• 検索結果がありません。

untitled

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "untitled"

Copied!
50
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

塩 酸 モ ザ バ プ タ ン

フィズリン錠 30mg

医薬品製造承認申請書添付資料

第 2 部(資料概要)

2.5 臨床に関する概括評価

大塚製薬株式会社

(2)

2.5 臨床に関する概括評価 i

目次

目次 ...i

略号一覧 ... iii

2.5

臨床に関する概括評価 ...1

2.5.1. 製品開発の根拠 ... 1 2.5.1.1 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の病態及び疫学的な情報... 1 2.5.1.2 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対する既存の治療法及びその問題 点... 5 2.5.1.3 開発の経緯 ... 6 2.5.1.4 規制当局の助言及びその対応 ... 15 2.5.1.5 医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)の遵守 ... 16 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価... 16 2.5.2.1 吸収及び経口投与時のバイオアベイラビリティ... 16 2.5.2.2 経口吸収における食事の影響 ... 17 2.5.2.3 治験用散剤と治験用錠剤の生物学的同等性 ... 17 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ... 18 2.5.3.1 薬物動態... 18 2.5.3.2 吸収,分布,代謝,排泄... 19 2.5.3.3 薬物相互作用... 23 2.5.3.4 薬力学的作用... 24 2.5.4 有効性の概括評価 ... 25 2.5.4.1 異所性 ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験 ... 25 2.5.4.2 有効性評価に関する考察... 29 2.5.5 安全性の概括評価 ... 32 2.5.5.1 健康成人男子における安全性の評価... 32 2.5.5.2 SIADH 及び各種浮腫性疾患における安全性の評価 ... 33 2.5.5.3 内因性要因による影響 ... 37 2.5.5.4 前臨床試験で観察された毒性所見の臨床試験における発現... 38 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論... 40 2.5.6.1 申請適応症に対する有効性 ... 40

(3)

2.5 臨床に関する概括評価

ii

2.5.6.2 安全性に関する所見 ... 40 2.5.7 参考文献 ... 43

(4)

2.5 臨床に関する概括評価

iii

略号一覧

略 号 省略していない表現

ACTH 副腎皮質刺激ホルモン

ADH 抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone)

ALT(GPT) アラニン・アミノトランスフェラーゼ AST(GOT) アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ AUC 血漿中濃度−時間曲線下面積 AUCt 投与後 0 時間から最終測定可能時間までの AUC AUCxh 投与後 0 時間から x 時間までの AUC BUN 尿素窒素 cAMP アデノシン 3’, 5’-サイクリック一リン酸 Cmax 最高血漿中濃度 CYP チトクローム P450 DNA デオキシリボ核酸 DTM Dextromethorphan DR Dextrorphan GCP 医薬品の臨床試験の実施に関する基準 γ-GTP γ-グルタミルトランスフェラーゼ LDH 乳酸脱水素酵素 3MM 3-Methoxymorphinan 3OHM 3-Hydroxymorphinan QTc 補正した QT 間隔 SIADH

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone) t1/2,z 最終相の血漿中消失半減期 T3 トリヨードサイロニン T4 サイロキシン tmax 最高血漿中濃度到達時間 TSH 甲状腺刺激ホルモン 異所性 ADH 症候群 異所性抗利尿ホルモン(ADH)産生腫瘍による抗利尿ホルモン不適合分泌 症候群

(5)

2.5 臨床に関する概括評価 iv

略号一覧

<略号> 名称 (由来) 構造式 塩酸モザバプタン(JAN) OPC-31260 (OPC-129) N N O N H O CH3 CH3 CH3 H · HCl <M1> 5-ヒドロキシ体 OPC-31351 (主要代謝物) N OH O N H O CH3 H <M2> 4,5-シスジオール体 DM-3109 (主要代謝物) N OH O N H O CH3 H OH H 及び鏡像異性体 <M3> 4,5-トランスジオール体 DM-3111 (主要代謝物) N OH O N H O CH3 H OH H 及び鏡像異性体 <M4> 5-アミノ体 OPC-31412 (主要代謝物) N N O N H O H H CH3 H <M5> 5-メチルアミノ体 OPC-31325 (主要代謝物) N N O N H O H CH3 CH3 H <M6> 開環ケトカルボン酸体 DM-3105 (主要代謝物) NH O O N H O CH3 OH O <M7> 側鎖カルボン酸体 SFO-31030 (主要代謝物) N H O CH3 COOH <M8> 5-ケトン体 OPC-31310 (代謝物) N O N H O CH3 O <M9> ピロリドン体 DM-3112 (代謝物) NH O N H O CH3 N H O <M10> 開環ジオール体 DM-3118 (代謝物) NH OH O N H O CH3 OH <M11> 開環ヒドロキシケトン体 DM-3119 (代謝物) NH O O N H O CH3 OH

(6)

2.5 臨床に関する概括評価 v <略号> 名称 (由来) 構造式 <M12> 開環ヒドロキシカルボン酸体 DM-3120 (代謝物) NH OH O N H O CH3 OH O <M13> N-メチルピロリドン体 DM-3130 (代謝物) NH O N H O CH3 N CH3 O <M14> DM-3153 (代謝物) <M15> DM-3155 (代謝物) <M16> 開環ヒドロキシケトカルボン酸体 DM-3157 (代謝物) NH O O N H O CH3 OH O OH <M17> NM-3 (代謝物) <M18> NM-4 (代謝物) <M19> NM-7 (代謝物) <M20> NM-8 (代謝物) <M21> NM-9 (代謝物)

(7)

2.5 臨床に関する概括評価 1

2.5

臨床に関する概括評価

2.5.1. 製品開発の根拠 2.5.1.1 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群の病態及び疫学的な情報 アルギニンバソプレシン(以下,バソプレシンと略)は,視床下部の視索上核及び室傍核の大 神経内分泌細胞で生成され,種々の分泌刺激により下垂体後葉から血中に分泌される。バソプレ シンは,その作用の一つとして抗利尿作用を持つことから,抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone, 以下,ADH と略)とも呼ばれる。 バソプレシンの生理的分泌調節機構は,血漿浸透圧の変動による浸透圧調節系と循環血液量や 血圧の変動による容量・血圧調節系に大きく分けられるが1,生体内において最も繊細にバソプレ シン分泌を調節しているのは,浸透圧調節系である。 浸透圧調節系では,体液の浸透圧を一定の範囲に保つため,血漿浸透圧の変動に応じてバソプ レシンの分泌促進あるいは抑制がおこる。すなわち,血漿浸透圧が上昇した場合には,下垂体後 葉からのバソプレシン分泌が促進され,腎集合管での水再吸収が亢進する。一方,血漿浸透圧が 低下した場合には,バソプレシン分泌が抑制され,腎集合管での水再吸収が抑制されることによ り過剰な水分が排泄される。このようなバソプレシンの分泌促進あるいは抑制による体内水分量 の調節機構は,血漿浸透圧の 1%程度の増減を感知して働き,その結果生体内の水分や浸透圧が 狭い生理的範囲内で維持されている。この浸透圧調節系において,腎集合管での水再吸収亢進及 び抑制は,バソプレシン V2-受容体(以下,V2-受容体と略)を介して行われている。

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone,以 下,SIADH と略)は,バソプレシンが生理的分泌調節機構から逸脱して不適切に分泌されている 病態である。ただし,血漿浸透圧との相対関係においてバソプレシンが不適切に分泌されている 状態であり,血漿中バソプレシン濃度が必ずしも正常値以上の高値を示すわけでない(図 2.5.1-1)。 なお,SIADH は,上述の生理的調節機構により分泌亢進あるいは抑制される内因性バソプレシン (下垂体後葉由来のバソプレシン)による場合だけでなく,悪性腫瘍から異所性に産生されるバ ソプレシンによる場合(異所性 ADH 産生腫瘍による SIADH,以下,異所性 ADH 症候群と略) も含まれる。

不適切に分泌されたバソプレシンは,V2-受容体を介し腎集合管での水再吸収を促進することに

より,腎臓からの水分の排泄を抑制して水分貯留を起こし,その結果,希釈性低ナトリウム血症 を来たす。

(8)

2.5 臨床に関する概括評価 2 図 2.5.1-1 血漿浸透圧と血漿 ADH 濃度の関係文献2より改変 SIADH の診断基準として,Bartter ら3は,1) 低浸透圧血症を伴う低ナトリウム血症,2) 尿中ナ トリウム排泄の持続,3) 脱水がない,4) 尿がある程度濃縮されている,5) 腎機能が正常,6) 副 腎機能が正常,を挙げ,更に浮腫がないこと,飲水制限により症状が改善することも診断上参考 となるとしている。また,他の原因による低ナトリウム血症と SIADH を鑑別するため,水負荷 試験も有用である。水負荷試験は,体重 1 kg あたり 15∼20 mL の水を経口負荷し,4 時間後まで 30 分ごとに採尿を,1 時間ごとに採血を行う。SIADH 以外では 4 時間の尿量は負荷水分量の 80% 以上となり,血漿 ADH 濃度が 1 pg/mL 以下に低下するのに対し,SIADH では尿量が 50%以下に とどまり,血漿 ADH 濃度の低下もみられない。 平成 14 年には,厚生労働省厚生科学研究補助金特定疾患対策研究事業 間脳下垂体機能障害に 関する調査研究班により,各項目の具体的な数値を規定した「バソプレシン分泌過剰症(SIADH) の診断の手引き」が提示されている4(表 2.5.1-1)。 0 5 10 15 260 270 280 290 300 310 血漿浸透圧(mOsm/kg) 血漿 AD H 濃度( pg /m L) 測定感度 SIADH領域 正常範囲 尿崩症領域 0 5 10 15 260 270 280 290 300 310 血漿浸透圧(mOsm/kg) 血漿 AD H 濃度( pg /m L) 測定感度 SIADH領域 正常範囲 尿崩症領域

(9)

2.5 臨床に関する概括評価 3 表 2.5.1-1 バソプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断の手引き I. 主症候 1. 特異的ではないが,倦怠感,食欲低下,意識障害などの低ナトリウム血症症状がある。 2. 脱水の所見を認めない。 II. 検査所見 1. 低ナトリウム血症:血清ナトリウム濃度は 135 mEq/L を下回る。 2. 血漿バソプレシン値:血清ナトリウムが 135 mEq/L 未満で,血漿バソプレシン値が測 定感度以上である。 3. 低浸透圧血症:血漿浸透圧は 270 mOsm/kg を下回る。 4. 高張尿:尿浸透圧は,300 mOsm/kg を上回る。 5. ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は 20 mEq/L 以上である。 6. 腎機能正常:血清クレアチニンは 1.2 mg/dL 以下である。 7. 副腎皮質機能正常:血清コルチゾールは 6 µg/dL 以上である。 III. 参考所見 1. 原疾患(表 2.5.1-2)の診断が確定していることが診断上の参考となる。 2. 血漿レニン活性は 5 ng/mL/h 以下であることが多い。 3. 血清尿酸値は 5 mg/dL 以下であることが多い。 4. 水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する。 5. 尿中アクアポリン-2 排泄は 300 fmol/mg クレアチニン以上であることが多い(基準値 100∼200 fmol/mg クレアチニン)。 [診断基準] 確実例 Ⅱで 1∼7 の所見があり,かつ脱水の所見を認めないもの。 [鑑別診断]低ナトリウム血症をきたす次のものを除外する。 1. 細胞外液量の過剰な低ナトリウム血症:心不全,肝硬変の腹水貯留時,ネフローゼ症 候群 2. ナトリウム漏出が著明な低ナトリウム血症:腎性ナトリウム喪失,下痢,嘔吐 SIADH の原因は,バソプレシンを異所性に産生する異所性 ADH 産生腫瘍による場合と中枢神 経系疾患,肺疾患あるいは薬剤により下垂体後葉由来のバソプレシン分泌が亢進する場合とに大 別される(表 2.5.1-2)。

(10)

2.5 臨床に関する概括評価 4 表 2.5.1-2 SIADH の原疾患4 1. 中枢神経系疾患 髄膜炎,外傷,くも膜下出血,脳腫瘍,Guillain-Barre 症候群,脳炎 2. 肺疾患 肺炎,肺癌(ADH 異所性産生腫瘍を除く),肺結核,肺アスペルギルス症,肺膿瘍, 気管支喘息,陽圧呼吸 3. ADH 異所性産生腫瘍 肺小細胞癌,膵癌 4. 薬剤 ビンクリスチン,クロフィブレート,アミトリプチン,イミプラミン 表 2.5.1-3 SIADH の重症度分類5 重症度 血清ナトリウム 濃度 (mEq/L) 意識障害 筋肉痙攣 全身状態 軽 症 125∼134 なし なし 異常なし∼ 倦怠感,食欲低下 中等症 115∼124 刺激なしで覚醒するが清明で ない(JCS I-1)∼刺激なしで覚 醒するが,名前,生年月日が言 えない(JCS I-3) 四肢筋のこわばり ∼ 筋繊維痙攣 頭痛∼悪心 重 症 ∼114 刺激すると覚醒する(JCS II) ∼刺激しても覚醒しない(JCS III) 全身痙攣 高度の倦怠感,頭 痛,嘔吐など

JCS:Japan Coma Scale

SIADH に随伴する症状は,低ナトリウム血症に伴う脳細胞内の水分増加による脳浮腫に起因す る中枢神経症状であり,その程度は血清ナトリウム濃度の低下の程度と相関する(表 2.5.1-3)。 血清ナトリウム濃度が 125 mEq/L 程度までは無症状のことが多いが,それ以下ではしだいに中枢 神経症状が生じ,100 mEq/L 以下では死に至る。慢性に持続する低ナトリウム血症では,脳細胞 内の浸透圧物質がしだいに減少して低浸透圧環境に適応するため,脳浮腫は軽減し比較的症状は 軽い。しかし,血清ナトリウム濃度が急激に低下した場合には,浸透圧物質の反応が追いつかず, 脳浮腫が進行して症状が悪化する。 SIADH についての疫学調査は,平成 11 年度の厚生省特定疾患間脳下垂体機能障害調査研究班 と特定疾患治療研究事業未対象疾患の疫学像を把握するための調査研究班による全国疫学調査6 として実施された。本疫学調査は,全国の内科(内分泌代謝・神経),泌尿器科,脳神経外科, 小児科及び産婦人科から病床規模に応じて所定の割合で抽出した計 5,054 診療科に対し,間脳下 垂体機能障害調査研究班による SIADH の診断基準に合致する患者数のアンケート調査を行い, 回収した 3,216 診療科の回答に基づき集計されたものである。回収された 3,216 診療科での SIADH 患者の報告数は 469 人であり,推計患者数は 1,700 人(95%信頼区間:1,400∼2,100 人)と報告さ

(11)

2.5 臨床に関する概括評価 5 れた。 上記の報告は,原疾患を問わない SIADH であり,原疾患別の疫学調査の報告はない。そこで, 異所性 ADH 産生腫瘍の大部分が肺小細胞癌であることより,肺癌罹患数,肺癌中の肺小細胞癌 の比率,肺小細胞癌における SIADH の発症率から,異所性 ADH 症候群の患者数を推計した。 わが国における 1999 年の肺癌罹患数は,63,317 人(男性 45,091 人,女性 18,226 人)と推計さ れており7,肺癌に占める肺小細胞癌の比率は,男性で 17%,女性で 13%と報告されている8。こ れらより,肺小細胞癌患者数は,10,035 人(男性 7,665 人,女性 2,369 人)と推計される。一方, 肺小細胞癌における SIADH の発症率については,国内において 4.5%(112 例中 5 例)9,海外に おいて 5.6%(432 例中 24 例)10,7.2%(250 例中 18 例)11,11.4%(350 例中 40 例)12,14.2% (226 例中 32 例)13といくつかの報告がある。 以上より,肺小細胞癌による SIADH 患者数は,452∼1,425 人(10,035 人×4.5∼14.2%)と推 計された。 2.5.1.2 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対する既存の治療法及びその問題点 SIADH の治療目的は,低ナトリウム血症を是正し,脳浮腫の発生を防ぎ,中枢神経症状を改善 させることである。そのためには,原疾患を治療することによって低ナトリウム血症を引き起こ す原因を除去することが第一義的であるが,原因を除去できない場合や原因を特定できない場合 もあり,SIADH による低ナトリウム血症の治療が困難となっている。このような背景から,SIADH の治療とは,一般的に低ナトリウム血症の是正により脳浮腫の発生を防ぎ,中枢神経症状を改善 させることのみを指す。 治療方法は,1) 水分制限療法,2) バソプレシンの分泌抑制,3) バソプレシンの腎作用抑制の 3 つに大別される。単なるナトリウムの補給は,尿中ナトリウム排泄が増加するのみで,低ナト リウム血症の是正には有効ではない。 水分制限療法は,飲水,輸液及び食事中の水分を含めた 1 日の水分摂取量を体重 1 kg 当たり 15 ∼20 mL に制限する治療法で4,原疾患を問わずすべての SIADH に有効であるため最も一般的な 治療法である。しかしながら,治療上の理由により実際には十分な水分制限ができない場合もあ り,また,飲水量の制限は口渇を我慢しなければならないことも,その実施を困難としている一 因となっている。 血清ナトリウム濃度が急激に低下し,中枢神経症状が重篤な場合には,速効性の治療が必要と なる。この場合,フロセミドの静脈内投与により過剰な水分を除去し,尿中に失われたナトリウ ムを高張食塩水で補充することにより,血清ナトリウム濃度を上昇させる治療法が行われる。し かし,急激な血清ナトリウム濃度の上昇は不可逆的な中枢神経障害である橋中心髄鞘崩壊症を来 たす恐れがあり14,15,16,重症となると永続的な意識障害や死を招く恐れがあることから,治療に あたっては細心の注意を要する。ただし,その予防のための適正な補正速度に関しては,10 mEq/L/24h 未満17,12 mEq/L/24h あるいは 18 mEq/L/48h 未満18,25 mEq/L/48h 未満19といくつか の報告があり,未だ統一された見解はない。

現在,SIADH を効能・効果とする薬剤はないが,内因性のバソプレシン分泌を抑制するフェニ

トイン,V2-受容体以降のセカンドメッセンジャーを阻害するデメクロサイクリン(一般名:塩酸

(12)

2.5 臨床に関する概括評価 6 フェニトインは,下垂体からのバソプレシン分泌を抑制すると考えられている20。したがって, その適用は,中枢神経系疾患,肺疾患などにみられる内因性のバソプレシン分泌亢進による SIADH に限定される。 デメクロサイクリンは,腎集合管における cAMP の生成抑制とその作用を阻害すると考えられ ている21。本剤の効果は可逆的で用量依存性はあるが,効果発現までには数日を要する。副作用 として皮膚の光線過敏症などがある他,抗生物質であるため耐性菌発現の問題がある。 炭酸リチウムの作用機序は,デメクロサイクリンと同じと考えられている。しかし,消化器系, 循環器系,甲状腺及び中枢神経系の副作用があり,安全性と効果の面でデメクロサイクリンに劣 ると考えられている22。 このように,これらの薬剤による SIADH 治療の報告があるものの,いずれも SIADH に対する 治療薬とはなり得ず,SIADH 治療における現在の第一選択は,Bartter らが SIADH を報告した 1967 年当時と変わらず,未だ水分制限療法となっている。 これまでにも,過剰な水分のみを除去することにより低ナトリウム血症の是正が期待できる薬 剤として,V2-受容体拮抗薬の開発が続けられてきた。しかしながら,初期に開発されたペプチド 性拮抗薬は,ラット等では V2-受容体拮抗作用を示したが,ヒトにおいては逆に抗利尿作用(V2 アゴニスト作用)を示し23,24,治療薬として開発されることはなかった。 大塚製薬株式会社では,電解質排泄の増加を伴わず過剰な水分のみを排泄する利尿薬,いわゆ る「水利尿薬」の開発を目指し,19 年に V2-受容体への結合を選択的かつ競合的に阻害する非 ペプチド性 V2-受容体拮抗薬,塩酸モザバプタンを合成した(図 2.5.1-2)。 CH3 O N H O N N CH3 CH3 H ・HCl 及び鏡像異性体 図 2.5.1-2 塩酸モザバプタン(OPC-31260)の構造式 2.5.1.3 開発の経緯 塩酸モザバプタンの非臨床試験は,19 年より開始された。第Ⅰ相試験の開始前(19 年 月)までに,各種薬効薬理試験及び一般薬理試験,各種薬物動態試験,各種毒性試験(ラット及 びイヌの単回経口投与及び 13 週間反復経口投与毒性試験,ラットの妊娠前及び妊娠初期投与試験, 標準的な in vitro 及び in vivo 遺伝毒性試験)が実施された。これら非臨床試験の成績より,塩酸 モザバプタンが期待する作用を示し,安全性も確認され,水利尿薬としての開発の可能性が示唆 されたことから,臨床試験へ移行した。 毒性試験は,以後,ラット及びウサギの器官形成期投与試験,ラットの周産期及び授乳期投与

(13)

2.5 臨床に関する概括評価 7 試験,マウス優性致死試験,抗原性試験,モザバプタンの光学異性体及び主要代謝物あるいはそ の光学異性体のラット単回投与毒性試験及び in vitro 有糸分裂阻止試験等を実施した。なお,本薬 の開発過程において,長期投与を必要とする各種浮腫性疾患への適用が検討されたためラットの 26 週間反復経口投与毒性試験,イヌの 52 週間反復経口投与毒性試験,マウス及びラットのがん 原性試験を実施した。本申請にあたっては,がん原性試験は遺伝毒性試験で有糸分裂阻止作用に 起因する染色体の数的異常誘発性がみられたことを考慮して評価資料としたが,他の試験は参考 資料とした。 塩酸モザバプタンの臨床開発は,その作用より体内の過剰な水分のみを排泄することが期待さ れたことから,1) 各種浮腫性疾患に対する治療薬(既存の塩類排泄型利尿薬において問題となる 血清電解質異常を来たすことなく浮腫を軽減させる効果あるいは低ナトリウム血症の改善効果を 有する薬剤)としての開発,2) SIADH における低ナトリウム血症に対する治療薬としての開発と いう二つの方針で進められた。 各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験としては,単回経口投与(129-B*-006P 試験及び 129-B*-007P 試験;いずれも治験計画番号,以下同様)及び 7 日間反復経口投与(129-C*-004P 試 験)による検討を行った。その結果,電解質排泄の増加を伴わない尿量の増加が認められたもの の,反復投与により検討した用量(30 mg 1 日 1 回)での浮腫の軽減効果は,既存の利尿薬に比 べ十分なものではなかった。 そこで,既存の塩類排泄型利尿薬を投与中の低ナトリウム血症を呈する各種浮腫性疾患に対象 を絞り,血清ナトリウム濃度の上昇を主要評価項目とした臨床試験(129-D*-001P 試験)を開始 したが,選択基準に合致する対象患者が少なく,症例を集積する事が困難であった。 以上のように,各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験において,浮腫の軽減効果を示すことが できず,また,低ナトリウム血症の改善効果も示すことができなかったことから,各種浮腫性疾 患を対象とした臨床開発は断念した。 SIADH を対象とした臨床試験としては,単回経口投与(129-B*-005P 試験)及び 7 日間反復経 口投与(129-C*-001P 試験及び 129-C*-003P 試験)による検討を行った。異所性 ADH 症候群を対 象とした反復経口投与試験(129-C*-001P 試験)及び SIADH を対象とした反復経口投与試験 (129-C*-003P 試験)の結果,低ナトリウム血症の改善が認められ,また,これに伴う中枢神経 症状の改善も認められた。 以上の結果に基づき,塩酸モザバプタンの臨床開発は,SIADH のみを対象とすることとし,2001 年(平成 13 年)3 月 29 日に希少疾病用医薬品の指定申請を行い,2001 年(平成 13 年)8 月 24 日に「バソプレシン分泌不適切症候群における低ナトリウム血症の改善」を予定効能・効果とす る希少疾病用医薬品の指定を受けた(指定番号(13 薬)第 155 号)。 この希少疾病用医薬品の指定申請に際し,本薬が SIADH 以外の疾患に対して適用外使用され る可能性が懸念されたため,具体的な適用外使用防止策(添付文書(案))とともに承認された 効能・効果の範囲内での適正使用に努めることについての を 20 年(平成 年) 月 日 に厚生省医薬安全局審査管理課(現 厚生労働省医薬食品局審査管理課)に提出した。 本申請に先立ち,独立行政法人医薬品医療機器総合機構との申請前相談において, *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(14)

2.5 臨床に関する概括評価 8 の妥当 性について相談を行った。 その結果, との助言を受けた。 この助言を受け,申請資料の整備を行い,本剤の申請効能・効果を,「異所性抗利尿ホルモン 産生腫瘍によるバソプレシン分泌不適切症候群における低ナトリウム血症の改善(既存治療で効 果不十分な場合に限る)」に変更し,承認申請を行うこととした。 なお,塩酸モザバプタンは,19 年 月より注射剤での開発も行われ,経口剤と同様に各種浮 腫性疾患及び SIADH を対象とした第Ⅱ相の段階にあるが,注射剤を用いた異所性 ADH 症候群を 対象とした反復静脈内投与試験(129-C*-002I 試験)における死亡例の発現を鑑み,注射剤の開発 は中断している。 また,モザバプタンは,ベンゾアゼピン骨格の 5 位に不斉炭素を有しており,R(+)-モザバプタ ン,S(-)-モザバプタンの光学異性体が存在する。S(-)-モザバプタンは,R(+)-モザバプタンに比較 して V2-受容体に対しヒトで約 40 倍,ラットで約 23 倍,イヌで約 20 倍高い親和性を示した。 一方,モザバプタンの光学異性体(S(-)-モザバプタン及び R(+)-モザバプタン)を覚醒ラットに 経口投与すると,いずれの光学異性体も水利尿作用を示し,光学異性体間で利尿活性に差は認め られなかった。モザバプタンには,水利尿作用を有する活性代謝物が多く存在することから,in vivo においては各光学異性体から生成する代謝物が水利尿作用に寄与することで同程度の利尿作 用を示すと推察された。以上のようにモザバプタンの光学異性体を比較すると,ラットにおける 経口投与で水利尿活性には差が認められないこと,また,ラットにおける単回投与毒性試験で両 者の毒性発現に明らかな差は認められないことから,モザバプタンを光学分割して開発する意義 は薄いと考え,ラセミ体で開発を行った。 以下に,非臨床及び臨床試験の内容を含めた開発の経緯を示す。 2.5.1.3.1 品質及び非臨床試験の開発の経緯 2.5.1.3.1.1 品質に関する試験 塩酸モザバプタンについて化学構造の確認及び物理的化学的性質の解明を行った。また,原薬 及び製剤(30 mg 錠)について,規格及び試験方法を設定し,安定性試験を実施した。長期保存 試験において,原薬及び製剤は 3 年間安定であることを確認した。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(15)

2.5 臨床に関する概括評価 9 2.5.1.3.1.2 薬理試験 (1) 効力を裏付ける試験 ラット腎臓膜標本を用いた V2-受容体への結合親和性並びに覚醒ラットにおける利尿作用を指 標としたスクリーニングの結果,19 年に塩酸モザバプタンを開発化合物として選択した。 塩酸モザバプタンは,ラット V2-受容体に対して高い親和性を示すとともに,覚醒ラット,イ ヌ及びカニクイザルにおいて経口投与により用量依存的な水利尿作用を示した。また,従来のペ プチド性の V2-受容体拮抗薬と異なり,内因性 V2-受容体アゴニスト活性は認められなかった。こ れらの成績から,塩酸モザバプタンは非ペプチド性の V2-受容体拮抗薬であり,経口投与により 電解質排泄の増加を伴わない水排泄の増加(水利尿作用)を示すことが確認された25。 19 年からは,ヒトバソプレシン受容体(V2-,V1a-及び V1b-受容体)を安定発現させた HeLa 細胞を用いて,ヒトバソプレシン受容体拮抗作用について検討した。塩酸モザバプタンは,ヒト V2-受容体に対して高い親和性を示し,V2-受容体の細胞内情報伝達物質である cAMP 産生量を指 標とした試験の結果,ヒト V2-受容体に対する拮抗薬であることが確認された。一方,ヒト V1a -受容体に対する親和性は V2-受容体に比較して約 1/8 倍と弱く,V1b-受容体に対してはほとんど親 和性を示さないことから,塩酸モザバプタンは選択的なヒト V2-受容体拮抗薬であると考えられ た。また,ヒト V2-受容体に対しては,主要代謝物の中で M1 及び M2 に塩酸モザバプタンよりも 高い親和性が,M3,M4 及び M5 に同程度の親和性が認められ,いずれも V2-受容体に対して拮 抗作用を示すことが確認された。 SIADH モデルに対する作用は,1993 年に Fujisawa 等26により最初に報告され,塩酸モザバプタ ン 5 mg/kg の反復経口投与により,液体食の摂餌と V2-受容体刺激により作製した SIADH モデル ラットの低ナトリウム血症の改善が示された。更に,希少疾病用医薬品に指定された 2001 年より SIADH モデルでの再評価を実施した結果,塩酸モザバプタンは固定用量による反復経口投与(1 ∼10 mg/kg)並びに漸増法による反復経口投与(2∼10 mg/kg)により,用量依存的に血漿ナトリ ウム濃度を上昇させることが確認された。 以上の効力を裏付ける試験より,塩酸モザバプタンは,バソプレシンの V2-受容体への結合を 阻害することにより腎集合管における水の再吸収を抑制し,体内から過剰な水分を除去し低ナト リウム血症を是正するものと考えられた。 (2) 安全性薬理試験(一般薬理試験) 塩酸モザバプタンの一般薬理試験として,中枢神経系,末梢神経系,呼吸及び心血管系,胃腸 管系に及ぼす影響をマウス,ラット,モルモット,ウサギ,ネコ及びイヌを用い,経口及び静脈 内投与などにより検討した。また,主要代謝物の一般薬理試験として,中枢神経系,呼吸及び心 血管系に及ぼす影響をマウス及びイヌを用い,静脈内投与により検討した。 塩酸モザバプタンで比較的低用量からみられたものは,30 mg/kg p.o.でみられたマウスにおけ るストリキニーネ誘発痙攣の増強作用及び 1 mg/kg i.v.以上でみられた麻酔イヌにおける心血管系 の変化(心拍数の一過性の増加,血圧の一過性の下降,大腿動脈血流量の一過性の増加とそれに 続く減少)であった。 塩酸モザバプタン 30 mg/kg をマウスに経口投与した時のモザバプタンの Cmaxは,覚醒ラット

(16)

2.5 臨床に関する概括評価 10 及びイヌにおいて尿量増加,尿浸透圧下降を示した用量におけるモザバプタンの Cmaxに比べ十分 高いこと,無麻酔イヌでは薬効用量を超える 200 mg/kg p.o.までの用量で,呼吸及び心血管系に影 響はみられていないこと,主要代謝物の一般薬理試験では親化合物でみられたストリキニーネ誘 発痙攣の増強作用はみられていないことなどより,塩酸モザバプタンの臨床投与量では,一般薬 理試験でみられた変化に関連する作用は現れないものと考えられた。 2.5.1.3.1.3 薬物動態試験 マウス,ラット,イヌ及びウサギを用い,14C-標識及び非標識塩酸モザバプタンを用いて体内 動態の検討を行った。 塩酸モザバプタンは経口投与後速やかに消化管より吸収され,用量の増加に伴った血漿中濃度 の上昇が認められた。吸収率は約 80%(ラット)と推察され,主排泄経路は胆汁排泄を介した糞 中排泄と考えられた(ラット及びイヌ)。 ラットに14C-塩酸モザバプタンを単回経口投与した時の組織内放射能濃度は,中枢神経系及び 骨以外の組織で血漿よりも高く分布した。妊娠ラットに14C-塩酸モザバプタンを経口投与した時, 胎児移行性が認められ,母動物の血液と同等あるいは高い分布を示した。また,乳汁移行性も認 められた。

血漿蛋白結合率は,in vitro で 86%以上,in vivo で 77%以上であり(ラット及びイヌ),ヒト では 96%以上であった(in vitro)。結合蛋白は,主に血清アルブミン及びα1-酸性糖蛋白であっ た。 ラット,イヌ,ウサギにおける経口投与時の代謝物として,21 種の代謝物が同定あるいは推定 された。モザバプタンの代謝に関与したヒトチトクローム P450 分子種は,主に CYP3A4 及び CYP2C8 であった。 2.5.1.3.1.4 毒性試験 塩酸モザバプタンの毒性試験は,19 年より開始された。第Ⅰ相試験の開始前(19 年 月) までに,ラット及びイヌの単回経口投与毒性試験,ラット及びイヌの 13 週間反復経口投与毒性試 験,遺伝毒性試験(in vitro DNA 修復試験,復帰変異試験,染色体異常試験,ラット小核試験), ラットでの妊娠前及び妊娠初期投与試験を実施した。遺伝毒性試験の結果,有糸分裂阻止あるい は染色体不分離に起因すると考えられる染色体の数的異常あるいは小核が誘発されたが,染色体 の構造異常及び遺伝子変異は誘発されなかった。染色体不分離は,塩酸モザバプタンが微小管蛋 白の動態を可逆的に抑制することで引き起こされている閾値のある毒性作用であり,臨床用量よ りも高い用量で生ずることから,臨床試験において当該毒性作用が発現する可能性は低いと考え られ,臨床試験へ移行した。以後,女性患者も対象とする第Ⅱ相試験開始(19 年 月)までに, ラットの器官形成期投与試験及びウサギの器官形成期投与予備試験を,承認申請までにウサギの 器官形成期投与試験,ラットの周産期及び授乳期投与試験,in vitro 遺伝子変異試験,マウス優性 致死試験,抗原性試験,モザバプタンの光学異性体及びヒト主要代謝物あるいはその光学異性体 のラット単回投与毒性試験及び in vitro 有糸分裂阻止試験を実施した。本薬の開発過程において, 長期投与を必要とする各種浮腫性疾患への適用が検討されたためラットの 26 週間反復経口投与 毒性試験,イヌの 52 週間反復経口投与毒性試験,マウス及びラットのがん原性試験を実施した。

(17)

2.5 臨床に関する概括評価 11 本申請においては,遺伝毒性試験で有糸分裂阻止作用に起因する染色体の数的異常誘発性がみら れたことを考慮して,がん原性試験については評価資料とし,他の試験は参考資料とした。 単回経口投与毒性試験:ラットにおける概略の致死量は雄で 1000∼1500 mg/kg,雌では 500∼ 1000 mg/kg であった。一方,イヌでは最大投与量の 2000 mg/kg を超える量であった。 13 週間反復経口投与毒性試験:ラットの 30 mg/kg 以上の雄と 100 mg/kg の雌で肝細胞に脂肪滴 増加が,100 mg/kg ではコレステロール,リン脂質,アルカリホスファターゼ増加がみられた。 100 mg/kg では,電子顕微鏡観察において胆管上皮細胞及び腎臓の近位尿細管上皮細胞にミエリ ン様構造物もみられ,無毒性量は雄で 10 mg/kg,雌で 30 mg/kg と判断された。一方,イヌでは, 75 mg/kg 以上で嘔吐,肝臓に胆汁栓,コレステロール及びリン脂質の増加が,200 mg/kg では流 涎,体重及び摂餌量減少,限局性の肝細胞壊死,アルカリホスファターゼ及びトリグリセライド の増加が認められた。更に 75 mg/kg 以上ではミエリン様構造物がリンパ系組織にみられ,200 mg/kg では本薬の有糸分裂阻止作用に関連して,白血球数減少,骨髄顆粒球系細胞比率の低下, 皮膚菲薄化,リンパ系及び生殖器系臓器の萎縮性変化がみられ,無毒性量は雌雄とも 20 mg/kg と 判断された。 遺伝毒性試験:有糸分裂阻止あるいは染色体不分離に起因すると考えられる染色体の数的異常 が in vitro 試験でみられ,in vivo 試験では小核あるいは優性致死が誘発された。塩酸モザバプタン は 1 µg/mL 以上で有糸分裂を阻止したが,0.5 µg/mL 以下では示さなかった。主要代謝物及びその 光学異性体で阻止作用を示すものもあったが,その程度は塩酸モザバプタン及びその光学異性体 と同等か,より弱かった。 がん原性試験:マウスにおいて肝細胞腺腫の発生率増加がみられたが,好発する自然発生腫瘍 に促進的な影響を与えるような間接作用によるものと推察された。本腫瘍の発生率の増加は最高 用量 100 mg/kg の雄のみであり,同腫瘍はヒトへの外挿性が低いことから,本変化はヒトでの腫 瘍発生の可能性を示唆するものではないと考えられた。ラットにおけるがん原性試験では,いず れの臓器についても腫瘍発生率の増加はみられなかった。 生殖発生毒性試験:ラットの妊娠前及び妊娠初期投与試験で,雌雄親動物の生殖能力に影響は みられなかった。ラットの器官形成期投与試験では,100 mg/kg では胎児に影響は認められなかっ たが,母動物毒性(低体重及び低摂餌量)の顕著な 200 mg/kg においてのみ,胚・胎児死亡,胎 児の奇形及び発育遅延がみられた。ラットの周産期及び授乳期投与試験では 100 mg/kg において 出生児の低体重以外の影響は認められなかった。ウサギ器官形成期投与試験では,20 mg/kg 以上 で胚・胎児死亡のわずかな増加がみられたが,奇形等形態の異常は,40 mg/kg でも認められなか った。 抗原性試験及びその他の毒性試験:抗原性試験,光学異性体及び代謝物の単回投与毒性試験で, 特記すべき所見はなかった。 以上,塩酸モザバプタンの一連の毒性試験においてみられた,一般毒性,遺伝毒性,生殖発生 毒性は,いずれも臨床推奨用量の 30 mg に比べて高い用量で発現しており,ヒトへの外挿性の低 い腫瘍以外にはがん原性試験において腫瘍発生率増加はみられず,また,抗原性も認められなか ったことより,今回,申請する用法及び用量での異所性 ADH 産生腫瘍による SIADH 患者に対す る臨床使用のための安全性は確保されているものと考えられた。

(18)

2.5 臨床に関する概括評価 12 2.5.1.3.2 臨床試験の開発の経緯 2.5.1.3.2.1 第Ⅰ相(19 年 月∼19 年 月) 本邦において,健康成人男子を対象として 1) 3∼200 mg の絶食下単回経口投与による検討 (129-A*-003 試験),2) 100 mg の単回経口投与時における食事の影響の検討(129-B*-001 試験), 3) 30 mg 1 日 1 回又は 15 mg 1 日 2 回 7 日間反復経口投与による検討(129-B*-004 試験)の 3 試 験を実施した。単回経口投与試験における投与量は,13 週間反復投与毒性試験において,最も感 受性の高かった雄ラットの無毒性量 10 mg/kg/日の 1/60 量である 10 mg(体重 60 kg で換算)に更 に安全係数の 1/3 を乗じた 3 mg を初回投与量とし,以下段階的に増量することとした。 単回経口投与試験の結果,薬理作用に起因すると考えられる口渇の発現が 60 mg 以上の用量で 認められたものの安全性に特に問題は認められず,200 mg まで忍容性があると考えられた。薬力 学的作用に関しては,低浸透圧尿の排泄増加(水利尿作用)が示唆された。100 mg の単回経口投 与時に,安全性及び水利尿作用に対する食事の影響は認められなかった。また,反復経口投与試 験の結果,30 mg 1 日 1 回投与では水利尿作用がみられたのに対し,15 mg 1 日 2 回投与では明ら かな作用が認められなかった。なお,これらの試験では薬物動態の検討も行ったが,薬物濃度測 定時のクロマトグラム紛失により品質保証ができなくなったため,本申請の資料では,これらの 3 試験での薬物動態の成績を割愛した。 この他,19 年 月∼ 月に 60 mg 1 日 1 回 7 日間反復経口投与による検討(129-C*-005P 試 験)を実施した。 2.5.1.3.2.2 第Ⅱ相(19 年 月∼20 年 月) (1) SIADH を対象とした単回経口投与試験(19 年 月∼ 月) 1994 年 2 月より,SIADH を対象とした非盲検早期第Ⅱ相試験(129-B*-005P 試験)を実施した。 用量は,第Ⅰ相試験において忍容性が確認された 3∼200 mg の範囲内から,各治験担当医師が患 者の状態に応じて適宜選択することとした。 ただし,実施された 7 例のうち 3 例が,適切に同意を取得されていない症例であったことから, 本試験は GCP 適合の申請資料には含めないこととし,参考資料として添付した。なお,本試験は, 単回投与後,経時的に採血及び採尿を行い,SIADH 患者における塩酸モザバプタンの作用態度の 検討を主な目的とするものであった。 (2) 異所性 ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験(19 年 月∼19 年 月) 19 年 月より,異所性 ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P 試験)を 実施した。用量は,健康成人男子を対象とした単回経口投与試験(129-A*-003 試験)及び 7 日間 反復経口投与試験(129-B*-004 試験)の結果から,1 日用量を 30 mg に設定し 1 日 1 回朝に 7 日 間反復経口投与することとした。また,投与期間は最短 3 日間でもよいこととした。 その結果,17 例が登録され,観察期で中止した 1 例を除く 16 例に本剤が投与された。本剤投 与後に血清ナトリウム濃度の上昇が認められ,これに伴い低ナトリウム血症に随伴する臨床症状 (食欲低下,嘔気・嘔吐,頭痛,中枢神経性症状)の改善も認められた。安全性に関し,16 例中 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(19)

2.5 臨床に関する概括評価 13 11 例に 35 件の有害事象が,6 例に 15 件の副作用が認められ,このうち 1 例が副作用(食欲減退, 夜間頻尿,倦怠感,口渇,血中尿素増加)のため試験を中止した。重篤な副作用はなかった。 (3) SIADH を対象とした反復経口投与試験(19 年 月∼19 年 月) 19 年 月より SIADH を対象とした反復経口投与試験(129-C*-003P 試験)を実施した。用 量は,129-C*-001P 試験と同様に 30 mg 1 日 1 回とし,投与期間は 7 日間とした。 12 例が登録され,いずれも異所性 ADH 症候群以外の SIADH であった。このうち,5 例に選択 基準からの逸脱があったため,7 例を有効性評価対象とした。この 7 例においても,血清ナトリ ウム濃度の上昇が認められ,これに伴う中枢神経症状の改善が認められた。安全性に関し,12 例 中 9 例に 25 件の有害事象が,5 例に 8 件の副作用が認められ,このうち 1 例が副作用(口周囲浮 腫)のため試験を中止した。重篤な副作用はなかった。 (4) 反復経口投与試験症例に対するレトロスペクティブ調査(20 年 月∼20 年 月) 異所性 ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P 試験)及び SIADH を対象と した反復経口投与試験(129-C*-003P 試験)において,塩酸モザバプタン 30mg を 1 日 1 回 7 日間 反復経口投与した結果,血清ナトリウム濃度の上昇が認められ,これに伴う中枢神経症状の改善 も認められた。ただし,これらの臨床試験は,塩酸モザバプタン投与前後を比較して有効性を検 討した単用量非対照試験であった。 この試験成績に対し,希少疾病用医薬品の指定申請に先立ち実施した厚生省医薬安全局審査管 理課(現 厚生労働省医薬食品局審査管理課)との面談において,「血清ナトリウム濃度の上昇は 認められるが,この治療効果が既存療法(水制限)によるものなのか,塩酸モザバプタンによる ものなのかは明示されていない」との指摘があった。 この指摘に対し,申請者は,これらの臨床試験では塩酸モザバプタン投与前の観察期間が 1∼2 日間と短かったため,投与前後を比較した試験結果に試験開始前の既存療法がどの程度影響して いるのかについて明示することができないと判断した。 一方,比較対照をおいた新たな臨床試験の実施可能性について,専門医の意見を聴取した結果, 以下の意見が得られた。 • SIADH は患者数が少ないため,症例登録が困難であり,また,塩酸モザバプタンによる治 療が可能な期間も短いと考えられる。 • 水制限療法は,患者の状態に応じて制限の程度が異なり,また,患者の状態によっては実 施できないことも多く,水制限について規定することが困難と考えられる。 • SIADH は種々の原疾患により発症するため,少数例では様々な背景の患者での比較となる 可能性がある。 以上より,比較試験を実施し塩酸モザバプタンの有効性を客観的に評価することの代案として, 反復経口投与試験(129-C*-003P 試験及び 129-C*-001P 試験)での症例を対象としたレトロスペク ティブ調査(129-F*-RS 調査)を立案した。 本調査は,反復経口投与試験における塩酸モザバプタン投与前及び終了後の血清ナトリウム濃 度の推移,水分制限の程度などをレトロスペクティブに調査し,塩酸モザバプタン投与中のそれ *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(20)

2.5 臨床に関する概括評価 14 らと対比することにより,血清ナトリウム濃度の上昇が塩酸モザバプタン投与によるものである か否かを確認することを目的としたものであった。 異所性 ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P 試験)における有効性評価対 象 16 例中調査に対する同意が得られなかった 2 例を除く 14 例について調査を実施し,その結果 を検討した。本調査によって試験期間中にみられた血清ナトリウム濃度の上昇が塩酸モザバプタ ンによるものか否かを確認することには限界があると考えざるを得なかったが,調査実施症例 14 例中試験期間中に血清ナトリウム濃度の上昇がみられた 13 例のうち,12 例における血清ナトリ ウム濃度の上昇は,塩酸モザバプタン投与による可能性が高いと考えられた。 また,SIADH を対象とした反復経口投与試験(129-C*-003P 試験)の対象患者では,12 例中 11 例について調査を実施し,有効性評価対象 7 例中 7 例についての調査結果を参考のために検討し た。これら 7 例でみられた血清ナトリウム濃度の上昇についても,塩酸モザバプタン投与による 可能性が高いと考えられた。 (5) 生物薬剤学に関する試験及び臨床薬理試験(19 年 月∼20 年 月) 生物薬剤学に関する試験として,20 年 月∼20 年 月に最終製剤(30 mg 錠)における食 事の影響の検討(129-G*-001 試験),20 年 月∼ 月に治験用製剤の生物学的同等性試験 (129-H*-004 試験)を実施した。 臨床薬理試験として,19 年 月∼ 月に14C-塩酸モザバプタン単回経口投与時の薬物動態の 検討(013873 試験:英国人),19 年 月∼ 月にフロセミド併用時の薬力学的作用の検討 (129-E*-001P 試験),20 年 月∼ 月に最終製剤(30 mg 錠)を用いた単回経口投与時の薬物 動態の検討(129-H*-002 試験),20 年 月∼ 月に最終製剤(30 mg 錠)を用いた反復経口投 与時の薬物動態の検討(129-H*-003 試験),20 年 月∼20 年 月に薬物相互作用試験 (129-H*-005 試験及び 129-H*-006 試験)を実施した。 (6) 各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験(19 年 月∼20 年 月) 各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験として,19 年 月から単回経口投与試験(129-B*-006P 試験及び 129-B*-007P 試験)を,19 年 月から反復経口投与試験(129-C*-004P 試験)を実施 した。その結果,各種浮腫性疾患患者においても電解質排泄の増加を伴わない尿量の増加が認め られた。ただし,反復投与により検討した用量(30 mg 1 日 1 回)での浮腫の軽減効果は,既存 の利尿薬に比べ十分なものではなかった。 そこで,既存の塩類排泄型利尿薬を投与中の低ナトリウム血症を呈する各種浮腫性疾患に対象 を絞り,血清ナトリウム濃度の上昇を主要評価項目とした臨床試験(129-D*-001P 試験)を 19 年 月から実施した。 しかしながら,選択基準に合致する対象患者が少なく,症例を集積する事が困難であったこと から,目標症例数 120 例のところ 29 例が実施された時点で,本試験を中止し,各種浮腫性疾患を 対象とした臨床開発も中止した。 なお,これらの各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験については,本申請効能とは異なる疾患 を対象としたものであることより,本申請においては各試験の報告書を参考資料として添付した。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(21)

2.5 臨床に関する概括評価 15 2.5.1.4 規制当局の助言及びその対応 2001 年 8 月 24 日に希少疾病用医薬品の指定を受けた後,20 年 月 日(第一回),20 年 月 日(第二回)及び 20 年 月 日(第三回)に,医薬品副作用被害救済・研究振興調 査機構 調査指導部指導課(現 医薬品医療機器総合機構 研究振興部希少疾病用医薬品等開発振興 課,以下機構と略)と相談を行った。更に,20 年 月 日に申請前相談として,独立行政法 人医薬品医療機器総合機構に対する治験相談を行った。これら計四回の相談記録の写しを第 5 部 に添付した。 2.5.1.4.1 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 調査指導部指導課との相談 2.5.1.4.1.1 使用成績の収集について 。 2.5.1.4.2 独立行政法人医薬品医療機器総合機構との申請前相談 2.5.1.4.2.1 本剤の申請効能・効果について

(22)

2.5 臨床に関する概括評価 16 。 2.5.1.5 医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)の遵守 本邦における臨床試験は,ヘルシンキ宣言の精神に基づき,また,各臨床試験実施時点におけ る GCP を遵守し実施された。また,海外で実施された臨床試験については,ヘルシンキ宣言の精 神に基づき実施された。 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 塩酸モザバプタンの臨床試験において,第Ⅰ相試験では塩酸モザバプタン 1%散剤あるいは塩 酸モザバプタン 20%散剤を適宜プラセボ散剤で希釈した散剤(以下,塩酸モザバプタン散剤と略) が,異所性 ADH 症候群及び SIADH を対象とした前期第Ⅱ相試験及び健康成人を対象とした臨床 薬理試験では,塩酸モザバプタンを 30 mg 含有するフィルムコート錠(以下,塩酸モザバプタン 30 mg 錠と略)が用いられた。前期第Ⅱ相試験で用いられた塩酸モザバプタン 30 mg 錠は,市販予 定製剤と同一処方の製剤である。 生物薬剤学試験としては,市販予定製剤(最終製剤:塩酸モザバプタン 30 mg 錠)における食 事の影響(129-G*-001 試験)及び治験用 2 製剤(塩酸モザバプタン散剤と塩酸モザバプタン 30 mg 錠)の生物学的同等性試験(129-H*-004 試験)を実施した。 この 2 試験では,モザバプタン及び 10 種の代謝物(M1∼M6,M8∼M10,M13)について血漿 中濃度を測定した。また,食事の影響の検討では尿中濃度を測定した。モザバプタン及び各代謝 物の薬物動態パラメータを求めるとともに,本薬投与時の薬力学的作用を反映すると考えられる モザバプタンと活性代謝物(M1∼M5,M8)のモル換算合計血漿中薬物濃度(以下,活性体合計 と略)あるいは総吸収量を反映すると考えられるモザバプタンと代謝物(M1∼M6,M8∼M10, M13)のモル換算合計血漿中薬物濃度(以下,全合計と略)に基づく薬物動態パラメータを求め た。 2.5.2.1 吸収及び経口投与時のバイオアベイラビリティ 塩酸モザバプタンの絶対的生物学的利用率の検討を目的とした臨床試験は実施していないが, 塩酸モザバプタン注射剤の単回静脈内投与試験及び塩酸モザバプタン 30 mg 錠を用いた臨床薬理 試験で得られたモザバプタンの主な薬物動態パラメータより,塩酸モザバプタンの絶対的生物学 的利用率を参考として算出した。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(23)

2.5 臨床に関する概括評価 17 その結果,絶対的生物学的利用率は,0.5∼0.8%であり,初回通過効果の影響が大きいことが推 測された。 塩酸モザバプタン 30mg 錠による単回経口投与試験(129-H*-002 試験)の結果,モザバプタン の tmaxは 0.938∼1.063 時間,全合計の tmaxは,1.719∼2.188 時間(いずれも平均値)であった。 一方,英国人の健康成人男子を対象に14C-塩酸モザバプタン 60mg 水溶液を単回経口投与した試 験(013873 試験:報告書番号 011384,参考資料)での血漿中放射能の tmaxは 1.13±0.25 時間であ った。 人種が異なるため正確な比較はできないが,水溶液を用いた 013873 試験での血漿中放射能の tmaxに比べ,129-H*-002 試験での全合計の tmaxがやや遅延しているもののその程度はわずかであ ることから,モザバプタンの吸収過程において製剤からの溶出過程は律速とはなっていないと考 えられた。 2.5.2.2 経口吸収における食事の影響 平成 13 年 6 月 1 日 医薬審発第 796 号「医薬品の臨床薬物動態試験について」に従い,市販予 定製剤(最終製剤)である塩酸モザバプタン 30 mg 錠を健康成人男子に単回経口投与し,モザバ プタン及びその代謝物の薬物動態及び薬力学的作用に対する食事の影響を検討した。 その結果,モザバプタン,全合計,活性体合計のいずれにおいても,食後投与で tmaxは遅延し ており,食事により塩酸モザバプタン 30 mg 錠の吸収が遅延したと考えられた。 全合計及び活性体合計の Cmaxと AUC は,絶食下投与時に比べ食後投与時には低下しており, 食後投与時には塩酸モザバプタン 30 mg 錠の吸収が低下すると推察された。モザバプタンの AUC は,逆に食後投与時に上昇していたが,この AUC の上昇は,吸収遅延に起因する半減期の延長 による影響が一因と考えられた。 なお,食事による全合計,活性体合計の AUC の低下の程度は同等性ガイドラインの許容範囲 内であり,使用上問題のない程度のものと考えられた。一方,Cmaxについては,絶食下投与に対 する食後投与の比が,モザバプタンで 0.81 と低下の傾向が見られ,全合計で 0.76,活性体合計で 0.71 といずれも低下し,その程度は同等性ガイドラインの許容範囲を超えていた。 以上の結果より,塩酸モザバプタン 30 mg 錠は,食後投与時には絶食下投与時に比べ吸収が遅 延し,吸収量が低下する可能性があると考えられた。 2.5.2.3 治験用散剤と治験用錠剤の生物学的同等性 臨床試験で用いた塩酸モザバプタン散剤と塩酸モザバプタン 30 mg 錠(市販予定製剤と同一処 方)につき,平成 13 年 5 月 31 日 医薬審発第 786 号 「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイド ライン」に準じて,健康成人男子を対象とした生物学的同等性試験を実施した。 その結果,薬力学的作用を反映すると考えられる活性体合計の Cmax及び AUC48hの比は,いず れも生物学的同等性試験ガイドラインの判定基準である 0.80∼1.25 の範囲内であったことから, 塩酸モザバプタン散剤と塩酸モザバプタン 30 mg 錠は生物学的に同等であると判定された。 また,モザバプタン及び各活性代謝物(M1∼M5)については,モザバプタンの AUC48h 及び M5 の Cmaxでは,生物学的同等性の許容範囲を外れていた以外,いずれも生物学的同等性の許容 範囲内であった。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(24)

2.5 臨床に関する概括評価 18 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 塩酸モザバプタンの臨床薬理関連試験としては,ヒト生体試料試験及び臨床薬理試験を実施し た。ヒト生体試料試験としては,蛋白結合試験(5 試験),ヒト P450 発現系ミクロゾームあるい はヒト肝ミクロゾームを用いた in vitro 代謝試験(3 試験)及び in vitro 代謝阻害試験(5 試験), 更に,臨床薬理試験の被験者より得られた試料を用いた代謝物検索及び光学異性体比測定試験を 実施した。 臨床薬理試験は,健康成人男子を対象として,薬物動態試験(4 試験),外因性要因を検討し た薬物動態試験(2 試験)及び薬力学的作用試験(2 試験)を実施した。 2.5.3.1 薬物動態 2.5.3.1.1 健康成人男子 ラット,イヌ及びウサギを用いた薬物動態試験の結果,塩酸モザバプタンの代謝物として M1 ∼M21 が同定又は推定された。このうち,健康成人男子を対象とした塩酸モザバプタン 30 mg 錠 による単回経口投与試験(129-H*-002 試験)では,10 種の代謝物(M1∼M6,M8∼M10,M13) について,塩酸モザバプタン 30 mg 錠による 10 日間反復経口投与試験(129-H*-003 試験)では, 12 種の代謝物(上記の 10 種に加え,M7 及び M15)について,血漿中及び尿中濃度を測定した。 その結果,大部分の代謝物はモザバプタンよりも高濃度で血漿中を推移した。全化合物の中で M6 が最も高い血漿中濃度を示し,次いで,M7 が高い血漿中濃度を示した。 塩酸モザバプタン 30 mg 錠による 10 日間反復経口投与試験(129-H*-003 試験)では,塩酸モ ザバプタン 30 mg 錠を用い,まず単回経口投与を行い,その 72 時間後より 10 日間反復経口投与 を行うことにより,同一被験者で単回経口投与時と反復経口投与時の薬物動態を比較するデザイ ンとした。 その結果,AUC24hについては,M4,M6,M7 及び M9 が単回経口投与時に比べ反復経口投与 時で増加し,M10 が単回経口投与時に比べ反復経口投与時で減少していた。その他の化合物では, 単回経口投与時と反復経口投与時とで同程度の値であった。Cmaxについては,M7 が単回経口投 与時に比べ反復経口投与時で増加し,M10 が減少していた。その他の化合物では,単回経口投与 時と反復経口投与時とで同程度の値であった。tmaxについては,M7 が単回経口投与時に比べ反復 経口投与時で短くなっていたが,その他の化合物では,単回経口投与時と反復経口投与時とで同 程度の値であった。t1/2,zについては,すべての化合物で単回経口投与時と反復経口投与時とで同 程度の値であった。単回経口投与時の t1/2,zより求めた予測累積係数と実際の累積係数を比べると, M6 以外の化合物では同程度の値を示したが,M6 の実際の累積係数は単回経口投与時の t1/2,zより 求めた予測累積係数よりも小さかった。 一方,塩酸モザバプタン 30 mg 錠による単回経口投与試験(129-H*-002 試験)では,塩酸モザ バプタン 30 mg 錠を用い,同一被験者に塩酸モザバプタンとして 30 mg(1 錠),60 mg(2 錠) 及び 90 mg(3 錠)を絶食下に単回経口投与し,薬物動態の検討を行った。本試験において,モザ バプタン,全合計及び活性体合計の線形性について検討を行った結果,全合計の Cmax及び AUC *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(25)

2.5 臨床に関する概括評価 19 は共に線形性を示さず,投与量あたりの Cmaxあるいは AUC が投与量の増加に伴って低下すると いう結果であった。代謝物のうち最も高い血漿中濃度で推移する非活性代謝物の M6 の Cmax及び AUC が全合計のそれらと同様の挙動を示していたことから,全合計の非線形性は M6 の非線形性 を反映したものと考えられた。 このように,反復経口投与試験において反復経口投与時の M6 の血漿中濃度が単回経口投与時 の t1/2,zより予測される濃度より低値であったこと及び単回経口投与試験において M6 の Cmax及 び AUC が線形性を示さず頭打ちとなったことに関し,その機序は不明であるが,ともに M6 の非 線形を示唆するものとして両試験の結果は矛盾がないものであった。 2.5.3.1.2 SIADH 患者及び各種浮腫性疾患患者における血漿中薬物濃度 SIADH を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P 試験及び 129-C*-003P 試験)並びに各種 浮腫性疾患(申請効能外)を対象とした反復経口投与試験(129-C*-004P 試験及び 129-D*-001P 試 験)において測定された血漿中薬物濃度について,性別,高齢・非高齢別,基礎疾患別,肝機能 別及び腎機能別に集計を行い,これらの背景因子別の差異を検討した。 その結果,高齢・非高齢別,腎機能別の結果には明らかな差を認めなかったものの,基礎疾患 が肝疾患の症例及び肝機能低下例でモザバプタン及び活性体合計の血漿中濃度が高値である傾向 がみられた。本薬の主たる代謝は肝代謝であり,肝疾患あるいは肝機能低下例では,モザバプタ ン及び活性代謝物の代謝が低下し,モザバプタン及び活性体合計の血漿中濃度が高値を示したと 考えられた。 また,性別では,女性でモザバプタン及び活性体合計のピーク(7 日目 4 時間値)が高値とな る傾向がみられたが,トラフ値(7 日目 24 時間値)には性別による差異はみられなかった。 なお,CYP3A4 あるいは CYP2C8 の阻害あるいは誘導の報告のある薬剤併用による血漿中モザ バプタン及び活性体合計への影響は明らかではなかった。 2.5.3.2 吸収,分布,代謝,排泄 2.5.3.2.1.1 吸収及び経口投与時のバイオアベイラビリティ 塩酸モザバプタン 30mg 錠による単回経口投与試験(129-H*-002 試験)の結果,モザバプタン の tmaxは 0.938∼1.063 時間,全合計の tmaxは,1.719∼2.188 時間(いずれも平均値)であった。 一方,英国人の健康成人男子を対象に14C-塩酸モザバプタン 60mg 水溶液を単回経口投与した試 験(013873 試験:報告書番号 011384,参考資料)での血漿中放射能の tmaxは 1.13±0.25 時間であ った。 人種が異なるため正確な比較はできないが,水溶液を用いた 013873 試験での血漿中放射能の tmaxに比べ,129-H*-002 試験での全合計の tmaxがやや遅延しているもののその程度はわずかであ ることから,モザバプタンの吸収過程において製剤からの溶出過程は律速とはなっていないと考 えられた。 2.5.3.2.1.2 分布 14 C-塩酸モザバプタンのヒト血漿蛋白への結合率は,添加濃度 0.01∼1 µg/mL において 95.9∼ *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(26)

2.5 臨床に関する概括評価 20 98.2%であり,活性代謝物である M1∼M5,M8 のヒト血清蛋白結合率(添加濃度 0.01 又は 0.05 ∼0.5 µg/mL)は,それぞれ 85.1%以上,89.4%以上,87.7%以上,87.2%以上,83.7%以上,95.9% 以上であった。また,M6,M7 のヒト血清蛋白結合率(添加濃度 0.1 µg/mL)は,それぞれ 99.5 % 以上,96.5%であった。また,ヒト血清におけるモザバプタン及び光学異性体が存在する代謝物 (M1∼M5)の光学異性体の蛋白結合率は,光学異性体間で差は認められなかった(添加濃度 0.1, 0.5 µg/mL,M3 は添加濃度 0.1 µg/mL)。 更に,シスプラチン,カルボプラチン,エトポシド,セファロチン,プレドニゾロン,ヒドロ コルチゾン,フェニトイン,フロセミド,カプトプリル,シメチジン,スピロノラクトン,ジゴ キシン,イソソルビド,ニフェジピン,アムリノン,ドパミン,ワルファリン及びジピリダモー ルは,14C-塩酸モザバプタン又は塩酸モザバプタンのヒト血清蛋白結合率にほとんど影響を与え なかった。シスプラチン,カルボプラチン,エトポシド,セファロチン,プレドニゾロン,ヒド ロコルチゾン,フェニトイン,フロセミド,カプトプリル及びシメチジンは主要代謝物(M1∼ M6)のヒト血清蛋白結合率にほとんど影響を与えなかった。また,シスプラチン,カルボプラチ ン,エトポシド,フェニトイン,プレドニゾロン及びヒドロコルチゾンは M7 のヒト血清蛋白結 合率にほとんど影響を与えなかった。 英国人の健康成人男子に14C-塩酸モザバプタン 60 mg 水溶液を単回経口投与した試験(013873 試験)の結果,血漿中放射能濃度は血液中放射能濃度の約 1.5∼1.6 倍であったことより,血球移 行率は低いと考えられた。 2.5.3.2.1.3 代謝 ヒト P450 発現系ミクロゾームあるいはヒト肝ミクロゾームを用いて,in vitro におけるモザバ プタンの代謝について検討した。推定されたモザバプタンの代謝経路を図 2.5.3-1 に示した。 R(+)-モザバプタン及び S(-)-モザバプタンの代謝には主に CYP3A4 及び 2C8 が関与していると 考えられた。また,M1,M5,M8 の代謝には CYP3A4 が関与していると考えられた。モザバプ タン及び代謝物(M1,M5,M6,M8,M15)を代謝させ,それぞれから生成する代謝物を検討し た結果,代謝マップにおいて,それぞれの化合物の下流に位置する代謝物が生成した。 塩酸モザバプタンの代謝経路において,塩酸モザバプタンの脱メチル化により M5 となる経路 が最も活性が大きかった。M5 の N-メチル基が脱メチル化された M4 と, M17 に分岐する経路が代謝経路上流の主要代謝経路と考えられた。M8 は,M5 を経 て M17,M15 等を経由する経路でも生成すると考えられた。7 員環の開裂は大部分が M8 を経由 することが示唆された。 健康成人男子を対象とした塩酸モザバプタン 30 mg 錠による 10 日間反復経口投与試験 (129-H*-003 試験)において血漿中 M7 濃度を測定した結果,M7 は M6 に次ぐ高濃度で認められ たが,in vitro 代謝試験において,M7 は M6 を基質とした場合に僅かに認められる程度であった。 129-H*-003 試験において,M7 の tmaxが単回投与時で 10.500 時間,反復投与時で 4.178 時間(い ずれも平均値)と他の化合物に比べ遅かったことから,in vitro 代謝試験でのインキュベート時間 が短かったため M7 への反応がほとんど認められなかった可能性も考えられた。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(27)

2.5 臨床に関する概括評価 21 2.5.3.2.1.4 排泄 英国人の健康成人男子に14 C-塩酸モザバプタン 60 mg 水溶液を単回経口投与した試験(013873 試験:報告書番号 011384,参考資料)の結果,単回投与後 168 時間までの放射能の尿中排泄率は 45.57±3.59%,糞中排泄率は 49.65±3.81%であり,合計 95.22±0.41%が回収された。なお,単回投 与後 72 時間までの尿中排泄率は 43.59±3.26%であった。 一方,日本人の健康成人男子を対象とした塩酸モザバプタン 30 mg 錠による反復経口投与試験 (129-H*-003 試験)で求めた投与後 72 時間までの全合計の尿中排泄率は,単回投与時及び反復 投与時でそれぞれ 11.43±1.84%及び 14.22±3.31%であった。 013873 試験での投与後 72 時間までの放射能の尿中排泄率に比べ,129-H*-003 試験での投与後 72 時間までの全合計の尿中排泄率が低値であったことは,129-H*-003 試験で測定した 12 種(M1 ∼M10,M13,M15)以外の代謝物が尿中より排泄されている可能性を示唆した。 *:新薬承認情報提供時に置き換えた

(28)

2.5 臨床に関する概括評価 22 図 2.5.3-1 モザバプタンの推定代謝経路 CYP3A4 NH O N H O CH3 N CH3 O N N O N H O CH3 CH3 CH3 H N N O N H O H CH3 CH3 H CYP3A4 CYP3A4 NH O N H O CH3 N H O N N O N H O H H CH3 H CYP3A4 N O N H O CH3 O CYP3A4 CYP3A4 NH O O N H O CH3 OH O NH O O N H O CH3 OH N OH O N H O CH3 H CYP3A4 NH OH O N H O CH3 OH N H O CH3 COOH CYP3A4 NH O O N H O CH3 OH O OH N OH O N H O CH3 H OH H NH OH O N H O CH3 OH O N OH O N H O CH3 H OH H モザバプタン M4 M5 M1 M8 M13 M9 M15 M21 M17 M18 M20 M19 M11 M6 M14 M10 M12 M16 M7 M2 M3 CYP2C8 CYP3A4

参照

関連したドキュメント

部を観察したところ,3.5〜13.4% に咽頭癌を指摘 し得たという報告もある 5‒7)

スライド5頁では

Instagram 等 Flickr 以外にも多くの画像共有サイトがあるにも 関わらず, Flickr を利用する研究が多いことには, 大きく分けて 2

この chart の surface braid の closure が 2-twist spun terfoil と呼ばれている 2-knot に ambient isotopic で ある.4個の white vertex をもつ minimal chart

データベースには,1900 年以降に発生した 2 万 2 千件以上の世界中の大規模災 害の情報がある

2リットルのペットボトル には、0.2~2 ベクレルの トリチウムが含まれる ヒトの体内にも 数十 ベクレルの

高さについてお伺いしたいのですけれども、4 ページ、5 ページ、6 ページのあたりの記 述ですが、まず 4 ページ、5

に至ったことである︒