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幼児の適応に関する研究(皿)

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(1)

Q−Techniqueによる

幼児の適応に関する研究(皿)

教育心理学研究室 中 原  弘 之

目     的

Helpe蔦M・M・の仮鵡みられるよう1・生活のほとんどが噺と醗する幼児期におい ては,幼児に対する母親の期待・願望,即ち母親が抱く幼児の理想像が,幼児自身の理想 像に大きな影響を与えることになろう。

例えば,母親が幼児の現実像にくらべて,かけはなれて高い理想像を抱くならば,幼児 は母親の期待水準に近づくために成功の約束なき努力を繰返し,やがて母親の期待水準に 到達しえぬ自己の限界を発見すると同時に,母親に受容されざる自己をも発見するであろ

う。

このように母親に受容されえぬ自覚のもとに形成された幼児の自我は,自罰的になり罪 悪感にさいなまれて歪み,不適応行動の基因となる可能性が大きい。

本研究は母親による幼児の分類(Q−sort)に基づいて,母親からみた幼児の現実像と理想 像との分離を考察し,幼児の適応と関係づけることによって,このような現実像と理想像と の分離が・幼児の適応のindexとして有効であるかどうかを検討し,さらにQ−Technique による適応の分析を通して・これらのindexの意味を明らかにしようとするものである。

従って・本研究は・いわばCombs,A・W・による現象学的i接近(Phenomenological

approach)にそってすすめられることになろう。  (5)

方     法

本研究の資料を得た被験者・並びに手続については,前の報告に詳述してあるが,その

(9)

参照の手間をはぶくために,ごく簡単に記述することにしよう。

被験者

5才8ケ月から6才8ケ刀,男児24名,女児21名,合計45名の幼稚園児(2年保育児)

とその母親。

手  続

手続の中心となるものは,母親からみた幼児の現実像と,母親が期待している幼児の理 想像との差異(discrepancy)及び相関の測定である。

(2)

2       茨城大学教育学部紀要第十三号

この差黙び棚の測定は・St・phen・・nによるQ−Tec鵠queの最初の段階であるQ 分類(Q−sort)によって試みられた。

本研究が目的とするような,discrepancy scoreと適応との関係を取り扱った従来の諸 研究では,主に評定尺度法を用いているので,本研究においても評定尺度法を用いること

 (2,8,10.11,15,16)

ノ異論はない。しかし,後に予定している因子分析的研究にも,そのまま資料として適用 できる便宜を考えて,ここではあえてQ分類を手法として選んだ。

Q分類のためのstatementsは, balanced block designによる構造化の手続を経て決 定された。それらは,幼児の適応をあらわす内容の60項目である(付票1)。

まず,45名の母親に60項目のstatementsがそれぞれ記されたカード(Q−ca「d)を,自分 の子どもの現実像に基づいて 非常によくあてはまる ものから まったくあてはまらない にいたる9段階に強制分配してもらい,母親からみた幼児の現実像が測定された(Mp−sort)

。次に同じような手順によって,幼児の理想像についても強制分配を求めた(Ml−so「t)。

このようにして,45名の母親から,幼児の現実像と理想像に関する資料が得られたが,

一方,45名の幼児に対する適応の基準としては,4名の担任教師によるQ分類と評定尺度 の資料を用いることにした。そのため,先に示した60枚のQカードを用いて,教師からみ た幼児の現実像について,Q分類を依頼した(T−sort)・この際・結果の信頼性を高める ため,教師は相互に協議しながら行った。

さらに,4人の教師には,60項目のstate皿entsを,適応をあらわす項目と,不適応を あらわす項目(各々30項目)とに対応させて作成した評定尺度(付票2)によって,45名 の幼児の現実像に基づく5段階評定を協議的に行った(T−rate)。(註1)

結果と考察

以上の手続によって得られた45名の母親,及び4人の担任教師による資料に基づいて,

本研究が目的とする母子関係と幼児の適応の問題を分析することにしよう。

1.45名の全対象について

Dp.、とrp.・及び適応点の算出とその意味

母親が幼児の現実像について行ったQ分類(Mp−sort)と,理想像について行ったQ分 類(M、−sort)とのdiscrepancy scoreをDP・・と表記し・また両分類間の相関係数をrp・1

と表記することにしよう。

従来,個人の適応のindexとして,その個人の現実自我(present self)と理想自我

(ideal self)との分離が注目され, discrepancy score或は相関係数が適応のindexとし

(3)

て有効かどうかが論じられてきた。その結果,個人の内部的基準としての適応のindexと して,かなりの妥当性を持つものであることが明らかにされた。

しかしこれら2つのindexは,全く同じ性質の値ではない(後述)。従って,本研究で はDp.、とrp.、を,共にQ分類によって算出し,吟味を加えようと思う・

既述したように,Q分類に用いられた60項目のstatementsは,適応をあらわす内容の ものと,不適応をあらわす内容のものとが,それぞれ30項目ずつあるので,母親が適応項 目を幼児の現実像(または理想像)にあてはまると判断して,プラスの段階に分類した場 合,及び不適応項目を幼児の現実像(または理想像)にあてはまらないと判断して,マイ ナスの段階に分類した場合には,それぞれに1点を与える。逆にプラスの段階に分類され た不適応項目と,マイナスの段階に分類された適応項目に対しては,それぞれに一1点を 与える。

これらの総和をMp−sort,MI−sort毎に算出することによって,母親が幼児の現実像に ついて与えたQ分類値(Mp値)と,理想像について与えたQ分類値(M・値)が得られた。

これらの値は,0を中心として±48の範囲に分布することになるが,実際に得られたMp値 の分布範囲は46〜−24,平均23.67であり,M・値の場合は48〜36・平均45・55であった

(付票3)。

次に,このようにして得られたMp値とM・値との差の絶対値(Dp・・)が・45ケースに ついてそれぞれ算出された(註2)。このDp.・は,母親の幼児に対する理想像と現実像 との分離の程度を表わす値であり,Dp.・の高い場合は,幼児の現実像に対する母親の受 容が欠け,いたずらに現実像からかけはなれた期待・願望が,幼児に向けられている場合 といえよう。従って,このような場合には,幼児自身の理想自我も,母親の抱く高い理想 水準に接近するために,幼児自身の現実自我と理想自我の分離が増大し,不適応行動を示 す可能性が高まるであろう。

また逆に,DP.・の低い場合には,母親による幼児の現実像が,理想像とよりよく一致す ることを意味するので,母親は現にあるがままの幼児に満足し,受容していることを示す。

従って,幼児自身の自我概念の分離も小さく,好ましい母子関係によって,幼児はよい適 応を示すであろう。

本研究において,DP.1と並んでとりあげられたrp.1は, MP−sortとMI−sortに基づ

いて算出された偏差積相関係数である。付票3のrp.1欄に示されている値は,このように        φ

オて求められた相関係数を,Fisherの方法によってZ 転換した数値である(註3)。この 結果,rP.・の最高は.827(1.179),最低は一315(一.326),平均は.524(.576)であ

った(括弧内の数値はZノ転換した値である)。

(4)

4      茨城大学教育学部紀要第十三号

このrp・・も,MP−sortとMI−sortとの一致の程度を示す値であるから, DP.1と共に 幼児の適応のindexとして,大いに期待できる値といえよう。

上述の方法で求められた,母親の幼児に対する現実像と理想像との分離をあらわす値を 適応のindexとして検討するためには,適応の基準が決定される必要がある。

このために既述の60項目からなる評定尺度によって,4人の担任教師が協議的に行った 評定(T−rate)を,幼児の適応の基準として用いることにした。このT−rateは,0を中 心とする2〜−2までの5段階double scaleであり,30対のscaleに対して与えられた 得点の合計をもって,その幼児の適応点とした。従って,この適応点は,60〜−60の分布 範囲を持つ値であるが,得られた結果は,54〜−30であり,平均は12.47であった(付票3)。

Dp.1及びrp.1と適応

さて,T−rateによって得られた適応点によって,その平均12.47を基準にして,得点の 上位群25名を適応群,下位群20名を不適応群とした。適応群の平均は30.16で14〜54の範囲 に適応点の分布がみられ,不適応群は平均一9.65で,−30〜9の範囲に分布を示した。

この両群の適応点,Mp値, MI値を比較すると,第1表のようになる。

第1表 T−rateの上位群(適応群)と下位群(不適応群)の各測定値の差異((全対象))

Mean

Diff t P

適応群(N=25)不適応群(N=20)

適応点13…6 −9・65i39・8・1…641・…〉・

M・倒 28・2・1・8… […2・1・・2・1・3・〉・〉・2・

M・値 45・321妬・8・1−・481 ・・41・〉・9・

これによると・適応点の平均に関してのみ両群に差が認められたが,Dp.・やrp.・の算 出の基礎値として用いられたMp値及びM・値については,有意差が認められない。

即ち,幼児の現実像に対する教師と母親の視点には,かなりのずれがあり,教師がT一 rateを通して,不適応としての低い適応点を与えても,母親は必ずしもMp−sortを通し て低く得点づけるとはいえない。この原因の一つとして,幼児の現実像を描くときの場の 相違ということが考えられる。教師は幼稚園という幼児集団の場を素地として幼児の現実 像をとらえ,母親は家庭を素地としてとらえる可能性が大きいからである。

しかし,更に大きな原因として,母親の防衛的態度が考えられる。従来の研究で,自我 評定の場合に,defens1ve sortl㎎やdefensive self rati㎎の介入ということが問題にさ れ,これらの排除の必要性が論じられてきた。長島は,その最近の研究において,防衛的

(1.15)

(5)

自我評定の検出を行い,効果的な結論を得ている。

(8)

このdefenslve sortln9の問題は,母親が幼児に関して行うQ分類の場合にも決して例 外ではない。従って,教師による評定との間に,高いずれをもっMp値を示した母親は,

防衛的態度の強い母親であるといえよう。

この点については,後に考察する機会があるので,両群のMI値の比較に論を転じよう。

第1表のMI値は,両群共に高い平均値を示し,ほとんど同じ水準である。 M・値は,母 親が抱いている幼児の理想像に対して与えた得点であるから,このような結果は当然のこ

ととして理解できる。従って,前報告においてふれたように,Dp.1もrp.・も,その値の 大きさはMp値によって支配されていると考えられる。 MI値がこのように最高レベルに

接近していることは,正常者と神経症者について行った斉藤の報告と一致している。       (11) 、

次に,母親による幼児の現実像と理想像との分離(DR・),及び相関(rp・・)について両 群を考察することにしよう。

適応群のDP.1は,0〜38の分布範囲を示し,平均は16.96であり,不適応群は,6〜64 の分布を示し,平均は27.75である。また,rP.1については,適応群が.216〜1.179,平均

.648であるのに対し,不適応群では一.326〜1.074,平均.486であった。

第2表 T−rateの⊥位群(適応群)と下位群(不適応群)のDP」及びrHの差異((全対象))

Mean

齢群(N−25)}不齢群(N−・・) Diff t        P

㎞  ・ag61 ・矯 1−・α7glL3・』−L93

伽 1 ・磁81 ・4861 ・・62i ・8・1…〉・〉・4・

(D.p.エは,両群の分散が有意であるため,基準tをCochran−Cox法によって求めた。)

第2表は,両群の平均の差を検定したものであるが,これによるといずれも有意な差を 認め難い。即ち,幼児の適応とDp」及びrp.1の大きさとの間には,はじめに予期したよ うな関係を見出すことができなかった。従って,母親による幼児の現実像と理想像との分 離の程度は幼児の適応のindexとして妥当でないように思われる。

試みに,45名の25%にあたる11名を,Dp.1及びrp.・の値の上位及び下位よりそれぞれ 抽出して,適応点によって検定を試みた。第3表がそれである。

第3表DP」の⊥位群と下位群における適応点の差

一一 }一一一一一一一一一一…一一

コ位酬

一一縺@位 群鼈ナ一 一 一一

=    一一一{『

・・ 1 11 Diff t P

適応点\\, 0〜8         30〜64

平 剃 ・似9・i 一・・8212a73 2.25 .05>P>.02

(6)

6       茨城大学教育学部紀要 第十三号

第3表によれば・Dp・1の上位群と下位群の平均適応点の間に,5%水準において有意差 が認められ,現実像と理想像との分離の少い下位群の方が,分離の大きい上位群よりも高 い平均適応点を示している。

また,rp.1の上位群と下位群の平均適応点については,第4表に示すとおり,差が認め られなかった。

第4表rp.1の上位群と下位群における適応点の差

@一

@      一  一       一一一  一一一_____       一

、避 下位群 ]「位群

  数

ヘ「憂「 ・・ 1 ・・ Diff t P

適応点 ・829〜1・179 ㎜・326〜・誕81

平 均1・仙27i−・・551・α821・… 1…〉・〉.・5

以上の結果から,母親が幼児の現実像に関して与えたMp値と,理想像に関して与えた M・値とのdiscrepancy score(DP・1)については,4人の担任教師が協議的に評定した適 応点と・一定の関係をもっていることが知られた。即ち,Dp.iが小さい場合には,その幼 児は教師から高い適応点が与えられ,Dp・・が大きい場合には,教師によって低く得点づけ

られるわけで・幼児の適応のindexとして有効であると思われる。

しかし,rp.・の場合は,期待した結論が得られなかった。

自己概念に関する自己評定において,すでにふれたようにdiscrepancy scoreを,その 個人の適応に関するindexとして支持する結論がかなり多い。本研究は,従来の研究にみ られるような自己評定によって,その個人の適応を問題にするものではないので,母親に

は許されないが,ここで得られたように,DRIが幼児の適応に関係深い値であるというこ とは興味ある結果といえよう。

しかし,rp・1がDp・1のような適応との関係を示さなかったことから, Dp.・及びrp.1に 対する決定的な結論を,ここに下すことは差し控えるべきであろう。なぜなら,defensive sorti㎎の問題を吟味した上で結論を下しても,決して遅くはないからである。

2.母親の防衛的態度を排除した対象について

これまで45名の対象について考察してきたD周及びrHIは,もしも母親が強い防衛的 態度のもとに,Mp−sortを行ったとすれば,幼児の低い現実像に対して, Mp値を高く得 点づけ,従ってM・値との差として算出されるDp.・は,小さくなるであろう。

また,MP−sortとMI−sortとの相関係数であるrP.・についても,不当に高い値となる ことが予想されよう。

(7)

従って,Dp・・やrp・・を,幼児の適応のjndexとして吟味する前に,母親の防衛機制を 考察し,これを排除する必要がある。

防衛的態度の検出

長島は,防衛機制の検出の方法として,

(1)被験者の自我概念と観察者の行動評定の一致度

(2)プロジェクティヴ・テスト所見との一致度

(3>自我防衛をみるための自我陳述項目の利用

の三つを示し,彼の研究が現象学的レベルにあることから,(3)の方法に従い,自己の作成 した性格診断テストのL−scoreによって検出している。

(8)

本研究も,いわば母親に対する現象学的接近によって,幼児の適応を追究するものであ り,母親のdefensive sortingの検出にあたっては,母親によるQ分類,或は評定を用い ることが望ましい。しかし,本研究では,このような方法を満足する資料を欠いているた め,余儀なく(i)の方法に準拠して検出することにした。

即ち,母親に防衛機制がみられるならば,教師のみた幼児の現実像と,母親のみた幼児 の現実像との間に,ずれが生じるであろう。そこで幼児の現実像に対する教師のQ分類

(T−sort)と,母親のQ分類(MP−sort)との差をとらえることにした。

MP−sortからMP値を算出したのと同じ手続で, T−sortからT値を算出し,この値を 防衛的態度検出の基準とした。得られたT値は,46〜−40の分布を示し,平均は14.42であ った。また,T値とMp値の差の絶対値(DM.T)を45名について求めたところ,その分布 範囲は0〜72,平均は20.38であった(付票3)。

このようにして得られた45名のDM.Tの分布を示すと,第5表のようになる。

第5表 DM.Tの分布

←_        ゴ

D副・−91・・一・gl・・一・gi3・−3gl・・−495・−5gi6・−6917・−7gi計

Nl・51・・lg13i・1…    1妬

%133・・122・2 忽・・1a7 i・…μ41α・1乃・1…

M=20.38

前述のように,DM・Tは幼児の現実像に関する母親の分類と彰師の分類との分離の程度 を示す値である。教師によるT値は,幼児の適応の基準として信頼性のあることが,すでに

確かめられている。従って,T値よりも高いMp値を示した母親は,防衛的態度のもとに      (9)

Q分類を行ったことが予想される。

そこで,45名の25%にあたる11名を,DM・Tの上・下よりそれぞれ抽出し, DM.Tの上位

(8)

8        茨城大学教育学部紀要 第十二号

群及び下位群を構成した。上位群のDM.Tの分布は,36〜72であるのに対し,下位群は0

〜6である。

第6表 D齪の上位群とド位群の各得点の差

一一一一一w一一一一一一一一一一

DM.T

       一一1−一一

コ鰭(N−・・)1」・雌(N−・・) Diff t P

Mp  値 3・・7312鰍 1λ・gI・3gレ7・〉・〉・6・

M・値1 側 } ・&36  −・73i ・54 蛎一脚

一一一一一… @呂   一      1  −一一一一  一一一一一一一T 側 3鳩  一・㌫・gl・牝821&271・…〉・

適応点i 2&27  −・・.64       −一 ・&9・la6gi    一一㎝ 

.001>p

(MI値}罰群の分散が有意であるため,1、L翫をCochran Cox法によって求めた。)

両群のMp値, MI値, T値,及び適応点の差が,第6表にそれぞれまとめられている が,これによると,Mp値及びMI値については差が認められないが, T値と適応点とに おいて有意な差が認められた。

      」

ヲち,母親が幼児の現実像や理想像に関してQ分類する場合,deεe蛤ve sorゼ㎎の問題 に関係なく,両群はほぼ類似した得点づけを行うのに対して,教師が幼児の現実像に関し  ・ てQ分類又は評定する場合は,防衛の少い母親(下位群)をもつ幼児を,高く得点づけて いる。反対に防衛的態斐のみられる母親(上位群)をもつ幼児を,低く得点づけるといえ

よう。

このDM.Tは,前報告において考察されたrM.Tと1司じ意味を持つ値であり,rM.Tが幼 児の適応のindexとして有効であるという前報告の結論をもあわせ考えると,当然DM.T

も適応のindexとして妥当であることが予想される。さらにTaylor,&Combsらの結 論や,Chodorkoffの結論が示すように,防衛的態度は,よい適応状態にあるものほど少

(13)       (4)

いことから,DM.Tは母親自身の適応のindexともいえよう。

しかし,ここではDM.Tの考察が主日的ではないので,この点に関しては他の機会に譲 ることにしたい。

防衛的態度を排除した場合のDp.・rp.【と適応

さきにもふれたように,現象学的接近のレベルからは,defensive sort ㎎の排除基準と して,必ずしもDM.Tが妥当なものとはいえないが,他の適当な基準がないので一応レベ ルの異るDM.Tによって処理してみることにする。

T−rateによる適応点の上位群と下位群の中からD瑠の平均20・38以下の者をそれぞれ 7名ずつ抽出した。但し,後の考察にそなえて,CATの資料が得られた事例に限定して

(9)

ある(註4)。  、

このようにして,比較的防衛的態農が少いと思われる母親とその幼児が,適応群と不適 応群からそれぞれ7名ずつ決定された。以ド前者をW群,後者をM群と呼ぶことにする。

この両群の示した値と,そのt検定の結果をまとめたものが第7表である。

第7表DM誼の低いものから抽出された適応群(W群)と不適応群(M群)の各測定値の差 一 Mean

Diff t P

w l M 1

一一一罰 一一一一一一一一一

適応周 4L86 i 一牝・・14&86i     「X・33    .001>P    1

E㎞@l a・41・&・・ 一創861a・7 …〉・〉…

瞼 値 ・軌・41 42gi       一R5・861462回一ふ5・

蜘 値1鼎  45・・41 …1… 1・〉・9・

伽 1 翫・・14α721一駈7酬 4771妬・一ふ5・

・H@  ・93gl ・2271 ・7・21 4.12       t.01=3.50

(Mp矧)rt, Dpl, rplは両群の分散が有意であるため基準tをCochran−Cox法によって求めた。)

第7表の適応点の平均が示すように,W群とM群は,教師評定による得点づけに著しい 差がみられる。以下,この両群について考察してみよう。

まず・Mp値についてみると,W群の母親は,その幼児の現実像に対するQ分類におい て,平均20・14という高い得点づけを行っているのに対して,M群の母親は4.29という低い 得点づけを行っている。従って,両群のMp値は,教師による適応点と高い一致を示して

いるといえよう。

これに対してMI値は,第1表で示したと同様に,両群ともに高く,しかも全く差がみ られない。これは,W群, M群の場合にも,母親は一般に幼児の理想像を,最高レベルに 得点づける傾向があることを示すものである。

従って・MP値とMI値に基づくD円やMP−sortとMI−sortに基づくrRIは,や はりMp値(或はMp−sort)に支配される値と考えられる。

両群のD冊についてみると,〜V群に対して,M群の母親は,幼児の現実像に比べて著 しく高い理想像を描いているといえよう。このことは,r円についてみても同様である。

このように,D雌を基準値として,防衛的態度の比較的少い母親のみによって処理した 結果,DH及びrp・1は,適応群と不適応群との問に有意な差がみられ(1%水準),適 応群の母親は幼児の現実像と理想像との一致が高く,不適応群の母親は,一致が低いこと が知られた。

従って,DP・・とrP・・は,ともに幼児の適応のindexとして有効であると考えられる。

(10)

10      茨城大学教育学部紀要 第十三号

幼児の適応のindexとしてのDp.・とrp.・

以上の考察によって,母親による幼児の現実像に関するQ分類(Mp−sort)と,理想像 に関するQ分類(MI−sort)に基づいて算出された, Dp」とrp.1という二つの値が幼児の 適応指標となることを明らかにしたが,前に指摘しておいたように,ここでこの二つの指 標を比較し,問題点を指摘しておこう。

Dp」もrp.・も,幼児の現実像と理想像との一致度を表わす値という点では共通のもので ある。従って,従来の研究では,現実自我と理想自我を評定尺度法で測定した場合には,

両者のdiscrepancy scoreとしてDP.1を求め, Q分類で測定した場合には,両者の相関 係数としてrp.・を求め,それぞれ適応のindexとして研究されてきている。

しかし,厳密には,必ずしも二つの値が一致するとはいえない。本研究の場合には,い ずれの値もQ分類から算出されているので,この点について比較考察することが可能であ

る。

付票1に従って,本研究で川いた60項口の構造を第8表に示してある。

第8表 60項日の構造 今かりにMp−sortにおいて, a cに該当する10項目 凝購応(・)1不麟(b) を,プラスの高い段階に強制分配し,bcに該当する項

安定性

@(c) ac bc 目を,マイナスの低い段階に強制分配し,そして他のa

一一 一一一『 

制御性

@(d) ad bd d,bd, ae,beに該当する40項目を,中間の段階 ノ分配したとしよう。この母親が,もしもMI−sortに

社会性

@(e) ae be おいて,aeの10項〕を高く,beの10項目を低く分配 したとすれば,Mr−sortと MI−sortの偏差積相関係数rp.・は,それほど高い値を示すこ となく,この母親による現実像と理想像とは一致していないという結論が下されるであろ

う。

しかし,Mp値及びMI値は,この例ではどちらも殆んど同じになるので,両値の差 Dp.1は,0に近い値を示し,この母親の現実像と理想像とは一一致しているという結論が下

されるであろう。なぜなら,良適応の項目をプラスに,不適応の項目をマイナスに分配し た場合に,それぞれ1点を与え,その逆の場合には一1点を与えて,これらの合計として Mp, MI両値が算出されるからであるQ

このように,Dp.・とrp.・は常に同じ結論を導く値ではないので,ともに適応の指標と して受け入れることに疑問が生ずることになろう。

試みに,Dp.・とrp.・の相関表を求めたところ,第9表のようになり,相関係数は.88で 0.1%水準で有意であった。従って,二つの値は,実際には全く矛盾する結論を導くことは

ないといえるが,完全に一致する値ともいえない。

r

(11)

第9表 Dp.1とrHの 相 関 表

  rp.I

cpJ

1,299

@〜

P,100

1,099

@〜.900

.899・

D!。。

゜199

D500

199

D300

199

D100  .099

@〜一.100

_.101L.301

@〜一.300  〜一.500

・−gl・ 6141・   i l i い2

・・一・gl l ,316i・  l l   1・・

2・−29  ・ 2131・  i   l l・・

3・−39 1   1 1・[31   ; レ 4・−4gl i   l l l・1・l i l3

5・−5g l l   l   l・{ 1  ・1

6・−6gl l l I      l i・1・

計1・171gl・・i・・15 2i・1・1菊

r−,88      t==12.63      .001>p

おもうに,Dp.・は,現実像と理想像との分離の程度を,概観的にとらえる場合に適切で あり,rp.・は,分離の内容を質的に,しかも分析的にとらえる場合に適切な値であると考

える。

勿論,これだけの考察で,Dp.・とrR・の比較が十分しつくされたわけではないが,紙面 の都合で割愛せざるを得ない。従って,ここでは今後の研究課題として,問題提起の形に とどめておきたいと思う。

3.適応の因子分析

以上の考察において,母親による幼児の現実像と理想像とのdiscrpancy score(Dp.・),

及び相関係数(rR・)が,幼児の適応に関する有効なindexであることが証明された。し かし,適応の内容,即ち因子構造が明らかにされなければ,Dp.・やrp.1の意味を十分理 解することは出来ないであろう。

そこで,本研究で適応の基準として用いた教師によるQ分類の結果を,Q−Techr的ueに よって因子分析し,4人の教師が,幼児の適応をどのような視点からとらえているかを考 察することにしよう。

因子分析には,第7表に紹介した14名の幼児に関する資料を用いることにした。前述の ように,これらの14名は,教師評定による適応点の高い群と低い群から,それぞれ7名ず つ抽出されたものである。さらに彼らは,防衛的態度の少い母親をもち,CATの資料を 兼ねそなえている。

さきに,幼児の適応に関する60項目によって,4人の担任教師は,幼児の現実像につい てQ−sorti㎎したが,このうち上記14名の幼児の資料に基づいて,偏差積法による相関係

(12)

12      茨城大学教育学部紀要第十三号 数の算出を行った。

第10表 14 名 の 相 関 行 列

』一一}@ 一一一一 一一一一 一        一         一一一一一一一一       一 一  _       _      __一__   一

c川23451・・1236・4223・36『384i

23

.583

4 .547 .654 5 .677 .752 .559

10 .531  .453  .346  。543

11 .520  .787  .654  .634  .445

23 .433  .256  .260  .339  .531  .244

、一一

6 一.343 −.209 −.220 −.311 −.433 −.177 −.500

不 14 一。169  .252  .063 −.016 −.429  .197 −.524  .343

22 一.252 −.047 −.063 −.130 −.398 −.028 −.787  .476  .571

31 一.142  .264  。287  .094−.295  .390 −.417  .299  .705  .547 36 一.256 −.020  .122 −.138 −.272  .122 −.508  .276  .535  .591  .594

群 38 一.323 −.480 一449 −.299 −.102 −.429  。094  .114 −.150 −.240 −.224 −.236

42 .146  .567  .366  .413  .083  .543 −.106 −.142  .492  .138  。591  .307 −.339

第10表は,被験者相互間の相関係数を示すもので,幼児番号2,3,4,5,10,11,

23の7名は,教師によって高く得点づけられた適応群であり,他の7名は,低く得点づけ られた不適応群である。

この第10表から,Thurstoneのcomplete centro三d methodによって因子の抽出を行っ

(14)

た結果,第11衷のような三つの因了・が得られた。

評解12345mn%・u羽訂蕊銘剃平均寄榔『

1     .750  。680  .576  .733  .724  .608  .721 −.582 −.381 −.576 −.248 −.401 −.277  .208      31.9%

皿卜・茄・612…5・・鴎一・99…9−433・212…7・596・77・・567−・・7・艦・1 鵬 皿1−・73・・79−12…42−・・・・・・・…5・・63・289−・泓・忽・一・53・3・2・2761 賜 副・627・869・・…687・鵬・753・754・388・・4・・768・726…6・437・5381

第皿因子は,全分散に対する平均寄与率が4,1%で,他の二つの因子にくらべて著しく小 さいため,軸の回転は第1因子と第皿因子によって行うことにした。

      ● サこで,Stephensonのsimplest structureの規準に合うように,第12表の変i換行列を

(12)

第12表 変換行列  第11表の第1因子と第∬因子の列に乗じて回転を行い,第13表に示

1 1   した因子行列が得られた。紙面の都合で詳述できないが,この回転

1 .935.355 後の結果は,McQuittyによるElementary Linkage Analysisに

.355㌦935

@     よつて得られた結果と,殆んど一致している。

(13)

中原:Q−T㏄hniqueによる幼児の適応に関する研究([)        13

第13表因  子  行  列(回転後)

応響:234・・… 236・4223136384・1平均寄与牽一

1・ │767・鴎・…8・822・餌・・7%・52・一・469−1・2−・327。・岨一174−439.42ず ・a・%

H P・・93−33・−268−・…35・−354・66・一・・5−・・6−762−・・5−673・376−53・1 ・乳・%

さて,第13表によると,第1 因子負荷重は適応群において高く,不適応群では低くなって おり,適応に関する両群を特徴づけていることがわかる。また第∬ 因子負荷量では,不適 応群において負の高い値が多くみられ,やはり両群を区別する因子であると思われる。

第皿因子は,その平均寄与率からも明らかなように,他の二つの因子にくらぺると一般 に負荷量が小さく,両群を特徴づけているとは思われない。従って,因子の解釈に際して は,第1 因子と第皿 因子についてのみ試みることにしたQ

そこで,第1 因子と第皿 因子の因子列を求めるわけであるが,まず第1 因子について は,その因子負荷量の大きい5名の幼児(2,3,4,5,11)をえらび, 重み を計算 した。第14表は,幼児4を基準にして求めた 重み である。

第14表 因子負荷量と重み(第P因子)     第15表 因子負荷量と重み(第∬ 因子)

幼児因伯荷量匝み修正した郵 幼児1因子負薩陣み修正した郵

2 .767 1.26 1.5       14 一.806 1.87 2.0

3 .853 2.11 2。0       22 一.762 1.48 1.5

4 .718 1.00 1.0       31 一。815 1.97 2.0

5 .822 1.71 1。5       36 一。673 1.00 1.0

11 .785 1.38 1.5

第r因子については,4名の幼児(14,22,31,36) がえらばれ幼児36を基準にして 重 を算出した。第15表がその結果である。

第14,15表の修正した重みを,T−sortにおいて各項目に与えた得点にそれぞれ乗じ,因 子毎に60項目のwelghted scoreを求め,それをC得点化すると第16表及び第17表が得ら

れる。

これらの因子列から,C得点の高い項目(+4,+3),及び低い項目(−4,−3)

をえらんで,第18表,第19表の因子列が求められた。

(14)

第16表 因  了・ 列(第1,因子)

    F

?レ1

w・fght・d l C一就。,es scoreS  I

i項目 weighted

@scores C−scores 項目

weighted

@scores C−scores

1 8.5 1 21 4.0 0 41 5.5 0

2 10.0 1 22 23.0 4 42 9.5 1

3 13.0 2 23 0.5 0 43 14.0 3

4 22.0 4 24 3.5 0 44 12.5 2

5 11.5 2 25 4.5 0 45 11.0 2

6 9.0 1 26 23.5 4 46 11.0 2

7 18.5 3 27 19.5 3 47 9.5 1

8 12.0 2 28 9.0 1 48 16.0 3

9 10.0 1 29 8.5 1 49 12.5 2

10 22.0 4 30 一1.5 0 50 7.5 1

11 5.5 0 31 一10.0 一1 51 一5.5 0

12 一4.5 0 32 一14.0 一2 52 一10.0 一1

13 一13.0 一2 33 一10.5 一1 53 一6.5 一1

14 一一P8.5 一一R 34 一7.0 一1 54 一11.5 一1

15 一一P5.5 一3 35 一10.0 一1 55 一21.5 一4

16 一3.5 0 36 一14.5 一3 56 一6.0 一1

17 一9.5 一1 37 一13.0 一2 57 一13.0 一2

18 一13.5 一2 38 一7.5 一1 58 一12.5 一2

19 一5.0 0 39 一18.5 一3 59 一19.0 一3

20 一27.5 一4 40 一1.5 0 60 一23.0 一4

第17表 因  子  列(第皿 因子)

   一

?レ wejghted@scores C−scores

   、

?レ weighted@scores C−scores

     一

オ陣目 weighted

@scores

,C−scores

1 9.5 2 21 2.0 0 41 一24.5 一4

2 一2.5 0 22 13.5 3 42 一20.0 一4

3 一〇.5 0 23 一2.5 0 43 一9.0 一2

4 一3.5 0 24 2.5 0 44 一18.5 一3

5 4.0 1 25 1.5 0 45 6.0 1

6 4.0 1 26 18.0 3 46 一11.0 一2

7 9.0 2 27 8.5 1 47 一12.5 一3

8 9.5 2 28 11.0 2 48 12.5 3

9 一6.0 一1 29 10.5 2 49 ・−P6.5 一3

10 1.5 0 30 5.0 1 50 一21.0 一4

11 5.0 1 31 一6.0 一1 51 23.5 4

12 一10.0 一2 32 一4.0 一1 52 15.0 3

13 一1.0 0 33 2.5 0 53 18.0 3

14 一9.0 一2 34 一4.5 一1 54 4.5 1

15 一8.0 一1 35 一1.5 0 55 一18.0 一3

16 10.5 2 36 一7.5 一1 56 一3.0 0

17 4.0 1 37 一4.0 一1 57 一14.5 一3

18 一4.0 一1 38 一6.5 一1 58 一10.5 一2

19 10.5 2 39 一3.5 0 59 26.0 4

20 一9.0 一2 40 2.0 0 60 22.5 4

(15)

第18表 因  子  列(第1 因子)

特徴をよ く示している項目 特徴を示していない項目

… 堰@項    目 SC・・el 項      目  1

十4 4 嬉しいときは無邪気にとび上ってよう 一4 20 どことなく,ひねくれている。

十4

  こぶ

P0 とても無邪気で少しもかげがない。 一4 55 すぐあばれたり乱暴したりして,みん

@ なのあそびを妨害してよろこぶ。

十4 22注意されると少しもさからわず,すな

@ おにあやまる。 一4 60 さそわれても仲間に入ろうとせず,独

@ りきりでいることが多い。

十4 26いいつけには,とてもすなおに従う。 一3 14 うたがい深く,すなおにものごとをう 十3 7 こせこせしたところは全くない。 けとろうとしない。

十3 27泣いたり腹をたてたりしても,すぐ機

@ 嫌をとりもどして朗らかになる。

一3 15 ちよっとしたことにも思わずひどく怒

@ ったり乱暴したりする。

十3 43少しも憶することなく,みんなの前で  ったったり話したりする。 一3 36 ものごとをいいつけても,ふくれたり

@ 不平をいったりして従わない。

十3 48 自分の持物を友だちがかしてほしがる

@ と,心よくかしあたえる。

一3 39いい出したら人に反対されても決して

@ あとへひかない。

一3 59独りぼっちでいることが多く,あそん でも特定の友だちとしかあそばない。

第19表 因  子  別(第皿 因子)

特徴をよく示している項目 特徴を示していない項目

SC。・e   項         目 score 項         目 十4 41友だちをまとめて上手にひきいていく 一4 51いつも友だちのいいなりになって,あ

ことがうまい。 とに従っている。

十4 42みんなが先生のいうことをきかずにさ 一4 59独りぼっちでいることが多く,あそん わいでいると,静かにするように制する。 でも特定の友だちとしかあそばない。

十4 50 自分であそびを考え出しては,友だち

@ をさそって積極的にあそぶ。 一4 60 さそわれても仲間に入ろうとせず,独  りきりでいることが多い。

十3 44誰にでも人なつこく話しかけたり挨拶

@ したりする。 一3 22注意されると少しもさからわず,すな

@ おにあやまる。

十3

¥3

¥3

¥3

47友だちをよりこのみせず,誰とでも仲

@ よくあそぶ。

S9みんなのあそびにはいつもすすんで参

@ 加する。

T5 すぐあばれたり乱暴したりして,みん

@ なのあそびを妨害してよろこぶ。

T7友だちを仲間はずれにしたり悪口をい 一3

│3

│3

│3

26いいつけにはとてもすなおに従う。

S8 自分の持物を友だちがかしてほしがる  と,心よくかしあたえる。

T2友だちから,指図されないと一人では

@ 何も出来ずすぐ人にたよろうとする。

T3知らない人や大ぜいの人の前に出るの

@ をとても恥しがる。

ったりしてのけものにする。

(以上の手続の詳細は,前報告を参照されたい)。

これらの因子列から,次のようなことがしられるであろう。

第1 因子は・適応群を高い負荷量によって特徴づける因子であり,第18表の左側の項目 が・この適応群の行動特性を示している。即ち,4,10,7の項目に示されているように,

安定性(security)のあること,及び22,26,27の項目が示すような制御性(control)の あること・そして43・48の項目によって社会性(sociability)のあることが適応のよい幼児 として,教師からみられているといえよう。

(16)

16      茨城大学教育学部紀要第十三号

さらに第18表の右側の項目が示すような行動特性は,これらの幼児に全くあてはまらな い特性である。

従って,第1 因子は,安定性,制御性,社会性の三つの水準にまたがる因子であり,特 定の水準によって名称を与えることは出来ないが,左側の項口は,いずれも攻撃性や閉鎖 性がなく,現実の自己を受容すると同時に,他者の行動に対しても容認的であり,Chance

(3)

の示したpositlve−negativeの次元を反映するような因子であると思われる。いわゆる適 応児を特徴づける因子であり,ここでは一応, 受容の因子 と呼んでおきたいと思う。

第皿 因子は,第19表の因子列から,社会性をあらわす因子であることが知られよう。し かし,項目55,57のように不適応を内容とする項目が左側にみられ,一方右側には,22,

26,48の項目が示すような適応をあらわす項目がみられるので,一概に社会性の因子と呼 ぶことは出来ない。Chanceによれば, positive−negativeの次元とactive−passiveの次 元による行動の基本軸によって,適応の諸相を図示しているが,このactive…passiveの

次元に第皿 因子が該当するように思われる。従って,この因子を 積極的活動性の因子 と 呼ぶことにした。

この第丑 因子は,適応群を特徴づけるというよりも,むしろ不適応群を特徴づけている 因子であり,教師は,積極性がなく引込思案で,依存的な傾向の幼児を不適応児としてと

らえていると思われる。

第20表 因子負荷量による類型化   第20表は,第13表の因子負荷量に基づいて試・みられ

     一一一一π一一一一幽一

謔P冊脚 町  一一一一 Q    た類型化を示すものである。これによって,以上の結

++ 1   1

果をまとめると,次のようにいえよう。

十十 適応群       教師が幼児に対して適応の得点づけを行う場合,第

因子の負荷量がマイナスでも,第1 因子の負荷量が

一一

一一 プラスで大きければ,適応児として分類され,第1 因

不適応群      子の負荷量がプラスでも,第皿 因子の負荷量がマイナ

スで大きければ,不適応児として分類される。

㎜一従って,現実自我を受容し,他人の行動を肯定する幼児を適応児とみるのに対して,安 定性を欠き,或は攻撃的であって他人の行動に対して否定的態度が強い幼児を,不適応児

としてとらえるといえよう。

このように,教師が幼児の適応を問題にするときは,異った次元(因子)からとらえて おり,適応のよい状態は,主として 受容の因子 に基づき,適応のわるい状態は,主とし 積極的活動性の因子 に基づいてとらえていることが知られた。

(17)

要   約

本研究では,幼児の適応を測定するにあたって,従来の研究で行われてきたような,そ の個人による自己評定を用いないで,他者,即ち母親による幼児の現実像と理想像とのQ 分類を手段としてえらんだ。

このようにして,45名の母親から得られた現実像と理想像との資料に基づいて,その両 者の差異点(Dp・・),及び偏差積相関係数(rp.・)が算出された。この二つの値は,いずれも 母親が幼児に対して抱いている,現実像と理想像との一致の程度を示す値であり,幼児の 適応の指標として妥当であるかどうかが分析された。

即ち,母親が,幼児の現実像にくらぺて著しく高い理想像を持ち,それが幼児への期待

・願望として幼児に課せられた場合,幼児自身の理想像も亦,現実像から分離し,母親か ら受容されえないという自覚によって,心の不安,緊張が高まり,攻撃的,或は閉鎖的な 不適応行動を示すようになるであろうという考えに基づくものである。

幼児の適応の基準としては,4名の担任教師の協議に基づく評定結果が用いられた。こ の値を適応点として,Dp・・, rp・・を検討した結果Dp.・は,その上位群と下位群との間に適 応点に関して有意差がみられたが,rp.1については有意差が認められなかった。

しかし,Q分類に際して,母親のdefensive sorti㎎の問題が考えられたので,その防 衛的態度を排除した上で,再び検討した結果、Dp・・, rp.・共に1%水準で適応点に関して有 意差が認められた。

従って,Dp・1及びrp・1は,幼児の適応の指標として有効であることが明らかになった。

次に,DP・・やrp・・によって示される適応の因子構造が, Q−Techr的ueによって因子分 析された。教師によるQ分類の資料に基づき,適応の上,下両群より抽出された14名の幼 児に関する相関行列が求められ,これより三つの因子が完全セントロイド法によって抽出

された。

直交回転によって,得られた因子行列から因子列が求められたが,平均寄与率の小さい 第皿因子は除外され,他の二つの因子について解釈することにした。

この結果, 受容の因子 積極的活動性の因子 が得られたが,教師が幼児の適応を問 題にする場合,他者の行動をacceptする幼児を適応児とし,積極的活動性の欠ける幼児 を不適応児とみることが知られた。教師による適応基準は,この二つの次元の相互関係に よって決定されているが,よい適応は主として 受容の因子 に基づいて観察され,不適応 は主として 積極的活動性の因子 に基づいて観察される傾向のあることが知られた。

註1 適応の基準としての,これらの妥当性及び信頼性については,前報告によって検討され,い

(18)

18      茨城大学教育学部紀要 第十三号

ずれも妥当性及び信頼性のあることが確かめられている。

註2 付票3のDH欄に示したように,すべてのケースにおいて, Mp値がMI値より小さいか 或は等しく,従ってDp.1の最小は0,最高は64,平均は21.76であった。

註3 Z =%〔109e(1十r)−10ge(1−r)〕

註4 CATの資料に基づく考察は,今回は紙面の都合で行うことができない。      、

参 考 文 献

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