博士学位論文審査報告書
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(2) 差はなかった。ERN振幅値についても条件間に差はなかった。しかしながら、Pe振幅値は統 制条件よりも罰条件で有意に大きかった。Peはエラーの主観的評価を主に反映するため、聴 覚性罰によってエラー評価が促進したものと解釈された。また、BASの高得点者ほどPe振幅 値が低下していたことから、報酬追求性の強い者はエラー評価を十分に行わないことが示唆 された。これらの結果は、Peがエラー評価を反映した成分であるという解釈をさらに強化す るものであった。 第3部ではエラーモニタリングに及ぼす金銭罰の量的差異の効果を検証した。実験では Go/No-go課題を用いた。実験参加者は高頻度提示されるGo刺激に対しては素早く反応し、 低頻度提示されるNo-go刺激に対しては反応を抑制することが求められた。罰操作としてエ ラー反応毎に金銭罰を随伴させ、金額の違いによって高罰条件(-50円)と低罰条件(-10 円)を設定した。金銭罰を随伴させない統制条件と比較した結果、反応時間に条件差はなか ったものの、エラー率は統制条件よりも高罰条件で有意に低く、高罰条件における罰回避の 態勢が示された。ERNには条件間で差がなく、顕わなエラーと部分エラーとの比較でも差は なかった。したがって、罰や報酬の有無、エラーの種類に関わらず、エラー検出機構はエラ ー反応によって安定して駆動する情報処理過程であることが示唆された。一方、Peは統制条 件よりも高罰条件で振幅値が有意に大きかった。Pe増大は、相対的に大きな金銭罰の随伴に よってエラー評価が促進されたことに起因したものと解釈された。 第4部ではエラーモニタリングに及ぼす金銭罰及び報酬の効果を検討した。実験では空間 ストループ課題を用いた。ここでは、報酬条件、罰条件、統制条件を比較した。報酬条件で は正反応毎に報酬(+5円)を随伴させ、罰条件ではエラー反応毎に罰(-50円)を随伴さ せた。統制条件では金銭報酬・罰を随伴させなかった。罰や報酬に対する反応性をBIS/BAS 尺度で評価し、ERN及びPeとの相関関係を検討した。実験の結果、ERN振幅値は統制条件よ りも罰条件と報酬条件で有意に大きかった。部分エラーERNも同様の結果を示した。Pe振幅 値は統制条件よりも罰条件で有意に大きかった。一方、統制条件と報酬条件に差はなかった。 さらに、BASの高得点者ほどERN振幅値は小さく、報酬を強く追求する者ほどエラー検出処 理は弱いことが示唆された。第4部の実験結果は、金銭報酬及び罰の随伴によってエラーの 重要性が高まると、部分エラーを含めたエラー検出機構が促進することを示唆している。第 2部、第3部におけるPeの結果と同様、エラー回避動機の高まりはエラー評価を強めることが 示された。 第5部では一連の実験から得られた知見について総合的に論議した。本研究では、罰随伴 によってPeが増大する結果は頑健に観察される現象であり、エラー回避動機の高まりはエラ ーモニタリングのうち評価過程に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、報酬追求性の 高い者ほどエラーモニタリング機構が弱いことを見出した。本研究は、正反応に分類される 部分エラーの検出過程と顕わなエラーの評価過程に着目した点で、エラーモニタリング機構 の解明に貢献するエビデンスを与えるものとなった。また、報酬や罰に対する反応性の個人 差に関する成果は今後の研究発展を支えるものである。これらのことから、本研究は総合的 にオリジナルティの高い内容となっており、従来の研究に不足していた知見を補強するもの である。 総合的に評価して、本博士学位論文は博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値す るものと認める。 本博士学位論文の一部は以下の学術誌に掲載された。.
(3) 丸尾祐矢・正木宏明 (2014) パフォーマンスモニタリングに及ぼす聴覚性罰刺激の効果. 生 理心理学と精神生理学,32,29-40. Maruo, Y., Schacht, A., Sommer, W., & Masaki, H. (2016). Impacts of motivational valence on the error-related negativity elicited by full and partial errors. Biological psychology, 114, 108-116. doi:10.1016/j.biopsycho.2015.12.004 以 上.
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