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講演 1 潰瘍性大腸炎の治療における GMA の可能性 活動期と寛解期の新しい使用法 竹内健先生 日本では潰瘍性大腸炎 (UC) 患者は年々増加しており 中でも高齢の患者が増えているのが実状である UC 治療を取り巻く環境としては 近年 生物学的製剤を中心とした治療法も加わり治療の選択肢は増えたが

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(1)

JDDW 2016 KOBE

ランチョンセミナー 42

潰瘍性大腸炎における

GMA治療の最適化

~治療効果の最大化を目指して~

2016年11月4日(金)

12:30~13:40

日 時

会 場

ポートピアホテル

大輪田A(第4会場)

滋賀医科大学 消化器内科 

安藤 朗

先生 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 

竹内 健

先生

潰瘍性大腸炎の治療における

GMAの可能性

―活動期と寛解期の新しい使用法―

四日市羽津医療センター IBDセンター 

山本 隆行

先生

潰瘍性大腸炎治療における

GMA導入のタイミング

講演 1

司会挨拶

講演 2

共催:第58回日本消化器病学会大会 / 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-41-12 富ヶ谷小川ビル TEL 0120-677-170(フリーダイヤル) FAX 03-3469-9352 URL http://www.jimro.co.jp AD201703KSYS 2017年3月作成  近年、日本でも潰瘍性大腸炎(UC)治療 に非常に多くの治療法が導入された。 生物学的製剤を始めとしたそれらの強力 な治療法は高い有効性を示すものの、 そこには常に副作用の懸念が付きまとう。 そのような中で顆粒球吸着療法(GMA)は、 現在の治療指針ではステロイド抵抗性や 依存性を示す難治例に用いる治療として 位置付けられている。GMAは他の薬物 治療とは異なる作用機序で効果を発揮する治療法であり、尚且つ 安全性を考慮すると、難治例だけではなくもっと活用すべき場面が 多いのではないかと考えられる。本日はお二人のエキスパートの 先生方にご講演いただき、治療効果の最大化を目指したGMA治療 の最適化について考えてみたい。 明石海峡大橋 神戸ポートタワー 風見鶏の館(旧トーマス邸)

(2)

国内のUC患者数は、もはや20万人に届こうとしている。人口 の高齢化の影響とともに、高齢発症の患者も増加しているために 60歳以上の高齢患者が増加している(図1)。それらの高齢患 者に対して、若年患者と同じ治療法で問題ないのか考える必要 がある。生物学的製剤の先進国であるヨーロッパでも、副作用の 重症化や発がんのリスクを鑑みて、高齢患者に対する免疫調節薬 や生物学的製剤の使用は慎重に行うとされている。その見地から は重篤な副作用が報告されていないGMAは、高齢患者に対す る治療選択肢と考えられる。 当施設で2011~15年にGMAを施行した156例のデータを解析 した結果を紹介する。年齢別に効果と安全性を検討すると、60歳 未満と以上で有効性に大きな差はなく(図2)、安全性に関して は、むしろ60歳以上の高齢者の方が有害事象の発現が少ない という印象であった(図3)。ステロイド治療の反応別にGMAの効 果を見てみると、ステロイド未使用例、抵抗例、依存例で差はな かった。(図4)、また、内視鏡的な改善率については、比較的症 状が軽い症例ではその後の改善率も少し高い傾向が見られた (図5)。さらに、症例数は非常に少ないが、抗TNF-α抗体製剤が 1次無効、2次無効であった症例におけるGMAの効果を検討して みると、2次無効例でも有効例があった。カルシニューリン阻害薬 に対する反応性別の解析でも同様に、症例数が少ないので 明確なことは言えないが、2次無効例では半数は効果が得られて いた。また、最初のGMAで寛解導入に至った症例と、至らな かった症例に分けて、2回目のGMAの効果を検討してみると、最 初のGMAで効果がなかった症例では、その後のGMAでも効 果が低いが、最初のGMAで効果があった症例では、その後も 効果が得られるということがわかった(図6)。この傾向は他の施 設からも報告されており、再寛解導入療法としてもGMAの効果 が期待されている。また現在、血球成分除去療法(CAP)で寛解 導入に至った症例に対して、維持療法としてのCAPの効果を検 討する多施設共同臨床研究であるCAPTAIN studyが進行 中であり、結果が待たれるところである。 図1日本における潰瘍性大腸炎患者数(年齢階級別) ■ 2004 ■ 2008 ■ 2012 104 79 119 0-9歳 2575 2743 3434 10-19歳 11878 12735 15296 20-29歳 18819 23710 28809 30-39歳 15554 21838 33284 40-49歳 13730 17646 24491 50-59歳 9997 14711 21069 60-69歳 7240 11259 17231 70≦歳 0 35,000 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

潰瘍性大腸炎の治療における

GMAの可能性

― 活動期と寛解期の新しい使用法 ―

 日本では潰瘍性大腸炎(UC)患者は年々増加しており、中でも高齢の患者が増えているのが実状である。UC治療

を取り巻く環境としては、近年、生物学的製剤を中心とした治療法も加わり治療の選択肢は増えたが、いずれも強力な

効果が得られる反面、重篤な副作用が出現するリスクもある。それらの背景を踏まえ、我々は現在、副作用が少ない

顆粒球吸着療法(GMA)という治療法をさらに活用していく方法を検討する必要があるのではないだろうか。

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 

竹内 健

先生

高齢の潰瘍性大腸炎患者が増加

GMAの治療実績

(3)

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 図2年齢階級別にみたGMAの効果 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 年齢 <20 (n=34) 20≦,<60(n=102) 29.4 23.5 47 29.4 56.9 13.7 60≦ (n=18) 27.7 5.5 66.6 ■ 寛解  ■ 有効  ■ 再燃・無効 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 図5GMAの内視鏡的改善率 GMA前 (n=136) GMA後3~6ヵ月(n=113)

■ Mayoスコア 0  ■ Mayoスコア 1 ■ Mayoスコア 2

■ Mayoスコア 3 ■ 手術 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 20 63 17 14 35 39 84 今までは炎症性腸疾患(IBD)治療の目標は臨床症状の改善 であったが、現在はそれだけでは不十分であり、粘膜治癒が治療 目標になっている。治療により正常と区別がつかない状態まで 粘膜を治癒することができれば再燃率はかなり抑制できることが 分かってきたからである。さらに、再燃してからではより強力な治 療を選択せざるを得ないので、ステロイドを使わない状態でいか に粘膜治癒を維持するかが重要となってきたのである。そのよう なことから臨床症状の有無ではなく、粘膜におけるUCの活 動性を評価し、臨床症状が出現する前に適切に治療介入を行う ことが重要となる。そこで有用なのがバイオマーカーによるモニタ リングである。 主に好中球や単球から分泌されるカルシウム結合タンパク質で あるカルプロテクチンは、腸管内の炎症や細菌感染に対して防御 的に機能する物質であるが、糞便中のカルプロテクチン濃度と 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 図4ステロイド治療に対する反応性によるGMAの効果 ステロイドナイーブ例 (n=37) ステロイド抵抗性(n=39) 32.4 13.5 18.9 35.1 30.7 30.7 10.3 17.9 10.2 ステロイド依存性 (n=67) 20.8 16.4 19.4 38.7 4.5 ■ 寛解  ■ 有効 ■ 再燃 ■ 無効 ■ 不詳 100 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 GMA1次治療 (n=31) GMA2次治療(n=31) 1次治療有効例に対する2次治療 (n=20) 1次治療無効例に 対する2次治療 (n=11) ■ 有効  ■ 無効 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 図6GMA初回時有効性の再治療時有効性への影響 35.4 64.5 45.2 54.8 20 80 91 9

潰瘍性大腸炎の治療における

GMAの可能性

― 活動期と寛解期の新しい使用法 ―

 日本では潰瘍性大腸炎(UC)患者は年々増加しており、中でも高齢の患者が増えているのが実状である。UC治療

を取り巻く環境としては、近年、生物学的製剤を中心とした治療法も加わり治療の選択肢は増えたが、いずれも強力な

効果が得られる反面、重篤な副作用が出現するリスクもある。それらの背景を踏まえ、我々は現在、副作用が少ない

顆粒球吸着療法(GMA)という治療法をさらに活用していく方法を検討する必要があるのではないだろうか。

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 

竹内 健

先生

講演 1

再燃の指標としてのカルプロテクチン

粘膜治癒とバイオマーカーによる

モニタリング

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 図3年齢階級別に見たGMAの安全性 年齢(歳) <20(n=34) 20≦,<60(n=102) 60≦(n=18) 有害事象 循環不全 2 循環不全 3 循環不全 2 頭痛 3 皮膚炎 1 心筋炎 1 心内膜炎 1 動脈血栓症 1 尿路感染症 1 間質性肺炎 1

(4)

図7難治性UCにおけるアダリムマブと GMA集中治療の併用効果(試験デザイン) GMA (2回/週) アダリムマブ (160、80、40mg、2週毎) 初回治療 10週 追加治療 52週 >> 非寛解・再燃例 アダリムマブ + アザチオプリン

Tanida S, et al. J Clin Med Res. 2015; 7(11): 884-889.

して主に欧州で臨床に用いられている。このカルプロテクチンは 患者が持参した糞便を用いて測定する簡便な検査で、糞便中の カルプロテクチン濃度と臨床症状を合わせて検討することで炎症 の有無を確認することができる。糞便中のカルプロテクチン濃度は 内視鏡的な重症度と非常によく相関するだけでなく、寛解期で 症状が落ち着いている症例でも、カルプロテクチン濃度の上昇が 見られた症例ではその後再燃する症例が多いことが報告されて おり1)、再燃の予測因子にもなる可能性がある。再燃後に強力 な治療を行うのではなく、再燃を予防するというより安全な方法 を考えていく必要がある。 ステロイド依存性を示す中等症から重症のUC症例で、免疫 調節薬または抗TNF-α抗体製剤、あるいはその両方の薬剤を 用いても無効だった症例に対し、GMAの有効性と安全性を検討 する長期の多施設共同試験が現在欧州で進行中である。その 中間報告として報告された12週後の成績では、約3割の症例で GMAの有効性が得られることが示されている2)。また、GMAは他 の薬物療法との併用効果も期待される。 GMAは顆粒球と単球を吸着除去する治療法であるが、それら の血球成分を物理的に除去するだけではなく、TNF-α、IL-1β、 IL-6、IL-8といったさまざまな炎症性サイトカインの産生能を低下さ せることが重要な機序として確認されている。GMAの効果発 現は緩徐であるが、1週間に2回以上施行する集中治療を行 うことで、その有効性はさらに上がり、効果発現も早くなることが確 認されている。 そこで期待されるのが、GMAと生物学的製剤を用いた抗サイト カイン療法の併用効果である。Tanidaらは3)、難治性UC10例に おいて抗TNF-α抗体製剤であるアダリムマブとGMA集中治療の 併用効果を検討した結果(図7)、10週の時点でMayoスコアが 有意に低下し、内視鏡的にも有意に改善したことを報告している (図8)。さらに、52週後も33.3%で寛解が維持されていた。 我々の施設でも同様の治療経験がある。ステロイド治療が無効 であったUC症例に対し、アダリムマブ投与とGMA集中治療を同 時に施行したところ、GMA後にCRPの上昇がみられたが、その後 は徐々に低下し安定して推移した(図9)。その後の内視鏡検査 による観察ではほぼ粘膜治癒に近い状態まで改善した。 炎症性サイトカイン産生能を低下させるGMAとTNF-αの働きを ブロックする抗TNF-α抗体製剤という異なる作用機序を持つ 治療法を組み合わせることで、従来の治療よりもさらに上の治療と して、重症例や難治例に対する有用性が期待される。また、この ような難治例に対して抗TNF-α抗体製剤で治療を行うと、160、 80mgという治療期の投与量では炎症反応は良好に低下しても、 40mgという維持量に減量すると状態が悪化する症例をたびたび 経験する。そのような症例にもGMA集中治療を併用することで、 副作用の出現を増加させることなく寛解維持率を高めることが できるのではないかと考えられることから、現在さらに検討を重ね ているところである。 高齢患者の治療において、頭痛や疲労感などの軽い副作用 のみで重篤な副作用の出現を認めないGMAの有用性は高い。 さらに重症例や難治例には、抗TNF-α抗体製剤にGMAを併用 することで改善率を引き上げることができる可能性があることは 臨床的に非常に意義があると考える。 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1) Tibble JA, et al. Gastroenterology. 2000; 119(1): 15-22. 2) Dignass A, et al. J Crohns Colitis. 2016; 10(7): 812-820.

図9ステロイド抵抗性UC症例に対するアダリムマブと GMA集中治療(治療経過) 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 2015 /11/ 13 2015 /12/ 13 2016 /1/1 3 2016 /2/1 3 2016 /3/1 3 2016 /4/1 3 2016 /5/1 3 2016 /6/1 3 2016 /8/1 3 2016 /9/1 3 2016 /7/1 3 0 8 ステロイド (mg/日) GMA 2 4 6 CF CF CRP Mayoスコア 5-ASA 3600mg アダリムマブ 40mg 図8アダリムマブとGMA集中治療10週後の併用効果

Tanida S, et al. J Clin Med Res. 2015; 7(11): 884-889. 10週後 ベースライン Mayo スコア 0 3 6 9 12 (Points) 検定:Paired t-test 10週後 内視鏡的サブスコア 0 1 2 3 (Points) P<0.01 P<0.01 ベースライン

難治例に対するGMAの有効性

抗TNF-α抗体製剤との併用も

GMAの新たな活用に期待

(5)

Suzukiらは1)、GMAの効果に影響を与える臨床因子について、 初発例では再燃例よりもGMAの効果が高く、有効例は無効例に 比べて罹病期間が短いことを報告している。またYokoyamaら は2)、寛解例では無効例と比較し、罹病期間、再燃してからの GMA施行までの期間が短く、さらにステロイド総投与量、初回 GMA施行時の白血球数が少ないことを報告している。 当施設でもGMAを施行したUC50例(重症18例、中等症32例) で、GMAの効果に影響を与える臨床因子について検討している3) その結果、GMA治療開始時のステロイド投与量と、治療開始 までのステロイド総投与量の2つの因子で差が認められ(図1)、 いずれもステロイド投与量が少ないほどGMAの効果が高いこと が示された。 ステロイドナイーブ症例に対するGMAの効果を報告した既報の 論文を調べてみると、いずれの報告でもGMAによる寛解導入率 は80%前後と高いことが示されている4-6)。さらに、Bresciらは7) 活動期のUC 80例を無作為にGMA治療群とステロイド治療群に 割り付け、両群の有効性を比較した結果、有意差は認められない ものの、ステロイド群に比べGMA群では寛解導入率および12ヵ月 後の寛解維持率が高い傾向にあり、副作用は有意に低いことを 報告している。 Faubionらの報告では8)、ステロイド治療を行った重症のUC 63例の治療効果を検討した結果、治療開始1ヵ月後には54%が 完全寛解、30%が部分寛解と、約80%の有効性を示したが、1年後 の寛解維持率は約50%であり、22%の症例ではステロイド依存性 を示したと報告している。さらにHanaiらは9)、重症のUC70例を対 象にGMAで治療する群とステロイド静注で治療する群に無作 為に割り付け有効性を検討した結果、治療開始12週後には GMA群でステロイド群を上回る有効性を示し、寛解維持率も 高かったことを報告しており、ステロイドフリーとなった率もGMA群 で有意に高く、GMA治療によりステロイドの投与量を減らすことが できることを報告している(図2)。 今もなお中等症や重症の活動性UC治療における標準薬はステ ロイドであるが、ステロイド治療が長期化したり投与量が高用量に いたると依存性や副作用の問題が出てくる。このような問題に対し GMAを効果的に導入することで、ステロイドの投与量を減らし、 投与期間を短くすることができれば大きなメリットであると考えられる。

Yamamoto T, et al. Dig Liver Dis. 2007; 39(7): 626-633.

図1GMAの効果に影響を与える臨床因子 0-1 mg/kg/日 P=0.02 12/27 ≧1 P=0.01 1/6 0 13/17 0-5 g 17/29 ≧5 2/12 0 7/9 治療開始時 ステロイド投与量 ステロイド総投与量 治療開始までの 臨床的寛解率 0 20 40 60 80 100 (%) 検定:Chi-square test 図2重症の潰瘍性大腸炎に対する治療効果

Hanai H, et al. Dig Liver Dis. 2008; 40(6): 433-440.

GMA:11回施行、ステロイド:40~60mg/日 静注 2週後 17 26 6週後 5451 12週後 74 49 12週後 77 14 0 20 40 60 80 100 (%) 寛解率 ステロイド離脱率 ■ GMA(n=35)  ■ ステロイド(n=35) P=0.02 P=0.008 N.S N.S 検定:Chi-square test

ステロイドナイーブ症例に対する

GMAの有効性

ステロイド治療の問題点に対する

GMAの効果

潰瘍性大腸炎治療における

GMA導入のタイミング

 潰瘍性大腸炎(UC)治療における顆粒球吸着療法(GMA)の効果を最大限引き出すための導入のタイミングに

ついて考えてみたい。そのためにGMAの効果に影響を与える因子について整理し、さらにステロイド未使用、いわゆる

ステロイドナイーブ症例に対するGMAの効果と、ステロイド依存例や副作用の問題に対するGMAの効果について検討

する。また、最近行ったUC術後の回腸嚢炎に対するGMAの効果を検討した多施設試験の結果も併せてご紹介する。

四日市羽津医療センター IBDセンター 

山本 隆行

先生

講演 2

(6)

図6副作用発現率

Yamamoto T, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6(7): 750-755.

検定:Chi-square test GMA治療群 ステロイド治療群 P値 ステロイド関連 8(40%) 16(80%) 0.02  ムーンフェイス 5 12  痤瘡 3 6  皮膚線条 2 5  多毛 2 3  月経困難症 0 2  浮腫 1 2  頭痛 1 2  骨粗鬆症 0 2  その他 1 4 GMA関連 5(25%) ー  頭痛 4 ー  疲労感 3 ー  発熱 3 ー  吐気 1 ー  めまい 1 ー 合計 13 (65%) 16 (80%) 0.48 図5ステロイド依存回避率

Yamamoto T, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6(7): 750-755.

77 14 0 10 20 30 0 40 50 60 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 (月) P=0.02 ス テ ロ イ ド 依存回避率 経過 ■ GMA治療群  ■ ステロイド治療群 検定:Log-rank test そこで、当施設で行った早期GMA導入の有用性を検討した 結果を紹介する10)。中等症で広範な病変部位を有する初発の UC症例を対象として、GMA群20例(必要に応じてステロイド投与) と、ステロイド単独治療群20例の5年間の治療経過を検討した (図3)。両群ともに寛解導入後は原則として5-ASA製剤で寛解 維持療法を行い、再燃した場合は、GMA群は再度GMAを施行、 ステロイド群はステロイド治療を行った。 GMAは週に1回施行し、1、2回施行したところで効果を確認し、 ステロイド投与を行わずに治療継続が可能であればGMAのみを 継続し、ステロイド投与が必要な症例には最小限のステロイドを 投与した。GMAを5回施行後に寛解に至らない場合にはさらに GMAを5回施行した(図4)。 初回治療におけるGMA群の治療結果は、ステロイドを必要と しなかった症例が7例(35%)であった。残りの症例ではステロイ ド投与を要したが、ステロイドの使用量は3例で20mg/日、5例で 数は5回が12例(60%)、10回が8例(40%)であった。 両群とも全例で寛解導入に至り、5年後の寛解維持率は両群 とも約15%と有意差はなく、再燃した回数もGMA群で平均2.8回、 ステロイド群で平均2.9回と有意差を認めなかったが、ステロイド の総投与量はステロイド群が5,443mgであったのに対しGMA群 では2,141mgと有意に少なく、ステロイド依存性を示した症例も GMA群で有意に少ないことが示された(図5)。 また、副作用に関しては、GMAにも頭痛や疲労感といった軽微 な副作用はあることから、全体としての副作用発現率はGMA群 が65%、ステロイド群が80%と両群間に有意差を認めなかったが、 ステロイドに特有の副作用の発現率は、ステロイド群では16例 (80%)であったのに対しGMA群では8例(40%)と有意に低いこと がわかった(図6)。 現在のUC治療におけるGMAは、5-ASA製剤やステロイドに よる治療を行い、ステロイド依存性やステロイド抵抗性を示す症例 に対して導入する治療法と位置付けられているが、ステロイド ナイーブ症例に対するGMAの効果や、ステロイド依存性や副作用 といったステロイド治療の問題点に対するGMAの有用性から、 当院では5-ASA製剤で適切な初期治療を行った上で、十分な 図3試験デザイン

Yamamoto T, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6(7): 750-755.

GMA ± ステロイド n=20 GMA治療群 * 臨床効果により減量または中止 ● 寛解後は5-ASA製剤による維持療法 ● 再燃時は初回治療と同じ治療を実施 ステロイド n=20 ステロイド治療群 ステロイド 30-40mg/日* UC 初回発症 中等度活動性 広範な病変 5年の経過観察 図4GMA施行方法

Yamamoto T, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6(7): 750-755.

1週 2週 3週 4週 5週 1週 2週 3週 4週 5週 基本コース アダカラム 追加施行 ● 週1回 ● 5回施行 ● 血液処理時間90分、   設定流量30mL/分 臨床的寛解に至らない場合、 GMAを5回追加で施行 ステロイド20~40mL/日* ● GMAに反応しない症例の場合 ●GMA施行中に症状の悪化を認めた場合 * 臨床効果により減量または中止

早期GMA導入の有用性を検討

GMAの早期導入により

ステロイド量の低減が可能に

(7)

効果が認められない症例に対してはステロイド治療の前にGMA を導入しており、その方がステロイド投与量の低減やそれに伴う 副作用の軽減など、得られるメリットは大きいのではないかと考え ている(図7)。 UCの術後の回腸嚢炎の頻度は、術後1年で15%、5年で33%、 10年で45%と言われている。回腸嚢炎に対してはメトロニダゾール やシプロフロキサシンなどの抗生物質による治療を行うが、これら の抗生物質が効かない難治性の回腸嚢炎に対してはステロイド や免疫調節薬、生物学的製剤を使った治療が必要となる。最近 そのような難治性の回腸嚢炎の症例に対するGMAの効果を 検討するオープンラベル前向き多施設共同試験を行ったので 結果を紹介する11)

PDAI(Pouchitis Disease Activity Index)>7の回腸嚢炎で 2週間の抗生物質による治療に反応しなかった13例に対しGMA を週2回施行し、5週後のGMA10回終了後に有効性を評価した (図8)。有効性の評価はPDAIスコアが3ポイント以上低下した 場合を有効、PDAI<4になった場合を寛解と定義した。対象と なった13例には様々な抗生物質が投与されており、さらにステ ロイド坐薬や、5-ASA製剤の経口薬や坐薬、生物学的製剤も投与 されていたものの効果が得られておらず、さらにパウチ作成からの 期間は平均81ヵ月と炎症が慢性化している難治例であった。 GMA10回施行後の結果を図9に示す。PDAIスコアは有意に 減少し、有効は6例(46%)であったものの寛解に至った症例は いなかった。内視鏡的サブスコアもGMA前後で有意差はなく、白 血球数やCRP、糞便中のバイオマーカーも有意な変化はなかっ た。約半数の症例でGMA治療に反応し臨床症状の改善を示した ものの、寛解には至らなかったことから、このような難治性の回腸 嚢炎の症例に対してGMAが有効であるとは言えないものの、 GMAの反応性から考察すると、ここまで罹病期間が長くなる前の もう少し早い段階でGMAを施行すれば、より高い効果が得られ るのではないかと考えている。 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1) Suzuki Y, et al. Dig Dis Sci. 2006; 51(11): 2031-2038. 2) Yokoyama Y, et al. BMC Gastroenterol. 2013; 13: 27. 3) Yamamoto T, et al. Dig Liver Dis. 2007; 39(7): 626-633. 4) Hanai H, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2003; 1(1): 28-35. 5) Suzuki Y, et al. Dig Dis Sci. 2004; 49(4): 565-571.

6) Tanaka T, et al. Dig Liver Dis. 2008; 40(9): 731-736.

7) Bresci G, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2008; 23(11): 1678-1682. 8) Faubion WA Jr, et al. Gastroenterolgy. 2001; 121(2): 255-260. 9) Hanai H, et al. Dig Liver Dis. 2008; 40(6): 433-440.

10) Yamamoto T, et al. J Crohns Colitis. 2012; 6(7): 750-755. 11) Yamamoto T, et al. Ther Adv Gastroenterol. 2016; (in press).

図7潰瘍性大腸炎に対する早期GMA導入療法 四日市羽津医療センター IBDセンター GMA治療 GMA治療 免疫調節薬 生物学的製剤 免疫調節薬 生物学的製剤 早期導入法 従来法 ステロイド依存性 ステロイド抵抗性 反応なし 5-ASA製剤 高用量 5-ASA製剤 ステロイド ステロイド

Yamamoto T, et al. Ther Adv Gastroenterol. 2016; (in press).

図8試験デザイン エントリー 1週 2週 3週 4週 5週 アダカラム PDAI 血液検査 検便 内視鏡検査 スクリーニング PDAI 血液検査 検便 内視鏡検査 2週間の抗生物質治療に 反応しないPDAI>7の13症例 有効:PDAI 3ポイント以上低下 寛解:PDAI<4 有効性評価 エントリー 図9 難治性回腸嚢炎の症例に対するGMAの効果

Yamamoto T, et al. Ther Adv Gastroenterol. 2016; (in press). エントリー時 GMA施行後 0 8 6 4 2 10 12 14 16 PDAI スコア P=0.02 エントリー時 GMA施行後 0 4 3 2 1 5 6 内視鏡サブスコア P=0.10 有効6例(46%) 寛解0例

検定:Wilcoxon signed-rank test

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JDDW 2016 KOBE

ランチョンセミナー 42

潰瘍性大腸炎における

GMA治療の最適化

~治療効果の最大化を目指して~

2016年11月4日(金)

12:30~13:40

日 時

会 場

ポートピアホテル

大輪田A(第4会場)

滋賀医科大学 消化器内科 

安藤 朗

先生 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 

竹内 健

先生

潰瘍性大腸炎の治療における

GMAの可能性

―活動期と寛解期の新しい使用法―

四日市羽津医療センター IBDセンター 

山本 隆行

先生

潰瘍性大腸炎治療における

GMA導入のタイミング

講演 1

司会挨拶

講演 2

〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-41-12 富ヶ谷小川ビル TEL 0120-677-170(フリーダイヤル) FAX 03-3469-9352 URL http://www.jimro.co.jp AD201703KSYS  近年、日本でも潰瘍性大腸炎(UC)治療 に非常に多くの治療法が導入された。 生物学的製剤を始めとしたそれらの強力 な治療法は高い有効性を示すものの、 そこには常に副作用の懸念が付きまとう。 そのような中で顆粒球吸着療法(GMA)は、 現在の治療指針ではステロイド抵抗性や 依存性を示す難治例に用いる治療として 位置付けられている。GMAは他の薬物 治療とは異なる作用機序で効果を発揮する治療法であり、尚且つ 安全性を考慮すると、難治例だけではなくもっと活用すべき場面が 多いのではないかと考えられる。本日はお二人のエキスパートの 先生方にご講演いただき、治療効果の最大化を目指したGMA治療 の最適化について考えてみたい。 明石海峡大橋 神戸ポートタワー 風見鶏の館(旧トーマス邸)

参照

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