いであ株式会社
ジエチレングリコール
Diethylene glycol 【対象物質の構造式】 ジエチレングリコール CAS 番号 111-46-6 【物理化学的性状】 分子量 融点(℃)1) 沸点(℃)1) 比重1) 蒸気圧(Pa) 1) log P ow1) 水溶解度1) 106.12 -6.5~ -10.5 245 1.12 2 (20℃) -1.98 (文献値) 水と自由に 混合 (1) 国 際 化 学 物 質 安 全 性 カ ー ド ( ICSC ) : ジ エ チ レ ン グ リ コ ー ル http://www.nihs.go.jp/ICSC/ 【毒性、用途】 吸入の危険性1):20 ℃で気化したとき、空気は汚染されても有害濃度には達し ないか、達してもきわめて遅い。 短期暴露の影響1):眼、皮膚、気道を刺激する。中枢神経系、肝臓、腎臓に影響 を与えることがある。意識を喪失することがある。 用途2):プラスチック用、印刷インキ、ソルブルオイル、繊維用接着剤、ブレー キ油、可塑剤、セメント混和剤などO
H
O
OH
§1 分 析 法
(
1)分析法の概要等
大気試料を大気捕集用カートリッジ(Autoprep@シリーズ PS@gas(300mg)) に捕集する(1.2 L/min で 24 時間)。捕集後、アセトンでジエチレングリコール (DEG)を溶出し、クリーンナップスパイクとして 1,4-ブタン-d8-ジオール (1,4-BD-d8)を添加して濃縮する。濃縮液に無水ヘプタフルオロ酪酸を加えて HFB 誘導体化を行い、HFB 誘導体をヘキサンで抽出する。シリンジスパイクと して 13C6-ヘキサクロロベンゼン(13C6-HCB)を添加して GC/NCI-MS(SIM)によ り定量する(注5)。(
2)試薬・器具
【試薬】 ジエチレングリコール(DEG):和光純薬工業(株)製 1,4-ブタン-d8-ジオール(1,4-BD-d8):CDN 社製 13C 6-ヘキサクロロベンゼン(13C6-HCB):CDN 社製 アセトン:残留農薬試験用 アセトニトリル:残留農薬試験用 ヘキサン:残留農薬試験用 無水ヘプタフルオロ酪酸:和光純薬工業(株)製 無水硫酸ナトリウム:残留農薬試験用 大気捕集用カートリッジ:Autoprep@シリーズ PS@gas(300 mg)、昭和電工(株) 製。二連結したものをアセトン5 mL で 3 回洗浄後、アセトンが乾燥するまで通 気を行い、後段のカートリッジを大気捕集用に使用する。前段のカートリッジ はアセトンで洗浄後、再使用が可能である。精製水:純水製造装置(ミリポア社製 Milli-Q Gradient System A10)により精製
した水をそのまま使用した。
【試薬の安定性・毒性】
【器具・装置】 電子天秤、真空マニホールド(大気捕集用カートリッジのコンディショニング に使用)、ガラス製シリンジ、目盛り付き試験管、窒素ガス濃縮装置、パスツー ルピペット、メスピペット、ホールピペット、リアクティバイアル、マイクロ シリンジ、超音波洗浄器、ブロックヒーター
(
3)分析法
【試料の採取及び輸送・保存】 環境省「化学物質環境調査における試料採取にあたっての留意事項」に従う。 大気捕集用カートリッジPS@gas を予めアセトン 5 mL で 3 回洗浄し、通気によ り乾燥させたものを両端キャップで密閉し、試料採取に用いる(通気乾燥の際 には、吸入側に汚染防止のためのPS@gas カートリッジを装着する)。 試料採取は、流速1.2 L/min で 24 時間行い(約 1728 L)、採取後はすみやかに 両端を密栓して、密封袋にて遮光・冷蔵して輸送する。 試料採取後は速やかに処理を行うこととし、直ちに処理できない場合は冷暗 所で保存する(大気中で検出される物質であるため汚染には充分注意する)。 【試料の前処理及び試料液の調製】 大気試料を採取したPS@gas カートリッジに高純度窒素を流して乾燥後(注 1)、 アセトン6 mL を流して対象物質を溶出させる。溶出液にクリーンナップスパイ クとして1,4-BD-d8を20 ng 添加した後、窒素気流により 2 mL 未満まで濃縮を 行う。濃縮後の試料液を2 mL リアクティバイアルに移し、窒素気流により更に 20 µL 程度まで濃縮を行う。濃縮後のリアクティバイアルにアセトニトリル 100 µLと無水ヘプタフルオロ酪酸 100 µLを加え、すぐに密栓して混合する。混合後、 60℃で60 分間誘導体化を行う(注 2)。 誘導体化終了後、リアクティバイアルを室温まで冷まし、精製水0.5 mL とヘ キサン0.5 mL を加えて激しく混合し(注 3)、DEG-ヘプタフルオロ酪酸誘導体 (DEG-HFB 誘導体)を抽出する。パスツールピペットでヘキサン層を採取し、 更にヘキサン0.5 mL を加えて抽出を行う(注 4)。ヘキサン抽出液を合わせ、窒 素気流により1 mL 未満に濃縮し、13C6-HCB を 10 ng 添加した後 1 mL に定容す る。定容後、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、測定用バイアルに試料液を 採取してGC/NCI-MS により測定を行う。【空試験液の調製】 大気試料の捕集を行わずに大気捕集用カートリッジを【試料の前処理及び試 料液の調製】の項に従って処理し、得られた試験液を空試験液とする。 【標準液の調製】 [標準原液] DEG 100 mg を秤量し、アセトニトリルで 100 mL に定容して DEG 原液(1000 µg/mL)とする。 [クリーンナップスパイク及びシリンジスパイク] クリーンナップスパイクとして使用する1,4-BD-d8 100 mg を秤量し、アセト ニトリルで100 mL に定容してサロゲート原液(1000 µg/mL)とする。原液をア セトニトリルで希釈してクリーンナップスパイク溶液(5 µg/mL)とする。 シリンジスパイクとして使用する13C6-HCB 10 mg を秤量し、ヘキサンで 100 mL に定容してシリンジスパイク原液(100 µg/mL)とする。原液をヘキサンで 希釈してシリンジスパイク溶液(5 µg/mL)とする。 [検量線用標準液] 標準原液をアセトニトリルで希釈し、0 及び 0.05~5 ng/µL の範囲に亘る計 5 種類以上の濃度で、検量線溶液調製用の希釈系列を作製する。この希釈系列そ れぞれ100 µL と、5 µg/mL クリーンナップスパイク溶液 20 µL をリアクティバ イアルに分取する。これに無水ヘプタフルオロ酪酸100µL を加え、すぐに密栓 して混合する。混合後、60℃で60 分間誘導体化を行う(注 2)。 誘導体化終了後、リアクティバイアルを室温まで冷まし、精製水0.5 mL とヘ キサン0.5 mL を加えて激しく混合し(注 3)、DEG-HFB 誘導体を抽出する。パ スツールピペットでヘキサン層を採取し、更にヘキサン0.5 mL を加えて抽出を 行う(注4)。ヘキサン抽出液を合わせ、5 µg/mL シリンジスパイク溶液を 10 µL 添加し、ヘキサンを加えて5 mL に定容する。 各標準溶液はDEG を 0 及び 1~100 ng/mL、1,4-BD-d8を20 ng/mL、13C6-HCB を10 ng/mL 含んでいる。
【測定】
〔GC/MS 条件〕(注 5)
GC/MS 機器(例):GC ; HP6890(Agilent 社製)、MS ; BU-20(日本電子社製)
カラム:DB-5((5%フェニル)メチルポリシロキサン)30 m×0.25 mm i.d. 膜
厚0.25 µm(J&W 社製)
昇温条件:40℃(1 min)-->10℃/min--> 240℃(4 min)
注入法:スプリットレス(パージ開始時間1 min) 注入口温度:200℃ キャリヤーガス:ヘリウム(流量 1 mL/min) 注入量:1 µL インターフェース温度:240℃ イオン源温度:150℃ イオン化電圧:70 V イオン化法:負イオン化学イオン化(NCI) 検出モード:SIM 法 モニターm/z:DEG-HFB 誘導体 478.0(定量用)、498.0(確認用) 1,4-BD-d8HFB 誘導体(クリーンナップスパイク) 469.1(定量用)、490.1(確認用) 13C 6-HCB(シリンジスパイク) 289.8(定量用)、291.8(確認用) 〔検量線〕 標準溶液1 µL を GC/MS に導入して測定する。希釈系列の測定で得られる各 クロマトグラムにおいて、標準物質のピーク面積を内標準物質のピーク面積で 割って得られる比を計算し、検量線の縦軸とする。分析した検量線用標準溶液 に含まれる標準物質の濃度を内標準物質の濃度で割って得られる比を計算し、 検量線の横軸とする。最小二乗法により一次の検量線を作成し、関係式及び寄 与率(r2)を計算する。寄与率が0.995 以上であることを確認する。 〔定量〕 試料液1 µL を GC/MS に注入し、対象物質のピーク面積を内標準のピーク面 積で割った比から、検量線を基にして、対象物質濃度を内標準物質濃度で割っ た比(R)を算出する。
〔濃度の算出〕 大気中の物質濃度C (ng/m3)は次式により算出する。 C = (( R・Q - RBL・Q ) / V ) × (( 273 + t ) / ( 273 + 20.0 )) × ( 101 / P ) R : 当該試料において検量線から求めた(対象物質濃度/内標準物質濃度)の比 RBL : 空試験溶液において検量線から求めた(対象物質濃度/内標準物質濃度)の比 Q : 試料に添加した内標準の量 (ng) (添加する内標準の濃度(ng/µL)× 添加量(µL)) 本法ではQ = 5 ng/µL×10 µL = 50 ng となる。 V : 大気採取量 (m3) t : 試料採取時の平均気温 (℃) P : 試料採取時の気圧 (kPa) 〔装置検出下限(IDL)〕 本分析に用いたGC/NCI-MS の IDL を下表に示す(注 6)。 物質名 IDL(ng/mL) 試料量(m3) 試料濃度換算値(µg/ m3) ジエチレングリコール 0.14 1.728 0.000081 〔測定方法の検出下限(MDL)〕 本分析法の検出下限(MDL)及び定量下限(MQL)を下表に示す(注 7)。ただし、 操作ブランクが検出されたので、操作ブランクの繰り返し測定から算出したも のである。 物質名 検出下限(MDL) (µg/ m3) 定量下限(MQL) (µg/ m3) ジエチレングリコール 0.0011 0.0015 ※MDL=Blank 平均値+ t (n-1, 0.05)×Bn-1×2 ※MQL= Blank 平均値+Bn-1×10
注解 (注1)乾燥が不十分だと後の誘導体化を阻害する恐れがあるため、乾燥は充分 に行う。 (注2)室温ではアセトニトリルと無水ヘプタフルオロ酪酸が分離するため、リ アクティバイアルが充分に加熱されたところで振り混ぜて混合してや る。反応時間は混合してからの時間である。 (注3)Vortex mixer 等が便利である。 (注4)ヘキサン層を採取した後、少量のヘキサンを加えてバイアル内部を洗浄 することで回収率の精度向上を図ることができる。 (注5)GC/MS のイオン化法は負イオン化学イオン化を採用することとしたが、 必要とする感度及び選択性に支障が無ければ電子イオン化でも測定可 能である。電子イオン化の場合の測定例を図1-1~4 に示す。 図1-4 の環境試料測定時では、確認用 m/z である m/z 169 のベースライン の上昇が見られ、低濃度付近ではm/z 241 と m/z 169 の比率が標準溶液の 比率と一致しないことがあったため、注意が必要である。 GC/MS 機器(例):GC ; HP6890(Agilent 社製)、MS ; HP5973MSD(Agilent 社製) カラム:DB-5((5%フェニル)メチルポリシロキサン)30 m×0.25 mm i.d. 膜 厚0.25 µm(J&W 社製)
昇温条件:40℃(1 min)-->10℃/min--> 240℃(4 min)
注入法:スプリットレス(パージ開始時間1 min) 注入口温度:200℃ キャリヤーガス:ヘリウム(流量 1 mL/min) 注入量:1 µL インターフェース温度:240℃ イオン源温度:230℃ イオン化電圧:70 V イオン化法:電子イオン化 検出モード:SCAN 法 定量用m/z:DEG-HFB 誘導体 241(定量用)、169(確認用) 1,4-BD-d8HFB 誘導体(クリーンナップスパイク) 62(定量用)、169(確認用)、69(確認用) 13C 6-HCB(シリンジスパイク) 289.8(定量用)、291.8(確認用)
60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 m/z--> アバンダンス
Scan 676 (8.985 min): CALI18.D 241 169 69 100 119 213 197 150 271 131 81 50 181 225 253 284295 図1-1 DEG-HFB 誘導体の GC/EI-MS スペクトル 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 m/z--> アバンダンス
Scan 482 (7.865 min): CALI12.D 62 169 100 243 119 150 197 131 51 78 208 261 281 229 89 183 298 図1-2 1,4-BD-d8-HFB 誘導体の GC/EI-MS スペクトル
図1-3 GC/EI-MS による標準溶液測定時のマスクロマトグラム (1,4-BD-d8:50 ng/mL、DEG:50 ng/mL) 図1-4 GC/EI-MS による環境試料測定時のマスクロマトグラム (1,4-BD-d8:50 ng/mL) 6.000 6.50 7.00 7.50 8.00 8.50 9.00 9.50 10000 20000 30000 40000 50000 Time--> アバンダンス イオン 241.00 (240.70 ~ 241.70): SAMPLE05.D 6.45 8.51 6.00 6.50 7.00 7.50 8.00 8.50 9.00 9.50 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 Time--> アバンダンス イオン 169.00 (168.70 ~ 169.70): SAMPLE05.D 6.44 7.08 7.45 7.74 8.51 9.59 6.00 6.50 7.00 7.50 8.00 8.50 9.00 9.50 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 Time--> アバンダンス イオン 62.00 (61.70 ~ 62.70): SAMPLE05.D 7.37 DEG-HFB 1,4-BD-d8-HFB DEG-HFB 1,4-BD-d8-HFB 6 .0 00 6.50 7.00 7 .5 0 8 .0 0 8. 50 9.0 0 9 .5 0 500 0 100 00 150 00 200 00 250 00 300 00 Time-- > アバ ンダン ス イオン 241.00 (2 40 .7 0 ~ 2 41.7 0): CALI0 5.D 8.52 6 .0 0 6.50 7.00 7 .5 0 8 .0 0 8. 50 9.0 0 9 .5 0 200 0 400 0 600 0 800 0 100 00 120 00 140 00 Time-- > アバ ンダン ス イオン 169.00 (1 68 .7 0 ~ 1 69.7 0): CALI0 5.D 7 .3 7 8.51 6 .0 0 6.50 7.00 7 .5 0 8 .0 0 8. 50 9.0 0 9 .5 0 500 0 100 00 150 00 200 00 250 00 Time-- > アバ ンダン ス イオン 62.00 (6 1.70 ~ 62.70) : CALI 05.D 7 .3 7
(注6)装置検出下限(IDL)は、環境省「化学物質環境実態調査実施の手引き 平 成17 年 3 月」に従い、以下の通り算出した。 物質 ジエチレングリコール 試料量(m3) 1.728 最終液量(mL) 1.0 注入液濃度(ng/mL) 1.0 装置注入量(µL) 1 結果1 0.994 結果2 0.989 結果3 0.904 結果4 0.958 結果5 0.964 結果6 0.914 結果7 0.983 平均値 0.9579 標準偏差 0.036 IDL(ng/mL) 0.14 IQL(ng/mL) 0.36 IDL 試料換算値(ng/m3) 0.081 S/N 27 CV(%) 3.7 ※ IDL= t (n-1, 0.05)×Bn-1×2 ※ IQL=Bn-1×10
(注7)操作ブランクが検出されたため分析法の検出下限(MDL)は操作ブラン ク試験の繰り返しにより下記のとおり求めた。 物質名 ジエチレングリコール 試料量(m3) 1.728 標準添加量(ng) - 試料換算濃度(µg/m3) - 最終液量(mL) 1.0 注入液濃度(ng/mL) - 装置注入量(µL) 1 結果1(ng/m3) 0.747 結果2(ng/m3) 0.846 結果3(ng/m3) 0.671 結果4(ng/m3) 0.724 結果5(ng/m3) 0.759 結果6(ng/m3) 0.764 結果7(ng/m3) 0.885 平均値(ng/m3) 0.7708 標準偏差(ng/m3) 0.073 MDL(ng/m3) 1.1 MQL(ng/m3) 1.5 S/N 39 CV(%) 9.4 ※MDL=Blank 平均値+ t (n-1, 0.05)×Bn-1×2 ※MQL= Blank 平均値+Bn-1×10
§2 解説
【分析法】 〔フローチャート〕 分析法のフローチャートを図3 に示す。 図3 分析フロー 〔検量線及びマススペクトル〕 図4 に検量線、図 5-1~3 に対象物質と内標準のマススペクトルを示す。 大気試料 捕集 1.2 L/min.×24 hours PS@gas カートリッジ 溶出 アセトン6 mL 1,4-BD-d820 ng HFB 誘導体 濃縮 アセトニトリル 100 µL 無水ヘプタフルオロ酪酸 100 µL GC/NCI-MS 13C 6-HCB 10 ng 定容 1 mL y = 0.298x + 0.0168 R2= 0.997 1 1.5 2 2.5 3 象 物 質 / 内 標 準 物 質 ) y = 1.9104x - 0.0491 R2= 0.9997 0 2 4 6 8 10 0 1 2 3 4 5 濃度比(対象物質/内標準物質) 面 積 比 ( 対 象 物 質 / 内 標 準 物 質 ) 内標準:1,4-BD-d8 20ng/mL (参考) 内標準:13C6-HCB 10 ng/mL図5-1 DEG-HFB 誘導体の GC/NCI-MS スペクトル 図5-2 1,4-BD-d8-HFB 誘導体の GC/NCI-MS スペクトル [M-HF]- M- [M-DF]- M-
図5-3 13C6-HCB の GC/NCI-MS スペクトル 〔誘導体化・測定法の選定〕 DEG は極性が非常に高く、目標下限値が 0.33 ng/m3と低濃度であるため、GC により高感度分析を行うためには誘導体化により揮発性を高めるだけでなく、 感度・選択性のより高い測定法が望ましいと考えられる。そのため、水酸基を パーフルオロアシル化で誘導体化し、揮発性・電子親和性を高めたものを GC/ 負イオン化学イオン化-MS で検出する方法を採用することとした。 また、パーフルオロアシル化の誘導体化試薬として下記の4 つを検討した。 ・ 1-(トリフルオロアセチル)イミダゾール ・ N-メチルビス(トリフルオロアセトアミド) ・ 無水ヘプタフルオロ酪酸 ・ 無水トリフルオロ酢酸 これらの中で明瞭な誘導体のピークが確認できたのは無水ヘプタフルオロ酪
〔誘導体化条件の検討〕 無水ヘプタフルオロ酪酸によるHFB 誘導体化の条件検討を行った。 室温で15 分間反応させたときを 100%とし、それに対する割合を各反応温度、 時間について求めて反応率として表した結果を図6 に示す。 なお、誘導体化反応の際の溶媒はアセトニトリル 100 µL、無水ヘプタフルオ ロ酪酸の添加量は100 µL とした。 0 20 40 60 80 100 120
15min. 30min. 60min. 90min.
反応時間 反 応 率(% ) 室温14BD-d8 室温DEG 60℃ 14BD-d8 60℃ DEG 図6 各反応時間における HFB 誘導体化反応率 誘導体化反応は室温で15 分以内にほぼ終了していることがわかった。しかし、 アセトニトリル100 µL に無水ヘプタフルオロ酪酸 100 µL を添加した場合、室温 では両試薬が混合せずに2 層に分かれることがあるため、反応温度は 60℃を採 用することとした。また、反応時間は余裕を持って60 分間を採用することとし た。 〔クリーンナップスパイクの検討〕 DEG の安定同位体標識化合物は過去に市販されていたが、現在は市販されて いない。そのため、クリーンナップスパイクとして化学的性質が近いと思われ る1,4-Butane-d8-diol を採用することとした(トリエチレングリコールの標識化 合物の市販品は見つけることができなかった)。 今後、DEG の安定同位体標識化合物が入手できた場合は、そちらを使用する ことが望ましい。
〔大気捕集用カートリッジからの溶出〕 大気捕集用カートリッジからの溶出を確認するために、PS@gas カートリッジ にDEG を直接添加した後、大気を捕集せずにアセトンで溶出を行った。 PS@gas カートリッジからアセトン 6 mL で全量が溶出可能であった。 表1 PS@gas カートリッジからの溶出率(添加量 200 ng) アセトン 0-2 mL 2-4 mL 4-6 mL 6-8 mL 8-10 mL 合計 溶出率 試行-1 81 19 4 0 0 103 [%] 試行-2 77 21 4 1 0 103 〔添加回収試験〕 PS@gas の捕集効果を確認するために添加回収試験を行い DEG の保持率*1を確 認した。保持率については、大気中にDEG が無視できない量で検出されたため、 DEG を添加したカートリッジの前段に同じカートリッジを装着し大気中の DEG を除き,後段のカートリッジについて測定を行って求めた。 また、DEG が大気中から検出できることから、カートリッジを二連結して実 際に大気捕集を行うことで捕集率*2の確認も行った。 なお、温度については恒温槽内で試験を実施したため35℃でほぼ一定の条件 であった。湿度については、カートリッジ直前に精製水を入れたガス洗浄瓶を 繋げて試験を実施することで90%を維持した。湿度 35%の条件は特に湿度調整 を行わなかったものである。 *1 保持率:カートリッジに直接 DEG を添加して大気捕集を行った際の回収率。今回は添加量 20ng で実施した。 *2 捕集率:カートリッジを二連結して対象物質が存在する大気を捕集し、カートリッジの前段 と後段を別々に測定することで、対象物質がどれだけ前段に保持されるかを表す。こ こでは、捕集率(%)=前段存在量/(前段存在量+後段存在量)×100 で表した。 表2 添加回収試験結果(保持率)添加量:20ng 保持率(%) [n=3]
表3 添加回収試験結果(捕集率)添加量:20ng 〔操作ブランク試験〕 操作ブランク試験を実施したところ、目標下限値0.33 ng/m3を超える濃度(0.67 ~0.88 ng/m3、平均0.77 ng/m3)で検出された。 なお、分析操作を行う部屋を変え、屋外大気と室内大気の換気を良く行って再 度操作ブランク試験を行ったが、大幅な減少もみられなかった(0.53~0.77 ng/m3、 平均0.64 ng/m3)。なお、操作ブランクの繰り返し測定よりMDL を算出したとこ ろ1.1 ng/m3であった(MDL=Blank 平均値+ t (n-1, 0.05)×Bn-1×2)。 ジエチレングリコールは大気中に比較的高濃度で存在すると予想されるため、 この感度で実際の環境調査への適用が可能かどうかを評価することとした。 〔環境大気分析への適用についての評価〕 本分析法により、所内敷地内(静岡県大井川町)で環境大気試料の測定を行っ たところ、晴天時ではジエチレングリコールが16 ng/m3(24 時間捕集)、降雨時 では5.3 ng/m3(朝~夜の12 時間捕集)の濃度で検出された。 また、降雨後ではあるが、人間活動が減る夜間のみサンプリングを行って測定 したところ8.6 ng/m3のDEG が検出された。 捕集率(%) [n=3] 捕集率(%) [n=2] 35 ℃(恒温)、湿度35% 35 ℃(恒温)、湿度 90% 定量用内標準 平均値 CV(%) 平均値 CV(%) 13C-Hexachlorobenzene
99.4
3.8
-
-
1,4-Butane-d8-diol99.4
7.0
99.3
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〔標準溶液、環境試料及び添加回収試験のクロマトグラム〕 図7 に標準溶液、図 8 に操作ブランク、図 9 に環境大気試料のクロマトグラム を示す。 図7 標準溶液のクロマトグラム (DEG:50 ng/mL、1,4-BD-d8:20 ng/mL、13C6-HCB:10 ng/mL) 1,4-BD-d8-HFB DEG-HFB 13C 6-HCB 1,4-BD-d8-HFB DEG-HFB 13C 6-HCB
図9 環境大気試料のクロマトグラム〔5 倍希釈〕 (DEG 濃度 16 ng/m3) 【評 価】 本分析法により環境大気試料(静岡県大井川町)の測定を行ったところ、ジエ チレングリコールが16 ng/m3の濃度で検出された。また、低濃度大気試料を想 定して降雨時に環境大気試料(同地点)の測定を行ったところ、5.3 ng/m3のジ エチレングリコールが検出された。 本分析法は操作ブランクが(0.67~0.88 ng/m3、平均0.77 ng/m3、MDL は 1.1 ng/m3)で検出されるが、環境大気中のジエチレングリコール濃度は比較的高い ものと予想され、環境調査への適用は可能であると考えられる。 【参考文献】 (2) 国 際 化 学 物 質 安 全 性 カ ー ド ( ICSC ) : ジ エ チ レ ン グ リ コ ー ル http://www.nihs.go.jp/ICSC/ (3) 13599 の化学商品, 化学工業日報社, 409-410, 1999 (4) NIOSH〔1996〕. Glycols: Method 5523
【担当者氏名・連絡先】 担当 いであ株式会社 環境創造研究所 環境化学グループ 住所 〒421-0212 静岡県志太郡大井川町利右衛門 1334-5 TEL:054-622-9552 FAX:054-622-9522 担当者 伊藤安紀、羽山真介
E-mail:[email protected]、 [email protected]
1,4-BD-d8-HFB
DEG-HFB
13C 6-HCB
Diethylene glycol
This method provides procedures for the determination of diethylene glycol in ambient air by gas chromatography/negative ion chemical ionization mass spectrometry (GC/NCI-MS). Air sample is passed through PS@gas cartridge at flow rate of 1.2 L/min for 24 hours. The analyte in the cartridge is eluted with 6 mL acetone. After elution,
1,4-butane-d8-diol (clean up spike) is added to the eluent. Then, the sample solution is
concentrated under a nitrogen stream until less than 2 mL, followed by sample solution is poured into a reaction vial. Next, the solvent of sample solution is removed by a nitrogen stream, gently. The sample residue is derivatized by addition of 100 microL acetonitrile and 100 microL heptafluorobutyric anhydride at 60 ℃ for 60 min. After derivatization, 0.5 mL water is added to the sample solution and the analyte is extracted with 0.5 mL hexane, twice. The hexane extract is concentrated under nitrogen stream until less than 1 mL, followed by
13C-ring-hexachlorobenzene (syringe spike) is added. After adding syringe spike, the sample
solution volume is adjusted to 1 mL and analyzed by GC/NCI-MS. The method detection limit
(MDL) of this method is 1.1 ng/m3. The average of recoveries from 20 ng diethylene glycol
added PS@gas cartridge is 117%, and the relative standard deviation is 13%. The concentration of diethylene glycol in the ambient air near Oigawa port in Shizuoka prefecture was 16 ng/m3in fine weather and 5.3 ng/m3in rainy weather.
Air sample Sampling
1.2 L/min×24 hours PS@gas cartridge Elution Acetone 6 mL 1,4-BD-d820 ng HFBderivatization Concentration and Removal of solvent 100 microL acetnitrile 100 microL Heptafluorobutyric anhydride
GC/NCI-MS 13C 6-HCB 10 ng Nitrogen stream Extraction 0.5 mL water 0.5 mL hexane, twice
物質名 分析法フローチャート 備考 ジ エ チ レ ン グ リコール <大気> 検出下限 1.1 ng/m3 定量下限 1.5 ng/m3 大気試料 捕集 1.2 L/min×24 hours PS@gas カートリッジ 溶出 アセトン6 mL 1,4-BD-d820 ng 濃縮 HFB 誘導体 アセトニトリル 100 µL 無水ヘプタフルオロ酪酸 100 µL GC/NCI-MS 13C 6-HCB 10 ng 定容 1 mL