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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)2016年6月30日. 博士学位論文審査報告書 大学名. 早稲田大学. 研究科名. スポーツ科学研究科. 申請者氏名. 丸尾 祐矢. 学位の種類. 博士(スポーツ科学). 論文題目. エラーモニタリングに及ぼす罰と報酬の効果 The effects of punishment and reward on error monitoring. 論文審査員. 主査 早稲田大学教授 正木 宏明. 博士(人間科学)(早稲田大学). 副査. 工学博士(大阪大学). 早稲田大学教授 彼末. 一之. 医学博士(大阪大学) 副査. 早稲田大学教授 内田. 直. 博士(医学)(東京医科歯科大学). 本博士学位論文は、従来明確にされていなかった罰及び報酬がエラーモニタリング機能に 及ぼす効果について、精神生理学的手法の適用によって実験的に検証したものである。本博 士学位論文は5部から構成され、その概要は以下の通りである。 第1部では、エラーモニタリングに関する従来の知見を概観した。精神生理学的指標とし て脳波の事象関連電位(event-related potential: ERP)に注目し、ERPのなかでもエラー関連陰性 電位(error-related negativity: ERN)とエラー陽性電位(error positivity: Pe)がエラーモニタリング 研究に有効なツールとなることを論じた。脳内情報処理の観点に基づき、ERNはエラー検出 を反映し、Peはエラーの主観的評価を反映することを示した。さらに正反応と分類される試 行であっても、筋電位レベルの微細なエラー(部分エラー)が同定される場合には、ERNが観 察されることを明示した。本研究では、筋電位レベルのエラーによって惹起するERNを部分 エラーERNと呼び、顕わなエラー反応で惹起するERNと区別することとした。エラーモニタ リングに関する従来の理論については、強化学習仮説、反応コンフリクト仮説等を概観した。 さらに情動・動機づけ処理の観点からも文献研究を行い、先行研究の知見が必ずしも一致し ていないことを指摘した。従来のエラーモニタリング研究ではERNに主眼が置かれており、 Pe及び部分エラーERNに関する知見が不足していることを強調した。さらに罰や報酬に対す る反応性については個人差があり、行動抑制系(behavioral inhibition system: BIS)と行動賦活系 (behavioral activation system: BAS)の両面から個人特性を捉える必要性を論じた。文献研究を 通して、エラー反応に聴覚性罰及び金銭罰を随伴させる操作と、正反応に金銭報酬を随伴さ せる操作を行い、部分エラーと性格特性を考慮した研究の必要性を強調するに至った。 第2部ではエラーモニタリングに及ぼす聴覚性罰の効果を実験的に検証した。実験では、 提示される矢印刺激の提示位置を無視して矢印の方向に対して速くかつ正確に反応する空 間ストループ課題を用いた。エラー反応毎に聴覚性罰を随伴させる罰条件と、罰を随伴させ ない統制条件の2条件を比較した。罰刺激には不快音(黒板に対する擦過音)を用いた。ERN 及びPeを条件間で比較するだけでなく、罰と報酬に対する反応性の個人差をBIS/BAS尺度で 評価し、ERN及びPeとの相関関係も調べた。実験の結果、反応時間及びエラー率に条件間の.

(2) 差はなかった。ERN振幅値についても条件間に差はなかった。しかしながら、Pe振幅値は統 制条件よりも罰条件で有意に大きかった。Peはエラーの主観的評価を主に反映するため、聴 覚性罰によってエラー評価が促進したものと解釈された。また、BASの高得点者ほどPe振幅 値が低下していたことから、報酬追求性の強い者はエラー評価を十分に行わないことが示唆 された。これらの結果は、Peがエラー評価を反映した成分であるという解釈をさらに強化す るものであった。 第3部ではエラーモニタリングに及ぼす金銭罰の量的差異の効果を検証した。実験では Go/No-go課題を用いた。実験参加者は高頻度提示されるGo刺激に対しては素早く反応し、 低頻度提示されるNo-go刺激に対しては反応を抑制することが求められた。罰操作としてエ ラー反応毎に金銭罰を随伴させ、金額の違いによって高罰条件(-50円)と低罰条件(-10 円)を設定した。金銭罰を随伴させない統制条件と比較した結果、反応時間に条件差はなか ったものの、エラー率は統制条件よりも高罰条件で有意に低く、高罰条件における罰回避の 態勢が示された。ERNには条件間で差がなく、顕わなエラーと部分エラーとの比較でも差は なかった。したがって、罰や報酬の有無、エラーの種類に関わらず、エラー検出機構はエラ ー反応によって安定して駆動する情報処理過程であることが示唆された。一方、Peは統制条 件よりも高罰条件で振幅値が有意に大きかった。Pe増大は、相対的に大きな金銭罰の随伴に よってエラー評価が促進されたことに起因したものと解釈された。 第4部ではエラーモニタリングに及ぼす金銭罰及び報酬の効果を検討した。実験では空間 ストループ課題を用いた。ここでは、報酬条件、罰条件、統制条件を比較した。報酬条件で は正反応毎に報酬(+5円)を随伴させ、罰条件ではエラー反応毎に罰(-50円)を随伴さ せた。統制条件では金銭報酬・罰を随伴させなかった。罰や報酬に対する反応性をBIS/BAS 尺度で評価し、ERN及びPeとの相関関係を検討した。実験の結果、ERN振幅値は統制条件よ りも罰条件と報酬条件で有意に大きかった。部分エラーERNも同様の結果を示した。Pe振幅 値は統制条件よりも罰条件で有意に大きかった。一方、統制条件と報酬条件に差はなかった。 さらに、BASの高得点者ほどERN振幅値は小さく、報酬を強く追求する者ほどエラー検出処 理は弱いことが示唆された。第4部の実験結果は、金銭報酬及び罰の随伴によってエラーの 重要性が高まると、部分エラーを含めたエラー検出機構が促進することを示唆している。第 2部、第3部におけるPeの結果と同様、エラー回避動機の高まりはエラー評価を強めることが 示された。 第5部では一連の実験から得られた知見について総合的に論議した。本研究では、罰随伴 によってPeが増大する結果は頑健に観察される現象であり、エラー回避動機の高まりはエラ ーモニタリングのうち評価過程に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、報酬追求性の 高い者ほどエラーモニタリング機構が弱いことを見出した。本研究は、正反応に分類される 部分エラーの検出過程と顕わなエラーの評価過程に着目した点で、エラーモニタリング機構 の解明に貢献するエビデンスを与えるものとなった。また、報酬や罰に対する反応性の個人 差に関する成果は今後の研究発展を支えるものである。これらのことから、本研究は総合的 にオリジナルティの高い内容となっており、従来の研究に不足していた知見を補強するもの である。 総合的に評価して、本博士学位論文は博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値す るものと認める。 本博士学位論文の一部は以下の学術誌に掲載された。.

(3) 丸尾祐矢・正木宏明 (2014) パフォーマンスモニタリングに及ぼす聴覚性罰刺激の効果. 生 理心理学と精神生理学,32,29-40. Maruo, Y., Schacht, A., Sommer, W., & Masaki, H. (2016). Impacts of motivational valence on the error-related negativity elicited by full and partial errors. Biological psychology, 114, 108-116. doi:10.1016/j.biopsycho.2015.12.004 以 上.

(4)

参照

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