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イギリスのGCSE試験におけるコースワーク評価に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)イギリスの GCSE 試験におけるコースワーク評価に関する研究 キーワード:イギリスの教育,16 歳試験制度,GCSE 試験,評価方法,コースワーク評価 発達・社会システム専攻 飯田 直弘 1. 章構成. これらの点から、コースワーク評価の具体的実践や問. 序章 第1章. 題点などを明らかにすることは、日本の試験における新 イギリスにおける 16 歳試験の歴史. たな評価方法の可能性について重大な示唆を与えること. 1-1 GCE 試験. ができると考え、本研究ではイギリスの GCSE 試験にお. 1-2 CSE 試験. けるコースワーク評価を研究対象とした。. 1-3 GCSE 試験の導入による 16 歳試験の統一 3. 研究目的・ 内容 第2章. GCSE 試験におけるコースワーク評価. 本研究は、イギリスの GCSE 試験におけるコースワー. 2-1 16 歳試験制度におけるコースワーク評価の位. ク評価ついて、導入以後の内容・方法の変化を明らかに. 置づけとコースワーク評価の導入の背景. し、コースワーク評価の位置づけについて考察すること. 2-2 コースワーク評価が評価の対象とする能力と. を目的とする。 1986 年、イギリスではそれまであった GCE-O レベル. 継続的評価 2-3 コースワーク評価の実施に伴う問題点. 試験と CSE 試験という 2 つの 16 歳試験が統合され、 GCSE 試験が導入された。コースワーク評価とは、生徒. 第3章. コースワーク評価の位置づけの変化. が通常の授業時間中に行った体験的活動、実験、問題解. 3-1 必要とされる能力の変化. 決学習、調査研究などを評価し、これを筆記試験の点数. ―ナショナル・カリキュラムの分析. と合わせて生徒の最終的な試験の成績にする評価方法で. 3-2 コースワーク評価の比重の変化. あり、主に旧 CSE 試験において行われてきた。このコ ースワーク評価は GCSE 試験にも採り入れられ、筆記試. ―試験の全国的基準の分析 3-3 コースワーク評価の比重の変化. 験の成績とともに最終的な成績の決定材料として位置づ. ―シラバスの分析. けられている。 GCSE 試験導入以前のイギリスにおいて、イギリスの. 終章. 16 歳試験制度における評価は、その評価対象と評価期間 2. 問題意識. において異なるものであった。すなわち、評価対象の点. 近年日本の教育改革において、知識・理解よりも筆記. からみれば、筆記試験主体の GCE-O レベル試験におい. 試験では測定し難い思考力や創造力、問題解決能力とい. て知識・理解を中心とするアカデミックな能力が測定さ. った観点に重点が置かれるようになってきている。 一方、. れ、コースワーク評価が重視される CSE 試験において. イギリス1では、筆記試験では測定することが困難である. は筆記試験では測定し難い、実際的能力や問題解決能力. 能力に対する評価方法としてコースワーク評価が存在し、. が測定された。また、評価期間の点からみれば、GCE-O. 各学校の教師によって評価が実施されている。このコー. レベル試験における筆記試験が外部の試験委員会によっ. スワーク評価は GCSE 試験において重要な位置を占め、. てコースの終りに実施されるのに対して、CSE 試験にお. コースワーク評価によって測定する能力が具体的にいか. けるコースワーク評価は学校の教師によってコースを通. なるもので、またいかなる配点で評価するのかがシラバ. して継続的に行われた。. スに明示されている。また、評価の統一に関して、モデ. このように、コースワーク評価の特徴として、筆記試. レーションと呼ばれる独自のシステムが存在する。これ. 験では測定し難い実際的能力や問題解決能力を評価する. により、資格の付与を行なう外部試験団体は各学校に調. 点、そして一度の試験ではなく日常の授業において継続. 整官を派遣し、学校間の評価のばらつきを調整する。. 的に評価される点が挙げられる。これらの特徴は GCSE 1.

(2) 試験制度におけるコースワーク評価においても継承され. を行うことにより、先行研究によって明らかにされてい. た。本研究は、コースワーク評価に関して、これら 2 つ. ない点を明らかにする。. の点から実施形態や問題点について明らかにする。 本研究では、以上に述べたコースワーク評価の実施形. 6. 各章のまとめ 第 1 章 イギリスにおける 16 歳試験の歴史. 態や問題点について明らかにした上で、GCSE 試験導入. 本章では、 GCSE試験導入の経緯について明らかにし、. 後のコースワーク評価の位置づけの変化について、コー スワーク評価の評価対象となる能力・技能の変化、そし. さらに GCE 試験、CSE 試験、GCSE 試験における筆記. てコースワーク評価と筆記試験の比重の変化を明らかに. 試験とコースワーク評価について、試験が対象とする生. する。. 徒の能力範囲や特性、学校のタイプなどの点から位置づ けを行った。 イギリスでは、戦後間もなく GCE-O レベル試験が導. 4. 研究方法 GCSE試験の全国的な基準には評価全体におけるコー. 入され、 主にグラマー・スクールの生徒が受験していた。. スワークに対する配点の割合の下限や上限が規定されて. しかし、モダン・スクールの生徒の資格取得に対する要. いる。また、この基準に基づいて各試験団体により作成. 求が高まり、1964 年には CSE 試験が導入されることと. される試験のシラバスには、評価しようとする生徒の能. なった。CSE 試験は、主にモダン・スクールの生徒を対. 力が評価目標として示され、コースワーク評価がいかな. 象としたが、総合制中等学校内では、2 つの試験を受験. る評価目標をいかなる配点で評価しようとしているのか. するためのコースが並存することとなった。このような. が示されている。 試験の全国基準やシラバスは、 導入後、. 状況では、生徒によってはどちらのコースを選択するの. ナショナル・カリキュラムの導入などによりその内容が. かについて難しい選択を迫られた。そこで 1986 年に. 変化している。この点に関して、ナショナル・カリキュ. GCSE 試験が新しく導入された。これにより 16 歳試験. ラム、全国基準の改訂動向、各試験団体のシラバス(現. は統一され、主に旧 CSE 試験の評価方法であったコー. 在は『仕様(specification) 』と呼ばれている)を分析し、. スワーク評価が、 GCSE試験でも重視されることとなる。. GCSE試験のコースワーク評価が評価対象とする能力や. 90 年代以降、GCSE 試験は、16 歳時の試験としてカリ. 評価方法に関してどのような変化がみられるのか、そし. キュラム化され、その試験結果はリーグ・テーブルとし. て評価全体における筆記試験とコースワーク評価に対す. て公表されるなど、現在でも義務教育修了段階における. る配点の割合に変化はあるのかといった点をみていき、. 主要な試験として位置づけられている。. GCSE試験導入から現在に至るまでのコースワーク評価. 以上に述べた 16 歳試験制度改革における問題の本質. の内容や方法の変化について明らかにする。. は、 ①試験の役割、 ②試験が評価対象とする能力にあり、 それが試験の評価方法にも深く関わっていることがわか. 5. 先行研究のレビュー. った。. 日本における先行研究としては、 1993 年までのコース. 試験の役割に関しては、選抜の役割を強くもつものな. ワーク評価の内容等について詳述した鈴木(1996)の研. のか、もしくは一般教育の修了を証明する役割をもつも. 究がある。また、イギリスにおける先行研究には、ウォ. のなのかで試験の特徴が大きく異なってくる。スクー. ーウィック大学の研究チーム(CEDAR, 1990)による、. ル・サーティフィケートや GCE-O レベル試験は、大学. コースワーク評価の実践に関する事例研究がある。 また、. 入学や就職のための資格要件とされたため、試験結果に. 特定の科目のコースワーク評価に焦点を絞り、実際的能. 確固たる客観性・妥当性をもたせる必要があった。その. 力や継続的評価などについて述べた研究として、Taylor. ため、GCE-O レベル試験は校外試験(モードⅠ)を特. と Wallace (1990) 、 Buchan と Welford (1993) 、 Morrison. 徴とした。逆に、CSE 試験は、一般教育の修了証明とし. (2001)の研究がある。. ての性格が強かったので、客観性・妥当性は地域全体で. 以上の先行研究の問題点としては、GCSE 試験導入後. 厳密に確保される必要はなく、校内試験(モードⅢ)が. のカリキュラムの改訂動向、試験の全国基準やシラバス. 可能となった。また、このような性格の試験であったた. の変化に伴うコースワーク評価の内容や方法の変化が明. め、教師によるコースワーク評価を実施することが十分. らかにされていない点が挙げられる。本研究では、カリ. 可能であったと考えられる。. キュラムの改訂動向、試験の全国基準、シラバスの分析. 試験が評価対象とする能力に関しては、アカデミック 2.

(3) な能力を測定するための試験なのか、もしくは実際的な 第 3 章 コースワーク評価の位置づけの変化. 能力を測定するための試験なのかという点で異なってく る。 戦後の 3 分岐システムにおけるグラマー・スクール、. 本章では、GCSE 試験導入から現在までの英語と科学. モダン・スクールは、対象とする生徒の能力(心的特性). における評価内容や方法の変化について明らかにする。. の点で異なっていたため、必然的に対応する試験も異な. 変化を分析する方法として、①ナショナル・カリキュラ. っていた。グラマー・スクールではアカデミックな学習. ムの分析、②試験の全国基準の分析、③シラバスの分析. が重視されたため、教科の知識・理解を問う筆記試験が. を行った。これらの分析により明らかになったことを以. 主体となり、モダン・スクールでは実際的学習が重視さ. 下に述べる。. れたため、コースワーク評価が採用された。. まず、コースワークによって評価される能力について. 新しく導入された GCSE 試験は、上述した 2 つの試験. 整理する。英語に関して、コースワークによってのみ評. の特徴を併せもつものである。すなわち、GCE-O レベ. 価されるスピーキングとリスニングにおいて、近年、討. ル試験のような筆記試験(校外試験)を行う一方で、CSE. 議や劇におけるコミュニケーションが重視されているこ. 試験において特徴的であったコースワーク評価(校内試. とから、単に適切に聞き取りや発話を行うことだけでな. 験)がアカデミックな科目においても重要な評価方法と. く、状況や聞き手に応じたコミュニケーションが重視さ. して採用されているのである。. れていることがわかる。 ライティングにおいても同様に、 1999 年の改訂によって、目的に応じたライティングが重. 第 2 章 GCSE 試験におけるコースワーク評価. 視されていることから、生徒が状況に応じて使い分ける. 本章においては、GCSE 試験における評価方法である. ことに重点が置かれていることがわかる。 科学に関して、. コースワーク評価について、導入の背景を明らかにし、. 教科の特性から、コースワークによって評価される能. また、コースワーク評価が評価対象とする能力や継続的. 力・技能は実験に関するものが多いが、一言に実験や調. 評価の点から、評価を実施する上での問題点について明. 査に関する技能といっても、例えば 1988 年のシラバス. らかにする。. に記載されているような、 「知識と理解」における、適切. コースワーク評価が GCSE 試験において導入された. な実際的技能や安全措置に関する知識や理解を示す能力、. 政策的背景としては、国際競争で勝ち抜くための人材育. 「技能とプロセス」における、①正確な観察を行い、記. 成の重要性を認識していた産業界からの要求が挙げられ. 録する能力、②生物に関する仮説を検証するために、簡. る。これにより、将来イギリスを担っていく若者に必要. 単な実験を計画し、遂行する能力、③仮説を設定し、そ. な学力として、従来の筆記試験による知識・理解だけで. れを検証するために簡単な実験を計画し、 遂行する能力、. なく、 コースワーク評価によって測定される実際的能力、. ④生物に関する知識を、実験の考案や評価、そして個人. コミュニケーション能力、問題解決能力などが重視され. 的、社会的、経済的、技術的性質のものを含む問題の解. ることとなった。. 決に適用する能力、といったように、全体のプロセスを. コースワーク評価は、その評価対象と評価期間の点か. 通して必要な能力が含まれる。. ら 2 つの特徴をもっている。第 1 に、筆記試験では測定. 次に、コースワーク評価の比重の変化について整理す. し難い能力を評価対象とする点であり、第 2 に、評価が. る。英語と科学の両方において、コースワーク評価は. 2 年間のコースを通して継続的に行われる点である。こ. GCSE試験導入当初においては比重が大きかったことか. れを前述の評価方法を特徴づける要因に結びつけるなら. ら、実質的に重視されていたといえるが、英語に関して. ば、実際的な能力の評価は第 2 の要因に、継続的評価は. は実施基準やシラバスにおいて、その後削減されること. 第 1 の要因に結びついている。. となった。さらに、科学においても、シラバスにおける. 以上のように特徴づけられるコースワーク評価には、. 比重は多少の推移にとどまっているが、実施基準におい. ①人的・物的資源に関する問題、②教師や生徒の負担に. ては英語と同様の取り扱いをされている。. 関する問題、③評価の統一に関する問題がある。また、. 以上に述べてきたように、GCSE 試験の導入から現在. コースワーク評価は、90 年代に入り、その比重が軽減さ. に至るまでに、評価内容や方法の面で様々な変化がみら. れることとなった。第 3 章では、そのような 90 年代以. れる。全体としては、コースワーク評価は 90 年代に入. 降のコースワーク評価の内容や方法の変化について明ら. り削減される傾向にあり、それ以降、現在に至るまでに. かにした。. 大きな比重の変化はみられない。しかし、近年、GCSE 3.

(4) 職業科目が導入されるなど、職業教育が前期中等教育に. る。その GCSE 試験において新たに職業科目が設置され. おいても重視されているが、それに伴い発達させるべき. るということは、今後、さらに多くの科目が開設されて. 能力や技能、そして全体に占めるそれらの比重も変化し. いき、結果的に昔あった総合制中等学校内における分化. ていくと考えられる。その結果、従来の GCSE 試験のコ. を再現させてしまう可能性がある。. ースワーク評価の内容や方法が今後さらに変化していく. 現在の学校現場で上述したアカデミックな学習と職. ことが予想される。. 業的な学習の「分離」が現れているのかについては、実 際に学校現場に赴き、従来の科目と新たに新設された職 業科目(もしくは現時点でまだ行われている GNVQ)の. 終章 以上のように、GCSE 試験制度におけるコースワーク. 取得者数、そして教師や生徒の意識の変化についてみる. 評価に関して、16 歳試験制度の歴史的変遷における位置. 必要がある。. づけ、さらにその具体的内容や問題点、90 年代以降の内. このように、GCSE 試験におけるコースワーク評価の. 容や方法の変化について述べてきた。. 内容や方法の変化だけでなく、試験制度の全体的な枠組. 86 年に導入された GCSE 試験の評価方法であるコー. みの変化に伴うアカデミックな学習と職業的な学習の. スワーク評価は、90 年代に入り、その比重が軽減される. 「分離」という視点から、イギリスの試験制度を捉える. こととなった。しかし、コースワーク評価によって測定. ことは、コースワーク評価のような筆記試験とは性質の. されるコミュニケーション能力や問題解決能力が国の定. 異なる評価方法をすべての生徒に効果的に実践する上で. めるカリキュラムにおいて軽視されているかといえば、. 非常に重要であると考える。以上のことは今後の研究課. そうではない。例えば、英語ではコミュニケーション能. 題としたい。. 力は 1990 年当初のカリキュラムよりも重視されている 7. 主要参考文献. のである。. ・CEDAR, Coursework and Coursework Assessment. では、なぜコースワーク評価の比重が軽減されること となったのであろうか。1 つの理由として、コースワー. in the GCSE, University of Warwick, 1990.. ク評価の実施に伴う諸問題が挙げられる。すなわち、コ. ・ Department of Education and Science & Welsh. ースワーク評価は教師の教授活動や生徒の学習活動に対. Office, The National Criteria, HMSO, 1985.. して過度の負担を伴うといったことである。. ・ School Curriculum and Assessment Authority,. Regulations for the General Certificate of Secondary. また、もう 1 つの理由として考えられるのが、伝統的 なグラマー・スクールで教授されてきたアカデミックな. Education. (GCSE). and Regulations for. Other. 学習に対する価値観である。すなわち、アカデミックな. Syllabuses Designed for Pupils of Compulsory School. 学習はコースワーク評価よりも筆記試験で測定されるべ. Age, SCAA, 1995.. きであるとされるのである。. ・Walter Roy, The new examination system, GCSE, Croom Helm, 1986.. 近年、GCSE 職業科目が開設されたことは、そのよう な傾向に拍車をかけると考えられる。もしくは、それは GCSE 試 験 の 導 入 の 後 に 職 業 資 格 で あ る GNVQ (General National Vocational Qualification)2が導入 されたことに起因する。というのは、戦後 3 つに分岐し. [注] 1 本研究では、特に示さない限りイングランドを指す。 2 92 年に導入された職業資格試験で、幅広い職業に対応 する能力・技能が試験される。この資格は GCSE に職業 科目が新設されたことによって漸次的に廃止されること となっている。. ていた学校体系を 1 つにし、それにあわせて試験も 1 つ に統一した歴史的背景があるが、GCSE に職業科目が設 置されたこと、もしくはそれ以前に GNVQ が導入され たことにより、1 つに統合されたものをまたさらに 2 つ に分離したと考えられるからである。すなわち、アカデ ミックなものと職業的(実際的)なものが一度統合され たにも関わらず、その後また分離することとなったので ある。GCSE 試験はカリキュラム化されており、中等学 校に在籍する 16 歳の生徒のすべてが受験する試験であ 4.

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参照

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