製パ ン性 に及 ぼす食 物繊維 カラギ ーナ ンの影響
石 井 智 恵 美*D・ 中 林 み ど り*2)
EffectofDietaryFiber,Carrageenan,onBreadBaking.
ChiemiIshii,MidoriNakabayashi
1.緒 言
19世 紀 の初 め に は食 物 繊 維 は栄 養 成 分 の利 用 効 率 を 低 下 させ る無 用 の 成 分 とみ な され,
ほ とん ど注 目 され な か った が,近 年 で は成 人 病 の 予 防 ・改 善 や 腸 内 ビ タ ミ ンB群 の 合 成 促 進 効 果 等 が 注 目 さ れ 多 く の 報 告 が な さ れ て き て い る.現 在 我 が 国 に お い て 受 け 入 れ ら れ て い る食 物 繊 維1)と い う名 称 は,1980年 に dietaryfiber2)の 日 本 語 訳 と して 統 一 さ れ た と言 わ れ て い る.食 物 繊 維 の 定 義 に つ いて は未 だ 国 際 的 に は 統 一 さ れ て い な い よ うで あ るが,我 が 国 で は1980年 に 桐 山3)に よ って 提 唱 さ れ た 「人 の消 化 酵 素 で 消 化 され な い 食 物 中 の 難 消 化 性 成 分 の 総 体 」 とい う もの が ほぼ 受 け入 れ られ て い る.日 本 人 の 食 物 繊 維 摂 取 量 は1951〜1985年 まで の 調 査3)で は22.72g/
日か ら17.33g/日 まで 減 少 して お り,ま た こ れ まで は 特 た 所 要 量 も定 め られ て い なか った た め;第5次 改 定 日本 人 栄 養 所 要 量5)で は一 日 目標 摂 取量 を20〜259と 策 定 した.我 が 国 に お け る 食物 繊 維 の 平 均 的 な1日 摂 取 量 は15
〜19gと い わ れ て お り,こ の値 は大腸 ガ ンを 予 防 す る値6〜8)と して 示 唆 さ れ て い る1日18
〜20gよ り少 な い .そ こで 日常 食のなか で特 に そ れ と意 識 して 努 力 す る こと な く少 しで も
*Dい し い ち え み 文 教 大 学 教 育 学 部
*2)な か ば や し み ど り 文 教 大 学 教 育 学 部
食 物 繊 維 摂取 量 を 増 や す た め に,主 食 と な り う る食 パ ンに 食 物 繊 維 を 添 加 す る こ とが パ ン の 品 質 に ど の 様 な 影 響 を 及 ぼ す か を 検 討 した.
今 回 用 い た食 物 繊 維 は 耐 糖 能 改 善 効 果3)が あ り糖 尿 病 の予 防 と治 療 に 対 して も有 効9)で あ る こ とが 認 め られ て い る水 溶 性 多 糖 類 の 中 の カ ラギ ー ナ ンを用 いた.
カ ラ ギ ー ナ ン は 紅 藻 類 か ら得 られ るD一 ガ ラ ク トー スの 重 合 体 で あ るが 無 味,無 臭,無 色 で あ るの で,添 加 物 と して は理 想 的 で あ る
とい え る.
2.実 験 方 法
1)パ ン の 調 製
1‑1)材 料 の 基 本 配 合
パ ン製 造 は 表1の 基 本 配 合 に 従 っ て 行 っ た . 材 料 は以 下 に 示 す 通 り す べ て 購 入 し だ 小 麦 粉(日 清 製 粉:カ メ リ ヤ 強 力 粉),ド ラ イ イ ー ス ト(日 清 製 粉:Lス ー パ ー カ メ リ ヤ 顆 粒 家 庭 用),食 塩(日 本 た ば こ産 業:塩 化 ナ ト
リ ウ ム99%以 上),砂 糖(マ ル ハ:パ ー ル エ ー ス 印 上 白 糖),マ ー ガ リ ン(雪 印 乳 業:
無 塩 マ ー ガ リ ン),ス キ ム ミ ル ク(雪 印 乳 業:脱 脂 粉 乳),カ ラ ギ ー ナ ン(SIGMA:T ypeI,commercialgrad6).
1‑2)添 加 物 の 配 合
カ ラ ギ ー ナ ン は 表1の 基 本 配 合 に 対 して 添 加 し た.表2に 示 す 通 り,配 合 割 合 は小 麦 粉 の 量 を 基 準 と し て い る.
表1製 パ ン試 料 の 基 本 配 合 表2カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 量
小 麦 粉
ド ラ イ イ ー ス ト 食
砂
マ ー ガ リ
ス キ ム ミ 水
塩 糖 ン ル ク
2809 2.89 59 179 119 69 210祕
小麦 粉 カ ラ ギ ー ナ ン 小 麦 粉+
カ ラ ギ ー ナ ン
(9) (%)(9) (9)
A 280 0 0.0 280.0
B 280 1 2,8 282.8
C 280 3 8.4 288.4
D 280 5 14.0 294.0
1‑3)製 パ ン 法
製 パ ン は 製 品 の 固 体 差 を な く す た め に 製 パ ン機(自 動 ホ ー ム ベ ー カ リ ー:ナ シ ョナ ル, SD‑BT5)を 用 い た.図1に 示 す 様 に,製 パ ン 機 に よ る 製 パ ン の 全 行 程 は4時 間 を 要
し た.
試 料 を セ ッ ト し、 ス タ ー トボ タ ンを 押 す
■
陳 りi I iね か しl
l 鰊 りI
I l発 醐
1 暁 き上げ1
(30分)
(15分)
(10分)
(140分)
(45分)
匯 工程
4時 間1図1自 動製 パ ン機 によ るパ ンの製造
2)測 定 方 法 2‑1)膨 イ匕率
製 パ ン完 了 後 直 ち に製 パ ン機 よ り 出 し,網 の 上 に30分 放 置 した後 菜 種 法 に よ りパ ンの体 積 を 測 定 し,次 式 に よ り膨 化 率 を算 出 した.
焼 成 後 の 体 積(祕)
膨 化 率= ×100
焼 成 前 の 重 量(g)
本 来,膨 化 率 は焼 成 前 の 体 積 に対 す る焼 成 後 の 体 積 で 算 出 され る が,焼 成 前 の体 積 の 測 定 が で きな か った た め焼 成 前 の 重 量 を 用 い た.
2‑2)硬 さ
パ ンの 中 心 部 分 よ り縦 ・横2cmの 切 片 を15 個 と り,卓 上 型 物 性 測 定 器(山 電:TPU‑1)
に て 硬 さ を 測 定 し た.硬 さ は 測 定 曲 線 の 第1 ピ ー ク の 高 さ に よ っ て 示 さ れ る.測 定 条 件 を 次 に 示 す.ク リ ア ラ ン ス:3mm,圧 縮 速 度:
10mm/s,圧 縮 回 数:2,レ コ ー ダ ー レ ン ジ:
50mV〜200mV,チ ャ ー トス ピ ー ド:2.5mm/s, プ ラ ン ジ ャ ー の 面 積:0.5c㎡
2‑3)凝 集 性10)
2‑2)で 得 た 測 定 曲 線 の 第1ピ ー ク (A1)と 第2ピ ー ク(A2)の 面 積 よ り 次 式 に よ り 求 め られ る.
凝 集 性=A2/A1 2‑4)弾 力 性 重o)
2‑2)で 得 た 測 定 曲 線 の 第1ピ ー ク の 始 点 か ら第2ピ ー ク の 始 点 ま で の 距 離(B)と, 同 条 件 で 測 定 し た 標 準 物 質(粘 土)の 第1 ピ ー ク の 始 点 か ら第2ピ ー ク の 始 点 ま で の 距 離(C)と か ら次 式 に よ り求 め ら れ る.
弾 力 性=C‑B 2‑5)色 差 の 測 定11)
パ ンの 焼 き 上 が り の 色 を 測 色 色 差 計(日 本 電 色 工 業:ND‑101DP)を 用 い て 測 定 し,
ス タ ン ダ ー ド と 比 較 し た.方 法 はUCS(等 色 差)表 色 系 に 従 いL,a,bの 値 を 求 め,こ
の 値 よ り 色 差 △E(NBS単 位:Natiohal BureauofStandards)を 次 式 に よ り求 め た.
△E;△L十 △a十 △b
ま た,こ の 値 を 「色 差 と感 覚 的 な 差 の 関 係 」 に 対 応 さ せ て 感 覚 的 な 差 を 求 め た.
2‑6)色 名 の判 定11)
パ ンの 内 相 の色 を 測 色 色 差 計 を用 い て 測 定 し,色 名 の 判 定 を 行 った.方 法 はCIE(国 際 照 明 委 員 会)表 色 系 に従 いX,Y,Zの 値 を 求
製 パ ン性 に及 ぼ す 食 物 繊 維 カ ラ ギ ー ナ ン の 影 響
め,こ の 値 よ り色 度 」じ,〃を 次式 に よ り求 あ た.
Jじ=,〃= XY
X十Y十ZX十Y十Z
この 色 度 をCIE色 度 図 の κ とg座 標 上 に プ ロ ッ トして 色 名 の 判 定 を 行 った.
2‑7)白 度 の 測 定
2‑6)で 得 られ たZの 値 よ り次 式 に よ り 白度 を 求 め た.
Z 白度=
1.18 2‑8)官 能 評 価
官 能 検 査 は特 定 の パ ネ リス ト20名 に よ り同 条 件 の もとで 検 査 の 内容 を 伏 し,評 価 尺 度 法 を用 い て 行 った.検 査 は2種 類 設 定 し,そ れ
〈検 査2>
D(カ ラ ギ ー ナ ン5%添 加) E(D+水28η の
F(D+水56η の G(D+水84η の
官 能 検 査 に 用 い た 評 価 シ ー トを 図2に 示 す.
3.結 果 及 び 考 察
3‑1)カ ラ ギ ー ナ ン の添 加 に よ る膨 化 率 の 変 化
カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 率 を変 え る こ と に よ っ て 膨 化 率 が ど の よ う に変 化 す るか を 検 討 し, 結 果 を 表3に 示 した.ス タ ンダ ー ド(A)と 比 較 す る とカ ラ ギ ー ナ ン1%添 加(B)は そ の 体
〔 〕 の パ ン
1.見 た め は ど うで す か.
コ メ ン ト(
大変良 い 良 い 普通 やや悪い 悪 い ).
2.香 り は ど うで す か.
コ メ ン ト( )
3.味 は ど うで す か.
コ メ ン ト( )
4.食 感 は ど う で す か.
コ メ ン ト( )
図2官 能 検査 の評 価 シー ト
そ れ 日を 分 け て2回 ず っ 行 った.検 査 内 容 は 以 下 に示 す 通 りで あ る.
〈検 査1>
A(カ ラ ギ ー ナ ン無 添 加) B(カ ラ ギ ー ナ ン1%添 加) C(カ ラ ギ ー ナ ン3%添 加) D(カ ラ ギ ー ナ ン5%添 加)
積 が9.7%減 少 し,3%添 加(C)は22.3%, (D)は39.0%と 更 に減 少 した.小 麦 粉 に は グ
リア ジ ン と グル テニ ンが 含 まれ て お り,こ れ らの た ん ぱ く質 は加 水 して 混 捏 す る こ と に よ りか らみ 合 い,ま た新 た な 結 合 を形 成 して グ ル テ ン とな る.グ ル テ ンは 網 目状 の組 織 を持 ち,こ の 組織 は常 温 で は 弾 力 性 と伸 展 性 に富 む.イ ー ス トの 働 き に よ り生 産 され た 炭 酸 ガ
表3カ ラ ギ ー ナ ン の 添 加 に よ る 膨 化 率 の 変 化
(9) (祕) (%)
重 量焼 成前 体 積焼成 後 膨 化率
A 531.8 2164 406.9
B 534.6 1964 367.3
C 540 。2 1708.5 316.3
D 545.8 1354 248.1
表4カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 に よ る 物 性 の 変 化
(9)
硬 さ 凝集 性 弾 力性
A 116.38 0.77 3.15
B 128.03 0.79 3.22
C 170 .00 0.77 3.21
D 470.00 0.83 3.16
ス は グ ル テ ンの 網 目状 組 織 の 中 に 閉 じこ あ ら れ,そ れ に よ って パ ンの ドウ は膨 化 す る.一 方,カ ラ ギ ー ナ ンは 海 藻(紅 草 類:す ぎの り, つ の ま た)を 原 料 と した 可 溶 性 の難 消 化 性 多 糖 類 で あ り,吸 水,膨 潤 す る こ とに よ り グ ル テ ン 同様 網 目状 の 組 織 を形 成 す る.即 ち,パ ンの ドウ の 材 料 の 中 に カ ラギ ー ナ ンを 添 加 す る こ と に よ り,形 成 され る網 目状 組 織 が よ り 密 に,よ り強 固 に な りパ ンが 膨 化 しに く くな る の で は な い か と考 え られ る。 ま た,調 理 に 用 い られ て い る粒 状 の ゲ ル 化 剤1gは 通 常 約 10gの 水 を 吸 水 す る こ とか ら,添 加 さ れ た カ ラ ギ ー ナ ンがパ ン製 造 に必 要 な 水 分 を奪 う可 能 性 もあ る た め,そ の こ とに つ いて は後 の 項
目で 検 討 した.
3‑2)カ ラギ ー ナ ンの添 加 に よる物性 の変化 カ ラ ギ ー ナ ンを 添 加 す る こ と に よ って パ ン の 物 性 が どの 様 に変 化 す る か を 観 察 す る た め, 硬 さ,凝 集 性,弾 力 性 を 測 定 し表4に 示 した.
カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 量 が1%と3%の 時, パ ンの硬 さ は それ ぞ れ ス タ ンダ ー ドの1.10倍, 1.46倍 で あ り,さ ほ ど大 き な変 化 は認 め られ な か った.し か しな が ら,添 加 量 が5%の 時 に は4.04倍 とな り,硬 さが 大 き く上 昇 した こ と が うか が え る.こ れ は カ ラギ ー ナ ンの 添 加 量 が 増 加 す る と膨 化 率 が 低 下 す る こ と と も関 係 して い る と考 え られ る.
食 品 を 飲 み込 め る状 態 ま で 砕 く(咀 し ゅ く す る)に 要 す る力 を 表 す 凝 集 性 は,Aと 比 較
してB,Cで は ほ とん ど変 化 は な く,Dで そ の数 値 に多 少 の上 昇 が 認 め られ た.こ れ は カ ラ ギ ーナ ン添 加 に よ って パ ンの 硬 さは 上 昇 し て も歯 切 れ は悪 くな らな い こ と を示 して い る の で はな い か と 思 わ れ る、
外 か ら加 え た 力 を 除 い た と きの 変 形 の もど り ぐあ い を 示 す 弾 力 性 は,Aも,B,C,D
も本 実 験 条 件 下 で は ほ とん ど変 化 が な く,ど れ もス タ ンダ ー ドと同 じほ どに 一 度 目の 圧 縮 終 了 後 か ら二 度 目 の 圧 縮 前 ま で に形 が 回 復 す
る こ とが 分 か っ た.
3‑3)焼 き色 に対 す る カ ラ ギ ー ナ ンの影 響 パ ンの 焼 き色 に対 す る カ ラ ギ ー ナ ンの影 響 を 観 察 す るた め にパ ンの 表 皮(側 面,上 面) の 色 の 色 差 を 求 あ た.色 差 と感 覚 的 な差 の 関 係 を以 下 に示 す.
△E値
0〜0.5
0.5〜1.5
1.5〜3.0
3.0〜6.0
6.0〜12.0
12.0以 上
表5に 示 す 様 に,
増 や して も,感 覚 的 な差 はAと 比 較 して わ ず か に,感 知 さ れ る ほ ど に の 範 囲 内 で あ り側 面 の焼 き色 に特 に め だ っ た変 化 は な か った.一 方,表6に 示 す 様 に,上 面 の 焼 き 色 は カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 量 が1%,3%,5%と 増 え
感 覚 的 な 差 か す か に わ ず か に
感 知 で き る 目立 っ お お い に 非 常 に
カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 量 を
製 パ ン性 に 及 ぼ す 食 物 繊 維 カ ラ ギ ー ナ ンの 影 響
表5焼 き 色 に 対 す る カ ラ ギ ー ナ ン の 影 響(側 面):UCS表 色 系
L a b △E 感覚 的 な差
A B C D
4353●
45.04 42.53 44.17
10.80
11.09
11.15
1133●
16.52 17.24 16.19 16.98
一
1.70 1.11 0.95
一
感 知 さ れ る ほ ど に わ ず か に
わ ず か に
表6焼 き 色 に 対 す る カ ラ ギ ー ナ ン の 影 響(上 面):UCS表 色 系
L a b △E 感覚 的 な差
A B C D
36.91 37.40 42.43 48.58
11.65 11.09 12.04 11.03
12.61 12.94 15.70 18.94
一
〇.81
6.34
13.29
一
わ ず か に 大 い に 多 大 に
表7内 相 の 色 に 対 す る カ ラ ギ ー ナ ン の 影 響:ClE表 色 系
X Y Z X y 白 度 色 名
A B C D
44.23 44.31 47.28 45.23
45.26 45.37 48.26 47.81
38.29 38.57 40.45 37.19
0.346 0.345 0.348 0.352
0.・354
0.354
0.355
0.364
32.449 32.686 34.280 31.517
'無 彩 色
ト ICE iluminant
、"C"
る に 従 い感 覚 的 な 差 は わ ず か に,大 い に,多 大 に と 大 き な 変 化 が み ら れ た.そ こ で カ ラ ギ ー ナ ン の添 加 が パ ンの 内 相 の 色 に 変 化 を与 え る か ど うか を 重 ね て 検 討 した.表7に 示 す 様 に色 度xとyの 値 をCIE色 度 図 の 座 標 上 に プ ロ ッ トして 色 名 の 判 定 を 行 っ た結 果,す べ て 無 彩 色 の 領 域 に 分 類 さ れ た た め,更 にハ ン タ ー 白 度 を 求 め て 内 相 の 「白 さ 」 の 比 較 を 行 っ た.そ の 結 果,Cの 値 が 一 番 高 くな り 白 さ の 明 る さが 一 番 高 い と い う結 果 と な った が
実 際 の 見 た 目で は ほ とん ど ど れ も ス タ ン ダ ー ドと 変 わ らず,強 いて 言 うな らDの カ ラ ギ ー ナ ン5%添 加 の もの が 僅 か に 白 さ に くす み が 、 感 じ られ る と い う程度 で あ った.
3‑4)水 分 添 加 量 の 増 加 が 膨 化 率 に与 え る 影 響
3‑1〜3)の 検 討 は表1の 基 本 配 合 に 単 に カ ラ ギ ー ナ ンを 追 加 して 添 加 した もの で あ っ た が,カ ラギ ー ナ ン1gは 最 大 約10gの 水 を 吸 水 膨 潤 しゲ ル化 す る性 質 が あ る.そ の
た め カ ラ ギ ー ナ ンを 多 く添 加 した もの はパ ン 製 造 に必 要 な水 分 を カ ラ ギ ー ナ ン に と られ る か た ち と な る の で はな いか と思 わ れ た.そ こ で,カ ラギ ー ナ ン5%添 加(D)の 配 合 の 水 分 添 加 量 を 変 化 させ て 膨 化 率 を測 定 した.Dは カ ラギ ー ナ ン14.Og添 加 して あ るの で,最 大 140.Ogの 水 を 吸 水 す る可 能 性 が あ る.そ こ で 最 大 吸 水 率 の20%(E),40%(F),60%
(G)の 水 を添 加 して 検 討 した.そ の 結 果,表 8に 示 す 様 に水 分 添 加 量 を 多 くす る と膨 化 率 が い くぶ ん 回 復 す る傾 向 が 認 め られ た が,一 方 で 食 味 に多 少 変 化 が み られ た.そ の 詳 細 は 官 能 検 査 の 項 目で述 べ る.
3‑5)水 分 添 加 量 の 増 加 が 物 性 に与 え る影 響
3‑4)と 同様 に水 分 添 加 量 を 変 化 させ て 物 性 に 及 ぼ す 影 響 を検 討 した.表9に 示 す 様
に水 分 添 加 量 が増 加 す る に従 って 硬 さが 低 下 して い く こと が分 か る。 しか し な が ら,表4 と比 較 す る と良 く分 か るが,カ ラ ギ ー ナ ン添 加3%のCの 硬 さ に は遠 くお よ ばず,僅 か に や わ らか くな る程 度 に と ど ま っ た.凝 集 性 に 関 して は,水 分 添 加 量 が 多 くな る ほ ど低 下 し, 咀 嚼 し飲 み込 む こ とが よ り容 易 に な る こ とが 分 か る.し か し,GがFよ り も硬 さ,凝 集 性 と も数 値 が 高 くな って い る の は,水 分 含 有 量 が 多 す ぎて 歯 切 れ が 悪 くな るた あ で は な いか と思 わ れ る.弾 力 性 に関 して は表4と 比 較 し て も さ ほ ど大 きな 変 化 は み られ な い が,相 対 的 に 減 少 傾 向 が認 あ られ る よ う に思 わ れ る.
ま た,カ ラ ギ ー ナ ンの 最 大 吸 水 率 の60%の 水 を 添 加 したGは 水 分 が 多 す ぎ る た め か パ ン製 造 が 困 難 で あ り,こ れ 以 上 の 水 分 添 加 は本 実 験 条 件 下 で は で きな い と判 断 した.
表8水 分添加 量 の増加 が膨 化率 に与 え る影 響
(祕) (9) (祕) (%)
水分 添加量 重量焼 成 前 体積焼 成後 膨 化 率
D 210 545.8 1354 248 .1
E 238(+28) 573.8 1660 289.3
F 266(+56) 601.8 1770 294.1
G 294(+84) 629.8 1772 281.3
表9水 分 添 加 量:の増 加 が 物 性 に 与 え る 影 響
(9)
硬 さ 凝 集 性 弾 力 性
D E F G
470.000,833.16 404.800.753.20 350.350.663.15 376150.703.13
表10水 分 添 加 量 の 増 加 が 焼 き色 に 与 え る 影 響(側 面)UCS表 色 系
L a b △E 感 覚 的 な 差(Standard:A)
D E F
・
G
44。17
47.81
48.43
49.37
11.33 10.66 12.44 10.76
16.98 18.55 19.29 19.25
0.95 4.74 5.86 6.45
わ ず か に め だ つ ほ ど に め だ っ ほ ど に 大 い に
製 パ ン性 に 及 ぼ す 食 物 繊 維 カ ラ ギ ー ナ ンの 影 響
3‑6)水 分 添 加 量 の増 加 が 焼 き色 に与 え る 影 響
水 分 添 加 量 の 増 加 が パ ンの 焼 き色 に与 え る 影 響 を 観 察 した.色 差 はAの ス タ ンダ ー ドを 基 準 に して 算 出 した.パ ンの 側 面 の 表 皮 の 色 は,表10に 示 す 様 に添 加 した 水 分 量 が 増 え る に従 って 色 差 の 値 が 大 き くな り感 覚 的 な 差 も
「わ ず か に」 か ら 「め だ っ ほ ど に 」,「 大 い に 」 と変 化 し,パ ンの 焼 き色 が 濃 くな って い る こ と が 分 か る.し か し,パ ンの 上 面 の 表 皮 の 色 は添 加 した 水 分 量 が 増 え る に 従 って 色 差 の 値 が 小 さ くな り感 覚 的 な差 も 「多 大 に 」 か
して も水 分 量 が 増 加 す る(D〜G)と パ ンの 内相 の色 の 白 さ,明 る さが 減 少 す る こ と が 分 か っ た.
3‑7)パ ンの 内部 組 織 の観 察
パ ンの 内部 組 織 は パ ン酵 母 の 働 きに よ り生 産 され た 炭酸 ガ ス が グル テ ンの 網 目状 組 織 の 中 に と じ込 め られ て細 か いす だ ち が形 成 され る もの で あ る が,そ の きめ は均 一 な もの が 良 い と され て い る.そ こでA〜D,D〜Gの 内 部 組 織 を写 真 に 撮 り状 態 の 比 較 を行 った.
カ ラギ ー ナ ンの 添 加 量 を 変 え たA〜Dを 比 較 す る と,Aの ス タ ン ダ ー ドに た い してB, 表11水 分 添 加 量 の 増 加 が 焼 き 色 に 与 え る影 響(上 面)UCS表 色 系
L a b △E 感 覚 的 な 差(Standard:A)
D E F G
48.58
45.90
4241●
43.25
11.03 12.95 12.60 11.03
18.94 18.10 16.23 15.08
13.29 10.61 6.65 6.83
多 大 に 大 い に 大 い に 大 い に
表12水 分 添 加 量 の 増 加 が 内 相 に与 え る 影 響:ClE表 色 系
X Y Z X y 白 度 色 名
D E F G
45.23 45.78 43.16 42.21
4781●
46.32 43.98 43.08
37.19 37.94 35.61 35.60
0.352 0.352 0.352 0.349
0.364 0.356 0.358 0.356
31.517
32.153
30.178
30、169
無 彩 色 ICE iluminant
"C"
ら 「大 い に 」 と変 化 し,パ ンの焼 き色 が 薄 く な って い る こ とが 分 か る.そ こで,3‑3) の項 目 に お け る検 討 と同 様 に水 分 添 加 量 の 増 加 が パ ンの 内 相 の 色 に 影 響 を与 え るか ど うか を観 察 した.表12に 示 す 様 に色 名 は す べ て 無 彩 色 の 領 域 に 分 類 さ れ た.ハ ンタ ー 白度 に よ る 比 較 で は,FとGよ りDとEの 方 が ハ ン タ ー 白度 の 数:値が 高 く,白 さ に明 る さが あ る こ と が分 か った.表7のA〜Dの 数 値 と比 較
C,Dは カ ラギ ー ナ ンの 添 加 量 が 増 加 す る に 従 って 組 織 の きめ が よ り細 か くな り,膨 化 し な くな る こと が 分 か る.ま た,組 織 の 目が つ ま って くる の でC,Dは か た そ うな様 子 が 見 て とれ る.
水 分 添 加 量 を 変 え たD〜Gを 比 較 す る と, Dの 組 織 は 目 が っ ま り固 そ うで あ るが,水 分 添 加 量 が ふ え て い くに従 って 目の つ ま りが 緩 和 され,す だ ち が ス タ ンダ ー ドに近 い形 に回
復 して い る よ うに 見 え る.し か しな が ら,き めが 粗 く,不 均 一 にな り実 際 の 膨 化 率 は ス タ ンダ ー ドに は遠 く及 ば な い.
3‑8)官 能 検 査 に よ る質 的評 価
食 物 繊 維 の うち の カ ラ ギ ー ナ ンを 添 加 した 場 合 の製 パ ン性 に 及 ぼ す 影 響,水 分 添 加 量 を 増 加 した 時 の 変 化 を 科 学 的 に検 討 して き た が, 実 際 の お い しさ,好 ま しさ を評 価 す る に は人
何 か 別 の パ ン ら しか らぬ に お い が す る と い う よ うな 意 見 は皆 無 で あ った.味,食 感 に 関 し て は,Bの カ ラ ギ ー ナ ン1%添 加 がAの 無 添 加 の もの よ り良 い 評 価 を得 た.理 由 はパ ンの 表 皮 が サ クサ ク と香 ば し く,そ れ で い て 内相 は や わ らか く弾 力 も適 度 に あ っで た い へ ん お い しい と い う もの で あ っ た.Dの カ ラギ ー ナ ンを5%添 加 した もの は,膨 ら ま な か っ た た
表13官 能 検 査 結 果(検 査1)
見 た め 香 り 味 食 感
A B C D
0.75 0.67 0.92
‑0 .18
0.92 0.64
‑0 .18 0.27
0.73 1.36 0.42
‑0 .82
1.00 1.30 0.33
‑0 .82
表14官 能 検 査 結 果(検 査2>
見 た め 香 り 味 食 感
D E F G
0.75 0.92 0.42 0.00
0.67 0.25 0.58 0.58
0.33 0.58 0.17 0.17
一 〇.08
0.83
0.08
0.58
間 の感 覚 に頼 らざ るを 得 な い.そ こで,特 定 の パ ネ リス ト20名 に よ る官 能 検 査 を 実 施 した . 方 法 は5段 階 評 価 尺 度 法 を 採 用 した.本 検 査 に用 い た 評 価 シー トを 図2に 示 す.各 パ ン ご と に評 価 を シ ー トに 記 入 して も らい,そ れ ぞ れ の 評 価 を 点 数 化 して 集 計 した.評 価 は大 変 良 い を+2,良 い を+1,普 通 を0,や や 悪 い を 一1,悪 い を 一2と した.結 果 を 表13,14に 示 す.
A〜Dの 検 討 で は,Bの パ ンが総 合 的 に高 い評 価 を 受 け て い た.各 項 目別 に検 討 して み る と,見 た 目で はCが 一 番 好 評 で あ った.そ れ は 内 面 の 色 が か す か に黄 色 が か って い て, 更 に す だ ちが 細 か く均 一 で あ る と い う理 由 で あ った.Dは カ ラ ギ ー ナ ンの 添 加 量 が多 く膨 らま な か っ た た め す だ ち の 目が っ ま り,そ の た め か見 るか らに か た そ うで あ る と い う評 価 で あ った.香 り に っ い て はAの カ ラ ギ ー ナ ン 無 添 加 の パ ンが 一 番 パ ン ら しい 香 りが す る と 評 価 され た.B,C,Dの パ ンは 香 りが あ ま り 感 じ られ な い と い う評 価 で あ った.し か し,
め 全 体 に か た い 出 来 上 が り と な りや や 評 価 が 下 が った.し か しな が ら,こ れ らの 評 価 はす べ て4種 類 の パ ンを 食 べ 比 べ て あ え て 出 した 結 果 で あ って,大 半 の 人 は と り た て て 差 を感 じ る ほ ど で は な か った と答 え た.一 番 評 価 の 低 か っ たDで さえ 単 独 で 食 べ た らお い しい と 思 う と い う意 見 が 多 か っ た.ま た 少 数 で は あ った が,Dの パ ンが し っ と り して 弾 力 性 に 富 み 一 番 お い しい と評 価 した 人 もい た.従 っ 、 て,カ ラギ ー ナ ンの 添 加 は少 な くと もパ ンの 質 的 低 下 は もた ら さな か った と言 え る.
D〜Gの 検 討 に お い て,総:合 的 に はEが 一 番 良 い と評 価 され た.見 た め で はEの 評 価 が 高 か った.加 水 量 が増 え る に従 って 組 織 の 目 の っ ま りが 緩 和 され る た めDよ りE〜Gの ほ うが や わ らか そ う に 見 え る よ うで あ っ た.し か し,同 時 に きめ が よ り不 均 一 に な って い く た め,Gは 見 た め の 評 価 が 一 番 低 か っ た.D は ふ く らま な いた め か た そ うで は あ るが,逆 に き め の細 か さ,均 一 さ が 好 印 象 を 与 え た よ
うで あ る.ま た,Dは 水 分 量 が 少 な い た め か
製 パ ン性 に及 ぼ す 食 物 繊 維 カ ラ ギ ー ナ ンの 影 響
他 と比 べ て ぱ さぱ さ して い る と感 じた人 も い た.香 り に っ い て は,Eの 評 価 が 一 番 低 い 結 果 とな っ たが,コ メ ン トを検 討 して み る と ど れ もほ とん ど に お い が な く,パ ン ら しい 香 り も しな い が 嫌 な に お い も特 に しな い と い う も の で あ り,そ れ ほ ど気 にな る差 は感 じ られ な か っ た よ うで あ る.味 はEが 高 い評 価 を 得 た.
コ メ ン トを み る と ほ とん どがD〜Gと も特 に 差 は感 じ られ な い と答 え て い る た め,こ の 評 価 は 食 感 と も関 係 して い る と考 え られ る.食 感 はEが 非 常 に良 い評 価 を 得 た.カ ラ ギ ー ナ
ンの 吸 水 量 の20%分 の水 を 基 本 の 配 合 に追 加 して 加 え る こ と に よ り約1割 膨 化 率 が 回復 し た こ とで 硬 さや ば さっ き感 が 緩 和 され た こ と が 評 価 され た と考 え られ る.60%分 の 水 を 追 加 して加 え た もの はみ ず み ず しい,し っ と り して い て 咀 嚼 しや す い と答 え た 人 も い たが, 大 半 はべ た っ い て い る,も った り して い る と
い う 印象 を 持 った よ うで あ る.ま た,水 分 添 加 量 が 多 い た め か,口 の 中 に入 れ る とひ ん や
り と して 冷 た い と答 え た 入 もい た.
4.要 約
食 パ ン に カ ラギ ー ナ ンを 添 加 して そ の 品 質 を検 討 した結 果 次 の こ とが 分 か っ た.
① 膨 化 率 は カ ラギ ー ナ ンの 添 加 量 が 増 加 す る にっ れ て 低 下 す る.② か た さ は カ ラ ギ ー ナ ン の 添 加 量 が 増 加 す る にっ れ て か た くな る.③ Dに 対 して カ ラギ ー ナ ンの最 大 吸 水 量 の20〜
60%の 範 囲 で 水 分 を 増 加 させ る と膨 化 率,か た さ は あ る程 度 回 復 す る.④ 色 につ いて は 表 皮,内 相 と も多 少 の 色 の 違 い は あ る もの の, 一 番 焼 き 色 の 濃 か ったDも 実 際 の見 た 目 はA と比 べ て も特 に 色 が 濃 い と い う ほ ど で は な か った.⑤ 官 能 検 査 の 結 果,お い し くな い と
答 え た人 はい なか った.そ こで,カ ラギ ー ナ ンを5%添 加(14g)し た 食 パ ンに は ど の く らい 食 物 繊 維 が 含 まれ て い るの か を考 え て み る と,パ ン1斤 分 の小 麦 粉280gに は約7.5g の食 物 繊 維 が も とか ら含 ま れ て い るの で,合 計21.5gと い う こ と に な る.こ れ を6枚 切 り
に す る と1枚 当 た り約3.6gで あ る.1日 の 目標 摂 取 量 が20〜25gと 考 え る と,1食 当 た り7〜8gは 摂 取 した い.そ の うち の 約 半 分 が この1枚 の パ ンか ら摂 取 で き る こ と に な る.
白米 飯(茶 碗1杯)の0.6g,胚 芽 米 飯(茶 碗 ユ杯)の0.8gと 比 較 す る と良 い 結 果 が 得
られ た と考 え られ る.
文 献
1)印 南 敏:日 農 化,54,110(1960) 2)Hipsley,E.H.:Brit.Med.J.,2,420(1953) 3)桐 山 修 八:化 学 と 生 物,18,95(1980)
4)地 方 衛 生 研 究 所 全 国 協 議 会 編:食 物 繊 維 成 分 表,第 一 出 版,東 京(1990)
'5)厚 生 省 保 健 医 療 局 健 康 増 進 栄 養 課 監 修 : 第5次 改 定 日 本 人 の 栄 養 所 要 量,第 一 出 版,東 京(1994)
6)Cummings,J.H:.,eta1:Gastroentero logy,103,1783(1992)
7)中 道 重 之 他:日 本 消 化 器 病 学 会 雑 誌,86, 2104(1989)
8)Saito,T.,eta1:J.:Nutr。Sci.Vitaminol., 37,493(1991)
9)Jenkins,D.J.A.,eむa1::Lancet,2,172 (1976)
10)浦 上 智 子:調 理 科 学,理 工 学 社,東 京
(1983)
11)島 田 淳 子 他:調 理 と お い し さ の 科 学,朝 倉 書 店,東 京(1993)
丶
A:ス タ ン ダ ー ド
C:カ ラ ギ ー ナ ン3%添 加
B:カ ラ ギ ー ナ ン1%添 加
D:カ ラ ギ ー ナ ン5%添 加
製 パ ン性 に及 ぼ す 食 物 繊 維 カ ラ ギ ー ナ ンの 影 響
D:カ ラ ギ ー ナ ン5%添 加
F:D+40%水 分 添 加
E:D+20%水 分 添 加
G:D+60%水 分 添 加