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商事判例研究

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Academic year: 2022

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(1)三九. 商事判例研究. 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任 赤帽運送組合の名板貸責任. 早稲田大学商法研究会. 東京地裁昭六二⑰一〇六八七号︑平成二年三月二八日判決 ︵一部認容・控訴︶︑金商八五二号一五頁︑判時一三五 三号一一九頁︑判タ七三三号二二一頁︒. ︹事実︺ 古美術商を営むXは︑﹁赤帽埼玉日進運輸﹂の商号で貨物運送業を営む昭との間で︑訴外Aが所有しXが預かり. 保管していた藤田嗣治作デッサン一枚︵縦一メートル︑横六〇センチ︑以下﹁本件絵画﹂という︶を含む展示即売会の残. は︑構造上︑美術品の運送に適したものではないが︑一般貨物として運送を依頼することにより運送料金を安く抑えるこ. 品約二〇〇点を︑会場たる百貨店からA方まで運送することを委託する契約をした︒昭所有の軽貨物自動車︵本件車両︶. とができるため︑Xは従前から継続的に美術品の運送を払に依頼していた︒本件において︑美術品の会場への搬入には軽. 貨物自動車三台を要したが︑搬出にあたってはXの指示により二台でこれにあたり︑積込みも︑本件絵画を最後に積み込. むなど︑Xの指示にしたがってなされ︑本件絵画は荷物室の一番上の部分に寝かせて載せられた︒また︑本件運送契約の. 赤帽運送組合の名板貸責任. 八三. 締結ないし運送品の積み込みまでの間に︑Xは狛に対して本件絵画が高価品であることやその価額について明告をしなか 三九 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任.

(2) 早法六八巻丁二号二九九三︶. 八四. った︒本件車両の後部扉の構造は︑上部からと下部からの二枚扉の両開き形式であり︑下部扉に上部扉が被り︑右二枚の. 扉が中央部で完全に嵌合しないと施錠できないようになっていた︒ところが︑積み込み作業が終わってみると︑積み荷の. 一部がはみだして下部扉を閉めることができない状態であった︒しかし︑すでに午後九時を過ぎており︑Xも急いでいた. ことから︑積み直しをせず︑下部扉と車両本体を鎖でつなぎ︑上部扉を下に降ろしただけの状態で出発したところ︑走行. 中に上部扉が開き︑それにより本件絵画を紛失したものである︒そこでXは訴外Aに対し損害賠償として二一〇〇万円︑. ﹁お詫び代﹂として一〇〇万円の合計二二〇〇万円を支払った︒そして︑Xは債務不履行または不法行為による損害賠償. 請求権に基いて︑この損害賠償金および慰謝料三〇〇万円の計一六〇〇万円と︑これに対する本件絵画紛失の日から年五. 分の割合による遅延損害金︑さらに弁護士費用一六〇万円の支払をヱに求めて本訴を提起した︒これに対して昭は︑本件. 絵画が高価品であるにもかかわらず︑その種類および価額につき商法五七八条にいう明告がないから一切の責任を負わな. 他方︑名は赤帽運送業者であって︑赤帽軽自動車運送協同組合︵協︶の会員であり︑また︑全国赤帽軽自動車運送協同. い旨︑さらに損害額につきXの過失による過失相殺を抗弁として主張した︒. 小企業等協同組合法に基づいて設立された組合である︒赤帽組織は︑いわゆるフランチャイズ・システムにより全国規模. 組合連合会︵協︶は︑同協同組合をはじめとする全国の赤帽軽自動車運送協同組合によって構成されており︑いずれも中. の運送網を構築しており︑L・Lの組合員は︑①その商号の頭に﹁赤帽﹂の記載を掲げること︑②同一色︑同一種類であ. り︑﹁赤帽﹂の商号およびぬ連合会の名称の表示で統一された車両を使用すること︑および︑③協組合の名称が記載された. 統一用紙の請求書に﹁赤帽﹂の商標が入った自己の名称を記載して用いることが義務づけられていた︒また︑④職業別電. 話帳による統一広告により︑﹁赤帽﹂の商標を冠した運送業者が多数存在することが明らかにされており︑⑤新聞紙上にお. いて︑赤帽による運送が全国ネットで信頼できることなどの宣伝を行い︑さらに︑⑥利用者向けのパンフレットに︑赤帽. による運送が全国ネットワークであること︑赤帽による運送が信頼できるものであり︑万全の態勢で輸送すること︑二四. 時間体制であり︑L・ぬ両組合に電話をかければ︑何時でも運送の受付に応じること等を宣伝していた︒Xとヱにはかね. てより取引関係があったところ︑本件事故以前にも㌔は︑Xの花器︵時価五〇万円相当︶を運送中に破損する事故を起こ.

(3) Xは協・脇両組合に対し責任を追及することなく︑弘個入から一四万円余りの支払を受けただけで和解を成立させ︑昭に. していた.この際には︑ヱが協組合と交渉した結果︑美術晶については損害保険の保険金が支払われないことが判明し︑. 不法行為責任および使用者責任があるものと主張した︒これに対して︑協・地両組合は︑指定車両︑運賃請求書︑領収書︑. 対し︑弘宛の領収書を交付していた︒こうした事情において︑Xは︑L・協両組合には本件事故につき名板貸責任︑共同. 電話帳等の表示は︑一般入から見ても営業主体である組合員個人とL・ぬ両組合とを識別することができ︑営業主体が協・. 協両組合であると誤認するような表示ではなく︑また︑花器破損事故の経緯からしても︑本件運送契約時においてXは名 ︹判旨︺. の運送業をY個人の事業と認識しているから︑名板貸には該当しないと主張した︵他の責任も存しない旨主張︶︒. 阻との関係. 一︑﹁運送人が過失によって運送品を紛失した場合には︑運送人は特段の事情がない限り︑運送契約上の債務不履行による. 損害賠償責任のほかに︑不法行為による損害賠償責任をも負うものと解すべきである︒⁝⁝ヱには運送人に一般に要求さ. れる注意義務に違反して本件絵画を紛失した過失があるものというべきであるから︑鳩はXに対し︑本件運送契約上の債. 件運送契約上の債務不履行による損害賠償のほかに︑これと択一的に不法行為による損害賠償をも請求するものであると. 務不履行による損害賠償責任を負い︑かつ︑不法行為による損害賠償責任をも負うべき筋合いである︒Xは積に対し︑本. 筆者注︶が本件運送契約上の債務不履行による損害賠償請. ころ︑琉には︑右判示のとおり︑本件運送契約上の債務不履行のほかに︑不法行為による損害賠償責任が成立するので︑. 名の主張する抗弁︵高価品の種類および価額の明告の欠如. Xが本件運送契約の当事者であり︑本件運送契約上の債務不履行による損害賠償請求を行使することができる以上︑不法. 求に対する関係で抗弁たりうるほか︑不法行為による損害賠償請求に対する関係でも抗弁たりうるかについて検討するに︑. ママレ. 行為による損害賠償請求に対する関係でも︑抗弁たりうるものと解すべきである︒けだし︑商法五七八条は︑確かに運送. 赤帽運送組合の名板貸責任. 八五. いとすると︑運送契約上の損害賠償請求を行使すると同条の規律を受けざるをえない運送契約の当事者が︑不法行為によ. 契約上の損害賠償責任の減免を定めた規定ではあるが︑不法行為による損害賠償請求に対する関係では常に抗弁たりえな. 三九 明告を欠く高価品の滅失と運送入の責任.

(4) 早法六八巻一 ・ 二 号 ︵ 一 九 九 三 ︶. 八六. る損害賠償請求を行使することを選択すると︑同上の規律を免れる結果となり︑同条の趣旨を没却することとなるからで ある︒﹂. 二︑﹁本件絵画が高価品であることは︑当事者間に争いがない︒しかしながら︑⁝⁝Xがヱに対し本件運送契約の締結ない. しは遅くとも運送行為の着手︵運送品の積み込み行為の開始︶までに本件絵画が高価品であることやその価額について明. を明告しなかったとしても︑運送人が当該運送品が高価品であり︑かつ︑その価額を認識していた場合には︑運送委託人. 告していると認めることはできない︒⁝⁝運送委託人が運送人に対し高価品の運送を委託するに当たり高価品であること. は運送人に対し高価品の種類及び価額を明告しないでも︑なんら運送人の利益を害することはないから︑運送人は商法五. 七八条によって損害賠償の責任を免ぜられることはないというべきである︒しかしながら︑運送人が認識した内容は︑当. を正確に認識していたことを要すると解すべきである︒けだし︑運送人が認識した限度で損害賠償責任を負うとの考え方. 該運送品が高価品であるとの認識を漢然と有していたというだけでは足りず︑当該運送品の種類及びそのおおよその価額. によると︑運送人と運送委託人との法律関係が漢然とした内心の認識内容に左右される不安定︑かつ︑曖昧なものとなり︑. 法的安定性ないし明確性に欠けるからである︒本件についてこれをみるに︑⁝⁝㌔は︑Xから本件絵画等の運送を委託さ. きるが︑⁝⁝本件絵画が数百万円のものか︑あるいは数千万円のものかについては︑極めて漢然たる認識を有していたに. れるに当たり︑原告の指示説明などから本件絵画がかなり高額であるとの認識を有するに至ったものと推認することはで. すぎないことが認められ︑㌔は運送を委託されるに当たり本件絵画の価額について必要な認識を有していたとはいえない ⁝⁝︒﹂. 三︑﹁⁝⁝本件絵画は︑嵌合も施錠もされていない上部扉が本件車両の走行中の振動によって上方に開き︑これによって本. 件車両から落下し紛失したものと推認される︒㌔は貨物運送業を営む者として︑運送品を自動車に積み込んだときは︑積. あったのであり︑かつ︑右のような注意義務を尽くすことは︑わずかな注意をしさえすれば容易にできたことであるから︑. 込口の扉を施錠するか︑少なくとも扉を完全に嵌合させ︑もって走行中に開扉することのないよう確認すべき注意義務が. 昭には重過失があったものというべきである︒⁝⁝塾には本件絵画の紛失につき重過失が認められるから︑商法五八一条.

(5) の趣旨により同法五七八条の適用はなく︑ヱは︑本件事故により生じた損害について︑本運送契約上の債務不履行による Xの過失を三割として過失相殺︒慰謝料等一部認容︒︶. 損害賠償責任及び不法行為による損害賠償責任の双方を負うものというべきである︒﹂︵絵画の損害額一三〇〇万円につき︑. 協・ぬ両組合との関係. 四︑﹁昭を含めた協協同組合の組合員は︑その商号に協・﹂両組合から貸与を受けた登録商標﹃赤帽﹄を冠し︑また︑﹃赤. 全国的なイメージを与え︑マスコミ・企業・荷主等に対する信頼性を向上させることができ︑それがフランチャイズシス. 帽﹄の商標の記載のある同一仕様の車両︑運賃請求書等を使用し︑﹃赤帽﹄の商標を前面に出した広告をすることによって︑. ためには︑組合員の﹃赤帽﹄の商標を使用しての運送業の営業が右商標を貸与している脇・ぬ両組合そのものの営業ある. テム特有のメリットであることは明らかである︒しかしながら︑右商標の使用が︑商法二三条の名板貸に該当するという. いはその一部と見られる外観が存在することが必要であるところ︑各組合員個人が使用している商号の表示は︑﹃赤帽﹄の. 商標が最も目立つように冠され︑一見すると紛らわしい点があり︑先に認定した広告の方法等とも合わせ考えると︑運送. を与えることも考えられないでもないが︑L協同組合の組合員と取引をしようとする一般第三者の立場から︑全体として. 契約締結の際における個別業者の説示の仕方如何によっては︑運送契約の責任主体が﹃赤帽﹄の商標権者であるとの誤解. L両組合の事業の表示とは区別することが可能であり︑自らの契約の相手方が事業者である組合員個人であると認識する. 右表示方法を見れば︑右商号の表示は︑先に認定したとおり︑組合員個人の商号を表示したものと見ることができ︑L・ ことに格別の困難はないものと認められる︒﹂. ﹁仮に︑右表示が﹂・ぬ両組合の事業の表示であると︑認めることができるとしても︑⁝⁝Xは︑本件事故までに㌔と二. 年以上取引を継続しており︑:⁝花器破損事故の処理を通じて︑当初はともかく︑本件運送契約締結時においては︑Xは︑. 赤帽運送組合の名板貸責任. 八七. は︑推認するに難くないところである︒⁝⁝したがって︑右いずれの観点からも︑脇・L両組合は︑Xに対し︑本件運送. 昭の個人経営の実態を十分認識するに至っていたこと︑すなわち︑協・地両組合が営業主ではないことを知っていたこと. 三九 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任.

(6) 者 責 任. お. び 共 同 不 法. よ. 行. 巻八 に 八. い て. も 責. ヱに対する関係. 運送品が滅失した場合︑運送人は︑自己またはその履行補助者が運送品の受取・引渡・保管および. 故意または過失により運送人が運送品を滅失した. 場合に︑荷送人が運送品の所有者であるときは︑運送品に対する損害につき荷送人は債務不履行に基づく損害賠償. ︹所有者でない荷送人による不法行為に基づく損害賠償請求︺. 為責任を負う場合に︑かかる特則の効果がこれに及ぶか否かがまず問題となる︒. ている︵商法五七八条︶︒これらの規定は運送人の契約責任に関するものであり︑運送人が運送品の滅失につき不法行. 明告するのでなければ︑運送人は運送品の滅失または殿損につき一切の責任を負わないものとする特則が定められ. 条︶︒ところが一方で︑運送品が高価品である場合には︑荷送人が運送を委託するにあたり︑その種類および価額を. 運送に関して注意を怠らなかったことを証明しなければ︑その損害賠償の責任を免れることはできない︵商法五七七. ︹問題の所在︺. ︵一︶不法行為に対する商法五七八条適用の可否. 一. 協・地についてはフランチャイズ・システムにおける名板貸責任についてごく簡単に触れるにとどめたい︒. 本件は論点が多岐にわたり︑また他にも検討すべき点が少なくないが︑ここでは運送人㌔の責任を中心に論じ︑. つ. 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 任を否定︶. 契約上の責任を名板貸によって負うことにはならないというべきである︒﹂. 用. ︹評釈︺ 呈に対する判旨第一には反対である︒境・協に対する判旨第二は結論について賛成である︒. 使.

(7) 請求権と不法行為に基づくそれとを併せ有することになり朽田・商行為法一七八頁︑戸田・中村・商法総則・商行為法壬二. 四頁︵中村眞澄教授担当︶︑大判大正一五年二月一≡百︵大民集五巻二号一〇四頁︶︶︑いわゆる請求権競合の問題が生じる︒これ. に対して︑荷送人が運送品の所有者ではないときには︑荷送人は債務不履行に基づく損害賠償請求権を︑所有者は. 不法行為に基づく損害賠償請求権を︑それぞれ別個に取得するものと解され︑したがって︑請求権競合︵狭義︶は問. 題となりえないものとされている︵四宮・請求権競合論三頁注︵2︶︶︒本件においては︑荷送人は運送品の所有者ではな. いが︑判旨は荷送人たるXが不法行為に基づく損害賠償請求権を有することにつき何らの説示も加えることなく︑. 請求権の競合を前提として論じている︒ここではXに対する物権侵害は存在しないから︑不法行為に基づく損害賠. 償請求を認めるためには︑①債権侵害につき不法行為の成立を認めるか︑②損害賠償者の代位に関する民法四二二. 条を不法行為の場合に類推適用し︑所有者Aの運送入に対する不法行為に基づく損害賠償請求権をXが代位取得し. たものと解するほかない︒債権侵害による不法行為の成立を肯定した例として︑最判昭和三八年一一月五日︵民集一. 七巻一五一〇頁︶は︑荷送人たる破産会社の管財入が運送人に対して損害賠償を請求したところ︑被告運送人は破産会. 社が運送品の所有権︵共有権︶者であることを争い︑不法行為の不成立を主張した事案で︑破産会社が運送品につき. 契約上の処分権を有していたことを認め︑債権侵害による不法行為上の責任を肯定した︒しかし︑債権侵害による. 不法行為の成立を認めうるとしても︑この契約上の処分権が何であるかは定かでなく︵安笹最判解説昭和三八年度第九. 四事件三六四頁V︑本件においても侵害されたXの債権が何であるかは不明確であって︵石原本件評釈金商八六二号四三頁. はこの点を指摘され︑﹁強いてあげれば古美術業界での信用失墜ということになろうか﹂とされる﹀︑損害額についても問題を生じ. 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任. 赤帽運送組合の名板貸責任. 八九. よう.むしろ︑本件においては︑Aに対してXが損害賠償をなしたことにより︑XがAの弘に対して有する損害賠 三九.

(8) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 九〇. 償請求権を代位取得して行使したものと解すべきである︒ところで︑このように解した場合に︑代位によってXに. 移転するのは︑運送品に対してAが有していた法律上の地位であり︵注釈民法︵10︶七二一頁︵能見善久教授担当︶︶︑Xが. これを行使するとしても︑はじめからXにつき両請求権が発生した単純な請求権競合の場合と区別なく扱いうるか は問題となろう︵この点は後述する︶︒. ︹請求権の競合と商法五七八条の適用︺ さて︑荷送人が運送人に対して債務不履行に基づく損害賠償請求権と不法. 行為に基づくそれとを併せ有する結果︑いわゆる請求権競合の問題を生じた場合︑運送人が荷送人に対して商法五. 七八条により免責を主張しうるときには︑さらに同条の不法行為への適用の可否という問題が交錯する局面を生じ. る︒判例はいわゆる自由な請求権競合説の立場にたち︑商法五七八条の不法行為への適用を否定して定着している. ︵大判大正一五年二月二三日前掲︒最判昭和三八年一一月五日前掲は︑不法行為に基づく損害賠償請求権の発生を限定的に解するかのよ. うな表現を用いたが︑その後︑最判昭和四四年一〇月一七日判時五七五号七一頁はこれを明示的に否定している︶︒この判例の立場に. よると︑荷送人の不法行為に基づく損害賠償請求権が認められる場合には︑運送人は商法五七八条を援用して免責. を主張することができず︑同条の趣旨を著しく没却するところとなり不当な結果とならざるをえない︵原茂金商六〇. 〇号五八頁は︑単に立法趣旨を没却することにとどまらず︑妥当な利益調整制度そのものが崩されることになると指摘される︶︒この判. 例の立場は︑運送人の不法行為責任をまずは認めた上で︑過失相殺により具体的な解決を導こうとするものである︒. しかし︑こうした解決は一見妥当なように見えても︑法の予定する利益調整の均衡を崩すことになりかねず︵吉原. ジュリスト七六四号三七頁︶︑また︑そもそも高価品はその価額が巨額となりうるものであり︑その極度額も画するこ. とはできないから︑過失相殺による解決にはおのずから限界がある︒近時の下級審判決例においては︑この立場に.

(9) よる不都合を指摘して︑請求権の競合を認めつつも商法五七八条の不法行為への適用を肯定するものが散見される. ︵東京地判昭和五〇年二月二五日判時八一九号八七頁︑同昭和五七年五月二五日金商六五八号三二頁︒前掲昭和四四年最高裁判決以前. のものとして東京地判昭和四一年六月二一日下民集一七巻五・六号四三五頁︒反対︑東京高判昭和五四年九月二五日金商五八七号七頁︑. 東京地判昭和五九年一月三一日判時一一一四号一九頁︑東京高判昭和六〇年三月二五日判タ五五三号二三八頁︑神戸地判平成二年七月二. 四日判タ七四三号二〇四頁︶︒本判決もこうした一部の裁判例に同調するものであるといえる︒学説は︑いわゆる請求権. 競合の問題の理解により理論構成は異にするものの︑判例のような自由な請求権競合を認めるものはほとんどなく. ︵長谷川・基本商法講義商行為法一七九頁は︑商法五七八条が不法行為に基づく損害賠償に拡張適用されるとする理論的根拠はないので. 無限定競合論を採るとする︶︑不法行為についてもなんらかの形で商法五七八条の適用を認める点でほぼ一致している︒. 通説的であるとされる請求権競合説の立場からは︑商法五七八条は運送人の責任を軽減する趣旨で制定されている. のであるから︑この場合の不法行為責任もこの規定により制限され︑五七八条以上の責任を追及できないが︑これ. も不法行為責任であるとする修正競合説が示される︵竹甲商行為法一七八頁︑田中︵誠︶・新版商行為法︵再全訂版︶二一天. 頁︑鈴木・新版商行為法・保険法・海商法全訂第一版増補版四三頁.倉沢・判時九六六号一八一頁以下は︑商法五七八条の効果たる運送. 人の免責は︑運送契約の法理を根拠とするものではなく︑運送人保護の政策を根拠とするものであるから︑政策目的達成のために同条の. 適用を不法行為にも認めるべきだとする.︶︒一方︑近時の有力説である法条競合説によれば︑運送人は債務不履行に基づ. く責任のみを負うものとするのであるから︑商法五七八条により運送人が契約上の責任を負わない場合には当然に. 不法行為に基づく責任も負わないことになる︵西原・商行為法三〇五頁以下︑石井目鴻・商行為法一五五頁︑大隅・商行為法一. 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任. 赤帽運送組合の名板貸責任. 九一. 四二頁︑谷川﹁物流企業の責任﹂現代企業法講座第四巻企業取引一七三頁以下︑神崎・商法総則・商行為法通論︵改訂版︶一一四四頁︶︒. 三九.

(10) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 九二. さらに︑折衷説として︑運送人が故意または重過失により運送品を滅失・殿損せしめたごとく︑通常︑契約に予想. された範囲を逸脱する行為があった場合には不法行為責任が発生し︑これには商法五七八条の適用はないとする説. がある︵戸田・演習商法︵総則・商行為︶二六八頁︒小町谷・運送法の理論と実際三九六頁以下は︑荷送人が運送人の悪意を立証した. 場合に限り︑運送人は不法行為責任を負うとする.︶︒請求権競合問題の理解により修正競合説を妥当と考えるが︑法条競合. 説も結論において異なるところはない︒また︑折衷説は︑運送人の重過失がつねに契約に予想された範囲を逸脱す. るものであるといえるかは疑問であり︑そもそも不法行為責任の発生要件として示される逸脱行為の概念自体が不. 明確であって︑賛成できない︒ところで︑商法五七八条は国際海上物品運送法に準用されているが︵二〇条二項︶︑同. 法はこのたび改正を受け︵平成四年法律第六九号︑平成五年六月一日施行予定︶︑この点について注目すべき変更が加えられ. た︒ここに︑商法五七八条を﹁運送品に関する運送人の荷送人︑荷受人又は船荷証券所持人に対する不法行為によ. る損害賠償の責任に準用する﹂旨︑明文をもって定められることになった︵二〇条の二第一項新設︶︒もとより︑同法の. 改正は国際条約に基づいたものであり︑わが国海運業界の諸外国に対する立場を考慮したものではあるが︑同一条. 文の適用に関して国際海上運送につき示された立法的解決が︑陸上運送とはまったく無縁のものとはいえないであ. ろう︵高価品の特則の不法行為への準用は条約上の要請ではないが︑契約責任の減免を不法行為責任にも拡大するという新条約および 新法の基本的考え方によるものとされる︵菊池・改正国際海上物品運送法二︸O頁以下︶︶︒. 本件においては︑Xは運送品の所有者ではなく︑Xの払に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の根拠は︑X. が所有者Aに対して損害賠償をなしたことによりAの積に対する損害賠償請求権を代位取得してこれを行使した点. に求めうること︑この場合に︑単純な請求権競合の類型として処理することにいささかの問題が残るであろうこと.

(11) は前述した︒すなわち︑商法五七八条の適用を考えたとき︑仮に所有者Aが直接ヱに対して損害賠償を請求した場. 合︑これに対して礒が商法五七八条を援用して免責を主張できないとすれば︑これを代位取得したXに対してもか. かる主張をなしえないのではないかとの疑問が生じうるからである︒東京地判昭和五七年五月二五日︵金商六五八号三. 二頁︶は︑保険会社が所有者の運送人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を保険代位によって取得した事案. で︑﹁偶々荷送人が本件有価証券︵運送品−筆者注︶の所有者ではなかったために︑荷送人の債務不履行に基づく損害. 賠償請求権と所有者の不法行為に基づくそれとが並存するに至ったものであって︑このような場合を荷送人が所有. 者である場合と画然と区別して扱い︑その二つの場合で結果に差異を生ずることは決して妥当な解釈ではない.⁝−. 荷送人と所有者が異なる場合においても︑その両者間の内部関係が別途問題となりうるのは格別︑運送人に対する. 関係においては両者を一体のものとみなして︑前記請求権競合にある場合と同様に扱うに如くはなどとして︑不. 法行為に基づく所有者︵保険代位による保険者︶の損害賠償請求につき︑商法五七八条の適用を認めた︒もっとも︑こ. の事案は︑所有者が荷送人に対して運送を委託した︵運送契約の締結を委任した︶という事実が認定された事案である︵原. 茂金商六一三号五三頁以下は︑それゆえここに委託者と運送取扱人に準じた関係が認められるとする︶が︑本件においてはこのよ. うな関係は認められていない︒しかし︑本件では︑A方への運送が委託されたものであるから︑Aは実質的な荷受. 人であるといえ︑これに準じた者として構成することにより名はAに対しても商法五七八条を援用して免責を主張. しうるものと解することもできよう.本件とは直接の関係はないが︑さらに進んで︑このような荷送人でない運送. 品の所有者からの不法行為に基づく損害賠償請求一般に対しても︑運送人は常に商法五七八条に基づく抗弁をなし. 赤帽運送組合の名板貸責任. 九三. うるものと解することはできないであろうか︒原茂・前掲金商六二二号は︑運送委託の意思を通して自らが運送契 三九 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任.

(12) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 九四. 約秩序に組み込まれることを承諾していたと解すことができる場合︑および︑運送取扱の法律関係が存在する場合. にはこのような解釈が可能であるが︑荷送人と所有者とを同一視できる事情の存在しない場合には︑運送人は不法. 行為の一般原則に戻って責任を負うものとする︒しかし︑通常︑運送人は荷送人が運送品の所有者であるか否かに. ついては不知であり︑また︑これを調査すべき義務を負うものと解することはできないから︑このような場合に結. 果において差異を生じることは妥当とな解釈とはいえず︑商法五七八条の趣旨を没却するものといわざるをえない. ︵運送実務において︑荷送人と所有者が異なる例は決して稀ではなく︑その場合に商法五七八条の保護が不十分であるとすれば︑これを. 前提とした利益の調和は大きく崩れることとなる︶︒所有者に賠償した運送人が︑明告を欠いた荷送人に対して求償しうる. とする解決は迂遠であって︑予測しえない巨額の賠償責任から運送人を保護するという目的を達することができな. い︒それゆえ︑運送人は所有者の請求に対しても商法五七八条に基づく免責を主張することができる︵所有者は荷送人. に対して損害賠償を求めうる︶ものと解すべきであろう︒いずれにせよ︑本件においては︑不法行為に基づくXの請求の. 根拠をいずれに求めても︑商法五七八条の適用を認めうるものと解するので︑これを肯定した判旨は評価できる︒. ︵二︶明告の欠如と運送人の認識. ︹商法五七八条の趣旨と同条にいう明告︺商法五七八条の趣旨は︑①高価品は︑滅失の危険性が大きく︑かつ︑損. 害が巨額にのぼるため︑あらかじめ運送人に損害額を予知させるとともに︑②運送人は特別の配慮をして損害の発. 生を予防し︑これに対する割増運送賃︵従価運送賃︶を請求すべきこと等を考慮し︑明告がない場合には運送人は一切. の責任を負わないものとすることにより︑不測の損害から運送人を保護しようとするものと解される︵通説・判例︶︒.

(13) ここにいう明告とは︑種類および価額の明告であるが︑種類の明告により価額を当然に知りうるときには︑種類の. みの明告で足りるものとされる︵戸田・前掲二五九頁︶︒明告の時期については説が分かれ︑契約の締結ないし遅くとも. 運送品の引き渡しまでになされることを要するとする説︵田中他・コンメンタール商行為法四三四頁︑小町谷・前掲三九二頁︶. と︑契約前か︑遅くとも契約の成立時までになされることを要するとする説︵松波改正日本商行為法八四二頁以下︑竹甲. 前掲一七六頁︑西原・前掲三〇四頁︑戸田・前掲二五九頁︑谷川・前掲一九三頁︑平出・商法m︵商行為法︶二六三頁︶があり︑傍論. ながら判旨は前説に立っている︒思うに︑高価品は︑普通品を対象とした大量︑かつ︑定型的・反復的な運送には. なじまず︑また︑運賃体系も異なる︵従量運送賃ではなく従価運送賃を求めうる︶のであって︑普通品を目的とする運送契. 約と高価品を目的とする運送契約とには本質的な差異が認められる︒それゆえ︑商法五七八条にいう﹁運送を委託. するに当たり﹂とは運送契約の締結に際してと解すべきであり︑明告は契約の締結時までになされるべきものとい. うべきである︒このような解釈は︑運送人に特別な配慮︵運送中の配慮に限らず︑運送人が当該高価品の運送に必要な設備・. 明告がないにもかかわらず︑運送人が高価品であることを偶然. 備品・保険等の事前の準備をなすことを可能とする︶を求める本条の趣旨に沿うものといえよう︒. ︹運送人が高価品であることを認識していた場合︺. に知っていた場合︑やはり商法五七八条の適用による免責の可否が問題となる︒まず︑ここでの問題は荷送人が本. 来明告をなすべき時期までに︑運送人が高価品であることを知った場合に限定されよう︒また︑高価品であること. の認識とは︑少なくとも明告すべき内容︑すなわち種類および価額についてほぼ正確な認識であることが必要とい. うべきである︵石原・前掲四五頁は︑明告の本来の機能は運送人に相当の注意を要求する点にあり︑賠償額の最高限度を予知せしめる. 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任. 赤帽運送組合の名板貸責任. 九五. 機能は副次的であって︑相応の額であることを知れば足り︑ほぼ正確な額を認識する必要はないとする.︶︒免責を認める説は︑運送. 三九.

(14) 早法六八巻一・二号︵一九九三︶. 九六. 営業のごとき大量取引において偶然の知不知という主観的事情を問題とすること自体不適当であり︑明告を促進す. る趣旨からも明告に代えることは適当でなく︵西原・前掲三〇四頁︑谷川・前掲一九六頁︶︑運送人としても︑荷送人がそ. の運送品を︑普通品として託送したものと解せざるをえない点を根拠とする︵小町斧前掲三九三頁︶︒反対に︑免責を. 認めない説は︑運送などに必要な注意を怠った場合における損害額について予知していたものといえること︵戸甲. 前掲二六〇頁︶︑明告さえあれば損害が発生しなかったとはいえないこと︵竹甲前掲一七六頁︶を根拠とする︒本判決は. 後説に立ちつつ︑運送人には正確な認識がなかった︵高価な絵画であるとの認識にはいたったとものと推認︶として︑この. 点では商法五七八条の適用を認めている︒商法五七八条が明告を要件としている以上︑明告がなければ運送人は一. 切の責任を負わないのが原則であるが︑本来明告をなすべき時期までに︑運送人がそのなされるべき明告内容につ. きほぼ正確な認識を有していたことを荷送人が立証しえたという︑特別な限られた場合には︑明告があったものと. して扱うべきではないか︒けだし︑このような場合には︑運送人は高価品運送として発送するよう求めるべきであ. り︑また︑そうすることができたのに︑あえてそれを怠ったからである︒このように︑明告がないにもかかわらず. 運送人が責任を負うのは︑明告があったものと扱うべき例外的場合に限られるのであって︑それゆえこの場合には︑. 従価運賃の支払がなくとも︑運送人は高価品としての注意を欠いたことにより︑高価品としての損害賠償義務を負. うものと解すべきである︒この点について︑従価運送賃の支払がない以上︑高価品としての注意義務を負わないが︑. 普通品としての注意をも怠ったことから生じる損害についてのみ︑高価品としての賠償義務を負うとする多数説の. 見解︵大隅・前掲一四一頁︑神崎・前掲二四二頁︑田村・平出・商法総則・商行為法二五二頁︶には賛成できない︒.

(15) ︵三︶運送人の重過失と商法五七八条の適用. ここでの運送人の重過失とは︑高価品の認識についての重過失ではなく︑損害について︑すなわち運送品の取扱. についてのそれである︒本件では︑運送人昭は積込口の扉を施錠して︑または︑少なくとも扉を完全に嵌合させる. ことにより走行中に開扉しないように確認すべき注意義務を怠り︑これはわずかな注意をしさえすれば容易にでき. たことであるとして︑昭には重過失があったものと認定されている.これは︑同様の事案でやはり運送人︵従業員︶. の重過失を認定した東京高判昭和五四年九月二五日︵判時九四四号一〇六頁︶とほぼ同一の表現を用いるものであるが︑. この判決例はさらに︑﹁この施錠又は確認を怠れば︑貨物の落下紛失という結果を予見することができたのにかかわ. らず︑⁝⁝著しく注意を欠如した結果︑これを怠った﹂ものと述べている︒また︑最判昭和四一年五月三一日︵下民. 集一七巻五・六号四三五頁︶は︑ハイヤーの運転手がリットロック式の後部トランクの蓋を施錠せず︑また︑リットロ. ックと留金との接合の確認をしないまま発車したところ︑トランクの上蓋が開き︑運送品を紛失した事案で︑﹁運転. 手は発車前あらかじめ後部トランクの蓋を閉める措置をしたのであり︑しかる措置をすればそれだけで︑運行中に. その蓋が開くという事例は多くないものである﹂として︑過失は認めたものの重過失を否定した︒これらは︑いず. れも結果発生の認識ないし予見可能性の有無をもって重過失の存否を判断するものである︵国際海上物品運送法は︑前. 述した今次の改正により︑運送人の損害賠償の額および責任限度の特例について︑悪意・重過失を要件とする商法五八一条の準用︵改正. 前二〇条二項︶を修正し︑新設した一三条の二において︑損害が︑﹁自已の故意により︑又は損害の発生のおそれがあることを認識しなが. らした自己の無謀な行為により生じた﹂ことを要件としている点も注目できよう︶︒昭はXの指示により二台の自動車を用意し︑. 明告 を 欠 く 高 価 品 の 滅 失 と 運 送 人 の 責 任. 赤帽運送組合の名板貸責任. 九七. その指示通りに積み込んだところ積荷の一部がはみだしたという本件の状況において︑下部扉と車両本体を鎖でつ 三九.

(16) 早法六八巻一・こ号︵一九九三︶. 九八. なぐなどの一応の措置は認められるのでもあり︑昭の過失だけを考えても︑これを重過失とするのは酷なように思 われる︒. さて︑運送人に重過失が認められた場合︑商法五七八条の適用を認めるか否かについては説が分かれる︒まず︑. 請求権競合のレヴェルで論じるものがある︒いわゆる自由な請求権競合説に立てば︑商法五七八条は契約責任につ. いてしか適用がないから︑運送人に重過失がある場合のみならず︑悪意が認められる場合においても適用を認める. ︵これらの場合には不法行為責任を追及すれば足りる︶という立場がありうる︵松波・前掲八四四頁以下︶︒また折衷説によれば︑. 前述のように︑悪意または重過失がある場合には不法行為責任が発生し︑これには商法五七八条が適用されないと. するから︑結果としては免責が認められないことになる︒他方︑請求権競合の問題を離れて︑もっぱら商法五七八. 条の解釈問題としてこの点を論じるものにも︑結論において二つの立場がありうる︒まず︑適用を否定して免責を. 認めない立場は︑重過失のある運送人は保護するに値しないとの考えによるものと思われるが︑その根拠を商法五. 八一条の趣旨に求めている︒これは︑下級審判決例︵たとえば︑東京高判昭和五四年九月二五日・判時九四四号一〇六頁︶に. 示された解釈であり︑判旨もこれに従っている︒他方︑適用を肯定して免責を認める立場︵倉沢・前掲一八二頁︑吉原. 前掲一一一七頁︶は︑悪意の場合とは異なり︑重過失の場合は明告さえあれば損害の発生を防止することができたかもし. れないという点に着目するものであって︵それゆえ︑悪意の場合を排除する理由ともなる︶︑この立場を正当とする︒そも. そも︑商法五八一条は五八O条に定める定額賠償︵責任制限︶を排除する規定であり︑責任の成否に関する五七八条. を排除する規定ではない︵倉沢・前掲一八二頁︑神田・商法︵総則商行為︶判例百選︵第二版︶一六一一頁︑山甲最新海事判例評釈. 第H巻一西頁︑吉原前掲一二七頁︶︒それゆえ︑判旨も﹁商法五八一条の趣旨により﹂というのであろうが︑このような.

(17) 解釈は五七八条の趣旨に反するものである︒明告がなく︑運送人が高価品であることを知らない場合には︑運送人. は高価品運送として扱うことができず︑従価運送賃︵対価︶の支払もなく︑高価品賠償のあらゆる前提を欠くものと. いわざるをえない︒商法五七八条は︑明告を前提として︑高価品を扱う運送人の注意を喚起するとともに︑予想し. えない巨額の賠償を一切排除する趣旨であり︑運送上の過失である以上︑たとえ重過失であっても︑損害は明告を. 怠った荷送人の負担とすべきだからである︵過失相殺による解庚と本条の趣旨が相容れないものであることは前述した.︶︒それ. 協・協に対 す る 関 係. 以上のような私見の立場では︑鴫は本件絵画の紛失について責任を負わないから︑これを. ゆえ︑運送人の重過失を理由として商法五七八条の適用を否定した判旨には賛成できない︒. 二 ︹亀・協の名板貸責任︺. 前提とした協・㌔両組合に対する請求は根拠を欠き︑両組合の責任を否定した判旨結論には賛成できる︒もっとも︑. 判旨は昭の責任を肯定した上で︑亀・ぬ両組合の名板貸責任を否定したのであって︑最後にこの点について若干の. 検討を加えたい︒商法二三条により名板貸責任が認められるためには︑①自己の氏︑氏名または商号を使用して営. 業をなすことを他人に許諾し︑②この者と取引する相手方が名板貸人を営業主であると誤認して取引をなしたこと. が必要である︒㌔は亀・脇両組合の傘下で︑いわゆるフランチャイズ・システムにより運送業を営んでいた︒つま. り︑フランチャイザーたる協・ぬ両組合が︑フランチャイジ!たるヱに対して︑自己の商標である﹁赤帽﹂を使用. して営業をなすことを許諾していたのであって︑①の要件を満たすことには疑いがない︒また︑フランチャイズ・. 赤帽運送組合の名板貸責任. 九九. システムにおいては加盟店の事業運営につき最大限の統一性が要求され︵日比野﹁フランチャイズ契約における8毒尽旨 三九 明告を欠く高価品の滅失と運送人の責任.

(18) 早法六八巻. ・二号二九九三︶. 一〇〇. ︵カビナント︶概念について﹂孫田米寿経営と労働の法理二二九頁︶︑商標を中心とした営業の画一性︑製品および品質の均. 一性についての認識をいかに顧客に与えうるかがその成功にとって重要な役割を果たしている︵この点については︑土. 井・フランチャイズ・システム七頁以下を参照.︶︒それゆえ︑典型的なフランチャイズ・システムでは︑いうなればある種. の誤認︵イメージ︶の効果が期待され︑意図されているものともいえ︑②の要件をも満たす場合が多いといえよう︵一. 般に︑フランチャイズ・システムは商法二一二条にいう名板貸の要件を具備するものと指摘されている︵たとえば︑米沢・名板貸責任の法. 理八五頁を参照︶︶︒本件においても︑各個人の商号には﹁赤帽﹂の商標が冠されているほか︑車両︑運賃請求書等の統. 一性︑﹁赤帽﹂の商標を前面に出した統一的な宣伝・広告等が認められている︒ところが︑判旨は︑誤認の可能性を. 認めながら︑組合員と取引しようとする一般第三者の立場からすれば︑取引の相手方が協・脇ではなく組合員個人. であることを認識することに格別の困難はないとしている︒しかし︑本件のような事情の下では︑一般第三者とし. ても︑﹁赤帽○○運輸﹂ではなく︑﹁赤帽﹂に運送を委託したと考えるのが普通であろうから︑通常であれば誤認の. 認められ易い事案であるといえるのではないだろうか︒むしろ︑判旨が付言するように︑X︑名間には従前から取. 引関係があり︑花器の破損事故も経験しているという本件の特殊性によって︑Xの誤認が否定されるものと考えら れよう︵石原・前掲四七頁同旨︶︒. 井. 崇. 史︶. ︵一九九二年一二月一日︶. ︵箱.

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参照

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