10 (H9N2)は MDCK細胞における増殖に外来性のトリプシン(ニワトりの呼吸器・腸管に局在)を必要としなかったが、本株 を鼻腔内に接種したニワトりはH5ウイルスを接種した場合と異なり、全く症状を示さなかった。本結果はニ ワトリ体内のユビキタ スなプロテア―ゼによるHAの開裂活性化はウイルスの全身感染に必要であるが、十 分条件ではないことを 示している。以上の知見から著者は、H5ウイルスはH9ウイルスに比ベニワトりの血
‑ 753―
管内皮細胞で効率的に増殖してウイルス血症を引き起こし、さらに脳に侵入して高い病原性を発揮するもの と考察している。
審査員 ー同は 、上記 論文提出 者曽田 公輔氏 が博士 (獣医 学)の学位を授与されるに十分な資格を有 するものと認めた。
‑ 754−