算数教育における創造性の育成法に関する研究
教科・領域教育専攻 自然系コース(数学) 菅 津 純 夫
1.はじめに
21世紀を迎え,現代社会は以前にもまして急 激な変化を迎えている。21世紀に生きる子ども たちを育てていくために 2002年から新学習指 導要領が始まり,学校現場では,
r
生きるカJを 育むために試行錯誤を繰り返しながら学習指導,生活指導に取り組んでいる。
2003年に実施したIEAの報告では,現在の 我が国の児童生徒の学力は,国際的にみてトッ プクラスであるが,算数数学に対する関心・意 欲が国際的にみて低いことがわかる。
今回の学習指導要領の算数・数学科の改善の 基本方針では,創造性の基礎を培うことが重要 視されている。
このように,算数・数学教育において創造性 の基礎を培う学習を行うことが,今の学校教育 において最も重要な課題の一つであることは明 らかである。しかし,創造性の基礎を培うため の理論的・実践的な研究は学校現場ではほとん ど行われていないのか現状である。
以上のようなことから,これからの算数・数 学教育では,基礎・基本の定着や関心・意欲の 向上に加えて,創造性を育成することがもっと も重要な課題の一つであるといえる。
そこで本研究では,その根源となる小学校教 育における創造性の基礎を培うための算数科の 指導法を提案し,実践を還してこの学習法の意 義と効果を明らかにする。
つ 臼
円ぺ U
q ο
指 導 教 員 斎 藤 昇
2.研究方法
調査は,千葉県の北東部にある小学校8校で,
平成 17年1月に6年生 163名,平成 17年6 月に 5年生183名を対象に行った。 A校(実験 群)の6年生15名, 5年生21名は,構造的問 題づくり学習法,チャート交流会学習法を行っ た後,他7校(統制群)の6年生 148名, 5年 生160名は,通常の授業をした後に調査をした。
調査方法は,小学校 6年生 r8.箱の形を調 べようJ,小学校5年生 r3.四角形をつくろうj
を題材にし,認知面の学力を調べるための到達 度テスト,情意面の学力を調べるための情意テ スト 1(単元に関するアンケート)・情意テスト
n
(算数学習についての今の気持ち入創造性に 関する情意面を測定するテスト(創造性態度テ スト CAS),創造性を測定するテスト(創造性 テスト)を実施した。3.実験結果と分析及之氏考察 (1)到達度テストの結果
単元終了後の実験群と統制群を比べた合計 得点,手順・関連の得点は,有意水準 5%で有 意差があることがわかった。実験群では,知識・
技能の理解だけでなく問題を解決するための手 順や単元全体の関連性の理解を深めることがで きた。
(2)情意テスト Iの結果
実験群では,単元に関する好意度,容易度,
重要度,意欲度,自信度を高めることができた。
(3)情意テストEの結果
実験群では,算数学習に対する興味・関心・
意欲を高めることができたD
(4)創造性態度テスト CASの結果
単元終了後の実験群と統制群を比べた合計 得点とすべての因子の得点が有意水準 5%で有 意差があることがわかったo 実験群では,創造 性を高めるための基となる創造性態度を育てる
ことができた。
(5)創造性テストの結果
6年生では,合計,拡散性が有意水準 5%, 流暢性が有意水準10%,柔軟性,独創性が有意 水準20%で有意差があることがわかったo5年 生では,合計得点と各因子の得点は,有意水準 5%で有意差があることがわかった。実験群 6 年生の得点は統制群の得点より,合計は約1.4 倍,拡散性は約1.3倍,流暢性は約1.4倍,柔 軟性は約1.2倍,独創性は約 5.5倍だ、った。実 験群5年生の得点は統制群の得点より,合計は 約1.6倍,拡散性は約1.5倍,流暢性は約1.7 倍,柔軟性は約1.8倍,独創性は約 16.0倍だ、っ た。実験群は統制群より,拡散性,流暢性,柔 軟性,独創性の創造性を発達させるための能力 が統制群より高かった。実験群では,創造性能 力を高めることができた。
(6)各得点聞の相関について
実験群では,創造性テスト・創造性態度テス ト・到達度テストの相関係数が 0.4以上でかな り相関があり,統制群に比べて各得点聞の相闘 が高かった。
4.結論
本研究は,算数科における創造性を育成する 学習法(構造的問題づくり・チャート交流会学 習法)を提案し,その学習法を実施して効果を 調べた結果,以下のことが明らかになったo
(1) 構造的問題づくり・チャート交流会学習 法は,知識・技能の理解を深めるだけでな く,問題を解決するための手順や単元全体 の系統性や関連性の理解等の認知的学力を 高めることがで、きる。
(2) 構造的問題づくり・チャート交流会学習 法は,児童の算数学習への関心・意欲等の 情意的学力を高めることができる。
(3) 構造的問題づくり・チャート交流会学習 法は, 創造性の基盤となる創造性態度(創 造性に関する情意面)を育てることができ
る。
(4) 構造的問題づくり・チャート交流会学習 法は,児童の創造性能力を育成することが できる。
(5) 創造性能力を育成するには,創造性態度 を育成し,構造的思考力を高めることが重 要である。
以上のような結果から,構造的問題づくり・
チャート交流会学習法を行った実験群で、は,創 造性態度が育てられ,構造的思考力が活性化さ れたことにより 創造性能力を高めることがで きた。構造的問題づくり・チャート交流会学習 法は,算数学習への関心・意欲を高め,知識・
理解を深めるだけでなく,構造的思考カや創造 性態度を伸ばすことで,創造性を育成すること ができる学習法であることが明らかになった。
今後の課題としては,以下のことが残されて いる。
(1) 児童の実態や発達段階に応じて創造性を 育成する学習法を改善すること。
(2) 領域に応じて創造性を育成する学習法を 改善すること。
(3) 児童の発達段階や領域に応じて創造性テ ストを改善すること。
‑333‑