大気圧変動による水分移動促進効果に関する基礎的研究
岡山大学大学院 正会員 小松 満 同 学生会員 佐藤 友哉 コロラド鉱山大学 非会員 榊 利博
1. はじめに
岩盤内に地下空洞を建設する場合,不飽和領域の発生により,坑道周辺の水理特性が変化するとともに,地下水 の地球化学特性への影響等が懸念される。この不飽和領域は坑道掘削時の排水処理や応力解放による岩盤のゆ るみ,あるいは施設建設や運用期間中のベンチレーションにより,岩盤内部の水分が流出・蒸発することに 起因すると考えられている1)。特にベンチレーションに使用される空気は通常,周期変動する外気であるた め,地盤内の不飽和領域の時間的挙動を動的に変化させている可能性がある。図-1に示すように外気圧が高 い場合,外気は地盤内に侵入し,低い場合は侵出すると考えられる。この大気圧変動による水分移動現象は 一般的に“バロメトリックポンピング”と呼ばれている2)。また,このような大気圧変動の影響は地下空洞 のみならず,比較的浅い帯水層の揮発性溶剤など
による汚染の自然浄化作用を促進することが知ら れている3)。しかし,これまでこのような現象を 定量的に評価した例はほとんど見られないことか ら,本研究では,大気圧変動による水分移動促進 効果を実験的に明らかにすることを目的とした。
2. 一次元鉛直カラムによる水分移動試験 試験の概要としては,水中締固め方法により飽 和供試体を作成した後,一方には変動圧力,もう 片方には一定圧力の空気圧を作用させて供試体表 面からの蒸発過程を水分量の変化として経時的に 計測し,その差異を評価するものである。
試験装置の概略図を図-2に示す。コンプレッサ ーからシリカゲルを詰めたタンクを通過させた乾 燥空気を(A)変動圧力下のカラムには,レギュレー ターを介して1次圧力に減圧させた圧力をさらに ファンクションジェネレーターで圧力と変動周期 を一定にコントロールする電空レギュレーターに より供試体表面に2次圧が作用する構造
となっている。一方,(B)一定圧力環境下 のカラムには,1次圧をそのまま供試体表 面に作用させている。供試体には表面か ら10cmピッチの深度で水分計を設置して 水分量の減少過程を計測するとともに,
供試体表面を通過した空気は湿度計を設 置したカラムを通過した後,シリカゲル
キーワード:大気圧,水分量,バロメトリックポンピング
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坑道内の気圧が低い
→岩盤内の湿った空気が坑道に侵出
坑道内の気圧が高い
→乾いた空気(外気)が岩盤内に侵入 周期的に繰り返すことで,
岩盤内の水分が減少
→不飽和領域の発生
湿った空気 乾いた空気
坑道 坑道
図-1 大気圧が坑道周辺に与える影響
コンプレッサー
ファンクション ジェネレータ 電空レギュレータ
レギュレータ 1次圧(25kPa)
2次圧(15~25kPa:正弦波)
差圧計 供試体への作用圧を確認
レギュレータ
1次圧(20kPa)
乾燥空気 湿潤空気
水分移動
変動作用
供試体 水分計
差圧計 供試体への作用圧を確認
乾燥空気 湿潤空気
水分移動
供試体 水分計
(A)変動圧力環境下 (B)一定圧力環境下
3次圧(15kPa)
温湿度計 シリカゲル
温湿度計 シリカゲル
温湿度計 シリカゲル
温湿度計 シリカゲル
気体流量計 気体流量計
図-2 一次元鉛直カラム試験装置概略図
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Time (min)
Pressure (differential) (kPa)
Fluctuation Steady
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Time (min)
Pressure (differential) (kPa)
Fluctuation Steady
(a)Case1:豊浦砂 (b)Case2:5 号硅砂 図-3 供試体表面に作用させた空気圧(差圧計での計測結果)
土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
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で水蒸気がトラップされる。また,
供試体に作用する圧力差は差圧計 により計測するとともに,供試体 表面を通過した空気量は気体流量 計により測定している。なお,試 料には豊浦砂と5号硅砂の2種類の 砂試料を用い,図-3に示すように 豊 浦 砂 を Case1と し て 変 動 周 期 20 秒 に設 定して 38日 間の試 験を , 5 号硅砂をCase2として変動周期100 秒に設定して13日間の試験を実施 した。
Case1 において供試体に作用さ せた空気流量の測定結果ならびに 供試体通過後の空気の湿度を測定
した結果(移動平均)を図-4および図-5にそれぞれ示す。
空気量は変動の有無で差は見られない。一方,供試体を通過 した空気の湿度は変動ありの方が常に高い値を示しているこ とが分かる。次に,図-6に示す水分量の経時変化を見ると,
変動ありの供試体に設置した水分計において,表面から 10cm のセンサー(A-1)が 15 日頃から低下している様子がわかる。
一方,変動なしの供試体に変化は認められなかった。
試験終了後,供試体の表面からサンプリングを行い,水分 量の深度分布を求めた結果を図-7に示す。両ケースとも変動 ありの供試体の水分量が低下している様子を確認した。結果 として,豊浦砂に対して約1.5倍程度の割合で水分移動の促進 効果が得られている。また,5号硅砂においては水分量の変化 量はわずかであるが,約1.4倍程度の差であることが判明した。
なお,豊浦砂と比較して,5号硅砂における水分量の減少量が 少なかったのは,変動周期が長かったこと,試験期間が短か ったことが挙げられる。
3. まとめ
大気圧変動による水分移動促進効果を確認するために,一次元鉛直カラム試験を実施したところ,一定圧 力環境下と比べて変動圧力環境下の方が水分の減少量が多い結果を示した。つまり,バロメトリックポンピ ングによる水分移動の促進効果が認められた。今後は様々な条件下で同様の試験を行い,定量的な評価を試 みる予定である。
【参考文献】
1) 薮内聡・岸敦康・小松満:幌延深地層研究計画における水平坑道の掘削に伴う岩盤水分量のモニタリン グ,日本地下水学会2010年春季講演会講演要旨,No.20,pp.94-97,2010.
2) Martinez,M.J. and R.H.Nilson :Estimates of Barometric Pumping of moisture through unsaturated fractured rock, Tranport in Porous Media, No.36, Vol.36, No.1, pp.85-119, 1999.
3) Auer, L.H. , N.D.Rosenberg, K.H.Birdsell and E.M.Whitney :The effects of barometric pumping on contaminant transport, Journal of Contaminant Hydrology, Vol.24, No.2, pp.145-166, 1996.
0 10 20 30 40 50 60 70 80
0 7 14 21 28 35 42
Time (day)
Cumulative Outflow (Liter)
Fluctuation Steady
70%
75%
80%
85%
90%
95%
100%
0 7 14 21 28 35 42
Elapsed time(day)
Humidity
Fluctuation Steady
Moving Average of 1 day (Fluctuation) Moving Average of 1 day (Steady)
図-4 空気量の測定結果(Case1) 図-5 湿度の測定結果(Case1)
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 7 14 21 28 35 42
Elapsed time(day)
Volumetric moisture content
A-1 A-2 A-3 A-4 A-5
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 7 14 21 28 35 42
Elapsed time(day)
Volumetric moisture content
B-1 B-2 B-3 B-4 B-5
図-6 水分量の経時変化(case1)右図:変動あり,左図:変動なし
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35Volumetric moisture content0.40 0.45 0.50
Depth from surface(cm)
Fluctuation Steady
(a) Case1:豊浦砂
0 1 2 3 4 5 6 7 8
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30Volumetric moisture content0.35 0.40 0.45
Depth from surface(cm)
Fluctuation Steady
(b) Case2:5号硅砂
図-7 試験終了時における水分量の深度分布 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
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