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児童の言語能力を育成する言語技術を活用した授業実践

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Academic year: 2021

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児童の言語能力を育成する言語技術を活用した授業実践

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 金児 正史 教職実践力高度化コース 実習指導教員 泰山 裕 中 津 正 美

キーワード:言語能力 言語技術 授業改善 1.問題の所在と本研究の目的

実習校の「平成30年度全国学力・学習状況調 査」の国語Bの結果から,学習指導要領の「読 むこと」,「書くこと」の領域において,学校平 均正答率が,県平均正答率,全国平均正答率よ り低かった。また,実習校が平成30年度に徳島 県へ提出した「学力向上実行プラン」にも,「問 題などの文章を的確に読み取ること」,「目的や 意図に応じて,内容の中心を明確にして書いた り話したりする力」に課題があることを明示し ている。

中央教育審議会「言語能力の向上に関する特 別チームにおける審議の取りまとめ 資料2」

(2016)は,言語能力を構成する資質・能力を 図示しており,テクスト(情報)を理解するた めの力が「認識から思考へ」,文章や発話により 表現するための力が「思考から表現へ」という 過程の中で働くことを示している(図1)。さら

に,「言語能力を構成する資質・能力を、資料2 (本稿の図1)の「認識から思考へ」、「思考から 表現へ」という過程の中で働かせることによっ て育成される。この過程の繰り返しは言語活動 を通じて行われるため、言語能力の向上を図る ためには、発達段階に応じた言語活動の充実が 必要である。(括弧内は筆者の注釈)」(p.9)と 述べている。そこで,実習校の課題を解決する ために,実習校の児童の読解力と表現力の向上 を目指す学習指導案を作成し,この学習指導案 に沿った授業を実践し,読解力と表現力の育成 に寄与する授業だったかどうか,授業の成果と 課題を考察することを,本研究の目的にした。

2.本研究の方法

本研究は以下の手順で進めた。

(1) 実習校の課題を明確にする。

(2) 本研究の目的と実験仮説を明確にする。

(3) 言語技術に関する先行研究にあたる。

(4) 課題解決のための学習指導案を作成する。

また,表現力調査問題を作成し,学習指導 の評価の一助とする。

① 児童が言語技術を獲得するための授業

の学習指導案を作成する。

② 獲得した言語技術を活用する場面を取 り入れた,教科等の授業の学習指導案を

作成する。

(5) 学習指導案に沿った①と②の授業を実践 し,分析・考察を行う。

(6) 表現力調査問題を分析・考察し,実験仮

図1 中央教育審議会「言語能力の向上に関する特別チ ームにおける審議の取りまとめ」 資料2(2016)

(2)

表1 言語技術の授業実施学年一覧表 説の検証を行う。

3.本研究の実験仮説

日本の学校教育における言語技術の実践研究 を行う三森の研究は,我が国における言語技術 の育成に焦点を当て,学習者の言語技術を育成 することで,読解力と表現力を育成する研究で ある。そこで,本研究の実験仮説を,「言語技術 を獲得した児童に対して,言語技術を駆使する ように仕組んだ学習指導を行うならば,学習過 程で児童は読解力や表現力を活用しながら,思 考したり議論したりすることができるようにな るだろう。」とした。

4.言語技術の先行研究

(1)言語技術(Language Arts)について 言語技術(Language Arts)は,欧米や,日本 以外のほとんどの東南アジア,中近東,アフリ カなど,世界の多くの国々で幅広く実施されて いる世界基準の言語教育である。三森(2013)

は,言語技術を「思考と表現の方法論を具体的 なスキルとして指導する総合的な体系」であり,

「発達段階に応じて、情報の取り込み(読むこ と・観ること・聞くこと)、思考(批判的・論理 的・分析的・多角的・創造的思考など)、表現(話 すこと・書くこと)などのスキルを体系的、か つ具体的に指導する」ことと定義している。

(2)言語技術の先行実践事例

宮城県にある私立聖ウルスラ学院英智小・中 学校では,三森の指導のもと,言語技術教育の 実践を行っている。教科として「言語技術科」

を設け,各学年とも週1校時,言語技術の授業 を行っている。その成果として,私立聖ウルス ラ学院英智小・中学校の児童・生徒は,平成29 年度の全国学力・学習状況調査の,特に記述式 の問題形式で,全国の平均正答率を10~20%ほ ど上回っていることが示されている。

5.学習指導案の概要

5.1 言語技術の学習指導案の概要

三森が提唱する言語技術の指導内容から,実 習校で,問答ゲーム,絵の分析,再話,要約,

の4つの言語技術の授業を行った。これらの言 語技術の学習指導は,表1に示すように,2018 年度と2019年度で継続して実施した。表1の 問答ゲーム①,絵の分析①,問答ゲーム②,

絵の分析②,再話①,要約①の各指導内容は,

学年が異なっても同じ内容の授業を行った。

なお,問答ゲーム②は,授業の始めの 10分程 度の時間を利用して1,2回行った。また,

再話①は朝の活動の時間に3,4回行った。

5.2 言語技術を活用した国語と算数の学習 指導案の概要

問答ゲーム,絵の分析,再話,要約の4つの 授業で獲得した言語技術を活用した国語と算数 の学習指導案を作成し,作成した学習指導案に 沿って授業を行った。児童が獲得した言語技術 は,国語と算数の学習でも活用できることや,

言語技術の有効性を児童が実感することで,児 童が様々な場面で言語技術を活用しようとする 意識づけを行い,言語技術を教科等で活用でき る資質・能力にすることを目指した。小学校5 年では,国語「注文の多い料理店」,算数「面積」

の授業を行い,小学校6年では,国語「海のい のち」,算数「比例と反比例」の授業を行った。

(3)

表3 小学校6年集計表②

上段は(正答または準正答へ上昇)の児童数,

下段は<正答または準正答から下降>の児童数 表2 小学校6年集計表① 6.授業の実際と分析

6.1 言語技術の授業の実際と分析

本研究で行った4つの言語技術の授業では,

児童が意欲的に取り組む姿が多く見られた。そ の中の絵の分析では,グループの話し合いや全 体で議論する場面を取り入れた学習を行った。

絵を観察して考えた各自の結論と理由を伝え合 い,グループで話し合ってグループの結論を1 つにまとめる活動を行った。その後,各グルー プの結論と理由を発表してクラスの結論を1つ にする活動を行ったが,小学校6年では活発な 議論が行われた。今後,話し合いの場を多く設 定し,話し合う経験を積み重ねることが必要で あると考える。また,普段から自分の考えを主 張すること,多様な考え方から学んでいくこと の重要性を伝えなければならないと感じた。

6.2 言語技術を活用した国語の授業の実際 と分析

言語技術を活用した授業の一つとして,小学 校5年の国語「注文の多い料理店」の授業を行 った。この授業は,問答ゲームの型で書かれて いる文章とそうでない文章を比較することによ り,問答ゲームの型で書いた文章の方が,自分 の考えを相手に分かりやすく伝えることができ るということを,児童自身で気づくことができ るように仕組んだ学習指導案に沿って実践した が,うまくいかなかった。その要因として,め あてに示した表現の工夫が分かりにくかったた め,児童が本時の学習に見通しがもてなかった こと,本授業の目的に合った教材ではなかった ことが考えられる。言語技術を活用した授業実 践には,教師の深い教材研究による指導案作 りとともに,言語技術を取り入れる教科や教 材,学習場面の選定がとても重要であること を認識させられた。

7.本研究の総括

7.1 表現力調査問題に関する分析と考察 本研究では,言語技術の授業前(pre)と授業 後(post),言語技術を活用した国語と算数の授 業後(final)に,表現力調査問題を行った。表 2は,出題問題ごとの,無回答,正答,準正答,

全正答(正答と準正答の和)の児童数および正 答率を集計した表である。表2から,PW(パ ラグラフ・ライティング)においては正答数の 増加傾向が見られるものの,CR(クリティカ ル・リーディング)においては正答数の増加傾 向が容易に見いだせない。

表3は,上の表がPW,下の表がCRの結果 である。表3のPWとCRのぞれぞれの上昇数 と下降数の変化から,PWには言語技術の授業 が効果的だっただけでなく,言語技術を活用し た国語と算数の授業で,PWにさらなる効果を もたらした。しかしながら,言語技術の授業が

pre post final pre post final pre post final pre post final pre post final

無回答 8 2 0 8 2 0 2 0 0 11 10 3 13 8 3

正解◎ 9 12 11 6 2 17 1 0 4 3 7 11 4 7 6

正解〇 1 0 0 10 18 11 0 0 2 0 0 2

正解人数 10 12 11 16 20 28 1 0 6 3 7 13 4 7 6

割合(%) 31 38 35 50 63 90 3 0 19 9 22 42 13 22 19 国語1(CR) 国語1(PW) 国語2(PW) 算数1(PW) 算数2(CR)

上昇 下降

(7)

<1>

(7)

<3>

(10)

<1>

pre→post post→final

(4)

<0>

pre→post post→final

(0)

<1>

(4)

<0>

post→final

算数1

小学校6年  PW

国語1 国語2

pre→post

上昇 下降

post→final 小学校6年  CR

国語1 算数2

(4) (5) (4) (2)

<2> <5> <1> <3>

pre→post post→final pre→post

(4)

CRに効果的であったと考えていたものの,本 研究で行った言語技術を活用した国語と算数の 授業では,CRの向上はあまり見られなかった。

7.2 アンケートに関する分析と考察 図2は,pre,post,finalを行った小学校5,

6年生の言語技術に関するアンケート質問項目 のうち2項目(4件法)に対する児童の回答結 果である。

図2の分析から,小学校5,6年ともに,final ではほとんどの児童が言語技術の学習の必要性 を感じている。しかし,preからpost,postか

ら finalの肯定意見の増減から,理解を深める

ような教科領域の学習においては,教科学習に 言語技術を取り入ることで,言語技術を効果的に

習得できるようになると確信した。

7.3 教員に対するアンケートに関する分析 と考察

教員に対するアンケートの結果から,多くの 教員が言語技術の価値を感じ,言語技術の学習 は必要だと思っている。しかし,今の教育課程 の中で,実際に言語技術の学習を行うことは難 しいと感じている教員が,多くいることが確認 できた。また,言語技術を実践するための方策 を,模索する必要があることも明らかになった。

7.4 本研究の成果

本研究の成果は以下の3つである。①議論を 深めるために,児童がPWやパラグラフ・スピ ーキングを用いることが有効であると気づけた こと。②児童のPWの技能の向上が見られたこ と。③児童の表現力と思考力に高まりが確認で きたこと。以上の成果から,本研究の実験仮説 は,限定的に検証できたと考える。

8.今後の課題と展望

本研究で実践した授業の分析と考察を通して,

言語技術の学習を継続して行うことで,児童の 言語能力の向上を図ることができるという方向 性を見いだすことができた。しかし,すでに各 教科領域等がそれぞれのカリキュラムを確立し ている状況で,言語技術を教育現場にどのよう に取り入れ,言語技術を活用した各教科等の授 業を実践していくのかが大きな課題である。今 後は,2つの課題に取り組みたい。1つめは本 研究で実践した言語技術の学習と,言語技術の 学習を活用した教科領域等の授業の分析・考察 をもとにして,学習指導案を見直し,よりよい 授業にしていくことである。2つめは,言語技 術の学習の必要性を唱え,学校全体で取り組め るように,言語技術を実践するためのカリキュ ラム・マネジメントを検討していくことである。

図2 アンケート結果

参照

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