4 ─ 208 インプラント治療は予知性が高いことから,歯の欠損 補綴の第一選択肢と考えられるようになった.しかし, インプラント治療には種々の合併症があり,その中でも インプラト周囲炎が最も多く,その成因は単一のもので なく,宿主に関連する因子もあるが,インプラントシス テムに関連する因子も含め,様々な因子が複雑に絡み合 っていることから,治療に難渋するケースも多く,極度 に進行した場合にはインプラント撤去を余儀なくされ る.そのリカバリー処置としては,骨造成を含めたかな り高度なインプラント治療が必要となる.したがって, インプラント周囲炎は長期予後に最も関係することから, インプラントのオッセオインテグレーションのみを考慮 するだけではなく,インプラント周囲骨の吸収防止や粘 膜貫通部でのソフトティッシュ・シーリングの獲得によ ってインプラント周囲骨・軟組織の保全を図ることが, インプラント周囲炎の対策といえる. 具体的なインプラントシステムにおける工夫点として は,①インプラントカラーの表面加工・形状・性状は周 囲骨の吸収が少なく,ソフトティッシュ・シーリングが 期待できるように,②インプラントカラー部のデザイン (カラー部の形状だけでなく,マイクロスレッドやマイク ログルーブも含め)を周囲骨の吸収が少なく,ソフトテ ィッシュ・シーリングが期待できるように,③インプラ ントとアバットメントの界面に存在するマイクロギャッ プによる周囲骨吸収の影響をなくすか,マイクロギャッ プが存在しない連結様式にするなどが挙げられる. 本稿では, 自験例である machined インプラント (Nobel Biocare AB, Sweden), チタン表面を陽極酸化処理した粗面 加工の TiUnite インプラント (Nobel Biocare AB, Switz-werland),レーザー・アブレージョンにて規則的な溝を 有する Laser-Lok®(以下 L-L と略す)インプラント(Bio-horizons, USA)に関する臨床統計的観察も含め,前述の 3 項目について,インプラント周囲炎との関連性に関する 現状と今後の展望について解説したい. 近畿・北陸支部(ジャシド,中谷歯科医院) Kinki-Hokuriku Branch (JACID, Nakatani Dental Clinic)
インプラントカラー部の形状・性状とインプラント周囲炎との関連
堀内 克啓
Relation between the Shape/Surface of the Implant Collar and Peri-Implantitis
HORIUCHI Katsuhiro
インプラント周囲炎の定義と罹患率
インプラント周囲疾患は,インプラント周囲粘膜炎
とインプラント周囲炎に分類され,その定義は 1994
年 の 第 1 回 European Workshop on Periodontology
で初めて提唱された
1).インプラント周囲粘膜炎は,
機能下にあるインプラント周囲軟組織の可逆性炎症反
応と,そしてインプラント周囲炎は機能下にあるイン
プラント周囲支持骨の吸収を伴う炎症反応と定義され
た.鑑別診断は基本的には歯周病と歯肉炎のそれと類
似しており,周囲骨への影響と可逆性の有無が重要な
ポイントである
2).
インプラント周囲疾患の罹患率に関しては,ROOS-JANSÅKER ら
3)は,BoP(Bleeding on probing) 陽
性と骨吸収陰性をインプラント周囲粘膜炎と定義し,
患者総数の 79.2%およびインプラント総数の 50.6%に
認め,そして 3.1 mm 以上の骨吸収を伴う BoP 陽性を
インプラント周囲炎と定義し,患者の 55.6~77.4%お
よびインプラントの 44.3%に認めたと報告した.
しかし,インプラント周囲炎の罹患率は諸家によっ
て異なり,また有効な研究論文数も必ずしも十分とは
いえないが,患者では 19~56%,インプラントでは
10~43%と報告されている
2,4).最新のメタ・アナリ
シス解析で進行したインプラント周囲炎は約 10%(埋
入された全インプラント中の発症率)であることが報
告されている
4).
インプラント周囲炎の原因と危険因子
インプラント周囲炎の原因としては,局所因子では
口腔清掃状態
5),残存歯の歯周炎罹患状況
6),さらに
はインプラント補綴装置の結合様式
7),セメントの残
留
8)などが影響するといわれている.
インプラント周囲炎発症の全身的リスク因子とし
て,糖尿病や喫煙習慣については歯周病と同様に明ら
かにその発症リスクを高めることが知られている
9,10).
禁煙者のインプラント周囲炎になるオッズ比は,
31.58 であると RINKE らは報告した
11).咬合による過
重負担も危険因子と考えられており,KOZLOVSKY
ら
12)はインプラント周囲に炎症がある場合に過重負
担は骨吸収を増悪させたと報告している.
インプラントカラーの形状とインプラント・アバッ
トメント連結様式によるインプラントの分類と特性
インプラントカラーの形状には,①シリンダー形
状,②ネジ形状,③マイクロスレッド形状,④マイク
ロチャネル形状に分類される.インプラント・アバッ
トメント連結様式は,まず①エクスターナル連結と②
インターナル連結に大別され,さらにインターナル連
結は micro-gap に関与する butt-joint と micro-gap の
欠点を考慮した conical sealing に細分される.更に,
エクスターナル連結およびインターナル連結におい
て,インプラント・アバットメント連結部でのそれぞ
れの直径を同じにするか,あるいはアバットメントの
直径を細くする
horizontal off-set(platform switch-ing
13), platform shifting) の付与の有無によっても分類
できる(表 1).エクスターナル連結は,butt-joint で
あり,従来のようにインプラントとアバットメントの
直径が同じであれば,micro-gap と micro-movement
により接合部から 1.5 mm の骨吸収が生じるとされて
いる.最近では,この butt-joint の micro-gap による
骨吸収を防止すること,かつ軟組織の増幅を目的とし
た horizontal off-set を取り入れるインプラントメー
カーが多くなった.
まず,インプラント・カラー形状の違いによる検証
に関して,ABRAHAMSON ら
14)は,インプラント・
カラーのマイクロスレッド形状付与による骨・インプ
ラント接触率をビーグル犬で検証したところ,コント
ロール群が 72.8%に対して,81.8%と統計学的に有意
であったので,マイクロスレッド形状インプラントは,
オッセオインテグレーションを促進すると報告した.
NICKELIG ら
15)は,インプラント・カラーに付与
されたマイクロスレッド形状(NobelReplace Straight
Groovy, NobelBiocare AB, Switzerland)と,従来の
機械加工のシリンダー形状(Replace Select Straight,
Nobel Biocare AB, Switzerland)を同一患者に埋入
し,インプラント周囲の辺縁骨レベルをエックス線的
に比較検討した(インプラント埋入時,治癒期間後,
機能的負荷 6 カ月後,フォローアップ終了時(1.9~
2.1 年))(図 2).粗面マイクロスレッド形状インプラ
ントは,機械加工シリンダー形状インプラントに比べ,
免荷治癒期間および機能負荷後でも辺縁骨吸収は有意
に少なく(表 2),粗面マイクロスレッドインプラン
トは,辺縁骨レベルを維持するためには推奨できると
報告した.
インプラント・アバットメント連結様式の違いによ
る検証に関して,QUIRYNEN ら
16)のメタ分析では,
platform switching によってインプラント周囲骨吸収
は統計学的に有意に減少し,インプラントとアバット
メントの直径の差が 0.4 mm 以上のものでは,より良
好な骨反応があったと報告した.
POZZI ら
17)は,Nobel Biocare 社製の同じ表面処理
(TiUnite 表面)をされたインプラントで,カラー部
の形状とインプラント・アバットメント連結様式の異
なる NobelActive(マイクロスレッド型カラー,バッ
クテーパー型カラー,インターナル連結,コニカルシー
リング,platform shifting)と,NobelSpeedy Groovy
(ネジ型カラー,エクスターナル連結,Butt-joint)で
インプラント周囲辺縁骨の吸収を,同一患者で比較検
討した.荷重 3 年後の垂直的骨吸収および水平的骨吸
収は,NobelActive では 0.66 mm と 0.19 mm
で,No-belSpeedy では 1.25 mm と 0.6 mm で,インプラント
デザインはインプラント周囲辺縁骨吸収に関して統計
学的に有意に影響すると報告した(図 2).
インプラントの表面性質
インプラントの表面性質は,①表面形状と②表面性
状の 2 つの項目を考慮しなければならないが,両者は
インプラント・ アバットメント インプラント 連結様式 の形状 エクスターナル インターナル コニカルシー リング(-) コニカルシー リング(+) バットジョイント コニカルシー リング ホリゾンタール オフセット シリンダー Replace Select Tissue Level (S) Bone Level (S) ネジ BrånemarkSpeedy Biomet 3i 3i-Biomet
マイクロスレッド NobelReplace NobelActive Astra Nobel Replace CC マイクロチャネル Laser-Lok Laser-Lok Plus 表 1 インプラント・カラーの形状とインプラント・アバットメント連結様式による分類 図 1 インプラント・カラー形状による比較 NobelReplace Straight Groovy インプラントはカラー 部にマイクロスレッド形状を付与されている.Re-place Select Straight インプラントはカラー部がシリ ンダー形状を付与されている. 辺縁骨吸収量 インプラント・ カラー形状 埋入時 治癒期間後 (mm) 機能的負荷 6 カ月後 (mm) フォローアップ 最終時 (mm) 粗面マイクロスレッド 0 0.1 (-0.4~2)* 0.4 (0~2.1) 0.5 (0~2.5)** 機械加工シリンダー 0 0.5 (0~2.3)* 0.8 (0~2.4) 1.1 (0~3)** 表 2 インプラント・カラー形状によるインプラント周囲辺縁骨吸収の比較 ・フォローアップ期間:1.9 年(1.9~2.1 年) *p=0.01 **p=0.01 図 2 NobelActive と NobelSpeedy での同一患者にお けるインプラント周囲辺縁骨吸収の比較
チタン表面の加工方法に左右される
18).
1. 表面形状(粗さ) (Surface topography)
表面形状は,細胞の接着,伸展,配列,集簇に大き
く影響するだけでなく,細胞の分化・発現形態に重要
な役割を与えるとされている.一般に鏡面よりは粗面
のほうが細胞の付着力が大きいが,その影響は個々の
細胞によって異なる.粗面にすると,親水性表面では
ますます水の濡れがよくなり,疎水性表面(接触角が
90°以上)ではますます水の濡れが悪くなることが知
られている
18).表面形状はまた表面エネルギーなどの
表面性状にも影響を与える.
2. 表面性状 (Surface chemistry)
表面性状は,生体反応に重要な材料とタンパク質,
細菌あるいは細胞の吸着や接着に影響を与える.表面
性状を決定する物理化学的性質は,表面エネルギーや
表面の帯電状態をさし,表面に存在する化学物質が関
与する.この吸着力は,①共有結合(化学反応を伴う
吸着),②静電引力(界面電位,ゼータ電位),③水素
結合(親水基),④疎水性相互作用(水中の疎水性物
質の吸着),⑤ van der Waals 力の順に大きい.
表面の原子や分子は表面の外側からの引力が断ち切
られているため高いエネルギー状態にあり,結果とし
て表面エネルギーが生じる.個体の表面エネルギーが
大きいほど接した液体の濡れ性は大きくなって接触角
は小さくなる.
3. インプラントの表面加工(表 3)
インプラントの表面加工に関して,ブローネマルク・
インプラントでは 1965 年から 2000 年まで純チタンを
機械で削り出したままのものを用いていたが,他のイ
ンプラント・メーカーは,オッセオインテグレーショ
ンにより有用のある粗面加工を取り入れるようになっ
た.そして,現在では 8 種類の表面加工処置法があ
る
18).
1)機械加工(machined surface):Brånemark ma-chined implant
チタン丸棒を旋盤加工した面で,微細な線状痕をも
つ.
2)チタンプラズマ照射 (Titanium plasma-sprayed
surface):Straumann TPS implant
チタン粒をプラズマ溶射により基材にコーティング
し,表面積は無処理と比較すると 500~600%大きく
なる.
3)ブラスティング (Blasting surface):Astra Tech
TiOblast implant
チタン粉,酸化チタン粉,あるいは HA を空気圧
によりブラスト処理して形成される.表面粗さ・形状
は,粒体の種類,粒度,空気圧により異なる.
4) エ ッ チ ン
グ(Etched surface):Biomet 3i Os-seotite implant
フッ酸もしくはフッ酸と硫酸などの混酸を用いて酸
エッチングすることにより形成される.表面積は無処
理と比較して 300%程度大きくなる.他の処理が比較
的大きな粗面を形成するのに対して,本処理は微細な
凹凸を形成し,細胞の集簇,分化,石灰化に影響する
といわれている.
5)SLA (Sand-blasted with large-grid and
acid-etched surface):Straumann SLA implant
粒径 250~500 nm の研磨材によるサンドブラスト
で粗面を形成し,さらにエッチングで微細構造を付与
することから,骨芽細胞の骨形成に有効な微細環境を
与えるといわれている.
6) 陽 極 酸 化(anodized surface):Nobel Biocare
TiUnite implant
電気分解の際のアノード(陽極)で起こる酸化反応
であり,通常より厚い 100 nm 以上の酸化チタン被膜
を形成する.表面はニュートン環による色がつき厚さ
により色調が変化する.酸化膜の厚さが 300 nm 程度
では金色を呈する.
7)レーザー・アブレ-ション(Laser ablation):
Biohorizons Laser-Lok implant
高出力とナノ秒パルスのレーザービームによるレー
ザーアブレーション技術により,インプラントカラー
部周囲にエッチングされた精密な細胞サイズの溝とな
る.きわめて一貫性のあるマイクロチャンネル(微細
溝)は骨芽細胞・線維芽細胞の付着および組織化に最
適なサイズとなっている.また,Laser-Lok は表面積
を最大化する反復型ナノ構造であるため,細胞仮足や
コラーゲン微小繊維が入り込んでいる.
8)フッ化処理 (Fluoride-modified surface):Astra
Tech OsseoSpeed implant
フッ化処理により,ミクロレベルだけでなくナノレ
ベルでの粗さが付与され,親水性も向上する.
4 大インプラントメーカーのインプラント表面形状
表面形状を表すパラメーターとしては,マイクロレ
ベルでの表面粗さには,① Sa (nm) (average surface
roughness:平均表面粗さ)と② Sdr (%)
(developed
surface area ratio:表面の展開面積比),そしてナノ
レベルでの表面粗さ Sa (nm)の 3 つがある.Sa は,
Ra (average surface height:線の算術平均高さ)を
面に拡張したパラメーターである.表面の平均面に対
して,各点の高さの差の絶対値の平均を表し,面粗さ
を評価する際に一般的に利用されている.Sdr は,定
義領域の展開面積(表面積)が,定義領域の面積に対
してどれだけ増大しているかを表し,完全に平坦な面
の Sdr は 0 となる
19).
1. Nobel Biocare 社製インプラント
機械加工であるブローネマルクインプラントは,Sa
は 0.9 nm で,Sdr は 34%である.2000 年から臨床応
用された TiUnite インプラントは,電気分解の際のア
ノード(陽極)で起こる酸化反応であり,通常より厚
い 100 nm 以上の酸化チタン被膜を形成する陽極酸化
処理が施されている.Sa は 1.1 nm で,Sdr は 37%で
ある.TiUnite インプラントは機械加工インプラント
に比べ,治癒期間初期における良好な初期固定の維持
と早期のオッセオインテグレーションが得られること
から,即時荷重に有効である
20).
2. Straumann 社製インプラント
SLA インプラントは,研磨材によるサンドブラス
トで粗面を形成し,さらにエッチングで微細構造を付
与 す る 表 面 処 理 を 施 さ れ て い る.Sa は 1.5 nm で,
Sdr は 34%である.SLA 処理後の表面は親水であり,
良好な臨床結果が報告された
21).SLA の表面粗さは
2008 年では Sa は 1.78 nm で,Sdr は 97%とより粗面
になっていたと報告されている.2006 年にはより親
水性と優れた SLActive が登場し,Sa は 1.75 nm で,
Sdr は 143%である.SLA よりも強固な骨反応を示し,
1 年経過の早期荷重臨床応用でも良好な結果が報告さ
れた
22).
3. Biomet 3i 社製インプラント
Osseotite インプラントは,機械加工のカラー部と
酸エッチングのボディ部からなり,酸エッチング部の
Sa は 0.40 nm,Sdr は 17%であり,良好な臨床結果が
報告された
23).Nanotite インプラントは,ダブル・
エッチング処理の後に,20 nm のリン酸カルシウム結
晶を含んだ溶液に浸けることで,インプラント表面に
離散結晶沈着処理(DCD:discrete crystalling depo-sition)を施したもので,Sa は 0.5 nm で,Sdr は 40%
である.Nanotite インプラントは Osseotite インプラ
1. 機械加工(machined surface):Brånemark machined implant 旋盤加工した面で,微細な線状痕をもつ 2. チタンプラズマ照射 (Titanium plasma sprayed surface):Straumann TPS implant チタン粒をプラズマ溶射により基材にコーティングし,表面積は機械加工と比較すると 500~600%大きくなる 3. ブラスティング (Blasting surface):Astra Tech TiOblast implant アルミナ粉,チタン粉,酸化チタン粉,あるいは HA を空気圧によりブラスト処理して形成される 4. エッチング(Etched surface):Biomet 3i Osseotite implant 硫酸や塩酸で酸エッチングすることにより形成される.表面積は機械加工と比較して 300%程度大きくなる 5. SLA (Sand-blasted with large-grid and acid-etched surface) :Straumann SLA implant 粒径 250~500 nm の研磨材によるサンドブラストで粗面を形成し,さらにエッチングで微細構造を付与する 6. 陽極酸化(anodized surface) :Nobel Biocare TiUnite implant 電気分解の際のアノード(陽極)で起こる酸化反応であり,通常より厚い 100 nm 以上の酸化チタン被膜を形成する 7. レーザー・アブレ-ション(Laser ablation) :Biohorizons Laser-Lok implant 高出力とナノ秒パルスのレーザービームで金属表面の塗料の保護層に衝撃を与える 8. フッ化処理 (Fluoride-modified surface):Astra Tech OsseoSpeed implant フッ化処理により,ミクロレベルだけでなくナノレベルでの粗さが付与され,親水性も向上する 表 3 インプラントの表面加工ントよりも強固な骨反応を示し,即時荷重でも良好な
結果が報告されている
24).
4. Astra Tech 社製インプラント
TiOblast インプラントは,二酸化チタンの微細粒
子でブラスト処理したもので,Sa は 1.1 nm で,Sdr
は 31%である.1993 年に中等度粗面として世界で最
初に発売されたチタン粗面インプラントで,10 年以
上の多くの良好な臨床結果が報告されている
25,26).
OsseoSpeed インプラントは,TiOblast 表面にフッ化
処理により,ミクロレベルだけでなくナノレベルでの
粗さが付与され,Sa は 1.4 nm で,Sdr は 37%であ
る.OsseoSpeed インプラントは,TiOblast インプラ
ントよりも骨形成の増加とより強固な骨とインプラン
トの結合
27)が,またより短い治癒時間で得られるこ
と
28)が報告されている.
5. ナノ表面粗さ(nanoroughness)
インプラントの表面粗さのミクロレベルでスムーズ
であってもナノレベルでは必ずしもスムーズではな
く,インプラント表面の特性とオッセオインテグレー
ションの関係を理解するには,ナノレベルでの表面特
性が重要である
29).
インプラントカラーの形状・性状と
インプラント周囲炎の関連性
1. Nobel Biocare 社製インプラント
FRIBERG ら
30)は,機械加工インプラント(ブロー
ネマルクインプラント)112 本と TiUnite インプラン
ト 68 本が混在した 41 名の患者,そして TiUnite イン
プラントのみ 212 本を 70 名の患者に用い,インプラ
ントの残存率および辺縁骨レベルを 5 年間観察した.
混合グループのインプラント残存率は,機械加工イン
プラント 99.1% (111/112 本),TiUnite インプラント
97.1% (66/68 本)であった.そして,TiUnite 単独グ
ループでは 98.6% (209/212 本)であった.したがって,
機械加工インプラントと TiUnite インプラントには,
5 年残存率に統計学的有意差はなく,良好であった.
5 年後の辺縁骨吸収は,機械加工インプラントでは
0.6 mm,TiUnite インプラントでは 0.8 mm と少なく,
統計学的有意差はなかったと報告している.
MOZZATI ら
31)による TiUnite インプラント 209
本の 9~12 年間の後ろ向き研究によると,インプラン
ト残存率は 97.1%,埋入時から最終観察時までの辺縁
骨吸収は-0.60±1.17 mm(mean±SD,n=168),そ
して最終時のポケット深度は 1.65±0.84 mm であった
図 3 ポケット除去と局所的抗菌薬投与 a)デンタルエックス線写真にてインプラント周囲骨に吸収が認められた(白矢印). b)プロービング深さが 7 mm で,出血を認めた(BoP (+)).c)CO2レーダーにて インプラント周囲粘膜を焼灼した.d)ポケット部に局所的抗菌薬投与を行った.e) インプラント周囲粘膜が退縮し,プロービング深さが 2 mm になった.ことから,TiUnite インプラントは良好な辺縁骨反応
と軟組織状態と共に優れた残存率を有していることが
報告された.
しかし,著者は 15 年間に約 6,000 本の TiUnite イ
ンプラントを使用し,約 2%にインプラント周囲炎を
経験した.辺縁骨吸収が 3 mm 以内ではポケット除去
と局所的抗菌薬投与(図 3)で対処し,辺縁骨吸収が
3 mm 以上で骨再生可能な症例では自家骨移植(図 4)
あるいは GBR を施行する.しかし,骨再生が不可能
な症例ではインプラント撤去を行い,必要であれば骨
再生も併用してインプラント再埋入を行っている.
著者は 1997 年から上下顎無歯顎症例に即時荷重を
行い,14 年間経過時までにインプラント周囲炎で撤
去した Nobel Biocare 社製インプラントは,上顎 0.5%
(7/1,413 本)で,下顎 1.7%(17/1,071 本)と下顎の
頻度が高かった.これは,抜歯前の慢性炎症による硬
化性顎骨炎による血行不良が下顎には生じやすく,炎
症が生じると難治性となり骨吸収が進行すると考えら
れる.それに対して,上顎は海綿骨が豊富で,骨硬化
像を呈しにくいことから辺縁骨吸収が上顎に比べ生じ
にくいといえる.
2. Straumann 社製インプラント
かつてプラズマ照射処理された TPS インプラント
は粗面がかなり粗かったことから,一旦インプラント
周囲炎になると保存的治療が奏功しないことが多く,
インプラント撤去を余儀なくされる.骨吸収が高度と
なるケースもあり,再治療には骨再生が必要となるこ
とも少なくない(図 5).
DERKS ら
32)は,スウェーデン人 588 名で 2,277 本
のインプラントを 9 年間フォローアップし,インプラ
ント周囲炎の罹患率を研究した.BoP 陽性あるいは
排膿と 0.5 mm 以上の骨吸収を軽度のインプラント周
囲炎,そして BoP 陽性あるいは排膿と 2 mm 以上の
骨吸収を中等度・高度インプラント周囲炎と定義した
ところ,軽度のインプラント周囲炎が 45%で,14.5%
が中等度・高度インプラント周囲炎であった.Strau-mann インプラント(すべて SLA インプラント)が
32.6%,Nobel Biocare インプラント(98.3%が TiUnite
インプラント)が 39.4%,Astra Tech インプラント
(96.6%が TiOblast インプラント)が 18.4%であった.
中等度・高度インプラント周囲炎のオッズ比は,辺縁
性歯周炎 4.08,専門医にインプラント治療を受けた場
合に対して一般開業医 4.27,Straumann インプラン
トに対して Nobel Biocare インプラント 3.77,Astra
図 4 インプラント周囲炎による骨吸収に対し骨移植 を行った症例 a)上下顎無歯顎症例に対し TiUnite インプラントに て即時荷重を行い,それぞれ 3 分割の最終補綴装置を 装着時のパノラマエックス線写真.b)右側下顎部を 拡大像にて,犬歯部にインプラント周囲骨の吸収が認 められなかった.c)最終補綴装置装着 3 年後のパノ ラマエックス線写真にて,犬歯部インプラント周囲骨 に吸収が認められた.d)デンタルエックス線写真に て,7 mm の骨吸収が認められた.e)粘膜骨膜弁を 剥離後,骨吸収部の掻爬およびオトガイ部からのブ ロック骨採取のための骨切りを行った.f)ブロック 骨を採取し,骨欠損部にチタン製マイクロスクリュー で固定した.骨採取部には止血剤を塡塞した.g)母 床骨とブロック骨の間隙には自家粉砕骨を塡塞した. h)自家骨移植後のデンタルエックス線写真.i)自家 骨移植 5 年後の口腔内写真で,犬歯部周囲粘膜には異 常はなかった.j)自家骨移植 5 年後のパノラマエッ クス線写真で,犬歯部周囲骨の吸収は認められない.Tech インプラント 3.55 であることから,SLA インプ
ラントは他社に比較してインプラント周囲炎に罹患し
にくいといえる.
3. Biomet 3i インプラント
ZETTERQVIST ら
33)は,インプラント周囲炎の発
症率に関して Full OSSEOTITE
®Surfaced Implants
(FOSS)インプラント 165 本とハイブリッド表面の
インプラント 135 本について,5 年間の多施設無作為
比較対照研究を行い,ハイブリッドインプラントの 1
例にインプラント周囲炎が認められたものの,両群と
もポケット深さが 3.0 mm を超えるものはなかった.
また,FOSS インプラントはハイブリッドインプラン
トと比較して平均して骨吸収が少ないことから,OS-SEOTITE 表面処理されたデザインのインプラントは
粘膜の健康に有害な影響を与えずインプラント周囲炎
のリスクも増加しないといえる.
4. Astra Tech 社製インプラント
NOELKEN ら
34)は,12 名 の 患 者 で 37 本 の
Os-seoSpeed インプラントを抜歯即時埋入し,暫間補綴
物を装着後平均 27 カ月(12~27 カ月)経過時の辺縁
骨レベルを検討し,-0.1±0.55 mm (-1.25~0.47 mm)
であった.また,残存率は 100%で軟組織の審美性も
良好であったことから,OsseoSpeed インプラントは
抜歯即時埋入でも辺縁骨高径の維持に有効であると報
告した.
SCHLIEPHAKE ら
35)は,44 名 の 患 者 で 123 本 の
OsseoSpeed インプラントを埋入し,6 週後に印象採
得,7 週後以内に最終補綴物を装着後 5 年間継時的に
辺縁骨レベルについて検討した.辺縁骨レベルの平均
変化は,負荷開始時-0.21 mm,5 年経過後-0.08 mm
で,61 本は全く変化がなかったことから,インプラ
ント周囲炎のリスクにはなりにくいと考えられる.
ALBREKTSSON ら
36)は,3 種類の中等度の粗面イ
ンプラント(TiOblast,SLA,TiUnite)を用いた 10
年以上経過症例の論文 10 編を PubMed から検索し,
辺縁骨吸収とインプラント周囲炎の研究を行った.結
論として,① BoP とプロービング深さはインプラン
トの辺縁骨吸収と関連性は低い.②粗悪で報告のない
インプラントシステム,熟練していない歯科医師,タ
バコや薬剤依存・骨移植・放射線照射を受けた患者
は,辺縁骨吸収やインプラントの失敗を引き起こす因
子となり,インプラント周囲炎はこのような悪循環の
複合による二次的現象である.③最近のインプラント
は,かつての機械加工インプラントに比べると,上顎
図 5 粗雑すぎる粗面インプラントの使用による インプラント周囲炎(TPS インプラント) a)下顎右側第二大臼歯部インプラントのプロー ビ ン グ 深 さ が 10 mm で, 出 血 を 認 め た(BoP (+)).b)下顎左側第二大臼歯部インプラントの プロービング深さが 7 mm で,出血を認めた(BoP (+)).c)初診時のパノラマエックス線写真にて, 下顎右側第一・二大臼歯部および下顎左側第一大 臼歯部インプラント周囲骨に著明な吸収が認めら れた.d)下顎右側第一・二大臼歯部および下顎 左側第二小臼歯と第一大臼歯部の TPS インプラ ントを撤去後に,下顎枝部からのブロック骨によ るオンレーグラフトにて垂直的骨造成を行い,Ti-Unite インプラントを埋入し,最終補綴装置装着 7 年後のパノラマエックス線写真.インプラント 周囲骨に吸収は認められない.症例・喫煙・早期即時荷重・short implant・骨移植・
放射線照射においても良好な結果を得ている.④熟練
した歯科医師が通常の患者に予知性の高いインプラン
トを用いた場合は,インプラントの失敗やインプラン
ト周囲炎は 10 年経過で 5%以内である.⑤ TiOblast
インプラントの辺縁骨吸収は,Al-Nawas らの論文を
除けば 0.10~0.9 mm と 3 つのインプラントの中では
最も少ない.
5. Biohorizons 社製インプラント
チタンインプラントのボディ部がRBT (Resorbable
Blast Texturing)と呼ばれるリン酸カルシウムブラ
スト処理後にエッチングの表面処理が施され,カラー
部はレーザーアブレーション技術によりエッチングさ
れた精密な細胞サイズ(12 nm)のマイクロチャネル
(微細溝)付与されている(図 6)
37,38).マイクロチャ
ネルは,上皮細胞の根尖側移動を抑制し,結合組織付
着を促すなどの生物学的反応を誘導することが,これ
までの研究によって証明されている.このような物理
的付着により生物学的にインプラント周囲が封鎖さ
れ,歯槽頂骨を保護し,かつ維持する.
PECORA ら
39)は,L-L インプラントの隣接部位に
形状が同じでカラー部が機械加工したインプラント
(コントロール群)を 15 名の患者に 20 組(40 本)を
埋入し,周囲歯肉溝の深さ,および歯槽頂骨吸収など
を術後 1~37 カ月間計測を行った.37 カ月時点では,
LL 群については周囲歯肉溝の深さは平均 2.30 mm,
歯槽頂骨吸収は 0.59 mm であった.一方,コントロー
ル群はそれぞれ 3.60 mm,1.94 mm であった.この結
果から,インプラント・アバットメント連結様式が
Butt-joint にもかかわらず LL 群における歯槽頂骨維
持の優位性が認められた.
この LL マイクロチャネルはインプラントだけでな
く,アバットメントにも付与することにより,soft
tissue sealing が向上するようになった
39).更に,plat-form switching を組み入れることにより,更なる辺縁
骨レベルの保全と軟組織に増幅が得られ,インプラン
ト周囲炎になりにくいインプラント・アバットメント
連結部となると考える
40).
インプラント周囲炎の最近の知見
ALBREKTSSON ら
41)は,インプラント周囲炎は
異物反応の合併症か,あるいは人間が作った“病気”か,
というタイトルでインプラント周囲炎の最近の知見を
報告した.インプラント周囲炎と名付けられた疾患に
罹患したインプラントと指摘するエビデンスはほとん
どなく,インプラントの辺縁骨吸収は,ほとんどが免
疫原性骨融解反応(immune-osteolytic reaction)で
ある.これを複雑にしている要素には,遺伝性疾患,
喫煙,インプラント周囲溝内のセメントや印象材の残
留,インプラント・コンポーネントの細菌汚染,そし
てスクリューの緩み,動揺したコンポーネント,破折
物などの技工物の問題が挙げられる.これらの反応は,
骨吸収を示す破骨細胞と骨芽細胞との繊細なバランス
シフトの最終結果が細胞反応に繋がる.しかし,予知
性の高いインプラントの大半は,長期でも良好なイン
プラント残存率となる異物反応均衡(foreign body
equilibrium)を示すであろう.
結 語
インプラント形状では,マイクロスレッド形状が
オッセオインテグレーションを促進することから他の
形状よりも,辺縁骨の吸収は少ない.
インプラント・アバットメント連結様式では,コニ
カルシーリングと platform switching の組み合わせ
が,辺縁骨の維持に寄与している.
表面性状(性質)では,辺縁骨への影響の差はない
図 6 Laser-Lok インプラントとマイクロチャネル (拡大率 300 倍,Biohorizons 社の製品カタログ からの改変)ようであるが,軟組織とのインテグレーション,ある
いは強固な soft tissue sealing が長期に確保できる表
面形状・性状の開発が課題であろう.
インプラント周囲炎は,インプラントが生体内で異
物反応を惹起しないように,様々な危険因子が関与し
ない長期に維持することが重要である.
本論文において,開示すべき利益相反状態はない.文 献
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