九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Synthesis and Applications of Heterostructures of Two-Dimensional Materials
アザ, スクマ, アジ
https://doi.org/10.15017/1931943
出版情報:九州大学, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式3)Form 3
氏 名 :アザ スクマ アジ
Name Adha Sukma Aji
論 文 名 : Synthesis and Applications of Heterostructures of Two-Dimensional Materials
Title
( 二次元材料からなるヘテロ構造の合成と応用)
区 分 :甲
Category Kou
論 文 内 容 の 要 旨 Thesis Summary
炭素原子のみからなる原子一層分の厚さの二次元構造を有するグラフェンは、そのユニークな構造と優れ た多くの物性から、基礎研究から応用研究まで活発になされている。グラフェンの研究を契機として、近年、
層状物質の原子レベルの厚さをもつ薄膜(二次元材料)が大きな注目を集めるようになってきた。特に、遷 移金属とカルコゲンからなる遷移金属カルコゲナイドと呼ばれる二次元材料は、多くが可視域にバンドギャ ップを有し、半導体などのエレクトロニクスやフォトディテクターなどのオプトエレクトロニクスへの応用 が期待されている材料である。また、遷移金属カルコゲナイドは多くの金属種、および硫黄、セレン、テル ルといった複数のカルコゲンの組み合わせを通じて、バラエティに富み、多様な電子・光物性が得られる。
金属、半導体、絶縁体、超伝導体、磁性体といった様々な物性を有する二次元材料を組み合わせることによ り、これまでにない新たな材料を創製し、新規な電子・光・磁気機能、そして光透過性、柔軟性を兼ね備え たデバイスへと展開することが期待されている。二次元材料の積層化は、ファンデルワールス・エピタキシ ーと呼ばれ、従来のエピタキシャル製膜のような格子定数に制限されないという特徴を有している。
本研究では、n型の半導体特性を示す二硫化タングステン、ならびに二硫化モリブデンの単層膜を中心と して、高い電気伝導度を有する多層グラフェン、及びp型の半導体特性を示す硫化スズとのヘテロ構造に基 づくデバイスをそれぞれ作製し、キャリア移動度、ショットキー接合、p-n 接合、光応答性などの観点から 議論を行い、二次元材料のヘテロ構造の新たな可能性を示した。
本論文は序論(第一章)と結論(第六章)を含む六つの章から構成され、二次元材料の構造・物性・合成 法(第二章)、二次元材料の電界効果トランジスタ(第三章)に関する概説、そして二硫化タングステンと多 層グラフェンのヘテロ構造に関する研究(第四章)、二硫化タングステンおよび二硫化モリブデンと硫化スズ とのヘテロ構造に関する研究(第五章)からなる。
第一章では、これまでの二次元材料に関する研究の経緯、その特徴と可能性について概説した。
第二章では、二次元材料、特に本論文で取り扱う二硫化タングステンと硫化スズについて、化学構造、電 子・光物性、ならびに合成法に関して記した。
第三章では、二次元材料の電界効果トランジスタの原理から、二硫化タングステンと硫化スズ、それぞれ のトランジスタ特性、そして二次元材料における電極コンタクトの重要性について述べた。
第四章では、二硫化タングステンを電界効果トランジスタのチャネル材料、多層グラフェンを電極材料と して用いた二次元ヘテロ構造デバイスの作製とその動作特性について報告している。それぞれの二次元材料 を化学蒸着(CVD)法によって大面積に合成後、パターニングを行い、最後に転写プロセスを用いて積層し て電界効果トランジスタを作製した。通常の金属電極を用いると二硫化タングステンの電子移動度が 5 cm2/Vsであったのが、多層グラフェンを電極に用いると50 cm2/Vsまで向上することを見出した。デバイス 特性の解析から、二硫化タングステンと金属電極とのショットキー障壁が、グラフェン電極では低減できる ことを議論した。さらに、厚さが1 mと薄い高分子フィルム上にヘテロ構造デバイスを作製し、極めて薄 くて柔軟なトランジスタを作製し、屈曲に対して安定であることも示した。
第五章では、二硫化タングステンと硫化スズ、ならびに二硫化モリブデンと硫化スズを組み合わせた二次 元ヘテロ接合の合成とキャリア輸送特性について報告している。二硫化タングステン(二硫化モリブデン)
を第一段階のCVDプロセスで合成後、200 ℃という低温で硫化スズを第二段階のCVDプロセスで合成する という二段階CVD法によって、部分的に積層した二次元ヘテロ構造の直接成長を実現した。そして、これ らの組み合わせにより、二次元材料のp-n接合に基づく整流性を観察することに成功している。さらに、こ のヘテロ構造化によりデバイスの光応答性が向上することも明らかにした。
第六章では、研究成果として本論文の各章の要点をまとめた。本研究結果を踏まえて、今後のさらなる研 究で解決されるべき課題、そして将来の発展指針などについて記し総括とした。