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身体運動における筋力, 筋パワーの推定, 評価に関する研究

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(1)

身体運動における筋力,筋パワーの推定,評価に関する研究

加 藤 厚 生 掌 三 田 勝 己 柿 赤 滝 久 美H 鈴木伸治山 野中審子f 伊東保志廿添田敏視附 *愛知工業大学電子工学科 **愛知県心身障害者コロニ一発達障害研究所 ***伊豆医療福祉センター 十名古屋市立保育短期大学(現名古屋市立大学) 竹鈴鹿医療科学技術大学附セノー(株) τ'he purpose of the present investigation is to develop an estimation method of the isometric maximum

凶ength企omthe Hill's characteristic equation, soωlled the P-V Curve.τ'he method is refen吋toas th巴

Maximum Correlation Method(MCM).官lealgorism of the estimation is bas吋ondetermination of白E

isome位icmaximum strength with the largest∞ 汀elationeffiCI巴ntinth巴 ∞ord加atesystem in which the HiU's characteristic equation is国lSferredandlin聞 包:ed.τ'hevalidity of出巴me血odwas

nfirmedby a statical simulation.Inpractical applicatioD

more白 血sevenpoints of measured da包werefound to be neαssaryfor b出erestimation of the isome位icmaximum s位ength. 1.はじめに 等 尺 性 最 大 筋 力 (Maximum Voluntary Contraction; MVC)は静的な状態で最大に発揮で きる筋力をいう.乙のMVCは筋収縮能力を評価 したり,トレーニング強度を決める指標として広 く使われている.さらに, MVCの測定は比較的 容易であり,複雑な解析を必要としないという簡 便さも特徴である.しかしながら, MVCを測定 する際に極めて大きな力を持続するために筋や 鍵に損傷を与えたり,骨折などによる傷害がある 場合に正確なMVCを測定するのが難しいといっ た問題がある.つまり, MVCは筋力の指標とし て重要であるにも関わらず,測定時に発生する 種々の問題点を持っている.そこで,本研究では 動的な筋力から静的な最大筋力MVCを推定する 方法を提案することにした. A V.Hill(1938Y)はカエルの筋で力学特性を測 定し,負荷と短縮速度の関係 (p-Vカーブ)が双 曲線関数で表現できることを明らかにした.金子 勾はヒトの肘関節屈曲動作において双曲線関係が 成り立つことを示すとともに,これを直線関係に 変換することによって Hillの特性方程式を推定 する方法を提案した.しかし,この方法はMVC を既知として特性方程式に含まれる 2つの定数 (熱定数,エネルギー遊離速度)を求めようとし たものである.若山ら勾は3点の動的筋力の測定 値からHillの特性方程式を求めている.この方法 は 3つの測定値から特性方程式の 3つの未知数 (MVC,熱定数,エネルギー遊離速度)を推定 するのに相当し,測定誤差が直接推定精度に影響 するという欠点をもっ.このように,現在,動的 筋力からMVCを推定する有効な方法はみられな

い.

本研究では,動的筋力からMVCを推定する方 法 と し て 最 大 相 関 法 (Maximum CorrelatioD Method; MCM)なる方法を提案する.そして,シ ミュレーションによりその妥当性を明らかにし, 実用化をめざして測定点数についても検討する.

2

.

理論(最大相関法)

2

.

1

運動速度と筋力,筋パワーの記述 本研究はヒトを対象とするため,関節の回転運 動で記述し,

F

を筋力(筋トルク) ,

V

を関節の 角速度とする.この場合の筋力と速度の関係を “F-Vカーブ"と呼ぶことにする. 等尺性最大筋力Fmをもち, F-Vカーブから取り 出した標本値を (Vt

Ft) (i=l

.

・・

n)とすると

(2)

となる.ただし

aは熱定数

bはエネルギー遊 離速度定数である.また,筋パワーpはFとVの 積をとって, となる.最大筋パワーPoは式(2)を最大にする値で

2

.

2

パラメータ推定法

F-V

カーブに含まれるパラメータを推定する にあたり,

F

とVが双線形関係にあることから, 推定には非線形最適化法を利用する.この方法の 適用に先立ちパラメータの初期値を以下の手順 関係式は, (1う+a)(

+b)= b(

+a) (1) 耳=

J

f

(

b

f

f

)

g V H C H Fo Angular Vel∞iザ あり,このときの筋力および速度を

F

o

凡で表す.

F

o

=

a

(

J

=

b

(

J

)

(4)

)

(2) このように,

P

O,

F

o

, V。は等尺性最大筋力j

F

m

と 定数 a,bによって規定できる(図1) 同 ω 注白血 にしたがって決定する. まず,式(1)を書き直すと, F_-E 耳=b」 74-a (6) 図1 動的な筋運動における筋力および筋パ ワーと運動速度との関係 となり,

(

(

F

m

-Fj)/V

j

F

,) は傾斜

b

,切片4を もっ直線とみることができる. !ここで,速度

V

iにおいて実測された筋力

F

J

(

A

)

Fm'<Fm

Fm Fm' 民 白日 r=乱76

(

B

)

Fm'三 且

(

c

)

Fm'

E

恩 Fm Fm' Fm

V

r=1.00 r巴 仇95

Frn' -F V 図2 誤差をもっ等尺性最大筋力 (Fm')に対する筋力と運動速度との関係

(3)

考える.これは被験者の生理的あるいは心理的な 状態によって本来持っている筋力より !!.F(だけ 隔たった値を示すことを考慮した.なお,!!.F(の 期待値はゼロとする. 耳'=

F

;

+!!.耳 E[

!

!

.

F

;

]

= 0

(

η

(8) さらに

(Vp F/) (i=l

• • •

n)から推定した等 尺性最大筋力をFm'とし,これが真値Fmに対し !!'Fmの誤差をもっとする. 4,'=凡+!!.凡 (9) そこで,

ι

"

(Vj> F/)に関する阻11の特性 方程式を考えると, (10) あるいは, F.. -R . sF . M: E =b:::"且~-a+b ...m_bニニム+ M

. 巧

y

; .

;

y

(11) ここで,式(11)の両辺について期待値を考えると, (1

となる.式(1勾は実測値から等尺性最大筋力が正 しく推定できれば,つまり, 4 '=4,の場合には,, 式(6)と同じ直線関係が得られることを意味する (図2).一方,Fm'弓1:4,の場合には,右辺第3 項の影響で湾曲することになる.そして,実測デ ータはこの直線あるいは曲線の周りに位置する. いま, ((ι'

一円

/ V

F)平面において,実測 値の相関係数を求めると,

ι

'

=

ι

の時に最大に なる.逆に,この平面上における相関係数が最大 になるような 41を推定すれば,それが MVCの 最適推定値となる.こうした意味を含めて,本方 法を最大相関法と呼ぶ. これらを初期値として非線形最適化法を適用 し,得られた結果をパラメータの最適推定値とす る.本研究では非線形最適化法としてシンプレッ クス法4,5)を用いた.評価関数Jはトルク誤差を最 小にするように設定した.

J

E

S

(

b

:

:

-

a

)

]

(13)

3

.

シミュレーションによる推定精度の検討

3

.

1 方法

最大相関法の妥当性をシミュレーションによ り検討した.シミュレーションに用いた乱数は正 規分布型句とした.母集団である正規分布の標準 備差は思の1'""'5%とした.この母集団の性質を 保つように,測定点100,試行数 100の計 10,000 点をサンプルとして取り出した.推定精度は記述 統計量により検討した. シミュレーションでは,成人男子の膝関節伸展 動作における筋収縮を想定し, Hillの特性方程式 に現れる3つのパラメータの設定をおこなった. つまり, MVCである

ι

は,従来の報告7,8)をみる と20"'30kgf'mであり,ここでは25kgf'mとした. パラメータa,bは最大伸展速度の測定結果が約 1,000deglsであることを考慮して , a=7.5, b=300 とした.速度範囲は0'""'500deglsに設定した.

3

.

2

推定結果 図3は正規乱数の標準備差に対するパラメー タの推定精度および F-Vカーブの残差 Reの変化 をみたものである.正規乱数の標準偏差が増加に 伴い,各推定値ともに誤差が増大する傾向を示し た.Fmの誤差は0.4'""'2.1%, p,。は 0.2""1.0%

F。, は若干大きく1.1'""'5.2%であった.一方,パラメー タaの推定精度は4.8'""'24.2%,bについては

2

.

8

'""'14.4%となり,Fm> Po' F。よりおおむね, 1桁大 きな誤差を含んでいた.一方, F-Vカーブの残差 R巴は 0.1'""'0.6%とごくわずかであり,速度範囲 0 '""'500deglsであれば真の F-Vカーブと良く一致し たことになる.

(4)

Fm

α

b

5 30 30 4 3

I

20 ~ 覇

I

20 21

(

1 爾 随I10ト 蝿 鴎 圏 自 国I10 凶 。 』 醐 醐 醐 醐 醐1 01闘 闘 関 醐 醐E O

E

1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 官 官 Z

E

p

o

F

o

Re

1 1 0 2.5 41- I 8 2.0 31- I 6 1.5 21- I 4 1.0 2 0.5 o'闘 醐 醐 醐 棚 目 。 0.0 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 S.D. of Population (%MVC) 図3 正規乱数を用いたシミュレーションによっ て推定したパラメータ値の推定結果

4

.

標本数に関する検討

4

.

1

方法 実際の測定状況を考えると上記で行った標本 数100点では多すぎる.ここでは,実用性を配慮 して推定に必要となる最小限度の測定点数の検 討をおこなうことにする, 標本点数は10,7, 5点の 3種類について検討 した.乱数は正規分布型とし,測定の状況を考慮 して母集団の標準偏差を1"""'5%MVCの5種類と した.また,試行数は100回とした.

4

.

2

推定結果 各値の推定誤差は標本点数の増大につれて小 さくなり,各標本点数内では正規乱数の標準偏差 の培加に伴って増加する傾向を認めた(表 1) . 個別にみると

P。が最も精度良く推定されており,

標本数が5点,乱数の標準備差が5%の場合でも 推定誤差は 5%であった • Fmの目標推定誤差をお おむね10%以下と設定してみると,標本数5点に 対して乱数の標準偏差が 1%以下の時, 7点では 3%以下, 10点では5%以下の時であった.また, F。に関しては,標本数5点に対して乱数の標準備 差が1%以下の時,7点では2%以下, 10点では3% 以下の時であったE 定数a

bの推定誤差は Fm' PO, Foのそれに比べて5'"'-'10倍となった.しかし, F-Vカーブの残差Reは最も厳しい条件下でもお おむね 6%以下と少なかった.

5

園考察

5

.

1

パラメータ推定法の併用 本研究で注目した F午カーブを含め非線形関 数のパラメータ推定にはシンプレックス法など 非線形最適化法がしばしば適用される.この方法 では一定のルールにしたがって評価関数を最小 にするパラメータを探索していくが,初期値の影 響を受けやすく,局所的な極小点に落ち込むこと も多い.そのため,あらかじめ初期値をなるべく 真値の近傍に設定することが望ましいとされて いる4),しかし, F-Vカーブの場合には初期値を 設定するための確固たる規範がなく,経験的な値 に頼らざるを得ない, 本研究では初期値設定の手がかりを金子の方 法に見いだした.すなわち,彼の方法は,Fm (等 尺性最大筋力)を実測値でおき, F-Vカーブを式 (めのように変形すれば切片 -aと傾斜 :bをもっ 直線で表現できることに基盤を置くものである. この方法は凡の実測値が真値に等しいことを前 提とするが,実際には随意収縮であるから筋力発 揮にばらつきが生じることや測定誤差が含まれ るため,推定された定数。., bの値はその影響を 大きく受ける.事実,Fmの値によってはa,bの 推定が困難であったとの報告がみられ,我々の追 試でも本来プラスであるべきι,bが時としてマ イナスになることを経験した.しかし,彼はその 原因にまでは言及していない.この誤推定は凡 の実測{直に含まれる誤差に起因することは式(11) で示したように明らかである.

(5)

の値に相当すること,これらが標本の分布域を大 きく越えた位置にあるためであると考えられる. 例えばaの場合,速度を無限大 (V→∞)にした 時の筋力Fの{直に対応する.しかし,実用上の速 度範囲 (O~

5

0

0

d

e

g

!

s)において推定された

F

-

V

カーブの残差Reは高々1%以下であった.この結 果はこの速度域での F・

v

カーブの近似,つまり, 内挿が極めて良好にできたことを証明するもの である.さらに,最大筋パワーP。の推定誤差は 1%以下,その時の筋力 F。は5%以下であったこと もこれを支持するものである. 次に,この方法を実際に利用することを考え, 測定値(標本値)の必要最少数について考察する. 一般に,測定値に含まれる誤差が少ないほど,ま た,測定数が多いほど推定精度は高い.そこでま ず,測定値に含まれる誤差の問題を本実験データ から考える.実験結果によれば,動的筋力の実測 値とこれに対応する

F

-

V

カーブの値との差はFm の約2%であった.本シミュレーションでは測定 こうした先行研究を踏まえ,本研究では,

F

-

V

カーブの3つのパラメータ全てを未知とし,式

(

1

0

)

の変換をした値 ((Fm-F;)/V;.F;)が直線の周 りに分布するような凡を探索し,その後,回帰 直線からa,bを決定する方法を提案した.なお, ここまでの手順によっても Fm> a, bの推定値は 一郎得られるが,その精度を予備的に検討した結 果,実用上充分な精度を保障できなかった.そこ で,ここで求めたパラメータ値を初期値とし,非 線形最適化法を併用したのである.

5

.

2

推定精度の検討 本推定法の妥当性を正規乱数によるシミュ レーションによって検討した結果,標本数が充分 に得られ,その標本値に含まれる誤差の標準偏差 がFmの5%以下であれば,Fmの推定誤差2%以下 という高い精度を確認できた.一方, α,bの推定 精度は Fm に比べて 5~ 1O倍低下した.その理由 は,a, bが双曲線開数である

F

-

V

カーブの漸近線 標本点数に対する推定した筋力の評価指標値の標準誤差 表1 Normaliz巴dRMSE Fm PO (%) (%) No. of S.D.of samples population (%MVC) b (%) a (%) Re (%MVC) Fo (%) 29.3 70目6 97.0 101.8 110.1 38.6 90.4 124.6 136.7 148.3 1.5 2.9 4.1 5.2 6.2

5

.

1

10.4 12.3 14.0 15.5 1.4 2.8 3.7 4.3

5

.

0

6.5 12.7 19.8 24.4 31.0 t A 今 r u 内 コ A 帥 1 ζ J 5 18.1 38.7 60.5 73.0 87.0 26.0 54.4 84.1 102.0 123.4 0.9 1.7 2.5 3.3 4.1 4.7 8.8 11.4 13.1 14.8 0.9 1.9 2.8 3.6 4.2 3.6 6.9

1

0

.3 15.0 18.7 - E A 勺 l u q J A 品 1 q u 7 12.4 25.1 41.5 52.3 67.0 18.7 38.3 60.6 75.2 97.4 0.6 1.2 1.7 2.2 2.8 3.7 7.2 9.5 11.7 13.2 0.7 1.4 2.3 3.0 3.6 2.3 4.4 6.5 8.5 10.1 寸 よ 勺 JM434 白 ぐ J

1

0

RMSE : root mean square of巴rror MVC : maximum voluntary contractio日

(6)

値に含まれる誤差として5%までを検討対象とし ており,その検討範囲の妥当性を確認させるとこ ろである.次に,上記を考慮して測定値に含まれ る誤差を

F

m

の3%と想定し,測定標本数と筋力指 標の推定精度との関連を考える.いま標本数7点 を想定すると,

F

m

:

10.3%,

P

o

:

2.8%,

F

o

:

11.4% とおおむね10%以下の精度で3つの筋力指標の値 を推定できた.一方,標本数5点まで減らすと

F

m

の推定値に疑義が生じる.このことから,本推定 法を利用する際には 7点以上の測定数が必要で あると提案したい.

6

園要約 本研究では,筋力と速度に関するHi1lの特性方 程式を推定し,これを手がかりに等尺性最大筋力 や最大筋パワーといった筋力指標を求める方法 を提案することを目的とした.推定は以下の手順 で、行った:1)特性方程式を線形化する, 2)測定 した動的筋力と速度を用いて,相関係数が最も大 きい回帰直線を与える等尺性最大筋力を推定す る, 3) 特性方程式の熱定数とエネルギー遊離速 度定数を決定する(それは回帰直線のY切片と傾 斜から求められる) .さらに,精度の改善を図る ために,非線形最適化法を適用した,こうした意 味合いから,本法を最大相関法と名付けたa 正規 乱数母集団からの多数の標本 (10,000点)を使っ て統計的なシミュレーションを行い,本推定法の 理論的妥当性を確認した.統計的シミュレーショ ンより,筋力指標を 10%以下の誤差で推定する 上での最小標本数は7標本であることが示唆さ れた.本最大相関法はヒトの動的運動を研究する ための有用な手段になるものと考える. 謝辞 本研究の一部は「愛知工業大学総合技術研究所 公募プロジェクト」によって行われた. 参考文献 1 勾) A c

onst阻a叩nt岱S0ぱfmuscle

Proc. Roy. Soc勺 B126

136/195(1938) 2) 金子公宥:筋力と筋パワー,身体運動の生理 学,猪飼道夫編,28/53,杏林書院,東京(1973) 3) 若山章信ほか:競技レベルからみた競輪選手 の非乳酸性パワー発揮特性,スポーツ医・科 学, 6・2,31/37(1992) 4) 南 茂夫編:科学計測のための波形データ処 理, C Q出版,東京 (1986) 5) J.A.Nelder and R地 ad:A simpl巴xfor function minimization, Computer Journal, 7, 308/313 (1965) 6) 浪平博人:データ構造とアルゴリズム, 116/121, C Q出版,東京(1991) 7) 福永哲夫,金久博昭:日本人の体肢組成,朝 倉書居,東京 (1990) 8) 川初清典:膝関節伸展における力一速度関係 の加齢に伴う推移,体育学研究, 22, 65/69 (1977) (受理平成11年3月20日)

参照

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