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Academic year: 2021

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は じ め に

通信技術はわずか 160 年程の歴史の中で目覚ましい発展を遂げました.我々 は,今日の最先端の通信技術が,先輩技術者のたゆみない努力の積み重ねにより, 「今日がある」ことを忘れてはならないと思います.その技術がどのようにして 生まれ,改善が行われ,そして発展し,今日あるのか,それを理解する必要があ ります. 今日の IT の先端技術を理解する上で,これは大変重要なことです.たとえば, 長波や短波を使って始まった無線通信が,衛星通信に代わり,そしてモバイルに 進展し,今や個人でも高速・大容量の音声,データおよび映像による双方向通信 が利用できるようになりました.モバイル通信でも,光ファイバーケーブル通信 に匹敵するような高速通信が可能になりました. 本書は,情報通信工学系の大学や高専で,情報通信技術やネットワーク技術を 学ぶ人を対象に作成した教科書です.前著「図解 情報通信ネットワークの基 礎」が長年,高専や大学における「教科書」として利用いただきました. 「データ伝送」や「交換」といった言葉は,今ではあまり使われなくなりました. しかし,現在の先端技術は,「データ伝送」や「交換」技術がベースになって進展 しました. 本書は,通信やネットワーク技術の先端技術だけを取り上げて解説した本では ありません.今では古くなった「データ伝送」や「交換」技術もあえて解説して います.それは,現在の先端技術は,複雑で高度な技術が使われていますが,そ の考え方は,「データ伝送」や「交換」時代に誕生した技術がベースになっている からです.これを知ることは,現在の先端技術を理解する上で役立ちます. 情報通信ネットワークは日進月歩で,扱う範囲も広く,全体を把握するのがな かなか難しい学問です.したがって,本書では全体が把握できるように,「学習ア ーキテクチュア」(次頁の図)を定義し,全体が展望できるようにしました. 本書は,第 1 章から第 10 章まで,全 10 章で構成しました.先ずこの「学習ア

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ーキテクチュア」によって,本書の全体像と流れを把握してください. 「学習アーキテクチュア」からわかるように,1.データ伝送技術,2.交換技 術,3.PCM 伝送と伝送メディアは,先端技術を支える基盤技術です.そのた め,一番下の「土台」に位置付けられています.そして,その土台の上に,4. LAN/WAN,5.通信プロトコル,6.インターネット技術,7.モバイル通信が 位置しています.さらに,これらの技術を包み込むように,通信事業者(プロバ イダ)が提供する,8.ネットワークサービスが位置しています.ネットワーク技 術者は,通信事業者が提供する各種ネットワークサービスを十分に理解したうえ で,自社の業務にあった最適なネットワークを構築しなければなりません.さら に,9.待ち行列理論と信頼性理論および,10.ネットワークセキュリティが,左 右に位置しています.待ち行列理論は,通信やネットワーク技術の本流ではあり ませんが,ネットワーク設計をするうえで,非常に重要な理論です.また,「ネッ トワークセキュリティ」はネットワーク設計をする際に,最初に考えなければな らない重要事項です.安全・安心なネットワークを構築し,運用保守・管理する ために,セキュリティが重要であることには言うまでもありません. 本書の特徴は,以下のとおりです. ① ネットワーク技術の重要事項を 10 章にまとめた. ② 学習アーキテクチュアを定義し,「ネットワークの知識」を体系化し,構造化 してわかりやすくした. ③ 単に表面的な技術を解説するのではなく,技術の歴史をたどり,その技術が は じ め に iv

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どのように誕生し,発展し,今日の先端技術になったかを体系的に学べるよ うにした. ④ 章の最後には,演習問題を用意し,略解を巻末に示した. 本書は,ネットワークエンジニアを目指す高専や大学学部の学生,社会人を対 象に,情報通信ネットワークの基礎技術から応用技術までをわかりやすく,体系 的にまとめた教科書です.以下,各章の概要を示します. 第 1 章ではデータ伝送の発展経緯,基礎技術を概観し,今日のネットワーク技 術の基本となった技術を解説します.たとえば,HDLC の概念は,情報をフレー ムとして扱い,双方向の連続伝送を可能にする画期的な技術で,この考え方が, 今日のパケット交換,フレームリレー交換,ATM 交換などに発展しました.第 2 章では,交換の基礎およびパケット交換の基礎について説明します.第 3 章で は,PCM 伝送とマルチメディアの要素技術である音声・画像圧縮技術を説明し ます.またこの章では,伝送メディアとして,地上マイクロ波システムや衛星通 信システム,光ファイバーなど,基幹通信システムについて説明します.第 4 章 では,LAN と WAN について説明します. 第 5 章では,通信プロトコルについて説明します.ここでは,OSI 参照モデル の各層の機能,論理構造を把握することが重要です.また,インターネットのプ ロトコルである TCP/IP は特に重要です.TCP/IP については,かなり詳しく説 明してあります.第 6 章では,インターネットの仕組みや,基本技術を取り上げ 説明します.第 7 章では,携帯電話ネットワークや携帯電話端末の構造,仕組み について説明します.ここでは,CDMA の中心的技術であるスペクトラム拡散 の考え方が重要です.第 8 章のネットワークサービスでは,プロバイダが提供す る各種のサービスについて説明します.VPN,MPLS,広域イーサネット,クラ ウドコンピューティングなどのサービスを理解しておきましょう. 第 9 章では,待ち行列やトラフィック理論,信頼性理論を例題中心に説明しま す.最後の第 10 章では,ネットワークセキュリティを説明します.暗号化技術 の概念など,セキュリティの一般的な技術を説明します.セキュリティ技術も重 要ですが,組織体におけるセキュリティの方針,すなわち,セキュリティポリシ ィが何よりも重要です.これをしっかりと理解しておく必要があります. は じ め に v

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読者のみなさんが,情報通信ネットワークを理解する上で,本書が少しでもお 役にたてれば幸いです. 本書を執筆するにあたり,各種図表の引用を許可してくださいました各出版社 ならびに著者の方々に感謝を申し上げます. さらに,出版に際してお世話になりました共立出版(株)の瀬水氏,佐藤氏な らびに三浦氏に深く謝意を表します. 2013 年 2 月 著 者 は じ め に vi

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