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ベネフィットとリスクに関する結論

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2.5 臨床に関する概括評価

2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

2.5.6.1 申請適応症に対する有効性

2.5.1.2(5頁)に記述したように,フェニトイン,デメクロサイクリン,炭酸リチウム等による

SIADH治療の報告202122があるものの,いずれもSIADHに対する治療薬とはなり得ず,SIADH 治療における現在の第一選択は,BartterらがSIADHを報告した1967年当時と変わらず,未だ水 分制限療法となっている。水分制限療法は,飲水,輸液及び食事中の水分を含めた1日の水分摂 取量を体重1 kg当たり15〜20 mLに制限する治療法4で,原疾患を問わずすべてのSIADHに有 効であるため基礎的治療とも位置付けられる最も一般的な治療法である。しかしながら,治療上 の理由により実際には十分な水分制限ができない場合が多い。

一方,異所性 ADH 産生腫瘍の大部分を占める肺小細胞癌は,抗癌剤に高い感受性を示すとさ れている。肺小細胞癌に対する代表的な化学療法は,EP療法(シスプラチン,エトポシド併用),

IP 療法(イリノテカン,シスプラチン併用)であるが,シスプラチンによる腎毒性予防のため,

これらの化学療法を施行する際には,低張輸液の併用が必須となる。このため,異所性 ADH 産 生腫瘍による SIADH が発症している場合には,低張輸液による低ナトリウム血症の悪化あるい は表在化を予防するため,化学療法施行に先立ち血清ナトリウム濃度の補正が必要となる。

塩酸モザバプタンは,その薬理学的特徴から,電解質排泄の増加を伴うことなく過剰な水分の みを排泄し,SIADHにおける低ナトリウム血症を改善することが期待できる。

異所性ADH症候群を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P試験)では,体重1 kgあたり の摂取水分量が20 mL以下の症例が6例,20 mLを超える症例が9例,飲水量が記録されず摂取 水分量が不明の症例が1例あったが,いずれの患者においても水分摂取量を一定とした状態で血 清ナトリウム濃度の上昇が認められた。この血清ナトリウム濃度の上昇は塩酸モザバプタン投与 開始翌日よりみられ,4日目(3回目投与24時間後)と後観察1日目(7回目投与24時間後)の 血清ナトリウム濃度は同程度の値を示した。更に,血清ナトリウム濃度の上昇に伴う中枢神経症 状の改善も認められ,食欲低下は8例中5例,嘔気・嘔吐は5例中5例,頭痛は5例中5例,中 枢神経性症状は4例中4例で症状の消失あるいは軽快が認められた。

これらの成績より,水分制限によっても低ナトリウム血症が是正されない患者あるいは十分な 水分制限が実施できない患者において,塩酸モザバプタン 30 mg 1日1回の反復経口投与により 異所性ADH産生腫瘍によるSIADHにおける低ナトリウム血症を速やかに改善させ,これに伴い 中枢神経症状を改善させることが期待できるものと考えられた。

2.5.6.2 安全性に関する所見

塩酸モザバプタンの安全性は,健康成人男子を対象に実施した臨床薬理試験及び申請効能であ る異所性 ADH 症候群を対象とした試験の成績に基づき評価を行った。SIADH を対象とした反復 経口投与試験(129-C*-003P試験)の12例は,いずれも異所性ADH症候群以外のSIADHであり,

原疾患が異なることが安全性に関連する可能性があるが,申請効能と類似する病態であることか ら,異所性 ADH 症候群と併せた評価も行った。また,申請効能外であるが各種浮腫性疾患を対

*:新薬承認情報提供時に置き換えた

2.5 臨床に関する概括評価 41

象とした臨床試験の成績も参考として評価した。

その結果,健康成人男子に対しては,単回経口投与で200 mg,反復経口投与で1日1回60 mg 7日間までの忍容性が良好であることが確認された。異所性ADH症候群を対象とした臨床試験で は,口渇,血中カリウム増加,肝酵素異常,倦怠感,食欲減退,肝酵素異常,夜間頻尿等の副作 用を認め,異所性ADH症候群以外のSIADHを対象とした臨床試験では,口渇,肝機能異常,口 周囲浮腫等の副作用を認めたが,重篤なものではなく,必要に応じ投与中止あるいは副作用に対 する治療など適切な処置を行うことで,安全性に特に問題がないと考えられた。

各種浮腫性疾患を対象とした臨床試験では,腹水,口渇,浮腫,血中カリウム増加などが高頻 度でみられた。このうち,腹水及び浮腫は SIADH での発現はみられておらず,また,用量別で みると低用量ほど発現頻度が高かったことから,低用量では効果が不十分であったため,原疾患 の増悪によりこれらの症状が発現した可能性が示唆された。

塩酸モザバプタンの注射剤では,SIADH,異所性 ADH 症候群,各種浮腫性疾患及びメニエー ル病を対象に4試験を実施した。有害事象は延べ126例中62例に159件,関連性の否定できない 有害事象は32例に79件発現した。

治験期間中に発現した死亡例が,異所性ADH症候群を対象とした反復静脈内投与試験の 2例 で報告され,1例は塩酸モザバプタンとの関連性が否定されたが,他の1例は塩酸モザバプタン との関連性が否定されなかった。この症例では,重篤な有害事象として播種性血管内凝固,その 他の重要な有害事象として赤血球数減少,白血球数減少,ヘモグロビン減少,ヘマトクリット減 少,血小板数減少,血中尿素増加,血中尿酸増加,血中クレアチニン増加,血中ナトリウム増加,

血中カリウム増加,血中コレステロール減少が発現した。この他に重篤な有害事象の発現はなか った。

内因性要因による影響に関しては,性別,高齢/非高齢別,肝機能別,腎機能別のいずれにおい ても特に有害事象の発現状況に差はみられなかった。

薬物相互作用に関しては,本薬の代謝に影響を及ぼすCYP3A4阻害薬(イトラコナゾール)と の相互作用,本薬がCYP3A4により代謝されるデキストロメトルファン代謝に及ぼす影響を健康 成人男子を対象に検討した。これらの試験において,イトラコナゾールあるいはデキストロメト ルファン併用による特異な有害事象は認められていない。

ただし,イトラコナゾールとの併用により,モザバプタン(未変化体)及び活性代謝物のCmax 及び AUC が増加するという結果であった。自由水クリアランス,尿浸透圧及び尿量を指標とし た薬力学的作用に対しては,イトラコナゾール併用による明らかな影響は認められなかったが,

イトラコナゾール等CYP3A4阻害薬との併用時には,塩酸モザバプタンの作用増強の可能性があ ることから,慎重に投与する必要があると考えられた。

非臨床一般毒性試験で認められた肝機能障害については,健康成人男子,SIADHあるいは各種 浮腫性疾患を対象とした臨床試験においても,ALT(GOT),AST(GPT)等の肝酵素の上昇等

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の有害事象が認められた。また,脂質代謝については,健康成人を対象とした臨床試験で遊離脂 肪酸増加が,SIADHを対象とした臨床試験で高コレステロール血症が,各種浮腫性疾患を対象と した臨床試験で血中コレステロール増加が,それぞれ有害事象として発現した。これらは,いず れも重篤なものではなく,投与終了後無処置で回復,あるいは適切な処置を行うことにより回復 していた。

安全性薬理試験でPR時間の延長及びQRS幅の増大を認めたものの健康成人男子を対象とした 臨床薬理試験で測定された心電図を精査した結果,臨床上問題となる変化は認めなかった。また,

QT及びQTcについても特記すべき変化は認めなかった。

用量反応関係に関しては,健康成人男子を対象とした臨床薬理試験において,薬力学的作用が 用量の増加と共に増大すること,薬理作用に起因する口渇の発現頻度が増量により高まることが 確認されているが,SIADHを対象とした臨床試験では検討されていない。

一方,低ナトリウム血症の治療において,急激な血清ナトリウム濃度の上昇により,不可逆的 な中枢神経障害である橋中心髄鞘崩壊症を来たす恐れのあることが知られている 14,15,16。その予 防のための適正な補正速度に関しては,10 mEq/L/24h未満17,12 mEq/L/24hあるいは18 mEq/L/48h 未満18,25 mEq/L/48h未満19といくつかの報告があり,未だ統一された見解はない。異所性ADH 症候群を対象とした反復経口投与試験(129-C*-001P試験)及びSIADHを対象とした反復経口投 与試験(129-C*-003P試験)において,塩酸モザバプタン1回目投与後24時間で血清ナトリウム

濃度が10 mEq/L以上上昇した症例が5例あり,最大12 mEq/Lの上昇であったが,これらの症例

においても中枢神経系の障害を示唆する所見はみられなかった。しかしながら,SIADHモデルラ ットを用いた反復経口投与試験において,塩酸モザバプタン 10 mg/kg 群では,前日に比較して 投与開始翌日に血清ナトリウム濃度が 30 mEq/L 以上上昇し,橋中心髄鞘崩壊症によると思われ る死亡がみられた。したがって,塩酸モザバプタン投与時にも,急激な血清ナトリウム濃度の上 昇による橋中心髄鞘崩壊症発症に,十分な注意が必要であることから,重要な基本的注意に以下 のように記載することとした。

【重要な基本的注意】

(1) 急激な血清ナトリウム濃度の上昇により,橋中心髄鞘崩壊症を来すおそれがあるので,患 者を入院させ,医師の監視下におき,次の点に注意すること。

① 本剤の投与は,血清ナトリウム濃度,尿量及び臨床症状等,患者の状態を観察しながら 行うこと。特に,本剤投与開始日には,投与4〜6時間後並びに8〜12時間後に血清ナト リウム濃度を測定すること。[健康成人に本剤を単回投与した時の血清ナトリウム濃度 は,本薬投与4〜6時間後に最大値を示した。]

② 必要に応じ,飲水量あるいは輸液(5%ブドウ糖液)を増量させ,血清ナトリウム濃度 の上昇が10 mEq/L/24hrを超えないようにすること。

*:新薬承認情報提供時に置き換えた

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