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Title
研究開発活動におけるマネジメント手法と成果の分析 : 研究開発成果の価値を示すライセンス・アウト
Author(s)
氏田, 壮一郎; 富澤, 宏之; 高山, 大Citation
年次学術大会講演要旨集, 36: 738-741Issue Date
2021-10-30Type
Conference PaperText version
publisherURL
http://hdl.handle.net/10119/17809Rights
本著作物は研究・イノベーション学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with
permission of the Japan Society for Research Policy and Innovation Management.
Description
一般講演要旨2F22
研究開発活動におけるマネジメント手法と成果の分析
研究開発成果の価値を示すライセンス・アウト
○氏田壮一郎(科学技術・学術政策研究所 第
2
研究グループ)富澤宏之(科学技術・学術政策研究所 第
2
研究グループ)高山大(科学技術・学術政策研究所 第
2
研究グループ)1.
ははじじめめににライセンス・アウトは、研究開発の成果である特許権等を基本的に有償で外部に提供する行為であり、
研究開発活動の成果の価値を金額で把握する手段を提供する。本発表では、ライセンス・アウトの金額 の違いや変化が、インプットの違いとどのような関係にあるのかを分析する。このインプットとは、企 業による研究開発費や研究者数といった投入量のことであり、これらがライセンス・アウトの価値に影 響を及ぼす可能性がある。そこでライセンス・アウト
1
件当たり金額を複数年で対比させた増加率によ ってこれらを分類し、この分類において投入量や研究手法等にどのような傾向が存在するかを見ながら、研究開発活動におけるマネジメント手法と成果の分析を行う。
2.
集集計計手手法法資本金
1
億円以上で研究開発を実施している企業を対象とした一般統計調査「民間企業の研究活動に 関する調査」(以後,民研調査)におけるライセンス・アウトの金額と件数に関する設問1の回答結果を 利用する。集計方法としては、2018
年、2019
年、2020
年にこのライセンス・アウトに関する設問を はじめ、関連する設問に回答している企業(684
社)の中から、その各年度調査それぞれにおいて、ラ イセンス・アウトが1
件以上ある企業(120
社)を対象にする。3.
集集計計結結果果全体としては、
2018
年、2019
年、2020
年と3
年連続でライセンス・アウトの件数・金額に回答し た企業は684
社あり、その傾向を平均値で見ると図表1のようになる。ライセンス・アウトの金額は2020
年にかけて大幅に上昇しているが、それに対して件数は減少している。1
件以上実施している企業 を対象に集計したものが図表2
となり、図表1
からもまた考察できるように1
件当たりのライセンス・アウトの金額は大幅に上昇している。
図表1:全体結果
4765.9
2583.7 1795.6
0.0 1000.0 2000.0 3000.0 4000.0 5000.0 6000.0
2020
年度2019
年度2018
年度ライセンスアウトの金額平均の推移(万円)
5.3 7.4
9.5
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0
2020
年度2019
年度2018
年度ライセンスアウトの件数平均の推移
1 この調査は,国内特許のライセンス状況(ライセンス・インおよびライセンス・アウトの金額と件数)について確認するもので,「ラ イセンス・インとは,他社が持つ特許権に対し,対価を支払って自社に導入することをいいます。ライセンス・アウトとは,自社で取 得した特許権を他社に売却したり,対価を受け取って使用を許諾したりすること」と定義して、回答を求めている。
2F22
図表2:ライセンス・アウトが1件以上ある企業におけるライセンス・アウトの金額と件数の推移
8611.9 4447.4
2133.5
0.0 5000.0 10000.0
2020年度 2019年度
2018年度
1件当たりの金額(N=120、単位万円:1企業ごとに集計し平均)
件数
N 平均値 平均値
2020年度 26209.3 26.7 8611.9
2019年度 13608.6 22.9 4447.4
2018年度 120 7408.4 35.3 2133.5
金額(万円) 1件当たりの金額
(1企業ごとに集計し平均)
次に前年度との対比にて
1
件当たりのライセンス・アウトの金額について増減の程度を見ると、全体 では金額は2
倍以上増加しているが、前年比100
%以上増加した企業数は半数以下となっている。この 増加した企業でのライセンス・アウト1
件当たりの金額の増加率は、2018
年と2020
年の2
年で対比すると、
646.4%
とかなり高くなっているが、一方減少した企業は43.7
%となっている。図表3:前年度を基準にしたライセンス・アウト1件当たりの金額の増加/減少群別の金額増減率*
N 平均 N 平均 N 平均
2019年度→2020年度 217.4% 53 419.6% 67 57.4%
2018年度→2019年度 293.9% 56 567.6% 64 54.5%
2018年度→2020年度* 325.0% 56 646.4% 64 43.7%
注:対比するそれぞれの年度においてライセンス・アウトの件数が1件以上ある企業を対象に、1企業ごとの増減比を算出したもの。
*2018年を基準(100)としたもの。
120 年度
全体 増加(100%以上) 減少(100%未満)
3.1 1
件当たりの金額が増加した企業と減少した企業の比較上記の図表
3
において「全体平均」と「増加(100
%以上)」、「減少(100%
未満)」に対象企業を分類 したが、「増加群」はライセンス・アウトの価値を上昇させることに成功し、「減少群」はその反対と解 釈できる2。この分類に基づき2018
年と2020
年を対比させた項目を利用し以後集計を行う。まず一つ目であるが、民研調査では特許保有数も調査しており、これら価値向上において保有する特 許の件数の関係を見た(図表
4
)。この図において増加群は最も保有数も多く、2019
年に若干低下する が減少群よりも高い数値を示している。技術や特許のラインアップ数の多さが単価の向上につながって いる可能性がある。また資本金階級別に企業数をみると、この集計においては資本金額が比較的高い企 業が多くなっている3。図表4:ライセンス・アウト1件当たりの金額の増加群/減少群別の特許保有数の平均の推移(N=118)
1578.8 1575.8 1605.5
1429.2
1104.8
1444.5 1497.7
1320.3
1518.2
1000.0 1100.0 1200.0 1300.0 1400.0 1500.0 1600.0 1700.0
2018年度 2019年度 2020年度
増加(100%以上)群* 減少(100%未満)群* 全体平均
2 ライセンス・アウトの件数が1件以上ある企業を対象に、2018年の1件当たりのライセンス・アウトの金額を基準(100%)として 2020年を対比させ、1企業ごとの増減比を算出した。
3 これまでの民研調査の結果から特許の件数はそれを所持する企業の資本金階級が高くなるほど多くなる傾向がある。本発表が対象と する企業は、2018年から2020年まで3年連続でライセンス・アウトが1件以上ある企業120社である。その資本金階級は100億円以 上の企業が52%となっており、10億円以上100億円未満が31%、1億円以上10億円未満が17%といった構成となっている。
次に研究開発費と研究者数といった研究開発へのインプットを見る。まず研究開発費(図表
5
)につ いては、増加群における研究開発費が減少群のそれに比べ2
倍前後多くなっている。それに対して研究 者数(図表6)については、減少群のほうが多くなっており、インプットとしての研究開発費と研究者 については、その傾向が異なっている。研究開発者一人当たりの研究開発費(図表7
)については増加 群が減少群よりも多くなっている。図表5:ライセンス・アウト1件当たりの金額の増加群/減少群別の研究開発費(万円)の平均の推移(N=93)
762275.4 816925.8 808635.9
348770.9
385831.4
410174.9 553300.0
599060.9
607263.1
100000.0 200000.0 300000.0 400000.0 500000.0 600000.0 700000.0 800000.0 900000.0 1000000.0
2018年度 2019年度 2020年度
増加群(100%以上)* 減少群(100%未満)* 全体平均
図表6:ライセンス・アウト1件当たりの金額の増加群/減少群別の研究開発者の平均の推移(N=105)
201.7
207.1 208.4
251.5
271.9 277.8
227.8
241.1
244.7
150.0 170.0 190.0 210.0 230.0 250.0 270.0 290.0
2018年度 2019年度 2020年度
増加群(100%以上)* 減少群(100%未満)* 全体平均
図表7:ライセンス・アウト1件当たりの金額の増加群/減少群別の研究者一人当たりの研究開発費(万円)の推移(N=78)
2910.2 2745.9
3165.3
1911.8
2142.4 2361.1
2423.8
2451.9
2773.5
1500.0 1700.0 1900.0 2100.0 2300.0 2500.0 2700.0 2900.0 3100.0 3300.0
2018年度 2019年度 2020年度
増加群(100%以上)* 減少群(100%未満)* 全体平均
次に情報源について分析する。ライセンスによって提供される技術のほとんどは自社で活用する目的 のもと、開発されたものだと考えられる。しかし新技術を追求した結果、良い技術ではあるが自社では 持て余してしまうのでライセンス提供するといった「テクノロジー・プッシュ」指向な要因があるとも 考えられる。ライセンス・アウトの価値を高めた企業において、このような開発指向を見るため、民研 調査の「研究開発において新規プロジェクトと既存プロジェクトにつながる情報源」の調査結果を利用 した(図表
8
)。この図表を見ると、新規/既存プロジェクトの両方で、減少群・増加群ともにテクノロ ジー・プッシュの指向を示唆する可能性を持つ「技術的な学会・協会等」、「公的研究機関」、「大学」が あり、さらに「顧客」を情報源とする割合が高くなっているが、とくに減少群でその傾向が強い。1箇 所「社内の他の研究部門」のみ増加群のほうが減少群よりも多くなっている。図表8:ライセンス・アウト1件当たりの金額増減率別に見た研究開発の情報源(N=99) 新規の研究開発プロジェクト 既存の研究開発プロジェクト
8.1%
18.2%
13.1%
30.3%
24.2%
24.2%
22.2%
12.1%
13.1%
15.2%
22.2%
18.2%
17.2%
19.2%
17.2%
39.4%
37.4%
28.3%
32.3%
15.2%
18.2%
21.2%
18.2%
20.2%
0% 10% 20% 30% 40% 50%
株式所有関係のある供給業者 株式所有関係のない供給業者 共同事業、ジョイント・ベンチャー 顧客 大学 公的研究機関 技術的な学会・協会等 競合他社 コンサルティング会社、研究専門の会社 その他の外部情報源 社内の他の研究開発部門 社内の生産・製造部門
減少群(100%未満)* 増加群(100%以上)*
11.1%
20.2%
13.1%
32.3%
31.3%
28.3%
27.3%
15.2%
14.1%
19.2%
23.2%
22.2%
20.2%
26.3%
16.2%
38.4%
39.4%
34.3%
38.4%
15.2%
17.2%
22.2%
21.2%
28.3%
0% 10% 20% 30% 40% 50%
株式所有関係のある供給業者 株式所有関係のない供給業者 共同事業、ジョイント・ベンチャー 顧客 大学 公的研究機関 技術的な学会・協会等 競合他社 コンサルティング会社、研究専門の会社 その他の外部情報源 社内の他の研究開発部門 社内の生産・製造部門
減少群(100%未満)* 増加群(100%以上)*
4.
考考察察増加群は、特許保有数の平均値において減少群よりも高い数値を示しており、また研究開発費や一人 あたりの研究開発費も同様に減少群よりも高い平均値を示している。研究開発の情報源については、増 加群は減少群よりも全体的に割合が低くなっているが、「社内の他の研究部門」のみ増加群のほうが高 くなっている。これは社内連携による技術情報がライセンス・アウトの価値向上につながっている可能 性を示唆している。しかし全体的にみると「顧客」や「大学」、「技術的な学会協会等」の割合が高く、
民研調査