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世襲農場法とナチス農地法制の展開

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(1)世襲農場法とナチス農地法制の展開. 目次. 一九三三年ライヒ世襲農場法. 序章. 第二次四ケ年計画と世襲農場法の改正. 第二次四ケ年計画と非世襲農場地に関する諸立法. 1 第二次四ケ年計画 2 世襲農場法令による改正 3 世襲農場手続令による改正 4 小括 四. おわりに. 1 小序 2 地片取引布告の改正 3 三七年賃貸借改正法 4 土地経営管理保全令の制定 5 小括 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶. 五. 三 二 ー. 鈴. 木. 一. 直. 哉.

(2) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一︑序. 本稿の目的は︑戦前ドイツにおいてナチス党Z幾9巴8﹄巴一ω冴︒ぽUo三ω90>号oぎ∈碧琶が政権を確立し. 二. ヤ. ヤ. ﹁法体制﹂論や当時の﹁所有権理論﹂にまで考察は及んでいない︒これは今後の課題. とさせて頂きたい︒さて︑ナチス党の政権獲得前史から語り始めることにしよう︒. 関連で分析することに置かれ︑. る︒本稿にはかかる意図もあるが︑行論の重点は︑考察対象たる個別実定法による規制を当時・当期の農業政策との. した﹁所有権モデル﹂ー勿論︑農地のそれに限定されるがーを具体的に解明していく上で有意義なことと思われ. ︵3︶. を解明することに連なるであろうし︑また特にナチスが当時︑民法典ωOωの﹁自由な所有権﹂から乖離して打ち出. これによってナチスによる農地法制の骨格が完成されるに至るのである︒ ︵2︶ こうした農地法制の確立過程を明らかにすることは︑近年様ざまな研究が行なわれている﹁ナチス法体制﹂の一環. の法令によって世襲農場でない農林業用地︵以下﹁非世襲農場地﹂という︶にも︑程度や形態の差こそあれ拡張され︑. の遺言の自田すら排除する︶という強力な規制を行なうものであった︒さらに同法は︑一定の要件の下︑所有者から世 ︵1︶ 襲農場の管理・用益権や所有権を奪い取ること︵﹁農場剥奪>冒︒善9αQ﹂︶をも定めていた︒そしてかかる規制は︑後. を禁止するなどの保護を与えると同時に︑譲渡︑負担設定︑賃貸を禁止し︑不分割のまま相続させる︵しかも被相続人. 属する七・五㎞から一二五㎞の農林業用地を﹁世襲農場﹂と規定し︑世襲農場については金銭債権に基づく強制執行. は︑当時の没落してゆく農民を保護・救済すべきものとして打ち出されたものであるが︑概略︑自然人の単独所有に. 周知の様にナチス党政府の農地立法の噛矢を成したのは一九三三年九月二九日のライヒ世襲農場法であった︒同法. て以降の同党政府による農地法制の展開・確立過程を明らかにすることにある︒. O. 章.

(3) ◎. ヨ切o鼠①ダ訳窪⇒一零990牢など参照︶︒しかし被相続人の遺言の自由を制限・排除することは許され. ドイツではナチス期以前にも︑農林業用地を一子相続人に一括して相続させる一子相続法>冨き︒簿8窪がラント法として存在していた. ︵詳細はコO①ぎρくo置=o︷N. ︵1︶. ていなかった︵民法典施行法第六四条︶︒この点で︑世襲農揚法は旧来の一子相続法を超越するものである︒しかも同法は︑本文で示した様に︑. きである︒. 相続法上の規制のみならず︑所有権全般にわたる規制を行なうものであり︑こうした意味で︑包括的な所有権︵規則︶立法として把握されるべ. ︵2︶社会科学全般にわたってファシズム期に関する研究は盛んである︒例えば︑東大社研編﹃ファシズム期の国家と社会・第一〜八巻﹄︵一九 ルジョア法の﹃転換﹄﹂︵前掲東大社研編書﹃第五巻・ヨーロッパの法体制﹄︶など︒. 七八ー八○年︶︒法学分野のものとして︑例えば広渡正吾﹁﹃第三帝国法構造﹄試論﹂︵東社三七⊥二二九六七年︶︑同﹁第三帝国におけるブ. 八1一︶がある︒. ︵1︶. ︵3︶ナチス期の所有権論の最近の研究として︑糊沢能生﹁ナチス期における所有権思想﹂・﹁ナチス期における土地法学﹂︵早法五七ー二︑五. ︵2︶. 一九二九年に始まった世界経済恐慌によってドイツ農業が破局的局面を迎える中︑ナチス党は︑三〇年三月の ︵3︶. ﹁農業綱領﹂発表︑同五月の党農業政策部設置などによって農村地帯へも支持層を拡大し︑三三年一月三〇日にヒト. ラー政権が誕生する︒しかし当初は国家人民党Uo三ω30くo昂聲費邑との連立政権であり︑同党々主A・フーゲン. は︑フーゲンベルクの. ベルクがライヒ経済相とライヒ食農相とを兼任していたため︑農業政策もナチス党本来のものとはいえず︑むしろ従 ︵4︶. 来のものを継承・拡充したものだった︒この間ナチス党農政部ダレ覆︒富巳≦巴島RU碧菰 ︵5︶. 農業政策を攻撃し︑その追い落しを謀る一方で︑農業関係諸団体を支配下に収め︑農業界での自らの基盤を拡充し︑. 結局三三年六月三〇日︑彼に代って食農相に就任する︒ここからナチス党本来の農業政策が展開されていく︒. 三. ◎ 同党の農業政策は︑前述のライヒ世襲農場法と︑農業関係者を統一的に組織化するライヒ食糧団制度とを二本柱 として出発する︒後者についてここで簡単に触れておく︒ 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(4) ︵6︶. 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶ ︵7︶. 四. ライヒ食糧団閃︒一︒冴鼠ぼω冨且は︑三三年九月二二日の法律︵以下﹁法﹂という︶およびその後の諸施行令によって. ﹁農産物の生産︑販売ならびに価格および価格格差を規制する権限﹂が与えられる︵法. 設立・組織された公的団体である︒その構成員は︑農業生産者はもとより︑農産物の加工・精製業者︑取引業者︵卸・ ︵8︶ 小売業者︶および農業組合にも及ぶ︵法第一条二項︶︒農業関係者間の利害調整が任務として課せられ︵第一施行令第 二︑三条︶︑必要な場合には︑ 第二条︶︒. 次にライヒ食糧団の組織は︑本部と地方組織に分かれており︑本部の従って全体の最高責任者が﹁ライヒ農民指導. 者閃08訂訂5旨旨ぼR﹂であり︑前述のダレが三四年一月に任命された︒地方組織は︑各行政区ごとにヒエラルキッ. シュに構成され︑各ラントごとにラント農民組合︑各郡ごとに郡農民組合︑各部落ごとに部落農民組合が設置され. る︒各々の農民組合の最高貴任者が︑ラント農民指導者9&︒ω訂5ヨ︷爵円R︑郡農民指導者区憲呂窪︒ヨ︷昏﹃R︑部. 落農民指導者O冨富器ヨ旨ぼ9であった︒. 後の論述との関係で注目すべきことは︑ライヒ・ラント・郡の各農民指導者が︑世襲農場地および非世襲農場地の. 取引や経営態様に関する裁判手続に関し︑手続開始のための申請権を与えられていたり︑裁判所が彼等に聴聞する義. 務を課せられたりしていることである︒このことによって︑ライヒ食糧団が︑農地取引等をめぐって裁判をサポート したり介入したりするシステムがとられることになる︒ ︵9︶. ⑳ さて本稿が主に対象とするナチス期の農地立法は表に示す通りである︒考察が第一次四ケ年計画期および第二次. 四ケ年計画期の前半に限定されるのは︑この時期までにナチス農地法制の枠組が完成されると考えるからである︒. 次に本稿の概観を与えておく︒まず二では︑第一次四ケ年計画期のものとして︑貧窮化する農民層を救済・保護す. コ. るものとして打ち出された口菊国Oを考察する︒これは前述の﹁農業綱領﹂に謳われた農民保護を具体化するもので.

(5) 灘醤蕗浄鍛. ︹一︺. ︹一︺1一. ︹一︺山. 銘砂歯 即o一〇訂o﹃耳o︷αooωo冒. 国お冨O<N∈β力両O NミO一80くN⊆β刀国O. Oユ900<N∈B閃国O 卑耳oヰ8算︒D︿03巳昌ロロαq. ︹昌1ω. ︹N︺. 蝉耳o才R富ぼgのo﹃身¢ロ磯. ︵02巳ω呂o写o鱒oぼのげo惹馨壁. ℃8ゲヨO霞oo犀の. <03﹃身仁ロαo弩﹃. の3鋒言昌磯. 薄へκ昧懸賄 蔀薦. 画醤藝立 回醤藝立 羅ω蓉血 峰濃藩蔀蒔命. 暮矯簸離噸灘 碁キ好q專聡. 臆壌礁痢醸蕗 δ薦蜘・毒罰. 捧蒔醸聴略曲 索曄舎 画譜識か. Uq魯旨ぼ巨αQω︿RR身gαq. N畦ω一魯o召ロ磯. ω一魯R暮αqαo﹃rきき〇三詳・. O・のo言3R≦o冨﹃σqo一什巨の賃巳野αQぎN5αoqoの. ヨ帥魯弩αq︶. O崖注のa畠g. 鼠⇒α婁凶﹃80ゲ鉱二凶OゲO昌oαO﹃︷Rの一≦一旨のOゲ鉱ユ凶OゲO昌. ヨ帥魯暮の尋o︻α魯<o詩oぼ旨件. 国oぎ口旨ヨ霧9ロ磯αoωゑo﹃二窪δαo吋国o富目壁. ︹ω︺. ︹戯︺. ︹㎝︺. ︹①︺. 血角いききo≦三ωo訂津巨αQ. U<. <Ro乱2口頒N畦U日魯旨導⁝の. 勾o一9詔oωo訂匡9什↓o昌一. ︹①︺山. 一. ‡ ●群●NS. 蕗ゆ蹄中. 勾O国︒H. ・9. 一ω・①・. ω・刈童. O.. マ劃. 暴噸・墨堺. 閃国O. 一・U<. 国=勾<. ω︒U<. ¢一︒旦 ドO<. ω・ω. ω︒一〇①O●. 旧δN. 囲δ. 零岳︵蹄庵 旧3ω 憩︶興囲蕗. ︵蝋︶掛略. ・ド一臣≦︒. ωU.. ω﹂Oヨ. ω●. 一ω・・︒・. 一〇ω刈●O●ωO●. ω︒. ω︒0ω伊 痴曄謎醸ゆ. 旨り 論曄ゆ. 一〇ωSω・NOゆ.. 一〇ωS一・N9. 一■OωO●一N︒N一●. 一■Oω①●一N●N一●. 一〇ω. 一〇ωω︒一鱒●一〇●. 一〇ωω一〇●︼■O.. 一〇ωω.O・憩O.. □. 一〇ωS膳︒NN・. Il. 101. 購. 勾O切一9. か 蕗. 索源離簸魑庫. 索溜蔀贈灘偉器. 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶. 五. 翻理梱圏蚤い副梱圏墓講.

(6) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. あり︑ナチス党はこれによって農村での政治的基盤の維持・拡充を意図していた︒. 六. 三︑四では第二次四ケ年計画期の立法を見る︒同計画下では︑戦時体制確立を目指した食糧国内自給確保が至上命 ︵10︶. 令とされ︑それに対応するための農地法制の変化が︑世襲農場に関してはの国=閑く︑㊥国=<δとして︑非世襲農場地. に関しては︑④地片取引布告︑㊥賃貸借改正法︑⑥土地経営管理保全令として現われる︒の㊥によって世襲農場制の. 重点は︑食糧生産担い手の確保へと移行し︑また④⑤⑥によって︑世襲農場地に対する規制と類似する規制が非世襲. 農場地へも拡大される︒ここに︑全農地を強力な国家コントロールの下に置くナチス農地法制が確立するのである︒. ︵1︶加藤栄一﹁ドイツ農業および農業政策・一九二〇〜二八年﹂五六六頁以下︵旦局他編﹃マルクス経済学﹄一九七八年︶︒石垣今朝吉﹁ナチ. これは︑ナチス党の当時の運動方向を示すものとして注目される︒その内容は︑反ユダヤ主義的﹁民族主義﹂を前提に農民層を称賛しつ. ス・ニューディールにおける農業問題﹂三頁以下︵大原他編﹃現代農業と農民運動﹄一九七五年︶︒. つ︑一方で農業に食糧国内自給の任務を課し︑他方で農民救済を謳っている︒そこでの農民救済の手段は︑既存の土地所有構造の基本的維持を. ︵2︶. ・一九八三年・第二章参照︶︒尚︑綱領の原文は雑誌男畠ヵZ︵. ︒ω﹂o︒O需に再録されている︒ 即︒︒浮号ω閃巴︒訂良ぼω鼠&8︶這ωo. 前提にした上で︑強力な一子相続法の導入と植民政策︵東方植民Oω鼠&ぎ話︶とに求められていた︵大野英二﹃現代ドイツ社会史研究序説﹄. ︵3︶ 豊永泰子﹁ナチス体制と世襲農揚制﹂︵西洋史学七九号・一九六六年︶二二頁︒. 引上げと︑負債対策の拡充であった︵箕輪伊織﹁ナチス戦時体制下の農業﹂三六頁・前掲大原他編書︶︒また債務整理については︑山田晟﹁ドイ. ︵4︶戸原四郎﹁ナチス農業政策﹂︵前掲旦局他編書︶五九一頁︒フーゲンベルクの農業政策は︑国内農産物価格引下げのための農産物関税率の. 豊永二二頁︒. ツ農業債務整理法についてH口国﹂︵法協六〇巻一︑二︑四号︶参照︒ ︵5︶. ライヒ食糧団の暫定的設立および農産物についての市場価格規制のための措置に関する法律︵即︒一魯農8雪昌蛋﹃国O国︒一〇D﹄8︶︒. 詳細は︑磯辺秀俊﹃ナチス農業の建設過程﹄第三章︵一九四三年︶を参照︒. 政権獲得直後の三三年二月一日︑. ︵7︶. ナチス期は経済政策によって次の四期に区分されうる︒①第一次四ゲ年計画期︹三三年〜三六年九月︺. 一九三三年一二月八日付︵囲O里﹂ψ一80︶︒. ︵6︶. ︵8︶ ︵9︶.

(7) ②第二次四ケ年計画期︹三六年一〇月〜三九年八月︺. 三六年一〇月一八日の﹁四ケ年計画の実施のための命令﹂︵即Oゆ=ψo︒o︒刈︶によって︑. ヒトラーが﹁四ケ年以内に︑農民を窮乏から救い︑失業を克服する﹂と公約したことから︑事前の明確な計画を欠きながらもこうよばれる︒. 計画が実施に移された時期︒期間が四年に満たないのは期間満了以前に第二次世界大戦に突入したためである︒③戦時体制前期︹三九年九月〜. 四二年の経済再編成によって︑戦時経済が徹底化されたことによって︑③と区分される︵箕輪二九頁及び戸原四郎﹁ナチス経. 四二年八月︺ 第二次四ケ年計画が未達成のまま︑三九年九月のポーランド進攻による戦時体制への移行を始期とする︒④戦時体制後期︹四二. 済﹂・東大社研編﹃ファシズム期の国家と社会・第三巻・ナチス経済とニユーディール﹄・一九七九年を参考にした︶︒. 年九月〜終戦 ︺. ナチス党ダレが三三年六月三〇日に食農相に就任した後︑九月二九日ライヒ世襲農場法︵H菊国O︶が公布さ. 二︑一九三三年ライヒ世襲農場法. れているが︑本稿ではほとんど後者のみが取扱われるので︑それを単に﹁賃貸借﹂としておく︒. ︵−o︶周知のようにドイツ民法典ωOω中において︑我国の賃貸借に該当するものとして︑使用賃貸借召露と用益賃貸借評身とが規定さ. ー. 閑国O序文. れ︑一〇月一日に施行され︑近・現代のドイツ農地法制に一大画期をもたらした︒ 2. まず閃国O序文では︑農民を民族の生命力の源泉として重視するナチスイデオロギーが端的に示される︒そしてこ. ︵1︶. のためには︑農民家族の農場への永続的定着︑即ち﹁血と土﹂の結合が理想とされ︑それを実現する手段として︑一. ﹁世襲農場野理oごになる. 子相続法の貫徹による農場の分割防止と︑相続時の補償債務による債務過重からの保護が謳われている︒尚︑序文は. 世襲農場︵ヵ国O第一章︶および農民︵同第二章︶. 同法解釈の基準とされる︵第五六条︶︒ 3. ︵2︶. 農業もしくは林業に利用されている所有地で︑次の⑥〜⑥の要件を満たすものは︑. 七. ︵コ国O第一条︶︒⑥自活可能面積>︒ぎヨ警旨お以上であること︵同第二条一項二しく第三四条第一項にょり︑一応七・ 世襲農揚法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(8) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 八. ︵3︶ 五㎞以上と定められる︶︒㈲一二五㎞以下であること︵知国O第三条一項︶︒⑥一つの農業家屋=o裟色oによって分農場 ︵5︶. くo毫Rざなしに経営管理され得るものであること︵同第二項︶︒⑥恒常的に賃貸されているものは世襲農場にならな. い︵第一条二項︶︒⑥農民能力ある訂9ヨ哉獣αq自然人の単独所有であること︵第一条三項︶︒また第四条は︑一二五㎞. ︵4︶. を越える所有地を分割して複数の世襲農場を新設する場合には︑分割された保有地に付着する所有者の債務の総額 が︑租税統一価格の三〇%を越えてはならないとしている︒. 世襲農場を構成するのは︑不動産︵建物を含む︶︵第七条︶︑これと結合する諸権利︵ドO<第二条︶および経営管理の ための家畜︑農具︑家具︑肥料︑農産物貯蔵品等の従物︵閃国O第八条︶等である︒. 世襲農場の所有者を﹁農民ω窪R﹂と称し︑その他の農林業用地の所有者または占有者を﹁農業家審且三三と. 称する︵閃国O第一一条︶︒農民は︑⑥自然人であること︵第一七条二項︶︑㈲ドイツ国籍を有し︵第一二条︶かつドイツ種 ︵6︶ 族もしくは同等の血統号暮ω93巳Rω畠ヨ昌①お蚕昌8の匹三を有すること︵第一三条一項︶︑⑥禁治産者でないこと. ︵第一四条︶︑⑥名誉ある者oぼげ碧でありかつ農場の秩序正しい経営管理を行なう能力を有すること︵第一五条一項︶ ︵7︶ を要する︒㈲〜⑥を総合して﹁農民能力評5醤蜜まαQざ三という︒. いわゆる﹁農場剥奪>ぎ︒すき︒q﹂︶︒この農場剥奪制度は︑三. ④の要件の欠落︑または秩序正しい経営を行なえば支払可能な債務を農民が履行しない場合には︑農民は世襲農場 の管理・用益権や所有権を剥奪される︵第一五条二︑三項. 六年の世襲農場手続令で大幅に拡充・実効化されるがそれは後に見る︵三3参照︶︒しかし︑農民能力の喪失は︑当該. 世襲農場の一子相続︵勾国O第三章︶および譲渡・負担設定禁止ならびに強制執行保護︵同第四章︶. 農民にのみ効力が及ぶだけで︑世襲農場たる性質を消失せしめるものではない︵第一六条︶︒ 4. ︵8︶ 農民死亡の場合︑世襲農場は︑相続財産の特別部分げ08巳RR↓亀を構成し︑法律上当然に一括して一子相続人.

(9) ︵9︶. に承継される︵ヵ団O第一九条︶︒一子相続人の資格を得る順位は法定されており︑被相続人の①男子︑②父︑③兄弟︑. ④女子︑⑤姉妹︑⑥卑属のうちで以上に属さない者の順序であり︵第二〇条︶︑総じて男性優先である︒被相続人は. 死因処分︵遺言と相続契約︶によって一子相続権による相続を排除もしくは制限することを許されず︵第二四条一項︶︑. この点で従来の一子相続法を大きく越えている︵一〇注︵−︶︶︒但︑被相続人には︑限られた範囲で一子相続人を指定. する権限が認められる︵第二五条︶︒前述の農民能力を欠く者は︑一子相続人になること︑即ち世襲農場所有者U農民. となることはできず︑同人が死亡しているものとして一子相続人を決定する︵第二条一項︶︒. 被相続人の卑属で共同相続人または遺留分権者である者のうちで一子相続人にならなかった者︵譲歩相続人ぎ喜窪−. 黄卑げ︒︶は︑扶養および農場の資ヵに応じた職業教育や独立資金を受ける権利︑および困窮した場合に帰来する権. 利︵故郷帰来権=︒冒欝魯5εを有するのみであり︵第三〇条︶︑金銭補償請求権を有しない︒譲歩相続人への金銭補 ︵10︶ 償によって︑せっかく一括承継された経営が債務過重になり再分割されるのを防止する趣旨である︒. 世襲農場は︑譲渡・負担設定を禁止される︒但︑通常の経営の範囲内での従物の処分︵例・成長した家畜の売却︶は. この限りでない︵雷o第三七条一項︶︒一子相続裁判所︵後述5︶は︑重大な理由ある場合には︑譲渡・負担設定を許. 可することができ︑この許可には条件>色囲︒を付すことができる︵同第二項︶︒相続を先取した親子間の農場譲渡契. 約=o旨ぼおぎoぎ轟濃には︑一子相続裁判所は︑必ず許可を与えなくてはならない︵同第三項︶︒世襲農場またはそ. の一部の賃貸は︑期間が三年を越える場合には一子相続裁判所の許可を要するとされていたが︵一・U<第六四条二項︶︑ ︵11︶ その後三六年にはコ年を越える場合﹂と改正され︵国=勾く第三〇条︶︑さらに三九年には期間の長短を問わず許可を 要するとされた︒. 九. 世襲農場は︑右の様な規制を受ける反面︑金銭債権に基づく強制執行を受けないという保護を受ける︵勾国O第三八 世襲農揚法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(10) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一〇. 条一項︶︒但︑公租・公課により生じる請求権︑もしくはその他公法上の金銭債権に基づく場合には︑世襲農場で生産. された農産物について︑それが経営維持および次期収獲期までの農民およびその家族の扶養にさしつかえない場合に. は︑強制執行が許される︵第三九条一項︶︒この場合には︑郡農民指導者の判断に基づいて︑ライヒ食糧団が債務を引. き受ける場合もある︵同第三項︶︒この第三九条は︑私法上の金銭債権に基づく強制執行にも準用された︵第五九条︶︒世. 襲農場所有者は︑強制執行保護の他にも︑登記料の免除︵第五二条二項︶︑相続時の相続税・土地取得税を免除された. 一子相続官庁>話3窪ぼま巳o︵閃国O第五章︶. ︵第五五条︶︒. 5. ライヒ世襲農場法の固有の任務を実施するために︑郡国&のごとに一子相続裁判所>器ぴo躍o旨算︵ヵ国O第四一条︶︑. ラントごとに世襲農場裁判所卑浮o蒔a書ス第四三条︶が設置され︑これらは各々︑区裁判所>巨詔o旨窪および. 上級ラソト裁判所○げ毘 民oωαqR9算に設置された︒さらに︑最上級審として全国唯一のライヒ世襲農場裁判所. 刀o一魯ωR耳o凝窪o算が設置され︵四七条︶︑三級審制がとられる︒これら三つの特別裁判所を総称して一子相続官庁. >器合o呂oま巳oという︒勾国Oに関する事件については一子相続官庁が管轄権を有し︑通常裁判所に出訴は許され. ない︵第四〇条︶︒一子相続裁判所は︑世襲農場の成立要件についての決定を行う権限︵第一〇条︑一三条三項︑一八条︶︑. 前述の農場剥奪を実施する権限︵第一五条二︑三項︶を有するなど︑世襲農場を統制する強力な権限を有していた︒. 6 小括. ﹁世襲農場﹂を創出した︒三〇年の﹁農業綱領﹂で農. は世襲農場農民に様々な制約を課する同時に︑種々の特典を与えることによって︑新しいカテ ︵12︶. ﹁世襲農場農民﹂︑新しいカテゴリーの経営. 以上の様に︑閃国O. ゴリーの農民. 民一般の保護として公約されたことが︵隔⇔注︵2︶︶︑世襲農場農民という特定カテゴリーに対する保護という形で実.

(11) ︵13︶. 現したのである︒ここでは︑次の三点だけを指摘しておくことにしよう︒. ︵14︶. 第一に︑世襲農場の最下限が七・五㎞とされたことに関していえば︑ヴァイマル期・ナチス期における農民層分解. 基軸が各々︑五㎞前後・五ー一〇㎞前後であり︑一〇ー一〇〇㎞の層が安定的であったことを考えると︑世襲農場政 ヤ. ヤ. 策は元来︑農民層分解の危機に瀕した﹁小農﹂層を保護するものではなかった︒. ﹁血と土﹂の結合というナチス・イデオロギーの影響であるといってよい︒そして賃借経営は保護を受. 第二に︑世襲農場の要件として単独所有地であることが規定されたため︑賃借経営はその保護を受けられなかっ た︒これは︑. ︵15︶. けないどころか︑世襲農場の要件︵主に面積の最下限︶を満たすために︑三三年から三九年の間に六万六千㎞の借地が. 引き上げられたため︑小借地人層は没落を余儀なくされるに至ったことを付言しておく︒. 第三に︑農民の要件として︑農業経営には客観的な影響を全く及ぼさない﹁ドイツ種族または同等の血統﹂を有す. ることという要件が規定されていたことは︑第二の点とともに︑世襲農場制のイデオロギー的側面を浮き彫りにする ものであるといえよう︒. ︵1︶序文につき︑戸原﹁ナチス農業政策﹂五九三頁の全訳を︑﹁血と土﹂につきダレ︵黒田礼二訳︶﹃血と土﹄︵一九四一年・春陽堂︶を参照︒. 維持するた め に 必 要 な 面 積 ﹂ と 定 義 さ れ る ︒. 第六二条一項︑. ︵2︶第二条二項によれば︑自活可能面積とは︑﹁市場および一般的経済状況に左右されずに︑一家族に衣食を与えならびに世襲農場の経営運転 を. 国ぼαq聾窪R魯o㌘ドUく. ︵3︶但︑ライヒ食農相の許可によって︑一二五㎞を越えても世襲農揚の成立が認められることがある︵勾国O第五条︶︒. ︵5︶但︑夫婦共有である場合には︑経過措置として世襲農場の成立が認められる︵夫婦世襲農場. ︵4︶従って︑賃貸借による経営評魯ま①鼠3は︑世襲農揚となり得ず︑保護を受けられない︒. 一一. これによって︑ユダヤ人や有色人種は農民から排除される︒この点は︑ナチズム主張である﹁種族統一の原則﹂に基づくものであり. Pu<第五条一項︶︒. ︵6︶. 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(12) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 一二. ︵o oε8FO霧菊㊤3器括﹃oマ9窪一P︾︸這ホ国毘ω旨ゲPω.ミ︶︑同法中にナチスイデオロギーが色濃く滲み出ている点である︒ ︵7︶ω一①︷①昌器Oω︒o︒9. ︵9︶同法によつて︑旧来の一子相続諸法律は総て廃止された︵閃国O第六〇条︶︒. ︵8︶従って︑世襲農場に関しては︑切O切に基づく相続権は発生しない︒. ︵10︶均分相続の原則を前提とした場合に︑農場相続の問題を巡る緊張関係の一方の極は︑農地の細分化の防止︵一括相続の必要性︶にあり︑他. 男国Oは︑均分相続の原則を︑﹁農民層維持﹂の必要性を理由として打破することによって︑右の様なディレンマを解決したのである︒この様. 方の極は︑譲歩相続人に対する補償に基因する負債累積の防止︵補償請求権に対する何らかの制限の必要性︶にあると言ってよいだろう︒. ω︶●. な徹底性の中に︑ともかくも一時的にせよ当面の農業危機の克服に成功した︵三1参照︶原因があるのだろうか︒ ︵11︶ <震o乱昌躍ま震卑浮o中oo年︿oヨ8︒>冒出一〇ωO︵国Oω一.一〇〇︒oo. ︵12︶世襲農場制の下に組み込まれたのは︑三八年六月現在で︑全農業経営件数の二二・三%︑面積比にして三七・四%であった︒そして︑世襲. を占めていた︒そして︑一〇㎞以下の経営で世襲農場となったのは︑全世襲農揚中︑経営件数で約一七%︑面積比で六・八%に過ぎなかった. 農揚を構成する階層の中心は︑二〇1一〇〇㎞の階層であり︑この階層は全世襲農場のうちで︑経営件数比で三八・七%︑面積比で六一・七%. 豊永三七頁︒. ︵戸原﹁ナチス農業政策﹂五九四−五頁︑谷口注︵15︶論文八五頁︶︒ ︵13︶. 谷口﹁分解﹂と 引 用 ︶ ︒. ︵14︶同三〇頁︒谷口信和﹁ワイマール・ナチス期におけるドイツ農民層分解の特質﹂︵福島大学商学論集四五ー一・一九七八年︶六一頁︵以下︑. 第二次四ケ年計画. 三第二次四ヶ年計画と世襲農場法の改正. 料﹄第六六号一以下︑谷口﹁構造﹂と引用︶︒. ︵15︶谷口信和﹁ヴァイマル・ナチス期のユンカー的大土地所有の構造﹂八六頁︵名古屋大学経済学部付属経済構造分析センター刊﹃調査と資. 1. ナチス党の政権確立後︑二で見た世襲農場制などの農業分野での各種統制を通じて︑ドイッの農業状況は好転し ︵1︶. た︒また経済の全分野においても︑一九三六年には︑景気は二〇年代末の水準まで回復し︑国民総生産は二八年比で.

(13) ︵2︶ 一五%上昇し︑完全雇用をほぼ達成した︒. こうした中で︑ヒトラーは︑三六年九月のナチス党大会で﹁第二次四ケ年計画﹂の実施を宣言した︒同計画の狙い ︵3︶. は︑四ケ年以内の戦争準備完了︑即ち軍備の拡充︑そしてそれに充当するための外貨を捻出するための食糧・工業原 料の国内完全自給体制の確立であった︒ ︵4︶. こうして︑農業部門にもさらなる食糧自給率の向上口生産力増強が迫られ︑開墾・干拓などによる農地一二〇万㎞. の増加が企図された︒しかしながら︑農村労働者︑特に世襲農場法で相続権を奪われた農村子弟が︑好景気で賃金の ︵5︶. 高い都市に流出したため︑農村労働力の不足が著しく︑開墾等が容易に進まず︑逆に工場・道路建設のために農地が 転用され︑農地は減少の一途をたどった︒. 生産力向上に適した︶形態での維持へと移行していった︒本章2以下で見る世襲農場法の. こうした状況下で︑農業政策の主眼が︑世襲農場政策による世襲農場農民の保護から︑世襲農場・非世襲農場を問 わず全農業経営の合理的︵. 国エ菊<︶による改正 ︵6︶. 世襲農場法の改正は︑三六年一二月二一日の世襲農場法令と世襲農場手続令国=<δによって行なわれた︒両. 世襲農場法令卑喜oヰ8算ωぎδ己昌お︵. 大改正や︑四で見る非世襲農場地についての立法も︑こうした第二次四ケ年計画の一環として把握できるだろう︒ 2. O. 令は︑閑国Oの施行規定・手続規定であるだけでなく︑それ自体として重大な内容を有しており︑以下では要点だけ. 国エ勾くは︑まず過重債務を負った農場が世襲農場になることを防止するために︑次の二つの改正を行った︒. を考察する︒. ⇔. 一三. 二3参照︶︑国工勾く第一条は︑世襲農場を新設する場合には︑﹁所. まず第一に︑従来︑世襲農場の新設の際の所有者の負債に関しては︑大所有地の分割による世襲農場の新設の場合 に考慮されているに過ぎなかったが︵ヵ団O第四条 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(14) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 有者の債務の総額が⁝土地財産の課税統一価格の七〇%以下であること﹂を新たな要件に加えた︒ ︵7︶. 一四. 第二に国=勾く第三九条は︑世襲農場でない不動産を譲渡して世襲農場とすることによって︑﹁債権者の不利益を. 理由とする取消の訴﹂や差押を免れようとしている場合に︑一子相続裁判所は︑この譲渡が不当な陰媒または世襲農. 場の強制執行保護︵閃国o第三八条日前述二4︶の濫用であるときには︑右不動産につき世襲農場の成立を否定しなけれ ばならないと規定した︒. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. くは︑従来は経過措置によってのみ成立が認められた夫婦世襲農場︵二注︵5︶︶に関して︑その成立を継. ヤ. これらは︑債務整理手続︵一⇔注︵4︶︶が︑三六年末で最終的に打ち切られるために︑今後において債務整理が行な ︵8︶ われる可能性のない不良農場が︑世襲農場となることを防止するための改正である︒. 次に国エ ヤ. ヤ. 続的に認める規定を設けた︒これによって︑夫婦共同財産制に属する土地財産︑夫婦共有の土地財産︑夫婦それぞれ. の単独所有が複合する土地財産についても世襲農場の成立が認められることになった︵国記知く第吋七︑一八条︶︒この. ︵10︶︵11︶. 改正により︑夫婦の一方に所有権を集中して単独所有にしなくても︑世襲農場の成立が認められることになった︒立 ︵9︶ 法者はこの改正によって︑世襲農場の設定率が従来低かった自由分割相続地域︵西部のライン地方や西南部︶での世襲 農場設定率の向上を企図したといえよう︒. ◎ 従来︑世襲農場の新設に関する租税上の特典は︑共有もしくは法人所有の土地が譲渡され自然人の単独所有とな. り世襲農場が成立した場合に限られ︵一ピく第六七条一︑三項︑ドO<第二三条︶︑免除される租税もライヒ法上のものに ︵12︶ 限定されていた︒これに対して国工勾く第四二条一項四号は︑土地の買足しによって自活可能面積︵旺七.五飴︶の要. 件を満たし新たに世襲農揚を設定する場合には︑租税免除を受けるとし︑免除される租税も︑相続税・不動産取得税. ︵ライヒ法上のもの︶だけでなく︑印紙税および市町村による従物に関する租税︵営業調達税O薯︒号︒壁鴇訂崇巨鵯け窪︒﹃︶.

(15) 金銭債権に基づく世襲農場に対する強制執行は許されず︵菊国O第三八条︶︑わずかに農産物に対する強制執行が許. に拡大された︒. ⑳. されていた︵同第三九条︑五九条︑ドu<第二〇条一前述二4︶︒これに対して︑国工閃く第三七条は︑強制執行しうる対象. ﹁自己もしくは家族に衣食を与えるため︑ならぴに農場の経営維持. を︑農産物の売却によって得た債権および世襲農場を構成する不動産の使用賃貸もしくは用益賃貸による賃料債権に ︵13︶. も拡大した︒但︑農民が右の債権による収入を︑. 国=くδ︶による改正. 沁国O第一五条二項は︑農民が︑名誉または農場を秩序正しく経営管理を行なう能ヵを喪失する場合︑もしくは. 世襲農場手続令騨浮oオR貯ぼ①房o巳巨お︵. のために用いる場合に限って﹂︑農民の申請に基づいて︑右債権に対する差押は解除されることになる︵同条二︑三項︶︒. 3. O. 農場小剥奪匡晋︒>げヨ︒∵. 秩序正しい経営を行えば履行可能な債務を弁済しない場合には︑一子相続裁判所は︑世襲農場の管理・用益権を農民 ︵14︶. ︵ 世襲農場所有者︶の配偶者または一子相続人に委ねることができる︵管理・用益権の剥奪. 震目αQ︶と規定し︑さらに同第三項は︑配偶者または一子相続人が不存在の場合もしくはこれらの者が農民能ヵを欠く. 場合には︑一子相続裁判所は︑ライヒ農民指導者が推薦する者に世襲農場の所有権を移譲することができる︵所有権. ︵14︶ の剥奪一農場大剥奪σQ3留>げ馨寅目αq︶としていた︒このように︑ヵ団O自体が︑世襲農場所有権を完全に自由な所有. 権としてではなく︑義務拘束的なものとして規定していたが︑右条項には何の施行規定もなく︑農場剥奪は実際はと ︵15︶ んど行なわれず︑実効性がなかった︒. そこで団=≦○は︑第八章﹁粗悪な経営を行なう世襲農場所有者または農民無能力な世襲農場所有者に対する措. 一五. 置﹂を設け︑男国O第一五の農場剥奪制度による二つの措置についての詳細な施行規定を設けると同時に︑新たに 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(16) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. ︵16︶. 一六. ﹁より軽徴な︑しかし多くの場合より実効性のあるであろう﹂二つの措置︑即ち﹁監督者による経営監督﹂および. ﹁受託者による経営執行﹂を規定したのである︒この国=くδ第八章による改正は︑国=勾くおよび国=<δによ ︵17︶ る今次の改正の﹁中核﹂とさえ評価されており︑このことは︑世襲農場の経営の態様が︑生産力向上の観点からより. 一層重視されるようになったことの端的な現われであろう︒またこれらの措置に類似した措置が︑後に見る三七年の. 土地経営管理保全令︵四4参照︶によって非世襲農場地にも拡張され︑非世襲農場地についても︑生産力向上の観点. 世襲農場所有者︶が︑①秩序正しい経営管理を行なわない場合︵以下﹁粗悪経営﹂︶︑②. が貫徹されていくことになる︒以下では国エくδ第八章による四つの措置を概観する︒ ◎ 一子相続裁判 所 は ︑ 農 民 ︵. 秩序正しい経営を行なえば履行可能である債務を履行しない場合︵以下﹁債務不履行﹂︶︑③農民能力を喪失した場合︵以. 下各々︑要件①②③と略す︶には以下の措置の一つを命じ得る︒㈹監督者による経営監督︑㈲受託者による経営執行︑. ω閃国O第一五条二項に基づく世襲農場の管理・用益権の剥奪︑④同第三︑四項に基づく世襲農場所有権の剥奪︒. 尚︑四措置は︑㈲㈲ω③の順に︑より厳しいものになってゆき︑またω@を命じ得るのは︑要件②または③の場合に 限られる︒. ここで目に止まるのは︑㈹㈲の新設により世襲農場の経営態様により容易かつ柔軟に介入し得るようになったこと ︵18︶. である︒即ち︑まず第一に︑経営管理が秩序正しくないが︑それだけでは農民能力の喪失を認定し得ない場合に︑従 ︵19︶. @個という軽徴な措置. ︑﹀︶. 前はω⑥の措置しか行ない得ず︑実務上それを行なう決断が付きにくいため︑実効性が発揮されなかったが︑このよ ︶︶. うな場合にも@伊が行ない得るようになった︒第二に︑逆に農民能力喪失︵③︶の場合にも ︵20︶. を命じ得ると規定され︑農民に経営改善のための機会を与えるべき場合や農民能力の回復および経営改善の見込みの. 有無について最終的判断を留保すべき場合をも考慮している︒第三に︑一子相続裁判所には︑各事件の状況に鑑み.

(17) 監督者による経営監督. ︵21︶ て︑各申請権者が申請する措置と異なる措置を命じる自由裁量権が与えられている︒. @. 一子相続裁判所は︑要件①または②の場合︑ラント農民指導者の申請に基づいて︑監督者による経営監督を命じる. ことができる︒監督者は︑ラント農民指導者の推薦に基づいて一子相続裁判所が任命する︵国=<δ第七四条︶︒監督. 者は︑農民の経済状況を審査し経営を監督するものとし︑また農民が可能な限り高率な生産性を目指して秩序正しい. 経営管理を行ないかつ債務を履行するよう指導する︵第七五条一︑二項︶︒農民は︑監督者の勧告に基づいて農業経営. 上必要な措置をとらなければならず︑農民がこの勧告に従わない場合には︑監督者はこの措置を農民の費用で行なう. 権限を与えられる︵同第四項︶︒従って︑経営の実権は所有者に残ることになる︒経営監督中に経営管理の改善がない. 受託者による経営執行. 場合には︑より厳しい三つの措置︵㈲ω⑥︶が命じられる︵第七六条四項︶︒. ⑥. 一子相続裁判所は︑要件①または②の場合で︑監督者による経営監督では不都合ζ一留鼠巳の除去に十分でないと. 思慮する場合には︑ラント農民指導者の申請に基づいて︑受託者による経営執行を命じることができる︒受託者は︑. ラント農民指導者が推薦する者を一子相続裁判所が任命する︵国寓≦O第七七条一︑二項︶︒農民は︑世襲農場やその構. 成物︑そこから生じる利益︑および世襲農場産出物の売掛債権を処分する権利を失う︵第七九条一︑二項︶︒受託者は︑ ︵22︶. 世襲農場の占有の移転を受け︑秩序正しい経営規制に従って管理・利用し︑世襲農場もしくはその構成物を通常の経 ︵23︶. 営の範囲内で処分する権限を有する︵第八○条一︑二項︶︒従って事実上︑経営権は受託者に移転する︒この措置は︑農. 一七. 民が農民能力を回復する展望がある場合に命ぜられるので︑農民能力が回復すれば終了し︵第八四条一︑二項︶︑逆に回 復の見込がなくなれば︑管理・用益権または所有権の剥奪が命ぜられる︵同第三項︶︒ 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(18) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. ω管理・用益 権 の 剥 奪. 一八. 一子相続裁判所は︑要件②の場合または農民が農民能力を喪失した場合には︑ラント農民指導者の申請に基づい. て︑農民から世襲農場の管理・用益権を剥奪することができる︵知国O第一五条二項︑国=≦○第八五条一項︶︒所有者の権. ⑥参照︶︒しかし︑用益管理人は︑原則として︑農民の配偶者︑推. 利制限および用益管理人Z暮ミR舅巴8ス管理・用益権の移譲を受ける者︶の権限は︑経営執行の場合の所有者・受託者 のそれとほぼ同じである︵国=≦O第九〇︑九一条. 定上の法定一子相続人または指定の一子相続人から選任されねばならず︵第八六条︶︑さらに管理・用益権の剥奪中に. 農民が死亡した場合には︑一子相続裁判所は用益管理人を一子相続人に指定しなければならない︒このことから︑管. 理・用益権の剥奪制度は︑強制相続ないし強制的な親子間農場譲渡の実質を成すものであり︑経営執行との形態・効. 果面での類似性にもかかわらず︑本質的に相違するものである︒この点は︑世襲農場が﹁血族の相続財産﹂︵即国O序 文︶であることが考慮されたものと思われる︒. ③ 所有権の剥奪. 要件②の場合または農民が農民能力を喪失した場合で︑しかも用益管理人に選任されるべき者が︑全く存在しない. か︑またはその全員が農民能力を欠く場合には︑一子相続裁判所は︑世襲農場の所有権を︑ライヒ農民指導者の申請. ︵24︶. ﹁農民﹂やその家族に若干の権利が留保されるだけで︑全く血族外の新所有者に移転. に基づいて︑これが推薦する者に移譲することができる︵閃国〇一五条三︑四項︑国=≦O第九五条︶︒これによって︑世. 襲農場に関する一切の権利は︑. 小括. する︵国=<δ第九七条︶︒. 4. 以上見た世襲農場法の改正は︑次の様に総括できよう︒.

(19) 第一に︑世襲農場に対する金銭債権による強制執行の道を広げたこと︵2四︶および粗悪経営に対する措置を柔軟. 化・強化したことは︵3︶︑世襲農場の金融信用を高めて︑食糧自給政策の要求する集約化・機械化をすすめようとし. たものであると考え得る︒第二に︑過重負債を負った農場については世襲農場の設定を禁止し︑逆に﹁単独所有﹂の. 要件を満たさなくても︑健全な農場には夫婦世襲農場への道を開いたこと︵2◎︶は︑生産力ある農場を︑世襲農場 制の中に取り込むことを意図したものであったと考えられる︒. このことから︑世襲農場制の重点は︑三三年の勾国Oにおいては︑ナチスの社会的・政治的基盤としての﹁世襲農. 場農民﹂をいわば﹁特権層﹂として維持しようとすることにあったが︑三六年の国=刀くおよび国エ≦○に至ると︑. 食糧生産の担い手として経済力・生産力ある農場を世襲農場へと組み入れることに重点が移行してきたといい得るで. あろう︒従って︑勾国Oにおいては︑前述の三〇年﹁農業綱領﹂で打ち出された﹁農民保護﹂が前面に置かれていた. が︑国=閃くおよび国エ<δに至るとこの保護は後景に退き︑﹁土地所有者の義務﹂が前面に押し出されることになっ たのである︒. 三七年の九六〇億園ζへ︑純収入は九〇億囲ζから二七〇億即ζへと増加し︑農産物販売額中の負債利子の比率も同じく一三%から六9 6へと. ︵1︶ 食糧自給率は︑三〇年代初頭の六〇%前後から三六年の七六%へと上昇し︑農産物販売高も三二年の六四〇億ライヒ・マルク︵u即ζ︶から. 戸原四郎﹁ナチス経済﹂二七頁︵前出一口注︵9︶︶︒. 低下した︵磯辺秀俊﹃ナチス農業の建設過程﹄一六三︑二三一頁︒戸原四郎﹁ナチスの農業政策﹂六〇〇頁・前出剛口注︵4︶︶︒ ︵2︶. は︑三六年の外国為替危機であり︑出超にもかかわらず外国為替不足となったことが焦眉の問題となっていた︒この原因は主に︑①輸入物資の. ︵3︶第二次四ケ年計画について詳細は︑大野前掲書︵一口注︵2︶︶第四章参照︒同書によれば︑第二次四ケ年計画登場の直接的契機となったの. 一九. た︵一八四頁︶︒主に③を巡って︑ライヒ経済相シヤハトと食農相ダレとの間に争いが生じるが︑党内の実力者ゲーリングが第二次四ケ年計画. 価格騰貴︑②ナチス党の外貨需要増大︑③食農省による飼料輸入のための外国為替需要の大幅追加︑④軍拡のための外国原料需要の増加であっ. 世襲農場 法 と ナ チ ス 農 地 法 制 の 展 開 ︵ 鈴 木 直 哉 ︶.

(20) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 戸原﹁ナチス経済﹂二九頁︶︒. 二〇. の最高責任者に任命されるに伴い︑前二者の影響力は次第に弱まり︑農業分野でもベッケ頃㊦﹃げ①博切9ざが影響力を強めていく︵豊永三八 頁︑. 戸原﹁ナチス経済﹂三一頁︒. 豊永三八頁︒. 国国ヵ<第五五条により︑前述のライヒ世襲農場法の第一ないし第三施行令は失効した︒. ︵4︶. 我国の民法第四二四条による﹁詐害行為取消権﹂に当たるもので︑一八七九年七月二一日の﹁破産手続外における債務者の法律的行為の取. ︵5︶. ︵7︶. ︵6︶. 罫匹o醤2R一Z窪昌凝臼一ヨ甲浮o砕g年. 掛ゲ30畠R︷辞Z勢ユg巴穿08ヨε冒畠ω鼠ユの葺ぎω鮮置①寓焦一合這零ω﹂留︷●︵以. 消に関する法律﹂ ︵一八九八年五月二〇日付の文言による︶に基づくものである︒ ︵8︶. 園島2一︒零oD●9. この地域では︑世襲農場の普及率が全国平均︵経営件数比で二二・一%︶の半分以下であった︒詳細は︑国チま︷o冒∪窪§ぎ昌寄87. 下ω一〇目8霞と引用︒︶︒. ︵9︶ 訂︷件仁 & ω 鼠 瀞 二 F 一 〇 ω O り ψ 一 〇 刈 ●. ︵0 1︶︸o訂9<o屋︒ぎ︷一8浮R象浮馨①﹃巨oq5侮甲訂一一猛磯畠R卑浮oh①一σq魯ω︒訂︷. 自男Z一〇零9一9. が︑夫婦世襲農揚については︑夫婦の一方が他方を一子相続人に指定できるよう改正された︵国=幻く第二〇条一項︶︒この改正も︑夫婦世襲農. ︵11︶従来︑配偶者は世襲農場の法定︸子相続人に含まれておらず︵閃国O第二〇条︶︑一子相続人に指定することも困難であった︵同第二五条︶. ρホ国頃幻<y. これらの債権につき強制執行が許されるか否かについては従来明確な規定がなく︑判例の解釈も多様であった︵甘訂9ω8︒芹ぎざ亮︒昌. 一〇鼠9ω8斥島oぽ仁&餌ぼ一一魯o<①お雪毘騎巨oq雪︵霧. 揚新設促進の副次的誘因となろう︒ ︵2 1︶. ユo﹃N宅雪αq雲o一一ω胃①良β昌oq︵㎝零国=開くy沁傷男Z一〇零ψ窃●︶︒. ︵13︶. 鵠︷︒. くooqo一の︸O讐&σqo緯鼻窪ユo吋卑浮o中8冥署魯o﹃号昌σq仁昆自窪国﹃浮o才R♂ぼo器o巳昌茜り冒旨ユψoゲo毛o︒ぽ諺oぼ一︷けお零ω.. 切一〇目畠Rり¢. 匹oヨ2Ruψ&一F&鯉の用語法による︒. ︵15︶. ︵ 4 1︶. ︵16︶ 09. ︵18︶. oい ω一〇ヨ亀Ruω︒ホo. ︵17︶ 切一〇日昌R.ω●aoo●. ︵19×20︶≦φ碧β9︒>島oq︒・琶ε農β&<︒邑鉱麟魯巨σq号ω寄8訂震浮o富︒浮ω含吋3象・ぼ匡︒<円9身冒㎎雪ぎヨ醇U9①亭.

(21) げR這ω9男創即2一〇ω①ω. 一一鱒鱒●. ︵21︶ 一子相続裁判所は︑㈲■が申請された場合に㈲︵国鵠≦O第七七条五項︶またはω︵同第六項︶を︑ωが甲請された揚合に㈲または⑥を ︵第八五条二項︶︑のが甲請された場合にωまたは砂を︵第九五条二項︶︑適切と考えるとぎには命令することができる︒ ︵22︶菊国O第三七条一項︵前述二4︶を参照︒. ここでの分析は︑豊永前掲および谷口﹁構造﹂に負うところが大ぎい︒. ︵%︶U①岳曽pご霞い㊦一︒︒ε冨σqのαq&讐ざぎげぎ①岳魯8菊︒︒簿噂菊ユ菊Z一〇鴇ω︒o︒蒔o︒.. ︵24︶. 四︑第二次四ヶ年計画と非世襲農場地に関する諸立法 1︑小序. 以上までで︑世襲農場制の重点が︑第二次四ケ年計画の下では食糧生産の担い手確保に移行したことを概観した︒ ︵1︶. ︵2︶. こうした傾向は︑非世襲農場地に対する政策にも共通する︒政権発足当初は︑世襲農場増設政策も一定の実績を収め. るが︑同計画期に入るとそれも激減する︒これと同時に︑2以下で見る諸立法によって︑非世襲農場地に対する規制 も強化され︑そこでの農業経営の合理的形態での維持が重視されていくのである︒. 地片取引布告は︑第一次大戦末期の一九一八年三月一五日に﹁農林業用地片の取引に関する布告﹂︵ヵO卑碧8︶. 2︑地片取引布告の改正 O. として公布された︵以下これを﹁旧布告﹂という︶︒旧布告は︑五㎞を越える農林業地片の取引︵譲渡・貸貸等︶に︑行 ︵3︶. ︵4︶. 政官庁の許可を受領する義務を課し︑許可のない取引を無効にするものであり︑ナチス政権樹立後も旧布告に基づく. 許可制度は︑非世襲農場地について継続されていた︒しかし︑世襲農場地が土地市場から隔離されたり︑経済全分野に. 二一. わたる景気回復等によって︑地価の高騰に直面したため︑第二次四ケ年計画の目標である食糧自給を達成するために 世襲農場法 と ナ チ ス 農 地 法 制 の 展 開 ︵ 鈴 木 直 哉 ︶.

(22) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 二二. は︑非世襲農場地の取引に関してもより強力な規制が必要となり︑今次の改正に至る︒改正は︑三七年一月二六日の. 布告︵勾O卑Hρ鶴︶によってなされた︵これを以下﹁新布告﹂という︶︒以下︑新・旧布告を対比しながら見ていく︒. ⇔ 新布告によれば︑効力発生のために許可官庁Oo口魯ヨ蒔巨σQω幕ま巳oの許可を必要とするのは︑二㎞以上の農林. 業用地片︵第一条︶に関する︑①地片所有権の譲渡︑②地片産出物の享受を目的とする︑物権の設定または合意︵小 ︵5︶. 作契約の締結および任意更新はこの合意にあたる︶︑③強制執行の申立Ooげ9である︵第二条一︑三項︶︒許可は条件>ロ浮σq① ︵6︶. ︵7︶. 付で与えることができ︵同四項︶︑許可官庁は︑許可に関する決定の前に管轄の郡農民指導者に聴聞しなければなら. ない︵同第五項︶︒親族間の法律行為には許可が不要とされるが︵第三条一項五号︶︑譲渡の場合にはこの限りでない︵同. 号但書︶︒旧布告との相違点は︑規制対象規模の最下限が二㎞へと引き下げられたこと︵旧布告第一条では﹁五㎞を越え. るもの﹂︶︑強制執行の申立が規制対象に入ったこと︑親族間でも譲渡の場合には許可が必要とされるに至ったことで ある︒. 強制執行の申立について言えば︑従来︑これには許可が不要であったため︑所有権譲受の許可を受け得る見込みの. ない者が︑所有者と結託して抵当権を取得し︑強制執行を申し立て︑所有権を取得するという一種の脱法行為が行な ︵8︶ われていたが︑それを防止するために改正された︒また︑親族間の譲渡に許可が必要となったことによって︑親子問 ︵9︶ の農場譲渡契約や共同相続人間の調整契約>垢鉱醤巳Rω卑自おも規制対象に入り︑とりわけ自由分割相続の慣行の ︵10︶. ﹁法律行為の実行が︑重大な公の利益に反する場合にのみ許 ヤ ヤ. ある地域で︑非世襲農場が複数の共同相続人に分割されたり︑農業家でない共同相続人の手中に落ちることが防止さ. 許可を拒否すべき場合として新布告第五条一項は︑. れるようになった︒. 匂. 可を拒否することができる︒次の第一ないし五号の場合には︑特に拒否することができる︒﹂と規定し︑①経営管理.

(23) に危機が生じ︑民族食糧の損失となる場合︑②地片が農業専業者でない者に移譲︵所有権の移動だけでなく利用権の移転. を含む︶される場合︑③地片の非経済的分割を目的とする場合︑④当該経営の独立が他の経営との併合により消滅す. る場合︑⑤対価が著しく不均衡な場合︵同項第一−五号︶︑を列挙している︒旧布告との相違的は︑﹁重大な公の利益﹂ ︵11︶ という一般条項的文言が入ったこと︑拒否事由が制限的列挙︵旧布告第三条︶から例示的列挙になったことである︒許. ︵12︶. 以上の様に︑地片取引布告の改正によって︑. ﹁所有および利用の交替のあらゆるものが︑即ち地片に対する事実. 可官庁は︑これによって取引不許可による取引介入の権限を一層強化することになった︒ ⑳. ︵13︶. 的支配についての重大な法現象の総て﹂が︑許可受領義務の下に服することになったのである︒また条件付許可︵第 二条四項︶によって︑一定の農地誘導すら可能になっている︒. 3︑三七年賃貸借改正法. O ここでは︑非世襲農場地の賃貸借法を三七年賃貸借改正法︵閃O卑H¢一︒8︶を中心に考案する︒ところで︑ナチ ︵M︶ ス期の農地賃貸借法制は︑自作農優遇的制度と評価し得る世襲農場制との関係で特に興味深いが︑これに関しては続. 稿を準備中であるので詳細はそれに委ね︑本稿では概略だけを論じることにする︒. ドイツにおける農地賃貸借立法は︑一九二〇年六月九日の賃貸借保護令によって開始されるが︑三三年のナチス政. 権樹立後も︑基本的枠組を提供していたのは︑二五年七月二一二日付で改正を受けた賃貸借保護令℃§算零言言oぴ崖お ︵15︶ ︵勾O国=¢一認H以下℃ω30と略した場合は︑この改正を受けたものを指す︶および三三年四月二二日の賃借人保護法. 凄︒冨oお畠暮Nαq①のo欝︵閃oω一﹂¢旨に以下℃ω魯oと略す︶であった︒この枠組に大きな転換期をもたらし︑かつ賃貸 ︵16︶ ︵17︶. 借法に初めてナチス的特色を与えたのが三七年改正法であった︒前二者からみていこう︒. 壬二. ◎ 男ω90および℃ω90は︑制定当初は有効期間を︑各々ニケ年︑一ケ年に限定された限時法であり︑三七年法に 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(24) ︵18︶. 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶. 至るまで短期間の有効期間延長が繰り返された︒. 二四. 勺ω畠○は︑経済的賃貸借保護&器9駄岳畠R評魯房︒ξ盲︵賃料規則︶については︑賃貸面積の大小にかかわら. ず︑賃貸借調停所評3鼠巳お罐器旨は︑一般的経済状況の変化の下で適切でない給付を公平に合致する限りで変更. する決定を下すことができると規定している︵第一条二項︶︒社会的賃貸借保護ωo臥巴R評昌8︒言旨︵存存保護︶につ. いては︑賃貸面積が一〇㎏未満である場合に限り︑賃貸借調停所は︑両当事者の利益を衡量し公平に合致する場合に. は︑告知された契約のニケ年の継続を命じること︵告知保護溶二且蒔目oQ器︒言εおよび満了した契約のニケ年の延長. を命じること︵賃貸借期間延長評3言魯話ま漏震9磯︶ができると規定している︵同第三項a︑b号︶︒. ︵21︶. 次に︑℃ω畠Oは賃料規制については何の規定ももたない︒存続保護については︑賃貸人による告知を無効にする告 ︵19︶ 知保護︵第一条︶および一ケ年の賃貸借期間延長︵第二条︶を規定していた︒しかし︑三三年六月二三日の法律によっ ︵20︶ て︑賃貸人の﹁自己経営管理意図Oo︒一げωチ〇三誘9緯葺お鋸鼠馨窪﹂が︑﹁賃貸借期間延長の絶対的棄却事由﹂になり︑. 右に見たように勺ω90およぴ勺ω90は︑有効期間も賃貸借保護の内容も限定的なものであったのに対して︑. さらに三五年六月二八日の法律によって︑存続保護は︑賃借地が一二五㎞以下の場合に限定されることになった︒ ◎. ﹁民族食糧確保のために必要であり︑かつ郡農民指導者の同意あ. ogOおよび℃ω畠Oを﹁後に規定あるまで まず︑三七年改正法は︑それ自体に有効期間の限定がなく︑また℃o げ一の讐︷≦葺R8﹂延長すると規定した︵第一条︶︒. 次に︑改正法第二条第一項は︑賃貸借調停所は︑. る場合には﹂︑当事者の申請に基づいて︑ω賃借地の規模にかかわりなく︑賃貸借契約を︑℃ω畠Oおよび℃ω畠Oが定 ︵22︶. ︵23︶. める期間︵各々二ヶ年・一ヶ年︶を越えて︑適切な期間延長すること︵同項第a号︶︑および②生産力向上に反する契約. 条項︵賃料条項を含む︶を廃止または変更すること︵第b号︶︑を命じることができると規定した︒.

(25) このように三七年改正法は︑従来一定の面積規模に限定されていた経済的・社会的賃貸借保護を︑全賃貸借契約に. 拡大︵しかも契約の延長期間も無限定になる︶しただけでなく︑当事者の申請ある場合においてのみであるが︑あらゆる. ︵国=くδ第八章︶に類似する措置. O卑一¢鵠碧以下﹁保全令﹂︶︑および同四月二二日の同. 契約条項に介入する権限を︑賃貸借調停所に付与したのである︒これが︑三七年法は農地賃貸借法制にナチス的な特. 土地経営 管 理 保 全 令 の 制 定. 色を与えたとする所以である︒. 4. ここで考察する三七年三月二三日の土地経営管理保全令︵ ︵24︶. 施行令︵知O卑一ωぴ脇︶は︑本稿三3で見た﹁世襲農場の粗悪経営に対する措置﹂. を︑非世襲農場地について制定するものであり︑改正立法でなく新設立法である︒. 保全令はまず︑ω農業経営または農業用地片︵以下両者を﹁︵農業︶経営﹂と略す︶の利用権者︵所有者︑自主占有者︑. 賃借人︑用益権者︑およびその他の利用者としての経営管理者を意味する 施行令第一条︶による経営管理改善のための四つ. の措置︵以下の①〜④一保全令第一条︶︑次に㈹休閑地の利用権者に対する二つの措置︵以下の⑤⑥一保全令第二条︶を規. 利用権者の経営改善のための措置︵保全令第一条︶. 定する︒. ω. ①経営改善の勧告 農業経営の利用権者による経営態様が︑農業経営に対し民族食糧確保のために課せられた要請. に継続的かつ著しく反する場合には︑区裁判所>昌詔豊︒算は︑郡農民指導者の申請に基づいて︑右の要請に添う経. 営を行なうことを勧告することができる︵施行令第五条︶︒②監督者による経営監督 ①の勧告が経営改善に不十分・. 不適当な場合には︑区裁判所は︑ラント農民指導者の申請に基づき︑農業経営を監督者による監督に服せしめること. 二五. ができる︵施行令第七条︶︒利用権者が︑監督者の命ずる必要措置を講じない場合には︑監督者はこの措置を利用権者 世襲農揚法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(26) 早稲田法学 会 誌 第 三 十 四 巻 ︵ 一 九 八 三 ︶. の費用で行なう権限を与えられる︵同八条︶︒③受託者による管理賃窪匡巳o旨30<o毫巴εお. 二六. ①②の措置が経営改. 善に不十分・不適切な場合には︑区裁判所は︑ラント農民指導者の申請に基づいて︑当該農業経営を︑受託者による. 管理の下に置くことを命令することができる︵同第一二条︶︒この命令により利用権者は︑農業経営の管理権・処分権を ︵25︶ 喪失する︵同第一三条︶︒受託者は︑利用権者の計算で経営を管理する︵同第一五条︶︒④強制賃貸 ①ないし③の措置が. 経営改善に不十分・不適切な場合には︑区裁判所は︑ラント農民指導者の申請に基づいて︑当該経営を農業経験者に. 農業利用に適した地片が現実に利用されていない場合には︑区裁判所は︑ラント農民指導. 休閑地の利用権者に対する措置︵保全令第二条︶. ︵26︶. 賃貸することを命令することができる︵同第一三条︶︒. ㈹. ⑤耕作意思の確認手続. 利用権者が︑利用意思のないことを表明した場合︑または利用意思を表明. 者の申請に基づいて︑右地片の利用権者に︑地片利用の意思の有無を一定期間内に意思表示することを命じることが できる︵施行令第二八条一項︶︒⑥強制賃貸. ︵同条第二項︶︒. したが現実には利用しない場合には︑区裁判所は︑当該地片を農業経験者に賃貸すべきことを命じることができる. 以上のように︑保全令・施行令によって︑非世襲農場地における経営態様も厳しい国家統制の下に置かれることに なった︒. 5 小括. 以上四では︑第二次四ケ年計画期における非世襲農場地の三立法を見てきた︒そこでは︑表現こそ異なれ︑三法律. に﹁食糧自給﹂の観点が盛り込まれたこと︑ライヒ食糧団の地方組織の権限が明定されたことが注意を引く︒そし. て︑非世農場地についても︑地片取引布告によってほとんど総ての取引が許可官庁の許可制度の下に置かれ︑三七年.

(27) 賃貸借改正法によって賃貸借契約の全条項が賃貸借調停所の変更・廃止権に服せしめられ︑土地経営管理保全令によ. って区裁判所が農業経営の態様にまで介入し得ることになった︒このことによって︑非世襲農場地に関するナチス農 地法制が完成をみたのである︒. これは三三年七月一四日の﹁ドイツ農民層新形成に関する法律﹂︵勾O匹﹂ωひ嵩︶に基づく内地植民によって行なわれた︵この法律は︑. ⁝九一八年の﹁ライヒ植民法﹂︵男O匹●ψ置8︶を承継するものである︶︒内地植民とは︑主に︑東部の大土地所有を分割または解体して中小. ︵1︶. 農民経営を創設しようとするものであるが︑三一二年法による植民事業は︑世襲農場の要件に合致する農場を新たに創出する新設植民Z窪旨・. って行なわれた︵北条巧﹁ワイマル期ドイツにおける国内植民﹂五三九頁. 松田・川島編﹃国民経済の諸類型﹄・一九六八年・所収︶︒. αζ茜︑および世襲農場の面積最下限に満たない小経営に土地を追加的に分与して世襲農揚にする拡張的植民>巳一〇〇Q震巴包ξおの二方法によ. ︵2︶ヴァイマール・ナチス期の植民事業の実績を統計資料でみると︑拡張的植民はナチス期に入ると約六〇%増加する︵三三年no︒玉o︒O件・ ︒逡件・零ふ8訂︶︵谷口﹁構造﹂六〇頁︶︒ ωる8件ふOる㎝o︒訂︑三七年 一りo. §宝亭9三四年目一ωる9件・贈る留訂︶が︑第二次四ケ年計画期に入った三七年には︑新設植民が︑前年の約六〇%へと激減する︵三六年. ︵3︶世襲農場地には︑地方取引布告の適用はなく︵旧布告第二条三号︑新布告第三条一項一〇号︶︑園国O第三七条により︑譲渡・負担設定・賃. 一定の取引を行政官庁の許可に服せしめることは︑世襲農場の譲渡等を一子相続裁判所の許可に服せしめる︵前注︶のと対応する︒. 貸に際しては︑一子相続裁判所の許可を要するとされている︵二4参照︶︒. ︵5︶名.園窪げ9くo涛⁝島ωo留P菊島殉2一〇零ψ蕊︵以下菊窪げ震と引用︶. ︵4︶. ︵6︶正確には︑夫婦間︑直系血族間︑姻族間︑および二親等以内の傍系血族間の法律行為である︒. ︵7︶その他に許可を不要とするのは︑ライヒ︵国Yラント・その他の地方公共団体・ナチス党の法律行為︑他の法律に基づく法律行為︑世襲. o︒・ ︵9︶勾窪げ05ω.魔.. 農揚地の取引︵注︵3︶参照︶である︵第三条一項︶︒ ︵8︶菊窪げ9ω. ︵1 1︶. 勾窪げoさω●&︐. ︵1 2︶ 沁窪げoコω︒ ω. ︵10︶ 国.ωきRりωo留三自ざ凝¢p伍ωo号8邑詔窃琶言昌σq︸園自閑Z一〇器ω.一8.︵以下ω窪窪と引用︶︒. 二七. ︵13︶ 例えば非農業家へ譲渡を許可せざるを得ない場合でも︑﹁一定期間内に農業家もしくは土地購入機関︵例︑植民会社︶に対し再譲渡するこ. 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

(28) 早稲田法学会誌第三十四巻︵一九八三︶ と﹂を条件として許可をすることが可能である︵留垢﹃︶ω﹂8︶︒. 当時の食農大臣は︑まだ国家人民党のフーゲンベルクであった︵一口︶ことに注意︒. 二八. 国O匹﹂ω﹂8・︶. ︵14︶論点を挙げれば︑世襲農場政策と賃貸借政策およびそれらの変化︑世襲農場地の賃貸借規制︑並びに非世襲農場地に対する世襲農場増設政. ︵15︶. 牢凶εoダ90諸5閃o一号ω冨oζωoぼ冒〇三昌ロoq一Uo三の3①︸島蜂N﹂漣Oω・旨ω︷●. 策と賃貸借規制との関係およびその変化等々である︒. ︵16︶. ︵17︶ ℃ω魯O︑℃ω30および三七年改正法は︑四〇年七月三〇同のライヒ賃貸借保護令即①ざ訂富9房9呉8こ2眞︵閃℃O. 賃借人の改良を妨げたり︑賃貸人が改良費を. 延長諸法律については︑ギぎoFU器評魯30茸8冥畠8Uo信富号魯即㊤33お畠浮﹃葦︸¢髄霊を参照︒. によって統一さ れ る ま で 並 存 し た ︒ ︵18︶. 不当に高・低額の賃料を定める条項︑. 国●︿op国彗pZ窪gβμα螢一盆・℃8びヨo貫87計国α閃Z一80ω︐㎝一S. 賃借人保護法改正法︵勾O国﹂Pω8︶. 賃借人保護法第四改正法︵閃O匹﹂・¢o︒ε︶. ︵20︶. ︵19︶. ︵21︶. 変更・廃止されるべき条項として考えられるのは︑. 三七年改正法に先立ち︑同七月一四日にライヒ食糧団から﹁統一賃貸借契約書固昌oぎ冨号マo葺藷﹂︵>8乱2認牙の寄一33餌垢ヨ・. O巽︷ ︶︒. ないことを定める条項などである︵oDけ窃器戸∪器O①器冒警R≦o一8お①一ε濃仁&卑恩冒巨磯傷8評o﹃ヨo昏g年ωり国α男Z一〇零. ︵認︶. 補償し. ω︒. 賞ぼoお一〇葺O黛零︶が発行された︒これは︑同法による契約条項の変更・廃止や︑地片取引布告に基づく賃貸借契約締結・更新の際の許可. ︵23︶. ︵餌︶. 休閑地に対する措置が制定される背景には︑三1で述べた著しい農村労働者不足があるといえよう︒. ζ貰ざ霧・90閑浮窪国震切Oα8げ霧冨一一⁝鱒即山閑Zごω刈93一の用語法による︒. 両令は世襲農場に適用されない︵保全令第三条︶︒. ︵前述2口︶の場合に︑模範・基準とされる︒. ︵%︶. ︵25︶. 五︑おわ り に. 本稿では︑ナチス政権成立以降︑第二次四ケ年計画期に至るまでの農地立法を跡付けてきたが︑その結論は次のよ.

(29) うにまとめられる︒. 一九三三年のライヒ世襲農場法は︑﹁血と土﹂の結合などナチス的イデオ・ギーの影響を色濃く受けたものであ. り︑比較的安定した大農層をナチス党の農村での政治的基盤として︑即ちいわば﹁特権層﹂として保護・維持しよう. としたものであった︒しかし第二次四ケ年計画が施行され︑農業に食糧自給率の一層の向上という課題が課せられる. と︑世襲農場制の重点は︑生産力の高い経営を︑維持すること︑あるいは世襲農場へ組み入れることに移行する︒こ. の具体化が︑三六年の世襲農場法令および世襲農場手続令による改正であった︒こうした変化は非世襲農場地につい. ての諸立法にも現われ︑三七年の地片取引布告の改正・賃貸借法の改正・土地経営管理保全令の制定によって︑非世. 襲農場地も包括的な規制の下におかれ︑そこでの農業経営の生産ヵが重視されることになる︒こうして︑世襲農場. 地・非世襲農場地の双方にわたる全農地を︑厳格な国家統制の下に置くナチス農地法制が確立したのである︒. 二九. ︵早稲田大学大学院法研論集・第三一号・一九八四. ︿一九八三年九月三〇日脱稿﹀. さて︑本来ならばここで今後の展望が示されるべきだが︑それは前述の続稿において農地賃貸借規制をも検討した. 上で行なうこととしたい︒. 本文中で述べた続稿は︑鈴木直哉﹁ナチス世襲農場制と農地賃貸借規制﹂. ︿付記V. 年︶として公表される予定である︒. 世襲農場法とナチス農地法制の展開︵鈴木直哉︶.

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