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日本静脈経腸栄養学会雑誌 31(4): :2016 特集 リハビリテーション栄養管理の現状と展望 回復期のリハビリテーション栄養管理 Rehabilitation nutrition care in convalescent rehabilitation 1)2) 吉村芳弘 Yoshi

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(1)

特集 リハビリテーション栄養管理の現状と展望

日本静脈経腸栄養学会雑誌 31(4):959-966:2016 図1 回復期リハビリテーション病床数の年次別推移  (文献7より)

回復期のリハビリテーション栄養管理

Rehabilitation nutrition care in convalescent rehabilitation

吉村芳弘

1)2) Yoshihiro Yoshimura 熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション科1) 栄養管理部2)

Department of rehabilitation medicine1), Department of nutritional management2), Kumamoto Rehabilitation Hospital

要旨:回復期のリハビリテーションを行う高齢者には、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群が挙げられ、いずれの疾患に

おいても低栄養とサルコペニアが好発する。さらに、低栄養とサルコペニアはともにリハビリテーションの転帰に悪影響を

与える。つまり、回復期リハビリテーションを行うすべての高齢者に対して、リハビリテーション単独の介入ではなく、リハビ

リテーション栄養管理を行うことが必須であると言える。リハビリテーション栄養のアセスメントのポイントは、「栄養障害を

認めるか、原因は何かを評価する」

「サルコペニアを認めるか、原因は何かを評価する」

「摂食嚥下障害を認めるか評価する」

「現在の栄養管理は適切か、今後の栄養状態はどうなりそうか判断する」

「機能改善を目標としたリハビリテーションを実施

できる栄養状態か評価する」の5つである。回復期のリハビリテーションにおけるリハビリテーション栄養に関する先行研

究をレビューし、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群の疾患別のリハビリテーション栄養について考察しつつ、回復期リ

ハビリテーションにおけるリハビリテーション栄養の現状と今後の展望について概説する。

索引用語:回復期リハビリテーション、リハビリテーション栄養、サルコペニア

はじめに

 リハビリテーション(以下、リハと略)を行う高齢者には低栄

養とサルコペニアの合併が多い。高齢リハ患者の低栄養とサ

ルコペニアの有症率はそれぞれ49-67%

1)

40-46.5%

2)3)

報告されている。低栄養とサルコペニアはいずれもリハの帰

結や身体機能と負の関連がある

4)5)

。回復期のリ

ハの対象となる身体障害の原因には、脳卒中、転

倒による大腿骨近位部骨折、急性疾患治療後の

廃用症候群などが挙げられる。それゆえ、回復

期のリハを行う高齢者に対しては全身管理と併

存疾患のリスク管理を行いつつ、リハと栄養ケア

を同時に行う「リハ栄養」のコンセプトが重要であ

る。リハ栄養のコンセプトとは、国際生活機能分類

(International Classification of Functioning,

Disability and Health;ICF)にそって栄養評価

を行い、障害をもつ高齢リハ患者の身体機能を最

大限に高めるために、リハと栄養ケアを組み合わせ

て介入することである

6)

 本稿では、回復期のリハにおけるリハ栄養管理

に関する先行研究をレビューし、エビデンスに基づ

いたリハ栄養の実践を回復期リハでどのように進め

るか、特に脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症

候群の疾患別に詳述し、回復期リハにおけるリハ栄養の現状

と今後の展望を概説する。

回復期のリハの目的と現状

 回復期のリハの目的は、主に脳卒中や大腿骨近位部骨

(2)

図2 回復期リハビリテーション病棟における疾患別の低栄養の実態   (文献19より ) 図3 回復期リハビリテーション病棟における栄養障害の有無と ADL帰結  (文献19より) 図4 回復期リハビリテーション病棟における栄養障害の有無と転帰先 (文献19より)

折、廃用症候群の患者に対して、日常生

活動作(Activities of daily living;以下、

ADLと略)の向上、自宅復帰を目的とした

多職種協働による集中的な入院リハビリ

テーションを提供することである。 

 回復期リハは質、量ともに社会からの

期待が増加している。本邦の高齢化率は

26.0%(2015年10月時点)であり、世界で

最も高い。回復期リハ病棟は制度化され

た2010年以降、病床数は年々増加してお

り、最新の登録病床数は全国で74,460病

床に上る(図1)

7)

。2016年度診療報酬改

定で「成果に基づく報酬」がより重視され、

ADL改善率や自宅復帰率などのリハのアウトカムを重視した

質の高いリハ医療を提供することが求められている。また、栄

養サポートチーム(nutrition support team;以下、NSTと略)

の増加とNST加算による診療報酬上の支援、NST専門療法

士の対象職種にリハ関連職種が追加拡充されたこと、などに

より、本邦の回復期リハにおけるリハ栄養の認知度と重要性

は高まりつつあると言える。さらに、団塊の世代が後期高齢者

(75歳以上)となる2026年にむけて、地域包括ケアシステム

や新たな医療提供体制の構築が議論されており、回復期リ

ハ病棟における医療と生活、介護をつなぐノウハウや人材が

大きな役割を担うことが高く期待されている。

低栄養の実態とリハのアウトカムへの影響

 リハを行う高齢者では低栄養を高い頻度に認める

6)

。入

院リハを行う高齢者の先行研究では、低栄養の頻度は49-

67%である

8)

。オーストラリアにおいて、リハ病院に入院した

高齢者の栄養状態をMini Nutritional Assessment-Short

Form(以下、MNA

®

-SFと略)で評価したところ、33%が低栄

養、51.5%が低栄養リスクとそれぞれ診断された

9)

。海外12か

国からの24の研究データから解析された高齢者4,507人の検

討では、MNA

®

で評価した低栄養を最も多く認めたのはリハ

施設であった(リハ施設 50.5%;病院 38.7%)

10)

。ドイツにお

ける650人の高齢者を対象とした研究では、リハ施設で40.8%

に低栄養を認めた

11)

。システマチックレビューでは、リハ病院

に入院した高齢者の低栄養は、リハの効果としての機能回復

や退院後のquality of life(以下、QOLと略)に対して負の効

果を与えることがわかった

12)

。また、リハ病院入院時に栄養障

害を認める高齢者は、急性転化や長期療養型病院への転

院が多く、在宅復帰が少ない

13)14)

。さらに、リハのアウトカムが

低栄養の高齢者ではより低下することが、脳卒中

15)

、大腿骨

近位部骨折

16)

、廃用症候群

17)18)

、およびその他の様々な疾

患で示されている。

 本邦における回復期リハ病棟の栄養障害の実態について

は西岡らが報告している

19)

。回復期リハ病棟(9施設、25病

棟)に2012年2月の1か月に退棟した65歳以上の高齢者230名

を対象とした多施設横断調査において、疾患別に入棟時の

栄養状態をGeriatric Nutritional Risk Index(以下、GNRI

と略)を用いて評価したところ、全対象者のうち栄養障害が

(3)

図5 熊本リハビリテーション病院回復期ビリテーション病棟における疾患別の低栄養、 サルコペニアの頻度 原発性サルコペニア  加齢による影響のみで、活動・栄養・疾患の影響はない 二次性サルコペニア  活動によるサルコペニア:低活動、廃用性筋委縮、無重力  栄養によるサルコペニア:飢餓、エネルギー摂取量不足  疾患によるサルコペニア     侵 襲:急性疾患、炎症(手術、外傷、熱傷、急性 感染症、など)     悪液質:慢性疾患、炎症(がん、慢性心不全、慢性 腎不全、慢性呼吸不全、慢性肝不全、膠 原病、慢性感染症、など)     原疾患:筋萎縮性側索硬化症、多発性筋炎、甲状 腺機能亢進症、など 表1 サルコペニアの原因

あると判断された患者は約65%であり、特にくも膜下出血、骨

粗しょう症関連疾患、廃用症候群でその頻度が高かった(図

2)。また、栄養障害の有無とADL帰結および転帰先につ

いて検討したところ、栄養良好の高齢者は入棟時FIM、退

棟時FIMがいずれも高く、自宅退院の割合が高かった(図3、

図4)。

 回復期リハ病棟の患者に低栄養が多い原因としては、成

人低栄養の分類

20)

として挙げられている飢餓、急性疾患、慢

性疾患のいずれにも曝露しやすい集団であることが挙げられ

る。すなわち、回復期リハ病棟の患者は、急性疾患治療後

の高齢者が中心であり、①病前からの低栄養や急性疾患治

療の不適切な栄養管理、②慢性心不全や慢性呼吸不全な

どの慢性疾患の合併、③急性疾患や外傷、手術による侵襲、

などの要因が複合して栄養状態が悪化しているものと考えら

れる。

 熊本リハビリテーション病院において、2014年6月から2015

年10月までの期間に回復期リハ病棟に連続入院した637人を

対象に低栄養とサルコペニアの有症率を解析した結果を図

5に示す。低栄養はMNA

®

-SFを用いて評価した。サルコペ

ニアは体組成分析(InBodyS10)で評価した骨格筋指数と握

力の2つの変数で、AWGSのカットオフ値

21)

を採用して評価し

た。低栄養は全体で約55%の対象者に認めたが、疾患別に

低栄養の頻度に差を認めた。特記すべきは、肺炎後廃用症

候群の高齢者では92%超に低栄養を認めたことである。その

他の疾患では、脳梗塞や大腿骨近位部骨折では低栄養の

頻度が高く、人工膝関節置換術後では低栄養の頻度が低

かった。脳梗塞患者に低栄養が多い原因としては、糖尿病を

はじめとした動脈硬化をきたす多彩な疾患や心房細動などの

併存疾患が多いこと、が考えられる。大腿骨近位部骨折患

者では、低栄養や低体重による転倒リスクの上昇が背景にあ

ると考えられる。一方で、人工膝関節置換術の原因疾患とし

て多い変形性膝関節症患者には肥満が

多いことが、この疾患に低栄養の頻度が

少ない一因であると考えられる。

サルコペニアの実態および

原因と対策

 サルコペニアとは、狭義では加齢による

筋肉量減少、広義ではすべての原因によ

る筋肉量減少、筋力低下、身体機能低

下を意味する

5)

。広義のサルコペニアの原

因は、加齢以外に活動、栄養、疾患があ

る(表1)。回復期のリハを行う高齢者にお

いては、広義のサルコペニアを考える必要

がある。加齢に伴うサルコペニアは、加齢

に伴う筋肉量の低下であり、筋肉量のピー

クを20歳代後半から30歳代前半として、徐々に筋肉量が減

少し、80歳頃にはピーク時の5~7割程度の筋肉量となる。活

動に関連したサルコペニアは、ベッド上安静、無重力、絶飲

食などによって生じる。廃用症候群による廃用性筋委縮はこ

こに含まれる。栄養に関連したサルコペニアは、エネルギーと

蛋白質の摂取量不足によって生じる。つまり飢餓による筋肉量

と筋力の低下である。疾患に関連したサルコペニアは、侵襲、

悪液質、原疾患によって生じる。

 リハを行う高齢者ではサルコペニアを高い頻度で認める

6)

先行研究によると、リハを行う地域在住高齢者では10-30%

22)

、リハ施設における自立歩行可能な高齢者では40%に

23)

それぞれサルコペニアを認めた。スペインにおけるリハ病院に

入院した高齢者99人を対象とした研究では、対象者の46.5%

にサルコペニアを認めた

24)

。最近のシステマチックレビューで

25)

、リハを行う高齢者を対象としたサルコペニアの質の高い

16の先行研究によると(9つの前向きコホート研究、4つの横断

(4)

●栄養障害を認めるか評価する。何が原因か評価する。 ●広義のサルコペニアを認めるか評価する。何が原因か 評価する。 ●摂食嚥下障害を認めるか評価する。 ●現在の栄養管理は適切か、今後の栄養状態はどうなり そうか判断する。 ●機能改善を目標としたリハビリテーション(レジスタンス トレーニングや持久力増強訓練)を実施できる栄養状 態か評価する。 表2 リハビリテーション栄養における評価のポイント

研究、1つのランダム化介入研究)、リハ病院におけるサルコ

ペニアの有症率は約50%であった。しかし、脳卒中を対象と

したサルコペニアの先行研究が本稿執筆時点でほとんど存

在せず、そもそも、リハを行う高齢者を対象としたサルコペニ

アの先行研究が非常に少ないのが現状である。

 当院回復期リハ病棟の高齢者637人の疾患別のサルコペ

ニアの有症率を図5に示す。サルコペニアを全体で約50%の

対象者に認めたが、低栄養と同様に疾患別にサルコペニア

の頻度に差を認めた。特記すべきは、肺炎後廃用症候群の

高齢者では93%超にサルコペニアを認めたことである。その

他の疾患では、脳梗塞や大腿骨近位部骨折ではサルコペニ

アの頻度が高く、人工膝関節置換術後ではサルコペニアの

頻度が低かった。疾患別のサルコペニアの頻度は低栄養の

頻度に近似しており、回復期リハのセッティングにおけるサル

コペニアと低栄養の高い関連性を示している。ただし、研究

デザインが横断研究であるため、サルコペニアと低栄養の因

果関係についてはここで述べることは出来ない。

 サルコペニアへの対応はリハ栄養そのものであり、原因に

よって対応が異なる

6)

。そのため、リハを行う高齢者に対して

は、すべての原因について評価する必要がある。加齢に伴う

サルコペニアへの対策としては、レジスタンストレーニング、蛋

白質やアミノ酸(特に分岐鎖アミノ酸)の摂取、禁煙指導、薬

物治療、などが含まれる

26)27)

。活動に関連したサルコペニア

への対策としては、早期離床、運動、安易な安静や絶飲食

の防止、などが重要である。栄養に関連したサルコペニアに

対しては、適切な栄養アセスメントに基づいて適切な栄養管

理を行うことが重要である。疾患に関連したサルコペニアに対

しては、臓器障害や炎症性疾患、悪性疾患、内分泌疾患の

治療そのものが重要である。

 回復期のリハにおいては、対象者の多くが高齢であり、身

体障害や治療による活動性の低下や安静状態を多く認め、

低栄養の頻度が高く、脳卒中や大腿骨近位部骨折、廃用症

候群の原因疾患以外にも多くの併存疾患を合併しているた

め、サルコペニアの原因は加齢、活動、栄養、疾患と多岐に

わたり重複している可能性が高く、サルコペニアの対策はこれ

らを全てアセスメントして対応することが必要であり、リハ栄養

のコンセプトが機能を最大限に高めるために重要である。リハ

栄養における評価のポイントを表2に示す。

疾患別のリハ栄養

 本邦における回復期のリハの対象となる身体障害の主な

原因として、脳卒中(47.9%)、大腿骨近位部骨折(35.2%)を

含む整形外科疾患、廃用症候群(10.5%)、頭部外傷や脊髄

損傷(5.4%)などが挙げられる

28)

。以下に、脳卒中、大腿骨

近位部骨折、廃用症候群におけるリハ栄養に関連した先行

研究をレビューする。

1.脳卒中

 回復期リハにおける脳卒中患者では、訓練時間(リハの単

位数)を多くすることで身体機能の改善や在宅復帰率の向上

に寄与することが知られているが

29)30)

、脳卒中患者では8.2~

49.0%に栄養障害を認めており、リハのステージが進むにつれ

て栄養障害が増加する

31)

。栄養ケアを考慮せずに積極的な

リハを行うことで、意図せぬ消費エネルギーの亢進により、患

者の栄養状態がさらに悪化する可能性がある。また、BMI

が18.5kg/m

2

以下の低体重の脳卒中患者はFunctional

Independence Measure(FIM)の改善効果が最も低い

32)

 本邦の回復期リハ病棟における脳卒中の高齢患者230

名を対象とした多施設研究によると、低栄養患者は入院時

ADL、退院時ADLがともに低く、入院時の低栄養は入院時

ADLと独立して退院時ADLと関連しており、低栄養患者は

自宅復帰率が低かった

19)

。また、回復期リハ病棟に入院中に

栄養状態が改善した脳卒中患者は退院時ADLがより改善す

る、ということが本邦の管理栄養士により英語論文として直近

で2編報告されている

33)34)

 脳卒中における骨格筋の構造的、代謝的、機能的変化に

ついては十分な関心が払われていないのが現状であり

35)36)

脳卒中におけるサルコペニアの診断はこの領域におけるチャ

レンジングな課題のひとつである。脳卒中後の骨格筋減少に

関する過去のレビューによると

37)

、脳卒中発症から6か月の時

点で、麻痺がある上下肢は麻痺がない上下肢に比べて有意

に除脂肪量が少ない。脳卒中に関連した骨格筋萎縮のメカ

ニズムには、廃用性萎縮や痙縮、炎症、除神経、神経再支配、

不十分な栄養、などが関与するとされているが

36)

、脳卒中に

よるサルコペニアを正確に診断し適切に治療するために、こ

の領域のさらなる研究が必要である。

 栄養介入は脳卒中リハのアウトカムを改善する。116人の

低栄養の脳卒中リハ患者を対象としたRCTでは、積極的な

栄養療法を行ったグループはルーチンの栄養療法を行ったグ

ループに比べてFIMがより改善した

38)

。また、低栄養at risk

(5)

うとルーチンケアに比べて体重減少がより制御され、QOLや

握力がより改善した

39)

。コクランレビューによると、急性期もしく

は回復期の脳卒中患者で積極的な栄養ケアを行うと、褥瘡

の発生頻度の減少や総エネルギー摂取量や蛋白摂取量の

増加を認めることが報告されている

40)

2.大腿骨近位部骨折

 大腿骨近位部骨折は他の整形外科疾患より身体障害や

医療コスト、死亡率とより関連することが示されている

41)

。また、

世界的にみても、大腿骨近位部骨折の罹患患者は年々増加

しており、2000年の160万人から2050年には630万人に上昇

すると推察されている

41)

。大腿骨近位部骨折は高齢者の運

動期リハを要する疾患で最も頻発するものであると言えるだ

ろう。

 大腿骨近位部骨折における低栄養の頻度は栄養評価方

法によって異なるものの、総じて高い傾向がある。BMIによる

評価では13%に低栄養を認め、MNA

®

-SFによる評価では

27%に、ICD10-AMによる報告では48%に、血中アルブミン値

による評価では53%にそれぞれ低栄養を認めている

42)

。また、

入院時のMNA

®

スコアが大腿骨近位部骨折の6か月後の歩

行状態や死亡率の予測因子となることや

43)

、血中アルブミンと

BMIが大腿骨近位部骨折後の死亡に影響している

44)

、こと

を示したコホート研究がある。大腿骨近位部骨折では低栄養

を認めることが多く、リハのアウトカムに影響を与えることが少

なくないと言える。

 大腿骨近位部骨折におけるサルコペニアの頻度も高い。

先行研究によると、対象患者のセッティングによりばらつきがあ

るものの、21.8~95.0%の大腿骨近位部骨折の患者にサルコ

ペニアを認めている

45)~47)

。本邦における大腿骨近位部骨折

の受傷直後の357人を対象とした研究では、女性の44.7%お

よび男性の81.1%にサルコペニアを認め、サルコペニアは大

腿骨近位部骨折の頻度と独立して関連していた

48)

 栄養介入は大腿骨近位部骨折の予後を改善する。コクラ

ンレビューによると、大腿骨近位部骨折の高齢者に対する栄

養補助食品のエビデンスが弱いながら示されている

49)

。ある

介入研究では、静脈栄養とその後の経口補助食品による栄

養介入で、合併症が減少することが示された

49)

。前向きコホー

ト研究の先行研究によると、多職種による術後の栄養ケアの

介入により、低栄養が減少しQOLが改善する

50)

。栄養士によ

る厳格なエネルギー管理を栄養ケアの介入としたランダム化

介入研究では、栄養ケアの介入により術後の合併症が減少

した

51)

。本邦におけるランダム化介入研究では、リハにホエイ

蛋白摂取を積極的に併用することで術後早期の筋力と活動

レベルの改善効果を認めた

52)

。これらの結果より、大腿骨近

位部骨折患者に対する栄養サポートは、栄養状態の改善や

リハのアウトカム改善に効果があるものと推察される。

3.廃用症候群

 廃用症候群とは、疾患などのために活動性や運動量の低

下した安静状態が続くことで、全身の臓器に生じる二次的障

害の総称である。誤嚥性肺炎や人工呼吸器管理、集中治

療管理を要する重症疾患、多発外傷、急性感染症、手術後、

熱傷など高度の侵襲を生じる疾患が、廃用症候群の原因と

なることが多い

53)

。予備力の少ない高齢者では、軽度の侵襲

や短期間の安静臥床や絶飲食でも全身や嚥下機能の廃用

症候群を認めやすい。そのため、特に高齢者では不要な安

静臥床や絶飲食を避け、早期離床と経口摂取を推進するこ

とが重要である。

 廃用症候群では低栄養とサルコペニアの頻度が高い。本

邦における169人の廃用症候群を対象にMNA

®

-SFで栄

養評価を行った前向きコホート研究では、87.6%に低栄養

を、12.4%に低栄養のリスクをそれぞれ認め、栄養状態良好

と診断された患者はいなかった

54)

。また同研究では、低栄養

患者は退院時ADLがより低く、慢性疾患に関連した低栄養

は独立して退院時ADLと関連していた。当院における検討

でも、肺炎後廃用症候群の9割超に低栄養とサルコペニアを

認めていることは特記すべきである。廃用症候群の患者で

は、BMIが正常より肥満(BMI: 30-35)の方がADLの改善が

高く、低体重で最も改善が少ない

55)

。検査値では、血中アル

ブミン濃度が入院中に0.3g/dL以上改善したグループでADL

の改善が顕著であった

56)

。本邦における先行研究では、退

院時ADLと独立して関連を認めたのは血中アルブミン濃度と

MNA

®

-SF、悪液質の3項目であった

54)

 広義のサルコペニアの原因は、加齢以外に活動、栄養、

疾患があるが(表1)、このうち活動によるサルコペニアは廃用

性筋委縮であるため、廃用症候群では二次性サルコペニア

を認めることが多い。高齢者では、廃用症候群となる前から

加齢によるサルコペニアを認めていた可能性がある。廃用症

候群には多くの患者に低栄養を認め、栄養に関連したサルコ

ペニアを合併している可能性がある。また、廃用症候群には

先行する急性疾患や併存する慢性疾患による疾患に関連し

たサルコペニアを合併することが多い。つまり、高齢者の廃用

症候群では、サルコペニアのすべての原因を合併している可

能性があり、サルコペニアの適切な評価と対応が重要である。

 高齢者の廃用症候群の多くに低栄養を認め、サルコペニ

アのすべての原因(加齢、活動、栄養、疾患)を合併する可

能性があり、低栄養の場合は機能予後が悪い。以上より、高

齢者の廃用症候群に対しては、リハだけ行うのではなくリハ栄

養管理を行うことが重要である。

回復期リハにおけるリハ栄養の現状と今後の展望

 回復期リハ病棟の対象疾患には、脳卒中、大腿骨近位部

骨折、廃用症候群が挙げられ、いずれの疾患においても低

(6)

図6  回復期リハビリテーション 病棟入棟患者における 栄養管理方法の実態  (文献57より) 図7 回復期リハビリテーション病棟入棟患者における 経口摂取可能な患者の食事摂取率の実態  (文献19より) 図8 回復期リハビリテーションにおける BCAAの補給は骨格筋量および ADLを改善する ■栄養管理方法が適切か定期的に確認する。 ・簡易スクリーニング法(MNAⓇ、GNRI等) ・身体計測値(体重、BMI、上腕周囲長、下腿周囲長など) ・血液生化学検査(Alb、総リンパ数など) ・その他(栄養アクセス、事摂取状況、嗜好の聴取、口腔内汚染 や嚥下障害の評価など) ■必要エネルギーを充足した上で、蛋白質や分岐鎖アミノ 酸(BCAA)を投与することで筋蛋白代謝の効率化が期 待できる。 ■栄養投与ルートは経口摂取を第一選択とするが、経口 摂取だけでは必要なエネルギーを充足できない場合 は、リハビリのプログラムを妨げない範囲で経腸栄養や 静脈栄養の併用も考慮する。 表3 リハビリテーションにおける栄養管理のポイント

栄養とサルコペニアが好発する。さらに、低栄養とサルコペニ

アはともにリハの転帰に悪影響を与える。つまり、回復期リハ

を行うすべての高齢者に対して、リハ単独の介入ではなく、リ

ハ栄養管理を行うことが必須であると言える。リハにおける栄

養管理のポイントを表3に示す。リハを行う高齢者に対しては、

入院直後の栄養評価とその後のモニタリングを適切に行い、

必要に応じて分岐鎖アミノ酸の投与を行うことが重要である。

また、栄養アクセスについては経口摂取が第一に推奨される

ものの、経口摂取のみではエネルギー蛋白の摂取量が不足

する場合は、経腸栄養や経静脈栄養の併用を考慮すべきで

ある。

 日本慢性期医療協会の調査報告によると、回復期リハ病

棟では9割以上が経口摂取単独での栄養管理であり、他の

病棟と比較して経口摂取の割合が高い(図6)

57)

。一方で、

回復期リハ病棟における実際の食事摂取率の割合をみると、

約75%の患者が8割以上の提供食事量を摂取しているものの、

中には摂取率が50%以下の例もあり、経口摂取単独では必

要エネルギーを充足できていない症例が少なくない可能性が

ある(図7)。不足するエネルギーを補充する方法の第一選択

は経口摂取であり、少量高エネルギーの栄養補助食品の提

供や、中鎖脂肪酸や蛋白質のパウダーやオイルによる補充で

高エネルギー、高蛋白の食事提供が可能となる。これらの経

口摂取の栄養管理だけでエネルギー蛋白の摂取が不足する

(7)

場合は、リハを妨げない範囲で経腸栄養や静脈栄養を考慮

する必要がある。

 蛋白質や分岐鎖アミノ酸の積極的な摂取によるリハ効果の

改善も期待できる可能性がある。筆者らの回復期リハにおけ

るランダム化介入研究では、骨格筋の減少した回復期リハの

高齢患者に対して分岐鎖アミノ酸の摂取をリハと併用すること

で骨格筋量の増大とADLの改善効果を認めた(図8)

58)

。分

岐鎖アミノ酸やビタミンDなどを高配合したリハ高齢者向けの

栄養補助食品がいくつか商品化されており、リハとこれらの栄

養補助食品の併用も考慮に値すると思われる。

 回復期のリハにおいてリハ栄養の重要性と必要性が徐々

に認知されるようになり、日本各地に広がりつつあるが、低栄

養やサルコペニアへの対応も含めて残念ながらリハ栄養の概

念と対応は依然として総論にとどまっている印象がある。また、

リハ栄養に関する研究においては、観察研究の報告が学会

発表、論文発表ともに増加しているものの、質の高い横断研

究や縦断研究による因果関係の解明、さらにはランダム化比

較研究による介入のエビデンスの蓄積が望まれる。超高齢社

会に世界ではじめて突入した日本からこそ、リハ栄養の質の

高い臨床研究がなされ、この領域のエビデンスの構築と世界

への発信が期待される。

おわりに

 回復期のリハにおけるリハ栄養管理に関する先行研究をレ

ビューし、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群の疾患

別のリハ栄養について考察しつつ、回復期リハにおけるリハ

栄養の現状と今後の展望について概説した。栄養管理を意

識せずに適切なリハを実施できるのは栄養状態に問題なく栄

養管理が適切な場合だけである。またサルコペニアを合併し

ている場合は、サルコペニアの原因と対策を適切に行う必要

がある。実際に、回復期のリハを行う高齢者の多くが低栄養

でサルコペニアである。回復期リハにおいて、リハ栄養のコン

セプトがさらに広がり、多くの医療従事者がリハ栄養を実践し

て、障害者や高齢者の機能、活動、参加、QOLを最大限に

高めることができるようになれば、と願っている。

 本論文に関する著者の利益相反なし

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