日 本 管 理 会 計 学 会 誌 管理会計 学 第2巻第2写.
1993 年 秋季 号
論 文 .
設 備 と人 員 と に 関す る方 策 と設 備投資の 経済成果
佃 純誠 * ・ 阿 部 雅 之† 福川 忠昭 ‡
〈論 文要 旨〉
設 備の 削 減 を含む 設備投資の 意思決定は設備単独 で行われる こ と は少な く, と く に 近 年の わ が 国 に おい ては 自動 化 との 関連 もあり,人員の 増減に 関する意思決 定と組 合
せ て行われ る こ と が多い と思われ る,本 論 文で は,設備(機 械装置)の増 加/ 削 減と 人 員の増 加 / 削 減と を組 合せ た意 思 決 定を「方 策パ ターン
」と名 付 け,1976 〜 1991 年の 15年間にわ が国の 製 造業 1,014 社 が行っ た「方 策パ ターン 」と設 備 投 資の経 済成果と
の 関 係 を分 析 した .こ れ に よっ て経営者が投 資 を効 果 的に行 うに役 立つ 情 報 を見い だ すこ と が本 研 究の 狙い である.設 備 投 資の 経 済 成 果は, 投 資 計 画の合 理 的 な 意 思 決 定 方 法と同じ原理 に 基づ き, 投 資 決 定に用い られ る 正味 終 価に相 当 する「正味 終 価 」を有 価 証券 報 告 書データを用い て計 算 し た.この 「正味 終価 」の 赤 字 ・黒字と「正味 終価 」
を産み出 すも とになる第 1次 的な稼 ぎで ある営 業 収 入の成 長 ・停 滞 と を組 合せ て 4つ
の 「成長 ・業 績 区 分 」を設 定 し1,014 社をこ の4 つ の 「成 長 ・業 績 区 分 」に分 類し た.「方 策パ ターン 」は有 価証券 報 告 書の 設備と 人員との 増 減に関 する データを 用い て,設 備
と人員の 15 年 間の 平 均的 な増 減 値の 組 合せ によっ て 9つ の パ ターン を設 定し た.4 つ
の 「成 長 ・業 績 区分 」に 分 類 し た 企業 をさ ら に9つ の 「方策パ ターン 」とこれを集約 し た 6つ の「方 策グ ループ」とに分 類し,9× 4 == 36個の カテゴ リィと6 × 4 =24個の カ
テ ゴ リ ィ に入る企 業の 数を勘 定 する.こ れか ら作 成し た4 種類の 一覧 表と4つ の 図に 対する考 察 の結果, 「成長 ・業 績 区 分 」と方 策 と 問に幾つ かの概括 的な関係が見い ださ
れ た.
〈 キーワード 〉
設 備 投 資,経 済成果,正味 終 価,、成長 ・業 績 区 分,
証券 報 告書
人員,方 策パ ターン,関 係,有 価
1993年 8月 受f寸 1993 年 H 月 受琿
*武 蔵工業 大学 助教 授 〔工学 部経 営工学 科 )
1 武 蔵工業 大 学研究 補 助貝 〔工学 部 経 営工学 科)
‡慶 応義 塾 大 学 教授 哩 工学 部管 理工学 科 )
The Japanese Association of Management Accounting
The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
管 理会副 学 第2巻 第 2 号
1. は じめに
経営 意思決 定の結 果の経 済 的側 面は 企業 業 績に よっ て表さ れ るか ら, 経営 者の意 思決定
の 良 し悪 し を 判定す る ため には企業 業績 を客 観的 に 測定 する必 要 がある. ある期間の 企業 業 績は,その 期 間に企業が行っ た多 数の 投 資の 経 済成 果 の集 積で あ り, そ れ らの投 資の 中 で も, 製 造 業に おい て は と くに ,設 備投 資の重 要性が高い . し た がっ て設備 投 資が効 果 的 に行わ れたか否か を知る こ と が大切で あ り, その た め には設備投 資の 成果 をで きる だ け客 観 的に測 定 して ,これ を投 資の 計画と対比する必 要が ある. し か し個々 の投 資の成果を測 定 する こ とは, 企業の 内 部に お い て もあまり行われ て い ない .まして 企業の外 部か ら個々
の投資 の成 果 を 測定す るこ と は ほ と ん ど行わ れ てい ない と 言 っ て よい ,その 方 法 が確立 さ れ て い ない こ と が 主 な 理 由で あろ う.企業 業 績を客観的に測 定する方 法が な け れ ば, 設備 投 資の計 画に対 比させ 得る経 済 成果 を計 算 する こ とも困難で ある .
従 来, 企業 業績は財務 会計土 の決 算 利益 とし て計算さ れ て きた.財務 会計は現在 確立 さ れ て い る唯一の 企業 業績 測定 シス テ ムで ある. しか しこ の シ ス テム は分 配 可 能利 益を計算 する た め の もの で あ り, 投資の成果の 集積で ある企業 業績 を測 定 する方 法 と して は不適 当
で ある. 第 1 に ,財 務 会計 シス テ ム で は複 数の 会 計 方法か らの選 択が認め ら れてお り, 決 算 利益 は計 算 し得 る幾つ かの 利益額の 中か ら1 つ を選 択 し た もの で ある と言える.ゆ えに
財 務 会計シ ス テ ム で計 算 さ れ る利 益は客 観 的な 企業 業績である とは言 えない .第 2 に, 財 務 会計シ ス テ ム は, 投 資 決定 を行 う際の投 資案 評 価の方 法 とは異なる原 理 に基づ い てい る.
しかる に企業 業績は個々 の投 資の経 済 成果の 集 積で あ り,投 資の 経 済成果の 測定は投 資 決 定の合理的な方法 [6]と同一の原理 に基づ い て行 うべ きで ある.計 画 (投 資決 定 )の方 法 と異 なる原 理で 実行結果 (企業業績 ) を測定 して も, 管理 に役 立つ 情 報は得ら れ ない か らで ある.そこで企業 業績を投資 計 画 と 同一の原 理 に基づ い て測定 する方 法が 開発 さ れ た [5].
さら にこ の 方 法を応用 して 設 備投 資の経 済 成 果 を 計算す る こ とがで きる [1].この 計 算を 行 うこ とに よ り, 設 備 投 資の経 済成 果につ い て 計 画 と実 績 と を対 比 する こ とが可能に な
る.
次に必 要なこ とは , 設備投 資の成 功 と失 敗, あるい は効果 的 な 設 備 投資 と効果 的で ない 投 資 との違い , 要 因を 分析する ことで ある .その た め には数多くの 企業につ い て計算す る
必要が ある か ら, 企業の 内部 で は な く外部か ら分 析 する立 場 で計 算 を 行 う必 要 が あ り,こ
の 場合に利用で きる デ ータ は 限定され る.企業の 外部か ら 分 析 を 行 う場 合 に 最 も信 頼で き,
かつ 広 く利 用で きる企 業の 経 済 活 動に関 す るデ ータ 源 は 有 価 証券報告書で あ る.
企業が設備 投資 に 関する意思 決定を 独 立 に行 うこ とは稀で あ る.と くに近年の わ が国に おい て は , 自動化との 関 係 もあ り, 設 備の 増 減 と 人 員の増 減 との 両 者 を 組 合 わ せ て決 定す
設 備と人 員とに関 する方 策と設 備 投 資の経 済 成 果
る場合が多い と思 わ れ る.幸い , 有価証券 報 告書 には設 備投資の動向と共 に, 人員の増 減
に 関する データ も開 示 さ れて い る. し た がっ て 設 備の 増 減 と人 員 の増減との 組合わせ に関 して どの ような方策を とっ た 企業が良い 業績 (高い 設 備 投 資成 果 )をあ げて い るか を分 析 する こ と が 可能で ある.こ の よ うな分 析は, 設備 投 資を効 果 的に行 うに役立つ 情 報 を提 供 する であろ う.
2. 研究の 目的 と範 囲
本 研 究で は外部 分 析の 立場か ら製造 業各社の 設 備 投 資の 経済 成 果を測定 し,設備 と人 員 との増 減に 関する方 策と経 済成果 との 関係を概 括 的に考 察する性 1).な お, こ こ でい う設 備 と は有 価 証券 報 告 書の 有形 固定 資 産 明細 表にお ける機械装置 を指す .製 造 業に限定する
の は, 他の 業 種 に比べ て 設 備 投資の 重要 性が高い か らで あ る.た だ し製 造業の 上場企業 1,021 社の うち実 質 的に製造 業 と見な せ ない 企業 (7 社)は除 外 し, 1,014 社を対 象とする
そ の 業種別 内訳 を表 1, 資 本金規 模 別 内訳 を表 2 に示す .
表1 業種別の分析対象企業内訳と法定耐用年数 表2 分析 対象企業の 資本金別内訳 業 種 1 H 正川
食 品 92 5863 .0
熱講 …
176
(3)
29
562573.786
.2
化 学 皇27 8667 .7
薬 品 34 2779 .4
石 炭 石油 10(1) 660 .0
ゴ ム 18 1161 .1
ガラス 土石 55(1) 3767 .3 鉄 鋼 56 4682 .1
非 鉄 金 属 77 6280 ,5
機 械 154(2) 10769 .5
電 機 146 4430 .1 造 船車両 19 1368 .5 自 動 車 56 3053 .6
精 密機器 27 91333
その他製造 2155 .3
計 1.014(7) 638162.9
Max i Min 25. 6
14. 7 12… 7
13 . 5
11 3 14… 7
11 9
13 3
14 7
13 7
12 10
12 6
13. 7
11 10
121 10
14… 5
25i 3
1は分析対象企業数.O 内は製造業とみ な せ
ない ため除 外さ れ た企業数.且 は 1の うち正味 終 値が測 定さ れ な かっ た 企業 数 〔測 定期 間 15年 ).
1/llは 且 に対する 1の 比率 (%). Max Minは 税 法 上 耐 用年数の 最 大 と最/1・.
資本 金
ll鰍繍π
100 〜1,000億 円 1,000億 円 以 上
Il毳厂
1
‘n 」2:II
計 1,014
1は分析対象企業数 Hは 1の うち 正 味 終 値 が 測 定され なかっ た 企業 数 (測定 期間15 年 )⊥ 〆H
は 且に対す る 1の比率 (%)
H I /且 72 .9
360 63 .6
」72 59 .1 一論 一 9/Sl;
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管 理 会討 学 第 2巻 第 2号
こ れ ら の 企業につ い て,有 価 証 券 報告 書 に開示 され て い る データ を用い て ,合理的な設 備 投 資計 画の方 法 と同一の原理 に基づ き, 最近 15年 間 (1976 〜1991 )の 設備 投資成果 を測 定 する.設備 投 資の 最 終 的な経 済 成果 とし て測 定 する もの を「正味 終価 」と呼ぶ .こ れ は投 資 計 画 理 論における計 画段 階の正味 終 価に対応する実 績 値で ある(注2).「正味終 価 」 を産み 出 す もと に なる第一次 的な稼 ぎが 営 業 収入で ある か ら,営 業収入の伸 びに よ っ て
‘成 長’ を表 し, 「正味 終 価 」の 大小に よっ て ‘業 績’ を表 す と,
‘成長’ と ‘業績’ との 2
つ の次元か ら企業の タ イ プ を分 類で きる .こ れを便宜上 , 「成 長 ・業 績 区分 」と呼ぶ .こ こ で は営 業 収 入の伸 びの正負 と「正味 終 価 」の 黒字 ・赤 字 との 組 合せ で 4 つ の タ イ プ を区 別 する .
他 方, 設 備 と 人 員 との増 減に関す る方 策は, 設 備の増 減 (増加, 減少 ,横這い ) と 人員
の増 減 (増加, 減 少, 横這い )との組 合せ によ り9 つ の 増減パ ターン (方 策パ ターン )に 大別 する.各 社の 15年 間の機 械設備 と 人員 との動 向に 関するデ ータか ら,その 増 減の傾 向を識別で きる か ら, 各 社の 増減の組 合せ (方 策)が どの方 策パ ターンに属 する かが 分 る .
こ の 「設 備 と 人 員 との 増 減に関す る 方策パ ターン 」と 上の 「‘成 長 ・業績 区 分’ に よ る 企業
の タ イ プ」 との 間に どの ような関 連が ある か を分 析考 察 する.
3. 研 究 方 法
3。1 分析 対 象 期 間 (測 定 期 間 )
本 研 究の 分析 対 象 期 間 (設 備 投 資の経 済 成 果の 「測 定 期 間 」,以下 「測 定 期間」と呼ぶ 〉は 1976 年か ら1991 年 までの 15 年間で ある 〔注3).
3.2 分 析 対 象企 業
上 述の ように ,本研 究で は,製造業の上場企業の うち実 質的 に製造 業 と見な せ ない 企業
7社 を除外 した.これ らの企業 と は, 生産 をすべ て子 会社 に任せ て 自らは販売に専念 して
お り,かつ 生産 設備をすべ て子 会社に移籍 した会社 (4社 )と, 日経の業 種 分 類 (本研 究で は 「日 経 経 営 指 標」 1992 年春号に よ る 分 類 を 用 い た)で は製造 業 に 区 分 さ れて い る が分 析 対 象期 間 (測 定期 間) 中に製 造 業以外の業 種に移行した企 業 (3社)で ある.
3.3 設備 投 資の経 済成果の計算
(1) 各年 度の 資 本回収額 お よび資本 回収 率の 計算