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Ⅰ. 経営層による不正 組織的不正に対する危機管理 1. わが国の経営層による不正 組織不正の特徴 ( 大手企業で見られる日本型経営不正 ) (1) 経営者が会社財産を盗む という形の事件は欧米に比較して少ない 我が社の役員は大丈夫 といえるか? 日本型経営不正の特徴を知らずして安心し てはいけない

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Academic year: 2021

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全文

(1)

経済産業省

企業財務委員会

組織的な会計不正に対する

コーポレートガバナンスの実務

- 危機管理という切り口から会計不正の防止、対処

について考えてみる -

2012(平成24)年7月6日

国広総合法律事務所

資料3

(2)

Ⅰ.経営層による不正・組織的不正に対する危機管理 1.わが国の経営層による不正・組織不正の特徴(大手企業で見られる日本型経営不正) (1)経営者が会社財産を盗む、という形の事件は欧米に比較して少ない ・「我が社の役員は大丈夫」といえるか? → 日本型経営不正の特徴を知らずして安心し てはいけない ・(それ自体不正とはいえない)財テクでの失敗 → 損失発生 → 損失を開示したくな い → 「原因を作ったのはオレじゃない」「開示すると大変なことになる(隠すのが会社 のため)」「大丈夫、ばれるはずがない」「敢えて事を荒立てる必要はない」「隠せとは言っ てない。いま公表しないだけだ」「他でもやっている」等々の自己正当化 → 隠す → 「いまさら開示できない」「隠すしかない」「何とか回復できる(回復してほしい)」「まだ 見つかってない。大丈夫だろう」 → 内部告発等による発覚 → 破滅へ (2)山一、オリンパスに共通した特徴 (参考文献『修羅場の経営責任 -今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実-』国広正著: 文春新書) ・経営者は必ずしも原因発生を主導したわけではないが、その対応(不作為あるいは隠蔽) を主導する(二発目轟沈の原則=「不作為型不正」) ・山一、オリンパスは「希有な例外」か 2.新興市場、非上場の大会社等でみられる経営者不正 ・創業家やオーナーの暴走、架空循環取引等の粉飾、会社財産の私物化等の積極的な「作 為型」不正 ・大手企業グループの子会社等ではこの形態もみられることに注意

(3)

3.危機管理のプロセスから考える ・「隠されていた不祥事が次第に明らかになり、危機が拡大していく」という不祥事の発展 状況を理解し、危機管理の阻害要因、危機の拡大要因への対処を考える (1)危機管理のプロセス(①端緒 → ②事実の把握(調査)→ ③評価 → ④対処) ・危機管理は事態の「全貌が判明してから行う」ものではない。「全貌を把握できるか」「事 態を正当に評価できるか」が危機管理の成否を分ける ・さらに経営者不正・組織的不正の場合は、「全貌を把握されたくない者たち」「全貌を知 りたくない者たち」をいかに牽制し、押さえ込むかという観点が不可欠になる (2)危機管理のプロセスごとの阻害要因、危機拡大要因 ・①端緒が得られない →「おかしい」という声が上がらなければ危機管理は始められない → 内部通報制度の 重要性 → 形だけではなく実質的に機能させるための運用の工夫が不可欠 ・②事実の把握を深く行おうとしない →氷山の一角に過ぎない可能性の自覚を欠く初動(言いたくない、見たくない) ・③評価を誤る →社内論理による評価(たいしたことはない、騒ぐ方がおかしい) ・④対処の方法を誤る →失敗の典型パターンとしての「戦力の逐次投入」 (3)阻害要因、危機拡大要因への対処の基本 ・初動の段階から、外部の目、専門家の目を入れ、徹底調査を行うことの重要性

(4)

4.経営不正・組織的不正において、誰が危機管理の初期段階からの主導的な役割を担う べきか (1)危機管理の初期段階から経営層に「物言う人」が不可欠(危機管理のプロセスチェ ック) ・役職員が自ら「物言う人」になるのか、「物を言える立場の人」に行動させるのか (2)危機管理のプロセスで役割を担うべき者 ①監査役 ・通常の危機管理では経営層が主体となるが、経営不正や組織不正ではコーポレートガバ ナンス的観点を強くもつ危機管理が必要 → 監査役の役割は重要 → 監査役はどう動 くか(自らどう動くか、どう人を動かすか) ②社外役員(社外取締役、社外監査役) ・極めて有効に機能しうるが、うまくマネージすることが必要(意外に起こる「社外役員 はずし」【設例1】) ③弁護士、公認会計士(監査法人)などの専門家 → 5.へ

(5)

5.企業はどのように専門家(弁護士、公認会計士)を危機管理に関与させるか、専門家 はどのように自ら危機管理に関与するか............ (1)弁護士について ・顧問弁護士は危機管理に適任か(一概には言えない。重要なのは弁護士の専門性) ・弁護士に求められる専門性とは(リスク管理、ガバナンス、事実調査、そして能動性) ・【設例2】相談がきた場合の危機管理弁護士の動き方(「法律上の根拠が明確でないこと はやらない」とは考えず、「禁止されていないことなら何でもやる」と考える) → 会計 処理には「幅」があることとの関係 ・監査役会顧問弁護士という形の危機管理体制 (2)公認会計士(監査法人) ・会計監査人には法令上の根拠あり(会社法397条、金融商品取引法193条の3など) ・法令の文言解釈に止まっていてはだめ(危機管理のダイナミズムを知れば分かること) ・法令はあくまで「取っかかり」 ・重要な公認会計士(監査法人)と監査役(会)との協働(「不正の徴候」を目にした以上 「会計監査は不正調査ではなく、限界がある」と引き下がるのではなく、監査役会を通じ て調査委員会の設置を求めるなど、やれることはいくらでもある)

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6.危機管理における「事実調査」の重要性 (1)調査委員会の必要性 ・「初動」の重要性 ・専門性(事実調査能力について)と独立性(経営者による不正、組織的不正では不可欠) (2)第三者委員会、内部調査委員会、折衷型 ・初期段階の第三者委員会と、対外的にも不祥事が明らかになった段階の第三者委員会 (3)日弁連の「第三者委員会ガイドライン」とその拡がり 日弁連の「第三者委員会ガイドライン」 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf 東証の「上場管理業務について-虚偽記載審査の解説-」 http://www.tse.or.jp/about/books/b7gje6000000vl4c-att/jojo-kanri.pdf 日本監査役協会の「監査役監査基準」 http://www.kansa.or.jp/support/el001_100315_01a.pdf 公認会計士協会の「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項-公開草案」 http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/1-8-0-2-20120115.pdf (4)第三者委員会(調査委員会)を適時・適正に設置するための体制整備 ・危機管理体制の1つとして、設置の要否等の判断主体とその独立性を予め定めておく (5)監査役会と第三者委員会

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Ⅱ.経営層の不正を防止するリスク管理(危機を防止するための平常時のコーポレートガ バナンス) 1.社外役員(社外取締役、社外監査役)をいかに機能させるか 2.多くの企業で見られる社外役員の実際(克服すべき課題) (1)実質的に経営判断のプロセス....に関与していない(決議の「権威付け」「お飾り」) (2)重要なリスク情報が伝えられない 3.機能不全の原因(コーポレートガバナンスに対する理解不足) (1)社外役員側の問題 (2)会社側の問題(監督官庁側は?)

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4.社外役員をどう実質的に機能させるか (1)不祥事防止に果たす社外役員の役割の再認識 (2)平常時から機能していなければ、危機発生時に機能しえない (3)社外役員に求められる「積極性」 5.社外監査役の機能(【設例3】) ・A社における小規模な会計不正発覚を例に考える (監査役会として、会社のコンプライアンスラインの対応を検証する) 監査役会として情報把握 → 監査役会として調査を指示(内部調査委員会) → 調査 結果報告 → 不十分で差し戻し → 内部調査委員会及び監査法人の再調査結果報告 → 原因・真因の究明、処分、再発防止策(コンプライアンス教育が、モグラ叩きではな く、リスクベースなものになっているかなど)の十分性の検証 → 了解 → 以後、P DCAがなされているかを監査役会として継続的にモニタリング (監査役会として、会社の会計監査ラインの対応を検証する) 不正な会計処理の是正が会計監査人の関与のものと適切に行われたことの確認 → A社 に対する会計監査人の監査状況を把握 → 問題点把握 → さらにワールドワイドの監 査状況の把握 → 監査役会としての問題意識を明確化(A社問題のみならず、ワールド ワイドの監査体制について問題ありと認識) → 監査法人との意見交換(今後の会計監 査方針の重点項目について打合せ。一定のコスト増は当然) → ワールドワイドの会計 について、監査役会として、①事業部門による監督、②経理部によるチェック、③内部監 査部による監査、④会計監査人による会計監査、⑤監査役監査の全体最適について検討し て、各部門と協議 → 次年度の監査方針を定め、これを取締役会に通知 → 以後PD CAへ(監査法人とも定期・不定期に意見交換)

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Ⅲ.若干の考察(実務経験より) 1.ソフトローの重要性 (1)長銀事件の経験(国策捜査による「公正なる会計慣行」論の暴走の危険性) (2)成熟した資本市場の規律とは(市場規律のハーモニー) (3)会計不正 → 上場廃止か維持かの二者択一 → 特設注意市場銘柄 2.行政の役割は「処分」だけではない (1)プリンシプルベースとは (2)「悪い裁量行政」と「よい裁量行政」 3.「連携」と「情報交換」の重要性 (1)企業相互 (2)行政、専門家(弁護士、監査法人など)と企業

参照

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