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博 士( 農学) 宮入 学 位論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士( 農学) 宮入 学 位論 文 題 名

野菜における共販組織再編の諸形態と特質に関する研究      学位論文内容の要旨

  現在、農産物共販が転換期にあることが指摘され、とくにそれは野菜において顕著に現れているが、

共販組織の形態的変化を伴った再編実態を包括的に分析した研究はいまだ不十分である。そこで、本論 文では、野菜における共販組織再編の諸形態について事例的に分析することによって、その現代的な特 質を明らかすることを課題とした。こうした課題に接近するために、系統共販、地域農協共販、農協以 外 の 共 販か ら 典 型 事例 を 抽 出 し、 産 地 の 市場 か ら の遠近 も考慮 に入れ たうえ で分析 を行っ た。

  本論文は、序章および終章を含め8章により構成されている。序章においては、問題の所在と課題を 提示し、既存研究の動向を整理し、課題の限定を行った。

  第1章では、既存統計の分析からわが国における野菜の需給構造、流通構造の変化を整理したうえで、

集出荷機構の現状分析を行った。その結果、集出荷団体のうち、依然として総合農協が大きなシェアを 持ち 、遠隔産地においては1990年代以降も総合農協を中心に共販率が上昇する傾向がみられた。しか し、流通構造の変化により共販組織における販売機能の強化が求められる一方で、指定産地制度による 政策 的な支 援を受 けなが ら存続 してき た総合 農協は、流通構造の変化に十分に対応できていない。

  第2章では系統共販分析として、全農、県連合会(全農千葉県本部、ホクレン)の事例分析を中心に、

系統共販の再編と連合会の機能変化の特質について考察した。1990年代後半以降の野菜における系統共 販の再編は、卸売市場対応における県域完結型事業体制への移行と、全国連および県連段階における直 販事業の展開を主な内容とする。連合会は買取集荷・個別販売によって、無条件委託・平均販売・共同 計 算 を 柱 と し た 従 来 の 共 販 事 業 方 式 か ら 逸 脱 し た な か で 機 能 強 化 を 図 っ て い る 。   第3章から第5章では地域農協の共販分析として、単協段階での共販再編の要因と販売対応の現状を 考察した。事例は、都市近郊産地(千葉県・山武郡市農協)、遠隔産地(北海道・ふらの農協)、地域農 協連合による広域産地形成(北海道・道北青果連)である。

  第3章で扱った山武郡市農協では、高齢化と兼業化による組合員多数の生産からの離脱によって生産 カが弱体化する中で、いかに産地の維持・発展を図るかが課題となっていた。まず、農協は支所別に細 分化していた共販組織の統合を進めたが、結果として販売事業の規模は縮小した。他方、量販店向け直 販事業に活路を求めたが、これは共販の形はとっていても、実質的には特定の生産者を組織化した個別 販売である。また、農協自体が直売所を開設・運営することによって地場流通を強化したが、共販から 離脱した組合員を再び農協に引き戻すうえで重要な役割を果たしている。一方、一部の専業的担い手層 は有機農業に取り組み、有機部会を設けることによって共販組織内に留まっているが、すでに農協から 事業的に乖離した状態にある。

  第4章で扱ったふらの農協では、多様な生産者から構成される産地をいかに統合し、遠隔産地として の総合的発展を図るかが課題とされていた。ふらの農協では広域的な卸売市場向け販売が主流だが、同 時に量販店や生協向けの直販事業にもカを入れている。前者はもとより後者においても共計共販を基本     ‑ 1134ー

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に し てお り 、 そ の点 で は 共 販の 本 来 的有り 様を維 持してい る。ま た、多 品目少 量生産 、減農 薬栽 培などによルロットを大型化することが困難なものも含め販売できる体制を整えているほか、農協独自 の加工事業と業者委託を組み合わせて農協ブランド食品の販売に取り組むなど、多元的な販売対応を行   っている。

    第5章では、道北青果連を事例に、農協間提携による広域共販体制構築の意義を検討した。いかに農 協が隣接していても、地域農業の目指す方向が異なれば、広域合併は困難である。しかし、そのような 場合でも、各農協に例えば野菜産地形成といった共通課題が存在し、それに対して農協の諸機能を統合   し、組織的連携がなされるならば、販売事業の強化や産地の発展に有効な手段となりうることが、この 事例分析から示された。

  第6章 では、 農協以外の共販分析として、農事組合法人による共販方式の現状を明らかにし、その特 質を指摘した。事例とした埼玉産直センターでは地域農協とは異なり、生産・販売方式に関して組織の 理念や基準に合意できる生産者が集まり、販売の共同化を行っている。そのため、生産者も生産物も高 い等質性を有し、それをテコに委託集荷・平均販売・共同計算を柱とした原則的な共販方式により、組 合員の求める価値実現を果たしている。

  終章では、以上の分析により明らかになった野菜における共販組織再編の現代的特質を総括し、それ ぞれの評価と展望を行った。

  第1に 、野菜 における系統共販では、産地の大型化と多様化によって、連合会が分荷調整を図る必要 性が後退する一方で、全農といくっかの県連では個別の産地と結びついて直販事業を行う方向での再編   を図っている。直販事業は一般に単協段階で対応することが困難であり、その点で連合会は一定の役割   を果たしている。だが、連合会による直販事業はあくまで特定の産地を対象としたものであり、連合会 が す べ て の 単 協 に 対 し て 果 た す べ き 補 完 機 能 が 発 揮 さ れ て い な い と こ ろ に 問 題 が あ る 。     第2に、本論が取り上げた地域農協の共販分析からは、以下のことが明らかになった。一般に地域農 業では生産カの後退が現れている一方で、企業的経営や環境保全型農業を指向する生産者など多様な担 い手が登場し、中農層の広範な存在という共販の前提条件が崩れ、いわば農協組合員の異質化が進展し ている。そのため、異質化した生産者をいかに共販内部に包摂して産地の維持・発展を図るかが、地域 農協の差し迫った課題となっている。しかし、こうした地域農業の変容の具体的内容は各地域で異なっ ており、それに応じて共販の再編形態も異なっている。本論で対象とした山武郡市農協では、首都圏を 控えた都市近郊産地という条件下で量販店への直販、直売所の開設などさまざまな創意的取組を行って いるが、脱農化という近郊農業を襲っている厳しい農業環境の中で、共販組織の解体傾向に歯止めをか けるに至っていなぃ。これに対し、遠隔産地であるふらの農協では、組合員から農協に出荷された多種 多様な生産物を、多元的な販売対応によって、総体的な価値実現を図っている。この点では、異質化し た組合員を包摂した共販方式のひとつの典型事例として評価できる。また、道北青果連のように、農協 間の柔軟な協同関係により産地が発展をみせた事例も存在する。わが国では総合農協は基幹的共販形態 として今後とも維持されるべきであるが、そのためには、生産の地域的多様性を産地の維持・発展の源 泉とし、それを総体的に価値実現できる形で、多様で創意的な販売事業の強化が必要であ『)、以上諸事 例から示唆されることは少なくない。

  第3に 、農協 以外の共販分析からは、一っの農事組合法人の事例ではあるが、組合員の等質性が確保 され、原則的な共販方式により価値実現を果たしていた。しかし、これはあくまでも法人への参加者の   「共販」事例であり、地域農業総体の価値実現とぃう課題への対応ではなぃ。その点では、農協に代替 するものではないが、農協が組合員の異質化に十分に対応できていない状況下では、積概的に評価して よい事例である。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

野菜における共販組織再編の諸形態と特質に関する研究

  現在、農産物共販が転換期にあることが指摘され、とくにそれは野菜において顕著に現れている が、共販組織の形態的変化を伴った再編実態を包括的に分析した研究はいまだ不十分である。本論 文では、野菜における共販組織再編の諸形態について事例的に分析することによって、その現代的 な特質を明らかすることを課題としている。こうした課題に接近するために、系統共販、地域農協 共販、農協以外の共販から典型事例を抽出し、産地の市場からの遠近も考慮に入れたうえで分析を 行ったのが本論文である。

  第1章では、既存統計の分析からわが国における野菜の需給構造、流通構造の変化を整理したう えで、集出荷機構の現状分析を行っている。ここでは、集出荷団体のうち、依然として総合農協が 大きなシェアを持ち、遠隔産地においては1990年代以降も総合農協を中心に共販率が上昇する傾 向がみられることを確認している。  .

  第2章では系統共販分析として、全農、県連合会(全農千葉県本部、ホクレン)の事例分析を中 心に、系統共販の再編と連合会の機能変化の特質について考察している。その結果、1990年代後 半以降の野菜系統共販の再編が、卸売市場対応における県域完結型事業体制への移行と、全国連韜 よび県連段階における直販事業の展開を主な内容とすること、連合会は買取集荷・個別販売によっ て、無条件委託・平均販売・共同計算を柱とした従来の共販事業方式から逸脱したなかで機能強化 を図っていることなどが明らかにされた。

  第3章から第5章では地域農協の共販分析として、単協段階での共販再編の要因と販売対応の現 状を考察している。事例は、都市近郊産地(千葉県・山武郡市農協)、遠隔産地(北海道・ふらの 農 協 ) 、 地 域 農 協 連 合 に よ る 広 域 産 地 形 成 ( 北 海 道 ・ 道 北 青 果 連 ) で あ る 。   山武郡市農協では、組合員の高齢化と兼業化の中で、支所別共販組織の統合の一方で、量販店向 け直販事業を進めたが、これは共販の形はとっていても、実質的には特定の生産者を組織化した個 別販売である。農協開設の直売所は、共販から離脱した組合員を農協に引き戻すうえで重要な役割 を果たしているが、有機農業に取り組む一部の専業的担い手層は、形のうえでは共販組織内に留ま`

っているが、農協から事業的に乖離した状態にある。

  ふらの農協では広域的な卸売市場向け販売が主流だが、同時に量販店や生協向けの直販事業にも カを入れている。いずれも共計共販を基本にしており、共販本来の有り様を維持している。また、

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三 功

彦 郎

   

   

徳  

  明

島 河

下 澤

三 黒

坂 飯

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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多品目少量生産、減農薬栽培などによルロットを大型化することが困難なものを含め販売できる体 制を整えている。また、農協独自の加工事業と業者委託を組み合わせて農協ブランド食品の販売に 取 り 組 む な ど 、 多 元 的 な 販 売 対 応 を 行 っ て い る こ と を 明 ら か に し て い る 。   道北青果連の事例分析からは、隣接する各農協に例えぱ野菜産地形成といった共通課題が存在し、

それに対して農協の諸機能を統合し、組織的連携がなされるならば、農協間協同は、販売事業の強 化や産地の発展に有効な手段となりうることが示された。

  第6章では、埼玉産直センターを事例に、農事組合法人による共販方式の現状を明らかにし、そ の特質を指摘した。その結果、事例法人では、生産者も生産物も高い等質性を有し、それをテコに 委託集荷・平均販売・共同計算を柱とした原則的な共販方式により、組合員の求める価値実現を果 たしていることが明らかにされた。

  終章では、以上の分析により明らかになった野菜における共販組織再編の現代的特質を総括し、

それぞれの評価と展望を行っている。

  第1に、系統共販では、産地の大型化と多様化によって、連合会が分荷調整を図る必要性が後退 する一方で、全農といくっかの県連では個別の産地と結ぴついて直販事業を行う方向での再編を図 っているが、これらの直販事業はあくまで特定の産地を対象としたものであり、連合会がすべての 単 協 に 対 し て 果 た す べ き 補 完 機 能 が 発 揮 さ れ て い な い と こ ろ に 問 題 が あ る 。   第2に、一般に地域農業では生産カの後退が現れている一方で、企業的経営や環境保全型農業を 指向する生産者など多様な担い手が登場し、中農層の広範な存在という共販の前提条件が崩れ、組 合員の異質化が進展している。本論で取り上げたふらの農協では、出荷された多種多様な生産物を、

多元的な販売対応によって、総体的な価値実現を図っており、異質化した組合員を包摂した共販方 式のひとっの典型事例として評価できる。また、道北青果連のように、農協問の柔軟な協同関係に より産地が発展をみせた事例も存在する。わが国では総合農協は基幹的共販形態として今後とも維 持されるべきだが、そのためには、生産の地域的多様陸を産地の維持・発展の源泉とした、多様で 創意的な販売事業の強化が必要である。

  第3に、農事組合法人・埼玉産直センターでは、組合員の等質性が確保され、原則的な共販方式 により価値実現を果たしている。組合員の異質化に対して、農協が十分に対応できていない状況下 では、農事組合による「共販」形態は積極的に評価してよい。

  以上のとおり本論文は、再編過程にある野菜の共同販売の動態について詳細な事例調査を行い、

それらの諸形態と特質を明らかにすると同時に、将来方向を見据えた評価と展望を行っている。研 究課題は農業市場学分野において未解明なものであり、その学術的貢献は大きい。よって審査員一 同は 、 宮 入 隆が 博 士 (農 学 ) の学 位 を 受け る の に十 分 な 資格 を 有 す るも の と 認めた 。

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参照

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