エ ー ジ ェ ンシイ理論 に よる分権 的 システ ムの研 究
上 木 政 美 奥 田 和 重
1.緒 言
大 規 模 な複 雑 な シス テ ム の 最 適 化 を行 う方 法 と し て,シ ス テ ム を幾 つ か の サ ブ シ ス テ ム に分 割 し,扱 い や す くす る こ とが な され て きた 。 論 文[1]で は分 割 原 理 に よ る ア プ ロ ーチ が 分 権 的 シ ス テ ム の解 明 に は適 して い ない こ と,非 協 力 ゲ ー ム に よ る ア プ ロ ー チ が 分 権 的 シス テ ム を取 り扱 うの に有 効 で あ るが,サ ブ シ ス テ ム 問 を調 整 す る コー デ ィ ネ ー タが 存 在 し な い た め,あ る2次 一線 形 モ デ ル 以 外 で はNash均 衡 解 が 無 限 個 の解 集 合 に な る こ と を指 摘 して い る 。 ま た 論 文[2]で は シス テ ム全 体 の 目的 関 数 が 存 在 し な い場 合 の 大 規 模 複 雑 な シ ス テ ム を 対 象 に,従 来 の最 適 化 の 概 念 にか わ る均 衡 化 の概 念 を提 案 し,均 衡 化 の 方 法 と して,非 協 力 ゲ ー ム の理 論 を 適 用 し,決 定 に 優 先 権 が 無 い 場 合 のNash 均 衡 解 と,優 先 権 が あ る場 合 のStackelberg均 衡 解 を求 め る た め の 条 件 を導 い て い る 。 さ らに論 文[3]で は分 権 的 生 産 シ ス テ ム の 単 一 期 問 生 産 計 画 問 題 に 対 して,非 協 力 ゲ ー ム に基 づ い た手 法 を適 用 す る こ と に よっ て 最 適 性 の 必 要 条 件 を導 き,生 産 目標 か らの ず れ を最 小 にす るNash均 衡 解 を求 め て い る 。
さ て こ こで 情 報 と い う側 面 か ら,大 規 模 複 雑 な シス テ ム に つ い て考 え て み よ う。 シ ス テ ム を幾 つ か の サ ブ シス テ ム の 集 ま り とみ な した場 合,コ ー デ ィ ネ ー タが 存 在 す る場 合 は コ ー デ ィ ネ ー タが 下 位 シ ス テ ム と情 報 をや り取 り して 全 体 の 最 適 化 を考 え る。 ま た コー デ ィ ネ ー タが 存 在 し ない 場 合 は サ ブ シ ス テ ム が 互 い に情 報 を交 換 す る場 合 と情 報 の一 部 を交 換 す る 場 合,全 く交 換 しな い場 合 が
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考 え られ る。 前 述 の 論 文 に お い て も,情 報 を制 約 条 件 と し て最 適化 の 考 察 を し て い る 。 しか し,そ こ で は 情 報 の 別 の 側 面,「 対 称 性 」 に つ い て の 考 察 は な さ れ て い な い 。 現 実 の 大 規 模 複 雑 な シス テ ム の 例 と して 企 業 を考 え て み よ う。 企 業 は階 層 的 な サ ブ シ ス テ ム の集 ま りで あ り,最 適 化 の 目標 は,例 え ば 企 業 全 体 の 売 り上 げ の 最 大 化 な どで あ る 。 そ の 目標 達 成 の た め に 上 位 シ ス テ ム(例 え ば 上 司)は 下 位 シス テ ム(例 え ば 部 下)と 情 報 を交i換す る こ と に な る 。 しか し, そ の 情 報 は 必 ず し も同 質 の もの(対 称)と は 考 え に くい 。 つ ま り,上 司 は部 下 の す べ て の 行 動(情 報)を 観 察 す る こ とは で き な い 。 部 下 が 一 生 懸 命 努 力 した の か,そ れ と も しな か っ た の か,仕 事 の成 果 か ら判 断 す る こ とに な る。 部 下 に して も一 生 懸 命 努 力 を す るか ど うか は報 酬 と も関 係 して くる。 つ ま り,シ ス テ ム全 体(企 業)の 最 適 化 を考 察 す る に は,シ ス テ ム 内 の 情 報 の 非 対 称 性 につ い て も考 察 しな け れ ば な ら ない 。 そ こで,本 論 文 で は エ ー ジ ェ ン シ イ理 論[4]
を用 い て 大 規 模 複 雑 な シス テ ム に お け る上 位 シス テ ム(こ こで は プ リ ンス パ ル と よぶ)と 下 位 シス テ ム(こ こ で は エ ー ジ ェ ン ト と よぶ)と の情 報 の 非 対 称 性 に つ い て 考 察 す る。 問題 を単 純 化 す るた め に,本 論 文 で は プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トが1対1の 場 合 を対 象 とす る が,い ず れ,そ れ を1対nさ ら にm対 nと 拡 張 し,一 般 化 す る こ とを 目標 と した い 。
2.エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 2.1エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 の 一 般 的 な意 味
経 済 主 体 間 で持 っ て い る 情 報 の非 対 称 性 に つ い て考 え る 。 例 え ば保 険 の 契 約 を想 定 して み よ う。 今,保 険 会 社Aは 火 災 保 険 を販 売 し,家 計B1が 所 定 の 保 険 料 を負 担 して火 災 保 険 を購 入 した と し よ う。 この よ う な場 合,家 計B1は た とえ火 災 が 発 生 して も保 険 会 社Aが 損 害 を補 償 し て くれ る 安 心 感 か ら,保 険 に 入 る前 よ り,火 の 後 始 末 に 注 意 を払 わ な くな る か も しれ な い 。 つ ま り保 険 会 社 Aは 家 計B1の と る行 動 につ い て の 情 報 を100%は 把 握 で き ない とい う情 報 の非 対 称 性 が 存 在 す る。 そ して,他 の加 入 者 の 家 計B2,…,Bnが 家 計B1と
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る分 権 的 シ ス テ ム の 研 究 39
同 じ よ う に火 の 後 始 末 に 注 意 を払 わ な くな る と,道 徳 上 あ るべ き行 為 が ゆが め られ る とい っ た,モ ラル ハ ザ ー ド[5]の 問 題 が 生 じ,保 険 そ の もの が 成 立 し な く な る か も しれ な い 。 ま た,会 社 は従 業 員 を雇 うが,給 料 を払 っ て も,従 業 員 が ま じめ に働 くか ど う か100%は 監 視 で き な い 。 や は り,そ こ に も情 報 の 非 対 称 性 が 存 在 す る。 この よ う に,社 会 全 体 の 経 済 活 動 の 中 に は情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 が い く らで も存 在 す る。 この よ う な 行 動 に 関 す る情 報 の非 対 称 性 が あ る と きの 理 論 的 な 分 析 モ デ ル と して,有 力 な枠 組 み が エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 で あ る。
こ こで は[4]に 基 づ い て エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 の簡 単 なモ デ ル を 考 察 す る。
2.2エ ーpt一ジ ェ ン シ イ理 論 の 簡 単 な モ デ ル
モ デ ル と して 依 頼 人(プ リ ンス パ ル)と 代 理 人(エ ー ジ ェ ン ト)を 想 定 す る 。 依 頼 人 は代 理 人 の 行 動 を直 接 は 観 察 で きな い 。 つ ま り,情 報 の 非 対 称 性 が存 在
し,モ ラ ル ・ハ ザ ー ド問 題 が 生 じ る可 能 性 が あ る。 そ こで,依 頼 人 は様 々 な 手 段,例 え ば 賃 金 の 設 定,料 金 の 設 定,行 動 を観 察 す るた め の装 置 の 設 定 な ど考 え,代 理 人 が 仕 事 を一 生 懸 命 す る よ う に 誘 引 す る。 そ し て,依 頼 人 と代 理 人 は そ れ ぞ れ の 効 用 が 最 大 に な る よ う に行 動 す る。 な お,そ の際 リス ク に対 して は 依 頼 人 は 中 立 的,代 理 人 は 回避 的 と い う設 定 が 一 般 的 で あ る 。 図1に 簡 単 な モ デ ル と依 頼 人(プ リ ンス パ ル)と 代 理 人(エ ー ジ ェ ン ト)の 例 を上 げ て お く。
観察 は一 般 的 に困難
訓 鮒 騨 一一灘 側轄畔 撒 麟 ㈹齢 繍 ㎜ 欄 ℃ ・一
依 頼 人(プ リ ンス パ ル)
中央 政府
(
銀行 経営 者 地主
メー カー
)
一 地方交付税, 融 資,賃 金 支 払 い等
一
住 民へ のサー ビ ス,賃 金 の 返 済 と利息の支払い, 労働の提供等
代 理 人(エ ー ジ ェ ン ト)
(地 方政府 賃金の借り手 従業員 小作 小売業者)
図1プ リ ン ス パ ル と エ ー ジ ェ ン トの 例
2.3線 形 モ デ ル
プ リ ン ス パ ル とエ ー ジ ェ ン トの 関 係 に お い て,エ ー ジ ェ ン トの 隠 さ れ た 努 力 と性 質 を 観 察 す る 問 題 の 一 般 的 な 解 を 求 め る こ と は 極 め て 難 し い の で,こ こ で は 線 形 モ デ ル を 考 え て,そ の 考 察 を す る こ と に す る 。 ま ず,用 語 を 準 備 す る こ と に な る が,こ こ で は 経 営 者(プ リ ン ス パ ル)と 従 業 員(エ ー ジ ェ ン ト)と の 関 係 を 想 定 し た 賃 金 契 約 に つ い て 考 察 す る 。
(1>夕=∫ α,e):プ リ ン ス パ ル の 富 の 総 和 を 表 し て お り,エ ー ジ ェ ン ト の 努 力 を 表 す 変 魏 と外 的 な リ ス ク を 表 す 変 数 θ で 定 め ら れ て い る 関 数 で 与 え
ら れ る 値 で あ る 。
(2)ρ=ρ 働:夕 で 表 さ れ る 賃 金 計 画 の 関 数 で あ る 。
(3)p=p(y):夕 の 実 現 値.yで 表 さ れ る 賃 金 計 画 の 関 数 で あ る 。
(4)c(x):エ ー ジ ェ ン トの 不 効 用 関 数(disutilityfunction)で あ る 。
(5)Cb(x,p)=p(/(x,の)‑c(x):エ ー ジ ェ ン トの 富 を 表 す 関 数 で あ り(1),(2) よ り得 ら れ る 賃 金 計 画 と 不 効 用 関 数o(x)の 差 で 与 え ら れ る 。
(6)U(x,p)=u‑1(E[u(刎):エ ー ジ ェ ン トの 厚 生 関 数 で あ りuはNeumann‑
Morgenstern効 用 関 数[6コ で あ る 。
(7)U(鷲 ρ)=max{U(x,p)Ix∈X}:エ ー ジ ェ ン トの 意 志 決 定 問 題,こ こ で 〆 は 効 用 関 数 を 最 大 に す る エ ー ジ ェ ン トの 努 力 。
(8)κ=φ ㈲:努 力xは 賃 金 計 画pで 誘 引 さ れ る 関 数 と な る 。
(9)U(φip),p)≧m:エ ー ジ ェ ン トが プ リ ン ス パ ル と 契 約 す る 条 件 で,mは 条 件 値 で あ る 。
㈲ 夕一ρ(夕):プ リ ン ス パ ル の 実 質 的 な 富,富 の 総 収 入 か ら エ ー ジ ェ ン ト に 支 払 う 賃 金 を 引 い た 残 余 で 与 え ら れ る 。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の研 究 4ヱ
⑪v(x,p)=ガ1(E[v(y‑p(鋤 】):プ リ ン ス パ ル の 厚 生 関 数 。 こ こ でvは Neumann‑Morgenstern効 用 関 数 で あ る 。
⑫v(φ 伽 ρ貌)==me・lv(φip),P)IP∈P,σ(φip),P)≧m}
:プ リ ンス パ ル の 意 志 決 定 問 題 。 こ こ で ρ劣、は 条 件 値 が 物の と き の効 用 関 数 を最 大 に す る賃 金 計 画 。
エ ー ジ ェ ン トは 式 ⑫ で 導 か れ た 揚 に対 して 反 応 し,努 力 錫=φ(ρ 凱)を提 供 す る。 こ の 組 合 せ(場,揚)が 情 報 の 非 対 称 性 を考 慮 した 場 合 の最 適 解 に な る 。
また,エ ー ジ ェ ン トの 効 用 関 数 につ い て,一 多 〉 ・の と きは リス ク 醗 的,
一 一ll・一=0の と き は リ ス ク に 対 し て 中 立,一 釜 く0の と き は リ ス ク 愛 好 的 で あ る。 本 論 文 で は リス ク 回避 的 で あ る と仮 定 して い る。 一 方,プ リ ンス パ ル は リス ク に 対 して 中 立 と仮 定 す る。
これ らの用 語 を用 い て 次 の よ う な線 形 モ デ ルM1を 想 定 し よ う。
線 形 モ デ ルM1
夕=!(x,θ)=x+θx∈X=【O,1/2】
OはN(0,σ2)に 従 う 確 率 変 数 。
賃 金 計 画 は 線 形 で 右 の 式 で 表 す 。p(y)=r+sy エ ー ジ ェ ン トの 厚 生 関 数:u(w)=・‑exp(‑crw),α>0
プ リ ン ス パ ル の 厚 生 関 数 は 砂 で,線 形 関 数 で あ る と 仮 定 す る 。 プ リ ン ス パ ル は リ ス ク 中 立 で あ る と 仮 定 す る 。
エ ・・…ジ ェ ン トの 不 効 用 関 数:c(x)=x2
これ ら の 仮 定 か らエ ー ジ ェ ン トの リス ク 回 避 の 値 はα=一 〆/uノ>0と しプ リ ンス パ ル は リ ス ク 中 立 で あ る の で 一v"/vノ=0で あ る。
賃 金 計 画 を与 え る線 形 関 数 に お い て,rは 謝 礼 と考 え られ る一 定 の 固 定 給 部 分 に 相 当 し,マ イ ナ ス も あ り え る。 また,sは 分 け前 と考 え られ,歩 合 給 に相
当 す る 。 タ ク シー 会 社 を例 とす る と,ノ は 営 業 車 の レ ン タル 代(こ の 場 合 はマ イ ナ ス と考 え ら れ る)で あ り,sは 売 り上 げ に対 す る歩 合 給 を表 して い る 。
線 形 モ デ ルM1に お い て は,内 因性 の パ ラ メ ー タ はx,r,sで あ り,外 因 性 の パ ラ メ ー タ はcr,o,θ が 相 当 す る 。 こ こ で は パ ラ メ ー タr,sに よ る 賃 金 計 画 を外 因 性 の パ ラ メ ー タで 分 析 して み よ う。 つ ま り,プ リ ンスパ ル に とっ て の 最 適 な賃 金 計 画 と は どの よ う な もの で あ る か を考 察 す る。
(i)エ ー ジ ェ ン トの 努 力 の 誘 因 工 一 ジ ェ ン ト の 富 を 表 す 関 数(5)よ り
㈲Cb(x;r,s)=r+(x+の ∫一〆
と な る 。 こ れ よ り,エ ー ジ ェ ン ト の 厚 生 関 数[7]は,次 の よ う に な る 。
ω σ(・;r,s)‑E[叶 号 伽 【勿]‑r+sx一 ノ ー号 ・2♂
この σを最 大 にす る に は σ を κで 微 分 して ゼ ロ とお け ば い い か ら,最 適 な 努 力 は
㈲ が 一 φ(ろ ・)一音 』
で あ る,こ れ は,与 え られ た ろ εに対 す るエ ー ジ ェ ン トの最 適 な反 応 を 与 え て い る 。 上 式 は エ ー ジ ェ ン トの努 力 がm,rで は 誘 引 さ れ ず,sの み で 誘 引 さ れ る こ と を示 して い る 。極 論 す る とs=O(歩 合 給 が0)で は,〆=0と な りエ ー ジ ェ ン トは何 も努 力 し ない こ と に な る 。 しか し,現 実 で は こ れ は 考 え に く く, グ(固 定 給)は 結 構 大 き な値 に な るか も しれ な い 。
(li)一 定 条 件 を満 た す 賃 金 計 画 式(14),㈲ に よ れ ば
⑯u(・ ・;r,s)一 ・+妥(1‑2cr・2)
と な る 。Uは 契 約 の 条 件U≧mを 満 た さ な くて はい け な い か ら
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の研 究
㈲ 伽 一妥(・ 一一2αdi)
で あ る。 こ れ よ り次 の こ と を明 らか にす る こ とが で き る。
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(a)こ の 式 に よ っ て,α,σ が 十 分 小 さ い と き,つ ま り1‑2α σ2>0の と き はsを 大 き くす る とrを 小 さ くで きる こ とが わ か る。
sが 大 き くな る と きの 効 果 は他 に,高 い 分 け前(ボ ー ナ ス)に よ る収 入 の 増 加 を期 待 で き る こ と,エ ー ジ ェ ン トの や る気 を増 す こ と,多 少 の リス ク は 我 慢 す る よ うに な る等 で あ る。 特 に リス ク 回 避 が 小 さ くな る こ とに注 目す れ ば,高 い 分 け前 が 予 想 され る 限 り,全 体 と して は謝 礼 部 分rは,少 な く な る とい う よ りむ し ろ高 くな る で あ ろ う。
(b)1‑2α σ2<0の と き は式 ㈹ の 右 辺 はsの 増 加 と と も に大 き くな り,結 果 ノの 増 加 も もた らさ れ る よ う に な る。
㈹ プ リ ン スパ ル に とっ て 最 適 な賃 金 計 画
賃 金 計 画 に対 す るエ ー ジ ェ ン トの最 適 反 応 は 式⑯ で 与 え られ,制 約 条 件 は式 働 で 与 え られ た わ け で あ る が,そ の 時 の プ リ ンス パ ルの 厚 生 関 数 最 大 化 を考 え
て み よ う。
プ リ ンス パ ル の 富 は,総 収 入 か らエ ー ジ ェ ン トに 賃 金 を 支 払 っ た 残 余 の 次 式 で あ た え られ る。
(18)夕 一(r+砂)=(1‑s)(x+θ)‑r
こ こ で,プ リ ンス パ ル は リス ク に対 して 中立 的 で あ る とい う仮 定 か ら,期 待 され る厚 生 関 数 は 次 式 で与 え られ る。
㈲V(x;r,s)=(1‑s)x‑r
さ ら に,エ ー ジ ェ ン トの 最 適 反 応 式 ㈲ を 考 慮 す る と プ リ ン ス パ ル の 厚 生 関 数 は 次 式 と な る 。
eo)v(x';r,s)一(1一 の 音 一 ・
さらに制約条件 式㈲ を考慮す る と次式 を得 る。
⑳V≦(1‑‑s)音 一m+妥(・‑2α ♂)
もち ろ ん,等 号 が 成 立 す る と き17Teま最 大 で あ る。 こ こ でVはsの2次 関 数 で あ り,関 数 が 上 に 凸 で あ る こ と を考 慮 す る と,Vを 最 大 に す るsは 次 式 で 与 え ら れ る 。
㈱ ・ ㌔「蒲
式 ㈱ を⑯ に代 入 す る こ とに よ っ てノの 最 適 値 は 次 式 で 与 え られ る。
㈱ 畑 一 轟
また,式 ㈲,吻 に よ っ て誘 引 され た エ ー ジ ェ ン トの 努 力 は次 式 と な る。
②の κ㌔一φ(ろ・)一歯
結 果,式 ⑳ に⑳ を代 入 して,プ リ ンス パ ル の厚 生 関 数 を導 く と次 式 に な る。
es)7≦ 壷 「m
も ち ろ んVの 最 大 値 は 等 号 が 成 立 す る と きで あ る ・
式㈱,㈱,㈱ よ りエ ー ジ ェ ン トの 歩 合 制 にお け る 報 酬 と誘 引 され る努 力,そ して プ リ ンス パ ル の 富 は ασ2と反 対 に 作 用 す る こ とが う か が え る。 つ ま り リス ク 回 避 係 数 が 大 き くな る,あ る い は リス クの 分 散 が 大 き くな る とエ ー ジ ェ ン ト の 報 酬 は 減 り努 力 の 誘 因 も小 さ くな る,そ の 結 果,プ リ ンス パ ル の 富 も小 さ く な る こ とが わ か る。
プ リ ンス パ ル と して は リス ク 回 避 の小 さ なエ ー ジ ェ ン トの 方 が都 合 が い い わ け で あ る 。 式 吻 につ い て い え ば,エ ー ジ ェ ン トは リス ク に対 して 高 い 保 証 を要 求 す る の で,プ リ ンス パ ル と して は エ ー ジ ェ ン トの リス ク 回 避 係 数 α と外 的
エ ー ジェ ン シイ理 論 に よる分権 的 システ ムの研 究45
な リス ク分 散 σ2が大 き い と きは,sの 値 を小 さ くす る ほ うが よ い こ とが わ か る 。 しか し,実 際 に は リス ク 回 避 が 大 きい か ら とい っ て 賃 金 の す べ て を 固 定 給 にす る こ と をエ ー ジ ェ ン トは望 ま な い だ ろ う。
2.4エ ー・一ジ ェ ン シ イ ・コス トに つ い て
エ ー ジ ェ ン シ イ ・コ ス トの 定 義 は 以 下 の よ う に 考 え る の が 一 般 的 で あ る。
エ ー ジ ェ ン トの 努 力 κと賃 金 計 画 ρ との 組 み 合 わ せ の 中 で,プ リ ンス パ ル の 厚 生 関 数 を最 大 にす る組 み 合 わせ(x,p)を ベ ス トセ ッ トEと す る 。 こ こ で エ ー ジ ェ ン トの 努 力 を 賃 金 計 画 か ら誘 引 され た もの に 限 定 して考 えた と きの,エ ー ジ ェ ン トの努 力 κ=φ ω と賃 金 計 画 ρ と の組 み 合 わせ の 中 で,プ リ ンスパ ル の 厚 生 関 数 を最 大 に す る組 み合 わ せ(φ(P),P)を2番 目の ベ ス トセ ッ ト1と す る。
ベ ス トセ ッ トEと ベ ス トセ ッ ト1と の 差 を 一 般 的 にエ ー ジ ェ ン シ イ ・コス ト と呼 ん で い る。 これ を数 式 で 表 す と次 の よ う に な る。
ベ ス トセ ッ トEと は 次 の 最 適 化 問 題 の 解(錫,鑑)で あ る 。 漁 γ(κ,ρ)
subje .cttoU(X,P)≧m'
x∈x,P∈P
ベ ス トセ ッ ト1と は 次 の 最 適 化 問 題 の 解(ぬ,p'.)で あ る 。 漁 γ(κ,ρ)
subjecttoU(x,P)≧m
x"φ(P),P∈P
す な わ ちエ ー ジ ェ ン トの 努 力κは賃 金 計 画 ρ に よ っ て の み 誘 引 さ れ る 。 よ っ て,エ ー ジ ェ ン シ イ ・コ ス トは 次 式 で 与 え ら れ る 。
㈱ACm='V(ぬ,POm)‑7(ぬ,ρ ㌦)
こ れ を,2.3の 線 形 モ デ ルM1に 適 応 し て み る と 次 の よ う に な る 。 す な わ ち,
錫 、=1/2,塩=m,姦=0が 成 り立 つ と す る と
(27)AC・‑7が)‑7卿 ㌦)‑t一 吻一蒲 切 一研
この 式 か らACがmに 依 存 しな い 値 で あ る こ と,α σ2の増 加 はACの 増 加 に つ な が る こ とが わ か り,エ ー ジ ェ ン トの 努 力 を 観 察 で き な い状 況 で は,ACの 増 加 を生 み プ リ ンス パ ル の 不 利 益 を増 大 す る こ と に な る。 こ こ で α02が特 に大
きい場 合 の対 策 につ い て 考 え る と,ま ず 一 つ は賃 金 計 画 の セ ッ トを 可 能 な 限 り 大 き くす る こ とで あ る。例 え ば グ,sの 組 み合 わ せ で 非 線 形 の も の を 考 え た り, rに ペ ナ ル テ ィ を導 入 す る な ど,様 々 な 工 夫 をす る こ とで エ ー ジ ェ ン トコス ト
を小 さ くで きる か も しれ ない 。 ま た,エ ー ジ ェ ン トの 努 力 を観 察 す る何 らか の 装 置 の 設 定 も考 え られ る 。 無 論 そ れ 自体 に コス トが か か る わ け だ か ら,十 分 に 検 討 す る必 要 は あ る。 そ の 他,や や 楽 観 的 な見 方 で は あ るが,最 初 は 非 協 力 関 係 で 始 ま っ た プ リ ンスパ ル とエ ー ジ ェ ン トの 関 係 だ が,時 間が た つ に したが っ て 親 密 な もの に な り,エ ー ジ ェ ン トの努 力 を 自然 と う なが す 場 合 も考 え られ る。
エ ー ジ ェ ン トに して も協 力 した 方 が 全 体 の利 益 を増 や し,結 果 と して エ ー ジ ェ ン トに と っ て も得 と判 断 す る よ うに な る とい う こ とで あ る。
2.4モ ニ タ リ ン グ ・シ グナ ル
エ ー ジ ェ ン トの 隠 され た 努 力 に つ い て は,そ れ を観 察 し推 し量 る何 らか の装 置 が あ れ ば,プ リ ンスパ ル に とっ て は都 合 が よい 。 しか も,簡 単 で コス トが か か ら な い こ とが 望 ま しい 。 そ れ は,エ ー ジ ェ ン トの 努 力 κか ら得 られ る な ん ら か の シ グ ナ ル(信 号)と 考 え られ るで あ ろ う。 こ の よ う な プ リ ンス パ ル が 観 察 す る シ グ ナ ル をモ ニ タ リ ン グ ・シ グナ ル と よ び,一 般 的 に は モ ニ タ リ ン グ ・シ
グ ナ ル2と し て次 の よ う に 定 義 さ れ る 。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シス テ ム の 研 究 47
㈱2=h(x)+δ
こ こで 乃 ω は 観 察 関 数 と呼 ば れ,δ は 観 察 の 誤 差 で 確 率 分 布 を も っ た変 数 と 考 え られ る 。 プ リ ンス パ ル と して は 賃 金 計 画ρを た て る と き,プ リ ンス パ ル の 富 の総 和 の 実 現 値yの み な らず2の 実 現 値xも 賃 金 計 画 に取 り入 れ た方 が よ り よ い賃 金 計 画p(y,z)を 得 る こ とが で き る。
zを 導 入 した 場 合 の 賃 金 計 画 は い か な る もの か,ま た,よ り正 確 な観 察 の た め に は,ど の 程 度 コス トを か け る こ とが で きる か と い うこ と につ い て 考 えて み よ う。 そ こで 前 出 の 線 形 モ デ ルM1を 拡 張 した モ デ ル 「線 形 モ デ ルM2」 を想 定 して 考 察 す る。
線 形 モ デ ルM2 夕「/(x,θ)=x+θx∈X【O,1/2】
2=h(x)十 ε『 τ十 δx∈X[0,1/2]
0,9はN(α σ勃,1V(α ぬ に 従 う 確 率 変 数 。 こ こ で,σ と δは 相 関 が な い と仮 定 す る 賃 金 計 画:p(y,z)=ノ+sy+t2
エ ー ジ ェ ン トの リ ス ク 回 避 係 数:α==‑u"/u'>0 プ リ ン ス パ ル は リ ス ク に 対 し て 中 立 と 仮 定 す る 。 エ ー ジ ェ ン トの 不 効 用 関 数:c(x)=t2
プ リ ンス パ ル は こ れ ら の仮 定 の も と に,残 余 の富 夕一(ノ+砂+勧 を最 大 に す る よ う に,つ ま り厚 生 関 数7を 最 大 にす る よ う に願 うで あ ろ う。
こ こで プ リ ンス パ ル は 事 前 に α 瓦c,m等 の デ ー タは 知 っ て い る と仮 定 す れ ば,賃 金 計 画 に対 す る エ ー ジ ェ ン トの最 適 反 応 〆=φ(r,s,t)を 予 測 す る こ と が で き る。
こ れ は 以 下 の よ うで あ る 。 エ ー ジ ェ ン トの富 を表 す 関数 は
㈲ ゆ(鍔 ち ∫,の=7+∫(x+の+雄+紛 一ノ
で 与 え られ,対 応 す るエ ー ジ ェ ン トの厚 生 を 表 す 関 数 は 次 式 で 与 え られ る。
㈲ σ(x;r,・,t)‑r+(・+t)x‑M一 号(s2die+蹴)
数 式 ⑬①を最 大 にす る〆 は この 式 を微 分 して ゼ ロ とお くこ とで得 られ る こ と か らエ ー ジ ェ ン トの最 適 な努 力 は 次 式 に な る。
㈹x・ ・φ(ろ 功 一s吉'
こ こ で 条 件 制 約 σ(瀦 ろs,の ≧〃zを考 慮 に い れ る と,
働 ・≧m‑‑i2:一(1'一 一2・・die)一一夢(・‑2・ ・tfe)‑S'
と な る 。 プ リ ン ス パ ル の 残 余 の 富 は
㈹ 夕ψ(夕,2)=夕 一(7十 ミタ十t2)=(1‑s)夕 一 ノー 諺
=(1‑s)(x+θ)‑r‑t(x+ξ)
で あ る の で,式 ㈲ に よ れ ば プ リ ンス パ ル の 厚 生 関 数 は
(34)v‑Ely‑一(r+砂+tm]一(1‑・)s吉L・ 一'∫ 吉'
‑s吉L勉+茅(1‑2αdie)+t2(1‑2crtfe)+号 一 撃
で 与 え られ る 。 こ こ で 式 ㈱ を最 大 に す るr,sを 求 め る た めVを 変tWr,sに つ い て,そ れ ぞ れ 偏 微 分 して ゼ ロ と して お く と
岡 ♂‑1ま薦 が一占 巌
を 得 る 。 さ ら に,こ れ ら を 連 立 さ せ る こ と で 次 式 を 得 る 。
㈹s』1t・==1
・+2・・b/c+{籍1+2crdie+妥
式 ㈹ か ら最 適 な 賃 金 計 画 が 導 き出 され た が,こ こ で い くつ か の重 要 な性 質 に つ い て 説 明 して お こ う。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の研 究 49
まず,式 ⑯ か ら 〆>0が 成 立 しt"≠0と な る こ と,こ れ は多 少 観 察 の誤 差 が あ っ て も'を使 用 した 方 が プ リ ン ス パ ル に と っ て は 有 利 な こ と を示 して い る 。 そ し て,誤 差 の 分 散 魂 が 大 きい と き はtを 小 さ く し,か わ り にsを 大 き く した 方 が よ い こ と を示 して い る。
ま た,モ ニ タ リ ン グ ・シ グ ナ ル が 正 確 に把 握 で き る とす る と 峨 ≒0が 成 立 し,結 果s・0,t=1と な る。 こ れ は,努 力 の 度 合 い が 最 初 か らわ か る こ とを 意 味 し,つ ま り変 数'は 労 働 力 の 入 力 を示 す 変 数 と考 え られ る。 一 方,分 け 前 を 表 す 変 数sは,努 力 の 結 果 に対 して 支 払 わ れ る と考 え られ る か ら,変 数sは 労 働 の 出 力 を表 す と考 え られ る 。
さて,こ こで 別 の 視 点 か らモ ニ タ リ ン グ ・シ グ ナ ル につ い て 考 え て み よ う。
今,エ ー ジ ェ ン トの 努 力 を 表 す 変 数xを,2個 の 変 数 κ1,κ2の和 で あ る と仮 定 す る。 これ よ り,生 産 さ れ る 富 の 総 和 は 夕 ・f(x,θ)=κ1+κ2+θで あ り,こ の と
きの エ ー ジ ェ ン トの 不 効 用 関 数 はc(x)=璃+轟 で 表 され る。 一 般 的 に は 編 ≧(Xl十X22)2が 成 立 し,鞠 まXl‑x2の と き で あ る.す な わ ち,Xl・x2が 成 立 す る と き,エ ー ジ ェ ン トの 不 効 用 関 数 は最 小 に な る。 そ こで も し,モ ニ タ
リ ン グ ・シ グナ ル が κ1の関 数 で あ るが,κ2の 関 数 で ない とす れ ば,す な わ ち, 2=κ1+δ とす る と,エ ー ジ ェ ン トの 反 応 はXl>X2と 考 え られ る。 これ は エ ー ジ ェ ン トの不 効 用 関 数 が 最 小 値 で は な くな り,富 の 総和 夕 を減 ず る こ と に な る 。 しか し,t">0で あ る 以 上,プ リ ンス パ ル は モ ニ タ リ ング ・シ グ ナ ル を利 用 す る こ とを好 む と い え る 。
さて,モ ニ タ リ ング を行 う装 置 の 導 入 につ い て,エ ー ジ ェ ン トの 反 応 とい う 点 か ら考 え る と,結 果 と して富 の 増 加 に 関 係 な け れ ば エ ー ジ ェ ン トは興 味 を 示 さ ない が,た と え ば,制 約 条 件U≧mの 条 件 値mの 値 に修 正(増 加)が 加 わ る こ と に な れ ば 受 け入 れ るで あ ろ う。 しか し,モ ニ タ リ ン グ の装 置 導 入 に は い く らか の コ ス トを覚 悟 し な け れ ば な らな い 。 ひ とつ は モ ニ タ リ ング の 装 置 そ の も の の 経 費 で あ り,2つ め は エ ー ジ ェ ン トの 富 の 制 約 条 件mの 増 加 要 求 で あ る。
3つ め は モ ニ タ リ ン グ に よ る不 効 用 の増 加 で あ る 。
2.5ス ク リー ニ ン グ
今 ま で は,エ ー ジ ェ ン トの 性 質,例 え ば リ ス ク に 対 す る態 度 α等 は 既 知 で あ る こ と を前 提 と し て,主 に隠 さ れ た 努 力 に つ い て 考 察 して き た。 こ こで は, エ ー ジ ェ ン トの性 質(リ ス ク に対 す る 態 度,能 力 等)が わ か らな い と きの 観 察 の方 法 に つ い て考 察 す る 。 これ に は ス ク リー ニ ン グ とい わ れ る,自 己 選 択 の方 法 が あ る。
隠 され た 性 質 と し て,リ ス ク に対 す る態 度 を仮 定 して線 形 モ デ ルM1に あ て は め て 考 察 し よ う。 モ ニ タ リ ン グ ・シ グナ ル を含 め る と複 雑 に な る の で こ こ で は 除外 す る こ とに す る。
まず,仕 事 を探 して い る エ ー ジ ェ ン トと労 働 者 を探 して い る プ リ ンス パ ル を 想 定 し,賃 金 契 約 に つ い て考 察 す る。
プ リ ンス パ ル は式 ㈲,㈲ か ら
(37)・ ω 「 鳶 ・(cr,m,s)一 祝 一妥(1‑‑2αdi)
と い う賃 金 計 画 を エ ー ジ ェ ン トに示 す 。 そ れ に対 し て最 適 反 応 を した エ ー ジ ェ ン トは式 ㈹ よ り
(38)Ua(r,・)‑r+妥(・‑2α ♂)
と い う富 を手 に入 れ る。 た だ,こ の 時 点 で は プ リ ンス パ ル は エ ー ジ ェ ン トの リ ス ク に 対 す る 回 避 度(態 度)α に つ い て は未 知 で あ る 。 単 純 化 の た め α。=
0と α1=α の2種 類 とす れ ば,こ の2種 類 の エ ー ジ ェ ン トを 雇 っ た 場 合,プ リ ンス パ ル の 富 は そ れ ぞ れ
㈲%一 ÷吻%一 応 一勉
で あ り,そ の 差 は
(4・)V・‑Vit"m‑(4(、'2α ゲ「 彿)==一 評 研
で あ る。 明 らか に リス ク に 対 す る態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トの 方 が,プ リ ン
エv‑一一ジ ェン シ イ理論 に よる分権 的 システ ムの研 究51
ス パ ル に 多 くの 富 を もた らす 。 し か し,こ れ は リス ク に 対 す る 態 度 が α>0の エ ー ジ ェ ン トを除 外 して リス ク に対 す る態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トの み を雇 用 す る こ と を意 味 す る の で は な い 。 リス ク に対 す る 態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン
トの み が 存 在 す る とい っ た プ リ ンス パ ル に とっ て 都 合 の い い 現 実 は な い は ず で あ る 。 そ こ で,何 らか の 方 法 で エ ー ジ ェ ン トの リス ク に対 す る態 度 を見 分 け る 方 法 を考 え る 。 そ の よ うな 方 法 は,な るべ く コス トが か か らず,賃 金 契 約 を通 じて 自動 的 に リス ク に対 す る態 度 が 判 明 す る よ う な方 法(自 己 選 択 と よぶ)が 理 想 で あ る。 今,エ ー ジ ェ ン トの リス ク に 対 す る態 度 を,α 。=0と α1=α の2 種 類 とす る。 もち ろ ん,プ リ ンス パ ル は2種 類 の エ ー ジ ェ ン トが い る こ と は知
っ て い るが,誰 か は わ か らな い とす る 。 そ れ を 幾 つ か の賃 金 契 約 条 件 の 中 で, エ ー ジ ェ ン トに 自由 に選 択(自 己選 択)さ せ る こ と に よ っ て,彼 が どの タ イ プ の エ ー ジ ェ ン トな の か を知 ろ う とい うの で あ る 。これ をス ク リー ニ ン グ と よぶ 。
(i)賃 金 契 約1
プ リ ンスパ ル は 次 の2種 類 の賃 金 契 約 をエ ー ジ ェ ン トに提 案 す る と仮 定 す る。
契 約0リ ス ク に 対 す る 態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トが 対 象 分 け 前s。=s(0)=1
謝 礼ro=r(0,m,So)=M‑T
契 約1:リ ス ク に 対 す る 態 度 が α>0の エ ー ジ ェ ン トが 対 象 分 け 前31=s㈹=了;22hifcr
謝 礼;rl=・(a,m,s、)一 鋭 一 ・壁(1‑2α ♂)
こ の 契 約 が 自 己 選 択 の 装 置 と して う ま く機 能 す るか 検 討 す る。 エ ー ジ ェ ン ト の 立 場 か ら考 察 して み る。 まず,リ ス ク に 対 す る 態 度 が 異 な る エ ー ジ ェ ン トが
この2種 類 の 契 約 を 自分 の タイ プ に 関係 な く,そ れ ぞ れ 結 ん だ と し て,そ の 富 を計 算 して み よ う。
a)リ ス ク に対 す る態 度 が α>0の エ ー ジ ェ ン トの 富 は式 ㈲ よ り
契 約 ・ を 結 ん だ 場 合:U。(・ 。,・。)‑M‑‑t+÷(・‑2α ♂剛 一 響 契 約1を 結 ん だ 場 合:U。(ri,Sl)=m
で あ る の でU.(rl,s1)〉 砿(r。,s。)が成 り立 つ 。
b)リ ス ク に 対 す る 態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トの 富 は 式 ㈲ よ り
契 約 ・を結 ん だ 場 合:砿(名O,SO)一 鯵 ÷+÷ 一勉
契 約 ・を結 ん だ 場 合:U・(r、,・ 、)‑m+誓(1‑2cr・2)遵 一m+2α ゲ 傷)‑m+π 撫
で あ るの でU。(r1,Sl)>U。(ro,So)が成 り立 つ 。
a),b)を 比 較 して わ か る こ とは,リ ス ク に対 す る態 度 が 異 な る2種 類 の エ ー ジ ェ ン トを想 定 した が,い ず れ の タイ プ も契 約0よ り,契 約1を 交 わ した 方 が エ ー ジ ェ ン トの富 が 大 き くな る こ とが わ か る。 す な わ ち,こ の 契 約 の 設 定 の し か た で は 自己 選 択 機 能 は働 い て い な い こ と に な り,プ リ ンス パ ル はエ ー ジ ェ ン トの タイ プの 違 い を見 分 け る こ と は で きな い 。 さ ら に契 約 の 工 夫 が 必 要 で あ ろ うQ
(ii)賃 金 契 約ll
式 ㈲ に よ る と リス ク に 対 す る態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トに 対 して は 条 件 制 約 が 勉 で は な く
(c)m・ ・m+π 撫
を必 要 とす る こ とが わ か る。
ま た,リ ス ク に対 す る 態 度 が α>0の エ ー ジ ェ ン トで は 条 件 制 約 はmの ま ま で あ る。 そ こで 契 約0で の 謝 礼 部 分rのmをm。 に した修 正 契 約 案,契 約2 を考 え る。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の 研 究 53
契 約2リ ス ク に 対 す る 態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トが 対 象 分 け 前;s2・s。=1
謝礼;例 α踊)一 吻÷ π 撫 ・
こ こで,プ リ ンス パ ル は 契 約1と 契 約2の2種 類 の 契 約 をエ ー ジ ェ ン トに対 し て 提 供 す る と仮 定 す る 。 こ の と き リス ク に対 す る態 度 が 異 な る2種 類 の エ ー ジ ェ ン トは どち ら の契 約 を好 む か,そ の 富 を 計 算 す る こ とで 比 較 して み よ う。
、
a)リ ス ク に 対 す る 態 度 が α>0の エ ・…一ジ ェ ン トの 富 は 式 ㈲ よ り
契約2を結んだ場合:輪 肺 ÷ π 霧研+÷ 一響
α02cro2
=m+
2(1+2研 一2 契 約1を 結 ん だ 場 合:砿(rl,Sl)=〃z
で あ る の でU.(rl,Sl)〉 砿(r2,S2)が 成 り立 つ 。
b)リ ス ク に 対 す る 態 度 が α=0の エ ー ジ ェ ン トの 富 は 式 ㈲ よ り
契 約2を 結 ん だ場 合:u・(・ ・,s2)一暢+π 霧 研+t
=m+mu αゲ 2(12)
契 約 ・を結 ん だ場 合:U。(禍 帥 一・を ・一'‑2…2)遵
' ==m+2α 瑚 一彿+π 撫
で あ る の でU。(r2,S2)=U。(rl,S1)が 成 り 立 つ 。
つ ま り,こ の タ イ プ の エ ー ジ ェ ン ト に と っ て は,契 約2も 契 約1も 期 待 さ れ る 富 と い う 点 で は 差 は な い 。 そ れ ぞ れ の 契 約 の 謝 礼 部 分rを 比 較 す る と
rl‑r(o,M,・ ・)‑m一 去
炉 ・(α蘭 一彿一去+π 鑑 研
であるので契約2の 方が若干π 撫 だけ謝礼部分が多 く設定されている
こ と に な る。 よ っ て,リ ス ク に対 す る態 度 が α=0な エ ー ジ ェ ン トは 契 約1よ り契 約2を 選 ぶ 誘 因 が あ る 。
a),b)の 結 果 か ら,契 約 を工 夫 す る こ と に よ っ て リス ク に対 す る態 度 が α
=0で あ る エ ー ジ ェ ン トは契 約2を 選 択 し,リ ス ク に対 す る 態 度 が α>0で あ る エ ー ジ ェ ン トは 契 約1を 選 択 す る とい っ た,自 らが リス ク に対 す る 態 度 が 明
らか に な る よ うに 契 約 を選 択(自 己選 択)す る こ と に な る。
さ て,契 約 の設 定 の しか た に よ っ て は ス ク リー ニ ン グ効 果 で エ ー ジ ェ ン トが 自 らの リス ク に対 す る態 度 を 明 らか に す る誘 因 が あ る こ とは わ か っ た が,プ リ ンス パ ル に と っ て この 装 置 の 導 入 は好 ま しい もの な の だ ろ うか 。 今 の例 で 検 討 し て み よ う。 賃 金 契 約1で は エ ー ジ ェ ン トの リス ク に対 す る 態 度 に 関係 な く, エ ー ジ ェ ン トは契 約1を 好 む こ とが わ か っ た。 また,賃 金 契 約Hで は リス ク に 対 す る 態 度 が α=0な エ ー ジ ェ ン トは契 約2を,リ ス ク に対 す る 態 度 が α>0
な エ ー ジ ェ ン トは 契 約1を 好 む こ とが わ か っ た。そ の富 の 差 を比 較 して み よ う。
式㈹,㈹ よ り
{v。一(m。 一 〃z)}‑v.=v。‑v.‑m。‑m
一π 無 … π 篇 吻 一(ασ2爾)2>・
つ ま り,賃 金 契 約Hの 方 が若 干,富 は 多 い 。 よ っ て ス ク リー ニ ン グ の装 置 設 定 の 誘 因 を プ リ ンスパ ル は持 っ て い る こ と に な る 。
この よ うな 例 は現 実 社 会 に も多 く見 られ る。 例 え ば ス ポ ー ツ ク ラ ブ で は 会 員 に何 種 類 か の 契 約 を設 定 し て,希 望 者 に 自由 に選 択 させ る こ とに よ っ て お 互 い の 利 益(会 員 に と っ て は 一 番 得 な 条 件,ク ラ ブ経 営 者 に と っ て は会 員 数 の増 加) に つ な が る 。JRで あ れ ば利 用 頻 度 の 高 い 人 に は 定期 や 回 数 券 の 設 定 を した り して,利 用 頻 度 の低 い 人 と自 由 に 選 択 で き る よ う に して い る。 また,最 近 で は
エー ジ ェ ンシ イ理論 に よる分 権 的 システ ムの研 究55
携 帯 電 話 や イ ン タ ー ネ ッ トの利 用 で 細 か な 料 金 設 定 を して,利 用 者 を増 や そ う とす る電 話 会 社 や プ ロバ イ ダ ー が 宣 伝 して い る。 つ ま り,契 約 の存 在 す る と こ ろ に エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 が 関係 して くる こ と に な る 。 こ こで は1対1の 場 合 に つ い て,契 約 も2種 類 と単 純 化 して 考 察 して き た が,契 約 を何 種 類 も設 定 して プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トの双 方 に とっ て 最 適 な 契 約 は 何 か を 明確 にす る こ
とが 今 後 必 要 と な る。
3.エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 の分 権 的 シ ス テム へ の応 用
こ こ まで,エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に つ い て単 純 化 の た め,主 に プ リ ンス パ ル と エ ー ジ ェ ン トが1対1の 場 合 につ い て,互 い の 最 適 化 の 行 動 と契 約 に つ い て考 察 して き た。 言 い 換 え れ ば,図1に 示 した よ う に,上 位 の もの と下 位 の も の と の 間 の 情 報 が 非 対 称 の場 合 の 最 適 な 関 係 を考 察 し て きた 。 しか し,現 実 社 会 の 組 織(例 え ば企 業)は 単 純 で は な く,上 部 構 造 か ら下 部構 造 に い た る ま で複 雑 な 中 間構 造 を持 っ て い る の が 普 通 で あ る。 論 文[1][2コ[3]に お い て も大 規 模 複 雑 な シ ス テ ム に つ い て 考 察 して い た。 しか し,情 報 の 非 対 称 性 につ い て の考 慮 は な され て い な い 。 そ こ で,図2に 示 す モ デ ル を想 定 して エ ー ジ ェ ンシ イ理 論 に よ る分 析 を行 う。
上位[PP]
〃 寒 國
〃 回
位下
黛 口
黛 国 〃 口
̲灘 睡 資 源配 分y
←
生産 κ
図2複 数 の プ リンスパ ル とエ ージ ェン トの例
こ の モ デ ル で は上 位 企 業PPが そ の 下 請 け 会 社PA1,PA2… 等 に 資 源.yを 配 分 し,そ の 見 返 りと して 生 産xを 得 る もの とす る。 同 様 に上 位 企 業PA1,
PA2… 等 が 下 請 け会 社A1,A2… 等 に資 源y(た とえ ば 下 請 企 業 と の 契 約 金)を 配 分 し,そ の 見 返 り と して 生 産κを得 る もの とす る。 つ ま り,大 規 模 な シス テ ム も部 分 的 に見 た 場 合,PPとPA1の 関係 やPA1とA1の 関係 は プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トの 関係 とみ な す こ とが で き る。 ま た,現 実 に はPA 1,PA2等 の 間 の情 報 の や り取 りも考 え られ る が,単 純 化 の た め こ こ で は こ の よ う な情 報 交 換 は無 視 す る。
(i)1対1の 場 合
最 初 にPA1(親 企 業 と呼 ぶ)とA1(下 請 企 業 と呼 ぶ)の 関係 につ い て 考 察 を行 う。 まず,基 本 的 な 関 数 を 前 述 の エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に合 わせ て 生 産 κ
と資 源 配 分y等 を使 っ て 表 現 し よ う。 親 企 業 の利 益 の 総 和 を2で 表 し,次 の よ うに 定 義 す る。2=q(x,θ)す な わ ち2は,下 請 企 業 の 生 産xと 外 的 な 要 因(リ ス ク)σ(た と え ば 「親 企 業 が 生 産 して い る 製 品 の 需 要 変 動 な ど」)で 決 定 さ れ, eは 正 規 分 布N(o,σ2)に 従 う もの とす る。
.yは 資 源 配 分 を示 す が.y=ッ ㈲ry@仇 ∂))が成 立 し,そ の 結 果yは 利 益2の 値 で決 ま り,つ ま り%θ の 関 数 とな る 。
下 請 企 業 の 生 産 費 用 をc(x)で 表 し下 請 企 業 の 利 益Uは 資 源 配 分 か ら生 産 費 用 を 引 い た もの で あ る とす る 。 す な わ ち
u@x,ツ)=ツ(ψ(x,θ))一一c(x)
親 企 業 の 実 質 の 利 益Vは 利 益 の 総 和 か ら資 源 配 分 を引 い た も の で2一 ッ ㈲ で表 す 。 す な わ ち
v(x,ツ)=2一 ニソ(2)=ψ(x,θ)‑y(ψ(x,θ))
さ て こ こ で,親 企 業 と,下 請 企 業 が 情 報 交 換 をす る状 況,つ ま り,親 企 業 が 下 請 企 業 の 行 動 を観 察 で き る と きは情 報 に対 称 性 が あ り,そ の 最 適 化 問 題 は次 の よ う に一 般 化 で き る。
下 請 企 業 は利 益 関 数 ひ(x,.y)を 最 大 にす る よ う に生 産 す る。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の 研 究
す な わ ちU(x',y)=max{U(x,y)1κ ∈X}
同 様 に 親 企 業 は 利 益 関 数7(x,.y)を 最 大 に す る よ う に 資 源 配 分 す る 。 す な わ ちV(x,y")=max{V(x,.y)ly∈}・1
57
親 企 業 と下 請 企 業 の 利 益 関 数 を最 大 にす る組 み 合 わせ(賦 ッりが 最 適 解 と な る。
次 に,親 企 業 と下 請 企 業 が 情 報 交 換 を し な い状 況,つ ま り,親 企 業 が 下 請 企 業 の 行 動 を観 察 で き な い と き は情 報 に 非 対 称 性 が あ り,そ の 最 適 化 問題 は 次 の よ う に 一 般 化 で き る。
も ち ろ ん,親 企 業 と下 請 企 業 は そ れ ぞ れ 利 益 関 数 を最 大 に す る よ うに 行 動 す る の で あ る が,エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ れ ば 親 企 業 は 下 請 企 業 の 生 産κを 観 察 で き な い 。 つ ま り生 産 κは 資 源 配 分 ッ で しか 制 御 で き な い の で あ る。 また,外 因 性 の値 勉 に よ って も制 約 を受 け る。 こ れ は 下 請 企 業 の 利 益 関数 が 値 勉 以 上 で な け れ ば 下 請 企 業 は他 に も っ とい い 条 件 を提 示 す る親 企 業 と契 約 す る か ら で あ る。 これ らの制 約 条 件 は 次 式 で 表 され る。
κ=φ ω;生 産xは 資 源 配 分yで き ま る 関 数 とな る 。
U(x, .y)≧〃z;下 請企 業の利益 関数が ある値m以 上 の と きの み 契 約 は成 立 す る。
つ ま りこの 場 合 の 最 適 化 問 題 は
σ(嬬y)・max{σ(X,ッ)[X・ φ(y),X∈X}
V(X,ッ 凱)=maxlV(X,y)IX・ ・φty),U(X,y)≧ 〃Z,.y∈M と な り,最 適 解 は(鳩,y劣m)の 組 み 合 わ せ で あ る。
こ れ ら を数 理 計 画 法 の一 般 的 な表 現 に 直 す と
情 報 が 対 称 の 時 親 企 業 Mexv(x,.y)
s%毎 θ6μ09P(x,.y)≦0
情 報 が 非 対 称 の 時 親 企 業 Mexv(x,y)
下 請 企 業 撫 σ(的 ッ) subjectto9。(x,.y)≦0
下 請 企 業 Mexσ(x,y》
subjecttogP(x,y)≦Osubjectto9。(x, .y)≦O u(x, .y)≧mx=di(y)
と い う よ う に ま と め ら れ る 。 こ こ で9pとg、 は そ れ ぞ れ 親 企 業 と 下 請 企 業 の 独 自 の 制 約 条 件 で あ る 。 さ ら に κ=φ ω と い う よ う に κが 夕 の 関 数 に な る こ と を 考 慮 す る と,結 局
σ(x,y)=σ(φ(y),)〜),7(x, .y)=7(φ(y),ツ),σ(φ ω,.y)≧ 〃z
と な り,す べ て の 関 数 が γの 関 数 に な る の で,最 適 化 問 題 は 次 の よ う に な る 。
親 企 業 下 請 企 業
Mexv(y)Maxσ ω
subjectto飾 ω ≦Osubjectto9、 ω ≦0
σ ω ≧ 〃z
(li)1対nの 場 合
図2に お い てPA1(親 企 業:プ リ ン ス パ ル)とA1,…,An(複 数 の 下 請 企 業:エ ー ジ ェ ン ト)の 場 合 に 拡 張 し て 考 察 を 行 う 。 親 企 業 か ら 各 下 請 企 業 へ の 資 源 配 分 を 防,各 下 請 企 業 の 生 産 を 萌 と す る と,親 企 業 が 各 下 請 企 業 か ら 得 る 利 益 の 総 和 名 は 名=ψ,似,∂)で あ る 。 つ ま り,属 は 生 産 κ∫と外 的 な 要 因 ∂ の 関 数 で 表 さ れ る 。 ま た,資 源 配 分 ッ、は 名 で 決 定 さ れ,ッ 戸 ッ∫㈲=ッ 、@、 仇, θ))とな る 。各 下 請 企 業 の 生 産 費 用 をo㈲ で 表 す と 各 下 請 企 業 の 利 益 関tWU,は, す な わ ちU,=U,(x、,Vi)=.Yi(90i(κ 、,の 一〇 ㈱
親 企 業 が 各 下 請 企 業 か ら 得 る 実 質 の 利 益 砿 は 名 と ッ、の 差 で 表 さ れ る 。 す な わ ち
v,=Vl,(Xi,.yi)=2‑ .yt(2)=ψ1(Xi,6)一 ニソi(90i(Xi,θ,))
よ っ て,親 企 業 が 各 下 請 企 業 か ら 得 る 実 質 の 利 益 全 体Vは そ れ ら の 総 和 と な る 。 す な わ ち
v(x,y)=ΣVi,(ti'.yi)=Σ(2,一.yi(2)
'∫)=多(op,(x,,e,)一.y,(go,(x,,e)))
た だ し,x=(κ1,・ …,κ,、),y=(Yi,・ …,.Yn)で あ る 。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の 研 究 59
さて こ こ で,親 企 業 と,各 下 請 企 業 が 情 報 交換 をす る状 況,つ ま り,親 企 業 が 各 下 請 企 業 の 行 動 を観 察 で き る と き は情 報 に対 称 性 が あ り次 の よ うに 最 適 化 問 題 は 一 般 化 で き る。
各 下 請 企 業 は 利 益 関 数 α 侮,.y、)を最 大 に す る よ う に 生 産 す る 。 す な わ ちUi(嬬 ッ、)=maxlUi(π 、,.y,)1κ、∈Xi}
こ こ で κ㌔(君,… ・,κ劣)とお く。
同 様 に 親 企 業 は 利 益 関 数 γ(x,y)を 最 大 に す る よ う に 資 源 配 分 す る 。 す な わ ちV(x,yう=max{ΣZ(x,,.y,)1.y,∈Yil
ゴ
こ こ で ゾ=(γf,・…, .y莞)とお く。
親 企 業 と各 下 請 企 業 の 利 益 関 数 を最 大 に す る組 み 合 わ せ(誠yう が 最 適 解 と な る。
次 に,親 企 業 と各 下 請 企 業 が 情報 交 換 を しな い 状 況,つ ま り,親 企 業 が 各 下 請 企 業 の行 動 を観 察 で きな い と きは情 報 に非 対 称 性 が あ り次 の よ う に 最 適 化 問 題 は一 般 化 で きる 。
もち ろ ん,親 企 業 と各 下 請 企 業 は そ れ ぞ れ の 利 益 関 数 を 最 大 にす る よ う に行 動 す る の で あ る が,エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ れ ば 親 企 業 は各 下 請 企 業 の 生 産 κε
を観 察 で き な い。 つ ま り生 産 κゴは資 源 配 分 黄 で しか 制 御 で き な い の で あ る。
ま た,外 因性 の 値 〃z、に よ っ て も制 約 を 受 け る 。 こ れ は各 下 請 企 業 の 利 益 関 数 が 値%以 上 で な け れ ば 各 下 請 企 業 は他 に もっ と い い 条 件 を 提 示 す る親 企 業 と 契 約 す る か らで あ る。 こ れ らの 制 約 条 件 は次 式 で 表 さ れ る 。
κ,=φ(γゆ 生 産 κ、は 資 源 配 分 ッ、で き ま る 関 数 と な る 。
Ul,(Xi,.Y、)≧m、 各 下 請 企 業 の 利 益 関 数 が あ る 値 〃z、以 上 の と き の み 契 約 は 成 立 す る 。
つ ま り こ の 場 合 の 最 適 化 問 題 は α 輔 ツ♪ ・max{U、(X、,ッ 、)IC,=φ(yi),xi∈X,l
V(鵡 轟)=max{ΣVI,(Xi,yi)IXi=φ(yi),U,(Xi,.Yi)≧ 〃Ztsyi∈Z}
ゴ
こ こ で 鵡=(肩,・ …,κ 凱y劣 汗(鐙,…', .lyel,)とお け ば, 最 適 解 は(轟,yち)の 組 み 合 わ せ で あ る 。
こ れ ら を 数 理 計 画 法 の 一 般 的 な 表 現 に 直 す と
情 報 が 対 称 の 時i(i=1,2,…,n) 親 企 業
Mexv(x,y)=Σv,(Xi,Yi)
ゴ
subjecttogP(Xi,yゴ)≦0
情 報 が 非 対 称 の 時i(i‑1,2,…,〃) 親 企 業
Maxv(x,y)=ΣVl,(Xi,.yi) ガ subjecttogP(κi, .yi)≦0
α(銑,ツ,)≧ 働
各 下 請 企 業 漁 α(κ ガ,ツ∫) subjectto9α(Xi,.yi)≦0
各 下 請 企 業 漁 α(κ 、,ツゴ) sabjectto9、(Xi,.yi)≦0
垢=φ ω
とい う よ う に ま と め られ る 。 こ こ で9pとg、 は そ れ ぞ れ 親 企 業 と各 下 請 企 業 の 独 自 の 制 約 条 件 で あ る。 結 局,制 約 条 件 が 不 等 式 で 表 さ れ る 数 理 計 画 法 の 問題 に一 般 化 で きる こ とが わ か るが,そ の 考 察 は今 後 の 課 題 と し よ う。
4.結 言
大 規 模 複 雑 な 分 権 的 シ ス テ ム の解 析 の た め に 情 報 の非 対 称 性 に注 目 し,エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 を適 用 した 結 果,以 下 の 結 論 を得 た 。
(1)プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トが1対1の 場 合 につ い て プ リ ンス パ ル が 提 示 す る 賃 金 計 画 ρ,観 察 で き ない エ ー ジ ェ ン トの 努 力κにつ い て の 考 察 を した 。 (2)主 に線 形 モ デ ル を想 定 し,エ ー ジ ェ ン シ イ の努 力 はx賃 金 計 画pで 決 定 さ れ る こ と,賃 金 計 画 は 固 定 給 部 分 と歩 合 給 部 分 を適 切 に 設 定 す る こ とが 重 要 で あ る こ と を確 認 した 。
エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 に よ る 分 権 的 シ ス テ ム の研 究 61
(3)プ リ ンス パ ル の 側 か らは,エ ー ジ ェ ン トの 努 力xを 誘 引 す るた め に は 多 少 の コス ト(エ ー ジ ェ ン シ ィ コス ト)が 必 要 で あ る こ と を確 認 した 。
(4)別 の線 形 モ デ ル を想 定 し,エ ー ジ ェ ン トの側 か ら は た とえ多 少 効 率 が 落 ち て も,何 らか の信 号(モ ニ タ リ ン グ ・シ グ ナ ル)を 発 す る誘 因 が あ る こ と, ま た プ リ ンス パ ル も これ を好 む こ とを確 認 した 。
(5)さ らに プ リ ンス パ ル の 側 か ら見 る とエ ー ジ ェ ン トの タ イ プ(こ こで は リス ク に対 す る態 度)は そ の 厚 生 の 増 加 の た め に は極 め て 重 要 で あ り,コ ス トを な るべ く掛 けず に エ ー ジ ェ ン トの タ イ プ を 自 らが 明 らか にす る 賃 金 契 約 の 方 法(ス ク リー ニ ング)を 考 察 した 。
(6)大 規 模 複 雑 な分 権 的 シス テ ム に エ ー ジ ェ ン シ イ理 論 を応 用 す る た め,賃 金 計 画 ρ の代 わ りに 資 源 ッ と し,努 力 κの代 わ りに 生 産 劣と した。 まず,プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トが1対1の 場 合 に お い て,情 報 の 対 称,非 対 称 の場 合 を数 理 計 画 法 の 問題 と して一 般 化 した。
(7)次 に プ リ ンス パ ル とエ ー ジ ェ ン トが1対nの 場 合 に お い て,情 報 の 対 称, 非 対 称 の場 合 を数 理 計 画 法 の 問 題 と して 一 般 化 した 。
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