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2010年4月に開設予定の総合社会学部(収容定員増加の認可申請中)が 入る学部棟完成予想図 Sky/空さやかさん(姉 写真・左)、空まどかさん(妹 写真・右)

http://www.kindai.ac.jp

VOL.

1

近畿大学 クロスオーバー<VOL.5> 発行日/2009年6月15日 発行所/近畿大学 編 集/総務部 広報課     〒577‐8502 東大阪市小若江3‐4‐1     TEL.(06)6721‐2332 FAX.(06)6727‐4435 「Cross Over」 クロスオーバーとは 異なる分野で人的・知的交流を活性 化し、社会に役立つ研究・教育のネッ トワークを広げることを表しています。

Topics

KINDAI

クロスオーバー

VOL.

2009 JUNE

5

近畿大学

「社会」と「大学」をつなぐ情報誌

クロスオーバー

VOL.

2009 JUNE

5

“Sky”with 近畿大学吹奏楽部

みんなの心が一つになって、

感動の音楽を創りだす。

ヴォーカルデュオ“Sky”コンサートに、吹奏楽部が出演

昨年1月にデビューした姉妹デュオ・Sky(スカイ)。 心に響く歌詞と爽やかな歌声でファンを増やしている が、妹の空まどかさんは、近畿大学の卒業生という縁 もあり、近畿大学のイベントにもしばしば参加。近畿 大学生たちと音楽を通じた交流を深めている。今年3 月20日と4月4日に行われたSkyの初のワンマンコ ンサートでは、近畿大学吹奏楽部がゲスト出演し、ス テージを大いに盛り上げた。その時の様子について、 Skyの二人に話を聞いた。 空さやかさん(姉) 吹奏楽部の皆さんには、ラストの2曲に参加しても らいました。リハーサル、1回目の公演、2回目の公演 と演奏するたびに、さらに心が一つになっていくのが わかり、みんなで音楽を創り上げる喜びをダイレクト に感じることができました。吹奏楽部の皆さんは何度 も学生日本一の栄誉に輝く実力の持ち主ですから、そ んな皆さんの奏でる音を背中に受けながら歌えるな んて、すてきな経験。本当に気持ち良かったですね。 とても感動しました。 空まどかさん(妹・2008年文芸学部卒業) 楽しい4年間を過ごした近畿大学に、卒業後も在学 中と変わらず、いろいろな応援をしてもらっています。 今回のコンサートでは、無理を承知でゲスト出演をお 願いしたのですが、吹奏楽部の皆さんは快く引き受け てくださり、熱心に取り組んでくださいました。本当に 感謝の気持ちでいっぱいです。ファンの皆さんからも、 素晴らしいコラボレーションだったという声をいただ きました。これからも、大学とはアットホームなつなが りを持ち続けたいですね。

みんなの心が一つになって、

感動の音楽を創りだす。

ヴォーカルデュオSky(スカイ)

総合社会学部は、

何が学べるところなのか?

「学生を大切にする大学」を

めざして、さらなる改革を推進

近大スピリッツ

インタビュー

総合社会学部・開設を前にして

P.15

新学部ト ーク

P.07

特集

インタビュー

P.13

教育フロンティアレポート

KINDAI NEWS P.19 ミュージシャン

平原まこと さん

近畿大学全学共通教育機構長補佐、 21世紀教育改革委員会 教養教育推進・検証委員会 委員長

増田 大三

教授

C o n t e n t s

インタビュー

P.01

巻頭特集

近 畿 大 学 世 界 経 済 研 究 所 長 教 授 教 教

Profile プロフィール  Sky 空さやか(姉)、空まどか(妹)から成る大阪出身のヴォーカル姉妹デュオ。家族愛や純真 な心などをテーマに、スケールのある曲作りを行っている。 歌作りにかける想いは?と聞くと「いつも、その時々の気持ちを大切にした、等身大の歌を 作り続けたい」(さやか)という返事が返ってきた。4月からはラジオ番組「Sky HEART of NIGHT」(FM大阪木曜夜9:00)を担当。6月には3枚目となるミニアルバムをリリー ス、その後全国プロモーションと、快調に走り続ける。 公式ホームページ http://sky-sing.com

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02

巻頭特集 インタビュー

危機の時代

」に、

  

大学

ぶか。

国際調和型、

共生型社会の構築を

めざして

近畿大学世界経済研究所長

本間 正明

教授 Honma Masaaki

1

インタビュー

巻頭特集

01

巻頭特集 インタビュー

グローバル・リテラシーを身につけ、

サバイバル能力を高める時代が始まった。

■早速ですが、日本も世界も現在「経済危機」の真っ只中です。  どうしてこんな事態になってしまったのでしょうか。  2008年の8月ぐらいまでは、日本経済は割合順調に推移して いました。「失われた10年」といわれた1990年代は元気がな かったのですが、21世紀に入ってから、とくに小泉内閣時代には 構造改革という掛け声もあって、2002年から2008年前半ま ではずっと回復局面にありました。ところが、2008年9月15日 にリーマン・ショックが起こり、これをきっかけに世界経済が崩落 するような事態になりました。 90年代初頭のいわゆるバブル 崩壊後に、日本の金融機関は 不良債権が累増してリスクを取れず、2003年に公的資金を投 入して、やっと金融システムの安定化の目安がついた。そ の矢 先に、今回の「100年に一度の経済危機」が起こったわけです。 当初日本では、これはアメリカ発の金融恐慌で、それほど大きな 影響は受けないだろう、影響があったとしても国際的に見れば比 較的軽微じゃないかという見方が強かったのです。 ところがあに図らんや、その後の日本経済の落ち込みは、世界 の中でも大きな部類に入ってしまいました。きっかけは9月のシ ョックの後のブラックオクトーバーです。10月には、日本の株価 は3回も続けて10%以上下落。最悪期にはニューヨークダウの 落ち込みとあまり変わらず、4割も株価が落ち込みました。  ■そもそも、アメリカ発の経済危機になぜ日本が大きな影響を  受けるのですか?  それは、日本経済が極端に外需依存体質になっていたからです。 2002年から2007年の平均実質成長率はほぼ2%程度ですが、 この成長率へ の寄与度を要因分析すると、その4割が外需によ って実現しているのです。つまり、対外的な貿易収支や直接投資・ 証券投資による所得収支の黒字が成長に大きく貢献していたわ けです。EU、アメリカ、さらに中国、インド、ブラジル、ロシアとい った、BRICsのみならず、新興国全体も軒並みダメになったので すから、それらの国々を相手に稼いでいた日本が急激に悪化し ていくのは、自然の姿だったといわざるを得ません。さらに、わ が国の設備投資は大きく外需の動向に左右される構造になって いますから、成長寄与度で3割を占めている設備投資も、その大 半は対外経済に影響を受けています。外需の4割と設備投資の 3割、合わせて7割の部分でがたっと落ちたわけですから、その 落ち込みは大変大きいものになったのです。 ■なるほど。設備投資まで含めると、  日本経済は圧倒的に外需依存型ですね。 さらに、アメリカを震源地として、グリーンスパン米連邦準備 制度理事会(FRB)前議長が「 100年に一度の大津波 」という 金融収縮が世界を襲っています。この金融の大津波と実体経済 の悪化が同時進行し、世界同時不況の様相を呈しているわけで、 それが日本に深刻な影響をもたらしています。国際通貨基金(IMF) の最新の推計では、米国、ユーロ圏はそれぞれマイナス2.6%、 マイナス3.2%であるのに、わが国はマイナス5.8%と最低の経 済成長です。 しかし、日本経済が大きく落ち込む背景には、日本経済が外需 依存型であるのと同時に、もっと根本的なことがあります。 それをひとことで言えば、経済のグローバル化です。今や日本 企業も国内生産を縮小する一方で、中国やベトナム、タイなどに 工場を建設しています。こうしたグロー バル化は外の世界だけ でなく、私たちの内なる生活にも非常に大きなインパクトを与え ています。 ■グローバル化の影響はどのような形で現れているのでしょうか。 まず国内で言えば、例えば石油価格の変化が日常の物価に反 映してくる。為替や金利も変化し、生活に影響を与える。あるい は米国の株価に連動して、日本の株価が2008年から4割強も 下落している。そういう具合に、価格の変化一つひとつがリスク になって、生活への影響が出てきます。 近畿大学の学生にとっても、新卒市場の収縮、雇用の悪化とい う形で影響が出てきています。昨年来、内定取り消し、派遣切り といった事態が起きていますね。日本はこれまで比較的安定し た社会構造を維持してきましたが、21世紀に入る前後ぐらいか ら、グロー バル化の影響が国民生活の隅々まで及ぶようになっ てきました。 グロー バルな流れに対して、私たちはもはや国内的な感覚だ けでは対処できなくなっています。世界を意識して大きな変化 を乗り越えていく「グローバル・リテラシー(国際対話能力)」と でもいうべき力を身につけて、自己改革を強化していかなければ、 波の中で溺れてしまう。そういう状況が強まっているのが、今の 日本だと思います。 ■海外はどういう状況でしょうか。 製造業でもサ ービス業でも、グロー バル化がどんどん進行し ています。私たちは日常生活でカードを使ってモノやサ ービス を購入する場合がありますよね。そして、日々の決済で疑問があ れば、コールセンターに電話で問い合わせする人も出てきます。 このコールセンターで対応する人は必ずしも日本人とは限りま せん。IT化が進んだ現代では日本語が話せる、例えば中国人が 大連で対応している場合もあるのです。中国にとどまらず、イン ド、ベトナム等でもIT技術はもとより日本語を学ぶ人たちが増え ているのは、このようなアウトソーシング需要を見越しているか らです。裏返せば、本来、日本人が行うことが常識とされた業務 分野まで、外国人が外国で肩代わりする状況が生まれつつある のです。また、日本企業が海外に工場を移転し日本人に代えて、 外国人を雇って日本製品を作ることも加速しています。このよう な国家間競争の激化の中で、どう生き残るのか各国とも真剣に 努力しているのです。  ■そんな中で、日本経済の競争力が  落ちてきていると言われます。 GDP(国内総生産)ではアメリカに次いでまだ2位ですが、そ れも2、3年後には中国に抜かれ、3位に転落すると予測されて います。しかし、それより心配なのは1人あたりのGDPです。「も のづくり日本 」の 強さはまだ残っているもの の 、07年時点で、 G7で最下位、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で19位、全 体的には地盤沈下です。国際競争力 の観点では日本は22位。 内容的・質的には中進国になっています。21世紀、日本人のサ バイバル能力の再生は、真剣に考えなければならないテーマです。 日本人のがんばりどころでしょうね。 ■グローバル化の進行と同時に、日本にはもう一つ、  少子高齢化という流れがありますね。 1人あたりのGDPが落ちている中で、増え続ける高齢者の方々の 生活をどう安全・安心なものにしていくのかという問題がさしせまっ ています。今、16∼65才の生産年齢人口が減って、65才以上の高 齢世代の比重が増えていく時代です。その中で成長を続けるには、 ヒト、モノ、カネの三面での一層の開放が求められます。しかし、日本 人のメンタリティとして、開放型経済、とくに人の流れにNOという状 況が強かったからです。今後、内向きな日本人の精神構造をどのよ うに克服して、国際調和型・共生型社会をどう構築するかは大きなテ ーマだと思います。 私が最も危惧しているのは、日本人の中に「今回の危機は米国の せい」という被害者意識が強いことです。人間は「被害者」になった 途端に「閉鎖的」「保守的」になり思考停止してしまう。「相手が悪く て自分は悪くない、だから自分は変わる必要はない」と考えてしまう のです。そうなると、地盤沈下に歯止めがかからなくなります。 2008年秋以来、金融危機や経済危機が世界を襲い 、新聞や TVのニュースでも未曾有の不況について報じられない日はない。 そんな中で、近畿大学は「 開かれた大学 」として、社会とどう関 わっていくべきか。また、学生はどんな心構えを持ち、大学で何 を学ぶべきか。近畿大学世界経済研究所長の本間正明教授に、 率直な意見を語ってもらった。

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巻頭特集 インタビュー

危機の時代

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国際調和型、

共生型社会の構築を

めざして

近畿大学世界経済研究所長

本間 正明

教授 Honma Masaaki

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インタビュー

巻頭特集

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巻頭特集 インタビュー

グローバル・リテラシーを身につけ、

サバイバル能力を高める時代が始まった。

■早速ですが、日本も世界も現在「経済危機」の真っ只中です。  どうしてこんな事態になってしまったのでしょうか。  2008年の8月ぐらいまでは、日本経済は割合順調に推移して いました。「失われた10年」といわれた1990年代は元気がな かったのですが、21世紀に入ってから、とくに小泉内閣時代には 構造改革という掛け声もあって、2002年から2008年前半ま ではずっと回復局面にありました。ところが、2008年9月15日 にリーマン・ショックが起こり、これをきっかけに世界経済が崩落 するような事態になりました。 90年代初頭のいわゆるバブル 崩壊後に、日本の金融機関は 不良債権が累増してリスクを取れず、2003年に公的資金を投 入して、やっと金融システムの安定化の目安がついた。そ の矢 先に、今回の「100年に一度の経済危機」が起こったわけです。 当初日本では、これはアメリカ発の金融恐慌で、それほど大きな 影響は受けないだろう、影響があったとしても国際的に見れば比 較的軽微じゃないかという見方が強かったのです。 ところがあに図らんや、その後の日本経済の落ち込みは、世界 の中でも大きな部類に入ってしまいました。きっかけは9月のシ ョックの後のブラックオクトーバーです。10月には、日本の株価 は3回も続けて10%以上下落。最悪期にはニューヨークダウの 落ち込みとあまり変わらず、4割も株価が落ち込みました。  ■そもそも、アメリカ発の経済危機になぜ日本が大きな影響を  受けるのですか?  それは、日本経済が極端に外需依存体質になっていたからです。 2002年から2007年の平均実質成長率はほぼ2%程度ですが、 この成長率へ の寄与度を要因分析すると、その4割が外需によ って実現しているのです。つまり、対外的な貿易収支や直接投資・ 証券投資による所得収支の黒字が成長に大きく貢献していたわ けです。EU、アメリカ、さらに中国、インド、ブラジル、ロシアとい った、BRICsのみならず、新興国全体も軒並みダメになったので すから、それらの国々を相手に稼いでいた日本が急激に悪化し ていくのは、自然の姿だったといわざるを得ません。さらに、わ が国の設備投資は大きく外需の動向に左右される構造になって いますから、成長寄与度で3割を占めている設備投資も、その大 半は対外経済に影響を受けています。外需の4割と設備投資の 3割、合わせて7割の部分でがたっと落ちたわけですから、その 落ち込みは大変大きいものになったのです。 ■なるほど。設備投資まで含めると、  日本経済は圧倒的に外需依存型ですね。 さらに、アメリカを震源地として、グリーンスパン米連邦準備 制度理事会(FRB)前議長が「 100年に一度の大津波 」という 金融収縮が世界を襲っています。この金融の大津波と実体経済 の悪化が同時進行し、世界同時不況の様相を呈しているわけで、 それが日本に深刻な影響をもたらしています。国際通貨基金(IMF) の最新の推計では、米国、ユーロ圏はそれぞれマイナス2.6%、 マイナス3.2%であるのに、わが国はマイナス5.8%と最低の経 済成長です。 しかし、日本経済が大きく落ち込む背景には、日本経済が外需 依存型であるのと同時に、もっと根本的なことがあります。 それをひとことで言えば、経済のグローバル化です。今や日本 企業も国内生産を縮小する一方で、中国やベトナム、タイなどに 工場を建設しています。こうしたグロー バル化は外の世界だけ でなく、私たちの内なる生活にも非常に大きなインパクトを与え ています。 ■グローバル化の影響はどのような形で現れているのでしょうか。 まず国内で言えば、例えば石油価格の変化が日常の物価に反 映してくる。為替や金利も変化し、生活に影響を与える。あるい は米国の株価に連動して、日本の株価が2008年から4割強も 下落している。そういう具合に、価格の変化一つひとつがリスク になって、生活への影響が出てきます。 近畿大学の学生にとっても、新卒市場の収縮、雇用の悪化とい う形で影響が出てきています。昨年来、内定取り消し、派遣切り といった事態が起きていますね。日本はこれまで比較的安定し た社会構造を維持してきましたが、21世紀に入る前後ぐらいか ら、グロー バル化の影響が国民生活の隅々まで及ぶようになっ てきました。 グロー バルな流れに対して、私たちはもはや国内的な感覚だ けでは対処できなくなっています。世界を意識して大きな変化 を乗り越えていく「グローバル・リテラシー(国際対話能力)」と でもいうべき力を身につけて、自己改革を強化していかなければ、 波の中で溺れてしまう。そういう状況が強まっているのが、今の 日本だと思います。 ■海外はどういう状況でしょうか。 製造業でもサ ービス業でも、グロー バル化がどんどん進行し ています。私たちは日常生活でカードを使ってモノやサ ービス を購入する場合がありますよね。そして、日々の決済で疑問があ れば、コールセンターに電話で問い合わせする人も出てきます。 このコールセンターで対応する人は必ずしも日本人とは限りま せん。IT化が進んだ現代では日本語が話せる、例えば中国人が 大連で対応している場合もあるのです。中国にとどまらず、イン ド、ベトナム等でもIT技術はもとより日本語を学ぶ人たちが増え ているのは、このようなアウトソーシング需要を見越しているか らです。裏返せば、本来、日本人が行うことが常識とされた業務 分野まで、外国人が外国で肩代わりする状況が生まれつつある のです。また、日本企業が海外に工場を移転し日本人に代えて、 外国人を雇って日本製品を作ることも加速しています。このよう な国家間競争の激化の中で、どう生き残るのか各国とも真剣に 努力しているのです。  ■そんな中で、日本経済の競争力が  落ちてきていると言われます。 GDP(国内総生産)ではアメリカに次いでまだ2位ですが、そ れも2、3年後には中国に抜かれ、3位に転落すると予測されて います。しかし、それより心配なのは1人あたりのGDPです。「も のづくり日本 」の 強さはまだ残っているもの の 、07年時点で、 G7で最下位、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で19位、全 体的には地盤沈下です。国際競争力 の観点では日本は22位。 内容的・質的には中進国になっています。21世紀、日本人のサ バイバル能力の再生は、真剣に考えなければならないテーマです。 日本人のがんばりどころでしょうね。 ■グローバル化の進行と同時に、日本にはもう一つ、  少子高齢化という流れがありますね。 1人あたりのGDPが落ちている中で、増え続ける高齢者の方々の 生活をどう安全・安心なものにしていくのかという問題がさしせまっ ています。今、16∼65才の生産年齢人口が減って、65才以上の高 齢世代の比重が増えていく時代です。その中で成長を続けるには、 ヒト、モノ、カネの三面での一層の開放が求められます。しかし、日本 人のメンタリティとして、開放型経済、とくに人の流れにNOという状 況が強かったからです。今後、内向きな日本人の精神構造をどのよ うに克服して、国際調和型・共生型社会をどう構築するかは大きなテ ーマだと思います。 私が最も危惧しているのは、日本人の中に「今回の危機は米国の せい」という被害者意識が強いことです。人間は「被害者」になった 途端に「閉鎖的」「保守的」になり思考停止してしまう。「相手が悪く て自分は悪くない、だから自分は変わる必要はない」と考えてしまう のです。そうなると、地盤沈下に歯止めがかからなくなります。 2008年秋以来、金融危機や経済危機が世界を襲い 、新聞や TVのニュースでも未曾有の不況について報じられない日はない。 そんな中で、近畿大学は「 開かれた大学 」として、社会とどう関 わっていくべきか。また、学生はどんな心構えを持ち、大学で何 を学ぶべきか。近畿大学世界経済研究所長の本間正明教授に、 率直な意見を語ってもらった。

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巻頭特集 インタビュー

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巻頭特集 インタビュー

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危機の時代

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大学

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巻頭特集/インタビュー ■人々の意識によって、状況が変わってしまうのですか? そうです。前向きに危機を乗り越えるためには、まず、そうい う被害者意識からの脱却を意識しなければならないと思います。 最近、反グローバリズム、反市場主義を声高に叫ぶ人々が増えて います。「規制改革は間違っていたんだ」という議論がありますが、 我々がこのまま被害者意識の中で規制強化をしていくとどうな るのか。このことについて、もっと考えてもらいたい。今、もちろ ん貧困、格差の問題があるから、それに対するセーフティネット は必要だし、必要な規制はちゃんとするべきです。しかし、だか らといって全面的、鎖国的に規制を強化すれば安全なのか。例え ば、規制が強いシステムを採っている社会主義国において、今回 の経済危機を止められたかというと、そうとはいえないですね。 対外依存型経済のわが国において、規制強化によって荒波から 逃れられると考えるのはフィクションです。鎖国的な意識がこの 国の活性化を妨げているのです。 ■「鎖国的」とは? 国外へ の進出は進んでいるが、国内へ の受け入れや参入は認 めない、という非対称的な意識や行動です。90年代のいわゆる 失われた10年を経て、日本人はリスク回避型、内向き志向に変 わってしまったように思います。小泉内閣時代、経済は少し上向 きになったもの の 、知らず 知らず のうちに外需依存が進行して いました。世界の交易で最大の受益者である日本が、国内では 内輪での調和的社会を前提にしながら、意識の中でどんどん内 向きになっていきました。その結果、グローバル化に直面してい ながら、開放型社会への危機意識、反発が非常に強まっています。 今の日本は、ひと言でいえば「外への国際化」は熱心ですが、「内 なる国際化」は拒否しているようなものです。 ■鎖国意識は、どういうデメリットをもたらすのですか? これから世界経済はG20の会合のように、政策協調して世界 経済を立て直していく努力が求められています。それは各国間 の対外経済取引の縮小を回避して、相互にプラス・サム的な関係 を復元して景気回復をしなければならないからです。反グロー バリズム、反競争的なマインドをあおり、自由貿易に逆行する方 向に進む場合、最も被害が大きくなるのは日本だからです。また、 日本がそのような閉鎖的な対応に陥れば、各国も報復的な保護 貿易体制を強化し、世界全体が縮小均衡のワナにはまります。

国際的視野を育み、

身近な問題解決にあたる柔軟さを

身につけよう。

■ところで、今の学生の外国に対する意識は  どうなのでしょう? 全体的にはそうですね、安全をとっても「外国は危ない」など、 ネガティブな部分がクローズアップされている状況ですから、学 生の間にも、国内は安全・安心で、海外は危険という意識は強いよ うです。最近、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊への応募 者が少なくなりつつあるのも、若い人のそういうメンタリティが反 映されているのでしょう。このメンタリティは、21世紀型からする と良くない方向へ動くのではないかと心配です。 実際、大企業が、海外での設備投資や雇用を進め、外国での生 産活動が活発になればなるほど、また先に触れましたが海外へ のアウトソーシングが増えれば増えるほど、国内での雇用の問題 が大きくなっていくわけですよね。だから、学生諸君が国内の状 況だけを見ていれば、アンチグロー バルな気持ちを持つのも無 理からぬ事です。しかしここは、もう少し想像力を身につけて、 見えないところを見てほしい。グローバル化、IT化の時代に、社 会構造の水面下では何が起きているのかということについて、 現象面だけでなく社会の構造転換を踏まえて理解してほしいで すね。 ■それは日頃、近畿大学の学生と接して  感じておられることですか? 私は近畿大学で日本経済入門、NPO論、財政論を教えています。 例えば「NPO論」では「現在の市場経済は、もはや単独ではうま く機能しない。政府による過剰規制によっても問題は解決しない。 今こそ政府部門でもなく、営利の企業部門でもない非営利非政 府組織が積極的に参与し、がんばるべき時代」というようなこと を講義しています。 そこでの率直な感触を申し上げれば、学生諸君も二極分化し ているような気がしますね。熱心に授業に出てくる学生は、例え ば地球温暖化だとか格差・貧困の問題にも関心をもっていて、レ ポートをまとめてもらうと、世界的視野を持っている人もいると 感じます。 その一方で、うちの大学に限ったことではないのですが、内向 きな人も増えているような感じもします。とくに去年後半から、 経済危機が顕在化して「就職が厳しい」という緊張感があります ね。そ の中で、日本の長期雇用から外れた人たちが派遣切りに あって、それが今社会問題化しています。また、先輩の中には就 職面で苦労している人もいます。学生はそういう状況を肌で感 じるのだと思うんです。「外国に行ってふらふらしたら、正社員に なれないかもしれない 」と考える。だから、学生のうちに冒険を するとか、海外へ 行っていい経験をする、というような機運がこ のところ少しトーンダウンしているのかな。うちの大学だけじゃ なくて、若者全般が冒険することを恐れ、保守化しているのだと 思います。お父さん、お母さんも早く安定した職業に就いてほし いと強く願っていますから、どうしてもこのような世界同時不況 下では安定志向になりますね。 ■日本社会の問題が、若い人の意識や行動に  反映されているのですね。 そうですね。先程お話した青年海外協力隊に関しても、日本社 会の閉鎖性を感じることがあります。私は以前、タンザニアに行 って、協力隊の方々が現地の小学校で教える姿を目の当たりに して、そのがんばっている姿に涙が出るほど感動したことがある んです。ところが、そういう方々は日本の職場を辞めなければな りません。また海外での仕事を終えて帰ってきても自動的に復 職できません。日本のシステムの閉鎖性が経済危機の問題とセ ットになって、一度海外に出るとなかなか日本社会に戻ることが 困難だという、困った認識が定着しつつあります。 国際社会がグロー バ ル 化、IT化しているのに、若い人 の意識 が内向きスタンスになってしまうのは、日本にとっても長期的な 方向性としてあまり良くないことです。社会システムを変えてい くことも大事ですし、近畿大学としても、国際的な学生を生み出 す努力をしていかなければならないと思いますね。 ■教育によって、グローバル化する世界への対応能力を  つける必要があるのでは? 私は毎年、北京大学で客員教授をしていることもあり中国に 出かけます。中国の各大学や専門学校では、語学とITをセットに して教育するカリキュラムがうまく組まれていることに感心しま す。これからは、日本の大学でも、「語学」と「IT技術」という2つ の能力の教育をグロー バ ルリテラシーとして、専攻にかかわら ず戦略的に強化していく必要があると思います。もちろん、学生 が工学なり、経済、法律なりの知識を身につけて、自分の専門分 野をきちんともつことは大切です。しかし、そういうディシプリン・ コア(核となる学問分野)的な部分と同時に、総合力としての英語・ ITを身につけて、自分の将来への準備をしておかないと、21世 紀の社会ではサバイバル能力が弱くなってしまいます。 ■近畿大学には、学生が国際性を身につけていけるような  システムがありますか? 近畿大学には「英語村E3[e-cube](イーキューブ)」という立 派なものがありますよ。英語は語学そのものですが、IT技術の 習得にも不可欠で、ITとグロー バルリテラシー の向上に大きく 役立ちます。是非身につけるべきです。あまり他の大学にない ものですし、近畿大学の学生は、いつでも利用する機会が与えら れているのだから、E3を活用して、しっかりと語学力を身につけ てほしいですね。 また、近畿大学は東大阪にあります。そこには独自の技術を持 って、日本だけじゃなく世界に発信するようなすぐれた独立系の 企業がたくさんあり、外国から人が来て働いている。私の授業で は、その人たちと地域の中でいかに共生するかというようなこと も話題にしています。 ■近畿大学には、いろいろな国から留学生も来ています。 中国をはじめ、さまざまな国からの留学生がいます。日本人学 生にとっては、この人たちと積極的に交流し、相互理解に努めて ほしいと思います。外国人留学生と知り合うことによって、自ら がグロー バルに活動するための「 武器 」を育てているかどうか もポイントですね。少なくとも意識の上では、活動を日本に限定 せず、視野をどんどん広げていってほしいです。大学にとっても、 積極性を身につけて、環境変化に対応していける人材を世の中 に出していくことは非常に重要なテーマです。 ■グローバル化時代にあっては、実際には海外に出なくても、  国際的視野を持って地域に貢献できる人材も必要ですね。 その通り、そういう人材を育てていくことも大学の重要な仕事です。 「グローバルに考え、地域に貢献」という言葉があるのですが、日 本にいながらも、今グローバルな世界で何が起こっているのかを 考え、世界標準を知ることは非常に大事です。NPO論の流れでお 話すると、例えば、難病の人たちに援助の手を差し伸べたい、と思 った時、一人で募金を募る方法もあるけれど、世界ではもっと別 のやり方が考えられています。市場経済の牙城であるアメリカで は、こういった様々な社会問題に対し、政府に代わってNPO(特 定非営利活動法人)、NGO(非政府組織)が取り組んできた歴史 があります。日本では、2008年12月に新公益法人制度がスタ ートしたところで、こちらも少しずつ進歩しています。まず世界で 起きていることを知り、それを地域の問題解決に生かしていけば いいのだ、と学生に気づいてもらえるように指導しています。

関西は、世界有数のクリーン・エネルギー産業の

集積地であり、文化遺産の宝庫。

■次に、関西の経済を話題にしたいと思います。日本の中で、  関西の位置づけはどうでしょうか。 高度成長期の終わりぐらいから80年・90年代を通じて、関西 遊びながら英語を楽しく学ぶ―。 英語村E3[e-cube](イーキューブ) 英語村は、英語に苦手意識を持つ学生も、音楽、料理、格闘技など各種のアクティ ビティーや、イベント、ライブなどへの参加を通じ、自然に生きた英語を身につけら れるようにと企画された「対面式で、楽しく学ぶ」メソッドによる学内施設だ。ダン スイベントもできる木のフロアにカフェ、バスケットコートなどを配置。英語指導力、 社交性ともに高い能力を持つ英・米など7カ国出身のネイティブスタッフが、学生 とコミュニケーションをとる。

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巻頭特集 インタビュー

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巻頭特集 インタビュー

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大学

ぶか。

巻頭特集/インタビュー ■人々の意識によって、状況が変わってしまうのですか? そうです。前向きに危機を乗り越えるためには、まず、そうい う被害者意識からの脱却を意識しなければならないと思います。 最近、反グローバリズム、反市場主義を声高に叫ぶ人々が増えて います。「規制改革は間違っていたんだ」という議論がありますが、 我々がこのまま被害者意識の中で規制強化をしていくとどうな るのか。このことについて、もっと考えてもらいたい。今、もちろ ん貧困、格差の問題があるから、それに対するセーフティネット は必要だし、必要な規制はちゃんとするべきです。しかし、だか らといって全面的、鎖国的に規制を強化すれば安全なのか。例え ば、規制が強いシステムを採っている社会主義国において、今回 の経済危機を止められたかというと、そうとはいえないですね。 対外依存型経済のわが国において、規制強化によって荒波から 逃れられると考えるのはフィクションです。鎖国的な意識がこの 国の活性化を妨げているのです。 ■「鎖国的」とは? 国外へ の進出は進んでいるが、国内へ の受け入れや参入は認 めない、という非対称的な意識や行動です。90年代のいわゆる 失われた10年を経て、日本人はリスク回避型、内向き志向に変 わってしまったように思います。小泉内閣時代、経済は少し上向 きになったもの の 、知らず 知らず のうちに外需依存が進行して いました。世界の交易で最大の受益者である日本が、国内では 内輪での調和的社会を前提にしながら、意識の中でどんどん内 向きになっていきました。その結果、グローバル化に直面してい ながら、開放型社会への危機意識、反発が非常に強まっています。 今の日本は、ひと言でいえば「外への国際化」は熱心ですが、「内 なる国際化」は拒否しているようなものです。 ■鎖国意識は、どういうデメリットをもたらすのですか? これから世界経済はG20の会合のように、政策協調して世界 経済を立て直していく努力が求められています。それは各国間 の対外経済取引の縮小を回避して、相互にプラス・サム的な関係 を復元して景気回復をしなければならないからです。反グロー バリズム、反競争的なマインドをあおり、自由貿易に逆行する方 向に進む場合、最も被害が大きくなるのは日本だからです。また、 日本がそのような閉鎖的な対応に陥れば、各国も報復的な保護 貿易体制を強化し、世界全体が縮小均衡のワナにはまります。

国際的視野を育み、

身近な問題解決にあたる柔軟さを

身につけよう。

■ところで、今の学生の外国に対する意識は  どうなのでしょう? 全体的にはそうですね、安全をとっても「外国は危ない」など、 ネガティブな部分がクローズアップされている状況ですから、学 生の間にも、国内は安全・安心で、海外は危険という意識は強いよ うです。最近、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊への応募 者が少なくなりつつあるのも、若い人のそういうメンタリティが反 映されているのでしょう。このメンタリティは、21世紀型からする と良くない方向へ動くのではないかと心配です。 実際、大企業が、海外での設備投資や雇用を進め、外国での生 産活動が活発になればなるほど、また先に触れましたが海外へ のアウトソーシングが増えれば増えるほど、国内での雇用の問題 が大きくなっていくわけですよね。だから、学生諸君が国内の状 況だけを見ていれば、アンチグロー バルな気持ちを持つのも無 理からぬ事です。しかしここは、もう少し想像力を身につけて、 見えないところを見てほしい。グローバル化、IT化の時代に、社 会構造の水面下では何が起きているのかということについて、 現象面だけでなく社会の構造転換を踏まえて理解してほしいで すね。 ■それは日頃、近畿大学の学生と接して  感じておられることですか? 私は近畿大学で日本経済入門、NPO論、財政論を教えています。 例えば「NPO論」では「現在の市場経済は、もはや単独ではうま く機能しない。政府による過剰規制によっても問題は解決しない。 今こそ政府部門でもなく、営利の企業部門でもない非営利非政 府組織が積極的に参与し、がんばるべき時代」というようなこと を講義しています。 そこでの率直な感触を申し上げれば、学生諸君も二極分化し ているような気がしますね。熱心に授業に出てくる学生は、例え ば地球温暖化だとか格差・貧困の問題にも関心をもっていて、レ ポートをまとめてもらうと、世界的視野を持っている人もいると 感じます。 その一方で、うちの大学に限ったことではないのですが、内向 きな人も増えているような感じもします。とくに去年後半から、 経済危機が顕在化して「就職が厳しい」という緊張感があります ね。そ の中で、日本の長期雇用から外れた人たちが派遣切りに あって、それが今社会問題化しています。また、先輩の中には就 職面で苦労している人もいます。学生はそういう状況を肌で感 じるのだと思うんです。「外国に行ってふらふらしたら、正社員に なれないかもしれない 」と考える。だから、学生のうちに冒険を するとか、海外へ 行っていい経験をする、というような機運がこ のところ少しトーンダウンしているのかな。うちの大学だけじゃ なくて、若者全般が冒険することを恐れ、保守化しているのだと 思います。お父さん、お母さんも早く安定した職業に就いてほし いと強く願っていますから、どうしてもこのような世界同時不況 下では安定志向になりますね。 ■日本社会の問題が、若い人の意識や行動に  反映されているのですね。 そうですね。先程お話した青年海外協力隊に関しても、日本社 会の閉鎖性を感じることがあります。私は以前、タンザニアに行 って、協力隊の方々が現地の小学校で教える姿を目の当たりに して、そのがんばっている姿に涙が出るほど感動したことがある んです。ところが、そういう方々は日本の職場を辞めなければな りません。また海外での仕事を終えて帰ってきても自動的に復 職できません。日本のシステムの閉鎖性が経済危機の問題とセ ットになって、一度海外に出るとなかなか日本社会に戻ることが 困難だという、困った認識が定着しつつあります。 国際社会がグロー バ ル 化、IT化しているのに、若い人 の意識 が内向きスタンスになってしまうのは、日本にとっても長期的な 方向性としてあまり良くないことです。社会システムを変えてい くことも大事ですし、近畿大学としても、国際的な学生を生み出 す努力をしていかなければならないと思いますね。 ■教育によって、グローバル化する世界への対応能力を  つける必要があるのでは? 私は毎年、北京大学で客員教授をしていることもあり中国に 出かけます。中国の各大学や専門学校では、語学とITをセットに して教育するカリキュラムがうまく組まれていることに感心しま す。これからは、日本の大学でも、「語学」と「IT技術」という2つ の能力の教育をグロー バ ルリテラシーとして、専攻にかかわら ず戦略的に強化していく必要があると思います。もちろん、学生 が工学なり、経済、法律なりの知識を身につけて、自分の専門分 野をきちんともつことは大切です。しかし、そういうディシプリン・ コア(核となる学問分野)的な部分と同時に、総合力としての英語・ ITを身につけて、自分の将来への準備をしておかないと、21世 紀の社会ではサバイバル能力が弱くなってしまいます。 ■近畿大学には、学生が国際性を身につけていけるような  システムがありますか? 近畿大学には「英語村E3[e-cube](イーキューブ)」という立 派なものがありますよ。英語は語学そのものですが、IT技術の 習得にも不可欠で、ITとグロー バルリテラシー の向上に大きく 役立ちます。是非身につけるべきです。あまり他の大学にない ものですし、近畿大学の学生は、いつでも利用する機会が与えら れているのだから、E3を活用して、しっかりと語学力を身につけ てほしいですね。 また、近畿大学は東大阪にあります。そこには独自の技術を持 って、日本だけじゃなく世界に発信するようなすぐれた独立系の 企業がたくさんあり、外国から人が来て働いている。私の授業で は、その人たちと地域の中でいかに共生するかというようなこと も話題にしています。 ■近畿大学には、いろいろな国から留学生も来ています。 中国をはじめ、さまざまな国からの留学生がいます。日本人学 生にとっては、この人たちと積極的に交流し、相互理解に努めて ほしいと思います。外国人留学生と知り合うことによって、自ら がグロー バルに活動するための「 武器 」を育てているかどうか もポイントですね。少なくとも意識の上では、活動を日本に限定 せず、視野をどんどん広げていってほしいです。大学にとっても、 積極性を身につけて、環境変化に対応していける人材を世の中 に出していくことは非常に重要なテーマです。 ■グローバル化時代にあっては、実際には海外に出なくても、  国際的視野を持って地域に貢献できる人材も必要ですね。 その通り、そういう人材を育てていくことも大学の重要な仕事です。 「グローバルに考え、地域に貢献」という言葉があるのですが、日 本にいながらも、今グローバルな世界で何が起こっているのかを 考え、世界標準を知ることは非常に大事です。NPO論の流れでお 話すると、例えば、難病の人たちに援助の手を差し伸べたい、と思 った時、一人で募金を募る方法もあるけれど、世界ではもっと別 のやり方が考えられています。市場経済の牙城であるアメリカで は、こういった様々な社会問題に対し、政府に代わってNPO(特 定非営利活動法人)、NGO(非政府組織)が取り組んできた歴史 があります。日本では、2008年12月に新公益法人制度がスタ ートしたところで、こちらも少しずつ進歩しています。まず世界で 起きていることを知り、それを地域の問題解決に生かしていけば いいのだ、と学生に気づいてもらえるように指導しています。

関西は、世界有数のクリーン・エネルギー産業の

集積地であり、文化遺産の宝庫。

■次に、関西の経済を話題にしたいと思います。日本の中で、  関西の位置づけはどうでしょうか。 高度成長期の終わりぐらいから80年・90年代を通じて、関西 遊びながら英語を楽しく学ぶ―。 英語村E3[e-cube](イーキューブ) 英語村は、英語に苦手意識を持つ学生も、音楽、料理、格闘技など各種のアクティ ビティーや、イベント、ライブなどへの参加を通じ、自然に生きた英語を身につけら れるようにと企画された「対面式で、楽しく学ぶ」メソッドによる学内施設だ。ダン スイベントもできる木のフロアにカフェ、バスケットコートなどを配置。英語指導力、 社交性ともに高い能力を持つ英・米など7カ国出身のネイティブスタッフが、学生 とコミュニケーションをとる。

(6)

05

巻頭特集 インタビュー

1

危機の時代

」に、

大学

ぶか。

巻頭特集/インタビュー 経済は「 地盤沈下 」という言葉で語られてきました。しかし21 世紀に入り、2008年夏までは「 西高東低 」、つまり西が相対的 に元気だと言われていたのです。それには、関西はその他の地 域と比べアジアとの関係が強く、輸出相手国シェアにして全国平 均より10%くらい高いということが非常に影響していました。 アジアの成長と連動して、関西が他の地域より伸びたということ です。この時期は、国内需要が落ち込み、斜陽と言われてきた素 材型産業においても、アジアからのニーズの高まりによって輸出 が好調で、小康状態を保つことができました。 こうして昨年夏まではよかった のですが、秋以降の世界同時 不況の発生で、特に12月から3月にかけて影響が顕在化しました。 関西は他の地域より落ち込みが鈍かったのですが、それでもだ んだん影響が深刻化していますね。 ただ、もう一つの関西の特徴として、製造業と非製造業のバラ ンスがよく、危機に強い体質であることが挙げられます。たとえ ば東海地方は製造業中心の輸出主導型で、2002年ぐらいから 元気印の代表だった のですが、このところの落ち込みは激しい です。一方関東は、メーカーより非メーカーの伸びが大きい地域 です。本社機能が東京に集まったからでもありますが、ITを中心 に伸びが大きかったのが、これも影響を受けています。   ■落ち込んではいるものの、しぶとさもあるのが関西だという  ことですね。これから期待できる点はあるでしょうか? 大阪湾岸に液晶テレビのフラットパネルや太陽光発電パネル などの生産拠点が集まっており、今後も楽しみですね。昨年「 パ ネルベイ」という言葉が使われはじめました。パナソニックが姫路、 尼崎にテレビ用パネル の生産工場を建設し、シャープが堺に大 型集中投資。住友金属も和歌山で鉄鋼の生産能力を高める大プ ロジェクトを進めています。最近この勢いが少しスローダウンし ているのは懸念材料ですが。 ただ将来を見ると、関西の強みはまだあるんですよ。それはご 承知の通り、太陽電池、リチウムイオン電池など高性能電池の分 野で、日本の生産の約8割、世界でも2割を占めています。クリ ーン・グリーンエネルギー関連の企業が強いので、それがオバマ 新米大統領の世界的な政策の中で花開くかという期待から、関 西について比較的強気の見方があるのは事実です。 一方、東大阪などの中小中堅企業は問題を抱えています。関 西には、大阪人の気質ゆえか独立系企業が多く、東海と比べ系列 が少ないこともあって、従業員の方々の高齢化と事業継承の問 題が深刻です。また都銀、地銀等にお金を借りて仕事が回ってい る借金依存体質であるため、資金調達力が弱く、将来に向けての 設備投資が少し弱い形になりがちです。折角集積しているメリッ トを、今後どう生かすか。大阪府も含めて、関西全体がしっかりし た枠組みの中で応援しないといけません。 ■その中で近畿大学が果たすべき役割も大きいですね。 産学連携では、近畿大学の理系学部はがんばっていますが、さ らに充実させる必要があるでしょう。文系も東大阪という絶好の 地の利があるわけですから、これから努力しなければと思ってい ます。地域の繁栄と大学の繁栄は一体です。まず産学が、互いに 学び合うという姿勢が大切でしょうね。学生にももっと地元に密 着した視点を持ってもらいたいし、その点を大学も意識して、学 生を動機付けしていくべきです。みんなで協力し合って、大阪の 地域としての集積クラスターのメリットを戦略的に高め、社会に 向かって大学が強くアピールすることが求められます。 ■ものづくり以外にも、関西が強みを発揮できるところは? 観光も、日本の成長に寄与するんですよ。今、我々はウォン安 で盛んに韓国に行っていますね。外国人がもっと関西に来てく れるような魅力ある地域づくりが必要です。関西には世界遺産 が多い のですから、それをコアにしてどう全体の利益につなげ ていくのかが問われています。京阪神はもとより、奈良、和歌山、 滋賀県には豊富な歴史遺産、自然遺産があり、これらを有機的に つなげていく取り組みが必要です。とにかく、関西は財産を生か し切っていません。ヒト・モノ・カネが関西に入ってくるような戦 略的取り組みが弱いです。今あるものに、どう付加価値をプラス していくか、サービス業をどう強化していくかが非常に重要です。 交通網のネットワーク整備にしても、相互乗り入れが東京に比べ て進んでいない。開放型社会構造としてのインフラ整備が求め られています。 21世紀は都市間競争の時代です。国が全体を仕切って国家 間競争をするのではなく、それぞれの「まち」が、メリットを生か しながら地域経済の中でどのように活路を見いだすか、という発 想が求められます。日本ではまだ中央集権的発想が強いですが、 例えば中国では都市別ランキングが盛んで、それぞれの都市や 地域に戦略性を持たせています。 関西がバランスある成長を遂げるには、観光の他にサービス、 介護・医療についても高齢化の先進モデルをどういうぐあいに 作っていくかという課題があります。内需喚起型モデルを作ると か、やることはいろいろあります。東京一極集中の被害者意識で 立ち止まっている場合ではないのです。

危機の時代こそ、

未来に向かって大きく伸びるチャンスだ。

■再び大学の話に戻りますが、日頃の講義で意識されることは  ありますか? まず、生き生きとした講義をしたい。世の中の動きと無縁に教 科書 の話だけしていては、本当 の現実は分かりません。理論を ベ ースにしながらも、私の経験や現実の動きを統計資料にして 渡したりして、社会の風を伝える努力をしています。「 変化する 社会に対して閉じた大学ではなく、開放された大学に」という意 識で授業に臨んでいます。 それと、学生には積極性・開放型人材になってほしいですね。 私は外国で学生に講義する機会もあるのですが、外国の学生に 比べて日本の学生は大人しいんです。授業も真面目に聞くし、素 直でとてもいいと思うが、もっと積極性がほしいです。自分の考 え方をもって、意見を言ってほしいのです。また、何かに関心を 持っても行動が伴いません。アプローチの仕方が分からないの だから無理もないのですが、アクションをとることによって問題 解決に貢献する部分が弱いです。中には行動的な学生もいるん ですが、全般的にはもう少し社会に対して関心を持って、広い視 野の中でアクティブに活動してほしいという思いがありますね。 また、日本人には異質なものを排除する傾向があるのですが、 少なくとも若い世代は、自らと異なるものに対してきちんとした 対応ができるようになってほしいです。授業の中でも、例えば中 国からの留学生がいればそ の 人を話題にして、事例を紹介しな がらそういう部分を伝えようとしています。 ■この経済危機の中、未来に立ち向かう学生にメッセージを  ください。 世界は今、大きな変化 の 中にあります。今回 の 経済危機 の 影 響が日に日に私たちの生活をおびやかす事態にまでなっています。 就職活動にもきっとそ の悪影響が及んでいると思います。この ような状況は程度の差はあると思いますが、これからの人生の 中で繰り返し起こると考えておかねばなりません。変化は経済の グローバル化や技術進歩に伴う革新によって生ずる面もあるの ですが、私たちの人生にとってはそれはリスクであり、いかにこ のリスクに対応するかによって人生が左右されます。リスクの顕 在化をうらんでも問題が解決できるわけではありません。「リス クが生じた時、どう努力して、いかに問題を解決すればいいのか」 を考える必要があります。学生時代は、リスクによるピンチをチ ャンスにつなげる準備期間なのです。気力、体力、基礎力を養う 時期なのです。キャリアアップにつながる同じ学歴であっても、 努力するかどうかで評価が変わってくる時代です。未知なるも の へチャレンジし続ける努力が求められます。通俗的な意味で 成功するだけでなく、いかに生きていくか、どんな人生を歩んで いくかが大事。そういう意味で、今から意識改革をしてほしいの です。そ の場しのぎの就活マナーやテクニックを身につけて就 職をすりぬければいい、ではなく、自己実現のために着実に前進 する機会と考えてほしいのです。 ■企業と個人の関係も変化してきています。 日本型の長期雇用にもいいところがあると思うが、今は伝統的 日本社会の変化が大きくなる中で、雇用関係も変わりました。働 いている者の中でもきしみが生じ、正規、非正規のような一種の 身分制のようなものが生じています。今までとは比較にならな いほど大きな変化です。それと同時に企業の人事管理にIT技術 が利用されるようになって、評価がよりきめ細かくなってきました。 これからの社会は、IT化の中でますます評価の時代になっていく でしょう。この状態を競争社会といって、悪く言う人もいます。し かし、この傾向は変わりません。競争の中で公平に努力が評価さ れるのは、活気のある社会ということもできます。努力すれば、 これまでは相手にされなかったことでも評価されるというプラ ス面もあるのです。 ■チャンスが増える、という面もあるということですね。 そうです。今まで組織内で把握されていなかった部分まで取 りこんだ、より多様な形の評価システムが出てくるでしょう。とか く日本人は悪い面をクローズアップしてしまうことが多いんです が、「競争型の社会システムは悪い、イヤだ」と後ろ向きにとらえ ると、余計悪い方に影響を受けてしまいます。現実を前向きにと らえて生きていくことが重要です。今の困難を、自分の将来に向 かって「チャレンジ」していくモチベ ーションにして心の中で持 ち続けてほしいと思います。

本間 正明

(ほんま まさあき)

06

巻頭特集 インタビュー 近畿大学世界経済研究所長・教授 (財)関西社会経済研究所所長 1944年生まれ 専門分野:日本経済論、公共経済学、NPO・フィランソロピー、ボランティア 【主要職歴】 1967.3 大阪大学経済学部卒業 1973.3 大阪大学大学院経済学研究科博士課程中退 1973.4 大阪大学経済学部助手 1976.4 大阪大学経済学部助教授 1979.7 英国ウォーリック大学客員教授(1980.12まで) 1985.4 大阪大学経済学部教授 1993.3 英国ロンドン大学(LSE)客員研究員(1994.1まで) 1997.7 大阪大学経済学部長 1998.4 大阪大学大学院経済学研究科長、大阪大学経済学部長 1998.6 大阪大学副学長(2000.6まで)、大阪大学大学院経済学研究科教授 2000.6 大阪大学大学院経済学研究科教授 2007.4 関西社会経済研究所所長 2007.10 近畿大学世界経済研究所教授 2009.5 近畿大学世界経済研究所長 【受賞歴】 日経経済図書文化賞受賞(1983) 『租税の経済理論』 創文社 【主要著書・論文】 1982.10『租税の経済理論』 創文社 1986.10『公益法人の活動と税制』 清文社

1987.3 『Comparative Tax System』 TAX ANALYSTS 1988.9 『税制改革で変わる日本経済』 東洋経済新報社 1989.10『税制改革の実証分析』 東洋経済新報社 1991.3 『日本財政の経済分析』 創文社 1991.4 『財政入門』 ジック出版局 1992.9 『フィランソロピーの社会経済学』 東洋経済新報社 1994.5 『新・日本型経済システム』 TBSブリタニカ 1994.10『ゼミナール現代財政入門』 日本経済新聞社 1996.1 『ボランティア革命』 東洋経済新報社 1997.3 『APECの経済と税制』 清文社 1997.9 『どうする法人税改革』 清文社 1998.3 『21世紀日本型福祉社会の構想』 有斐閣 1998.3 『民からの改革』 清文社 2001.9 『地方財政改革』 有斐閣 2001.11『財政危機「脱却」』 東洋経済新報社 2003.9 『コミュニティビジネスの時代』 岩波書店 2005.1 『市場化テスト』 NTT出版 その他多数

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