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中国農業大転換の要諦

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Academic year: 2021

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特集中国農業大転換││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││

中国農業大転換の要諦

遅れているといわれてきた中国農業から︑いま︑大きな転換のうねりが怒濤のごとく生まれてきている︒ このうねりとは何か︑それはどのような意味があるのだろうか? 土地移動︑農民移動︑労働移動︑資本移動︑販売などの面で広がりつつある経済合理性に焦点を当て︑ 大転換しつつある中国農業の現状を各地の事例にもとづきながら検証する︒

大島一二 ︿

桃山学院大学経済学部教授

﹀ ×原田忠直 ︿

日本福祉大学経済学部准教授

﹀ ×高橋五郎 ︿

愛知大学現代中国学部教授

  総論

 

  大転換とその背景

─ ────────────

高橋 本日は︑特集号のテーマにちなんで中国農業の大転換の要諦は何かに焦点を当てて︑現在の様子を三人で話し合ってみたいと思います︒日常︑中国農業と接しながら思っておられることを︑率直に︑かつ大胆にお話しいただければありがたいと思います︒

ご出席は︑桃山学院大学経済学部の大 島先生︑日本福祉大学経済学部の原田先生︑そして私︑高橋で進めさせていただきます︒三人とも中国農業問題を専門にしていますが︑細かい点では分野や関心が違いますので︑その違いが出るような話になればいいなと思います︒ 最初に中国農業大転換の総論に当たる部分に焦点を当て︑ついで︑各論にあた る部分を話し合う︑というような枠組みでお願いします︒ 皮切りに︑私のほうからまず新しい動きとその背景などについてお話しさせていただいて︑それを参考にご意見をお聞かせ願えればと思います︒良しあしは別にしまして︑また中国農業にとってプラスかマイナスかという価値判断は別にして︑て︑順不動ですが︑以下の諸点が挙げられると思います︒

まずは農業労働力の高齢化と量的な減

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少といった点があります︒この問題は︑農民工の問題と︑さらには労働生産性の問題等々に関係してまいります︒

この問題と関連しますが︑経営規模拡大の動きがあります︒規模拡大と申しましても︑スピードや︑あるいは規模拡大の程度を数字として正確につかむことがなかなか難しいのですが︑流れとしては急速に規模拡大が進んでいると見ていいと思います︒さらに今の規模拡大とも関連する土地制度と利用実態の変化︑とくに土地使用権のすさまじいまでの移動︒この点は数字で若干把握することができますが︑今後もさらに続いていくと思われます︒この点は規模拡大と裏腹の関係にありますので︑とくに注目されます︒

これらを集約しているのはやはり農業の担い手の問題ですね︒農業労働力の減少との関係もありますが︑個人農︑つまり小農民が農業を担うのが基本的なスタイルでしたが︑最近は︑これに加えて︑企業による農業生産そして加工︑流通︑貿易といったような川上から川下まで企業が担っていくという企業経営の動きが あり︑さらに強まるように思えます︒ さらには︑大きな農家が農業の担い手として登場してくるという側面が︑見えると思います︒たとえば︑

大戸

︑大型の農家が︑日本で言えば大規模専業農家みたいなものですけれども︑そういう人たちが職業的に農業を担って︑しかも︑都会に行った人の農地を借り受けて︑あるいは権利移動を受けて規模拡大をしなら︑て︑

として農業経営に参入し︑規模拡大を図っていく︒こういった動きもあろうかと思いますし︑もう一つは︑合作農業の新展開と言っていい面があろうかと思います︒ 合作農業については︑大島先生の得意とされる分野ですが︑合作にもさまざまな形態があるように思いますし︑とりわけ最近は︑農民専業合作社とともに注目していいのは︑供銷合作社の動きではないかと思います︒最後の方で︑供銷合作社による新しい農業・流通の展開の面を話してみたいと思います︒

そして農業生産性の継続的な上昇です ね︒公的統計によると︑単位面積当たりね︒もちろん作目によって違いはありますが︑穀物について見ると上昇し続けています︒ そういったことを受けて︑穀物生産量も六億トンを超えて︑二〇一五年は六億二〇〇〇万トンという報道もあります︒このように穀物を中心として︑農産物や畜産物の生産の増加という面が見られます︒それに伴って︑農産物流通問題が顕在化している面もあります︒ こういう面については中国農業のプラスの要因として評価していいと思いますが︑一方において農畜産物価格低迷の現象が裏腹の問題として出てきて︑生産者にとっては︑必ずしも生産の増加が所得の増加に結び付いていないという側面もありますので︑ちょっとした矛盾が見られるわけですね︒ 農業技術面から言いますと︑たとえば品種改良︑そして大規模な機械作業請負業者の拡大︑さらにはまた︑水利の改良や灌漑農業といった面での進歩︒一方に

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おいて︑化学肥料依存の体質が依然として変わらないという問題︒農薬依存の体質が変わらないという問題︒こういったような︑やや危惧すべきというか︑必ずしももろ手を挙げて喜べないような問題が依然として続いています︒

他方︑農村の都市化が地域的にまだら模様で進みつつも︑優良農地転用面積が増加︑優良農地の不足から︑地代高騰要因となるなどの問題を生んでいます︒

というようなことで︑まだまだたくさんありますが︑イントロの部分として︑最近の中国農業の一つの断面を選択的に話させていただきました︒いま私が話したことについてでも結構ですし︑あるいはお二方の先生がそれぞれの研究を通じて注目している点について︑お話をいただきましょう︒

急展開する規模拡大

まず大島先生︑いかがでしょうか︒大島 私は︑二〇〇八年から二〇一一年まで︑山東省青島市の青島農業大学に勤 務しておりました︒その当時︑青島農業大学が合作社学院という︑日本でいうところの協同組合を主要な対象に学習・研究する学部を新たに創設しましたので︑そこで三年ほど仕事をしておりました︒その経験の中で︑現地の農村をいろいろ拝見いたしました︒そのときの主な関心は︑今︑高橋先生がおっしゃった内容で言うと︑一つは農民専業合作社の問題です︒

中国では︑二〇〇六年に合作社法がつくられ︑農民専業合作社が正式に法人格を得ましたので︑大体その時期が中国農ね︒それ以降︑山東省でも︑農村の合作社が非常に発展して︑さまざまな形態の合作社が生まれてきました︒もちろん︑その中には︑性格がよく分からないというか︑実質的に商人が経営するもの︑企業が子会社のように合作社を経営するもど︑て︑必ずしもすべてが農業を再編していが︑新しい動きが生まれていることには間違いがなかったと思われます︒ それから︑ちょうどこうした合作社の勃興期とほぼ同時期ですが︑二〇〇八年に︑ご存じのように中国は食品安全問題が顕在化して︑国民の食品への不安が非た︒例のメラミン事件が起こったのが︑す︒で︑この時期︑山東省の農村でも︑特に農産物・食品を輸出する企業を中心に︑どうやって農産物・食品の安全を確保するのかといった問題が︑非常に大きな課題としてあったということも︑その当時した︒ それから︑もう一つは︑山東省というのは︑日本やその他諸外国に向けての中国の農産物・食品の輸出基地という側面がございます︒食品安全問題が起こったこととも関連があるわけですが︑中国政府は︑食品安全を確保するために︑とりわけ輸出食品の安全を確保するために︑企業による農業経営とか︑企業による農産物加工といった事業を積極的に進めるという動きが促進されました︒

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大島一二[Oshima Kazutsugu] ・・・・・・・・・・・・

日本にやってくる農産物・食品も︑比が︑そういった企業が︑さらに︑農業の生産にまで関与してくるというか︑むしろもっと積極的に農業を取り込んでいくというか︑農業に進出してくるといったて︑は︑ちょうど図らずも大規模経営だとか農業の担い手の問題にも新しい動きが生まれたという時期であったと思います︒まさに︑現在の日本でいうところの

農業六次産業化

のような動向が促進されたわけです︒ それから︑農業の大規模経営を考えるときには︑今の企業的な経営の参入が大きな役割を果たすと思うのですが︑それ以外にも︑いくつかの事例ではありますが︑農家レベルでの大規模経営の成立などという事例も︑山東省では︑それほど大きな動きではありませんでしたが︑見られたということもございました︒ そのような︑全般的に非常に大きく動いている時期︑二〇〇八年から二〇一一年の間ですが︑山東省にいたということは︑非常に大きな勉強になったと感じております︒高橋 ありがとうございました︒私もなんどか︑立派な研究室にお邪魔したことがありましたね︒

農民工と農地資産

大島先生から︑山東省を中心とする中国農業の変化について︑非常にお詳しい話をしていただきました︒ありがとうございました︒

生︑ ます︒原田 私は︑主に農民工の問題を中心に研究を進めているのですが︑今回のテーば︑り︑今後の農業の担い手問題が一番気になる点です︒ご存じのように︑近年︑農民工は年々増加傾向にあります︒現在のは︑ね︒さらに︑最近の傾向としては︑四〇代︑五〇代といったやや年齢層の高い農民工が増加しています︒もちろん︑その背景には︑相対的に若い人たちがあまり農民工になりたがらないという点も指摘が︑

じわと進行していると判断してもよいと思います︒ これまでの研究で︑たとえば︑一〇年くらい前に︑このような状況は︑あまりしょうか︒農民工というのは肉体労働がら︑代︑と︑建築現場や工場などでの仕事は辛くなるでしょうから︑故郷に戻り︑農業生産に従事するようになるという一つの予

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・・・・・・・・・・・・・・・ 原田忠直[Harata Tadanao]

測があったのではないでしょうか︒しかし︑どうもそういう傾向にはなっていない︑というのが現状のようです︒

ら︑年︑で︑四〇代︑五〇代の農民工を中心に︑彼らの親世代︑いわゆる農村で暮らす高齢者層が

今︑何をしているのか

ということをアンケート調査しました︒

農業に関連する結果を簡単に紹介しまと︑は︑父親で五〇三%︑母親で五四四%でした︒私自身︑このような調査をしたのは初めてなので︑比較できないのです が︑半数程度しか農業をしていないというのは︑少々びっくりしました︒農民工の親世代が︑高齢化に伴い農業から急速に離脱し始めているのではないでしょうか︒農業生産の現場から担い手が失われつつあるという印象を強く持ちました︒ と同時に︑この問題を裏返せば︑農民す︒もちろん︑農業生産に携わっていない層がすべて介護を必要としているような状況ではありません︒非農業部門で働いているケースもあります︒ただ︑非農業部門で働いている割合は︑父親で約一七%︑母親で約一三三%︑ともに決して高くはありません︒あくまでも推測ですが︑働いていない層のなかには︑働けないケース︑つまり︑介護を必要とする高齢者がかなりの割合で含まれているかもしれません︒ 際︑

て︑が︑

弟・

す︒とって親の介護は︑かなり差し迫った問 す︒し︑は︑農民工の帰郷を促し︑担い手不足問題を多少は解消させるかもしれません︒アンケート調査結果では︑将来の親の介護についての質問に対して︑約六割が︑

り︑

と回答しています︒ですから︑親の介護問題が︑帰郷の大きな契機になる可能性はあります︒ ただし︑このような数字を紹介しておいて︑言うのも少々はばかられますが︑私は︑この調査結果をあまり信用していないんです︒ というのも︑これまで何度も農民工にアンケート調査を行ってきたのですが︑

帰郷する︑帰郷する

といっているのに︑ね︒が︑今日の農民工の高齢化という問題に現れているわけですから︒それに︑約二は︑

は︑市に呼び寄せたい

と回答しています︒都市で一緒に暮らしたいというのが︑農民工の本心ではないかと思っています︒ですから︑介護を契機に担い手が世代交

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代するということにあまり期待しない方がよいのではないかと︑つまり︑農業の担い手はますます減少するでしょうし︑その上︑主がいない農地が増え続けていくのではないかと予想しています︒

もう一点︑少なくとも︑今後︑農民工の親世代の高齢化︑さらに︑帰郷しそうと︑農地の流動化が活発に展開していくことが予想できます︒大規模化とか企業の参入も進むでしょうが︑流動する可能性を秘めた農地は有り余るのではないでしょうか︒つまり︑そうしたダイナミックな動きと並行して︑農家レベルでも︑農地のやり取りは活発になるのではないでしょうか︒そういうときに︑彼らが資金をどのように集めて︑農業に投資していくのか︒このあたりもすごく気になっているところです︒都市で資金を蓄えた農民工と何かリンクしていくのではないかと考えています︒

要するに︑多くの農民工は︑今後︑実が︑ いって農業そのものに興味を失うというく︑か︑自分たちが保有している請負権も含め︑農民工と農業とが︑これまでとは違う文脈で語られ始めるのではないかと予 想しています︒高橋 ありがとうございました︒原田先生は農民工の専門家ですので︑今日は︑そのあたりの変化についてのお話を期待しています︒

各論1 

企業経営と農業労働力の多様化

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拡大する農業企業経営と

 

農業労働代替

高橋 次に︑大島先生からも出された農業の企業経営︑合作社︑大規模農といったようなところに視点を当て︑彼らの今後の動向について話し合ってみたいと思います︒

この三つのカテゴリーが誕生してくる背景やいきさつ︑予測をするのは難しいですから︑どうなっていく可能性があるぐらいのところで︑道筋を話し合ってみたいなと︒ そして︑今︑原田先生が出された農民工に関連する問題と︑農業資本︑農業経へ︑ら︑どのように集まってくるかというのも重要な視点です︒私の理解が不十分な点がありますが︑そのあたりに焦点を当ててみたいと思います︒ が︑この点については私自身にも関心があって︑いわゆる国家級の農業龍頭企業があることはご存じでしょうが︑それになれる条件を見ますと︑大変厳しいんですね︒国家級と︑省級と︑何とか級とラり︑て︑

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・・・・・・・・・・・・・・・ 高橋五郎[Takahashi Goro]

条件も厳しいようですね︒企業規模︑総資産が七〇〇〇万元以上︑固定資産が三〇〇〇万元以上︑年間の売上が一億元以上︒さらには︑資産負債比率が少なくとも六〇%︑企業信用等級がA級以上︒だら︑ない︒

それから︑龍頭企業が傘下に置く農家の数が三〇〇〇戸以上でなくてはいけないし︑その龍頭企業が生産する食品なり生産物の現地調達率が七〇%以上でなくてはいけない︒あるいは︑当期生産額のうちの当期販売額の割合が九三%以上で なくてはいけない︑つまり︑すぐ売らなね︒て︑やがて国家級に上がっていくような系列になっています︒ こうした国家級がいくつあるかを調べると︑今まで一次から六次まで認定しているんですね︒それを集めると三〇〇〇社以上になります︒しかも毎年毎年増えているんですね︒国家級ですので︑所在地はどこかの省とか市とかなのです︒さらに増えていくと思うのですが︑企業が農産物生産やら加工やら何やらをやっているわけですね︒中には条件からはずれたために︑あとで取り消しになるところもあるのですが︑総体的にはどんどん増えています︒ ということを見ると︑龍頭企業への依存度が︑中国農業の生産︑流通︑加工の側面でも大きいし︑また︑この部分が担い手の大きな部分として発展していく可能性があると思います︒ このような流れはどうもやむことはなかろうと私自身は見ているわけですが︑ 農業企業が増え︑しかも個々の企業の農地面積もどんどん大きくなり︑企業経営が質量ともに膨張していくとなると︑プラス︑マイナスあると思うのです︒ プラスの面はたくさんありますよね︒効率がよくなって︑規模拡大が進んで︑農民が減っていく︒労働力を小農離農した農民が補完していくというようなことで置き換わっていって︑農産物の品質も規格もよくなるしというようなメリットがあると思うのです︒ 一方で︑マイナスもあるでしょう︒たとえば︑農業龍頭企業は農業労働力や離農した農民の置き換わりを含めて︑どうやって労働力を調達しているのかなと︑あるいは期待通り集まっているのかなと⁝⁝︒あるいは︑そこに無理が出て摩擦がおきやしないかとか⁝⁝︒ こういうところは︑実際︑まだよく分からないんですね︒

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農業企業による農民労働力吸収と

 

土地持ち労働者化 高橋 企業経営となると人の問題が出てくるわけですね︒どうやって労働力を集めるのか︒そして雇った人たちとの雇用関係ですね︒賃金の契約とか︑労働時間とか︑雇用保険とか︑その辺はどうなっているのかなと︒私は調べたことがないので何とも言えませんけれども⁝⁝︒大島 ご存じのように︑農村部でも賃金が上昇していますので︑以前のように何百人も雇うという状況は︑だんだん厳しくなってきていますね︒今︑どこの企業でも︑往時︵一九九〇年代後半から二〇〇〇年代前半︶の大体三分の二から︑さらに削減している場合には半分ぐらいまで従業員を減らしていますね︒そのくらい減らさないと︑現在の賃金水準と人手不足状態のもとではもうやっていけないのです︒普通の製造業企業でも︒農業関係企業でも︑同じような状況であるといえます︒ 高橋 ありますよね︒また︑こういう農は︑リーマンを明日から雇うというわけにいかないですものね︒手に職のある農民でないと︑雇い入れない︒ところが農民にも仕事先を選ぶ権利があるので︑農民にとっては売り手市場になっている地域もあるようです︒農作業賃金も大連近郊農村では一日︑数百元ですからね︒原田 大規模農業が生まれるということは︑イコール︑農業労働者が生まれてくるというわけですね︒高橋 そういうことですよ︒この面でも変化しているということ?大島 そうですね︒原田 これはまさに大転換ですよね︒請負農家から農業労働者に変わるということですね︒高橋 そうなんですよ︒これは大きな変化です︒農民の身分的︑経済的役割の大変化ですから︒大島 ただ︑注意しなければならない点は︑彼らは︑日本的に言うと︑いわゆる

土地持ち労働者

︵農地を請け負いなが ら︑非農業部門に従事する労働者︶であることですね︒原田 その通りですね︒ ね︒しかし中国にとっては大きな変化︒ 農業企業の労働力として︑どんな属性の人が働いているんでしょうかね︒大島先生︒大島 先ほどご紹介した山東省のお話でも少し触れましたが︑狭い範囲しかまだ見ていないので全国に共通した状況であるか自信がないのですが︑大体山東省の食品企業などは︑基本的には︑ほとんど地元の農民たちを雇用しているのです︒ただ︑これは明らかなことなのですが︑若い方はほとんどいません︒四〇代︑五〇代︑場合によっては六〇代ぐらいの農村のおばさんたちを雇っているというのが︑一般的な状況でした︒

だ︑は︑実際︑自宅で農業を続け︑同時に近隣の農業・食品企業に勤務するというこで︑す︒もし︑都市地域の他の賃金の高い会

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社に勤めるとなると︑年齢的にも技術的にもちょっと難しいわけですよね︒ですから︑もともと農業をやっていたわけなので︑地元企業に雇用されて農業生産や食品製造に従事するというのは︑あまり抵抗がないといえましょう︒

むしろ会社のほうも︑そういう人たちのほうが給料も安く抑えられるので好ましいという事情もございまして︑こうした農村の中高年の人たちを主に労働力として雇用しているという印象でした︒高橋 そういう意味では︑企業は農村に残っている中高年層の労働機会の受け皿としての側面︑雇用創出という側面もあるということですよね︒大島 そうですね︒原田 私も江西省でそういう規模経営をやっているのを見たことがあります︒それもやはり近所のおじさん︑おばさん︑本当に五〇代︑六〇代の人たちを雇っていました︒ただ︑先ほどの話の続きで言うと︑そういう人たちがだんだんいなくなってくるのではないでしょうか︒高橋 そういう人たちでさえも︑いなく る︒した︒ く︑バーかもしれませんが︑担い手の消滅という段階に入ってきているのかもしれませんね︒高橋 もう一つ︑労働力確保の件です︒農村の労働力が農民工としてどんどん出ていくじゃないですか︒農民工として出ていって︑どちらかというと本気でやるような人はあまり残っていないということなのですが︑彼らにとって︑しかし農業が生きがいになるようなインセンティブというのは︑ないわけじゃないと思うんですよね︒ 八〇歳︑九〇歳になって︑本当にもう体が動かないというなら別だけれども︑日本の農家の平均年齢も六五〜六六歳ですから︒それに比べると︑中国はまだ若いと思うんですね︒年を取っているとはいっても︑まだこの先一〇年︑二〇年は体を動かせる︑そういう体力があると思うので︑高齢者といわれる人たちが働けるような農業の技術とか仕組みとか︑そ のあたりを合作社でサポートしていくような仕組みはないものでしょうか︒大島 もちろん合作社の目標の一つは︑こうした農村労働力の就業機会の創出というものなので︑こうした動向は進展しつつあるのですが︑なかなか︑全体的に中国農業を動かすところまではまだ行っていないという印象でしょうか︒やはり中国の場合は合作社の歴史はまだごく浅いので︑当面は︑農業・食品企業︑さらに個人の大規模経営農家︑これらに依存せざるを得ないと思われます︒ もう一つは︑この事例はご存じだと思うのですが︑たとえば小麦の収穫など︑山東省では︑すでにほとんどが︑機械化作業請負農家のような農家出身の小企業家が担当しているわけですよね︒これがに︑で︑現在では個別の農家でコンバインを買うことはまずないわけですよ︒農村のほとんどの農家が︑彼らに小麦の収穫を依存していますので︒ に︑て︑スキームが一回できてしまえば︑中

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国では︑先ほど述べたように︑比較的楽観的に大規模化が進むのではないかと思えます︒今までのように︑零細農業を続ら︑も︑ションできれば︑発展する可能性はあるのではないかなという気がしています︒高橋 農民工が二億五〇〇〇〜六千万とか七千万人とか出ていっているじゃないですか︒働きに行く場所には遠方もあれば近場もあるけれども︑とにかくもう農る︒先ほど原田先生が言われた親の介護のために帰郷するという点はあるにしても︑都会に根付く農民も少なくないだろうし︑彼らが戻ってくる可能性は︑あまりないんじゃないかと思うんですよね︒ね︒て︑家庭をつくり︑住むところも︑あるいは子どもの教育も︑社会基盤までだんだんとできてくると︑農村へ帰るというのはね︒正月には帰るかもしれないけれども︑労働力として帰ることはなかなか難しいように思うんですよね︒ いつだったか︑愛知大学国際中国学研究センター︵ICCS︶の研究会で︑上海から来られた農民工が作った学校の先生たちが︑農民工の都会での地位の向上か︑た︒これを聞いて︑農民工にもさまざまな環境があり︑彼らを暗く映し出すような見方は一面的かもしれないと思ったものです︒ そうなってくると︑やはり問題は︑高き︑で︑その辺については︑私も結構楽観的なんだけれども︑このままいくと︑悲観的な部分も否定できない⁝⁝︒原田 日本もそうでしたが︑基本的に一度出て行った人は︑なかなか戻りませんよね︒日本の場合は︑農村に年寄りだけが残った︒中国も同じような傾向にあると思います︒または︑先ほども言いましたが︑親を都市に呼びたいというのが農民工の本心でしょう︒親を都市に呼び寄せられると︑土地の流動化が進みやすいのではないでしょうか︒ 本来であれば︑親が老いたから︑自分が戻って親と同じように農業生産に従事するというパターンがよかったのかもしれないけれど︑ちょっとそれは期待できないわけですから︑いっそ大胆に︑親も都市に呼びやすいような環境︑都市部における介護施設などの充実を図るような政策があれば︑農村の流動化︑土地の流し︑それは︑日本農業が辿った道とは︑異なる方向へ導く一つの方法かもしれませんね︒農外から参入する農業担い手高橋 現代の日本の農村もそういう趨勢ですよね︒徐々にではあるが︑規模拡大している︒中国と日本はまったく状況が同じではないけれども︑そういう方向へ行っています︒ 中国では︑規模拡大していく大きなイね︒しかし︑規模拡大の裏では︑世界の

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で︑生産性はなんとか維持・向上していることもあり︑農業労働力の質的悪化が表面化しにくいという現状があることは無視できません︒他方︑農民ではない分野から︑農業へ新規参入者が増えだしている点も注目される点でしょうね︒大島 そうですね︒農家内で後継者を獲得するのはやや困難になってきていますから︑農外からの新規参入者の存在は大きいですね︒高橋 農外者・新規参入者が旧来の農民層に代わって農業部門に入ってきているんですね︒要するに︑農業が一方向的に崩壊するのではなくて︑旧農民に代わって新農民が入ってくる︒こうなるともはや農民とは呼ばれず︑半農民・半市民なのかもしれませんが︑農業はそう悪いものではないという環境が生まれている︒原田 そうですね︒大規模な農家が三分の一できているというのも︑たぶん︑それは︑農民工が出ていって︑耕作放棄地が生まれたというのが︑大規模化の前提を作り出したわけですよね︒

調 も︑約半数の農民工の親の世代は︑農業ら︑そういう人の農地は︑放棄地になっているか︑または︑流動化しています︒上︑い︑ますます放棄地候補の農地は増えるでしょうから︑その放棄地を一つのビジネスチャンスとして受け止める人が生まれてきても不思議ではないし︑そういう流れの中で︑農業問題を考えたほうが実は自然なのかなと思います︒高橋 そうですよ︒自然に考えると︑まさにそういう動きが︑今︑進んでいるのではないかと思うんですね︒龍頭企業が入ってきたり︑合作社などが補うのではなくて︑これらが主体的に旧来の農民に置き換わりつつあるということだと思うんですね︒原田 放棄地が放棄地のままになってしまえば︑縮小・崩壊の道を辿るわけですが︑その実際は︑もちろん放棄地もたくさん存在するでしょうが︑大規模化される動きもしっかり見受けられるわけですから︑やはり中国農業は︑新しい方向性 のなかにあると捉えるべきかもしれませんね︒高橋 そうですね︒だから︑そういう方向へ行っているというのは︑我われの一致するところではないかと思います︒大島 そうですね︒高橋 それに対して︑制度がうまく付いていっているかどうかとなると課題もありますね︒大島 それと関係があるのですが︑中国も︑ローダウンしてくるわけでしょう︒そうしたら︑都市でそれほどたくさんの雇用が可能なのかという問題も︑出てきますよね︒ですから︑農民工たちが都市へ出掛けていったけれども︑結局︑親を呼ぶどころか︑雇用が不安定で自分の生活もままならないという状況も考えられると思います︒原田 今後︑農民工の生活がより不安定になる可能性は高いですね︒ただ︑雇用安︑も︑親を呼び寄せるケースも少なくないと思います︒もう二〇年以上前の話です

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が︑上海で知り合った農民工たちのなかには︑定職に就けず︑日雇いのような仕事をしながら︑その日暮らしをしているようなケースが多かったのですが︑そん

で︑か?

と聞いてみたんです︒そしたら︑

ば︑買えて︑お腹が満たされるけど︑故郷では︑お金があっても食べるものがないん

と言われたことがあります︒

もちろん︑現在の農村は︑そこまで貧困ではないですから︑都市か農村かといは︑ど︑貧困層には︑都市の方が住みやすいという感覚は今も残っているのではないでしょうか︒大島 そういうケースも︑出てくると思います︒そうすると︑その人たちが︑逆に︑農地も失い︑都会の仕事もないということになると︑社会安定の上では大変なことになるわけなので︑そのあたりの社会保障に関連した制度づくりが重要になると思います︒いわゆるセーフティーネットの構築が必要となると思います︒ に︒生まれてしまうというのも︑社会不安は増すでしょうし︑その対策としての財政的負担は計り知れないものがあるでしょうね︒大島 ええ︒現在のところは︑先ほど述べたように︑いわゆる

土地あり農民

ですが︑これが

土地なし農民

に転落する可能性もあるわけですから︒高橋 その可能性は十分にあります︒むしろ︑現実がそういう方向に進んでいるのでは?しかも︑これはけっして悪いことではないでしょうし︒原田 どちらも痛しかゆしというところか︒だ︑

都市が引き受けるというような可能性は小さいでしょうね︒少なくとも︑これまでの農民工の扱い方のなかで︑そうした傾向はあまり見られなかったわけですから︒ 農村の高齢者問題は︑農村で解決していくしかないのかもしれませんね︒かなり︑話は飛躍しますが︑農村の高齢者のに︑ が︑老人ホームをつくり︑日本でもあるように︑その老人ホームに入るときに︑担保として土地の使用権を渡して︑それを入居費の一部とすればどうでしょうか︒その間︑民間でも行政でも︑どちらでもいいのですが︑その使用権を活用して︑農業生産の規模化を実現し︑ビジネスを展開するというのはどうでしょうか︒大島 親は長期にわたって︑農村で農業と兼業に従事して︑安定した生活を送ってきましたが︑彼らの息子たちが都会で安定して暮らしていけるのかどうかという問題があると思います︒ に︑が︑現在の農民工たちは︑実質的な

地なし農民

に転落してしまいますね︒ただ︑親がいなければ︑親の介護の負担が軽減されれば︑何とか今までも暮らしていけたから︑これからも︑何とかなるんじゃないかなという気がするんですけれどね︒大島 一般に農民工は︑都会では相対的には不安定で︑底辺的な仕事に従事せざるを得ないわけですから︒そうすると︑

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安定性︑持続性は低いですよね︒高橋 最近は︑戸籍制度の緩和とか︑一人っ子政策の廃止とか︑あるいは転換とかが出てきているので︑新しい労働力を市場に投入していくため制度の見直しみ たいなことが始まっています︒それが中長期的に農村労働力の不足した部分に置き換わっていく予備軍というか︑そういう勢力になっていく可能性も期待できますよね︒

各論2 

農地の資産化

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土地使用権の大量移動と

 

不動産登記簿暫定条例

原田 なるほど︑そのように︑戸籍制度の変更と︑これから話題になってくる農地登記簿︵不動産登記簿暫定条例二〇一五年三月︶の問題とを絡めて考えると︑全然違う面が見えてきますね︒高橋 見えてくる︒だから︑その辺を注目すべきだと思います︒原田 今の状態のままで登記簿ができたことで︑農民にとって恩恵があるだろうと思いますが︑その根幹の部分の戸籍制 度を変えられたら︑またちょっと違うのかもしれない︒高橋 だから︑それがちょっと変わってくるのでしょうね︒原田 戸籍制度の変更によって︑農民という身分そのものが変わってしまうということですね︒高橋 今の︑固定しているから出てくる制度の新しい芽が︑制度が変わることによって︑せっかくの芽の伸びが止まってしまうという懸念ですね︒原田 ありますね︒高橋 殺されてしまうというか︑そういうところはある︒しかし︑大きな流れと は︑も︑それに順応しながら︑巧みに︑したたかに新しい方向へ向かっていくというのが一般的な動きだから︑中国にもそれが生まれてくると考えたほうが素直なんでしょうね︒大島 まさに転換期にある中国農業という感じですね︒高橋 ところで土地使用権の移動についてですが︑法律的に言うとちょっとよく分からないところがあるのですが︑企業でも︑村民大会の合意を得ると︑使用権を集めることができる仕組みになっているんですね︒原田 村の請負権は残したまま︑農民の請負権を残したまま︑ちょっと借りるとか︑そういうこと︒高橋 ええ︑そういう面もありますね︒要するに︑日本で言うヤミ小作みたいなものもあるでしょうし︑農民Aから農民Bへ正式な形で使用権が移って︑BからCへはヤミ委託みたいに︒そういう部分もあるようですから︑土地の集まり方というのはさまざま勢いのままなのでしょ

参照

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