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図 1 重 松 運 夫 先 生 の レントゲン 造 影 剤 と 現 像 法 の 実 際 ( 南 江 堂 ) A 本 の 概 観 B リピオドールの 血 管 造 影 剤 としての 記 述.リピオドールに 蜂 蜜 とレシチンに 蒸 留 水 を 加 え 用 いていた. A B 図 2 血 管 撮 影 法

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Academic year: 2021

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 イオパミロン25周年記念ということで、ヨード造影 剤とIVRについての原稿依頼を受けた。私事の話になる が、造影剤については2冊の本の思い出がある。1冊は 20年以上前、偶然にも医局の図書室で見つけた廃棄寸 前であった古色蒼然たる小さな1冊の本である。茶色い ザラ紙のような紙に印刷されたその本は『レントゲン造 影剤と現像法の実際』1)(図1)と題され、重松運夫先生 によって記された1933年初版(南江堂)のものの第3版で あった。埃を払いながら何気なく手に取ると、昭和初期 に使われていた造影剤のすべてが古い文体で書かれてお り、古文書発見のような感覚に囚われた。思わず引き込 まれ、いくつかの章を読み、深い感動を覚えた。知る由 もなかったビスマスやトリウム、リピオドールなどの造 影剤の歴史がそこに書かれていた。さらに、造影剤の歴 史に目を開いたのは、1987年に、久留 裕先生が訳され た『血管撮影法のパイオニア達—血管撮影におけるポル トガル学派—』(Veiga-Pires JA、Grainger RG 著)2)(図2) を読んだからである。このなかに、MonizやDos Santos による血管撮影の草創期の歴史と造影剤の物語、血管撮 影装置の開発の歴史が書かれている。また、20年前に なるが、私の師匠にあたる佐古正雄先生が血液プール造 影剤の開発の研究をされており、造影剤の基礎研究のお 手伝いをしていた経験があること、血管造影が大事な私 の仕事であることも今回の執筆動機となった。今回、重 松先生やVeiga-Piresの名著に知恵を借り、また佐古先 生に教わったヨード造影剤の化学構造の話を思い浮かべ ながら、浅学を顧みず、若干の文献を元にヨード造影剤 とIVRについて少し述べてみたい。

3.IVRと血管造影−治療における造影剤の役割−

廣田 省三

兵庫医科大学 放射線医学教室

第一部:ヨード造影剤の基本

Interventional Radiology and Iodide Contrast Media:

Role of Contrast Media in Interventional Radiology

Shozo Hirota, M.D. Summary  Iodide contrast media have been closely related to angiography since the introduction of  the latter. In the history of iodide contrast media, there have been many incidental events,  such as the discovery of positive contrast on X-ray in the “Selectan Neutral” by Dr.  Swick or in lipiodol by Dr. Sicard. Dr. Miniz and Dr. Dos Santos invented angiography  using 25% sodium iodide. Ionic tri-iodide contrast media was developed, followed by the  revolutionary non-ionic iodide contrast media in the 1970s. Twenty-five years have passed  since iopamidol was introduced onto the Japanese market, and the safety of contrast media  has increased due to its low osmolarity. We are currently treating hepatocellular carcinoma  by the transcatheter technique using iodide contrast media and an anticancer drug with iodized oil. Interventional radiology was  developed using iodide contrast media. The close relationship of transcatheter treatment and iodide contrast media will continue in  the future as long as X-ray is used with medical field. Department of Radiology, Hyogo College of Medicine NICHIDOKU-IHO Vol.56 No.1 41-48 (2011)

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42(42) 図1 重松運夫先生の『レントゲン造影剤と現像法の実際』(南江堂) A 本の概観 B リピオドールの血管造影剤としての記述.リピオドールに蜂蜜とレシチンに蒸留水を加え用いていた. A B 図2 『血管撮影法のパイオニア達—血管撮影におけるポルトガル 学派—』の表紙を飾るDos Santosが80年前に撮影した膝窩 部軟部肉腫の動脈造影

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ヨード造影剤と血管造影の歴史

 ヨード造影剤については、長い歴史があり、血管造 影はヨード造影剤の進歩なしにあり得なかった。古く は1927年にポルトガルの神経学の教授Monizによる世 界ではじめて脳血管撮影が22%のヨウ化ナトリウムを 用いて、1929年には、Monizの同僚の外科教授のDos  Santosによる直接穿刺による経腰的大動脈撮影、1953 年のスウェーデンのSeldingerによる経皮的カテーテル 挿入法の開発など先人の開発により血管造影は造影剤と ともに進歩してきた。  Monizは当初、臭化ストロンチウムを使用していた が、造影能では、原子量の大きいヨードに劣ることか らヨウ化ナトリウムを造影剤として使用することにし、 10〜50%のヨウ化ナトリウムをヒトの静脈に注射し、造 影能を比較検討している。Monizはロボトミーの先駆者 でもあり1949年にノーベル賞を受賞している。2009年 に欧州心臓血管インターベンショナルラジオロジー会 議(CIRSE)がポルトガルのリスボンであった際に、彼の 名前のついた病院の前を通り感動したのを覚えている。 Dos Santosは、25%ヨウ化ナトリウムを用いて、きれい な動脈造影写真を残している。Veiga-Piresの著書の表紙 を飾る軟部肉腫の動脈造影は、80年前のX線写真とは思 えない美しさである(図2)。ちなみに、25%ヨウ化ナト リウムは235mgI/mLに相当し、十分なヨード含量である。  Seldinger  も、先ほどのPiresの著者の中でいかにし てセルジンガー法を思いついたかを述べている。Dos  Santos法の危険性を感じ、安全なカテーテル挿入を考え たと書かれている。箱根で行われた第1回国際IVR&血 管画像シンポジウム(ISIR)に来られて講演されたことを 思い出す。  1905年にはLichtenbergらによって、コルラルゴール という銀を含むコロイド製剤が創薬され、逆行性の腎盂 造影が行われている。しかし、コロイド製剤には欠点が あり、ヨウ素の化合体すなわちヨウ化カリウム、ヨウ化 ナトリウムなどの研究が進んだが、これらは毒性が強 かった。前述のMonizらはこのヨウ化ナトリウムで最初 の脳血管造影を行っているが、血管造影後の合併症も多 かったという。ヨウ化ナトリウムは、元々は梅毒治療に 用いられていたが、比重が大きく、X線に対して高い造 影能があることが知られ、ヨウ素合成剤の造影剤として の可能性が端緒になった。動物用の連鎖球菌治療剤とし てピリミジン環にヨードが一つ付いたセレクタンが創薬 され、経静脈投与がなされた。ニューヨークにあるマウ ント・サイナイ病院の泌尿器科医のSwickは、ハンブル グに留学中にこの物質の造影能に着目し、改良したセレ クタン・ノイトラル(図3)を腎盂造影に応用した3、4)。こ こに排泄性性尿路造影が開発されたのであるが、元は抗 菌剤として開発されていたものであった。さらにヨード が二つピリミジン環に付いたウロセレクタンBや、わが 国の杉井の合成したスギウロンが1933年に開発された。 先述の重松の著書の序文は杉井による。  リピオドールは1901年、ヨード補給剤としてGuerbet により開発され、経口や静注、筋肉注射で使用されてい た。昆布や海苔などヨードの摂取に困らない日本人から すると、リピオドールが栄養剤あるいはサプリメントと して登場していたこと、さらに筋注、静脈注射が行われ ていたことに驚きを禁じ得ない。1921年にSicard(シ カル)がリピオドールの造影能を再認識し、はじめてX 線撮影の造影剤として脊髄腔内に注入し脊髄腫瘍の診断 に応用したという。重松氏はその著書の中で“巴里医科 大学教授シカルとその助手ジャッケフォレスチェが、は じめてレントゲン診断に際して組織的にリピオドールの 密度を応用すべき天才的理想を懐いたのである。”と述 べ絶賛している。Sicardは気管支造影、腎盂、子宮、尿 道、胸椎、瘻孔などの造影に応用したという。さらに、 今からみると驚きだが、さらにリピオドールを蜂蜜とレ シチンを乳鉢ですり乳化させ蒸留水を加え、血管造影剤 として使用したとある(図1B)。乳化させた脂肪球は“赤 血球よりは大であるが、白血球より小で、何等栓塞の危 険はなく—”と記載してある。1945年頃にすでにレシチ ンによる界面活性作用を用いた乳化リピオドール懸濁液 が使用されていたのである。このことについては、Dos  Santosの論文に、Sicardが用いる血管造影剤としてのリ ピオドールを批判する記述があり、ヨウ化ナトリウムが よいと断言している。重松の名著もここまでで、ヨード 造影剤についての記述は終わっている。リピオドールが 抗癌剤と混和されて肝癌治療に用いられている現実から みると、遠い過去に蜂蜜、レシチンと混ぜて血管造影に 用いていたことは、突飛な発想ではなく素直な応用であ るとさえ思われる。現在われわれが使用しているリピオ ドールは、ウルトラフルイドと称しているように脂肪酸 のカルボキシル基をエチルエステル化させて粘稠度を下 げて、リンパ管造影や子宮卵管造影に使用されているも

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44(44) ので、Sicardが使用していたものとは異なる。重松氏の 本によると、“高度ヨード油”というジャンルがあり、そ のなかにリピオドール、モルヨドール(第一製薬開発)、 ヨジピン(塩化ヨウ素)、ヨード化油(日本薬局法)、強 ヨード化油(日本薬局法)が記述されており、ヨード化油 というのは、昭和初期にはごく普通の造影剤として使用 されていたようだ。小生の父も1953年の療養中に脊髄 造影を受け、マイヨジールという油性ヨード造影剤を使 用されていた。晩年、病床で撮られたX線単純写真をみ ると、いつも中央に造影剤が油滴として写っていたこと を思い出す。  さて、ヨード合成の進歩は進み、ピリミジン環に代わ りベンゼン環が導入され、ヨウ素が一つ、二つとベン ゼン環につき、そして1950年代に三つへと代わり、現 在のトリヨードの造影剤へと進化した。1954年にウロ グラフインが市販された。1965年にコンレイが発売さ れた。私が血管造影を始めた1978年ごろは、コンレイ、 ウログラフイン(76%、60%)、コンラキシンなどのイ オン性造影剤が用いられていた。76%ウログラフインは、 ヨード含量としては370mgI/mLで、比重5.0、浸透圧は6.0 と高く高浸透圧イオン性造影剤に分類される。熱感が強 く動くため、注入前に患者に詳しい説明を行い動かない ように指示し撮影を行った。昔物語になってしまうが、 血管撮影装置も古く、造影剤注入器もボンベ式のもので 正確な圧では注入されなかった。フィルムもシェナンデ ル社のAOTと呼ばれる古典的なフィルムチェンジャー で秒間3枚を飛ばしていた。  立体撮影(ステレオ撮影)で拡大が撮れるアンギオ装置 が自慢であった。膵癌の診断は、超選択的に胃十二指腸 動脈や背膵動脈へカテーテルを注入し、薬理学的血管造 影と称して血管拡張剤、収縮剤を用いたステレオ拡大撮 影をとり、ステレオ用の眼鏡を用いて診断していた時代 があった。造影剤ショックもしばしばあり、ステロイド や昇圧剤の投与には慣れていた。  1970年代に入って、浸透圧を下げることにより副作 用を軽減させるために、非イオン性造影剤の開発が進 み、ついにメトリザマイド(アミパーク)が開発された。 不安定なため粉末で供給され、用時溶解させて使用した 記憶がある。そして、本号の主役であるイオパミロンの 登場とともに非イオン性造影剤使用の本格的な時代へ 突入した。1量体、2量体など非イオン性造影剤にも特 徴がある。非イオン性になってからは、血圧が低下する ショックを経験する頻度は激減した。ヨード造影剤に求 められる安全性、造影能、安価の三つの要件のうち5、6) 安全性に関しては非イオン性造影剤が浸透圧の低さで向 上したといえるが、なお腎症の問題がありいまだ理想の 造影剤とはいえない。造影能に関しては、現時点でほぼ 満足に近いものと考える。日常のCT、血管造影でも非 イオン性造影剤である。

血管造影・IVRにおけるヨード造影剤の役割

 さて、IVRに話を移すと、血管系IVRは血管造影とと もに進歩し、非血管系IVRは胆道造影、胆道ドレナージ から始まり進歩してきた。IVRはまさに造影検査・造影 剤とともに進歩してきたといって過言ではない。  造影検査の主体は水溶性ヨード造影剤だけではなく、 油性ヨード造影剤すなわちリピオドールがある。IVRに とって水溶性ヨード造影剤の役割は、病変の診断による 標的を定め、さらに治療のための道である血管、胆管な どの脈管を示す道案内としての役割である。さらに、油 性ヨード造影剤を含め、造影剤が治療そのものに利用さ 図3 Selectan NeutralとUroselectan,Uroselectan B CH3 N O I CH2COO-Na+ N O I CH3 O N COO-Na+ Na+OOC I I

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れている。  IVRにおける造影剤の役割について考えてみたい。 1.IVRにおけるヨード造影剤の最大投与量と血栓形成  腎機能障害患者のIVRの適応であるが、基本はヨード 造影剤の適応に順じており、最近では欧州泌尿生殖器 放射線学会(ESUR)などのガイドラインを参考に、特に 血清クレアチニン(S-Cr)が1.5mg/dL以上で、eGFRが 60mL以下の場合には、非適応にするか炭酸ガスによる 造影でIVRを行うというのが実情である。また、ヨード 造影剤の過敏症の患者には、ステロイドを予め投与し、 恐る恐る造影を行い、可及的少量の造影剤で済ませるこ とを原則にしている。  難しいIVR手技においては、造影剤のテストフラッ シュ、頻回の造影、CTの併用による動脈造影下CTな ど造影剤の量の過多をきたしやすい。造影剤の総量は、 IVRにおいて常に念頭に置かなければならない。ヨード 造影剤における安全な量についてCigarroaらは、イオン 性造影剤であるアミドトリゾ酸370mgI/ mL(76%ウロ グラフィン)で5日以内でS-Crが1.0mg/dL以上の上昇を 異常としたとき、  上限値(mL)=造影剤5mL×体重(kg)/S-Cr値(mg/dL) としている。これを体重60kgで、S-Crが1.0mg/dLの患 者に当てはめると、最大300mLということになる。こ れはイオン性造影剤での式であり、非イオン性の場合は 浸透圧が低く上限量は許容され、1.5〜2.0倍の使用は許 されるとの考えもある。また、水溶性ヨード造影剤は半 減期が1.5時間前後であるため、1〜2時間かかるIVRで は手技の後半には相当量の造影剤が排泄されているとい うこともあり、実際には血管造影、IVR後に腎機能が有 意に悪化した経験は少ない。造影剤の種類による腎機能 への影響であるが、われわれの経験からIVRを中心に考 えると、特段の差はない。  イオン性造影剤は浸透圧が高く抗凝固能がある。造 影剤による血栓形成の心配は少ないが、非イオン性に なると血栓形成能がイオン性に比べ劣るため危惧され ていた。実際には、ヘパリンを生食内に添加している だけだが、腹部領域では特段に血栓形成による合併症 を経験していない。 2.Angio-CTの開発、IVR-CTへの発展とヨード造影剤  血管造影下CTの開発は、わが国が世界で最初に行っ た。世界に先駆けて、わが国のいくつかの施設(兵庫医 科大学など)で肝動脈造影下でのCT撮影が行われてい た。さらに経動脈性門脈造影下CT、いわゆるCTAPが インクリメンタルスキャンの発達とともに金沢大学の松 井らによって行われ、その肝癌の高い存在診断能が評価 されてゴールドスタンダードとなった。現在、IVR-CT と称される血管撮影装置とガントリー型CT装置のドッ キングによる装置も、やはりわが国で開発された。血管 造影という2次元的画像とCTによる断層像とを組み合わ せたハイブリッド型X線装置である。この検査法は腫瘍 の質的診断や経時的な血行動態の変化を明らかにした。 Angio-CTにおいても水溶性造影剤が存分に活躍をして いる。ただ、CT撮影時に原液はヨード含量が高く血管 からアーチファクトを発生することから、1/2希釈にし て用いた。現在では、薄い濃度の造影剤も選択でき、さ らに2連型の造影剤注入器も開発されきわめて便利な状 況となった。 3.現代的IVRの方法:Angio-3D(CBCT)による血管の 描出とIVR手技の進歩  最新の血管撮影装置は、血管を見事に3次元的に描出 する装置として、IVR手技の水先案内人的な役割を果た してくれる。小生の勤務している病院の腹部血管撮影装 置はコーンビームCT搭載FPD型血管撮影装置にガント リー型CTがドッキングした最新型IVR-CTで、血管を コーンビームCTで3D描出し、カテーテルを超選択的に 挿入する手助けとなる。病変を見やすい角度に3D画面 で回転させて設定すると、その角度にC-armが連動して 動き、最適のワーキングアングルで仕事ができる(図4、 5)。肺の小さい動静脈奇形や末梢の内臓動脈瘤など繊細 な動きや、屈曲蛇行した血管の選択には優れた力を発揮 してくれる。肝癌などの腫瘍の存在診断、vascularity診 断にはガントリー型CTを用いたAngio-CT装置がゴール ドスタンダードであることは論を待たない。その際の造 影濃度は低濃度のヨード造影剤が適しており、最近は2 連のアンギオ用造影剤注入器が市販されており、高濃度 と低濃度の造影剤を2種類備えることができる。種々の ヨード造影剤濃度の使い分けも重要である。 4.リピオドール懸濁液の作成におけるヨード造影剤の 使用  リピオドールと抗癌剤の混和は、熊本大学の今野らが

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4(4) はじめに行い、次いで打田らが行いリピオドールを用い た化学塞栓療法と名付けられ、今日まで続く。その際の 混和方法は等比重の水と油の混和なら20〜30分程度懸 濁が続くという論理に基づく。すなわち、300mgI/mL の水溶性ヨード造影剤に1/6の生食で溶解させた抗癌剤 はリピオドールと比重がほぼ同じとなり、この抗癌剤溶 液をリピオドールと約1:2で混和振盪し用いると油中水 滴(w/o)型の懸濁液になり、水溶液と油が分離するまで の時間が長くなる。この混和液は油滴型のミセルのよう な状態で腫瘍血管内に充満し血流が緩徐となり、ゼラチ ンスポンジ細片による塞栓術の追加で血流を遮断する。 懸濁液は腫瘍血管内で水溶液と油に分離し、分離した抗 癌剤は腫瘍細胞に直接働く。リピオドールは腫瘍血管に とどまり、腫瘍への血流を末梢レベルで遮断することで 腫瘍の虚血壊死効果が増大する。  この手法は抗癌剤をヨード造影剤に溶解させ、さらに 油性ヨード剤で混和するという、まさにヨードの権化の ようなものである。  また、リピオドールはリンパ管造影に使用されていた が、抗癌剤の混和によるリンパ系のIVR治療が試みられ ていたこともある。 5.硬化剤におけるヨード造影剤の混和  ヨード造影剤の混和は、硬化剤などの治療剤の存在を 明示し溢出することを予防する役割がある。わが国で 発展したB-RTOという静脈瘤治療に使用されるオルダ C D A B 図4 Angio-3Dによる原発性肝癌の血管造影の回転観察 コーンビームCTを用いた肝動脈撮影を3D表示したAngio-3D.立体的にどの方向からでも回転して 観察ができる.腫瘍濃染と動脈がともに描出されているので,腫瘍に関与する血管を立体的に判断 でき,アクセスすべき血管を正しく判断できる.選択的挿入がしやすい角度を決めれば,その角度 にC-armが設定される.

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ミンという界面活性剤系の硬化剤に水溶性ヨード造影剤 を等量、すなわち1:1の量で混ぜることで硬化剤が明瞭 な造影能をもつ。これもヨード造影剤の役割の一つであ る。イオパミロンは混和可であるが、イオン性造影剤は 配合変化をきたすとされ、添付文書に記載されている。  また、アルコール注入による腫瘍のアブレーション治 療においては、アルコールに20%の割合でリピオドー ルを混ぜると、アルコールの殺細胞効果は損なわれずに 造影能をもち、CTでその存在範囲が明瞭にわかる。リ ピオドールは油であるが、アルコールは有機溶媒でもあ りすぐに溶解する。リピオドールは480mgI/mLとヨー ド含量が多く、少量で造影能をもたすことができる。 6.IVRと造影剤の将来  IVRの過去・現在は安全なヨード造影なくしてその存 立は有り得ない。非イオン性造影剤の進歩で浸透圧が減 り、副作用が約1/4に減ることで安全にIVRのための造 影を行うことができ、その道案内でIVRが施行できる。 将来は現在問題となっている腎毒性を減じたヨード造影 剤ができれば、さらに安全にIVRが施行可能となる。画 像診断において造影剤は見えないものを見えるようにす る魔法の薬である。造影剤親和性のある抗癌剤も今後の 一つの方向であろう。リピオドールに懸濁しやすい白金 製抗癌剤の登場も、抗癌剤のキャリアーとしてのリピオ ドールの性質を生かしたものである。  IVRではマイクロカテーテルの径が1.8Fすなわち600 C D A B 図5 Angio-3Dによる胃静脈瘤の血管造影の回転観察 図2と同様,胃静脈瘤の構造が立体的に把握しやすい.手技中に観察でき,超選択カテーテリゼーショ ンが容易となる.

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4(4) ミクロンというサブミリメートルの世界に突入してお り、造影剤を用いた治療は当面続くであろう。ヨード造 影剤の更なる進歩を期待したい。 後記  原稿執筆中、東日本で大震災が発生し、多数の人命が 失われる悲惨な大災害となり被災された方々、関係者に 心からのお悔やみを申し上げます。今なお行方不明の方 も多数にのぼり、心を痛めています。自分が阪神大震災 の被災者であり、東北の被災者の方々の状況を考えると ここで原稿を書いている自分が歯がゆく感じます。さら に、福島原子力発電所の事故があり、131Iの空気中への 汚染が話題となり、まさに命題であるヨードであり、何 という偶然のいたずらかと恨みたくなります。いち早い 復興を心から祈念し支援するものであります。    【参考文献】 1)重松運夫:レントゲン造影剤と現像法の実際 増補改訂第3 版.東京,南江堂,1952 2)Veiga-Pires JA,Grainger RG 編,久留 裕 訳:血管撮影法 のパイオニア達—血管撮影におけるポルトガル学派—. 日本シェーリング株式会社,1987 3)Grainger RG,Thomas AMK:History of the development of  radiological contrast media (1895-1996).in Textbook of  Contrast Media,ed by Dawson P,Cosgrove DO,Grainger  RG.UK,Plymbridge Distributions Ltd.,3-14,1999 4)Abrams HL:Historical Notes in Abram’s  Angiography  Fourth Edition,ed by Baum S.Little,Brown and Company, 3-12,1997 5)佐古正雄:ヨード造影剤の物理化学的特性.片山 仁, 山口昻一 編,造影剤マニュアル.東京,金原出版,7-24, 1991 6)片山 仁:造影剤の過去,現在,未来.片山 仁,山口昻 一 編,造影剤マニュアル.東京,金原出版,1-6,1991

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