The author declares no con‰ict of interest. 岐阜薬科大学薬物治療学研究室(〒5011196 岐阜市大 学西 1254) e-mail: inden@gifu-pu.ac.jp 本総説は,日本薬学会第 134 年会シンポジウム S15 で 発表した内容を中心に記述したものである. ―Symposium Review―
原因遺伝子からみたパーキンソニズムを呈する疾患とその治療戦略
位 田 雅 俊The Causative Gene of Parkinsonism and Its Medical Treatment Strategy
Masatoshi Inden
Laboratory of Medical Therapeutics and Molecular Therapeutics, Gifu Pharmaceutical University; 1254 Daigaku-Nishi, Gifu 5011196, Japan.
(Received August 10, 2014)
Parkinsonism is a neurological syndrome characterized by tremor, hypokinesia, rigidity, and postural instability. The neurodegenerative condition of Parkinson's disease(PD) is the most common cause of parkinsonism. PD is classi-ˆed as sporadic PD and familial PD. Whereas idiopathic PD is caused by a number of complex factors, familial PD is a result of mutations in PD-associated genes. Unraveling the mechanisms surrounding familial PD will oŠer pivotal clues in understanding etiology of not only familial PD but also sporadic PD. We have demonstrated neuroprotective eŠects with particular focus on DJ-1. On the other hand, idiopathic basal ganglia calciˆcation, also known as Fahr disease (FD) is another condition characterized by parkinsonism. In 2012,solute carrier family 20A2 (SLC20A2) was identiˆed as the causative gene for familial FD. Our analysis of patient samples revealed a novel mutation inSLC20A2. Type-III sodium-dependent phosphate transporter 2 (PiT-2), the protein encoded bySLC20A2, plays an important role in phos-phate homeostasis. However, PiT-2's role in the pathology of FD remains largely unclear. We have established induced pluripotent stem(iPS) cells from FD patients and are investigating their usefulness in drug development. Here, we present some of our latest research ˆndings.
Key words―parkinsonism; Parkinson's disease; Fahr disease
1. はじめに パーキンソニズムは,パーキンソン症候群ともよ ばれ,パーキンソン病の診断基準に合致しないパー キンソン病様症候を呈する疾患の総称である.ま た,疾患を分類する場合,パーキンソン病とパーキ ンソン症候群を合わせてパーキンソニズムと称する こともある.パーキンソニズムは疾患群を意味する ほかに無動,筋固縮,振戦(不随意なふるえ),姿 勢保持障害などのパーキンソン病症状そのものを示 す.パーキンソニズムを呈する疾患のなかで最も多 いパーキンソン病は,わが国では 14 万人を超える 患者数となっており,今後も増加することが予想さ れている.患者の多くは孤発性であるが,510%が 家族性で,現在まで 17 の遺伝子座が判明してお り,そのシンボルには PARK が用いられている. 家族性パーキンソン病の機能解析は,パーキンソン 病の発症機序の解明にも重要な手がかりを与えてき た.筆者らは,パーキンソン病の原因遺伝子 DJ-1 に着目し,ドパミン神経保護作用を明らかにしてき た.また,パーキンソニズムを呈する疾患の中に は,特発性基底核石灰化症いわゆるファール病が含 まれる.ファール病は,大脳基底核及び小脳歯状核 に左右対称の石灰化をきたす原因不明の疾患であ り,治療法は全く存在しない.ファール病に関する 研究の大きな転機として,2012 年に原因遺伝子と して,III 型ナトリウム依存性リン酸トランスポー ター 2(type-Ⅲ sodium-dependent phosphate trans-porter 2; PiT-2)の遺伝子 solute carrier family 20A2 (SLC20A2)の変異が同定された.筆者らもわが国 におけるファール病患者の SLC20A2 遺伝子を探索 した結果,新規遺伝子変異を見い出した.パーキン ソン病と同様に,原因遺伝子の機能解析は,いまだ 不明であるファール病の発症機序の解明に大きな道 筋を与えてくれる.現在,見い出した変異 PiT-2 の
Table 1. PARK Loci/Genes
Disease/Syndrome Gene Locus Inheritance PARK1/4 SNCA 4q21q23 AD PARK2 PRKN 6q25.227 AR PARK3 ― 2p13 AD PARK5 UCHL1 4p14 AD PARK6 PINK1 1p36.12 AR PARK7 DJ1 1p36.23 AR PARK8 LRRK2 12q12 AD PARK9 ATP13A2 1p36.13 AR PARK10 ― 1p32 AD PARK11 GIGYF2 2q37.1 AD PARK12 ― Xq21q25 X-linked PARK13 Omi/HtrA2 2p12 AD PARK14 PLA2G6 22p13.1 AR PARK15 FBXO7 22p12.3 AR PARK16 ― 1p32 ― PARK17 VPS35 16p12 AD PARK18 EIF4G1 3p27.1 AD
Abbreviations used: SNCA=a-synuclein; PRKN=parkin; UCHL1= ubiquitin carboxyl-terminal esterase L1; PINK1=PTEN-induced putative kinase 1; LRRK2=leucine-rich repeat kinase 2; ATP13A2=ATPase type 13A2; GIGYF2=Grb10-interacting GYF protein 2; HtrA2=HtrA serine peptidase 2; PLA2G6=phospholipase A2, group 6; FBXO7=F-box pro-tein 7; VSP35=vacuolar propro-tein sorting-associated propro-tein 35; ELF4G1= eukaryotic translation initiation factor 4 gamma protein; AD=autosomal dominant; AR=autosomal recessive.
機能解析を行うと同時に,ファール病患者の疾患特 異的 induced pluripotent stem(iPS)細胞の樹立を 行い,病態機序の解明と治療薬開発に取り組んでい る.本稿ではパーキンソニズムを呈するこれら 2 つ の疾患において,原因遺伝子を軸にした筆者らの研 究を紹介する. 2. パーキンソン病の原因遺伝子 1817 年 James Parkinson の報告以来,パーキン ソン病の病態機序は約 170 年間不明のままであった が,家族性パーキンソン病の遺伝子研究の進歩か ら,病態機序の解明への大きなステップが踏み出さ れた.パーキンソン病の中で家族性に発症するのは 10%程度にすぎないが,単一遺伝子異常で起こる家 族性パーキンソン病における研究は,分子レベルで の黒質変性機序の解明につながる.最初に遺伝子座 が決定された PARK1 の原因遺伝子が 1997 年 a-synuclein と同定されたことに始まり,家族性の原 因遺伝子の特定が進み,現在まで 17 の遺伝子座が 判明している.1)判明している遺伝子座の約半数が
常染色体優性(autosomal dominant; AD)遺伝形 式であり,a-synuclein (PARK1/4), ubiquitin car-boxyl-terminal esterase L1 (UCHL1; PARK5), leu-cine-rich repeat kinase 2 (LRRK2; PARK8), vacuo-lar protein sorting-associated protein 35 (VPS35; PARK17)が含まれる.一方,常染色体劣性(au-tosomal recessive; AR ) 遺 伝 形 式 に は ,Parkin (PARK2), PTEN-induced putative kinase 1 (PINK1;
PARK6), DJ-1 (PARK7), ATPase type 13A2
(ATP13A2, PARK9), phospholipase A2, group 6 (PLA2G6, PARK14), F-box protein 7 (FBXO7;
PARK15)が含まれる(Table 1). 研究の進展により,これら原因遺伝子間での関係 も明らかになりつつある.パーキンソン病の発症と ミトコンドリアとの関連は古くから示唆されてい た.理由として,パーキンソン病の患者においてミ トコンドリア活性の低下やミトコンドリア DNA の 変異が観察されることや,ドパミン神経毒である 6-hydroxydopamine (6-OHDA), 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)やロテノンな ど,ミトコンドリア機能を傷害する薬物がヒトやモ デル動物にパーキンソン病に類似した症状を引き起 こすことなどが挙げられる.2)近年,ミトコンドリ アの品質管理機構に Parkin や PINK1 が重要な役 割を果たしていることが明らかとなった.3)細胞内 で ミ ト コ ン ド リ ア の 品 質 が 低 下 し た と き に , PINK1キナーゼがユビキチンをリン酸化し,この リン酸化ユビキチンが Parkin を活性化することで 機能不全のミトコンドリアの分解を行う.両者が協 調して機能することで機能不全のミトコンドリアだ けが除去される.さらに上記のプロセスは Parkin や PINK1 の患者由来の変異によって阻害されるこ とから,機能不全のミトコンドリアの分解ができな いために,Parkin や PINK1 の起因する若年性パー キンソン病が発症することが強く示唆されている. 3. PARK7 と二酸化型結合低分子化合物の神経 保護効果 1997 年に新規がん遺伝子として同定されたDJ-1 は,2003 年に PARK7 の原因遺伝子として再同定 された.4)DJ-1 は,189 アミノ酸からなる小さなタ ンパク質である.エクソン 15 の欠損,166 番目の ロイシンのプロリンへのミスセンス変異(L166P) DJ-1 がオランダ,イタリア家系より見い出されて いる.これまで DJ-1 がパーキンソン病と関連する 自己酸化,転写調節,シャペロン活性などの様々な
機能を有することが示されている.注目すべき点は, DJ-1が酸化ストレスから細胞を防御し,ミトコン ドリア機能に影響を与えることである.前述のよう に,パーキンソン病の発症とミトコンドリア機能に は密接な関係があり,さらには DJ-1 と Parkin や PINK1との関連性も報告され,5,6)DJ-1の機能を理 解することはドパミン神経細胞死の機序と,治療法 を確立するうえで極めて重要である. 筆者らも DJ-1 の抗酸化作用に着目して,その神 経保護作用を明らかにしてきた.6-OHDA をラッ ト中脳黒質にマイクロインジェクションしたパーキ ン ソ ン 病 モ デ ル ラ ッ ト や 中 大 動 脈 閉 塞 ( middle cerebral artery occlusion; MCAO)モデルに,同時 にあるいは遅れて DJ-1 タンパク質をマイクロイン ジェクションすると,6-OHDA や MCAO によって 生じたドパミン神経細胞死とそれに伴う薬物旋回運 動が抑制された.7,8)DJ-1タンパク質は,脳内にマ イクロインジェクションされた後に,ドパミン神経 細胞内に取り込まれて抗酸化作用を示す.これらの 結果は,DJ-1 タンパク質の活性を制御し得る低分 子化合物は創薬候補になり得る可能性を示唆してい る. DJ-1 はそのアミノ酸配列のうち,46,53,106 の位置に 3 つのシステイン残基(C46, C53, C106) が存在し,これらの酸化状態が構造と活性維持に重 要である.このうち,C106 は最も酸化ストレスに 対し感受性が高く,最初に酸化される.酸化は, -SH(還元型)→SOH(一酸化型)→SO2H(二酸化 型 ) → SO3H( 三 酸 化 型 ) と 進 む と 考 え ら れ る . C106に変異を入れた DJ-1 は,抗酸化ストレス機 能はもちろん,明らかになっているすべての DJ-1 機能を失うことから,C106 が軽度に酸化されるこ とが,DJ-1 の活性化に必須であると考えられる. 筆者らは,文部科学省の大学化合物ライブラリーに 登録されている約 3 万個の化合物の中から,in sili-co バーチャルスクリーニングにより,C106 の二酸 化型 DJ-1 との結合スコアが最も高い DJ-1 結合低 分子化合物を同定した.9)この低分子化合物には, 6-OHDA 投 与 パ ー キ ン ソ ン 病 モ デ ル ラ ッ ト や MCAOモデルにおいてドパミン神経保護効果があ ること明らかとした.また,農薬の一種であるロテ ノン を用 い たパ ーキ ン ソン 病モ デ ルに おい て , DJ-1 結合化合物の末梢投与においてもドパミン神 経保護効果があり,さらにはパーキンソン病の病理 所見の 1 つであるレビー小体の主成分である a-synuclein の凝集も抑制した.10)このようにパーキン ソン病の原因遺伝子 DJ-1 をターゲットとした創薬 に応用できる可能性があり,DJ-1 結合性の低分子 化合物は新規治療薬のシード化合物として期待でき る. 4. 特発性基底核石灰化症(ファール病) 特発性基底核石灰化症いわゆるファール病は,大 脳基底核及び小脳歯状核に左右対称の石灰化をきた す原因不明の疾患であり,治療法は全く存在しな い.ファール病の発症には男女差はなく,あらゆる 年齢層で発症するが,石灰化が見つかることは思春 期や中年期以降に多い.2014 年までに,わが国に おけるファール病研究班では約 200 症例以上が登録 されている.一般に,左右対称性の脳内石灰化を伴 う疾患には副甲状腺機能異常症,後天性免疫不全症 候群(human immunodeˆciency virus; HIV),一酸 化炭素中毒症,及び鉛中毒などが知られているが, ファール病ではこれらのような感染症,中毒症,及 び外傷の既往歴によるものは除外される.さらに, ファール病患者の血清カルシウム,リン,アルカリ ホスファターゼ,ビタミン D,カルシトニン,副 甲状腺ホルモンなどカルシウム代謝に関与する因子 はすべて正常範囲内であり,生化学的異常所見はみ られていなかった.すなわち,ファール病の患者で は,カルシウム代謝,リン代謝及び副甲状腺機能に 異常は認められない.11)ファール病に随伴する症状 として,小脳症状,知能発達遅延,認知症,錘体路 症状,錐体外路症状など多様である.11)興味深いこ とに,これらの症状及び重症度と石灰化の程度はか ならずしも相関しない. ファール病では他の神経変性疾患と同様に孤発性 と家族性が報告されている.家族性ファール病で は,今のところ常染色体優性遺伝形式しか見つかっ ておらず,その分類として IBGC が用いられる. ファール病の遺伝子座として 14q13 (IBGC1), 2q37 (IBGC2), 8p11.21 (IBGC3), 5q32 (IBGC4)及び
22q12 (IBGC5)が報告されている(Table 2).11,12)
2012 年 , 中 国 家 系 よ り IBGC3 の 原 因 遺 伝 子 が
PiT-2 タンパク質をコードしているSLC20A2 遺伝
子であることが報告された.13)その後の検索によっ
Table 2. IBGC Loci/Genes
Disease/Syndrome Gene Locus Inheritance
IBGC1 ― 14q13 AD
IBGC2 ― 2q37 AD
IBGC3 SLC20A2 8q11.21 AD IBGC4 PDGFRB 5q32 AD IBGC5 PDGFB 22q12 AD
Abbreviations used: SLC20A2=phosphate transporter 2; PDGFRB= platelet-derived growth factor receptor, beta polypeptide; PDGFB=plate-let-derived growth factor beta polypeptide; AD=autosomal dominant.
ジル家系,スペイン家系,アイルランド家系,フラ ンス家系,ロシア家系及びリビア家系など諸外国で 多数の SLC20A2 遺伝子の変異が報告されている が,14)わが国では筆者らが変異を同定した.15) 5. リン酸トランスポーターPiT-2 PiT-2 タンパク質はナトリウムイオン(Na+)2 分子とリン酸二水素イオン(H2PO-4: Pi)1 分子を 細胞外から細胞内に共輸送することで,細胞内の Piホメオスタシスを保つために働く.16)PiT-2タン パク質は細胞膜上に発現しており 12 の膜貫通領域 (transmembrane domain; TM)を持つトランスポー ターであり,ヒトでは全身の組織に発現している. PiT-2 タンパク質には N 末端側と C 末端側の 2 ヵ 所に Pi 輸送活性に重要なドメインがある.17)PiT-2 タンパク質は細胞表面でホモ二量体を形成し,細胞 外 Pi 濃度の変化に対してその 2 量体の形成や発現 が変動する. ファール病における剖検例において脳内石灰の成 分分析が行われており,石灰の主成分はリン酸カル シウムの一種であるヒドロキシアパタイトであると 報告されている.その他の成分としてムコ多糖類, アルミニウム,銅,マグネシウム,マンガン,亜鉛 など微量の様々な金属種が含まれていた.18)これら のことを考えると,ファール病における石灰の形成 と PiT-2 タンパク質の働きは強く関連していると推 察できる. 筆者らは,不明であったわが国のファール病患者 における SLC20A2 遺伝子の変異をダイレクトシー クエンス法によって検索した.15)これらの検索は, 岐阜大学倫理委員会及び岐阜薬科大学倫理委員会の 承認を得て実施した.カルシウム代謝及びリン代謝 に異常を認めず,原因が不明である少なくとも大脳 基底核に左右対称性の明らかに病的な石灰化をきた している症例,患者 65 例及び石灰化が認められな い家族 5 例より書面によるインフォームドコンセン トを得て,血液を供与頂いた.結果,検体提供症 70 例 の う ち 18 症 例 に 4 種 の 変 異 c.344C > T (T115M), c.1399C>T (R467X), c.1848G>A (W616X)及び c.1909C>A (S637R)を見い出した. T115M及び S637R のミスセンス変異であり,それ ぞれ TM4,TM12 に存在し,かつ N 末端側と C 末 端 側 の Pi 輸 送 活 性 に 重 要 な 働 き を し て い る PD1131 ドメインに位置していた.そこで,アミノ 酸変異がタンパク質の機能にあたえる影響を予測す る PolyPhen2 を用いて演算したところ,19)T115M 及び S637R ともに機能低下が予測された.また, R467Xのナンセンス変異は TM7 と TM8 の間の細 胞質内ドメインに,W616X のナンセンス変異はカ ルボキシル末端側の PD1131 ドメイン内に位置して いた.どちらのナンセンス変異も変異部位より先の アミノ酸は翻訳されず,通常の PiT-2 タンパク質よ りも短いタンパク質が翻訳されると考えられ,機能 低下が予測された.一方で,見い出した変異ではそ れ ぞ れ 異 な る 臨 床 症 状 で あ り , computed tomography(CT)画像における石灰化の形態は類 似していない.ファール病の病態の多様さと何か関 連があるかもしれないが,今のところ不明である. 6. ファール病における疾患特異的 iPS 細胞の活 用 疾患特異的 iPS 細胞は,これまで適切な動物モ デルがなく,患者数が非常に少ないために臨床研究 が遅れている希少難病疾患の病態解明や新規治療法 を開発する画期的な方法論を与えくれる可能性が大 いにある.2012 年度から,iPS 細胞の基礎研究か ら難病の発症機構の解明,創薬・治療法の開発を目 指す研究拠点を設置する文部科学省と厚生労働省の 「疾患特異的 iPS 細胞を活用した難病研究」がス タートした.疾患特異的 iPS 細胞研究では多くの 希少難病疾患が研究対象とされ,ファール病もその 1つとして採択された.筆者らは,京都大学 iPS 研 究所の井上治久教授らとの共同で,前述の新規に見 い出された SLC20A2 遺伝子変異を持つファール病 の患者由来の iPS 細胞を作製・解析中である.ま た,不明な点が多く残っていた中枢神経系における PiT-2の機能に関しての解析も進み,脳内分布や遺 伝子変異によるリン酸輸送活性への影響など,徐々
に明らかになってきている.20)これまでファール病 の罹患組織,つまり脳自体から細胞を非侵襲的に採 取することが不可能であったが,iPS 細胞技術の活 用によって,脳内の PiT-2 発現細胞における変性機 構やそれに伴う形態変化をとらえることが可能とな り,ファール病の病態解明や治療に向けた薬剤スク リーニングにつなげ,ファール病治療薬の早期開発 を目指したい. 7. おわりに パーキンソン病やファール病を含む多くの神経変 性疾患は孤発性と家族性に大別される.家族性は稀 ではあるが,その原因遺伝子の解析により病態解明 や治療法の開発が大きく進むことがある.近年,連 鎖解析からゲノムワイド関連解析などといった様々 な技術により数多くのパーキンソニズムを呈する家 族性疾患の原因遺伝子が明らかとなっている.ま た,次世代シークエンサーといった新しい技術の実 用化により,今後は孤発性における遺伝因子が明ら かになることが予想される.パーキンソン病では, 既に孤発性における遺伝因子の同定が報告されてい る.21)一方,ファール病においても原因遺伝子とし
て,SLC20A2 以外にも,platelet-derived growth
factor receptor, beta polypeptide ( PDGFRB;
IBGC4)や platelet-derived growth factor beta poly-peptide (PDGFB; IBGC5)が次々と報告されてい る.22,23)今後,これらの新技術による原因遺伝子や 遺伝因子の同定とともに,iPS 細胞技術などを駆使 することで,予防薬や治療薬が開発されていくと考 えられる. 謝辞 パーキンソン病の研究に関して,京都薬 科大学名誉教授・谷口隆之先生,同准教授・北村佳 久先生,ファール病の研究に関して,岐阜薬科大学 教授・保住 功先生に厚く御礼申し上げます.ま た,多くのご助力,ご助言を頂いた共同研究者の皆 様に感謝申し上げます. REFERENCES
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