建築光環境の空間的評価指標に関する研究 [ PDF
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(2) 4.実験結果と考察 Vc 値を各照明パターンについて算出し、Vc 値と均一・不 均一感との関係を検討する。分析にあたっては、被験者に均 一・不均一を 7段階で評価させたものに、均一感の低い方か ら−3 から+3 までの得点を与え、算術平均をとったものを 用いた。 ■パターン A. Vc 値と均一・不均一感との関係を見ると、全体的に Vc 値. ■パターン B. が大きくなると不均一に感じ、Vc 値が小さくなると均一に 感じる傾向が見られた。Vc 値と均一・不均一感との間には、 均一感に対して負の相関関係があるのではないかと考えら れる。しかし、同じくらいの Vc 値でも均一・不均一感に大 小がみられるものもあり、少しばらつきがあった。 これには、照明配置などの大局的要素の影響があるのでは ■パターン C. ■パターン D. ないかと考えた。そこで、両側の側壁に沿って光源が並んで いる照明パターン(照明パターン:A, B, D, F, H, L)をグルー プⅠ、片側の側壁に沿ってのみ光源がある照明パターン(照 明パターン:C, E, G)をグループⅡ、真ん中の列のみに光源 がある照明パターン(照明パターン:I , J, K)をグループⅢ と分類し、各グループについて回帰直線を求めた。図 3に各 グループの回帰直線を示す。. ■パターン E. ■パターン F. Vc値−均一感 3. グループⅠ グループⅡ グループⅢ 回帰直線( グループⅠ) 回帰直線( グループⅡ) 回帰直線( グループⅢ). 2 y = -1260.1x + 2.7473 相関係数:0.9397. 均一感. 1. 0 0.0000. 0.0050. 0.0100. 0.0150. 0.0200. 0.0250. 0.0300. 0.0350. 0.0400. 0.0450. -1 y = -37.237x + 0.4504 相関係数: 0.9492. ■パターン G. -2. ■パターン H. y = -115.03x - 0.8588 相関係数:0.8894 -3. Vc値. 図 3 各グループの回帰直線 グループごとに回帰直線を求めると、Vc 値と均一・不均 一感との関係は相関係数 0. 89∼0. 95 の高い相関を示した。 また、どのグループにおいても Vc 値が大きくなるほど不均 ■パターン I. ■パターン J. 一に感じ、Vc 値が小さくなるほど均一に感じるという結果 となった。しかし、グループⅠにおいて、パターン Bとパタ ーン L の均一・不均一感の順番が入れ替わっている。また、 照明グループ間で回帰直線の傾きが大きく異なっている。そ こで、輝度分布の全体的な特性を検討するため、各照明パタ ーンについて輝度の度数分布表を作成し、検討を行った。 グループごと、グループ間において輝度の度数分布を比較. ■パターン K. ■パターン L. 図 2 照明パターン. した結果、輝度の分布の範囲、ばらつきに違いが見られた。 例えば、グループⅠのパターン Aと、グループⅡのパターン. 39-2.
(3) E、グループⅢのパターン Kを比較すると、パターン A, パタ. ないかと考え、局所的要素に関する評価指標である Vc 値と. ーン E, パターン Kの順で輝度の変化の幅が大きい。これは. 四分位偏差、均一・不均一感との関係を検討した。図 5に照. 回帰直線の傾きの大きさ順にも一致する。このことから、輝. 明グループⅠについての Vc 値と四分位偏差、均一・不均一. 度の度数分布の違い、特にばらつきを表せば、大局的要素に. 感との関係、図 6に照明グループⅡ・Ⅲについての Vc 値と. ついての影響が明らかになるのではないかと考えた。. 四分位偏差、均一・不均一感との関係を示す。. 一般に、分布が正規分布のとき、度数分布のばらつきを表. 四分位偏差−Vc値(グループⅠ). す指標として、標準偏差がある。しかし、各照明パターンに. 四分位偏差. Vc値. 3. 0.0035. らつきを表す指標として四分位偏差を用いて分析を行い、こ. 2.5. 0.0030. れを大局的要素を考慮した指標として提案する。図 4にパタ. 2. に各照明パターンの四分位偏差を示す。なお、図 5の作成に. 0.0025 0.0020. 1.5 0.0015 1. 0.0010. あたっては、グループごとに分類し、グループ内で均一感の 0.5. 高い照明パターンが左になるように並べた。. 300000. 300000. 250000. 250000. 200000. 200000. 累積数. パターンE. 0.0000 A. 50000. Ⅰ. 図5. F. H. Vc 値/四分位偏差/均一・不均一感(グループⅠ). Ⅱ. 四分位偏差. グループ. 0. 0 6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72 78 84 90 96. Vc値 0.0450. 1.2. 輝度. 0.0400. 1. パターンK. 0.0350. (輝度最大100 まで累積数350000 までを掲載). 四分位偏差. 300000 250000 200000 150000 100000 50000. 0.8. 0.0300 0.0250. 0.6. 0.0200 0.0150. 0.4. Ⅲ. 0.0100. グループ. 0.2. 0 6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72 78 84 90 96. 0. 0.0050. 輝度. 0. 図 4 輝度の度数分布図. 図6. 四分位偏差. グループ. Ⅰ. 2. E. G. I. J. K. 照明パターン(グループごと均一感順). 3. 2.5. 0.0000 C. 四分位偏差. グループ. Vc 値/四分位偏差/均一・不均一感(グループⅡ・Ⅲ). グループ. Ⅱ. グループⅡ・Ⅲでは、Vc 値が大きいほど、また四分位偏. Ⅲ. 差が小さいほど不均一に感じ、Vc 値が小さいほど、また四 1.5. 分位偏差が大きいほど均一に感じると言える。また、グルー. 1. プⅠについてはパターン Lの方がパターン Bよりも Vc 値が. 0.5. 大きく、パターン Lの方が不均一になるはずであるが、そう なっていない。しかし、四分位偏差を見ると、パターン Lの. 0 A. L. B. D. F. H. Vc値. 輝度. 350000. D. 四分位偏差−Vc値(グループⅡ・Ⅲ). 50000. グループ. 0. B. 150000 100000. 100000. L. 照明パターン(均一感順). 0 6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72 78 84 90 96. 累積数. 350000. 150000. 累積数. 0.0005. 0. パターンA 350000. Vc値. ーン A、パターン E、パターン Kの輝度の度数分布図、図 5. 四分位偏差. おける輝度の度数分布には正規性が見られなかったため、ば. C. E. G. I. J. K. 四分位偏差が非常に大きな値を示している。この四分位偏差. 照明パターン(グループ内均一感順). 図 5 各照明パターンの四分位偏差. が大きなことで、評価が均一側に移動し、このような関係に なったと言える。よって、パターン Lは大局的要素の影響を. グループごとに比較・検討を行うと、グループⅡ、グルー. 強く受けた照明パターンと言える。また、パターン Hでも四. プⅢでは四分位偏差が大きいほど均一に感じ、四分位偏差が. 分位偏差が非常に大きな値を示しているが、Vc 値が他の照. 小さいほど不均一に感じるという相関関係が明らかである。. 明パターンより大きいため、全体として他の照明パターンよ. しかし、グループⅠでは、パターン L、パターン Hの四分位. りも不均一に感じると言える。よって、パターン Hは局所的. 偏差が異常に大きい。これには局所的要素が関係するのでは. 要素の影響を強く受けた照明パターンと言える。. 39-3.
(4) 5. 「均一・不均一」性を表す指標 以上より、均一・不均一感を生じる建築光環境は局所的要 素と大局的要素に対応する複合的な尺度で表され、その指標 に局所的要素を考慮した Vc 値と大局的要素を考慮した輝度 の度数分布の四分位偏差を提案する。 6.指標と心理効果との関係 次に、被験者実験の結果を基に、均一・不均一感や他の印 象の相互関係を検討し、提案した指標と心理効果との関係を 求める。分析にあたっては印象間の相関関係を調べ、相関係 数 0.7 以上を「相関関係がある」とした。 ・ 「均一・不均一」と「明るい・暗い」との関係 グループごとに回帰直線を作成すると、どのグループにお 図 8 指標と各印象の関係図. いても相関係数 0. 9 から 0. 95 の高い正の相関関係があり、 均一感が大きくなるほど明るさ感も大きくなり、均一感が小. 7.まとめ 本研究では、光環境の状態を表し、その印象に大きく影響. さくなるほど明るさ感も小さくなることが明らかとなった。 図 7に「均一・不均一」と「明るい・暗い」との関係を示す。. するものとして、光の均一・不均一性を考える。光の均一・ 不均一性は、視覚の局所的要素と大局的要素に対応する複合. 均一感−明るさ感. 的な尺度で表されるとし、その指標に局所的要素を考慮した. 3.00. Vc 値と大局的要素を考慮した輝度の度数分布の四分位偏差. y = 0.9566x + 0.1167 相関係数:0.9035. を提案した。. 2.00. また、照明環境の印象に関する主観評価実験を行い、提案 明るさ感. 1.00. する指標と印象評価との関係を検討した。これより、Vc 値. y = 1.4917x + 1.3575 相関係数: 0.9172 -3.00. -2.00. が大きいほど、輝度の度数分布の四分位偏差が小さいほど不. 0.00 -1.00 0.00. 1.00. 2.00. 3.00. グループ1. 均一に感じ、また、Vc 値が小さいほど、輝度の度数分布の. グループ2. -1.00 y = 1.1331x - 1.1076 相関係数:0.9459 -2.00. -3.00. 四分位偏差が大きいほど均一に感じることを明らかにした。. グループ3. さらに、均一・不均一感と他の印象評価との関係を求め、. 回帰直線(グ ループⅠ). 均一・不均一感が明るさや活気に対する感覚に影響すること. 回帰直線(グ ループⅡ). を確認した。明るさ感や活気に対する感覚は、安心感に影響. 回帰直線(グ ループⅢ). することなども分かった。. 均一感. 光環境に対する印象評価を定量化するには、評価項目間の. 図 7 「均一・不均一」と「明るい・暗い」との関係. 尺度の関係を明らかにする必要がある。 ・ 「均一・不均一」と「高級感がある・安っぽい」との関係 相関係数が低く、相関関係があるとはいえない。不均一性 を高めて劇場のような照明にした店舗は高級感がでるとい. 参考文献 1) 李善永、他:住宅居間における明るさの分布が心理評価に. ったように、高級感は均一感と負の関係があることが知られ. 2). ている。今回の結果でも全体としてその傾向が見られた。 これと同様の分析を全ての印象間について行い、その結果 を基に、提案した指標と各印象の関係図を作成した。これに. 3). よると、均一・不均一感が明るさや活気に対する感覚に影響 し、明るさ感や活気に対する感覚は、安心感に影響すること. 4). などが分かる。. 39-4. 及ぼす影響に関する研究、日本建築学会計画系論文報告集、 pp.1-6、1997 年 Flynn, J.E., Spencer, T.J., Martyniuk, O., Hendrick, C.: ”Interim study of procedures for investigating the effect of light on impressions and behavior”, J. of the IES, Vol.3, pp.87-94, 1973 Flynn, J.E.: “A study of subjective responses to low energy and non-uniform lighting systems”, Lighting Design+Application, Vol.7, pp.167-179, 1977 中村芳樹、他:オフィスの輝度分布特性とその心理的効果、 日本建築学会計画系論文報告集、pp.27-33、1993 年.
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