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「生きた系」の理論 II (社会・人文科学序説)~生命・心理・物質とは何か

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(1)

「生きた系」の理論

II

(社会・人文科学序説)

~生命・心理・物質とは何か

("物理学”からの統一説明)

( 5 )

池田宗彰

A Theory "fo ngiivL ms"Syste II (An noitcudorntI ot laicoS ceenciS & Human )ecneicS

: What era ,efiL hologyPsyc and ,rettaM from eht u

n i f i e

d elpicnirp "fo?"scsiyhP

( 5 )

目次

Muneaki Ikeda

(1 部)物理現象~宇宙のはじまりから

I窄 全 体 の 鳥 諏 図

II章 物 理 理 論

§1. 屈子論 l

l 「餓子」の定義 1

2 古典力学 1

3 批子力学 1

4 場の問子論 1

5 対称性と不確定性原理と「力の検出」

(2)

6

0 立正大学経済学季報第9531

6 トンネル効果

§2. 「超ひも理論」

2

1 ひも理論

2

2 ひもの絨子化 2

3 不確定性原理の修正

§3. 宇宙論 3

1 宇宙のはじまり

~真空の“ゆらぎ”と“トンネル効果"

3

2 インフレーション

~宇宙の指数関数的膨張 3・3 「火の玉」宇宙(ビッグバン)

~バウンダリー制約無限:プランク分布(イ)

3

4 宇宙の「晴れ上り」以降

~バウンダリー有限:プランク分布(イ)の継続 3

5 膨張と“構造”の形成

~生命・心理へ("くりこみ"反転)

§4. くりこみ理論 4

1 くり•こみの数式表現 4

2 くりこみの図による表現 4

3 くりこみの表わす意味 4

4 認識空間のくりこみのまとめ

§5. プランク分布

~バウンダリーと対称性の関係

:「晴れ上り」点が“対称l生の見掛上の破れ”の分岐点 5

1 プランク分布の「晴れ上り」点の左側のバウンダリー制約と右側の パウンダリー制約の違い

5

2 プランク分布の“対称性粒子”と“仮想粒子の衣の原さ”の間の

“ランダムウォーク”(プラウン運動)の違い 5

3 現実のデータの ~(t) は正規分布かベキ分布か

(3)

§6. 不確定性原理

6・1 不確定性原理と階層

6・2 「一般均衡」でのがの算出の2つの形

~形式論理の場合とくりこみの場合

6・3 4*(バウンダリー)の存在によるランダムウォークの変容

以下本稿)

(2 部)生命・心理現象の発生III章宇宙の構造形成過程での

“認識空間"の発生

~自己複製構造発生による“自発性”・“任意性”の発生進行

§1. ..自己複製構造”の発生("自発性”の発生)

11 ..自己複製構造”の発生と“認識空間”の発生

~自己複製ルール (RNADNA) と自己組織の“暗号”の発生

(→付論参照)

111 自己複製構造の発生

1・12 「目的」・「認識」・「感情」:心とは何か)1( 1・2 "認識空間”の進化

~脳の発生と進化 1・2・1 突然変典と進化

1・2・2 ダーウィンの「自然淘汰説」(自然選択説)と木村衰生の「分子 進化中立説」

1・2・3 「両説」のわれわれの理論による“同時説明"

1・2・4 構造人類学(レヴィ=ストロース)

~脳の進化の第1次帰結:神話の息考 1・3 対称性人類学(中沢新一):心とは何か)2(

~脳の進化の第2次帰結

1・3・1 対称性:南方熊楠の粘菌の研究から

(4)

6

2 立正大学経済学季報第953

1

32 "対称性”概念と“非対称性”概念

§2. ..鼠子”の“確率性”は“鼠子”の“自発性”と同義 : “囚果性”からの離反

-..不確定性原理”と人間(生物)量子の“自発性”・“任意性”

2

1 麗子の「不確定幅」(確率性)がは鼠子の“任意性”・“自発:I生”と 同義

2

1 1 人間最子は宇宙の“構造”形成の一環 2

12 脳(ニューロン組織)内の情報伝達メカニズム 2

2 「人間鼠子」の“対称性”と“宇宙スケールの認識視野”及び“個人 スケールの認識視野”の対等l生の問題

§3 ... 不確定性原理”は“正準共役”にある変数値の“バウンダリー”(分

布幅)同志の背反関係

: “エントロピー”(自発'I生・任意性)増大は,それら両変数の“並行 関係”

§4. 不確定性原理は鼠子の“階層”に無関係に有効 - ..人間仮想粒子”も“階層上げ”に従う 4

1 はじめに

4

2 祉の中の“しがらみ”の例 4

3 グループ化(共同体)と個人の例 4

4 階層上げの出来る“人間最子”と出米ない“人間量子"

4

5 人間の“性格"はどのように説明されるか

§5 ... 時代の流れ”・“社会的価値”と“個人”

§6 ... 認識内容”の進歩("因果性" - ..法則性”の進歩)と認識主体の

“緩み”

6

1 プランク分布のA 点(晴れ上り点)の右側 6

2 福岡伸一氏の「生命仮説」について 6

3 岩田弘氏の「世界資本主義」理論について

§7. 認識のパウンダリー有限の場合にパウンダリー・ゼロと認識すると認 識が破綻する

(5)

_EX 経済万能理論(市場経済理論・計画経済理論)は,政治・社会・

文化のパラメターが有限値をもたない(→比較静学の正当性)

7・1 経済万能理論による“理論の歪み”

§8. 緩んだ“認識主体”自身を対象とした学問は,その内容の“任意性"

は大きくなる

~社会・人文科学の“任意性”およぴ自由な会話の“任意性”

8・1 はじめに

8・2 岩田理論の場合の任意性の符合

§9 .. 不確定性原理”・“対称性”・“くりこみ.. (再論).

§ 1 0

. • の

~底流(マグマ)は“不確定性原理”

(付論)

拙著『「物理現象→生命現象→心理現象」の一連のプロセスの統一的説明

~シュレーディンガ一方程式をみたす波動関数の確率性の純化)2(

(立正大学「経済学季報」, ,5002 ).tcO の第I 章と同じ.I

(あとがき)

§1. 要約 )1(

§1 -2 要約 ()2

§1 -3 要約 )3(

§2. 唯物論と神仏(宗教)について

§3. 宇宙スケールの中の人間の小ささと“人間中心主義”の宇宙的意味

§4. 「不確定性原理」を導入することによる存在と認識の統一と弁証法(<

りこみ)

§5. 「甚礎科学」はいらないのか?

§6. • その他

(6)

6

4 立正大学経済学季報第59 巻 3号

(2

部)生命・心理現象の発生

III 宇宙の構造形成過程での“認識空間"の発生

-"自己複製構造”の発生による“自発性"・“任意性"の発生進行

§.l "自己複製構造”の発生("自発性”の発生)

1・1 .. 自己複製構造"の発生と“認識空間"の発生

~自己複製ルール {RNA → DNA) と自己組織の“暗号"の発生(→

付論参照)

111 自己複製構造の発生

宇宙の物理過程が,“対称性”を担う場の鼠子(シュレーディンガー方程式 またはディラック方程式に従う)が発する場の鼠子の「不確定幅」(あるいは

「分布幅」・不確定性原理に従う)が占めていた宇宙空間の中に,宇宙の冷却と 共に“構造”が形成され始めたことは前に述べた.その“構造”の一部が,

“自己複製"という性質を持った“構造”として出現した(偶然).その“自己 複製構造”を「生命」と呼ぶ.

現在の生命体で言えば,“情報”を担うのが核酸 (DNA またはRNA) であ り,“機能”を受け持つのが“タンパク質”である.つまり,“核酸”を作るた めには“タンパク質"の働きが必要であるが,その“タンパク質”を作るため に必要な情報(アミノ酸配列)は“核酸”が持っている.では,どちらが先に 存在したのであろうか.

.....

この循環から脱却するためには, 1つの主体(われわれの場合“場の鼠子t)t が,その両方を同時に持つことが必要十分ということになる.最初の生命体と 呼べるものは,そのようなものであったと推測される.すなわち,自ら情報

(設計図あるいは“鋳型)tt を持ち,かつ同時に触媒機能を持っており,前者を

“鋳型”として後者により自らを構成するような分子("場の最子)tt である.

(7)

そのようなものとして,「RNA レプリカーゼ」が考えられる.そのような

“場の鼠子”が,不確定性原理に従い,ある「不確定幅」(任意性)を持って,

の か • 散乱したものであ

.........

る.(このような“場の最子"は,もはや,贔子力学的ミクロ賊子ではなく,. . . . . . .

批子力学に従うマクロ鼠子であるかも知れない.)それがたまたま,「RNA レ プリカーゼ」のような自己複製の性質を持った“最子”であったと考えられる... RNA レプリカーゼ発生の詳細の諸説については,本書「付論」に書かれて いるのでそちらに譲ることにする.参照されたい.

こうして,宇宙空間の二郎[こ,生命体という“構造”の持つ“目的"・“認 識"・“感情”という属性の占める空間ができ,それが“認識"という性質によ

って,宇宙の膨張とは反対方向に, くりこみ(階層上げ)を進展させてゆくの

I章).

1• 1•2上記“自己複製”という性質を持った“証午”の「行動原理」は次のように「目的」・「認識」・「感情」:心とは何か. . . . . . . . . . . . . )1(

定式化することができる.

まず,上記最子の「不確定幅」は,量子の“任意性"・“自発性”と言い換え ることができることを強調しておきたい.何となれば,「不確定幅」は“確率 性”すなわち“非因果性”の別表現であり,“非因果性”は,“任意性”・“自発 性"と同義であるからである.ただし,“制約条件”付きの“任意性”・“自発 性”である.

これの主体である「生命体」.Iの「行動原理」は,まず「主体均衡」に甚づ く“行動計画表.i"を作り,次に,別の「主体」. . . . . . .2が「主体均衡」に基づいて作 った“行動計画表.z"と付き合わせて「一般均衡」を求め,その一般均衡に甚 づいた“制約条件"がを自らの“制約条件”として,“任意性"の(「不確定......

幅」の)最大化を企るというものである.この「主体均衡」. . . . . . . . . . . .I を決める際に,

(イ)自ら実現可能な最大の“自発性" (「不確定幅」すなわち“観測値¥.)ふ.....

を“パラメター"として“主体均衡". . . . . . . (計画表)を作った上で,次に「一般均.......

衡」に転じ,その“パラメター”を“変数"に変換して“一般均衡値"がを

(8)

6

6 立正大学経済学季報第9巻 35

求めるのである.(口)また,パラメターふの下で“任意l生”を最大にするの であるから,ふは「目的」.1 (仮)でもある.(ハ)さらにまた名は,“対称性 鼠子”が発した「不確定幅」でもあるから,“観測値"i に等しく,従ってこれ. .

.

は「認識」(仮)を与える.何となれば,例えていえば,これは暗闇を手さぐりをして世界(空間)の形を「認誠」するのに倣えられるからである.(二)

. .

. . .

.

.

. .

....

さらに,ならは,「一般均衡」の成立までの主体間の“不均衡の調節囚子”

になっているから,これは「感情」に相当する.これが例えばプラスの方向へ. .

. . .

. .

の調整をする過程では,マイナスの感情,マイナスの方向への調整をする過程

.

. .

. . .

では,プラスの感情を意味する.

以上を図式的に表わせば次のようになる.

<

1

> 「主体均衡」:l

"

i '

:

ター ( ~

観測値1→「認識」.1(仮)

DNA ・脳〉l

●計画表l : 1,V("認識値;;ふ) =O

~L“認識値"(,1/<=i ふ)一 ()a

2〉「主体均衡」. : 2

旦 l

:府':!:→ 『(パラメター)一「H的」'(仮)(甜;:『;;

観測値2→「認識」.2(仮)

リ くDNA ・脳2>

●計画表: -''(zrJ.. 認識値;;ふ)=O

~L“認識値=z" がふ)一 ()b

3〉「一般均衡」:(ど:“変数”に変換)

“認識値"1.=" 認識値.z"→ 'lP () =</,2(~) -(c)

( a

) )b( *i

(9)

4〉「一般均衡」によって決まるがが与えられると,最終的にがと「認識」

(「目的」)の対応が決まる.一般に,“主体"が違えば“観測値”と観測階層が 違うから,名と名の値と位置が異なり,上記「一般均衡」で ()c 式をたてる

と,解がはふと名の間の値となり,かつ“階層”も制約を受けたものになる.

以上の模様を図示したものが,く.giF 3・11〉である.

同図(口)には,われわれのモデルと,「進化論」の 2説,ダーウィンの

「自然淘汰説」と,木村衰生「分子進化中立説」との対応が描き込まれている.

く5 〉なお,上記説明に於いて,「主体均衡」Lを構成する“場の盤子"と,

「主体均衡」2.を構成する“場の最子”とが,“状態変数”の「階層」が離れて いるもの同志であると「一般均衡」が起りにくい.例えば同じ「エネルギー・

レベル」同志であることが必要となる 1・(2・3 項で再述する.).あくまでも,

<

F i g

. ( ~ )か の (t)

k )t(

4 5°

k )t(

(10)

6

8 立正大学経済学季報第59巻 3

<

F i g

. ( DNA ・脳とが)t( 曲線の関係及ぴ進化「2説」との対応

(①分子進化中立(木村資生))

RAN レプリ カーゼ②

_―ァ―

-9

2

2 /,1

‘ , '

・→定<脳幅質

←宿ま

u.9 ZA 不ん

r の(

O O l

↑ ↓

O O l

-

T

(

‘ 、 , ‘

Z ' , ' z

↑ ↓

, z ,

. .

ー/

,J

~

L

ーン

‘_’ヽ/

月“ウヅ 凶

定質

,..,_'V'

→・汰 不ぱ←

A 淘一 r

Z 然げ

D

子( :- :| ー .

9 -

1_

_ _- 『

RNA

レプリカーゼ①

. .

(①分子進化中立(木村資生))

1

. (①は, DNA 分子の偶然の変化,即ちたんばく質という絨子の「予鶴定幅」の偶然 の変化が,「主体均衡」をシフトさせ(ぶふと“認識"値との関係をそれぞれ変

② 閃 戸 二 言i移動させる.

2

. (①は直淋均衡」のシフト,②は,その結果の「一般均衡」の変化

「主体均衡」同志がどの調整で「一般均衡」を求めるプロセスは,同一階層内. . . . . . . .

での調整であり,異なる階層間では階層上げ(くりこみ)の調整による動学過 程を発現するのである.

1•2 "認識空間"の進化

~脳の発生と進化

前項で, DNA の 発 生 と が)t( 曲 線 の 関 係 を , 本 文 で 論 じ , そ の 結 果 を

<

F i g

. 3・11>(口)として示した.生命体が更に進化してくると,“脳の進化”

とぃぅ“認識上の”進化がもたらされた.そこで,われわれの「理論仮説」に

(11)

甚づいて,進化学上の未解決の大問題である,ダーウィンの「自然淘汰説」. . . .

(自然選択説)と木村資生氏の「分子進化中立説」との同時説明を試みたい.

1•2•1 突然変異と進化

追伝の仕組みを分子レベルから理解できるようになってから,“突然変異”

の実体が理解できるようになった.“突然変異”はDNA の上に起きた変化だ が,そのDNA 上の変化が“進化”の索材となる.

生物の身体は,無数の細胞で構成されており,その11つにDNA がある.

細胞中のDNA は,生涯にわたって突然変製を受けるが,それらがすべて進化 の索材になるわけではない.進化の索材になるためには,その変化が遺伝しな ければならない.細胞には2種類あって,遺伝にかかわる生殖細胞と,その他 の体細胞とがある.従って,生殖細胞に起きた突然変巽が進化の索材になると いうことになる.

それでは遺伝的変化である“突然変晃”と“進化”とはどう違うのであろう

“突然変異”は個々の生物個体に現われるが,多くの場合,それはすぐに消. . .

えてしまう. しかしまれに突然変晃を持った個体は次第に仲間を増やし,つい

.......

には,種全体に広まることがある.この時点で種内の各個体が以前に持ってい た遺伝的性質が種という集団全体で変晃体で置き換わってしまう.これが“進 化”である.. . . . .

多くの場合,“突然変異”は個体の生存にとって有害なので,その個体は子 孫を残せる年令に達する前に死亡するから,突然変異によって生じたDNA 変化も次の世代に受け継がれることはない.

しかし,稀丘[ま“幸運な変典”もある.最初は1個体に出現した“変異"が,

次々にその変異を持つ子孫を増やし,ついにはその種を形成する全集団に広ま. . . . . . . .

ることがある.この場合,集団はこれまで保有していたDNA を,別の変開を

.................

受けたDNA に置き換えたことになる.このことを変奥が集団に「固定」する という.giF<( 312 〉参照).

(12)

7

0 立正大学経済学季報第59巻 3

<

F i g

. 3•1•2> 突然変異の集団への「固定」

……•

集団への「個定」

: ⑮ 0

……- ~ 集団から消失

1世 代 第2世 代 第3世代 第n世代 四角が個体,円が集団を表す.黒色個体は突然変炭個体

この場合,種の. . . DNA が全体として変化したわけで,この変化はDNA に刻 み込まれ,種が絶滅しない限り,その後長い進化の歴史を通じて痕跡として残

る.

1•2•2 ダーウィンの「自然淘汰説」(自然選択説)と 木村資生の「分子進化中立説」

ダーウィンは,膨大な資料を駆使して生物の進化を科学的に立証し,進化が どのようなメカニズムで起こるかを説明する「自然淘汰説」(自然選択説)を 確立した.それは次のようなものである.

“変異”にはいろいろな種類があるが,それに伴い“生存にとっての有利さ. . . . . . . . . . .

の程度”もまちまちである.生存にとって有利な変異を持った個体は,生存競 争に勝ち残り,より多くの子孫を残し,世代を経るに従って,そのような“変 炭”を持った個体の数が増えてゆく.一方,生存に少しでも不利な“変異”を 持つ個体は集団中から消えてゆく.これがダーウィン以米の「自然淘汰説」で.........

あり,形態レベルでの進化を合理的に説明する唯一の学説であることは現在で も変らない.

(13)

これに対し8691 年,国立遺伝学研究所名誉教授の木村資生博士は「分子進化 中立説」を提唱した.これは次のことを主張する.

...

すなわち,「中立説」では,分子の“変化”に寄与する大部分の“変晃”は,

自然淘汰に有利でもなく,不利でもない,“中立な変炭”であって,そうした. . . . . . . .

“変異"が偶然に集団に「固定」した結果,“進化”が起こると考える.この考 えは,淘汰に有利な変異が集団に固定するというダーウィン流の「自然淘汰. . . . . . . . . . . . . . . . .

説」(自然選択説)と全く対立する考え方であると思われてきた.. . . .

「自然淘汰説」と「中立説」との違いは,“突然変異”が集団に「向定」して

. . . . . . . . . . . .

ゆく時のメカニズムの違いである.「自然淘汰説」では,生存に少しでも有利 な,子孫を多く残せる“変異”が選択され,集団に広まってゆくと考える.一 方「中立説」では,生存にとって不利な“変異”は,自然淘汰によって集団か

ら除去されるという点では,「自然淘汰説」と同じだが,それ以外の“変奥”. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

は,すなわち“分子の進化”に寄与する変晃は,偶然に集団に「固定」する,

と考える.

「中立説」は,自然淘汰による,分子の進化を全面的に否定しているわけで. . . . .

はない.「中立説」は“分子の進化”に寄与する“変異”のうち,環境適応に. . . . . . . . . . . . . . . . . .

無関係な“中立的変異"の方が“淘汰に有利な変異"より,数において圧倒的 丘多ら,ということを主張しているのである.

1•2•3 「両説」のわれわれの理論による“同時説明"

両説を,われわれの「生命モデル」に適用するとく.giF 313 〉で説明され るようになる.

( 1

) 生命単位の「目的」("任意性")充足度(前節のが)が同図の )a(( (

b

) 図のいずれにおいても) a. . 点から出発するものとすると,. . . . . . . . . . . . . DNA. . . の“突然 変晃"が生じた場合,両説の淘汰の差奥によって決まる目的充足度の“参入”

(既存の分子(批子)が発する仮想粒子がと解釈することができる)が,. . . . . 'a (

( a

) 図の場合)か. . . . a". b)(( 図の場合)への移行の差巽で表わされる.. . . . . . . . . . . . . . .

滲入”の大きさは,“参入"を促す曲線 V の関数形F によって決まる. F は,同図に示されているように, C およぴ同線の傾斜の大きさによって決まる.

(14)

7

2 立正大学経済学季報第59 巻 3号

<

F i g

. 3• 1•3> “変異”が固有状態間である場合と遷移状態に移る場合との任意性

(確率性)の差異及ぴ進化の程度の差異:「両説」の比較 V )a( 変異:固有状態から固有状態へ

(「分子進化中立説」)

〜 >

C 2

C i

a

(分子レベル)

t

出発点

・淘汰による参入制限が小さい.

(参入=aa') →(確率化・大,進化・大)

45 〜 >

V ()b 変異:固有状態から遷移状態へ

(「自然淘汰説」) V V ,

( 固有状態)2

C 2

c ,

・淘汰による参入制限が大きい.

(参入=aa")-( 確率化・小,進化・小)

V (

( b

) のaa"a"' …→ E' の制約を避けるために)a(a'a→ b…→ Eの制約に従う).

45

. . . . . . . . . . . . . . . . .

“ 参 入 ” の 大 き さ が “ 粗 視 化 ” に よ っ て 点 ( ゼ ロ ) に 変 化 す る 規 模 の 大 き さ が

.....

( " 参 入 ” の 前 後 で の マ ク ロ 変 数 と ミ ク ロ 変 数 の 関 連 を “ 対 称 性 ” が 断 っ て し ま. . . . . . . . . . . . . . . . . .

う 程 度 が , 従 っ て 大 き い 小 さ い が 関 係 な く な る 程 度 が , ) “ 確 率 性 ” ( 自 発 性 ). . . . . . . . . .

の 程 度 を 与 え る . 故 に , 逆 に 言 え ば , Fで “ 確 率 化 ” の 不 完 全 さ , す な わ ち 残

(15)

. . . . . . . . . .

存する“因果性”が決まる.“参入”が大きいほど... . . . ~加ふ化"が大き<'.. 因果 性"が小さい.“参入”前後のミクロ変数とマクロ変数に挟まる“対称性”(ス ケール不変性)の数が少くなるからである.より簡単に言えば, 1Cc~

C

12Cの幅は,生物という“場の贔子”の発する「不確定幅」だからである.

逆に,“参入"が小さいほど“因果性”は大きくなる.従ってく .giF 3•1•3>

)b( 図の1Cc~ の変化で表わされる“変異”より, )a( 図の1C2C

“変異”の方が,“確率性"(任意性)が大きくなり,残る“囚果性”が小さい.

C

1およぴ2Cは,それぞれ, DNA のセットが安定して存在している状態で あるから,シュレーディンガ一方程式の“固有状態”に対応する.これに対し,

c~ は同方程式の“遷移状態”に対応する.“両状態”共,“確率化"の不完全 性,すなわち“因果性”が残るが,“固有状態”に残る確率性の“不完全さ"

は,なお残る“時間の埜子化"etercsid( 化)の“不充分さ”からくる.そし て,同じ“変異”でも,“確率性"に不充分さが残ることが,即ち「不確定幅」

(任意性)の“余地”が残ることが,更なる“参入”を招き,一層の“確率性”

の純化を促し,進化を進める (E点の V値の増大)原動力となる.

この理論に甚づいて,「両説」を比較すると次のようになる.

( ...

2

) 「自然淘汰説」では,自然淘汰によって,観察者の一定の“視野”への. . . . .

“生命単位の「目的」充足度”の“参入”が制限される.自然選択だけであっ たら,生存に適さない中立のものは全て淘汰されるから,“合入"が夫. . . . . . . . . i<jl¥

限され,“参入”サイズは小さくなる.その結果,“確率化”(任慈性)が小さ くなり,因果性が大きく残る.従って,“自然選択”は強い因果性と見倣され る.く.giF 3・1・3 〉で言うと, )b( 図のa"a"'b→…'Eの動学に相当し,

対応する "DNA 変晃”は, 1CiCである.

( 3

) これに対し「中立説」は, F. によって“参入"が制限される点(因果性. . . . . . .

が残る点)は同じだが,“参入”の制限が弱いため,“確率性" (任意性)が大 さい.従って,「淘汰説」に比べれば,「中立説」では,強い“自棄仕"を避け らたらと弱ぶ、油屎,"ittこ提うのである..giF< 3・1・3 〉で言えば )a( 図のa

'ab→…→Eの動学に従う.シュレーディンガ一方程式で言えば,“確率. . .

:..

(~坑仕)ら妨げら旗自となる「異るエネルギー・レベルの混在」を避け

(16)

7

4 立正大学経済学季報第9 巻 3 号5

. . . . . . . . . . . .

るために,“確率性(自発性)を抑制するのである.強い“因果性"を避ける ために,弱い“囚果性”に従うと言ってよい.

結果としての到達点 (E 点)では,生命単位の「目的」充足度 V は,「中立 説」の方が「淘汰説」より大きくなるかに見える.すなわち,前者の方が“進 化”を説明できる程度が大きいようにも見える.

( 4

) 「両説」共,参入→粗視化(確率化)→参入→…→ E の「階層上げ」動

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

学に従って進化点 ()E に収飲する点は同じだが,相違点は,① 「淘汰説」の 方が“参入”が入ふ:伯 ]I¥. . 約さんら点,およぴ,その結果,嵐化ら到. . . . i点がi

低い点である.何故“制約”されるかは,く.giF 31 (1 ロ)〉の注釈を参照さ れたい.

相違点の第 2は,② 「中立説」の階層上げの出発点は“分子レベル”(ミク ロ)であるのに対し,「選択説」の場合は,“形態レベル”(マクロ)の進化の 階層上げであって,すなわち,. . . . . . . 1C iC の“分子レベル (DNA レベル)の変 巽”に対応した“杉愈”の変異であり,“進化”の到達点'E は,「分子進化」

の場合のE より低位であるが,他方「中立説」の分子進化の到達点. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . E は,分. .

子レベルでの“変異”が階層上げを,形態レベルの場合より多数回行なった結. . . . . . . . . . . . . . . .

果の到達点であるから,杉紐レベルで見ればマクロに達していると考えること

が可能である.

すなわち, E 'E は“形態レベル”は同一,“進化のレベル”(個体の自発

. . . . . . . . . . . . .

性の程度)は,前者E (「中立説」)の方が大きいと言えるかも知れない.

結論として,③ “同一の形態レベルの進化”に対し,個体の獲得した“自発 性”の程度は,「中立性」で見た方が大きくなっている,と言えるかも知れな. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

. . . しかしいずれも「階層上げ」に従って進化する結果,“自発性”の程度が. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

共に進化する点,およぴ,いずれも形態レベルの進化をする点から,“進化の 程度”の差を別にすれば,「向証」 i伺である. . . . . . . .

④そして,“進化の程度の差”は,「両説」の“参入の程度の差”に由米して いるのである.“程度の差”を除けば,「詞訊」とit、‘侃迎"丘証う.

( 5

) ここで次のことを付言しておきたい.すなわちシュレーディンガ一方程 式を構成する互いにエネルギーが大きく異る複数の“波動., ("場の鼠子”=分

(17)

子)同志は「生命体」を構成せず,従来通り“物理現象”を演ずるが,エネル ギー・レベルが同じもの同志が発生すると「生命体」を構成し始める.「生命 体」としての“場の最子”(塊)は,粗視化(階層上げ)をくり返すうちに,

やがて,“進化”として“脳"を持つようになるが,そのうちの,背後にある シュレーディンガ一方程式において,互いにエネルギーが同じもの同志が“心 理現象"を発現し始める.そして,それ以外のものは,従来通り,単なる“生 命現象”を演じ続ける.(エネルギー・レベルが同じもの同志は,‘‘個有状態”

間の移動を生じるもの同志である.)

こうして“生命現象”が発生しても,“物理現象"が併存し,また“心理現. . .

象"が発生しても,単なる“生命現象"が“物理現象”と共に併存し続けるの である.

1•2•4 構造人類学(レヴィ=ストロース)

~脳の進化の第 1 次帰結:神話の思考 (

0

) 生物に脳が発生してからそれが進化した第 1 次帰結が“神話の息考”と 呼ばれるものである. 3 万数千年以前のことである.

( 1

) レヴィ=ストロースは,その頃の未開社会の親族構造,社会組織,宗教,

神話,芸術に,今H構造分析と呼ばれるものの軌跡を例示している.その中で

“神話"の中に,特に「無意識」が行なう思考が存在したことを指摘している.

他方,今Hの「言語学」の構造の中に,脳の進化で生じた,「無意識」の普 遍的構造が,その構成要索として含まれていることに,レヴィ=ストロースは H した.彼は,マルクスの定式「人間は自分の歴史を作る. しかし歴史を作 っていることを知らない」を引用している.前半は歴史学を正当化し,後半は

「無意識」を慈味し,民族学を正当化している.

そこでレヴィ=ストロースは,神話を扱う人類学と言語学との間に存在する

「無意識」という共通概念に着目して,人類学に言語学の理論を適用すること を思いついた.

( 2

) 「言語学」の構造: (ヤコプソン;ソシュールを発展)

( 2 ) -

1 "言語"と“意味”の対応("言語"が“意味”を表現するメカニズ

(18)

7

6 立正大学経済学季報第9 巻 35 号 ム):

まず潜在的な「言語の体系」 (laugue) があり:

c

異なった言葉がそれぞれ晃なった意味を持つ“差異の体系”を成し,

音龍や文法の“規則”を備えている.

その“規則”に従って言葉が結合されるとき,“個々の言語行為”(パロー ル)が“現実化" ("意味”に対応)される.

( 2 ) -

2 言語に於ける 2 つの「関係軸」: (パロールの構造)

(・「連合関係」~形や意味の“類似"によって,言葉を相互に“連想”させ る関係("選択軸").

・「統合関係」~言葉をパロールヘと規則的に“結合”させる関係("結合 軸").

前者は,パロールに於いて適切な言葉を“選択”させる軸,後者は,選択さ れた言葉を文脈に従って“結合”する軸.

( 2 ) -

3 「比喩」の 2 形式:

....

・「隠喩」~“選択軸”に沿って類似した言葉をとって置き換える.

・「換喩」~“結合軸”に沿って近接した言葉を代用する.....

前者は,意味の“重層化”による凝集(精神病者の症候).これを元のパロ ールに属する“言語”として解読するのが「精神分析」(即ち,意味の凝集を 隠喩する前の,重層化を解いた元の階層の言語に戻して表現すること).

後者は,意味の“移動”をもたらす.

何れか一方の“軸”が損われれば,失語症「無意識」につながる.

( 3

) 「構造主義」: (レヴィ=ストロース)

“近親婚”のような“親族構造”が“神話索”である.

時系列的な“神話索”を“共時化”して社会構造を紐み立てるのが“構造主 義”である.

“近親婚"が“神話索”である場合,“交換される女性"がパロールの役を果 たしていることを,レヴィ=ストロースは明らかにした.

“共時化”された“神話索”同志は,“選択関係”を成し,その結果出米る

“構造”は“隠喩的”になる.又,この場合“結合関係”の欠如から,.. 神話の

(19)

<

F i g

. 4-1-3 (イ)隠喩・換喩;(口)構造化

結合軸(

言葉

の組

立て

”時

間“

(イ)

パロール3⇔‘親族構造3 パロールl>c親族構造、1

パロール2⇔‘親族構造、,}

近い‘構造、

同志

‘隠喩、(意味の‘重層化、)

選択軸

結合軸(時間)

(口)

‘親族構造己区→パロール2 隠喩の`共時化、(隠喩化)

2⇔‘神話毒} 2 皿 彗

‘悶喩、1.←:, >神話素、 1

選択軸

構造”は「無意識」となる.

( 4

) 以上を視党化したものがく3ig.F14 〉である.

..

同図(イ)は, 3本の曲線が相互に近いパロール同志を表わす.これらはそれ ぞれ,親族社会の“構造"の近いもの同志に対応する . A 点 で1つの言葉と 1 つの結合規則の組合わせを表わすと, AA' の 移 動 が1つ の パ ロ ー ル1の 部

(20)

7

8 立正大学経済学季報第593

分に対応する.水平方向の移動ABは“隠喩”(意味の“重層化")を意味し,

1つの言葉は 1つの意味に対応するが, A B は意味は近い(殆ど同義語).

従って, 1つの選択軸に沿った移動は,同義語から同義語への移動といってよ い.即ち,水平方行の移動は意味を変えない.(いわば11; 1+1=1.) 従って,“隠喩”は何回繰り返しても意味が変らないから,(次節で述べる)

“対称性”へと繋がってゆく.これが「構造化」を“親族構造”へ適用した根 拠になっている.

これに対して,結合軸(換喩軸)に沿った移動A C は,同一の言葉を異な った結合規則で置き換えたもので,結果,意味の移動が起こる.. . .

ところで, 1つの“親族構造”は通例複数の“神話索”(パロールの部分)

から成っている.これを図示したのが同図(口)である.“親族構造" 1は,“神

話索,, A A' A' A" とから成っているものとすると,それぞれを隠喩化

したものはA →瓦万 A' →瓦万である.そこで,パロール(神話索)囚ア→

A" は隠喩化されると,“親族構造,, A A" は,「構造化」されて, (A →瓦万

囚ア→応うとなる.

結局,「構造化」によって,“構造”が“共時化”された結果,部分は全体に

一致した (l+l=l) のである.

そして,その結果は,“換喩”の欠如によって導かれたものであるから「無 意識」である.即ち

「神話」の息考←⇒ 「無意識」

ということになる.

1•3 対称性人類学(中沢新一)脳の進化の第2次帰結:心とは何か)2( ここで,中沢新一「対称性人類学」,4002( 講談社)の体系をわれわれの体 系と対比しながら,脳の発生と進化に伴う人間世界の息考の構造とその変遷を. . . . . . .

辿ることによって,「心とは何か」を, 1・1から更に発展させて考察したい.

(上掲書は,レヴィ=ストロースの「構造人類学」を“対称性”概念を使い発展 させたものである.)

中沢氏は上掲書の序において,次のように言っている.(それを引用すると

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