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任意の位置の横すべり角零化 制御時の車両運動についての理論的考察 ここで K および K はそれぞれ, 後輪の摩擦円が減少, 前輪の 摩擦円が増加したときのコーナリングパワである... ヨー慣性モーメント ig. 1 ehice ode I z =k なる関係を満たす慣動半径を k と記す. 慣性モ

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Vol.46,No.4,July 2015.

769

Fig. 14 Images of auto-ignition (Injection pressure: 3.8 MPa,Mixture ratio: 8 %)

Fig. 15 Images of auto-ignition (Injection pressure: 5.8 MPa,Mixture ratio: 8 %)

4.結  論 本報告では,過給直噴ガソリンエンジンにおいて突如とし て発生する初期のLSPI の原因を特定すべく,筒内に飛散する 潤滑油を含む燃料液滴が自着火しLSPIにつながるメカニズム の解析を行った.3D-CFDコードを用いた数値計算によりLSPI 発生時の筒内の燃焼過程を再現するとともに,急速圧縮膨張 装置を用いた実験により潤滑油を含む燃料液滴が自着火する 現象を観察した結果をまとめると,以下のとおりである. (1) 潤滑油の化学反応を表現した化学反応スキームを組み 込んだ数値計算モデルを用い,ピストンクレビス部近傍 から飛散する潤滑油を含む燃料液滴の燃焼を記述する ことで,実機においてLSPI が発生した場合の燃焼圧力 と同等の傾向を持つ燃焼圧力履歴を得た. (2) 液滴が飛散した場合,その近傍にて火花点火前の自着火 から火炎伝播が始まり,最終的には未燃部でのエンドガ スの急激な圧縮着火に至る可能性が示唆された.この結 果から,液滴飛散によりLSPI が発生する可能性がある ことを確認した. (3) RCEM を用いた実験により,噴射する液滴中に含まれる 潤滑油の量が極めて少量であっても噴霧燃焼が発生し, 予混合気の着火源となることが確認された.一方で着火 しない場合も確認されたことから,自着火は確率論的な 現象である可能性が示唆された. (4) 潤滑油の混入量の増加により,着火遅れが短縮するが, 一定の値に収束する傾向があった.これは,噴射された 潤滑油を含む燃料液滴は微粒化の程度によらず,潤滑油 量により自着火がコントロールされる可能性を示唆し ている. (5) 同じ噴射圧力条件において潤滑油の混入量が増加する と粒子状の輝炎の数が増加していることから,輝炎の多 くは潤滑油によるものと考えられる.以上のことから着 火の際に確認される輝炎も潤滑油であると推察され,潤 滑油を含む燃料液滴はLSPI を引き起こす可能性が高い ことが示された. 参 考 文 献

(1) Dahnz C.,Han K., Spicher U.,Magar M.,Schießl R. and

Maas U. : Investigations on Pre-Ignition in Highly Supercharged SI Engines , SAE Technical Paper , 2010-01-0355 (2010)

(2) Palaveev S.,Magar M.,Disch C.,Schießl R.,Kubach H.,

Spicher U.,Maas U. and Koch T. : Simulations and experimental investigations of intermittent pre-ignition series in a turbocharged DISI engine,Knocking in Gasoline Engines: Conference Proceedings,p.414-442 (2014)

(3) Lauer T.,Heiss M.,Bobicic N. and Pritze S.:Model

Approach for Pre-Ignition Mechanisms,MTZ worldwide, Vol. 75,Issue 1,p.44-49 (2014)

(4) Okada Y.,Miyashita S.,Izumi Y. and Hayakawa Y.:Study

of Low-Speed Pre-Ignition in Boosted Spark Ignition Engine,SAE Technical Paper,2014-01-1218 (2014)

(5) Zahdeh A.,Rothenberger P.,Nguyen W.,Anbarasu M.,

Schmuck-Soldan S. , Schaefer J. and Goebel T. : Fundamental Approach to Investigate Pre-Ignition in Boosted SI Engines,SAE Technical Paper,2011-01-0340 (2011)

(6) Amann M. and Alger T.:Lubricant Reactivity Effects on Gasoline Spark Ignition Engine Knock,SAE Technical Paper,2012-01-1140 (2012) (7) 葛西理晴,橋本慶紀,白石泰介,寺地淳,野田徹:過 給直噴エンジンにおける LSPI の突発的発生メカニズ ムの解析,自動車技術会 2015 年春季大会学術講演会 講演予稿集,p.1439-1444,20155276(2015) (8) 伊藤紘崇,草鹿仁,大聖泰弘,葛西理晴,白石泰介, 寺地淳:定容容器および CFD コードを用いた潤滑油 の着火特性に関する研究,自動車技術会論文集,Vol. 45, No.4,p.671-676 (2014) (9) 草鹿仁,大聖泰弘:詳細な素反応過程を考慮した多次 元モデルによる天然ガス予混合圧縮着火に関する基 礎的研究,自動車技術会論文集,Vol.32,No.2,p.43-48 (2001) (10) 三又秀行,草鹿仁,大聖泰弘:詳細な素反応過程を考 慮した数値流体コードによるディーゼル燃焼の数値 解析―マルチコア対応による高速化―,自動車技術会 学術講演会前刷集,No.149-10,p.9-12 (2010)

(11) Farrell J. T., Johnston R. J. and Androulakis I. P.: Molecular Structure Effects On Laminar Burning Velocities At Elevated Temperature And Pressure,SAE Technical Paper,2004-01-2936 (2004)

任意の位置の横すべり角零化

DYC 制御時の車両運動についての理論的考察

*

- 後輪のコーナリングフォースや車両応答時定数に横すべり角零化位置が及ぼす影響 -

酒井 英樹)宮田 繁春)竹原 伸)

A Theoretical Consideration to Vehicle Behavior by Direct Yaw Moment Control

to Zero Vehicle Slip Angle at Any Location of Vehicle

Influence of Position of zeroed Vehicle Slip Angle on Residual Cornering Force and Time Constant of Vehicle Behavior -Hideki Sakai Shigeharu Miyata Shin Takehara

Firstly, this paper studies a Direct Yaw Control (DYC) to reduce spin tendency. To reduce load rate of rear tires, a DYC control law to zero cornering force of rear wheels is formulated. Further vehicle response with this control is obtained. This vehicle response is first order delay system. Its time constant value is similar to the time constant with active rear steer control to zero vehicle slip angle at C.G. Since to zero cornering force of rear wheels is equivalent to zero vehicle slip angle at rear wheels, the relation of the position whose vehicle slip angle is zeroed and vehicles behavior is also considered.

KEY WORDS: Vehicle dynamics, electronic stability control, motion control, yaw, DYC, vehicle slip angle (B1) 1.ま え が き 旋回制動時の車両挙動として,最もスピン(1)傾向を示す減速 度は3~4[m/s2]であると指摘されている.その理由は次の通り である.まず制動によって後輪から前輪に垂直荷重が移動す る.それにともなって前輪の摩擦円は増加し,後輪の摩擦円 は減少する.そのため後輪のコーナリングフォースの余力は 減少するのに対し,この減速度に必要な制動力では,前輪の 最大コーナリングフォースはほとんど減少しない.そのため スピン傾向が強くなる(2).この原因は摩擦円の変化だから,旋 回中だけでなく直進中でもこの減速度において潜在的なスピ ン傾向は強まる.さらに減速しなくても,下り坂や追い風な どで制動を加えているときにも,後輪から前輪への荷重移動 がおきるから,潜在的なスピン傾向が強まる. これらを始めとする,後輪のコーナリングフォースの余力 が減り,前輪の余力が増えやすい状況における車両運動制御 としては,アンチスピン効果を持たせるために,前輪の余力 を使って,後輪の余力の増加を図ることが有効であると思わ れる.この具体的な方法として,前輪の前後力の左右差を用 いて後輪のコーナリングフォースを低減するダイレクト・ヨ ーモーメント・コントロール(3) (4)(以後「DYC」と記す)を前 輪だけでおこなうことによって,後輪の余力の増加を図る制 御が想定される.そこで,その端的な例として,本論文では まず後輪コーナリングフォース零化DYC制御について考察 する. 後輪コーナリングフォースが零であるためには後輪の横す べり角も零でなければならない.したがって後輪コーナリン グフォース零化制御と後輪横すべり角零化制御とは等価であ る.一方従来知見として,DYC による周知の重心横すべり 角零化制御(3)があり,このときヨー角速度は舵角に比例し,舵 角に対して遅れない.また前輪位置の車体横すべり角による コーナリングフォース成分のキングピン軸まわりモーメント をパワステアリング制御によって補償すると,車両の平面2 自由度運動と操舵系の運動とを非連成化できる  ので,DYC によって前輪位置の車体横すべり角を零化しても,平面2 自 由度運動と操舵系とを非連成化できる. このように後輪位置や重心位置,前輪位置の横すべり角の 零化にはそれぞれ力学的意味がある.そこで本論文は横すべ り角がDYC によって零化される前後位置の違いが車両応答 に及ぼす影響についても考察する. 2.車両モデル DYC 制駆動力による前後力は前輪だけに働くものとする. 2.1. 一般的な車両モデル(3) 準定常旋回(3)を想定して,制動中の車両運動を車速一定とみ なして考察する.DYC の基となる,非制御状態の車両モデル を図1 に示す.このモデルの運動方程式は次の通りである.

r

Ff Fr mV       r r f f zr l F lF I     

 

  f f f K F 2    r r r K F 2    *2013年11月21日受理. 2013年10月23日自動車技術会秋季学術講演会において発表. 1)・2) ・3)近畿大学(739-2116 東広島市高屋うめの辺 1)

任意の位置の横すべり角零化

DYC 制御時の車両運動についての理論的考察

* - 後輪のコーナリングフォースや車両応答時定数に横すべり角零化位置が及ぼす影響 - 酒井 英樹)宮田 繁春)竹原 伸)

A Theoretical Consideration to Vehicle Behavior by Direct Yaw Moment Control

to Zero Vehicle Slip Angle at Any Location of Vehicle

Influence of Position of zeroed Vehicle Slip Angle on Residual Cornering Force and Time Constant of Vehicle Behavior -Hideki Sakai Shigeharu Miyata Shin Takehara

Firstly, this paper studies a Direct Yaw Control (DYC) to reduce spin tendency. To reduce load rate of rear tires, a DYC control law to zero cornering force of rear wheels is formulated. Further vehicle response with this control is obtained. This vehicle response is first order delay system. Its time constant value is similar to the time constant with active rear steer control to zero vehicle slip angle at C.G. Since to zero cornering force of rear wheels is equivalent to zero vehicle slip angle at rear wheels, the relation of the position whose vehicle slip angle is zeroed and vehicles behavior is also considered.

KEY WORDS: Vehicle dynamics, electronic stability control, motion control, yaw, DYC, vehicle slip angle (B1) 1.ま え が き 旋回制動時の車両挙動として,最もスピン(1)傾向を示す減速 度は3~4[m/s2]であると指摘されている.その理由は次の通り である.まず制動によって後輪から前輪に垂直荷重が移動す る.それにともなって前輪の摩擦円は増加し,後輪の摩擦円 は減少する.そのため後輪のコーナリングフォースの余力は 減少するのに対し,この減速度に必要な制動力では,前輪の 最大コーナリングフォースはほとんど減少しない.そのため スピン傾向が強くなる(2).この原因は摩擦円の変化だから,旋 回中だけでなく直進中でもこの減速度において潜在的なスピ ン傾向は強まる.さらに減速しなくても,下り坂や追い風な どで制動を加えているときにも,後輪から前輪への荷重移動 がおきるから,潜在的なスピン傾向が強まる. これらを始めとする,後輪のコーナリングフォースの余力 が減り,前輪の余力が増えやすい状況における車両運動制御 としては,アンチスピン効果を持たせるために,前輪の余力 を使って,後輪の余力の増加を図ることが有効であると思わ れる.この具体的な方法として,前輪の前後力の左右差を用 いて後輪のコーナリングフォースを低減するダイレクト・ヨ ーモーメント・コントロール(3) (4)(以後「DYC」と記す)を前 輪だけでおこなうことによって,後輪の余力の増加を図る制 御が想定される.そこで,その端的な例として,本論文では まず後輪コーナリングフォース零化DYC制御について考察 する. 後輪コーナリングフォースが零であるためには後輪の横す べり角も零でなければならない.したがって後輪コーナリン グフォース零化制御と後輪横すべり角零化制御とは等価であ る.一方従来知見として,DYC による周知の重心横すべり 角零化制御(3)があり,このときヨー角速度は舵角に比例し,舵 角に対して遅れない.また前輪位置の車体横すべり角による コーナリングフォース成分のキングピン軸まわりモーメント をパワステアリング制御によって補償すると,車両の平面2 自由度運動と操舵系の運動とを非連成化できる  ので,DYC によって前輪位置の車体横すべり角を零化しても,平面2 自 由度運動と操舵系とを非連成化できる. このように後輪位置や重心位置,前輪位置の横すべり角の 零化にはそれぞれ力学的意味がある.そこで本論文は横すべ り角がDYC によって零化される前後位置の違いが車両応答 に及ぼす影響についても考察する. 2.車両モデル DYC 制駆動力による前後力は前輪だけに働くものとする. 2.1. 一般的な車両モデル(3) 準定常旋回(3)を想定して,制動中の車両運動を車速一定とみ なして考察する.DYC の基となる,非制御状態の車両モデル を図1 に示す.このモデルの運動方程式は次の通りである.

r

Ff Fr mV       r r f f zr l F lF I     

 

  f f f K F 2    r r r K F 2    *2013年11月21日受理. 2013年10月23日自動車技術会秋季学術講演会において発表. 1)・2) ・3)近畿大学(739-2116 東広島市高屋うめの辺 1)

任意の位置の横すべり角零化

DYC 制御時の車両運動についての理論的考察

* - 後輪のコーナリングフォースや車両応答時定数に横すべり角零化位置が及ぼす影響 - 酒井 英樹)宮田 繁春)竹原 伸)

A Theoretical Consideration to Vehicle Behavior by Direct Yaw Moment Control

to Zero Vehicle Slip Angle at Any Location of Vehicle

Influence of Position of zeroed Vehicle Slip Angle on Residual Cornering Force and Time Constant of Vehicle Behavior -Hideki Sakai Shigeharu Miyata Shin Takehara

Firstly, this paper studies a Direct Yaw Control (DYC) to reduce spin tendency. To reduce load rate of rear tires, a DYC control law to zero cornering force of rear wheels is formulated. Further vehicle response with this control is obtained. This vehicle response is first order delay system. Its time constant value is similar to the time constant with active rear steer control to zero vehicle slip angle at C.G. Since to zero cornering force of rear wheels is equivalent to zero vehicle slip angle at rear wheels, the relation of the position whose vehicle slip angle is zeroed and vehicles behavior is also considered.

KEY WORDS: Vehicle dynamics, electronic stability control, motion control, yaw, DYC, vehicle slip angle (B1) 1.ま え が き 旋回制動時の車両挙動として,最もスピン(1)傾向を示す減速 度は3~4[m/s2]であると指摘されている.その理由は次の通り である.まず制動によって後輪から前輪に垂直荷重が移動す る.それにともなって前輪の摩擦円は増加し,後輪の摩擦円 は減少する.そのため後輪のコーナリングフォースの余力は 減少するのに対し,この減速度に必要な制動力では,前輪の 最大コーナリングフォースはほとんど減少しない.そのため スピン傾向が強くなる(2).この原因は摩擦円の変化だから,旋 回中だけでなく直進中でもこの減速度において潜在的なスピ ン傾向は強まる.さらに減速しなくても,下り坂や追い風な どで制動を加えているときにも,後輪から前輪への荷重移動 がおきるから,潜在的なスピン傾向が強まる. これらを始めとする,後輪のコーナリングフォースの余力 が減り,前輪の余力が増えやすい状況における車両運動制御 としては,アンチスピン効果を持たせるために,前輪の余力 を使って,後輪の余力の増加を図ることが有効であると思わ れる.この具体的な方法として,前輪の前後力の左右差を用 いて後輪のコーナリングフォースを低減するダイレクト・ヨ ーモーメント・コントロール(3) (4)(以後「DYC」と記す)を前 輪だけでおこなうことによって,後輪の余力の増加を図る制 御が想定される.そこで,その端的な例として,本論文では まず後輪コーナリングフォース零化DYC制御について考察 する. 後輪コーナリングフォースが零であるためには後輪の横す べり角も零でなければならない.したがって後輪コーナリン グフォース零化制御と後輪横すべり角零化制御とは等価であ る.一方従来知見として,DYC による周知の重心横すべり 角零化制御(3)があり,このときヨー角速度は舵角に比例し,舵 角に対して遅れない.また前輪位置の車体横すべり角による コーナリングフォース成分のキングピン軸まわりモーメント をパワステアリング制御によって補償すると,車両の平面2 自由度運動と操舵系の運動とを非連成化できる  ので,DYC によって前輪位置の車体横すべり角を零化しても,平面2 自 由度運動と操舵系とを非連成化できる. このように後輪位置や重心位置,前輪位置の横すべり角の 零化にはそれぞれ力学的意味がある.そこで本論文は横すべ り角がDYC によって零化される前後位置の違いが車両応答 に及ぼす影響についても考察する. 2.車両モデル DYC 制駆動力による前後力は前輪だけに働くものとする. 2.1. 一般的な車両モデル(3) 準定常旋回(3)を想定して,制動中の車両運動を車速一定とみ なして考察する.DYC の基となる,非制御状態の車両モデル を図1 に示す.このモデルの運動方程式は次の通りである.

r

Ff Fr mV       r r f f zr l F lF I     

 

  f f f K F 2    r r r K F 2    *2013年11月21日受理. 2013年10月23日自動車技術会秋季学術講演会において発表. 1)・2) ・3)近畿大学(739-2116 東広島市高屋うめの辺 1)

(2)

r V lf f            r V lr r              ここでKfおよびKrはそれぞれ,後輪の摩擦円が減少,前輪の 摩擦円が増加したときのコーナリングパワである.   Fig. 1 Vehicle model

2.2. ヨー慣性モーメント Iz=k2m なる関係を満たす慣動半径を k と記す. 慣性モーメン トが車両応答に及ぼす影響の本質は,Iz自体よりもむしろk2/lflr なる無次元数にあると指摘されている(3).またk2/lflrの測定結 果は0.85~1.1 と報告されている  .さらにk2/l flr  のとき力 学的考察を行いやすいとの指摘がある   そこで本論文では,導出される制御則の『力学的意味』を 得やすくするために,k2/lflr  の場合についてだけ考察をする. したがって r f Z ml l I     とする. 2.3.2 質点車両モデル   k2/l flr=1 の場合,車両モデルは図 2 のように表現することが できる.ここでmfおよびmrはそれぞれ次式によって定義され る. m l l m r f     m l l m f r   

Fig.2 Two particles model

このモデルの前輪および後輪の並進運動についての運動方 程式はそれぞれ式(10)および式(11)によって表される.また前 輪と後輪との相対運動(ヨー運動)は式(12)によって表される.

f

2 f(f ) fVr K m  (10)

r

r r r

V

r

K

m

 

2

(11) r f

V

l

l

V

r

(12) k2/l flr=1 の場合, 式(1)~(6)からなる運動方程式と式(10)~ (12)からなる運動方程式とは,完全に同値である. 2.4. DYC による制御モーメントの表現 DYC 制御は,左右輪の駆動力差によるヨーモーメント制御 である.そこで車両のトレッドをb,右前輪に付加される駆動 力をFx,左前輪に付加される制動力を-Fxとそれぞれ記すと, DYC による車両のヨーモーメント MDYCx x x DYC

b

F

b

F

bF

M

(

)

2

2

となる. 次に,本論文では考察の都合上,MDYCを,前輪にコーナリ ングフォースFDYCが,後輪にコーナリングフォース-FDYCがそ れぞれ付加されるとして扱う.したがってMDYは次式によっ て表される. DYC DYC r DYC f DYC

l

F

l

F

lF

M

(

)

したがってFDYCFxとには, x DYC

b

l

F

F

なる関係がある.なおFDYC標記にせよ,Fx標記にせよ,それ ぞれの偶力によって重心まわりのヨーモーメントは生じるが, 重心に働くそれぞれの(前後または横方向の)合力は0 であ り,両者は完全に等価である. なお本論文では, DYC 制御をおこなってもコーナリング パワは変化しないものとする.したがって図2 のモデルにお いてDYC 制御を行う場合の車両の運動方程式は次のように なる.

f

f f DYC fVr K F m  2 ( ) (13)

r

r r DYC r

V

r

K

F

m

2

(14) 3 後輪位置横すべり角零化 '<& 制御 3.1. 制御則 後輪位置横滑り角零化の条件は式(4)から βrr=0 である.こ の関係を式(14)に代入すると Vr m FDYC  r (15) となる.上式は,旋回に必要な後輪コーナリングフォースと βf δ-βf lr lf r δ Fr Ff Kr C.G Kf m,Iz βr βf Kr Kf l mf mr lr lf C.G

rear wheel system front wheel system

yr xrr yf xf Of Or 2Kr 2KrfV Vf 同量のFDYCを付加することによって,後輪コーナリングフォ ースが零化されることを意味し,それが同時に制御則を意味 する.したがって後輪横すべり角零化制御の制御則は,ヨー 角速度比例制御である.この制御によって以後 Frrr=0 と する.よって式(12)から r V l f   (16) なる関係が成立する.  3.2. 車両応答  式(2)に,制御ヨーモーメント FDYCを考慮すると, ) 2 ( ] ) ( 2 [ f f DYC r r r DYC f Zr l K F l K F I          (17) となる.式(17)に β r=0 および式(15)を代入すると,式(17)は Vr lm r V l l K r IZ f f  r        2        (18) となる.この式において全ての初期条件を0 としてラプラス 変換した上で,δ に対する r の伝達関数を求めると s T l V V lK m s s r DYC f      1 1 2 1 1 ) ( ) ( 2    (19) となる.ここでTDYCは応答時定数であり, 2 2ll K mlV V I T f f f Z DYC   (20) として表される.なお上式の導出過程において,式(9)から m l lmrf なる関係を用いた. 式(19)~(20)が,本制御における舵角に対するヨー応答であ る.ステップ操舵における,本制御および重心横滑角零化DYC 制御,非制御車両それぞれの応答を図3 に示す.  3.3. 車両応答の有用性 重心位置横すべり角零化DYC における r の応答は,δ に比 例し,δ に対して遅れない.一方本制御における δ に対する r の応答は 1 次遅れ系であるので,本制御の応答は,横すべり 角零化DYC の応答よりも遅い.δ に対する r の高周波におけ るゲインが高すぎると運転しにくくなる(8)が,逆にもし本制御 の応答が遅すぎると,その有用性は乏しい.そこで本制御の 有用性を確認する.  その判断基準として,重心位置の横すべり角零化後輪制御 操舵における車両応答を用いる. 重心位置横すべり角零化後 輪制御操舵におけるδに対するrの伝達関数をG(s)と記せば, G(s)は次式で表される(3) s T l V V K ll ml s G e f f f r      1 1 2 1 1 ) ( 2 (21)

(A) Steering angle (B)

(B) Lateral acceleration

(C) Cornering forces of rear wheel

(D) Traction forces of front wheel

(E) Cornering forces of front wheel Fig. 3 Control effect of zeroing rear cornering force

ここでTeは応答時定数であり, 2 2ll K mlV V I T r f f Z e (22) として表される.ここでTeは,lf=lr=l/2 のとき Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 0.02 0.03 0.01 DYC to zero βr DYC to zero β Without control δ [ra d] 1.0 0.5 DYC to zero β DYC to zero βr Without control Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Lat er al accel er at io n [m /s 2] 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Fr [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β Without control 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Fx [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Ff [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β Without control

(3)

r V lf f             r V lr r              ここでKfおよびKrはそれぞれ,後輪の摩擦円が減少,前輪の 摩擦円が増加したときのコーナリングパワである.   Fig. 1 Vehicle model

2.2. ヨー慣性モーメント Iz=k2m なる関係を満たす慣動半径を k と記す. 慣性モーメン トが車両応答に及ぼす影響の本質は,Iz自体よりもむしろk2/lflr なる無次元数にあると指摘されている(3).またk2/lflrの測定結 果は0.85~1.1 と報告されている  .さらにk2/l flr  のとき力 学的考察を行いやすいとの指摘がある   そこで本論文では,導出される制御則の『力学的意味』を 得やすくするために,k2/lflr  の場合についてだけ考察をする. したがって r f Z ml l I     とする. 2.3.2 質点車両モデル   k2/l flr=1 の場合,車両モデルは図 2 のように表現することが できる.ここでmfおよびmrはそれぞれ次式によって定義され る. m l l m r f     m l l m f r   

Fig.2 Two particles model

このモデルの前輪および後輪の並進運動についての運動方 程式はそれぞれ式(10)および式(11)によって表される.また前 輪と後輪との相対運動(ヨー運動)は式(12)によって表される.

f

2 f(f ) fVr K m  (10)

r

r r r

V

r

K

m

 

2

(11) r f

V

l

l

V

r

(12) k2/l flr=1 の場合, 式(1)~(6)からなる運動方程式と式(10)~ (12)からなる運動方程式とは,完全に同値である. 2.4. DYC による制御モーメントの表現 DYC 制御は,左右輪の駆動力差によるヨーモーメント制御 である.そこで車両のトレッドをb,右前輪に付加される駆動 力をFx,左前輪に付加される制動力を-Fxとそれぞれ記すと, DYC による車両のヨーモーメント MDYCx x x DYC

b

F

b

F

bF

M

(

)

2

2

となる. 次に,本論文では考察の都合上,MDYCを,前輪にコーナリ ングフォースFDYCが,後輪にコーナリングフォース-FDYCがそ れぞれ付加されるとして扱う.したがってMDYは次式によっ て表される. DYC DYC r DYC f DYC

l

F

l

F

lF

M

(

)

したがってFDYCFxとには, x DYC

b

l

F

F

なる関係がある.なおFDYC標記にせよ,Fx標記にせよ,それ ぞれの偶力によって重心まわりのヨーモーメントは生じるが, 重心に働くそれぞれの(前後または横方向の)合力は0 であ り,両者は完全に等価である. なお本論文では, DYC 制御をおこなってもコーナリング パワは変化しないものとする.したがって図2 のモデルにお いてDYC 制御を行う場合の車両の運動方程式は次のように なる.

f

f f DYC fVr K F m  2 ( ) (13)

r

r r DYC r

V

r

K

F

m

2

(14) 3 後輪位置横すべり角零化 '<& 制御 3.1. 制御則 後輪位置横滑り角零化の条件は式(4)から βrr=0 である.こ の関係を式(14)に代入すると Vr m FDYC  r (15) となる.上式は,旋回に必要な後輪コーナリングフォースと βf δ-βf lr lf r δ Fr Ff Kr C.G Kf m,Iz βr βf Kr Kf l mf mr lr lf C.G

rear wheel system front wheel system

yr xrr yf xf Of Or 2Kr 2KrfV Vf 同量のFDYCを付加することによって,後輪コーナリングフォ ースが零化されることを意味し,それが同時に制御則を意味 する.したがって後輪横すべり角零化制御の制御則は,ヨー 角速度比例制御である.この制御によって以後 Frrr=0 と する.よって式(12)から r V l f   (16) なる関係が成立する.  3.2. 車両応答  式(2)に,制御ヨーモーメント FDYCを考慮すると, ) 2 ( ] ) ( 2 [ f f DYC r r r DYC f Zr l K F l K F I          (17) となる.式(17)に β r=0 および式(15)を代入すると,式(17)は Vr lm r V l l K r IZ f f  r        2        (18) となる.この式において全ての初期条件を0 としてラプラス 変換した上で,δ に対する r の伝達関数を求めると s T l V V lK m s s r DYC f      1 1 2 1 1 ) ( ) ( 2    (19) となる.ここでTDYCは応答時定数であり, 2 2ll K mlV V I T f f f Z DYC   (20) として表される.なお上式の導出過程において,式(9)から m l lmrf なる関係を用いた. 式(19)~(20)が,本制御における舵角に対するヨー応答であ る.ステップ操舵における,本制御および重心横滑角零化DYC 制御,非制御車両それぞれの応答を図3 に示す.  3.3. 車両応答の有用性 重心位置横すべり角零化DYC における r の応答は,δ に比 例し,δ に対して遅れない.一方本制御における δ に対する r の応答は1 次遅れ系であるので,本制御の応答は,横すべり 角零化DYC の応答よりも遅い.δ に対する r の高周波におけ るゲインが高すぎると運転しにくくなる(8)が,逆にもし本制御 の応答が遅すぎると,その有用性は乏しい.そこで本制御の 有用性を確認する.  その判断基準として,重心位置の横すべり角零化後輪制御 操舵における車両応答を用いる. 重心位置横すべり角零化後 輪制御操舵におけるδに対するrの伝達関数をG(s)と記せば, G(s)は次式で表される(3) s T l V V K ll ml s G e f f f r      1 1 2 1 1 ) ( 2 (21)

(A) Steering angle (B)

(B) Lateral acceleration

(C) Cornering forces of rear wheel

(D) Traction forces of front wheel

(E) Cornering forces of front wheel Fig. 3 Control effect of zeroing rear cornering force

ここでTeは応答時定数であり, 2 2ll K mlV V I T r f f Z e (22) として表される.ここでTeは,lf=lr=l/2 のとき Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 0.02 0.03 0.01 DYC to zero βr DYC to zero β Without control δ [ra d] 1.0 0.5 DYC to zero β DYC to zero βr Without control Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Lat er al accel er at io n [m /s 2] 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Fr [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β Without control 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Fx [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β 1.0 0.5 Time [s] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Ff [kN ] DYC to zero βr DYC to zero β Without control

(4)

DYC e T T  となるので,このとき重心位置横すべり角零化後輪制御操舵 と後輪位置横すべり角零化DYC 制御それぞれの応答の速さ は一致する.一般にlr / l =0.4~0.6 程度であるから,本後輪位 置横すべり角零化 DYC 制御の応答は重心位置横すべり角零 化後輪制御操舵の応答と同程度である.重心位置横すべり横 すべり角零化後輪制御操舵は,実際の生産車両に搭載された 実績がある(9)(10).従って本制御の応答性は有用であると思われ る.  4.任意の位置の横すべり零化 DYC 制御 4.1.  横すべり零化位置と応答性との関係  DYC 制御における横すべり零化位置と応答性との関係を考 察するために,零化させる横すべりの位置を任意の位置に設 定する.その位置を図4 に示すように点 x とし,点 x は後輪 からx[m]前方にあるものとし,点 x における横すべり角を βx と記す.

Fig. 4 Definition of position X and βx

次に任意の位置の零化DYC 制御として,βxの零化に必要な ヨーモーメントFDYCxを求める.βxr x Vxr

  (23) だから,βx =0 のときの βrr V x r

(24) となる.この式を式(14)に代入すると DYC r rV r Vxr KV xr F m         2 (25) となる.この式を整理するとFDYCxr x m r x V m K V m F r r r r DYCx            1 2 2 (26) として求まる.またこのときヨー応答は s x K x l K mV x l mV x l V K x l xK mV s s r r f r f r 2 ) ( 2 ) ( 1 1 ) ( 2 2 1 1 ) ( ) ( 2 2              (27) となる. 式(27)の時定数の項において x を増加させると,分 母は顕著な変化をしないが,分子は有意に減るので,x が大き いほど時定数は小さい(図5).ただし式(27)において x >lr のとき,時定数は負になるため車両応答は不安定になる.従

Fig. 5 Influence of position x on vehicle response (DYC)

ってDYC 制御では,点 x は重心よりも後方に設定される必要 がある.そのため操舵系の運動と平面2 自由度運動とを非連 成化するための,前輪位置横すべり角零化制御は,DYC では 実現できない. 以上のことから,横すべり角を零化する位置が前方にある ほどFDYCxの絶対値は減るとともに,ヨー応答は速くなるが, 零化する位置の前方限界は重心位置である. その理由を考察する.まず式(26)は r l x l l I r x V mK V m r l x l l l ml r x V mK V m r l x l l m r x V m K V m r x l l m r x V m K V m r x m r x V mK V m F r r z r r r r r r f r r r r r r r r r r r r r r r r r r r r DYCx                                                                               1 2 1 1 2 1 1 2 1 ) ( 2 1 2 1 2 2 2 2 2 (28) と変形できる.この式を式(17)に代入することによって次式を 得る. r l x l I r x V m K lV m K l K l r I r r z r r r r r r f f f Z                        1 2 1 2 ) ( 2 2      (29) 上式においてDYC モーメントは x の項として表現され,右辺4 項は,DYC 制御における r . 比例項である.この項は,x>0 のとき正だから,慣性項である左辺と打ち消しあう.したが ってx が大きいほど見かけ上 Izが減少するため,Teも減少し, x >lrの場合,Izが見かけ上負になるため不安定になる.これが, DYC によって零化できる位置の前方限界が重心位置であるこ との理由である.  このようにx が大きいほど r . 比例項が増える.r . の発生タイ ミングは,式(2)(3)から,操舵と同時である.したがって重心 位置零化DYC 制御の DYC モーメントは操舵と同時に発生す る.一方,後輪位置横滑り角零化制御のDYC モーメントはヨ ー角速度に比例するから,操舵よりも遅れて発生する  .し たがって重心位置零化制御のDYC モーメントのほうが,後輪 位置横滑り角零化制御のモーメントよりも発生タイミングが x x X 0.05 0.03 x/lr[Non dimension] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Ti m e co ns tan t [ s] 0.04 0.02 0.01 早い.このようにDYC モーメント発生タイミングの早さが車 両応答の早さと関係するものと思われる.そこで発生タイミ ングを具体的に表すために,舵角に対するβxの伝達関数を次 式に示す.

2 2 2 2 2 1( ) ) ( ) ( V C C l C C lVs C C s lV V lx C s V lx C lVx C s s f r r f r f r r f x                  (30) ここで上式において表記を簡略化するため,前後のコーナリ ングパワをそれぞれ r r r f f f m K C m K C 2 2   と記した(11). 式(30)分子の s の係数に示されるように,x が大きいほど, 操舵してからβxが発生するまでの応答遅れはより小さいので, 零化のためのDYC ヨーモーメントのタイミングもより早い. したがってx が大きいほど式(29)における r.比例項が大きくな る.その結果 x が大きいほど,操舵に対するヨー応答も速く なると考察される.  4.2.  DYC 制御の安定余裕を表すパラメータ x=lrのとき式(27)右辺の時定数は 0 であるが,x>lrのとき時 定数は負になるので舵角に対するヨー応答は不安定になる. したがって実車では,乗員や積載状況による重心位置や質量 の変化,タイヤの空気圧変化,摩耗,交換などに伴うコーナ リングパワの変化などのパラメータ変動があるため,現実に は重心位置の完全な零化をせずに,安定性に余裕を持たせた 制御をおこなうことになるはずである. この余裕の持たせ方として,重心よりも x[m]後方にある任 意の位置 x の横すべり角を零化する制御が考えられる.そし てこの x の位置が重心からどれだけ後方にあるかによって, 制御の安定余裕を表す方法が想定される.ただしその長さ x[m]自体を安定余裕の指標とすると,lrの異なる車両間の比較 が難しい.そこで安定余裕の指標として,式(29)右辺 r . の係数 の( )内に含まれる x/lrを用いることが有用であると思われる. なぜならx/lr=1 のとき安定余裕が 0 の重心位置零化 DYC 制御 であり,x/lr=0 のとき安定余裕がある後輪位置横滑り角零化制 御を意味するので,x/lrの大小は安定余裕を表すとともに,両 者の制御の配分比をも表すためである. 5.ま と め 1) 後輪のコーナリングフォースの余力が減少しやすい状況 における後輪コーナリングフォース低減制御を理論的に考察 するための前輪の DYC による後輪位置横滑り角零化制御則 として,ヨー角速度に比例するDYC 制御を導出した. 2) 後輪位置横滑り角零化 DYC 制御における,操舵に対す るヨー角速度の応答は1 次遅れ系になる.その応答時定数は 後輪舵角制御による横すべり角零化制御の応答時定数とほぼ 同じであるため,実用になるものと思われる. 3) 後輪位置横滑り角 DYC 制御と従来の重心位置横すべり 角零化DYC 制御とを包括的に扱うため,任意の位置の横すべ り角を零化するDYC 制御を導出した.DYC 制御によって零 化する位置が後輪よりも前方にあるほど,ヨー慣性モーメン トを補償する効果が大きくなるため,ヨー応答は速くなる. なお零化する位置が重心よりも前方の場合,DYC 制御によっ て補償されたヨー慣性モーメントが負になるため車両応答は 不安定になる. )そのため重心位置横すべり角を零化する '<& 制御は,パラ メータが変動すると,不安定になることがある.そこで安定 余裕を持たせるため,重心よりも後方の位置の横すべり角を 零化する '<& 制御を提案し,さらにその安定指標として指標 x/lrを提案した.  参 考 文 献

  0LOOLNHQ :) HWDO “7KH 6WDWLF 'LUHFWLRQDO 6WDELOLW\ DQG &RQWURO RI WKH $XWRPRELOH” 6$( 3DSHU 1R    山口博嗣,松本真次,井上秀明,波野淳,旋回制動時の車 両安定性について,自動車技術,9RO,1RS  .  安部正人:自動車の運動と制御>第  版@─車両運動力学 の理論形成と応用,S 東京電機大学出版局  .  森淳,芝端康二:ダイレクト・ヨー・コントロール $:' シ ス テ ム の 開 発 , 自 動 車 技 術 会 論 文 集 , 9RO 1R S    毛利宏,久保田正博堀口奈美:過渡的な操舵力アシスト 特性が車両運動に及ぼす影響,自動車技術会論文集,9RO 1RS    酒井英樹:過渡的な旋回感覚を強調する減衰力制御カル マンフィルタを用いたロール・ピッチ同期化制御,自動車技 術会論文集,9RO1RS    酒井英樹:自動車の平面運動におけるヨー角速度進み時 定数についての力学的考察,日本機械学会論文集 & 編, 巻  号,S  .  風間恵介,孕石泰丈,毛利宏,吉松祐香,鈴木卓馬,上 沼研也:ドライバ操舵に対する車両挙動の位相遅れと高周波 ゲインが運転しやすさに及ぼす影響,日本機械学会論文集(C 編) 巻  号,S()  森和典,江口孝彰,金子敏志,川越健次,入江南海雄:後 輪の位相反転制御による操縦安定性の向上 -683(5 +,&$6, 自動車技術会学術講演会前刷集 1R,S()  山本真規,原田宏,松尾芳明:後輪のアクティブ操舵に よる操舵応答性・外乱安定性の向上(車両運動のアクティブ

(5)

DYC e T T  となるので,このとき重心位置横すべり角零化後輪制御操舵 と後輪位置横すべり角零化DYC 制御それぞれの応答の速さ は一致する.一般にlr / l =0.4~0.6 程度であるから,本後輪位 置横すべり角零化DYC 制御の応答は重心位置横すべり角零 化後輪制御操舵の応答と同程度である.重心位置横すべり横 すべり角零化後輪制御操舵は,実際の生産車両に搭載された 実績がある(9)(10).従って本制御の応答性は有用であると思われ る.  4.任意の位置の横すべり零化 DYC 制御 4.1.  横すべり零化位置と応答性との関係  DYC 制御における横すべり零化位置と応答性との関係を考 察するために,零化させる横すべりの位置を任意の位置に設 定する.その位置を図4 に示すように点 x とし,点 x は後輪 からx[m]前方にあるものとし,点 x における横すべり角を βx と記す.

Fig. 4 Definition of position X and βx

次に任意の位置の零化DYC 制御として,βxの零化に必要な ヨーモーメントFDYCxを求める.βxr x Vxr

  (23) だから,βx =0 のときの βrr V x r 

(24) となる.この式を式(14)に代入すると DYC r rV r Vxr KV xr F m         2 (25) となる.この式を整理するとFDYCxr x m r x V m K V m F r r r r DYCx            1 2 2 (26) として求まる.またこのときヨー応答は s x K x l K mV x l mV x l V K x l xK mV s s r r f r f r 2 ) ( 2 ) ( 1 1 ) ( 2 2 1 1 ) ( ) ( 2 2              (27) となる. 式(27)の時定数の項において x を増加させると,分 母は顕著な変化をしないが,分子は有意に減るので,x が大き いほど時定数は小さい(図5).ただし式(27)において x >lr のとき,時定数は負になるため車両応答は不安定になる.従

Fig. 5 Influence of position x on vehicle response (DYC)

ってDYC 制御では,点 x は重心よりも後方に設定される必要 がある.そのため操舵系の運動と平面2 自由度運動とを非連 成化するための,前輪位置横すべり角零化制御は,DYC では 実現できない. 以上のことから,横すべり角を零化する位置が前方にある ほどFDYCxの絶対値は減るとともに,ヨー応答は速くなるが, 零化する位置の前方限界は重心位置である. その理由を考察する.まず式(26)は r l x l l I r x V mK V m r l x l l l ml r x V mK V m r l x l l m r x V m K V m r x l l m r x V m K V m r x m r x V mK V m F r r z r r r r r r f r r r r r r r r r r r r r r r r r r r r DYCx                                                                               1 2 1 1 2 1 1 2 1 ) ( 2 1 2 1 2 2 2 2 2 (28) と変形できる.この式を式(17)に代入することによって次式を 得る. r l x l I r x V m K lV m K l K l r I r r z r r r r r r f f f Z                        1 2 1 2 ) ( 2 2      (29) 上式においてDYC モーメントは x の項として表現され,右辺4 項は,DYC 制御における r . 比例項である.この項は,x>0 のとき正だから,慣性項である左辺と打ち消しあう.したが ってx が大きいほど見かけ上 Izが減少するため,Teも減少し, x >lrの場合,Izが見かけ上負になるため不安定になる.これが, DYC によって零化できる位置の前方限界が重心位置であるこ との理由である.  このようにx が大きいほど r . 比例項が増える.r . の発生タイ ミングは,式(2)(3)から,操舵と同時である.したがって重心 位置零化DYC 制御の DYC モーメントは操舵と同時に発生す る.一方,後輪位置横滑り角零化制御のDYC モーメントはヨ ー角速度に比例するから,操舵よりも遅れて発生する  .し たがって重心位置零化制御のDYC モーメントのほうが,後輪 位置横滑り角零化制御のモーメントよりも発生タイミングが x x X 0.05 0.03 x/lr[Non dimension] 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 Ti m e co ns tan t [ s] 0.04 0.02 0.01 早い.このようにDYC モーメント発生タイミングの早さが車 両応答の早さと関係するものと思われる.そこで発生タイミ ングを具体的に表すために,舵角に対するβxの伝達関数を次 式に示す.

2 2 2 2 2 1( ) ) ( ) ( V C C l C C lVs C C s lV V lx C s V lx C lVx C s s f r r f r f r r f x                  (30) ここで上式において表記を簡略化するため,前後のコーナリ ングパワをそれぞれ r r r f f f m K C m K C 2 2   と記した(11). 式(30)分子の s の係数に示されるように,x が大きいほど, 操舵してからβxが発生するまでの応答遅れはより小さいので, 零化のためのDYC ヨーモーメントのタイミングもより早い. したがってx が大きいほど式(29)における r.比例項が大きくな る.その結果x が大きいほど,操舵に対するヨー応答も速く なると考察される.  4.2.  DYC 制御の安定余裕を表すパラメータ x=lrのとき式(27)右辺の時定数は 0 であるが,x>lrのとき時 定数は負になるので舵角に対するヨー応答は不安定になる. したがって実車では,乗員や積載状況による重心位置や質量 の変化,タイヤの空気圧変化,摩耗,交換などに伴うコーナ リングパワの変化などのパラメータ変動があるため,現実に は重心位置の完全な零化をせずに,安定性に余裕を持たせた 制御をおこなうことになるはずである. この余裕の持たせ方として,重心よりも x[m]後方にある任 意の位置x の横すべり角を零化する制御が考えられる.そし てこのx の位置が重心からどれだけ後方にあるかによって, 制御の安定余裕を表す方法が想定される.ただしその長さ x[m]自体を安定余裕の指標とすると,lrの異なる車両間の比較 が難しい.そこで安定余裕の指標として,式(29)右辺 r . の係数 の( )内に含まれる x/lrを用いることが有用であると思われる. なぜならx/lr=1 のとき安定余裕が 0 の重心位置零化 DYC 制御 であり,x/lr=0 のとき安定余裕がある後輪位置横滑り角零化制 御を意味するので,x/lrの大小は安定余裕を表すとともに,両 者の制御の配分比をも表すためである. 5.ま と め 1) 後輪のコーナリングフォースの余力が減少しやすい状況 における後輪コーナリングフォース低減制御を理論的に考察 するための前輪の DYC による後輪位置横滑り角零化制御則 として,ヨー角速度に比例するDYC 制御を導出した. 2) 後輪位置横滑り角零化 DYC 制御における,操舵に対す るヨー角速度の応答は1 次遅れ系になる.その応答時定数は 後輪舵角制御による横すべり角零化制御の応答時定数とほぼ 同じであるため,実用になるものと思われる. 3) 後輪位置横滑り角 DYC 制御と従来の重心位置横すべり 角零化DYC 制御とを包括的に扱うため,任意の位置の横すべ り角を零化するDYC 制御を導出した.DYC 制御によって零 化する位置が後輪よりも前方にあるほど,ヨー慣性モーメン トを補償する効果が大きくなるため,ヨー応答は速くなる. なお零化する位置が重心よりも前方の場合,DYC 制御によっ て補償されたヨー慣性モーメントが負になるため車両応答は 不安定になる. )そのため重心位置横すべり角を零化する '<& 制御は,パラ メータが変動すると,不安定になることがある.そこで安定 余裕を持たせるため,重心よりも後方の位置の横すべり角を 零化する '<& 制御を提案し,さらにその安定指標として指標 x/lrを提案した.  参 考 文 献

  0LOOLNHQ :) HWDO “7KH 6WDWLF 'LUHFWLRQDO 6WDELOLW\ DQG &RQWURO RI WKH $XWRPRELOH” 6$( 3DSHU 1R    山口博嗣,松本真次,井上秀明,波野淳,旋回制動時の車 両安定性について,自動車技術,9RO,1RS  .  安部正人:自動車の運動と制御>第  版@─車両運動力学 の理論形成と応用,S 東京電機大学出版局  .  森淳,芝端康二:ダイレクト・ヨー・コントロール $:' シ ス テ ム の 開 発 , 自 動 車 技 術 会 論 文 集 , 9RO 1R S    毛利宏,久保田正博堀口奈美:過渡的な操舵力アシスト 特性が車両運動に及ぼす影響,自動車技術会論文集,9RO 1RS    酒井英樹:過渡的な旋回感覚を強調する減衰力制御カル マンフィルタを用いたロール・ピッチ同期化制御,自動車技 術会論文集,9RO1RS    酒井英樹:自動車の平面運動におけるヨー角速度進み時 定数についての力学的考察,日本機械学会論文集 & 編, 巻  号,S  .  風間恵介,孕石泰丈,毛利宏,吉松祐香,鈴木卓馬,上 沼研也:ドライバ操舵に対する車両挙動の位相遅れと高周波 ゲインが運転しやすさに及ぼす影響,日本機械学会論文集(C 編) 巻  号,S()  森和典,江口孝彰,金子敏志,川越健次,入江南海雄:後 輪の位相反転制御による操縦安定性の向上 -683(5 +,&$6, 自動車技術会学術講演会前刷集 1R,S()  山本真規,原田宏,松尾芳明:後輪のアクティブ操舵に よる操舵応答性・外乱安定性の向上(車両運動のアクティブ

(6)

制御に関する研究第  報),自動車技術会学術講演会前刷集 1R,S()  酒井英樹:フォースコントロールにおける安定性とその 指標,自動車技術会論文集,9RO1RS    記号および計算諸元 m 車両質量>NJ@         >NJ@) l ホイルベース>P@       >P@ lf 前軸~重心間距離>P@       >P@ lr 重心~後軸間距離>P@ >P@ Iz ヨー慣性モーメント >NJP@ Izmlflr  V 車速>PV@     >PV@  Kf 前 輪 コ ー ナ リ ン グ パ ワ  >1UDG@         >N 1UDG@ Kr 後輪コーナリングパワ>1UDG@ >N1UDG@  b トレッド>P@       >P@  g重力加速度>PV@ >PV@  μタイヤと路面との摩擦係数>1RQGLPHQVLRQ@ >@  r ヨー角速度 >UDGV@    β 重心位置車体横すべり角 >UDG@ βf 前輪位置車体横すべり角>UDG@ βr 後輪位置車体横すべり角>UDG@ δ 舵角>UDG@    Ff 前輪コーナリングフォース 1  Fr 後輪コーナリングフォース 1 

重根ペアによる相互キャンセルを利用した平板の振動伝達パワーの低減

山崎 徹1) 堀内 崇史2) 須田 祥平3) 中村 弘毅4)

Reduction of Transmitted Power on a Plane by Using Mode Pair Cancellation

Toru Yamazaki Takashi Horiuchi Syohei Suda Hiroki Nakamura

Reduction of structure-borne sound is an important issue for industry mechanical products. This paper presents a new idea for controlling structural intensity (SI) on panel structure derived from a cancellation of SI due to mode pairs of multiple roots. At first the modal formulation of SI on a flat plate is summarized. Next we discuss the change of SI on a flat plate by attaching a reinforcement beam cross the plate in one direction. It is shown that this attachment give multiple natural frequencies, and their mode pairs and the pairs of modal components of SI are in same phase in the area of half of the plate and in anti-phase in that of the other half. Then the modes and modal components of SI can be said to be canceled by each modal pairs in the area of half on the plate. Based on this cancellation due to modal pairs, a new method for reducing transmitted power to a given area on the plate has been derived and proposed by attaching a beam on the plate for providing partial symmetry on the plate. It is demonstrated that the partial attachment of a beam on the plate based on the proposed method can reduce the transmitted power to the given area by the cancellation due to the pairs of SI modal components.

KEY WORDS: vibration, noise, and ride comfort, vehicle body, CAE simulation, Structural Intensity (B3) 1. は じ め に 機械構造物の固体音対策には,振動源,伝搬部および放射 部での対策が考えられる.最善策は,振動伝搬の最上流であ る振動源での対策であるが,振動源の各種変更は機械の性能 に直結するために困難な場合が多い.また,放射部での対策 は対策部位が広く,効率が良いとは言い難い.そこで著者ら は,次善策として伝搬部に着目し,構造物内の振動エネルギ ーの流れを表す振動インテンシティ(Structural Intensity;以下, SI)(1)を用いた研究に取り組み,SI を考慮した低振動・低騒音 機械構造設計手法の確立を目指している.従来の振動変位や 周波数応答関数に着目した手法に対し,SI はエネルギー伝搬 の観点からの検討であり,現象の理解,対策指針の獲得など に有利であると考えられる. SI に関しては,1990 年代に主として測定法について検討さ れ,その後,構造設計検討を意図した各種構造物のFEM によSI の算出(2),非破壊診断に利用しようなどの取り組み(3)が なされてきた.しかしながら著者らの知る限り,SI を積極的 に低振動化に用いようという報告は見られない.一方,著者 らは,一様はりや一様平板におけるSI のモード展開式を導出 した(4,5).またそれに基づき,伝達パワーの促進と抑制による 固体音の低減コンセプトを提案し,数値シミュレーションと 実験により有効性を確認した(6).SI の制御は,SI のモード展 開式より,加振条件や構造の変更が考えられ,文献(6)では加 振条件の変更として加振位置を変更(7)することでコンセプト の検証を行った.しかし加振点の変更は困難な場合が多く, 構造の変更によるSI の制御が望まれる. そこで本報では,構造変更によるSI の制御法の確立を目指 した検討の第一歩として,補強材の付加によってSI を制御(伝 達パワーを抑制)する基礎検討を行ったことを報告する.本 報での対象構造物は,周辺単純支持された一様平板で,補強 材ははりとする.はじめに,平板を左右に二分するように補 強材を付加した場合を検討する.この場合,平板は補強材に より左右で対称な構造となり,固有値には重根が含まれ,そ の固有モードペア(以下,重根ペアと称す)は半分のエリア それぞれで同相と逆相となる.応答算出時にはこれらが重ね 合され,半分のエリアで打ち消し合いが生じる.またSI にお いても,変位と同様に重根ペアにより半分のエリアで打ち消 し合いが生じることを示す.次いで,重根ペアによる打ち消 し合いをアイデアとして,平板の一部に対称性を付与するよ うに補強材を付加することでSI を減少,すなわち伝達パワー

―――――――――――――――――――――――――――― *2014 年 10 月 22 日受理.2014 年 10 月 22 日自動車技術会秋季学 術講演会において発表. 1)・4)神奈川大学(221-8686 横浜市神奈川区六角橋 3-27-1) 2)ヤマシンフィルタ(株)(231-0062 横浜市中区桜木町 1-1-8 日石横浜ビル 16F) 3)日本イーエスアイ(株)(160-0023 新宿区西新宿 6-14-1 新 宿グリーンタワービル 16F)

Fig. 4 Definition of position X and β x

参照

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