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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2021

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2014年 12月18日

博士学位論文審査報告書

大学名 早稲田大学

研究科名 スポーツ科学研究科 申請者氏名 大槻 玲子

学位の種類 博士(スポーツ科学)

論文題目 Prevention of Anterior Cruciate Ligament Injury in Female Atheletes during Maturation

成長期女子選手における膝前十字靱帯損傷予防法の検討

論文審査員 主査 早稲田大学教授 福林 徹 博士(医学)(筑波大学)

副査 早稲田大学教授 金岡 恒治 博士(医学)(筑波大学)

副査 早稲田大学教授 矢内 利政 Ph. D(University of Iowa)

本学位申請論文「Prevention of Anterior Cruciate Ligament Injury in Female Atheletes during Maturation」は思春期女子選手に多い ACL 損傷の発生メカニズムを女子の発育の特 性を加味して解析した興味深い論文である.研究は4章に分かれているのでそれぞれについ て述べる

【研究 1:ACL 損傷リスクの発育段階別評価】

女子選手における ACL 損傷は思春期を過ぎた時期から多く発生する.大槻らは一般的に ACL 損傷のバイオメカニクス的リスクファクターおよび受傷肢位とされている着地時の膝外 反と,それに伴う脛骨の内旋及び着床時の膝浅屈曲に着目し,このような危険な動作が発育 過程の中でいつ発現するか明らかにすることをまず研究目的とした.そして ACL 損傷のリス クが高まる時期を明らかにすることにより,予防介入の開始時期の検討を行った.そこで思 春期を Carskadon & Acebo の分類に従い思春期前期,思春期中期,思春期後期そして思春期 終後の4期にわけた.その結果,着地時の膝外反は思春期初期から中期の間に急激に増加し,

それに期を同じくして膝屈曲角度は発育とともに減少する事が判明した.そして ACL 損傷の リスクは思春期初期から中期の間で著しく増加することが明らかとなった.大槻らは思春期 初期から中期に身長および体重が著しく増加しており,このような急激な形態変化が動作に も影響を及ぼした可能性があると考えた.そこで ACL 損傷のリスクが大きくなるこの時期に 予防介入を開始し,ACL 損傷リスクを軽減させることが必要であると言う結論に達した.女 子選手での ACL 損傷のピークは高校生の運動部部員であり一般的に思春期を過ぎている,し かし思春期から急速に増加していることは確かであり,その思春期に着目したところにこの 博士論文の価値の一端があると言える.

【研究 2:ACL 損傷動作に影響を及ぼす身体的因子の検討】

より効果的に ACL 損傷を予防するために,予防介入の内容の検討がまず行われた.近年の 諸家の報告によると ACL 損傷は接地後約 40 ms で発生することが明らかとされており,予防 介入ではこの時点でいかに危険肢位を回避するかと言うことに焦点を当てる必要があると

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判断された.そこで,接地後 40 ms での膝外転角度に影響を及ぼす因子を明らかにし,ACL 損傷の危険肢位を回避するためには何をトレーニングするべきかが検討された.なかでも本 研究では筋力,予備筋活動,着地準備動作に着目し,それぞれがどの程度接地後 40 ms にお ける膝外転角度に影響を及ぼすか検討の検討が行われた.その結果,予備筋活動では大腿二 頭筋,半腱様筋,内側広筋,外側広筋が接地後 40 ms における膝外転角度に影響を及ぼして おり,特に膝外転角度の増加は大腿内側筋群の筋活動量低下および大腿外側筋群の筋活動量 増加に関連していることが示唆される結果が得られた.また,着地準備動作では接地時膝外 転角度,接地時股関節屈曲角度,接地前 100 ms の膝外転角度が接地後 40 ms の膝外転角度 に影響を及ぼすことが明らかになった.したがって,ACL 損傷の危険肢位を回避するために は,接地前・接地時に大腿内側の予備筋活動を高め,膝外転角度を予め抑制しておくことが 必要であると考えられた.特に本研究では ACL 損傷の受傷時パターンでの膝の過度な外転に 着目し drop vertical jump を用いて着地前後での膝周囲筋の筋活動と膝の外転角度の関連 を詳細に検討されたところに本論文の価値がある.なお昨今の研究として膝外転に伴う,脛 骨の内旋が注目されている,しかし今回の研究では脛骨内旋運動は定量的にはそれほど大き な変化ではなく,また詳細な測定が困難なためあえて取り上げられなかった.

【研究 3:動作トレーニングが下肢キネマティクス及び筋機能に与える効果の検討】

研究 2 の成果をもとに,接地前・接地時の準備動作に焦点を当てたトレーニングプログラ ムが作成された.そして,このトレーニングを実施することによってジャンプ着地後 40 ms における膝外転角度を抑制することができるのか,またその時に筋力,予備筋活動,準備動 作にはどのような変化が生じるのか実験室レベルで検討が行われた.その結果,3 ヶ月間の トレーニングによって接地後 40 ms における膝外転角度は有意に減少することが明らかにさ れた.また,膝屈曲筋力が増加し,大腿直筋,内側広筋,大殿筋予備筋活動が低下した.し たがって,3 ヶ月間の動作トレーニングによって接地後 40 ms の膝外転角度を抑制すること ができ,筋力および筋活動にも変化を生じさせる可能性が示唆された.(なお研究2は研究 3とともには本年度 11 月の臨床スポーツ医学会で優秀研究賞を受賞のもとになった実験で ある.)

【研究 4:動作トレーニングが ACL 損傷リスクに与える効果の検討】

研究 1~3 の結果をもとに,思春期の女子選手に対して 6 ヶ月間の動作トレーニングを実 施し,トレーニングが発育に伴う動作変化および ACL 損傷のリスク増加にどのような影響を 及ぼすか,現場レベルでの評価が行われた.その結果,トレーニングを実施しなかったコン トロール群では被検者が思春期であることにより 6 ヶ月間で着地時の膝外反は増大,膝屈曲 角度は減少,そして ACL 損傷リスクは増大した.一方,トレーニング群においては,着地時 の膝外反および膝屈曲角度に変化は認められず,ACL 損傷リスクはトレーニング前後で変化 を示さなかった.したがって,思春期女子選手に動作トレーニングを実施することによって,

発育に伴う動作変化を抑制し ACL 損傷リスクを軽減させる可能性が示唆された.本研究で動 作トレーニングの意義を思春期に行う事の裏付けを得る事が出来たが,今後少なくとも成長 や体重変化が収まるまでの長期にわたる観察が必要で有ると思われた.

【結論】

(3)

本博士論文では ACL 損傷をより効果的に予防するために,予防介入の開始時期ならびに介 入内容の検討がなされた.その結果 ACL 損傷のリスクは思春期初期から中期に増大すること が明らかになり,この時期より予防介入を開始することの必要性が示唆された.また,近年 明らかにされた ACL 損傷メカニズムの理解をもとに,いかにこの受傷メカニズムを回避する か検討を行った結果,着地前および着地時の準備姿勢が重要である可能性が示唆された.そ して,この準備姿勢をトレーニングすることによって ACL 損傷に繋がる危険肢位を回避でき る可能性が示された.さらに,ACL 損傷リスクが高まる思春期の時期にトレーニングを実施 することで,発育に伴う動作変化を抑制し ACL 損傷のリスクを軽減させる可能性が示唆され た.

本論文は申請者が主体的に行った研究であり、また12月 16 日の公開審査会でも高い評価 を得た。したがって審査委員は全員一致で申請者大槻玲子氏が、博士(スポーツ科学)の学 位を授与するに十分値するものと認める。

掲載論文

大槻玲子,馬越博久,福林徹.成長期女子バスケットボール選手における膝前十字靭帯損傷 リスクの評価.日本臨床スポーツ医学会誌.2014;22 巻 1 号,51-58 頁.

Otsuki R, Kuramochi R, Fukubayashi T: Effect of injury prevention training on knee mechanics in female adolescents during puberty. International Journal of Sports Physical Therapy. 2014;9(2):149-156.

以 上

参照

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