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徒手理学療法

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徒手理学療法 263

はじめに

 対象者に対する最適な医療を提供するための具体的な 行動や判断基準を示した臨床実践的手法(EBM)が注 目され,その概念が理解される潮流に沿い,理学療法の 分野においても科学的根拠に基づいた理学療法(以下, EBPT)確立の動きが活発である。曖昧な経験や直感に 頼らず,科学的エビデンス(証拠)に基づいて最適な医 療・治療を選択し,実践するための方法論として診療 ガイドライン(clinical practice guideline:以下,CPG) がある。CPG は医療現場において適切な診断と治療を 補助することを目的として,疾患の予防・評価・介入・ 予後予測の根拠や手順についての最新情報を専門家の手 で整理された指針である1)。その意味で,CPG は系統 的検討分析(systematic review:以下,SR)やランダ ム化比較対照試験(randomized controlled trial:以下, RCT)など科学的根拠とする研究論文を吟味・評価し, その結果に基づいてどんな治療をすべきか,すべきでな いかを勧告する。  公益社団法人日本理学療法士協会では,2011 年に理 学療法診療ガイドライン第 1 版2)(以下,「理学 CPG1」) を発刊し,EBPT の実践に向けた具体的な取り組みを 開始した。医療専門職としての責務遂行と自律的実践に 対する科学的根拠に基づいた理学療法の推進への扉が開 かれたといえる。「理学 CPG1」では,理学療法のおも な対象疾患(14 疾患)と 2 領域(徒手的理学療法,地 域理学療法)に対するガイドラインが取り上げられてい る。今後の改定,版を重ねるなかで,順次疾患が加わる ものと考える。  本稿では,「理学 CPG1」に掲載されている徒手的理 学療法(日本理学療法士学会徒手理学療法部門で,徒手 理学療法 manual physical therapy:MPT が正式名称で

あり,以下,MPT)を読み解くヒントを,5 つの設問 に対する解説で展開する。  Q1 「理学 CPG1」における MPT の位置づけは?  この設問に対しては,MPT の基本的概念を確認す る必要がある。近年,MPT とマッサージ手技との違 い,区別化の必要性が強調され,MPT の基本的概念 を再確認する意味で述べる。WCPT(世界理学療法連 盟)のサブグループで MPT を牽引している組織である International Federation of Orthopaedic Manipulative Physical Therapists(国際整形徒手理学療法士連盟 : 以 下,IFOMPT)で記されている MPT の定義は次の 2 文 である3)。① MPT は,クリニカルリーズニングに基づ き,運動療法を含む徒手的治療技術を用いて,神経・筋 骨格系のコンディションをマネージメントする理学療法 の専門分野である。② MPT は,科学的・臨床的に有効 なエビデンスと,対象者における生物心理社会的な背景 を十分に考慮し包括的に実施する。定義では,臨床治療 実践におけるクリニカルリーズニング能力とエビデンス 推進が MPT の 2 大キーワードである。  MPT は,セラピストの手(hand)を用いた直接的理 学療法手技の総称であり運動療法に包含される。広義で は徒手的関節可動治療,徒手的伸張運動,徒手抵抗運動, 治療マッサージ,PNF 手技,動作介助やハンドリング もこの範疇に含まれる。狭義には,生理学的運動範囲内 で柔和な外力を用いるモビライゼーション,運動可動最 終域で急激な外力を適用するマニピュレーション,局所 安定作用筋の機能賦活を目標としたスタビライゼーショ ン,神経系による運動制御を図るモーターコントロール が代表的な手技である。モビライゼーションは MPT の 一治療手技であり,治療対象組織により筋モビライゼー ション,神経モビライゼーション,軟部組織モビライ ゼーションなどの方法がある。関節モビライゼーション は,滑膜性関節の関節包内運動制限に対する代表的なモ ビライゼーション手技である(図 1)。  私見を追記すると,MPT は,前述した手技分類のほ

シリーズ 「エビデンスに基づく理学療法 ―理学療法診療ガイドラインを読み解く―」

連載第 16 回 

徒手理学療法

板 場 英 行

1) 理学療法学 第 43 巻第 3 号 263 ∼ 272 頁(2016 年) *

Manual Physical Therapy 1) のぞみ整形外科クリニック

(〒 739‒0021 広島県東広島市西条町助実 1182‒1) Hideyuki Itaba, PT: Nozomi Orthopaedic Clinic

キーワード:徒手理学療法,理学療法診療ガイドライン,エビデンス

講  座

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か,対象分野・領域の観点から多様に分類される(図 2)。MPT の適用に際しては,対象とする身体部位(四 肢,脊柱)(図 2A)や疾患(骨関節系疾患,神経系疾患, 変性疾患など)(図 2B),障害を呈する組織(関節,筋, 神経,結合組織など)(図 2C),機能障害(疼痛,可動 制限,筋力低下など)(図 2D)など様々な観点から問題 を捉え,適用する治療手技(モビライゼーション,スト レッチング,スタビライゼーションなど)(図 2E)を決 定する。なお,これらの治療手技の背景には多くの理論 体系(図 2F)がある。必然的に,対象者の医学的診断 が確定した疾患に発現する諸障害に対する徒手的評価と 治療は多分野多領域にわたる。  「理学 CPG1」では,四肢,脊柱の骨関節系疾患に対 する運動機能障害を主体として徒手的評価と治療介入の 図 1 理学療法における徒手理学療法 MPT の位置 徒手理学療法(MPT)は,三大理学療法(運動療法,物理療法,生活動作療法)の中で, 運動療法の一型として位置づけられ,セラピストの徒手を用いた身体組織の正常機能回復 を目的とした手技である.一般的に流布しているモビライゼーションは,MPT の一治療 手技であり,対象組織により治療体系が異なる.関節モビライゼーションは,関節包内運 動制限に対する MPT である.

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MPT: manual physical therapy OMT: orthopaedic manual therapyᩚᙧእ⛉ᚐᡭ⒪ἲ

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図 2 徒手理学療法 MPT の多様性

徒手理学療法(MPT)は,対象者の身体部位(A)診断疾患(B)に限らず,障害を呈す る関与組織(C)により,適用する治療手技(D)が異なる.世界的には,多くの MPT 手 技(E)が発表され,その理論(F)も各権威者により体系づけられる.

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徒手理学療法 265 エビデンスを検索した。同一診断であっても病態,徴候, 評価,治療の内容が検索論文により異なり,エビデンス レベルと推奨グレードの決定・判断に難渋した。その意 味で,MPT は理学療法の対象疾患に対する「診療ガイ ドライン」よりも組織障害に対する評価と治療介入手技 を探求する「手技ガイドライン」という視点が妥当と考 える。  Q2  理学療法評価における徒手的評価のエビデンス は?  「理学 CPG1」に記した理学療法評価に関する推奨グ レードは,「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2007 年」4)を参考に,評価の信頼性と妥当性の観点から 3 段 階とした。推奨グレード A は信頼性,妥当性がある, グレード B は信頼性,妥当性が一部ある,グレード C は信頼性,妥当性は不明であるが一般的に認められてい るという基準である。理学療法評価の信頼性と妥当性 は,各評価の感度や特異度などによる正確性と評価内・ 評価者間における信頼性を検証する。その結果指標は 級内相関係数やカッパ係数で表わされる。「理学 CPG1」 に記した MPT 評価の推奨グレードは,各部位・疾患 ともに B 段階(信頼性,妥当性が一部ある)であった。 この推奨グレードは疾患別徒手的評価を総括的に捉えた 結果であり,評価項目による推奨グレードを検索する必 要がある。  「理学 CPG1・MPT」で記載されている疾患から四肢, 体幹の代表疾患(変形性膝関節症,腰部脊柱管狭窄症, 神経根性頸椎症)における MPT 評価を検討した。3 疾 患ともに,問診を中心としたスクリーニング評価がグ レード A である。視診と触診を含めた三診は,理学療 法士が高レベルで有するべき臨床的スキルである。理学 療法士が行う整形外科的テストの信頼性,特異性,妥当 性については成書5)に報告されている。  変形性膝関節症では,下肢アライメント評価,膝関節 可動検査,下肢筋力の徒手的評価が推奨グレード A で ある。ストレステストでは,外側スラストテストが推奨 され,膝靭帯損傷や半月板障害との鑑別,優位性が見ら れる6‒9)。  腰部脊柱管狭窄症の徒手的評価では,体幹伸展時疼 痛,SLR 陰性,腱反射低下,足関節上腕血圧比正常が 診断の補助となる10‒13)。  神経根性頸椎症では,疼痛評価と臨床症状の発現,増 悪,消退を評価する徒手検査の推奨グレードが高く,ア ライメント評価,可動性評価が B レベルである14‒18)(表 1)。表 1 の結果は,疾患ごとの評価の優位性や順位性を 知るうえで参考となる。また,臨床症状,対象者の特性, 発症からの時間的経過などにより,どの評価が重要で優 先的に行うかを理解するうえでの指標となる。 表 1 疾患別徒手理学療法評価推奨グレード 変形性膝関節症6‒9) 腰部脊柱管狭窄症10‒13) 神経根性頸椎症14‒18) 推奨グレード A 問診 問診 / 視診 問診   運動時疼痛評価 評価スケール スクリーニング   下肢アライメント評価  ・疼痛評価(体幹前後屈) 疼痛評価 VAS   WOMAC  ・SLR 徒手検査:   膝関節可動検査  ・腱反射(PTR,ATR)  ・Spurling テスト   徒手筋力評価  ・足関節上腕血圧比  ・上肢神経緊張テスト 徒手筋力評価  ・頸椎牽引テスト 推奨グレード B 外側スラストテスト 間欠跛行評価スケール 徒手筋力評価   膝蓋大 関節副運動検査  ・SPWT 頸椎可動検査 SF-36  ・トレッドミル歩行評価 頸椎副運動評価   疼痛評価(体幹側屈評価) 姿勢評価   姿勢評価 頸椎アライメント評価   ODI 推奨グレード C 膝関節弛緩性評価 腰椎可動検査   内外反スラストテスト 腰椎副運動評価   前方引き出しテスト 腰椎アライメント評価 WOMAC: Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index SF-36: Short Form 36 Item Health Survey

SPWT: Self ‒Paced Walking Test ODI: Oswestry Disability Index

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 徒手的評価を総括すると,「理学療法診断学」が確立 していない現状では,「理学 CPG1」に記された基準は, 病態,臨床徴候の把握よりも,治療実施上のリスク回避, 禁忌状態確認の意味合いが強いといえる。  Q3  MPT 介入のエビデンスは明確に指摘されていま すか?   理 学 療 法 介 入 の エ ビ デ ン ス レ ベ ル は, 評 価 同 様 「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2007 年」4)を参 考に,臨床研究エビデンスレベルの高い順から 6 段階で 表記した(図 3A)。MPT 治療介入推奨グレードは科学 的根拠がある(A,B),科学的根拠がない(C1,C2), 無効性や害の恐れがある(D)の 5 段階で分類した。「理 学 CPG1」では,MPT の有効性として,身体部位別の 代表的対象疾患に対する MPT 介入のエビデンスレベル Ⅰ・Ⅱと推奨レベル A・B を基本的に記載した。  エビデンスレベルは検索論文を読むことで判断できる が,推奨グレードは発表者,論文により異なることがあ る。治療介入に関する推奨グレードは,エビデンスレベ ルに加え,エビデンスの数と結論のばらつき,臨床的有 効性,臨床上の適用性,および治療上の害や費用に関す るエビデンスを総合的に判断する。エビデンスレベルと 研究デザインには密接な関係があり,エビデンスレベル がⅠまたはⅡであっても,RCT 症例数が不十分であっ たり,特定領域主導型論文が中心で再検討が必要と判定 された場合は,「理学療法介入」の推奨グレードは一段 階下げて「B」となる。CPG や SR においても文献の結 果がすでにわかっているので後づけ解析であることに留 意する。また,CPG や SR は編集者や解析者のバイアス が入りやすく,その解釈には注意が必要である。ある一 定期間のエビデンス傾向を知るうえで CPG や SR は有 益であるが,検索設定期間より新しい研究には対応して いないことにも注意すべきである。特に,理学療法介入 の RCT 研究の質は時代とともに発展,向上し最新情報 の入手が必要である。  Q3 では,背部痛(腰痛)に対する MPT の有効性に ついて説明する。  「理学 CPG1」では,2000 年から 2010 年に報告された 腰椎機能障害に対する MPT のエビデンス論文を検索し た。対象疾患,罹患期間,治療介入内容,評価項目など の研究デザインが一定でないが,PEDro ポイント 4 点 以上の RCT 論文を中心に検討した。慢性腰痛例,症候 性の椎間板障害,再発性腰痛例,腰部脊柱管狭窄症に対 する治療介入のエビデンスレベルはすべて段階Ⅱであ SR: systematic review 系統的検討分析

RCT: randomized controlled trial ランダム化比較対照試験

図 3 臨床研究のエビデンスレベル─科学性と現実性のパラドックス─

臨床研究のエビデンスレベルは,高い順から 6 段階で分類される.「Minds 診療ガイドラ イン作成の手引き4)」と他のエビデンス階層を記載した文献で表記上に違いがある. 図 3A 内 に 付 記 し た レ ベ ル は, オ ー ス ト ラ リ ア の 専 門 研 究 機 関(National Health and Medical Research Council:NHMRC)19)のものである . これは,科学性を重視した一般的 なエビデンスレベルの正ピラミッドで,頂点が最高レベルである .

図 3B は,MPT を中心としたエビデンス臨床研究の現実をパラドックス(逆説)として表 記した.臨床実践をベースとした専門家の報告(セオリーレヴュー)を最上位として,臨 床症例の縦断的研究報告(シングルケーススタディ),複数症例対照の横断的研究(マルチ ケーススタディ)の蓄積と学問的追求が SR,RCT の基盤となる.

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徒手理学療法 267 る。推奨グレードは,慢性腰痛に対する MPT と腰痛に 対するマッサージがグレード A に対して,急性・亜急 性腰痛の MPT はグレード B である。構造力学的,非 特異的腰椎機能障害の MPT は,障害像が重複重度化し ない急性・亜急性期の有効性は高い20)。逆に,再発を 繰り返し障害の慢性重度化と椎間板や神経根などの明 確な組織障害例では MPT のエビデンスが低い21)。米 国22)で発刊されている腰痛管理ガイドラインには,「急 性腰痛と亜急性腰痛に対する MPT や包括的リハビリ テーションの有効性が指摘されているが,慢性腰痛に対 する各種治療では,第一選択として推奨できる有効性を もった治療手技は実証されていない」と述べられてい る。しかし,腰痛の MPT エビデンスを RCT 論文によ る系統的比較分析を行った Bronfort ら23)は,腰痛に 対する MPT を推奨グレード A 評価し,急性から亜急 性の短期間腰痛罹患例に対する MPT は疼痛軽減効果が 著明であり,慢性腰痛例においてもプラシーボに較べ有 効な治療手技であると述べている。  「理学 CPG1」に記述されている腰痛の MPT エビデ ンスは,以下の 6 点に要約される。 ① 急性腰痛に対する MPT は,物理療法や自動運動を含 む一般的理学療法よりも効果がある。 ② MPT を含む複合治療は,MPT 単独治療よりも疼痛 軽減や能力改善に有効である。 ③ 姿勢改善治療と MPT は,安静に較べ疼痛と可動性改 善に有効である。 ④ 頸椎から骨盤帯への全体的脊柱 MPT は,腰痛症状緩 和に効果がある。 ⑤ 急性腰痛に対する非侵襲治療介入では,関節モビライ ゼーションが推奨される。 ⑥ 脊柱安定化運動が腰痛の病期すべてにおいて,高いエ ビデンスレベルと推奨グレードが示されている(表 2)24‒26)。腰痛に対する脊柱安定化運動については Q4 で詳説する。  腰痛は身体的障害に社会心理的要素が加味し,エビデ ンスを「つくり」「つたえ」「つかう」という EBPT の 構築,実践の方向性に難渋する。多因子要素がかかわる 腰痛では,高いエビデンス階層である RCT や臨床的コ ホ−ト研究は難しく,縦断的症例検討,非系統的臨床観 察などの低エビデンス階層の検討に委ねられる。また, MPT と一般的運動療法を比較した結果は報告されてい るが,椎間関節モビライゼーションと脊椎分節スタビラ イゼーションの有効性比較など MPT の治療手技間にお ける検討は少ない。  腰痛に対する治療は,画一的・ステレオタイプ的治療 でなく,的確な障害評価と臨床推論を基本とした治療手 技の選択・決定が不可欠である。具体的には,腰椎椎間 関節の可動性低下に対する関節モビライゼーション,筋 短縮や腰部組織の過緊張状態では軟部組織モビライゼー ション(ストレッチング,リリース),末梢神経組織の ストレス加担や圧迫状態には神経の滑走改善を目的とし た神経系モビライゼーション,筋機能不全による局所不 安定を呈する場合には深層筋の機能賦活を目的としたス タビライゼーションが第一治療選択となる。また,日常 生活上の不良異常姿勢や再発を繰り返す症例に対しては 対象者への教育指導の徹底化が重要となり,疼痛という 認知障害に基づく脳機能や社会心理的要因へのアプロー チを考慮する必要がある。  Q4  「理学 CPG1」を用いて MPT のエビデンスを把 握し,活用する具体例を提示してください。  エビデンスを臨床活用するうえで 5 つのプロセスが ある27)。第一に自己の担当している症例に関する臨床 治療上の疑問(以下,クリニカルクエスチョン)を, PICO(P:Patient 対 象 者,I:Intervention 介 入,C: Comparison 比較,O:Outcome 結果)の 4 要素で具体 的に明確化する。第二にクリニカルクエスチョンをキー ワード化し,データベース検索で疑問の答えとなる適切 表 2 腰痛の徒手理学療法エビデンス(2000 年∼ 2010 年) エビデンスレベルⅠ エビデンスレベルⅡ 推奨グレードA 推奨グレードB 推奨グレードA 推奨グレードB 急性・亜急性腰痛 ・脊柱安定化運動24)  (急性期) ・脊柱安定化運動  (亜急性期) ・モビライゼーション ・マニピュレーション ・ストレッチング ・マッサージ ・複合治療 慢性腰痛 ・脊柱安定化運動25) ・ストレッチング26) ・モビライゼーション ・マニピュレーション ・一般的運動療法 ・マッサージ ・複合治療 ・ アクティブ リハビリテーション ・有酸素運動 ・マッケンジー運動

脊柱安定化運動:spinal stabilization exercise 複合治療:関節系,筋系,神経系の混合治療

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な文献を検索する。英語論文は MEDLINE,CINAHL, Embase,PEDro,Pub Med など,日本語論文は医学中 央雑誌,メディカルオンラインなどのデータベース(一 次情報)を活用する。第三に検索により得られた文献の 内容分析(critical appraisal,批判的吟味,批評的評価 とも訳される)を行う。医学研究では,研究計画から データ収集,解析,報告まで様々なバイアスが存在し, バイアスの有無を適切に評価したうえで,文献に記載さ れている研究結果をどれだけ信頼できるか(内的妥当 性),どれだけ他のケースに応用できるか(外的妥当性) を判断する最重要プロセスである。第四の手順で実際に 臨床応用できるかを自己判定する。手順 1 ∼ 3 で得られ た研究エビデンスを臨床における専門知識・技術と個々 の対象者の状態・状況,および価値観を考慮して臨床上 の意思決定を行う。最後に治療介入後における各プロセ スの効果判定を行う。  ここでは,腰痛に対する MPT で前述の治療介入エビ デンスレベルの高い脊柱安定化運動について説明する。  第 1 段階では,クリニカルクエスチョンを「慢性腰痛 症例(P)に,脊柱深層筋賦活の徒手的治療(I)を行う と,従来からの筋力増強を中心とした運動療法(C)に 比べ,治療効果(O)が得られるか?」のように明確に する。  第 2 段階の文献検索では,腰痛,脊柱安定化運動,疼 痛軽減効果をキーワードにて,2004 年以降に発表され た関連文献を検索する。  第 3 段階の論文内容分析では,検索論文のエッセンス を集約したアブストラクト・テーブルを作成する。テー ブル記載項目は研究デザイン,研究目的と対象,評価と 治療介入内容,結果と結論の必要事項を網羅する(表 3)。エビデンスレベルの高い RCT や SR 論文を吟味す ることが推奨されるが,MPT の治療手技の有効性を検 表 3 腰痛に対する脊柱安定化運動の治療エビデンス( 2004 年以降のアブストラクト・テーブル) 発表者 年 研究デザイン 研究目的 研究対象,方法 治療介入内容 比較検討内容 研究結果 結論 Rasmussen 28) 2004 RCT ・腰痛の SS と運動療法効果比較検討 ・47 名を SS 群と運動療法群の 2 群比較 ・深部筋賦活治療群,筋力強化 /ROM 治 療群 ・6 週間治療介入:疼痛,健康・機能状 態評価 ・疼痛軽減で SS 群が有意に効果あり ・腰痛に対する SS の有効性高い Whitman 29) 2004 CT ・セラピスト間臨床経験による効果検討 ・腰痛症例 131 名 SM と SS の実施比較 ・セラピストを 2 分し SM 群と SS 群に 治療 ・治療介入 1,4 週間後の ODI 検討 ・SM 群セラピスト間差あり,SS 群差なし ・標準的腰痛治療セラピスト間有効差なし Cairns 30) 2006 RCT ・再発性腰痛の SS と従来型治療比較 ・97 名を SS 群と従来型治療群に二分 ・SS:群体幹深部筋賦活, 対照群:一般的運動療法 ・腰痛強度 / 自立度指数 RMDQ:6,12 ヵ月後評価 ・疼痛軽減,自立度上昇両群同様変化 ・再発性腰痛に対する SS の有効性乏しい Goldby 31) 2006 RCT ・慢性腰痛の理学療法有効性検討 ・346 名を SS 群と一般的理学療法群 ・SS:深部筋賦活治療, 対照群:一般的運動療法 ・腰痛 /ADL/QOL:3,6,12,24 ヵ月 後評価 ・SS 群が一般的理学療法よりも有効 ・SS 治療と従来の徒手的治療併用治療 Rackwitz 24) 2006 SR ・腰痛に対する SS 治療の有効性検討 ・病期毎の SS 群と一般的治療群比較 ・SS:深部筋賦活, 一般的治療:徒手療法,患者教育 ・急性,亜急性,慢性腰痛対象者で両群 比較 ・SS 群が一般的治療よりも長期的有効 ・SS の有効性は急性,慢性腰痛 Ferreira 32) 2007 RCT ・慢性腰痛有効性の多施設間 RCT ・240 例を SS 群,SM 群,全身運動群 ・SS:深部筋賦活,SM:モビライゼーション, ・腰痛 / 機能的スケール:2,6,12 ヵ月 後評価 ・2 ヵ月:SS 群と SM 群が有意に改善 ・6,12 ヵ月後では有意差なし Filho 33) 2009 CR ・慢性腰痛症例の SSe 長期効果検討 ・15 年間腰部椎間板変性診断女性 ・SSe:腹横筋,多裂筋機能賦活治療 ・治療介入後の MPS,ODI 評価 ・介入 2 週疼痛 /ADL 改善,8 週最大回復 ・慢性腰痛の SSe 治療長期的有効性実証 Franca 26) 2013 RCT ・慢性腰痛症例の SS と MS の効果検討 ・SS 群,MS 群の 2 群比較 ・SS:腹横筋,多裂筋, MS:脊柱起立筋,ハムストリングス ・介入後の疼痛軽減,能力障害改善度評価 ・SS 群,MS 群ともに効果的 ・SS 群がすべての評価項目で有意改善 Haladay 34) 2013 SR ・慢性腰痛症例の特異的 SS 効果検討 ・MEDLINE,CINAHL,Embase, PEDro 検索 ・4 大検索サイトからの文献をスクリー ニング ・3 名のレヴュアーによる各 SR を数値化 ・665 論文を検索,8 項目の分析分類 ・慢性腰痛の SS 治療有効性実証論文多い Chang 35) 2015 SR ・慢性腰痛の SS による筋力向上検討 ・各 SS 治療介入の有効性を文献検索 ・検索サイトから関連文献を分析 ・4 種比較: バランス,全体 / 局所 SS, 運動制御 ・SS を中心とした深層筋賦活治療は有効 ・病態に応じた SS 治療実施を推奨

RCT:randomized controlled trial(ランダム化比較対照試験) CT:clinical trial(臨床試行) SR:systematic review(系統的検討分析) CR:case report(症例報告)

SS:spinal stabilization exercise(脊柱安定化運動) SSe:segmental stabilization exercise(脊椎分節安定化運動) SM:spinal manipulative treatment(脊柱徒手的治療) MS:muscle stretching exercise(筋伸張運動) ODI:Oswestry Disability Index

RMDQ:Roland Morris Disability Quetionaire MPS:multiple pain scale

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徒手理学療法 269 索するには CT(クリニカルトライヤル)や CS(ケー ススタデイ)が参考となる。慢性腰痛に対する脊柱安定 化運動は,筋力強化治療などの従来型の一般的運動療法 に比べ有効性が高い。  第 4 段階でアブストラクト・テーブルに記載された関 連文献を吟味し,クリニカルクエスチョン解決に向け臨 床応用を行ううえでの必要な知識と技術を整理し確認す る。脊柱安定化運動は,腹腔内圧の保持向上が基本であ るが,具体的な治療上のポイントはなにかを確認する。  第 5 段階では自己の担当症例に関し,意思決定した治 療介入を行い,その結果を評価,分析,内省する。  以下に,第 4 段階から第 5 段階における意思決定と治 療介入への臨床的思考のプロセス例を示す。  脊柱安定化運動は,外・内腹斜筋の筋活動により腹腔 内圧を上昇させる腹筋強化運動36)にはじまり,脊柱起 立筋と腹筋群収縮の関連性37),骨盤底筋と横隔膜賦活 による腹腔内圧増加38)などの報告により,腹腔内圧が 腰椎安定化に及ぼす有効性が定着した。1980 年代に重 量物挙上動作の力学的検討から,胸腰筋膜を中心とし た後部靭帯系に着目した筋力強化運動が提唱された39)。 その後,後部靭帯系の後部斜方向に加え,前部斜方向と 外側方向を加えた脊柱骨盤帯安定化機構運動が報告され た40)。超音波を活用した診断評価により,腰痛症例に おける腹横筋の収縮遅延41),神経根障害レベルに合致 した多裂筋の収縮抑制報告42)を背景として,腰痛症例 に対する体幹深層筋群の特異的運動療法の重要性が示唆 された。脊柱安定化運動は腹腔内圧理論にはじまり,後 部靭帯系理論や体幹深層筋制御理論が補完されてきた。 その変遷を通して,腰椎安定化,コア安定化,脊椎分節 的安定化が腰椎の不安定に起因した腰痛治療の主流とな り,脊柱安定化運動は慢性腰痛症に対する保存的療法の 中心的存在として位置づけられてきた。  しかし,近年の研究報告では,脊柱安定化運動は腰椎 モビライゼ―ションなどの徒手療法と有意差がない,腹 腔内圧増加と腰痛軽減には相関性は認められないなどの 批評的論文がある43)。また,腹腔内圧理論に対して腰 痛と関連の深い腰・骨盤痛を検討した報告では,過剰な 腹腔内圧は左右の寛骨を引き離す力が作用し,骨盤帯痛 の回復阻害要因となり腹腔内圧を減少させる生活活動上 の指導が重要とされている44)。慢性腰痛例に対して脊 柱安定化運動施行群と一般的運動療法施行群を比較検討 した英国での多施設間研究結果では,両群間での有意差 は認められなかった30)。また,慢性腰痛を無作為に脊 柱安定化運動群と脊柱徒手療法実施群で検討した 2 施設 研究結果では,改善率は安定化群が効果的であるが,群 間での有意差なしと報告されている31)。オーストラリ アでの多施設間 RCT では,治療開始 8 週後では脊柱安 定化運動と MPT が有意に改善したが,6,12 ヵ月後で は有意差なしと述べられている32)。腰痛は運動調節機 能異常により筋性安定化が不十分であり脊柱安定化運動 が推奨されるが,脊柱可動性が非対称,椎間板や神経根 など関連組織異常の関与は否定できず,対象者の仕事 や活動性を鑑みた機能的トレーニング(functional core training)を考慮すべきという方向性が指摘されてい る35)。  対象者の病態,臨床徴候を的確に評価判断する臨床推 論の能力とともに,最新の情報を探索するアンテナを活 用することが重要である。ガイドライン情報も 10 年経 過すると古くなっているという視点が大切である。  Q5 MPT のエビデンス構築に向けた現状と展望は?  MPT は運動機能障害に対する治療として,20 世紀の 半ばに学問的体系化がなされ,後半より臨床的諸問題に 対処する治療方略として諸理論と技術が紹介された。運 動時の疼痛や可動制限などの機能障害を呈する疾患(特 に整形外科系疾患)を主体とした治療アプローチのほ か,関節,筋肉,神経,軟部組織など治療の対象となる 組織に対する手技や,身体運動機能を局所的から全体的 に捉える考えなどがある。  「理学 CPG1・MPT」の臨床的エビデンス検索は,上 肢,下肢,脊柱の部位別疾患を検討した。臨床研究で もっともレベルの高いのは RCT であるが,MPT 領域 では対照群をプラシーボ的に設定することが難しく,一 般的理学療法や運動療法との介入比較となる。「理学 CPG1・MPT」に記載されているように,ほかの治療法 と比較した MPT のエビデンスは報告されているが,腰 椎モビライゼーションと脊柱安定化運動の効果比較のよ うな MPT 間の有効性を検討した RCT や SR は少ない。 前述したように,MPT の適用に際しては,対象とする 身体部位や疾患,障害を呈する組織,機能障害により手 技が異なる(図 2)。  したがって,「腰部脊柱管狭窄症例の体幹伸展運動時 疼痛に対する徒手的治療介入(関節モビライゼーショ ン,運動可動筋ストレッチング,局所安定作用筋スタビ ライゼーション,神経筋運動コントロール)の疼痛軽減 効果」例のように,部位別疾患にとどまらず,機能障害, 関与組織,治療介入による有効性検討が要求される。  以下に,MPT のエビデンス構築への展望と方向性を 述べる。 1:包囲障壁の払拭  エビデンスに基づいた臨床実践を推進するうえで払拭 すべき障壁がある。共通する障壁として,多忙な業務に 追われる時間的制約,文献検索へのアクセス制限,文献 吟味スキルの欠如が指摘される45)。  この背景には,研究(者)と臨床(家)の乖離,論 文 を 読 み 解 く 際 の 言 葉 の 壁, 批 評 的 思 考(critical

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thinking)への敬遠がある。研究法に精通した理学療法 士は大学での教育と研究が主体であり,臨床的な疑問を 自己認識し解決する機会が乏しい。また,日常の臨床業 務に追われている臨床家にとっては,臨床的疑問の証明 に没頭する時間的余裕はない。参考となる文献のほとん どが英語論文である現状では,英語で書かれた文章を読 み解く能力が要求される。上下関係や礼節を重んじる我 が国の国民性は,他人の報告や意見を批判する批評的思 考の考え方には,否定的イメージがつきまとう。MPT エビデンスの推進には,時間的制約,言葉の壁,国民性 の障壁払拭が優先される。 2:エビデンスパラドックス  臨床家は RCT で治療効果が証明された治療手技のみ に頼るべきでない。最前線で治療結果を問われる臨床を 行っている臨床家にとって,薬剤の治験結果から承認過 程を経るような RCT 立証まで対象者を待たせることは できない。日常的に広く用いられている MPT が RCT で証明されていないからといって片隅に追いやられるこ とは避けたい。RCT を実施する以前の段階として,エ ビデンスレベルが低い症例研究,症例シリーズ研究を的 確に行い,評価基準と治療プロトコルを定めることが大 切である。  MPT では,臨床家が受ける印象や経験を通して,臨 床的疑問や課題に対する仮説を立て,その仮説を立証 するというプロセスの蓄積が最重要である。RCT や SR 研究の基盤は,日々担当する臨床研究から広がるという 認識が必要である(図 3B)。 3:世界的動向に注目  世界的には,MPT に関する研究はきわめて高いレベ ルで行われている。関連文献の多くが,米国,英国,オー ストラリアで発信されたものである。疾患ごとの CPG においても定年的に改定発刊され最新情報が入手でき る。MEDLINE,CINAHL,Embase,PEDro,Pub Med などのオンライン検索により,最新の情報を読み 取ることが重要である。  2013 年 に 改 訂 さ れ た IFOMPT の 教 育 基 準46)( 表 4)では,臨床推論とともに研究エビデンスに関する 項目内容(項目 1,9)が追記された。技術偏重傾向 が強かった MPT 分野も国際的教育基準におけるエビ デ ン ス 重 視 が う か が え る。 ま た,10 項 目 の う ち 7 項 目 に「critical」 が 登 場 し て い る。 感 情 や 逸 話 に 頼 る ことなく,対象者の評価と治療を通した客観的事実 に基づいて判断・決定するという方向性が示されて いる。 4:先進的研究デザインの推進  MPT の各治療コンセプトと治療手技の堅実な確立に 向け,研究デザインを考慮したエビデンスと推奨グレー ドの高い RCT 研究推進が求められる。その実現には, 予算が確保された背景での大規模プロジェクト推進,多 施設間(できれば,国内外の施設を巻きこんだインター ナショナルレベルで)での共同的臨床症例研究などがあ る47)。その中で,MPT の単独治療から障害像に応じた 併用治療実施の効果,一時的効果から長期的効果持続へ の治療内容の検討,MPT の副次的効果検証などの臨床 研究成果に期待したい。 5:理学療法判断学の確立  理学療法の対象となる症例は,個別の障害と問題点を 呈し,EBPT の構築,確立,実践のプロセスには,多く の課題と問題点がある。MPT の EBPT 構築には,対象 症例に対する最良の理学療法を提供し,各々の課題,障 表 4 IFOMPT 教育基準(2013 年改定)46) 段階 1 批評的,評価的 EBP の活用実践 段階 2 OMT 領域での生物医学的知識の批評的活用実践 段階 3 OMT 領域での臨床科学的知識の批評的活用実践 段階 4 OMT 領域での行動科学的知識の批評的活用実践 段階 5 OMT 領域での包括的知識の批評的活用実践 段階 6 NMSD 症例に対する評価と治療の批評的高度 CRS 実践 段階 7 NMSD 症例に対する評価と治療の批評的高度 CS 実践 段階 8 NMSD 症例に対する評価と治療の高度 PS 実践 段階 9 研究過程の批評的理解と応用実践 段階 10 OMT 領域の専門技能発展への継続的教育実践

IFOMPT:International Federation of Orthopaedic Manipulative Physical Therapists 国際整形徒手理学療法連盟

EBP:evidence based practice 科学的根拠治療 OMT:Orthopaedic Manual Therapy 整形外科徒手療法

NMSD:neuromasculoskeletal system disorders 神経筋骨格系障害 CRS:clinical reasoning skills 臨床推論技術

CS:communication skills コミュニケーション技術 PS:practical skills 実際的技術

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徒手理学療法 271 害,問題に対して,その結果を謙虚に分析する行動と判 断が EBPT への推進力である。その意味で,日常の臨 床における個々の症例に対し,障害評価の質と評価結果 の分析・臨床推論力を高め,適切な臨床判断に基づいた 治療介入を行い,自己の治療帰結を真摯に考察する姿勢 が EBPT 構築への活力源となる。  EBPT 実践への確実な展開と方向性には,理学療法に おける専門的知識と技術の発展(サイエンスとアートと しての学際レベルの向上),科学的根拠に基づいた理学 療法を実践するうえでの「理学療法判断学」の臨床科学 的学問の確立,対象者の価値観や社会心理的背景を理解 する能力(叙述認知力)の涵養,向上,充実が最大の課 題である。  MPT のエビデンス構築は,運動機能障害治療を専門 とする理学療法士に課せられた重要な使命である。

おわりに

 医療経済学的視点から「根拠に基づいた医療」は, 今後さらに推進されることは無視できない方向性であ る。その意味で,「根拠のない理学療法」は保険対象外 (アメリカの現状)となる危険性を払拭できない現実が ある。CPG は,医療経済学を実行するうえで最大の威 力を発揮するツールである。ただ,理学療法の対象者 は,ヒトという生命体である。不確定要素の混在するヒ トの機能障害とその治療介入を統計学的数値で論議す るエビデンス至上主義は,相応の危険性を孕んでいる。 CPG は,100%の対象者に対応するスタンダードではな く,70 ∼ 95%の対象者をカバーするものである。各種 の CPG の活用に関し,関係者の主観的現実を背景とし た活用する側の認識が最重要である。 文  献

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図 2 徒手理学療法 MPT の多様性
図 3 臨床研究のエビデンスレベル─科学性と現実性のパラドックス─

参照

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