三重大学教育学部研究紀要 第53巻 人文・社会科学(2002)107‑119頁
漢代任侠諭ノート (三)
はじめに
前稿「漢代任侠論ノート(二)」の末尾において、次のように述べて
おいた。
「前漢後半期において、戦国以来の任侠的心性が前漢代を通じて儒学
の影響を受けつつ、官僚の内面に新たな名節観念を生み出して昇華され、
一方民間における任侠的生活感情がそのまま個々人の日常生活の内部に
温存されたり、或いは大室氏の言う暗黒部へと潜流していったと考えら
れないか、ということである。任侠的心性の官僚世界と日常的生活世界
への分岐、及びその心性と行動の両様化が前漢末において成立したので
はないか、という仮説でもって、後湧から三国時代における任侠的心性
の展開を考えてみること、これが残された一課題となるように思われる。」
本稿では、ここでの仮説的観点にもとづいて、前漢後半から三国時代
にかけての、任侠的心性の歴史的系譜関係について一考を及ぼしてみた
ヽ‑