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ア メ リカ水 法 に お け るニ ューサ ンス と 沿 岸 権 侵 害 の関 係 性

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(1)

13S

説 〉

ア メ リカ水 法 に お け るニ ューサ ンス と 沿 岸 権 侵 害 の関 係 性

一 水 質 汚 濁 に対 す る コモ ン ・ロ ー上 の 法 的救 済 の理 論 をめ ぐって 一

宮 崎 淳

1は じめ に

2プ ラ イベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の 法理 (1)プ ライ ベ ー ト ・二 ー サ ンス の定 義 (2)侵 害 行 為 の合 理 性判 断

(3)土 地 所 有者 の訴 訟 適格 性 3沿 岸 権 主 義

(1)沿 岸 権 主義 の定 義 とそ の内 容 (2)沿 岸 権 主義 の水 質 的 側面

(3)自 然 水 流 の原 則 と合 理 的利 用 の原 則 との 関係 性 4ニ ュー サ ンス と沿 岸権 侵害 の 交 錯

5む す びに か え て

1は じめ に

ア メ リカ 合 衆 国 は 、本 格 か っ総 合 的 な 水 質 保 全 に関 す る法 と して 、1972年 に

U

連 邦 清 浄 水 法(CieanWaterAct,CWA)を 制 定 した。 本 法 は、種 々 の汚 染 源 へ の 対 処 方 法 、 執 行 シス テ ム 、 連 邦 と州 との 関 係 等 、 従 来 の連 邦 法 とは相 違 し た ア プ ロー チ を採 っ て い る。 そ して 、 同 法 の 実 施 を 担 う各 州 で は 、 水 質 管 理 法 が 制 定 され 、 そ れ を 清 浄 水 法 の執 行 の仕 組 み の一 部 と して機 能 させ る と と もに 、

z)

当 該 州 独 自の 水 質 規 制 シ ス テ ム を定 め て い る。

一 方、 コモ ン ・ロ ー は、 包 括 的 な 規 制 が適 用 さ れ な い局 部 的 問 題 に対 処 し、

(2)

136

制 定 法 を補 完 す る役 割 を 担 っ て い る。 補 完 的 役 割 とい って も、 コモ ン ・ロ ー上 の権 利 お よび 法 的 救 済 は 、 今 日に お い て重 要 な 機 能 を 果 た して い る。 そ れ は、

3)

っ ぎの 理 由 に よ る。

第1に 、汚 染 物 質 の 排 出 基 準 は 画 一 的 な もの に な ら ざ る を え な いが 、 この 画 一 的 基 準 か ら もれ た水 質 汚 濁 に対 す る法 的 救 済 手 段 を提 供 して い る。 第2に 水 質 汚 濁 は汚 染 物 質 の 除 去 ま で継 続 す る が 、 コ モ ン ・ロー は そ の 除 去 ま で の 水 質 汚 濁 の 問題 を扱 う仕 組 み を供 して い る。 第3に 、 パ ブ リ ッ ク ・ニ ュ ー サ ン ス に 関 す る コモ ン ・ロ ー は 、 廃 水 排 出 に関 す る州 規 則 が施 行 さ れ る原 理 お よび 一 般 的 な公 益 基 準 を供 与 して い る。 第4に 、 水 質 汚 濁 の 新 しい類 型 につ い て は、

制 定 法 に よ る法 的 手続 きで は迅 速 か つ 十 分 な 対 応 を 予 測 で きな いた め 、 裁 判 所 が それ に 対 処 して き た とい う歴 史 を もつ。 つ ま り、 コモ ン ・ロー は 、権 利 お よ

4)

び 法 的 救 済 につ い て再 定 義 し、 それ らを拡 大 す る柔軟 性 を も っ て い るの で あ る。

水 質 汚 濁 に関 す る制 定 法 と コモ ン ・ロー との 関 係 性 につ い て 、 コ モ ン ・ロ ー 上 の 権 利 お よ び法 的 救 済 は、 か か る制 定 法 に よ っ て 影 響 を受 け な い。 清 浄 水 法 お よび飲 料 水 安 全 法(SafeDrinkingWaterAct)や 、ほ とん どの州 制 定 法 は、

うラ

コ モ ン ・ロ ー 上 の 権 利 を 保 護 す る こ と を 明 定 し て い る 。 つ ま り、 コ モ ン ・ロ ー .ヒの 権 利 は 、 制 定 法 の 規 制 と は 独 立 し て 存 在 す る の で あ る 。 判 例 に お い て も 、 水 質 汚 濁 に 関 す る 制 定 法 は コ モ ン ・ ロ ー 上 の 権 利 に つ い て 管 理 当 局 に 判 断 さ せ

c)

る権 限 を 付 与 して は い な い と判 示 さ れ て い る。

水 質 汚 濁 に 対 す る法 的 救 済 に 関 して一 定 の 役 割 を担 う コモ ン ・ロー にお いて 、 裁 判 所 が 救 済 の理 論 に つ い て法 概 念 を混 合 して 言 及 す る場 合 が あ る。 す な わ ち、

水 利 用 に 関 す る沿 岸 地 所 有 者 の 権 利 で あ る沿 岸 権 に包 摂 され る 自然 水 流 ま た は 合 理 的 利 用 の 概 念 と、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の 法 理 が ひ とつ の 文 脈 の な か で 語 られ る判 決 が 散 見 され るの で あ る。 つ ま り、 判 例 に お い て 沿 岸 権 の侵 害 とニ ュー サ ン ス の 法 理 が 交 錯 す る場 面 を指 摘 す る こ とが で き る の で あ る。 峻 別 され るべ き これ らの 法 概 念 の 混 合 は 、 水 質 汚 濁 に 対 す る救 済 の 法 的 安 定 性 を 損 ね、 法 理 論 の精 確 性 を減 損 させ る こ とに も な ろ う。

そ こで 、 本 稿 は 、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス お よ び 沿 岸 権 の 内 容 な らび に そ れ らの 関 係 性 につ い て論 及 した う えで 、 水 質 汚 濁 に 対 す る救 済 の 法 理 論 に 関 す る交 錯 の要 因 お よ び そ の 適 用 の あ り方 に つ い て 究 明 す る こ とを 目的 とす る。

(3)

ア メ リカ 水 法 に お け るニ ュ ーサ ンス と沿 岸 権侵 害 の 関 係性 137

2プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 法 理

(1)プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 定 義

ニ ュ ー サ ン ス の 本 質 は 、 「土 地 の 利 用 ま た は 享 受 を 不 当 に 侵 害 す る 状 態 ま た は

行 為 」 で あ る と さ れ て い る が 、 ト レ ス パ ス(trespass)と の 区 別 を 考 慮 し て 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 定 義 に つ い て 、 他 人 の 土 地 の 利 用 と享 受 に 対 す る 不 合 理 か つ 実 質 的 な 非 ト レ ス パ ス 的 侵 害(anunreasonableandsし1bstantiai

8)

Ilontrespassoryinterfierence)と 解 さ れ て い る。 ま た 、 第2次 不 法 行 為 法 リ ス テ イ トメ ン ト(1979年)821条Dに お い て も 、 「土 地 の 私 的 利 用 と享 受 に 関 す る他 人 の 利 益 の 非 ト レス パ ス 的 侵 害(nontrespassoryinvasion)」 と規 定 さ れ て い る 。

ニ ュ ー サ ン ス は 、 ア メ リ カ 合 衆 国 の 判 例 に お い て 長 年 、 水 質'汚 濁 の 問 題 に 対 処 す る た め に も 用 い ら れ て き た 。 ア メ リ カ の 水 質 汚 濁 に 関 す る プ ラ イ ベ ー ト ・

ニ ュ ー サ ン ス の 事 案 で 鍛 もiiい も の は 、 おが くず が 河 床 に 溜 ま っ た メ ー ン州 の

  

事 件 を 扱 っ た1831年 のSimpsonv.Seaveyで あ る 。 水 質 汚 濁 に 関 す る す べ て の 判 決 の な か で 、40%を 超 え る ケ ー ス が プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 法 理 を

適 用 し て い る 。

プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス と され る行 為 は 、 トレ ス パ ス が 成 立 せ ず 、 「生 活

II)

の 通 常 の 使 用(theordinaryusesoflife)」 の た め に 土 地 に 対 す る 適 合 性 を 減 損 さ せ る 行 為 で あ る か 、 あ る い は 身 体 的 快 適 性(physicalcomfort)も くは 健 康 に 対 す る 現 実 に 生 じ た 破 壊 的 状 況 、 ま た は 財 産 に 対 す る 有 形 的 、 可 視

I2)

的 な 侵 害(tangibie,visibleinjury)」 を 生 じ さ せ る 行 為 で あ る 。 そ して 、 第2 次 不 法 行 為 法 リス テ イ トメ ン ト821条Fが 定 め る よ うに 、 「重 大 な 侵 害(significant mjury)」 に 関 す る 何 ら か の 定 型 が 要 求 さ れ る 。 そ れ ゆ え 、 侵 害 を 伴 わ な い 水 質 に 関 す る減 損 は 、 訴 訟 を基 礎 づ け るに 足 りな い と判 断 され て き た の で あ る。ial

水 質 汚 濁 に適 用 され る プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の最 も包 括 的 な 定 義 は、

ia)

Trevettv.PrisonAss'nに よ っ て 、 つ ぎ の よ う に 判 示 さ れ た 。

生 活 の 通 常 の 目 的 の た め に 水 の 〕 価 値 を 実 質 的 に 減 損 させ る よ う な 不 潔 (impurities)、 ま た 家 事 の 目 的 の た め に あ る 程 度 ま で 不 適 合 に な る よ う な 不 潔 で あ り、 水 か ら 発 生 す る 不 健 康 も し く は 不 快 な 蒸 気 や 悪 臭 に よ っ て 付

(4)

138

近 の 財 産 に対 す る快 適 ま た は有 益 な 享 受 を減 損 させ る よ う な もの 、 そ れ ら は水 に関 して 現 実 的 な 知 覚 し う る結 果 を発 生 させ て は い な い が 、 嫌 悪 感 を 受 け る こ とが 予 測 され る特 徴 を 有 し、 そ の な か に あ る動 物 の 死 骸 の 沈 積 物 、 河川 沿 い の トイ レ の建 設 、 ま た は 生 活 の通 常 の 目的 の た め に水 を利 用 す る 者 に お い て嫌 悪 感 を生 じ させ る こ とが 予 測 され る そ の他 の 何 らか の 使 用 で

 らラ

あ る 。」

第2次 不 法 行 為 法 リ ス テ イ トメ ン トの 起 草 者 で も あ っ たWilliamProsserは プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス に つ い て 、 つ ぎ の よ う に 定 義 し て い る 。

「〔プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス は 、〕 土 地 の 利 用 と享 受 に 関 す る 利 益 に 対 す る 不 合 理 な 侵 害 で あ る 。(中 略)そ れ は 、 排 他 的 所 有(exclusive possession)に 関 す る利 益 に 対 す る 侵 害 と い う よ り、 利 用 ま た は 享 受(use orenjoyment)に 対 す る侵 害 で あ る点 に お い て 、 ト レ ス パ ス と は 相 違 す る

is)

の で あ る 。」

プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス は 、 地 表 水 と地 下 水 の 水 質 汚 濁 を 区 別 す る こ と

n>

な く、適 用 され る。 「土 地 の 利用 と享 受 に対 す る不 合 理 な侵 害 」 とい うプ ライ ベ ー

ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 標 準 的 定 義 は 、 浸 透 地 下 水(percolatinggroundwater)、

19)

地 下 水 流(undergroundstreams)お よ び 拡 散 し た 地 表 水(diffusedsurface

2a)

water)の 水 質 汚 濁 に関 す る多 くの事 案 に お いて 適 用 され て きた 。水 質 汚 濁 に よ っ て生 じ る プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の 典 型 例 は、 家 事用 、 家 畜用 お よ び 上 水 道 の 水 の 汚 濁 に 関 す るケ ー ス で あ り、 住 居 また は職 場 に悪 臭 を もた ら した り、

土 壌 の 肥 沃 性 を 減 損 させ た りす る事 案 で あ る。

(2)侵 害 行 為 の 合 理 性 判 断

プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス は 、 被 侵 害 利 益 に着 目 し、 汚 濁 や 損 害 の 発 生 ま た は法 益 侵 害 に対 す る予 見 可 能 性 で は な く、 被 告 の 行 為 に よ る権 利 侵 害 の 結 果'LI) を重 視 す る。 また 、過 失(negligence)の 有無 に か か わ りな く成 立 し う るので 、 侵 害 行 為 の 違 法 性 を 問 題 に す るの で は な く、 そ の 行 為 の結 果 の 合 理 性 また は そ の 場 所 の 適1生の み を 問 題 とす るの で あ る。

ニ ュ ー サ ン ス が成 立 す るた め に は侵 害 行 為 が不 合 理 で な けれ ば な ら な い が 、 こ の 不 合 理 性 は被 害 者 が 損 害 の 填 補 な しに受 忍 す る こ とを 要 求 さ れ るべ き か 否

zz)

か に よ っ て 判 断 さ れ る 。 こ の 意 味 に お い て 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス は 、

(5)

アメ リカ水 法 に お け るニ ューサ ンス と沿 岸 権 侵 害 の関 係 性

139

厳 格 責 任 を負 わ せ る もの で あ り、 過 失 とは 関連 しな い の で あ る。

侵 害 行 為 の合 理 性 は 、 そ の行 為 の 社 会 的 価 値 お よ び個 別 的 有 用 性 に関 す る要 素 と、 侵 害 行 為 に よ っ て生 じた 被 害 に 関 す る要 素 とを衡 量 す る こ とに よ っ て 決 定 さ れ る。 第2次 不 法 行為 法 リス テ イ トメ ン ト826条(a)は 、被 害 の 重 大 性 が 加 害 者 の 行 為 の有 用 性 に優 越 す る場 合 に は 、 土 地 の 利 用 と享 受 に関 す る他 人 の 利 益 の意 図 的 侵 害 は 不 合 理 で あ る と定 め て い る。 つ ま り、 侵 害 行 為 の合 理 性 を 判 断 す る枠 組 み を 、被 害 の 重 大 性 と行 為 の 有 用 性 を衡 量 す る基 準 に求 め た の で

as>

あ る。 こ の よ うな 衡 量 の 仕 方 は 、社 会 的 価 値 を 最 大 化 す るた め に 費 用 と便 益 を

24)

量 的 に衡 量 す る こ とを表 して い る。 当 該 基 準 に 準 拠 す れ ば 、 あ る文脈 において 合 理 的 とさ れ る行 為 が 、別 の 文 脈 に お い て は 不 合 理 で あ る と判 断 され う る こ と に な る。

当 リス テ イ トメ ン トは、 プ ラ イベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の成 否 を判 断 す る に際 して 衡 量 され る べ き、 被 害 の重 大 性 お よび 行 為 の 有用 性 に関 す る要 素 を 列 挙 し て い る。 す なわ ち、827条 は、 侵 害 行 為 に よ る被 害 の重 大 性 を 決 定 す る重 要 な要 素 と して 、(a)被 害 の程 度 、(b)被 害 の 性 質 、(c)侵 害 され た 利 用 と享 受 の 類 型 に 対 し法 が与 え る社 会 的価 値 、(d)侵 害 され た特 定 の 利 用 ま た は享 受 に 関 す る 当該 地 域 の性 質 に 対 す る適 性 、 お よ び(e)被 害 回 避 の た めの 被 害 者 の負 担 を 挙 げ、828条 は、 行 為 の 有 用 性 を決 定 す る重 要 な要 素 と して 、(a)当 該行為 の主 た る 目 的 に 対 して法 が与 え る社 会 的価 値 、(b)当 該 地 域 の 性 質 に対 す る そ の行 為 の 適 性 、 お よ び(c)侵 害 を 防 止 また は回 避 す る こ との実 行 不 可 能性 を明 示 し て い る。 これ ら の要 素 は 、 土 地 の 利 用 と享 受 に対 す る侵 害 が 不 合 理 で あ るか 否 か を 決 定 す るた め に考 慮 され 、 か つ 衡 量 さ れ な けれ ば な ら な い の で あ 幾

ニ ュー サ ンス の 除 去 また は損 害 賠 償 につ い て、 判 例 は行 為 の 社 会 的 有 用 性 の 考 慮 な く して そ れ ら を な し う る とす るが 、 社 会 的 有 用 性 を 重 要 視 す る学 説 も存 在 す る。 す な わ ち 、 その 行 為 が 社 会 的 に 有 用 で あ っ て 、 適 切 な 場 所 に お い て 無 過 失 か つ 可 能 な 限 りの 科 学 技 術 を尽 くして な され た場 合 に は 、 プライベー ト・

ニ ュ ーサ ンス が 除 去 され る必 要 は な く、 それ に代 わって その土地 の用益権 の価

2s>

額 に 対 す る填 補 が な され れ ば足 りる と主 張 す るの で あ る。

社 会 的 価 値 の た め に費 用 と便 益 を 衡 量 す る相 対 的 便 益 主 義 は、汚 染行為 を除 去 す る こ とに よっ て生 じ る社 会 的 な不 便 益 が 当 該 行 為 の 継 続 を 認 め る こ とに よっ

(6)

/40

て 生 起 す る個 人 的 な不 便 益 よ り も重大 で あ る場 合 に は、 差 止 命 令(injunction) は許 与 され るべ きで は な い とい う論 理 的 帰 結 を 導 く。 しか しな が ら、 水 質 汚 濁 に よ る プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の 判 例 は 、 半 数 以.ヒが 相 対 的 便 益 主 義 を拒 否 し、 差 止 命 令 を認 め て い る。 侵 害 行 為 が 社 会 的 に有 用 で あ る こ と を理 由 に し'L7)

て ニ ュ ーサ ンス の 除 去 を 拒 絶 した ケ ー ス は 、 ご くわ ず か しか 見 当 た らな い 。 社 会 的 に有 用 な 汚 染 行 為 で あ っ た と して も、 そ の 行 為 に よ って 受 け る個 人 的 な 被 害 を考 慮 して 、 差 止 命 令 に よ る救 済 を認 め て い るの で あ る。 そ れ ゆ え 、 ニ ュ ー サ ン ス 法 は 、 社 会 的 有 用 性 を 重 視 す る見 解 につ い て 、 そ れ を 水 質 汚 濁 のIJ,}に

2tl)

適 用 す る こ とに つ き消 極 的 な 立 場 を採 っ て い る と考 え られ るの で あ る。

(3)土 地 所 有 者 の 訴 訟 適 格 性

プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス訴 訟 は 、 侵 害 行 為 に よ り被 害 を受 けた 土 地 の 所 有 者 に よ っ て の み 提 起 す る こ とが で き る。 この 種 の訴 訟 は、 土 地 ま た は そ れ に

29)

付 随 的 な財 産 権 に対 す る侵 害 に 関 連 しな け れ ば な らず 、 財 産 上 の 法 益 侵 害 を伴

30)

わ な い人 の 身 体 的 侵 害 で は適 格 性 を取 得 す る こ とは で き な い 。 した が っ て 、 被 害 を受 け た 土 地 を所 有 して い な い 人 は 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ン ス に よ っ て

ai)

訴 え る こ とが で き な い の で あ る。 た と え ば 、 工 場 に 被 害 を 与 え る 水 質 汚 濁 に よ っ て そ こ の 労 働 者 に 健 康 被 害 が 生 じ た 場 合 に は 、工 場 所 有 者 が プ ラ イ ベ ー ト・ニ ュ ー サ ン ス の 訴 訟 を 起 こ す こ と は で き て も 、 工 場 労 働 者 は か か る 訴 え を 提 起 す る こ

と は で き な い の で あ る 。 しか し 、工 場 労 働 者 は 、 ネ グ リジ ェ ン ス(negligence)、

厳 格 責 任(strictliability)ま た は パ ブ リ ッ ク ・ニ ュ ー サ ン ス(publicnuisance)

aa)

に よ っ て訴 え る こ とは 可 能 で あ る。

汚 濁 さ れ た 河 川 の 沿 岸 地 の 所 有 者 や 汚 染 され た地 下 水 が 存 す る土 地 の 所 有 者 が 、 訴 訟 提 起 の適 格 性 を有 す る こ とは 疑 い な い が 、 適 格 者 は こ れ ら に限 定 され て い るわ けで は な い 。 被 害 を受 け た 土 地 の 所 有 者 な ら誰 で も訴 え る こ とが で き るの で あ る。

沿 岸 地 ま た は 地 下 水 が 存 す る土 地 以 外 の 土 地 の 所 有 者 に お い て 、 水 質 汚 濁 の 被 害 を受 け る可 能 性 が あ る者 は 、 水 質 汚 濁 か ら生 じ る悪 臭 に よ っ て被 害 を受 け

33)

る土 地 所 有 者 で あ る。 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の 法 理 は 土 地 所 有者 間 の紛 争 を扱 う こ とを想 定 して い るか ら、 土 地 所 有 者 以 外 の 者 、 た とえ ば 公 衆 の一 員 や 政 府 当 局 は、 この 法 理 の も とで は権 利 を有 しな い し、訴 え る こ ともで き な い

(7)

アメ リカ水 法 に お け るニ ュー サ ンス と沿岸 権 侵 害 の関 係 性

141

34)

の で あ る 。

3沿 岸権 主 義

(1)沿 岸 権 主 義 の 定 義 とそ の 内 容

沿 岸 権(riparianright)と は 、水 流 に接 す る土 地 の 所 有 者 が その水 流 の水 を 利 用 で き る相 互 に 同 等 な権 利(co‑equalright)を い う。 沿 岸 権 は 、水流 の水 を沿 岸 地 所 有 者 に公 正 に配 分 す る た め の 法 概 念 で あ るが 、 そ れ は沿 岸 地 の 所 有 権 に付 随 す る も の で あ る。 沿 岸 地 所 有 者 に は、 水 そ れ 自体 を所 有 す る の で は な く、 土 地 に 接 す る水 流 の 水 を利 用 す る権 利 が 与 え られ て い る の で あ る。 こ こ に い う相 互 に 同 等 な権 利 とは、 沿 岸 地 所 有 者 は 他 の 沿 岸 地 所 有 者 と共 通 の流 水 を 利 用 す る に つ き、 他 の 沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 を害 しな い範 囲 で 水 を 利 用 しな け れ ば な らな い こ と を意 味 す る。

水 利 権 につ い て 水 流 が 接 す る土 地 に そ の 成 立 基 盤 を求 め る沿 岸 権 主 義 は、 ア メ リカ合 衆 国 の 東 部 の30州 に よ っ て 採用 され て い るが 、 その 中身 は純 粋 な沿岸

86)

権 主 義 で は な く、 専 用 権 主 義(priorappropriationdoctrine)の 考 え 方 を 取

り入 れ た 内 容 と な っ て い る も の も 少 な く な い 。

沿 岸権 主 義 を は じめ て定 型化 した判 決 は、1827年 のTylerv .Wilkinsonで37) る。 本 判 決 は 、 河 川 の 沿 岸 地 所 有 者 は互 い に その 河 川 の水 を利 用 す る 同等 の権 利 を 有 す る と解 し、 か か る権 利 を 論 じ る に あ た っ て 、 つ ぎの よ うに2つ の 原 則 につ い て 言 及 す る。

当 事 者 が 河 川 の水 路 に あ っ て 上 流 の 沿 岸 地 所 有者 で あ るか

、 また は下 流 の 沿 岸 地 所 有 者 で あ る か は 、 全 く重 要 な こ とで は な い。 水 利 権 は、河 川 に関 す る全 て の 沿 岸地 所 有者 に とっ て共 通 の(common)権 利 で あ る。 何 人 も、

自然 の流 れ に した が って 下 流 の 沿 岸 地 所 有 者 に流 れ るで あ ろ う水 量 を 減 少 させ る権 利 、 あ るい は.ヒ流 の 沿 岸 地 所 有 者 に 逆 流 させ る権 利 を 有 して は い な い 。 これ は 、 水 利 権 が 全 て の 沿 岸 地 所 有 者 につ き、 完 全 に平 等 な 権 利 で あ る こ との 必 然 的 結 果 で あ る。 水 が 貫 流 して い る土 地 の 利 益(benefit)の た め に、 神 の 恩 恵 に よ っ て 存 す る 自然 河 川 は 、法の作用 に よって土 地 それ 自体 に 付 随 す る もの(incident)で あ る。 か か る共 通 の権 利 に関 して 言 及

(8)

142

す る とき、 当 該 原 則 に した が い水 が 流 れ る ご と く水 を利 用 す る とい う こ と は 、 沿 岸 地 所 有 者 に よ る水 の減 量 また は妨 害 が 全 く存 在 し得 な い こ とを意 味 す る も の で は な い。 とい うの は 、 一 切 の 水 の減 量 ま た は 妨 害 を許 さ な い こ とは、 水 の 有 効 利用 を完 全 に否 定 して しま う こ と に な るで あ ろ うか ら で あ る。 水 の有 効 利 用 は 、 そ れ が 共 通 の も ので あ り合 理 的利 用(reasonable

use)で あ る限 り存 在 し う る し、 また 許 容 さ れ ね ば な らな い の で あ る。」

こ こで は 、 全 て の 沿 岸 地 所 有 者 が 河 川 の 流 水 に つ いて 同等 の 利 用 権 を有 して い る こ と を述 べ 、 そ の 同 等 な水 利 権 の必 然 的結 果 と して 、 自然 の 流 れ に した が っ て 流 れ る水 を 減 量 さ せ た り、 逆 流 さ せ た り して は な ら な い と い う 自 然 水 流

39)

(naturalflow)の 原 則 を開 陳 した。 と ころ が 、 当該 原 則 を厳 格 に解 し、 一切 の 水 の 減 量 ま た は 妨 害 を許 さな い とす る と、 水 の 有 効 利 用 を 完 全 に 否 定 して しま う こ とに な る。 そ こ で 、 沿 岸 地 所 有 者 の水 利用 が 合 理 的 で あ る場 合 に は 、 それ に よ って 生 じ る水 量 や 水 流 の 変 化 を認 め た の で あ る。 つ ま り、 沿 岸 地 所 有 者 に よ る水 の合 理 的 利 用 を 認 容 す る、 い わ ゆ る合 理 的利 用 の 原 則 に 論 及 した とい え よ う。 当原 則 につ い て は、 沿 岸 地 所 有 者 は 他 の沿 岸 地 所 有 者 の 合 理 的 な 水 利 用

40)

を妨 害 で き な い こ と も含 意 して い る。

(2)沿 岸 権 主 義 の 水 質 的 側 面

水 質 汚 濁 に関 す るす べ て の 判 決 の概 ね15%は 、 沿 岸 権 主 義 を 用 い て 法 的 救 済

4q

を 図 っ て い る。 沿 岸 権 主 義 は、 水 利用 の 場 合 と同 様 に 、廃 水 の排 出 にっ い て も 適 用 され る。 沿 岸 権 主 義 に包 摂 され る 自然 水 流 の 原 則 お よ び合 理 的 利 用 の 原 則 は 、 これ らの 概 念 が 矛盾 を抱 え て い る に もか か わ らず 、 水 質 汚 濁 の 事 案 に っ い て も適 用 さ れ て き た の で あ る。 な ぜ な らば 、 両 原 則 は、 当初 よ り認 識 され た水 量 の 観 点 に 加 え て 、 水 質 の側 面 を も常 に 有 して きた か らで あ る。

自然 水 流 の 原 則 は 、 水 量 と同 じ く水 質 面 に お い て も変 化 が な い よ う に、 沿 岸 地 所 有者 は水 を利 用 しな けれ ば な ら な い こ と を要 求 す る。CityofRichmond

4'L)

v.Testは 、 自然 水 流 の原 則 につ いて 、 つ ぎの よ うに 水 質 面 も意識 して説 明 す る。

沿 岸 地 所 有 者 の権 利 を制 限 す る譲 与 証 書(grant)、 立 入 権(license)ま た は取 得 時 効(prescription)が な い 場 合 に は、 沿 岸 地 所 有 者 は 、水 量 お

よ び水 質 の 変 化 な しに、 水 が 自然 に流 れ る よ うに 、 そ の 土 地 に沿 っ て も し くは そ れ を貫 い て 流 れ る 自然 な水 流 の 水 を有 す る た め の 権 利 を もつ とい う

(9)

アメ リカ水 法 に お け るニ ュ ーサ ンス と沿 岸 権 侵害 の関 係性143

99)

原 則 が 確 立 して い る。

沿 岸 地 所 有者 とい え ど も、 水 質 を 減 損 させ る よ うな仕 方 で 水 流 の 中 に廃 水 を 排 出 し うる権 利 を有 しな い の で あ る。廃 水 の排 出 に よ っ て 生 じた 水 質 の 低 下 を 不 法 な 分 水 に相 当 す る と して 、 水 質 汚 濁 を水 量 侵 害 に重 ね て 評 価 す る判 例 も見

44)

受 け られ る。

合 理 的利 用 の 原 則 は・ た とえ 何 らか の水 質 の 減 損 が 生 じた と して も、 沿 岸 地 所 有 者 に水 を合 理 的 に 利 用 させ る こ とを認 め る。

4v)

Fergusonv.FirmenichMfg.Co.は 、 「上 流 地 所 有 者 は 、 ひ とつ の ル ー ル と して 、 た と え 汚 染 物 質 を 除 去 す る 手 段 と し て も 、 合 理 的 方 法 に よ っ て 合 理 的

4G)

目 的 の た め に河 川 を利用 す る こ とが で き る。」 と判 示 して 、 汚 染物 質 の 除去 手 段 、 つ ま り廃 水 の排 出 につ い て も水 利 用 の 一 形 態 と捉 え、合理 的利用 の範 囲内で あ る な らば そ れ を認 容 す る と した 。 要 す る に、 合 理 的 な 廃 水 排 出 を認 め た と捕 捉 で き る の で あ る。

判 例 の 多 くは、 経 済 的 お よ び 工 業 的発 展 に 適 合 す る とい う理 由 で 、 自然水流 の原 則 よ り も合 理 的 利 用 の 原 則 を積 極 的 に 論 じて い る。Merrifie且dv.Cityof

47)

Worcesterは 、 合 理 的 利 用 の概 念 につ い て 、 つ ぎ の よ う に判 示 す る。

沿 岸権 は〕 絶 対 的権 利 で は な く、 権 限 を与 え られ 、 そ して 、 すべ て の 自 然権 の よ うに 、 他 人 の権 利 の 存 在 に よ っ て制 限 され る 自然 の 権 利 で あ る。

そ れ は 、 河 川 が そ の 中 を通 る二1二地 の所 有 権 に 単 に付 随 す る もの で あ る。(中 略)

沿 岸地 所 有 者 は 、 水 流 の 力 を利 用 す るた め、 そ して 、 制 限 され 一 時 的 な 水 の 専 用 を な す た め に河 川 の 継 続 的 水 流 を 享 受 す る権 利 を有 す る。 一 般 的 に、 この よ う な権 利 は 、 同一 河 川 に接 す る土 地 を所 有 す る他 の す べ て の 人 も共 通 して保 有 す る。 しか し、 この 享 受 は 、 必 然 的 に 上 流 が 先 で 下 流 が 後 とい う順 序 と調 和 しな け れ ば な らな い。 これ は 、す べてのかか る権 利 は、

他 人 の 所 有 権 の 行 使 に よ って この 享 受 が 修 正 され 、 か つ縮 小 され る こ とを 免 れ な い こ とを 導 く。(中 略)

他 人 の 自然権 の 行 使 を通 じて沿 岸 権 が縮 小 され う る と い う唯 一 の制 限 は 、 合 理 的利 用 の 基 準 お よ び方 法 に お い て な され る。(中 略)

したが っ て 、 純 粋 な 〔沿 岸 権 主 義 を採 用 す る〕 州 に お いて は 沿 岸 地 所 有

(10)

/44

者 に もた ら され る水 を 有 し、 そ して 沿 岸 権 所 有 者 が必 要 とす る多 様 な 目的 の た め の 利用 に適 合 す る(中 略)自 然 権 は 、 上 流 に い る人 々 の 間 に お い て 同 等 な権 利 を も た ら さな けれ ば な ら な い 。 水 車 用 、 灌 概 用 、 家 畜 用 、 沿 岸 地 所 有 者 が 水 を合 法 的 に利 用 し う る多 種 多 様 な 目 的 の た め に 河 川 を 利用 す る こ とは 、 多 か れ 少 なか れ水 を汚 濁 す る こ とに な る傾 向 に あ ろ う。 河 川 に 接 す る土 地 の耕 作 お よ び施 肥 、 な らび に 河 川 の水 源 で の農 家 お よ び 他 の 生 業 に よ る活動 は 、 河 川 へ の 不 純 物 の流 出 を不 可 避 的 に生 じさせ るで あ ろ う。

土 地 が 分 割 さ れ た り、 そ こで の活 動 お よ び利 用 が 雑 多 な もの に な る に した が っ て 、 これ らの 要 因 は よ り影 響 を 及 ぼ し、 そ して そ の 影 響 を よ り覚 知 可 能 な もの に す るで あ ろ う。 した が っ て 、 水 は 、 か つ て は適 合 して いた 多 く の 利 用 に対 して 不 適 合 とな り う るの で あ る。 しか し、 その 状 況 が 、 共 通 の 権 利 に した が い河 川 の 合 理 的利 用 か らの み 生 起 す る限 りは 、下 流 沿 岸 地 所

4K)

有 者 は法 的 に救 済 され な い の で あ る。」

合 理 的 利 用 の 概 念 は 、 沿 岸 地 所 有 者 相 互 間 にお い て 水 利 用 が 同 等 に な され る こ とを強 調 す る。 水 質 汚 濁 に 関 す る ケ ー ス の ほ とん ど は、 相 対 的 合 理 性 の 基 準

49)

が 適 用 さ れ て い る。 廃 水 の排 出 が 不 合 理 な も ので あ る な らば 、 他 の 沿 岸 地 所 有 者 に対 す る単 な る不 便 や 困惑 を 超 え て実 質 的 な権 利 侵 害 が 生 じて い る と解 し、

50)

河 川 へ の廃 水 排 出 は 否 定 さ れ て き た。

そ れ で は、 どの よ うな要 素 が あれ ば 、 廃 水 排 出 が 不 合 理 な もの と解 され 、 実 質 的 な 権 利 侵 害 が あ っ た と判 断 さ れ るの で あ ろ うか 。 合 理 性 の判 断 は、 廃 水 の 排 出 、 被 害 を 受 け た水 利 用 お よ び水 流 の 物 理 的 要 因 に 関 連 す る多 様 な要 素 を衡

51)

量 しな けれ ば な らな い 。 具 体 的 に は 、 廃 水 の 量 と性 質 、 沿 岸 地 所 有 者 の保 護 さ れ るべ き水 利 用 の場 所 と性 質 、 第 三 者 に よっ て もた ら され た水 質 汚 濁 の 範 囲 、 廃 水 が 流 入 した 水 のFLtと速 さ、 社 会 的必 要 性 、 経 済 的 ・社 会 的 条 件 等 が 、 考 慮

52)59)

され るべ き要 素 と して挙 げ られ る。Reesev.CityofJohnstownは 、 これ ら の 合 理 性 の 判 断 要 素 を 引用 しつ つ 、 他 の 要 素 も付 加 して 例 示 して い る。

こ の間 題 の解 決 は 、河川 に流出 した不純物 の程度 と性質だ けに依 るのでは な く、 原 告 の土 地 の場 所 、水 利 用 の 目的 、 河 川 の 中 の 不純 物 の 水 へ の影 響 、 水 質 汚 濁 が 他 の 水 源 に 由来 し う る範 囲 お よび 原 告 に 負 担 させ う る範 囲 に 依 拠 す る の で あ る。 水 流 の 量 と速 さ、 当該 地 域 で の 利 用 、 権 利 侵 害 の1=S̲1̲度

(11)

アメ リカ水 法 に お け るニ ュー サ ンス と沿 岸 権 侵轡 の関 係 性 ias

事 業 執 行 上 の 便 益 性 お よ び下 水 道 の た め の不 可 欠 な 都 市 と村 の 公 的必 要 性 、 これ らの よ うな 四 囲 の 事 情 が 考 慮 に 入 れ られ る。 そ の 結 果 、 あ る衷 情 の も とで は 合 理 的 と判 断 さ れ る水 利 用 が 、 異 な っ た事 情 にお い て は不 合 理 で あ

54)

る と判 断 され る こ とも あ りう るの で あ る。

合 理 性 判 断 に関 して 、 判 例 は 、 主 要 な要 素 で あ る廃 水 排 出 の総 量 と有]+j性が 不 合 理 と判 断 され な い 限 り、 沿 岸 地 所 有 者 に よ る廃 水 排 出 を許 容 す る傾 向 に あ

る。 こ の考 え 方 は、 ほ とん どの 沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 は 必 然 的 に 何 らか の水 質 の 減 損 を伴 う とい う、 合 理 的 利 用 の 概 念 に 内 在 す る命 題 か ら導 出 され る。 被 告5G)

の 廃 水 排 出 の 必 要 性 は 、 他 の沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 の必 要 性 と利 益 衡 量 さ れ ね ば な ら な い 。 この こ とは 、 沿 岸 地 所 有 者 に よ る廃 水 排 出 の 禁 止 の 主 張 が 許 さ れ な い 反 面 、 排 出 者 は他 の 沿 岸 地 所 有 者 に よ る水 利 用 が 適 さな くな るほ ど流 水 を 汚 濁 で き な い とい う こ と を も意 味 す る。 ま た 、 判 例 は 、 沿 岸 権 に基 づ く廃 水 の

571

排 出 は ニ ュ ー サ ンス が 成 立 す る ほ ど水 質 を汚 濁 で き な い と解 して 、 沿 岸 権 の行 使 とニ ュ ー サ ンス の 成 立 との 整 合 を 図 っ て い る。

(3)自 然 水 流 の 原 則 と合 理 的 利 用 の 原 則 と の 関係 性

水 質 汚 濁 に 関 す る判 例 は 、 自然 水 流 の 原 則 を 受 容 しつ つ も、 一 見 これ と両 立 し難 い 合 理 的利 用 の 原 則 を 積 極 的 に採 用 して い る。 そ こ で 、 これ らの 原 則 が 、 実 際 に どの よ うな 場 面 で 適 用 され 、 い か な る機 能 を担 って き た か が重 要 とな る。

自然 水 流 の原 則 を適 用 し、 水 質 を 減損 させ る権 利 は存 しな い と明 確 に 判 示 し

た 判 例 の 数 は少 な い が 、 水 質 汚 濁 を相 当 の 水 質 の 減 損 で あ る と捉 え て 、 そ の 法 的 救 済 を 認 容 す る場 合 に は 、 自然 水 流 の 原 則 を採 用 し、 水 質 を 減 損 させ な い権 限 を下 流 沿 岸 地 所 有 者 に与 え て い る と考 え られ る。 この 場 合 、 自然 水 流 の 原 則 は、 水 質 汚 濁 に対 す る救 済 を認 め る た め の 根 拠 理 論 とな る。

他 方 、水 質 汚 濁 を 重 大 で は な い水 質 の 減 損 で あ る と解 し、 そ の 法 的 救 済 を否 認 す る場 合 に、 合 理 的 利 用 の原 則 が 適 用 され る こ とが あ る。 つ ま り、 水 質 汚 濁 に つ い て合 理 的 な水 利用 か ら生 じた もの で あ る と解 し、 法 的 救 済 を認 め るに 値 しな い と考 え る の で あ る。

多 くの判 例 は 、 合 理 的 利 用 の概 念 が 水 質 汚 濁 の ケ ー ス に も適 用 され 、 水 質面 に お い て も水 を 合 理 的 に 利 用 で き る権 利 が 存 在 す る こ とを 明 白 に判 示 す る。 す な わ ち 、 これ らの 判 決 は 、 合 理 的 な 水 利 用 か ら生 じ る水 質 汚 濁 は受 忍 され ね ば

(12)

/46

な ら な い と考 え る の で あ る 。

59)

先 に 引 用 し たFerguson判 決 と と も に 、Dwinelv.Veazieは 、 水 流 と水 質 の 両 面 か ら合 理 性 お よ び 適 合 性 に つ い て 、 つ ぎ の よ う に 判 示 す る 。

被 告 が 水 車 ま で 丸 太 を 流 し、 そ こか ら筏 と材 木 を市 場 まで 流 し、 そ して 水 車 か ら廃 材 の 屑 を 下 流 に 流 す た め に 水 を 利 用 す る こ と が 、 当 該 地 域 の 使 用

と必 要 に と っ て 合 理 的 か つ 適 合 的(reasonableandconformableto

theusagesandwants)で あ る 限 りに お い て 、 被 告 は 水 車 の 上 流 で 水 を

fA)

利 用 す る権 利 を有 す るの で あ る。

この 判 示 部 分 に お い て も、 河 川 の 水 利 用 に 関 す る合 理 性 お よび 適 合 性 の 判 断 に つ き、 水 流 と水 質 が 同 一 平 面 で 扱 わ れ て い る こ とは 明 らか で あ る。

す で に 、 合 理 的利 用 の 原 則 が 、 水 質 汚 濁 の ケ ー ス に お い て 法 的 救 済 を 否 定 す る一 定 の 役 割 を果 た して い る こ とに言 及 した が 、 当 該 概 念 を 受 用 し、 そ の うえ

cq

で 合 理 的 利 用 に反 す る と して 法 的 救 済 を認 め た判 決 も多 く出 され て い る。 つ ま り、 不 合 理 な水 利 用 を根 拠 に 法 的 救 済 を 認 容 す るの で あ る。 これ らの 判 例 は 、 救 済 を 肯 認 す る理 論 で あ る 自然 水 流 の 原 則 を あ え て 持 ち 出 す こ とな く、 水 利 用 が 不 合 理 で あ るか 否 か とい う合 理 性 の 基 準 を用 い て 法 的救 済 を認 容 して い る点 に お い て 、 判 断 基 準 を水 利用 の 合 理 性 の 有 無 に収 敏 させ て い る と評 価 す る こ と

fit)

が で き よ う。

沿 岸 権 主 義 の 骨 組 み は 、 す べ て の 沿 岸 地 所 有者 が 流 水 の 同等 な 利 用 権 を 有 す る こ とで あ る。 この 同等 な流 水 利 用 権 の 必 然 的 結 果 と して 、 自 然 水 流 の原 則 が 導 き出 され た の で あ る。 した が っ て 、 沿 岸 権 主 義 の核 心 部 分 で あ る同 等 な 利 用 権 の 理 念 を 忠 実 に反 映 させ た 法装 置 が 、 自然 水 流 の原 則 で あ る と考 え られ る。

と こ ろが 、 当 該 原 則 を 厳 格 に解 し、 一 切 の流 水 の 減 量 また は妨 害 を許 さな い と す る と,水 の 有 効 利 用 を完 全 に 否 定 して し ま う こ とに な る。 そ こで 、 沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 が 合 理 的 で あ る場 合 に は、 そ れ に よ っ て 生 じ る水 量 や 水 質 の 変 化 を認 め た の で あ る。 ゆ え に、 沿 岸 地 所 有 者 に よ る水 の 合 理 的 利 用 を認 容 した合 理 的 利 用 の 原 則 は 、 同 等 な利 用 権 の 理 念 か ら距 離 を置 き 、 水 の 有 効 利 用 の 実 現 の た め に 考 案 さ れ た 法 理 で あ る と指 摘 で き る の で あ る。 そ う考 え る と、 自然 水 流 の原 則 は沿 岸 権 主 義 の理 念 型 と して の 準 則 で あ り、 合 理 的 利 用 の原 則 は 当主 義 の現 実 対 応 型 と して の ル ー ル で あ る と い え よ う。

(13)

ア メ リカ水 法 に お け るニ ュ ーサ ンス と沿 岸権 侵害 の 関 係性

i47

か か る性 質 を もつ 両 原 則 に つ き、 現 在 で は 、 ほ とん どの 州 に お い て 合 理 的 利 用 の概 念 が 強 調 され 、 適 用 され て い る こ とを も って 、 自然 水 流 の原 則 は合 理 的

G3)

利 用 の 原 則 に全 面 的 に変 更 され た と理 解 す る こ と も可 能 で あ る。 しか し、 自 然 水 流 の原 則 は 、 沿 岸 権 主 義 の 理 念 型 で あ る が ゆ え に、 循 環 す る水 資 源 の 本 質 に

繋 が る思 考 形 式 で あ り、 合 理 的 利 用 の原 則 の基 底 に潜 在 して い る と考 え る こ と

GS)

も で き る の で あ る 。

4ニ ュー サ ンス と沿 岸 権 侵 害 の 交 錯

前 述 した よ う に 、 ニ ュ ーサ ン ス と沿 岸 権 侵 害 は異 な る法 概 念 で あ る こ と は確 か で あ る。 しか しな が ら、 両 者 に は法 理 論 的 にTsな る部 分 が 存 在 す る こ と も購 実 で あ る。

沿 岸 権 は、 水 の 排 他 的 な 所 有 を 観 念 す る もの で は な く、 沿 岸 地 の 所 有 者 が そ

fi(i)

こに 流 れ て い る水 を利 用 で き る権 利 で あ る か ら、用益権 的性格 を有 して い る。

した が って 、 沿 岸 権 を侵 害 す る行 為 は 、 土 地 の 利 用 と享 受 を不 合 理 に 侵 害 す る ニ ュ ー サ ン ス で も あ る可 能 性 が あ る。 沿 岸 権 の侵 害 は、一種 の用益権 の侵害 で あ る か ら、 土 地 の 利 用 利 益 の 侵 害 とい う点 に お い て ニ ュ ー サ ンス と性 質 上 、 重 複 す るの で あ る。

判 例 に お い て も、 沿 岸 権 主 義 に関 す る 自然 水 流 また は合 理 的 利 用 の概 念 と、

プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス の 法 理 を 混 合 して 言 及 す る もの が あ る。Cityof

Kewaneev.Otleyは 、 自 然 水 流 と プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 概 念 を 混 合

(iH)

して'説述 して い る。 す な わ ち、

河 川 が 流 れ る土 地 の す べ て の所 有 者 は、水 の 利 用 と享 受 に対 す る権 限 お よ び 、 障 害 物 、 分 水 また は悪 影 響 な しに 、 自然 か つ いつ もの(natura且and accustomed)水 路 にお け る同 一 の 水 流 を有 す る権 限 を もつ。 この 権 利 は、

水 量 と同様 に水 質 につ いて も敷 術 され る。 エ ク イ テ ィ裁 判 所 は、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス の 事 案 に お い て差 止 命 令(injunction)に よ っ て 明 白 か つ確 固 と して 定 着 され た 裁 判 所 の 法 と、 障 害 物 また は分 水 に よ る水 流 に対 す る権 利 侵 害 を差 止 命 令 に よ っ て 防 ぐた め の裁 判 所 の権 限 の 一 般 的 な 行 使 とが 競 合 す る裁 判 管 轄 を有 す る。(中 略)〔 自然 の 状 態 に お け る水 の利 用 と

(14)

148

享 受 に 対 す る〕 その 権 利 の 侵 害 また は奪 取 は 、 そ の た め に差 止 命 令 が 発 せ られ るで あ ろ う く らい回 復 不 能 な権 利 侵 害 で あ る。(中 略)ニ ュー サ ン スが 健 康 を損 ね た り、 あ るい は居 住 の 快 適 性 を 減 損 させ る場 合 に は 、 コモ ン ・

ロー の 訴 訟 で は適 切 な 法 的 救 済 が な され ず 、 被 害 者 は 差 止 命 令 に よ っ て 保

69)

護 され る権 限 が 付 与 され る の で あ る。」

アの

ま た 、Petersonv.CityofSantaRosaも 、 水 質 に つ い て 沿 岸 権 主 義 の も と で の 水 量 の 扱 い と 同 次 元 で 対 処 す る こ と を 強 調 し 、 実 質 的 な 水 質 の 減 損 を ニ ュ ー サ ン ス と解 す る と判 示 す る 。 す な わ ち 、

沿 岸 地 所 有 者 と して の 権 利 は 、 そ の 土 地 上 の 水 流 に つ き通 常 の 量 の 水 を有 す る の み な らず 、 流 れ る 水 の 自 然 な 清 浄 性(naturalpurity)を も 有 す る の で あ る 。 そ し て 、 生 活 の 通 常 の 目 的 の た め に 水 の 価 値 を 実 質 的 に 減 損 さ せ 、 家 庭 用 の 目 的 の た め に 相 当 に 璽 大 な 不 適 合 と な る よ う な 被 告 に よ る水 流 の 汚 濁 は 、訴 訟 を 基 礎 づ け る に 足 る ニ ュ ー サ ン ス(actionablenuisance)

アけ

な の で あ る 。」

一 方、 沿 岸 権 主 義 に 関 す る 合 理 的 利 用 の 原 則 と プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス 72)

と の 混 合 に つ い て も 、 比 較 的 多 く散 見 さ れ る。 た と え ば 、AlabamaConsol.

Coal&lrOnCO.V.TUrnerは 、 つ ぎ の よ うに 論 述 す る。

自然 に流 れ な い くらい実 質 的 に水 量 が 減 少 す る何 らか の 分 水 も し くは妨 害 、 また は水 流 の 清 浄 性 を 本 質 的 に 減 損 させ 、 灌 概 、機 械 装 置 の 原 動 力 も し く は 家 庭 用 の た め の 消 費 の よ うに 流 水 が通 常 利 用 され る合 理 的 か つ 妥 当 な 目 的 の た め の 水 利 用 を妨 げ る程 度 に水 を 汚 濁 す る こ とは、 水 が 流 れ る土 地 の 所 有 者 の権 利 に 対 す る侵 害 で あ り、被 害 者 が 回 復 の権 限 を与 え られ るニ ュー

サ ンス を構 成 す るの で あ る。

合 理 的利 用 とニ ュー サ ン ス概 念 との 混 合 事 例 が 少 な くな い の は 、 土 地 の 利用 と享 受 を不 合 理 に侵 害 した場 合 に成 立 す るニ ュ ー サ ン ス と、 水 利 用 が 不 合 理 で あ るか 否 か とい う合 理 性 の基 準 に よ って 沿 岸 権 侵 害 の有 無 を判 断 す る沿 岸 権 主 義 とは 、 ニ ュ ー サ ンス の成 立 と権 利 侵 害 の判 断 の レ ベ ル に お い て 類 似 の思 考 様 式 が見 受 け られ るか らで あ ろ う。

沿 岸 権 主 義 に 関 す る 自然 水 流 また は合 理 的 利 用 の概 念 と、 ニ ュ ーサ ンス の 法 理 とを 混 合 して 取 り扱 う こ とは 、廃 水 排 出 の 可 否 に 関 す る判 断 に混 乱 を 与 え る

(15)

ア メ リカ 水法 に おけ るニ ュー サ ンス と沿 岸権 侵 害 の 関 係性 i49

こ と にな るが 、 第2次 不 法行 為 法 リス テ イ トメ ン ト(1979年)は これ らの 混 合 に影 響 を与 え て い る。 当 リス テ イ トメ ン ト849条 は 、 ニ ュ ー サ ンス を成 立 させ る 水 質 汚 濁 は沿 岸 権 の 正 当 な 行 使 で は な い と規 定 す る。 この よ うに定 め る 法条 の 射 程 は 、 水 質 汚 濁 が ニ ュー サ ンス を構 成 して い な か っ た場 合 に そ の 汚 染 行 為 が 沿 岸 権 を侵 害 す る こ とに な るか 否 か とい う問 題 に ま で及 ぶ もの で はな い。:,.、

同 リス テ イ トメ ン トで は、847条 にお いて 廃 水 排 出 を沿 岸 地 所 有 者 の正 当 な水 利 用 と解 す る こ と を否 定 して い る。 か か る リス テ イ トメ ン トの 立 場 は 、 ニ ュ ー サ ンス の 伝 統 的 な 事 案 で は な い ケ ー ス に お い て 、 沿 岸 権 主 義 の も とで 法 的 救 済 が

75)

な さ れ て い る事 実 を認 識 して い な い こ とを表 して い る。

沿 岸権 侵 害 とニ ュ ー サ ンス 成 立 の 璽 複 は 、一 定 の ケ ー ス の3̲,̲}実類 型 に お い て 生 じ る。 た とえ ば 、 家 庭 用 ま た は家 畜 用 の 水 供 給 に影 響 を 与 え る水 質 汚 濁 の 事

76)

案 で あ る。 この よ う な場 合 に は、 汚 染 行 為 に よっ て 沿 岸 地 所 有 者 の水 利 用 が 不 合 理 に 侵 害 さ れ るか ら、 沿 岸 権 の侵 害 と解 さ れ る。 そ れ と同 時 に 、 か か る水 質 汚 濁 が 住 居 に お け る快 適 性 ま た は 利 便 性 を害 す る場 合 に は 、 住 居 が 存 在 す る土 地 の利 用 と享 受 を不 合 理 に侵 害 す る と解 さ れ るた め、 プ ライ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ンス が成 立 す る と考 え られ る。 この よ う な事 実 類 型 に お い て は 、沿 岸 権 侵 害 と

ア 

ニ ュ ー サ ンス が 両 立 し うる とい う こ とが 、 両 概 念 の 混 合 の主 た る要 因 で あ ろ う。

これ に 対 して 、 家 庭 ・家 畜 用 の水 の 汚 濁 お よび 汚 染 行 為 か ら生 じ る悪 奥 に 関 連 しな い 工 業 用 水 に対 す る水 質 汚 濁 は 、 沿 岸 権 の 侵 害 で あ って 、 ニ ュー サ ンス は成 立 しな い と思 わ れ る。 この よ うに ニ ュ ー サ ンス は構 成 しな い が 、 沿 岸 地 所 有 者 か ら水 の 合 理 的 利 用 の機 会 を奪 う場 合 に は 、 沿 岸 権 の 侵 害 の み が 問 題 とな

78)

るの で あ る。

ニ ュー サ ン ス の 法 理 は 、家 庭 用 また は家 畜 用 の 水 の 汚 濁 、 住 居 や 職 場 の 周 辺 で の 悪 臭 の 発 生 お よび 土 壌 の 豊 饒 性 の 減 損 の よ うな 、 伝 統 的 に ニ ュ ー サ ン ス と 捉 え られ て き た聖 実 類 型 に適 用 さ れ るべ きで あ る。 これ に 対 し沿 岸 権 主 義 は 、 ニ ュ ー サ ンス の伝 統 的 ケ ー ス 以 外 の す べ て の 事 案 に 対 して適 用 され る と考 え ら

れ る の で あ る。

一 定 の 事 実 類 型 に お け る水 質 汚 濁 は、 沿 岸 権 とニ ュ ーサ ンス の 双 方 の 法 理 の も とで取 り扱 わ れ る こ とは疑 い な い。 この こ とは 、 沿 岸 権 侵 害 お よ び ニ ュ ー サ ンス 成 立 の両 場 面 に お いて 廃 水 排 出 が制 限 さ れ る こ とを示 して い る。 す な わ ち 、

(16)

/SO

沿 岸 地 所 有 者 が 下 流 の水 利 用 を不 合 理 に侵 害 しな い場 合 お よ び 土 地 の 利 用 と享 受 を不 合 理 に侵 害 しな い 場 合 に の み 、 沿 岸 地 所 有 者 は 廃 水 を排 出 す る こ とが で き る とい え よ う。 要 す る に、 廃 水 排 出 に よ って ニ ュ ー サ ンス が 成 立 しな い 限 り、

xu)

沿 岸 地 所 有 者 は 合 理 的範 囲 内 に お い て 廃 水 を 排 出 す る こ とが で き るの で あ る。

5む す び にか えて

自然 水 流 の原 則 は 、流 水 の 同等 な 利 用 権 で あ る沿 岸 権 の 理 念 を 忠 実 に反 映 さ せ た 法 装 置 で あ る。 と こ ろが 、 当 該 原 則 を厳 格 に解 す る と、 水 の 有 効 利 用 を完 全 に 否 定 して しま う こ と に な りか ね な い。 そ こで 、 沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 が 合 理 的 で あ る場 合 に は、 そ れ に よっ て 生 じ る水 量 や 水 質 の 変 化 を認 め た の で あ る。

この よ うな合 理 的 利 用 の 原 則 は 、 同 等 な利 用 権 の 理 念 か ら距 離 を 置 き 、 水 の有 効 利 用 を実 現 す る た め に 考 案 さ れ た 法 理 で あ る。 した が っ て 、 沿 岸 権 主 義 の理 念 型 と して の 自然 水 流 の 準 則 と当 主 義 の現 実 対 応 型 と して の合 理 的 利 用 の 原 則

との 間 に は 、 一 定 の 隔 た りが あ るの は 当 然 の こ とで あ る。

か か る性 質 を もつ両 原 則 に つ き、 現 在 で は 、 ほ とん どの 州 に お い て合 理 的 利 用 の 概 念 が 強 調 さ れ 、 適 用 さ れ て き て は い るが 、 これ を もっ て 自然 水 流 の 原 則 が 全 面 的 に 変 更 さ れ た と理 解 す べ きか に つ い て は慎 重 な検 討 が 必 要 で あ ろ う。

自然 水 流 の 原 則 は 、 沿 岸 権 主 義 の 理 念 型 で あ るが ゆ え に 、 循 環 す る水 資 源 の 本 質 に繋 が る思 考 形 式 で あ り、 合 理 的利 用 の 原 則 の 基 底 に 潜 在 して い る と解 す る こ と もで き る の で あ る。 沿 岸 地 所 有 者 に よ る水 利 用 に 関 す る合 理 性 の 判 断 枠 組 み は 、 自然 水 流 の 保 全 を基 点 に捉 え られ るべ きで あ り、 水 廓 情 が逼 迫 す るな ど特 別 の 事 情 が 生 じた とき に は 、 水 流 保 全 が 優 先 し、 潜 在 して い た 当 原 則 が 顕 在 化 す る こ と も、合 理 性 の 判 断 と して 排 除 され る理 由 は な い で あ ろ う。 さ ら に、

自然 環 境 の 保 護 の 立 場 か ら、 水 循 環 を重 視 した生 態 系 保 全 の 取 り組 み に お い て 自然 水 流 の 原 則 が 担 う役 割 は 無 視 で きな い と も考 え られ るの で あ る。

沿 岸 権 は、 流 水 の 排 他 的 支 配 権 で は な く、 沿 岸 地 の所 有 者 が 流 水 を利 用 で き る権 利 で あ る か ら、 用 益 権 的 性 格 を 有 して い る。 した が っ て 、 沿 岸 権 を侵 害 す る行 為 は、 土 地 の 利 用 と享 受 を不 合 理 に 侵 害 す るニ ュ ー サ ン ス で もあ る可 能性 が あ る。 つ ま り、 沿 岸 権 の侵 害 は、 一 種 の用 益 権 の 侵 害 で あ る が ゆ え に、 土 地

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ア メ リカ 水 法 にお け るニ ュー サ ンス と沿 岸権 侵 害 の 関係 性

ノ51

の利 用 利 益 の 侵 害 とい う点 に お い て ニ ュー サ ン ス と性 質 上 、 重複 す るの で あ る。

沿 岸 権 侵 害 とニ ュ ー サ ン ス成 立 の 重R:1‑L'は、 一 定 の ケ ー ス の 事 実 類 型 に お い て 生 じ る。 た とえ ば、 家 庭 用 ま た は 家 畜 用 の水 供 給 に影 響 を 与 え る水 質 汚 濁 の事 案 で あ る。 この よ うな場 合 に は 、 汚 染 行 為 に よ って 沿 岸 地 所 有 者 の 水 利 用 が不 合 理 に 侵 害 され るか ら、 沿 岸 権 の 侵 害 と理 解 で き る。 そ れ と同 時 に 、 か か る水 質 汚 濁 が 住 居 に お け る快 適 性 ま た は 利 便 性 を 害 す る場 合 に は、 住 居 が 存 在 す る 土 地 の 利 用 と享 受 を不 合 理 に侵 害 す る と解 さ れ る た め 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュー サ ンス が 成 立 す る と考 え られ る。 この よ うな 事 実 類 型 に お いて は 、 沿 岸 権 侵 害 とニ ュ ーサ ンス が 両 立 し う る とい う こ とが 、 両 概 念 の混 合 の 主 た る要 因 で あ ろ う。

これ に対 して 、 家 庭 ・家 畜 用 の水 の 汚 濁 お よび 汚 染 行 為 か ら生 じ る悪 臭 に 関 連 しな い工 業 用 水 に対 す る水 質 汚 濁 は、 沿 岸 権 の 侵 害 で あ って 、 ニ ュー サ ンス は成 立 しな い と解 され る。 こ の よ うに ニ ュ ー サ ンス は構 成 し な い が 、 沿 岸 地 所 有 者 か ら水 の合 理 的 利 用 の機 会 を奪 う場 合 に は 、 沿 岸 権 の 侵 害 の み が 問 題 とな る の で あ る。

ニ ュー サ ンス の 法 理 は 、 家 庭 用 ま た は 家 畜 用 の 水 の 汚 濁 、 住 居 や 職 場 の 周 辺 で の悪 臭 の 発 生 お よ び土 壌 の 豊 饒 性 の 減 損 の よ うな 、 伝 統 的 に ニ ュ ー サ ン ス と 捉 え られ て き た 事 実 類 型 に適 用 さ れ るべ きで あ る。 これ に 対 し沿 岸 権 主 義 は、

ニ ュ ー サ ン ス の 伝統 的 ケ ー ス 以 外 の す べ て の 事 案 に対 して適 用 され る と解 され る の で あ る。

この よ う な考 え 方 の 特 徴 は 、 伝 統 的 な ニ ュ ー サ ンス の 事 案 で は な い ケ ー ス に お い て も沿 岸 権 主 義 の も とで 法 的 救 済 が な され る とこ ろ に あ る。 ニ ュ ー サ ン ス を生 活 妨 害 と捕 捉 し、 そ れ に よ る法 的 救 済 が 認 め られ な くて も、 沿 岸権(=水

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利 権)の 侵 害 と して 救 済 され る点 を看 過 して は な らな い。 こ こで は、 財 産 権 の 侵 害 とい う理 論 構 成 で 差 止 請 求 を認 め る こ とが 明 示 され て い るの で あ る。

1)1972年 以 前 の 水 質 管 理 の た め の 連 邦 法 と して は 、1948年 水 質 汚 濁 管 理 法(Water PollutionControlAct)が あ る。 同法 は 、幾 度か 修 正 され 、連 邦政 府 の水 質 管理 政 策 の 基 礎 を提 供 した 。

2)清 浄水 法 を中 心 とす るア メ リカ水 環境 管 理 法の 制 度 と実 態 を分析 した研 究 と して 、 北村

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/52

喜 宣 『環 境 管 理 の 制 度 と 実 態 ア メ リ カ 水 環 境 法 の 実 証 分 析 』(弘 文 堂 、1992年) が 有 益 で あ る 。

3)RobertE.Beck,WaterandWaterRights,1991ed.,vol.5,1998replacemene, at515‑516.

4)こ の よ う な コ モ ン ・ ロ ー の 柔 軟 性 は 、 科 学 技 術 が 急 速 に 発 展 す る 時 代 に 重 要 な 役 割 を 果 た す 。

5)CWAァ505(e),33U.S.C.ァ1365(e);SDWAァ1449(e),42U.S.C.ァ300j‐8(e).

6)Curdtv.MissouriCleanWaterComm'n,586S.W.2d58(Mo.App.1979).

7)Clerk,JohnFrederic,Clerk&LinctsellonTorts,19thed.,2006,at1162.

8)NutraSweetCo.v.X‑LEng'gCorp.,933F.Supp.1409,1423(N.D.III.1996);

WilliamsPipeLineCo.v.BayerCorp.,964F.Supp.1300,1330(S.D.Iowa 1997);Scheuflerv.GeneralHostCorp.,126F.3d1261,1267(10thCir.1997‑

Kan.).

9)8Me.138(1831).

且0)こ の 分 析 は 、R.Beck,op.ctt.,at519所 収 の 統 計 表 に 依 拠 す る 。 11)Hobbsv.Amador&SacramentoCanalCo.,66Cal.161,162,4P.1147,

1148(1884);Mowrerv.AshlandOil&Ref.Co.,518F.2d659,661(7thCir.

1975‑Ind.).

12)SpartanDrillingCo.v.Bull,221Ark.168,171‑172,252S.W.2d408,910 (1952);Bowmanv.Humphrey,12410wa744,746,100N.W.854,855(1904).

13)TopekaWaterSupplyCo.v.CityofPotwin,43Kan.404,414‑415,23P.578, 583(1889).

14)98Va.332,36S.E.373(1900).

15)98Va.332,336,36S.E.373,374(1900).

16)WilliamProsser,Torts,2ded.,1995,at405.

17)Restatement(Second)ofTortsァ832(1979).

18)SantaFePartnershipv.ArcoProd.Co.,46Cal.App.4th967,54Cal.Rptr.

2d214(1996);DaveyCompressorCo.v.CityofDelrayBeach,613So.2d60 (FlaApp.1993).

19)Swift&Co.v.PeoplesCoal&OilCo.,121Conn.579,592,186A.629,634 (1936).

20)Andersonv.VillageofLittleChute,549N.W.2d737(Wis.App.1996);

Hopkinsv.DepartmentofHwys.,364So.2d616(La.App.1978).

21)ネ グ リ ジ ェ ン ス も ま た 、 プ ラ イ ベ ー ト ・ニ ュ ー サ ン ス の 成 立 と の 関 係 性 を 考 慮 し て い な い 。

22)Restatement(Second)ofTortsァ829A(1979).

23)か か る 基 準 に つ い て 有 用 性 衡 量 テ ス ト 」 と 呼 び 、 そ の 確 立 過 程 に つ い て 論 究 し た も の と し て 、 須 加 憲 子 「生 活 妨 害 法 理 に 関 す る 基 礎 的 考 察(4・ 完)一 ア メ リ カ ニ ュ ー サ ン ス 法 を 契 機 と し て 生 活 妨 害 法 理 の 再 構 成 へ 」 早 稲 田 法 学77巻2号(2002年)101頁 下 が あ る 。

参照

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