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小学校の器楽教材について

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

小学校の器楽教材について

著者 奥 忍, 安田 香, 植田 良子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

12

ページ 29‑42

発行年 1976‑03‑25

その他のタイトル On the Instrumental Material in Primary School Education

URL http://hdl.handle.net/10105/6354

(2)

小学校の器楽教材について*

奥  忍安田 香植田良子榊

 (音楽教室)   (滋賀大学教育学部)   (音楽教室)

 音楽の授業は,学年が進むに従って,児童に好まれなくなると云われている二我々も先の研究にお いて,同様の結果を得ている二叉,好まれなくなる原因として,歌唱,鑑賞夫々に共通した問題と,

固有な問題が存在しており,特にその教材に問題が集中していることが分った。我々は今回は器楽を とりあげ,これまでの研究と同様の方法で,即ち,児童と小学校教師にアンケート調査をし,その結 果を教材の分析とつき合わせる,という方法で,器楽教材の持つ問題点を明らかにしようと試みた。

      方        法

調査期間昭和50年4月

調査対象 京都市内の市街部小学校4校と中学校2校の児童生徒。各学年の器楽教材全てに亘って調      査する必要があるため,新学年の4月に調査を行ったが,教材と学年の混同をさけるため,

     対象児童生徒の学年を1ヵ月前の3月の学年で示す。人数の内訳は次の通りである。更に      京都市立小学校の教師45各使用教科書は音楽之友社発行改訂新版小学生の音楽1〜6。

      表1 調査対象,児童の人数内訳

学年 6  5  4  3  2  r

89    79    ア9    52    フ8    69   446

ア8    ア7    82    59    プア    ア8   451 167   156   161   1「1   155   「47    897

      結        果

I 児童の77.5%は器楽を好んでいる。これは歌唱(30.5%)や鑑賞(70.1%〕に比して高い比率  である。特に女子に好きな者が多い。一方嫌いな者も各学年を通して存在しており,その比率は鑑 賞より多い。又歌唱と同様に最高学年で好きな者が減り,嫌いな者が増加することが注目される。

 (図1〕

*  0n the Ins trumenta1M乞t er i a l i n Pr imary Schoo1Educa t i on

淋  Shinobu Oku lDepartment of Music,Nara Universi ty of Education.〕

   Kyo Yasuda(Department of Mus i c,Shiga Uni versi ty、〕

   Ryoko Ueda(Department of Musi c,Nara Uni vers i ty of Educat ion.)

(3)

図1 学校の音楽の時間で楽器をならすのは好きですか。

   好き→20→40→60→80→100%654321児 好き→20→40→60→80→10{@      ♂      9

r

宙鼈鼈

童全体 きらい

100%←80←60←40←一一一20←きらい

皿 器楽の指導をしやすいと感じる教師は58.9%いるが,我々の先の調査でも歌唱についでやりゃす  い分野になっている。しかし歌唱や鑑賞と異って,教師自身が奏することの嫌いな老が1313%もお  り,好きな老も66.7%と鑑賞よワ少なべ

皿 器楽の好きな理由は,合奏すると楽しいから,が最も多く,好きと答えた者の75.3%を占めて  いる。一人でならすのが好きだから,と答えた者は同じく13.4%であり,器楽即合奏の観がある。

 (表2)

V 器楽が嫌いな理由は,何よワもまずむつかしいから,であり,嫌いと答えた者の52.7%を占める。

V 74.7%の児童は,家でも何らかの形で器楽の練習をしている。 これは、歌唱の場合学校では習  った歌を,家では歌謡曲をというパターンが既に2年生でできあがっているのに比べて興味深い。

 一般に女子のカがよく練習するが,特に5年では92,2%の女子が練習している。(表3)

w 全体的に鉱質打楽器が好まれる傾向が強く,鍵盤楽器は好まれないが,この傾向は特に男子に強  い。反対に太鼓類は男子が好む傾向にある。どの楽器も学年が進むに従って好きでな<なっていく  が,これは歌唱,鑑賞にも見られることであり,学校音楽に関する全体的傾向とも云えるものであ  る。(図2)

w 器楽の中で中心をなすふえ,オルガンについて,教師が指導しにくいと指摘するオルガン(指導し  やすい8.9%,しにくい62.2%)は児童も嫌りており(男子の41.3%が嫌っているが,それはあ  らゆる楽器の中で最高値であり,次のハーモニカを大きく引離している),比較的指導しやすいふ  え(指導し易い33.3%,しにくい20.O%)は児童も好んでいる。(好き57.3%,嫌い9.6%)

「㎜楽器を好む理由には「音がいい」をあげる者が多く(例えば鉄琴を好む者の中では63.5%)。嫌  う理由には「むつかしい」をあげるものが多い(例えばオルガンを嫌う者の中では7919%)。

X やったことはないけれど鳴らしてみたいのは,管弦楽器の旋律楽器である。(表4)

X 好まれる教材は器楽専用曲である。しかし,ふえの二重奏曲は好まれないが,三重唱を奏する場  合には好まれている。好まれないのは日本音楽である(表5)。これらについては後述する。

X−27.1%の児童が楽器を習っており(特に女子が多い),その62.1%がピアノ, 他はオルガン,

(4)

 エレクトーンである。

細 家で合奏する者が全児童の74.7%おり,㎜,Vと考え合わせると,学校音楽即ち歌唱とする明治  以来の「唱歌」からの脱皮が始まっており,しかもその契機が,学校音楽で主流となってきた歌唱  ではなく,現在でも音楽の授業の中心と考えられること少なく,教材の工夫などにも熱意の入れら  れることの少ない(副教材を使っている教師は37.8%)器楽であることが注目される。

表2 すき,ぎらいの理由悌)

合奏すると楽しい ソロがすき 歌わなくてよい そ の 他

75,3 13,4 10.9 2,8

レ、

むつかしい 歌うのがすき

うるさい その他

52,7 34.1 5,9 9.3

表3 家に帰うてからも練習しますか,はい    と答えた者殉

9

6   5   4   3   2   1

52,8  64,6  69,6  51,9  62,8  62,3 89,7  92,2  90,2  91,5  79,2  85.9

図2  80 す60

き40

↓20

↑20 さ40

 9、・1t1、、

211

 80  ⑭す4口

↓20

↑20 さ40 宗60

けんばんハーモニカ

 80  60 す40  20

↑20 さ40b い60 80

 80 す60 き40

↓20 す20 さ40 汽60

(5)

小たいこ 80

 60キ40一

ォ↓20一

I

I 1

1

↑20 さ40@60

80

楽器名

男  女 全体

トランペット 19.ア  8.3 13.9 アコーデオン 8.ア  15.ア 12,3

フ ル 一 ト 9,2  13.3 11.3

鉄   琴 7,6  13.5 10.6

ヴァイオリノ ア.2  13.3 10.3 ギ  タ  一 9.9  8.6 9,3 ドラム・ダイコ類 12.6  3.1 ア、6 ハ  一  プ 1.6  7.1 4.3

クラリネット 4.0  1.8 2.9 表4 ならしてみたい楽器

表5 好まれる教材と好まれたい教材

曲 名 拍子 速度 施 法

2436 緩中魚 durm11陰

器楽用嬉歌なし歌あり用 ふオアけハ  1すカタト  シ.   鉄木1   大小πルコんモ  =ずスソラ  ン

6 ポギー大佐

O O O

O・O ・○Ol  OOO

思い出

O

ゴー口

武名はカウボーイ

O O O

O・○・・○○1   00

好 5 いかワをあげて

O

OOOOOl  O○

ラクカラチヤ

O

   一

Z○01 00=  ○ ○O○

星の世界

O

=一口

春の風

O O O

二一口

4 スケータ■スワルツ

O

○O○○○O1 ○○○○○   一

とんび ○OO・・ 1 ・O

夜汽車 ニロ

3 ポソポソピアノ

O

○○ ・O1OOO○

アンダルコの歌 O

O

D

   一 Z  一i

楽しいワルツ回転木馬

O

O O O

D

   一

宦宸nOl OOO

  一一      一       一    一

2 古い木馬 OOO= O   .

カッコ■ O

O

 一Z・○1

春がきた

O

ニロ

たきび

O

1 OOl 一

おうま ○OOOl OO   .

6 オーセの死

O

D ○   l   I

清水の観音様

O O O

D O   =   ■

5 とんとんお寺の

O

O・○○ミ手拍子・足拍子

チロルのうた

O

D O   l   一

古いイギリスのうた

O O

D O   !   一

古いフランスのうた O D 0   1   .

あの山の

O O

D O

子もりうた

O

D

O   l

4 茶色のこびん

O O

D ○   1

D・・・…二重奏 一.II .謫ワコつきの

(6)

考        豪

以上の結果から,小学校における器楽は、他の領域よワ好む者は非常に多いが、それでもなお、い くつかの問題点が残ることがわかる。以下にそれを考察する。

1 日本音楽について

 歌唱,鑑賞と同様に,日本音楽は器楽においても好まれていたい。歌唱の調査では,好きな曲に わらべ歌を挙げた児童は全くいなかった。鑑賞では,忘れてはいないが嫌いな曲として日本音楽が あった。器楽では教材数が歌唱より少ないためもあるが,児童自らわらべ歌の題名を記した者が全 学年合わせてわずか4名である。教材に用いられる日本音楽は全てわらべ歌であるが,その扱われ 方には二通りの方法がある。

   1. ふえのテクニック習得のためのもの0

   2.器楽をすることによって日本音楽独特の音感覚を身につけることを狙いとするもの。

  1はわらべ歌の持つリズムと音高の単純性と児童の持つ音感覚の内在性を手がかりに,器楽への導 入をはかるものであワ,同様の試みが創作においてもなされている。4分音符のラ,シのみを使う わらべ歌で,音を出すこと,タソギソグ,指を教え,その後徐々に音が増し,リズムが複雑になり 様々な役割(対旋律,オブリガート,重奏,合奏)に広がっていくふえの教材配列は絶妙とも云え

るものである。

 2にあたる教材は4曲でてくる。出典は4県にわたっておワ,地方的な偏ワはないが,児童自身の 地方のものもない。全て陰旋法であワ,内3曲はてまり歌である。「あの山の」と「清水の観音様」

は考察㎜で述べる二重奏で復旋律の手法をとっている。r花でまワ」は歌にふえの対旋律と手拍子,

 「とんとんお寺の」はリズム合奏用教材で,ふえの旋律に,鉄琴,木琴,手拍子,足拍子でリズムや 装飾を入れるものである。1年から6年まで全て洋楽器の器楽の中で,日本音楽をとり扱うには全 世界共通の手・足拍子しかなく,そのためにはリズムの要素の強い手まワうたを載せる外はないの である。

  器楽において日本音楽が好まれるためには,歌唱,鑑賞に共通した諸問題の解決と,楽器編成法 の二方向からのアプローチが必要とされよう。

皿 オルガンについて

  昭和43年の学習指導要領の改訂に当って,「器楽」については楽器の種類の精選が つのポイソ  トとされた。そしてその精選された楽器の中で,オルガンのみが1年から6年まで必修のものとさ  れたのである。 (なお,オルガンは昭和36年実施の第3次学習指導要領で,既に全学年必修となっ  ていた。)しかしオルガンは児童(特に男子)に好まれていない。 (結果V1,W)これが何に起因

するかを以下に考察したい。

 1.オルガン特有の難しさについて

   昭和37.38年に文部省の初等教育音楽実験校に指定され・「旋律楽器のつまづきとその指導」

  の研究を担当した横浜市立小幡小学校のレポートによれば,「オルガンのつまづき」は以下のよ

(7)

うである。3

 オルガンのつまづき

  (1)音をまちがえる。 (原因)・音位置が理解されていない。・指使いが悪い。

  12)音が重なる。   (原因)・指から指への移動が悪い。

  (3)和音の音がまばらになる。 (原因)・タッチがそろわない。・平均した深さで鍵盤が押     えられない。

  (4) リズムが狂う。 (原因)・音が切れる一指の上げ方が早い。 ・音が短くなる一指    から指への移動が悪い。 ・音が遅れる一タッチが遅くなる。また,指から指への移動    が遅い。 ・音が延びすぎる一指の上げ方が遅い。

  (5)次第に強くしたワ弱くしたりすることができない。 (原因)・スエルが急に開いたり,

   急に閉じたワしてしま㌔  ・指使いと足(ペダル)のパラソスがとれない。

  ところで,最初のつまづきである「{1)音をまちがえる」を克服するためには,オルガンの場合 は,指広げ,指縮め,描くぐり,指越え,ポジシ目ソ替え,といった関所を通らねばならない。

こうした困難さを経て両手演奏をものにした上で,更に12ト(5)のつまづきを克服していくのは決  して容易なことではない。指導要領では以下の様な抽象的段階づけしかなされていないのである

から,オルガンのテクニック上の問題は教科書と現場教師に任されてしまっていることになる。

  指導要領によるオルガンの段階づけ4   (1年) オルガンで簡単な旋律をひくこと。

  (2年) オルガンで旋律をひくこ』

  (3年) オルガンで旋律や和音をひくこと。

  (4年) オルガンで旋律をひいたワ,その旋律に合わせて他の旋律や和音をひいたワするこ       と。

  (5年〜6年) オルガンで旋律や簡単な伴奏をひくこ』

2.教師の指導

  ところが結果Wにみたよラに教師の62,2%がオルガンは指導しにくいとしている。多くの教師 が「個別指導を必要とする」「個人差がありすぎる」をその理由として挙げている。鍵盤楽器を 学外で習う子供が多いことは周知であるが,これが個人差の一犬要因となっていることは否定で  きないであろう。しかし個別指導を必要とするような難しさをオルガンが備えていることと,個  人差の問題とは,切り離しては考えられない。即ち,1で述べたテクニック上の困難さの克服に  は指導に相当の労力と時間がさかれねばならず,それが現在の授業では実現不可能であワ,その

結果落ちこぼれの児童が多く生じることとなる。全日本器楽教育研究会編『オルガンと音楽教育』

 に示されたオルガン指導の成功例5は,いずれをとってみても,オルガン指導を音楽の授業の柱  とし,場合によっては学校全体の主目標とまでして労力と時間を注いだ結果であり,普通の授業  の中では不可能である。

3 教科書の扱い

  オルガンでは1でみたよう次テクニック上の困難さが次々に訪れ,一つの新たなテクニックを

(8)

習熟せぬ間に次の新たなテクニックが導入される。ことに3年以降にこれは著しく,新しくふえ をも学ばねばならない児童にとって大きな負担となる。3年生では左手秦,指ちぢめ,ポジシ目  ソ書え,スエルによる強弱変化等の,4年生では黒禦秦指越え,両手秦等の新たなテクニッ クを学ばねばならない。また,4年生では、音階理解に鍵盤が利用される。ここに起る児童のオ ルガン拒否反応は,図2にも明らかである。(復習の多い2年生で1年生よワ減少したrオルガ  ソ嫌い」が3,4年と再び増えている。)

  ここでふえの学習についての教科書の扱いを検討してみると,オルガンの場合とは対照的にテ  クニックの習得のための極めて慎重な配慮が施されている。 (考察1,㎜参照)タソギングや高

音の出し方,左手と右手相互の移行といったテクニックの上で予測されるつまづきは再度の復習 によって無理なく克服される。ふえが教師にとうて指導しやすく,児童も抵抗なく受け容れる  (結果w参照)ことができるのは,教科書の適切な扱いによるところが大きいといえる。

  こうして器楽の指導は3年生以降はふえを中心に,ふえについては確実な成果を挙げながら進 められ,オルガンはテクニック習得に必要な最少限の時間もかけられずに個人差が出るままに進 んでいく。

  また,音階を中心とする「基礎」事項の理解にオルガンが利用されることも,高学年でオルガ  ソ嫌いを増加させる一因となっている。例えば5年の合奏教材「いかワをあげて」のオルカソバ  ートで児童は初めてへ音記号を目にするが,実際にオルガンで音を出して新知識を納得できるほ  ど児童はこの楽器に習熟してはいない。こうして,弾ける児童を除いて,オルガン=鍵盤=知識  という公式ができ上ってしまうのではたいだろうか。実際5,6年の教科書にはオルガン又はアコ ーディオン,鍵盤ハーモニカ等の鍵盤楽器の演奏は弾ける児童に任せよう,といった態度が見う けられるのである。 (これについては考察1Vを参照のこと)

4.オルガンの必要性

  以上述べたように,児童にオルガンの習熟を望むのは極めて困難であるが,オルガンを小学校 音楽で必修とする理由は何であろうか。真篠将氏旧はその理由として,

 ω 音楽に対する興味を深めることができる。

 12〕正確な音感を養うことができる。

 f3)音楽のいろいろな活動を豊かなものにする。

 14)音楽学習の背景となる楽譜に関する学習を容易にする。

 を挙げておられる。以下これについて考えてみたい。

 ω ピアノが普及した昨今,オルガンはピアノの代用品とみなされる風潮が強い。オルガンはあ    こがれの対象とは言えない。

 12)他の楽器と比較して正確なピッチを有すること,ハーモニーが出せること,音感を養うの   に有用であること,は事実である。しかし真篠氏の挙げておられるフレーズ感の養成の点で   は,むしろ急使いが直接反映するふえの方がよワ有用と考えられる。

 (3〕少なくとも現在小学校で使用されているオルガンは,氏の述べるように人声に近いとは言い   難い。だがしかレ法 ・舎歳余虫垂ると二は他あ桑翻と左ゴ・壷味であり,また着1』作指劫三後利

(9)

   なことも事実である。

 (4)桑譜に関する学習の助けとなることも確かである。

  点を施した部分はオルガンのメリットとして背ける箇所であるが,12),(3)のメリットが発揮さ れるためには現在の指導では不十分である。また(4)についていえば,このようなオルガンの利用  の仕方が児童のオルガン嫌いに拍車をかけていることを忘れてはならないであろう。

5.楽器産業との結びつき

  小学校音楽教育でのオルガンの重視と器楽産業との強い結びつきについては,河口氏の綿密な        ?

 レポートがある。それによれば「楽器業界では楽器が欲しい人をふやすため,文部省に協力して 器楽教育を盛んにさせることに努めてきた」と業界自身が公言している。そして業界は,オルガ  ソはじめハーモニカ,木琴,鉄琴を一年生から必修にした昭和33年の新指導要領が発表されてホ  ッとしたと述べている。また前掲書『才ルガンと音楽教育』にも,小学校にオルガンを送ワこむ のに業界がいかに協力したかが記されている二 (なおこの本の発行自体が業界の宣伝を兼ねてい  る。)

  4で考察したオルガンのメリットを真に発揮するには教師にも児童にも多大な負担があること について充分な配慮がなされないままに,オルガンは必修にされている。楽器産業との結びつき  の問題をも含めて,オルガンについては再検討が必要であろう。

皿 ふえにっいて

  3年から始まるたてぶえは,6年男子で好む者が激減する(図2)ものの,主要楽器であるオル  ガンと比較すれば好む者は他く,嫌いな者は少ない。又家で器楽の練習をする者は全体で74.7%

 を占めるが,その多くはハーEニカ(低学年),ふえ(高学年)と考えられる。たぜたらピ7ノ等を  習うている者は全体で5.O%にすぎないからである。叉既に述べたように,ふえは教師にとって指 導しやすい楽器のようである。ふえは教育の現場に大きな混乱をもたらすことなく,教師にも児童 にも受け入れられているといえよう。

  教科書に載せられているふえの教材は次のように分類できる。

  1、元来器楽用の曲を器楽合奏用に編曲したもの

  2、歌唱用の曲をふえでも奏してみるもの(3年まで),又はふえで対旋律をつけるもの   3.民謡やピアノ曲等をふえの二重奏に直したもの

  4.合唱用教材を教師がふえて奏させるもの

  これらの中で児童の多くが好むのは1,4であり,2については昭和48年度の調査による歌唱教材  と一致する曲が挙げられている。ふえにょる二重奏(3)は好まれない。何故か。他の教材と比較する

 と,

    調性      原曲       様式      形式

  1 長調    ブラスバンド用   軍隊用行進曲,舞曲  曲の一部であるがA−B−A   2 長調    民謡       民謡        A−B完結

    短調叉は  民謡,管弦楽の弦  民謡,ロマン派無

  3 陰旋法   の部分,ピアノ曲  言歌風        曲の一部1a bが多い

(10)

となる。即ち,器楽においても鑑賞や歌唱で好まれない教材と共通する要素を持つものが好まれて いない。叉,そのような要素が二重奏に集中してあらわれていることがわかる。児童はあらゆるジ ャンルで長調を好み,短調や日本旋法を嫌っている。鑑賞の時に曲全体を聞くことを望んだ児童は,

ここでも叉,曲のごく一部,テーマしかない二重奏に関心を示さない。バロック音楽を「ふるくさ い,陰気くさい」と評する児童は,旋法による曲,擬古典的な曲を好まないのである。又,二重奏 が,特に頻出する5年において,ふえの新しいテクニックを習得する場としての役割が与えられて いることも,好まれない理由の一つではないであろうか。更に,教材以前の問題であるが,たてぶ えの音程の不安定さも一因ではなかろうか。40人弱の児童が一斉に吹く音の異様さはしばしば指摘 される8ところであるが,複旋律を奏することによって生じる差音の雑音は,実音の不協和以上に曲 の美しさを殺すといえよう。二重奏は二人で奏した時はじめて美しい音の可能性が開けてくるので

ある。

lV 器楽合奏について

  器楽合奏用に編曲された教材は,前述の「とんとんお寺の」を除いては好む者が非常に多い。器  楽教材の中でもとワわけ好まれるのが合奏用教材であワ,児童も合奏の楽しさゆえに器楽を好んで  いるのである。しかし6年になると合奏用教材の魅力が薄れてくる。ポギー大佐は他学年の教材ほ  どは支持されておらず,叉器楽を好きと答える者が減り,嫌いと答える男子が増えること(図1)

 は器楽自身の中に,やる気をなくさせ,面倒がら世,むつかしがらせ,つまらなくさせる何らかの  要素が存在するからではないだろうか。音楽の授業はわずかながら5年生より6年生の方が好み,

 鑑賞では特に好むものが急増するのであ飢

  器楽のおもしろさは,その楽器固有の音色と,それを生かしたリズムや音型が,他の楽器といか  にかかわりながら音楽をかたちづくっていくか,というところにある。考察㎜で述べたように児童も器  楽を好む第1の理由として音色をあげているが,その音色が生きるか死ぬかは,楽器に与えられた  リズムや音型がその楽器に適したものであるかどうかにかかっているのである。しかし合奏教材は  「同一声部の.速さ,強さ,音色などに気をつけ,他の声部を聞きながら,音の重なワやひびきの美       9

 しさに気づいて合奏する」ために作られているのではなく,「リズムフレーズの拍の流れを感じと  りながらリズム打ち1O」するために作られた,としか言いようのない編曲である。歌唱教材で新曲  が・.既成曲では拾えない「基礎」の項目を補充するために存在したように・リズム楽器は他の領域  では困難と思われるリズムフレーズの拍の流れを感じとらせるための手段となっている。リズムフ  レーズとは,「拍子にのったリズムのまとまワ,あるいは句切ワn」を指しており,教材に用いら  れているそれは全て4小節である。リズムフレーズの拍の流れとは,そのフレーズのリズムを支え  ている「拍の動きやおちつき,そのまとまり12」のことであワ,実際には最後拍を休符にした4小節  の拍子打ちと.してあらわれている。しかも教材においては4小節でリズムフレーズが成り立つこと  を徹底して感じさせるために,曲の内容と無関係な様々な工夫が凝らされている。例えば旋律の流  れを分断する打楽器の拍子打ち,4小節毎に交替する楽器の音色。叉さらに標準的な奏法が,拍子う  ちではやかましく響くシンバルは,一対の中の一枚のみを大ダイ]の嬢で打つという変則的な奏法

(11)

のみが導入される。これらの努力が目指すリズムフレーズの習得は・その児童の音楽に一体何を持 たらずのか。「リズムフレーズ」は現在のところ音楽学関係の書籍には見出すことのできない・教 育音楽用語である。

 譜例1はリズムフレーズの思想の一例であり・器楽教材のこの傾向は6年3学期のポギー大佐に 至るまで一貫してみられるものである。ポギー大佐は6年間の器楽教育の全てを結集したものと思 われるので,この曲を分析することによって,合奏教材1ひいては器楽教材のもつ問題点を明らか にしたい。 (譜例2)

〔譜例1〕

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〔譜例2〕

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(要〕

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(12)

 この編曲にあらわれる要素は,1.リズムフレーズの拍子うちと拍子うちに合致して動く低音,及 びうらうち,2.曲の構成を無視した楽器の交代(パにおけるシソパル)と音型の変化(亙のア コーデオン皿),3.唯一の対旋律(κからのふえ,パからρ鉄琴)である。即ち本来ブラスバン ド用のこの曲を,指導要領の線に沿って,教育楽器を用い,音楽的に単純化したものと言えるであ ろう。次に,この編曲の問題点を考えよ㌔

1.大太鼓とシンバルは拍子うちに適しているか。これらの楽器が間断なくリズムフレーズを打つ  Iことによって,この曲は効果的になっているか。オーケストラの中では「犬太鼓は力性的,リズ  ム的,および色彩目的のために用いられる。その効果は総譜中に用いられる頻度に反比例して減  少する。大太鼓のパートには音符が少ししか出てこないものである著」シンバルも叉,同様の性  格を持つ楽器である。これらの楽器をこの様に使用することによって,たとえリズムフレーズは  明瞭に聞きとることができても,その結果音楽に,明確すぎることによって生じる幼稚さ,音色  のさわがしさが生じている。特に前述のシソパルの標準的な奏法を歪め, ガの白熱した力 皿  を表現からはずす指導法は再考されねばならないであろう。

2. リズムフレーズが曲の構成とどの様に関わっているか。この曲は同種のリズム型から成る4個  の大楽節からできている。A1→A2で属和音へ移ったものが,パで戻ワ,ここでふえと鉄琴の助  奏が挿入される。A1 はAより複雑化されているが,リズム的にも旋律的にもAと全く同じである。

 ここで大太鼓をシソパルにかえ,新しいオスティナートリズムを導入し,更にアコーデオン皿の  リズムも新しいものと変化させることによって,属和音を経ての回帰感が希薄になってしまって  いる。リズムフレーズの思想は曲全体の構成と結びついてこそ音楽的な意味を持つものであワ,

 曲を部分に分断するものであってはならないと考えられる。叉,器楽の楽しさは音色の楽しさで  ある。リズムフレーズ万能型の編曲は,児童に,音色の変化に対する無感覚を養うことになるの  ではなかろうか。

3.旋律部分はメロディーと低音と助奏から成っている。内声ではなく,助奏が選ばれたのは,「対  旋律または副旋律」15に魅力を与える鳥とも考えられるが,この傾向は他の教材にも顕著なもので  ある。低音に和声を支持する機能が強く働き,上声は複旋律的に進行する様式はバロック様式的  なものと考えられる。一方メロディは純粋に和声的に進行しており,音楽的に乾いた感じを与え  る結果を生んでいる。どのパートについても児童が興味を持って学習できることは大切であるが,

 一見魅力なく感じられる音の動きもアソサソプルの中では生きてくること,めだたない声部の必  然性を感じさせることが合奏には欠けてはならないことではなかろうか。

41考察皿で述べたようにオルガンの指導は体系化されてなく,従ってうまく行っていないが・こ  の曲においても,1年からの主要楽器であるオルガンはカッコつきであり,一方奏法も教科書に  記されていないアコーデオンがメロディー一と低音を受け持っている。リズムフレーズの優位は打  楽器のみならず,鍵盤楽器にまで及んでおり,5年までの合奏教材ではオルガン,アコーデオン,

 鍵盤ハーモニカが4小節の旋律を音楽上の必要性なく交代することがしばしば見受けられる。し  かしオルガンのテクニックがむつかしくなる6年の器楽教材ではもはや楽器は交代しない。なぜ  ならオルガンはカッコに入れられてアコーデオンにそのパートを分担させるからである。ここに

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考察Iで述べられたオルガン教育の行きづまりを見勾と同時に・リズムフレーズの思想が,楽器 演奏のテクニックの影響を受けて崩壊していく過程を見るのである。

       総        括

 本研究は小学校の器楽教材について児童と教師を対象にアソゲ一ト調査を行い,その結果を基に,

教材の持つ問題点を明らかにしようとしたものである。主な問題点は次の通りである。

1 日本音楽について: 教材は全てわらべうたであり,てまりうたが多い。ふえの導入として用い  られた場合は,ふえの指導に効果をもたらしているが,日本音楽的感覚を養うことが目的とされた  場合は,児童に支持されていない。これは単に器楽だけの問題ではなく,他領域にも共通する傾向  であワ,日本音楽に関する取扱いの再検討が望まれる。

皿 オルガンについて: 現行の授業では小学生児童がオルガンを習熟するに必要な労力と時間がさ  けない。教科書の学習の段階づけにも飛躍がある。その結果児童はオルガンを次第に嫌いになって  いく。オルガンの必要性及び指導法に再検討が期待される。

皿 ふえについて: オルガンと比較すると嫌いな児童は少なく,好まれており,教師も指導しゃす  いとしている。その原因は,教材がテクニックの段階を追って無理なく進んでいること,家でも練  習でき,時には家族会秦も可能であることが考えられる。ふえの二重奏曲が好まれない理由には,

 教材の性格の他に,ふえ特有の不安定な音程が考えられる。

lV 器楽合奏について: 児童には圧倒的に好まれている。音楽的にはリズムフレーズにしばられた  楽器編成が問題とされよう。リズムフレーズを骨格にした編曲は楽器固有の音色を殺し,曲の一貫  性を破壊している。

      注

1.NHK教育テレビ,1974,2,1O,「音楽の学習」もこの点を問題としたものであった。

2、本研究は,奥・安田,1974,小学校の歌唱教材について,音楽教育vol.4,及び1975,小学校  の鑑賞教材について,奈良教育大学教育研究所紀要地11に引きつじくものであり,これらの研究結  果を参照しながら進められる。

3.真篠将,1964,音楽教育とオルガ1/,全日本器楽教育研究会編,オルガンと音楽教育,p.24,音  楽之友社。

4.小学校学習指導要領(音楽)昭和43年7月n日告示。

5.全日本器楽教育研究会編,上掲書。

6.真篠将,上掲書・P.24.

71河口道朗,1970,器楽教育の基本的諸問題,音楽教育研究地52,音楽之友社。

8.上田昭,1970,教育用楽器のための教材に期待する,音楽教育研究,同上。

9.上記指導要領,器楽(3〕のアに3年から6年まで共通してみられる。

10.同上,基礎(1)のアは1年から6年までこれが記されている。

11.東京教育大学附属小学校初等教育研究会編,1969,音楽科現場の指導技術。

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12.

I3.

14.

15.

松本・浅井,1968,改訂小学校学習指導要領の展開音楽科編,p.39.

WPiston,戸田訳,管弦楽法,音楽之友社,p.3q 同上 P.32L

上記指導要領,器楽(4)のイ。

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参照

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