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はじめに いつでも どこでも 何でも 誰でも ネットワークに接続し 情報を自在に授受できるユビキタスネットワークが実現に向かいつつある ( 平成 18 年度版情報通信白書総務省 ) そのような中で 電波利用は急速に発展し 日常生活を送る上で必要不可欠なものとなってきている 他方 電波が心臓ペースメー

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別 添 2

電波の医療機器等への影響に関する

調査研究報告書

平成19年3月

総 務 省

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はじめに

「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに接続し、情報を自在に授受で きるユビキタスネットワークが実現に向かいつつある(平成18年度版情報通信白書 総務 省)。そのような中で、電波利用は急速に発展し、日常生活を送る上で必要不可欠なものと なってきている。他方、電波が心臓ペースメーカ等の医療機器に及ぼす影響は社会的な関 心を呼んでいる。このため、最新の実証試験による正しい情報を国民に提供し、電波に対 する不安を解消することが必要となっている。 電波が医療機器に及ぼす影響については、平成9年3月に不要電波問題対策協議会(現電 波環境協議会)が「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用 に関する指針」を策定した。その後総務省は、電波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼ す影響に関して調査研究を行った。 平成13年度には携帯電話端末による影響、平成14年度にはワイヤレスカードシステムと 電子商品監視機器(EAS機器)による影響、平成15年度には電子商品監視機器、無線LA N装置、ゲートタイプとハンディタイプのRFID機器による影響、平成16年度には携帯電 話端末とRFID機器による影響について調査し、その結果を公表するとともに、平成17年8 月にはこれらの調査結果に基づいた指針を発表している。平成17年度には携帯電話端末に よる影響についての調査とこれまでの調査研究や国内外の規格等を踏まえ、携帯電話端末 の電波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼす影響の分析に関する調査研究を行った。 RFID機器については、平成17年度にUHF帯の周波数を用いた機種が市場に投入されて きている。また携帯電話端末の進歩は著しく、前回調査が実施された平成17年度以降にも 新方式や新機種が市場投入されてきている。また、植込み型心臓ペースメーカ等について も新たな装置が承認を受け提供されている。そこで、これらRFID機器、携帯電話端末を 安心して利用できる電磁環境が維持されているかについて更に検証する必要がある。 このような状況から総務省は、RFID機器、携帯電話端末から発射された電波が植込み 型心臓ペースメーカと植込み型除細動器に及ぼす影響についての調査研究を社団法人電波 産業会に委託した。

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社団法人電波産業会は、RFID機器、携帯電話端末から発射される電波が植込み型心臓 ペースメーカ等に及ぼす影響に関する調査研究を行い、その調査研究結果から現在の指針 の改定に資することを目的として、「電波の医療機器等への影響に関する調査研究会」を設 置した。同調査研究会では、ペースメーカ協議会、社団法人日本自動認識システム協会、 通信事業者から国内で普及している代表的な実機の提供を受け、電波の医療機器等への影 響に関する調査を行うとともに、RFID機器及び携帯電話端末の電波が植込み型心臓ペー スメーカ等に及ぼす影響の電磁干渉試験、RFID機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ 等に及ぼす影響の分析に関する調査研究を行った。 本報告書は、これらの調査内容及び研究結果をとりまとめたものである。

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電波の医療機器等への影響に関する調査研究報告書

目 次

はじめに 第Ⅰ編 UHF帯RFID機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響の 調査検討 --- 1 第1 章 UHF 帯 RFID 機器から発射される電波による植込み型心臓ペースメーカ等 への電磁干渉試験 --- 2 1.1 試験対象機器 --- 2 1.1.1 植込み型心臓ペースメーカ等 --- 2 1.1.2 RFID機器 --- 4 (1)RFIDの概要 --- 4 (2)RFID機器の種別 --- 5 (3)試験対象RFID機器 --- 6 1.2 試験装置の構成 --- 7 1.2.1 人体ファントムと植込み型心臓ペースメーカ等の設置方法 --- 7 1.2.2 測定装置類の接続 --- 8 1.2.3 試験実施場所 --- 9 1.3 試験条件 --- 9 1.3.1 植込み型心臓ペースメーカ等のプログラム設定 --- 9 1.3.2 植込み型心臓ペースメーカ等の動作状態 --- 12 1.3.3 植込み型心臓ペースメーカ等とRFID機器の配置 --- 13 1.4 試験の実施方法 --- 13 1.4.1 植込み型心臓ペースメーカ等の感度設定 --- 13 i

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-1.4.2 試験手順 --- 13 (1)試験1 --- 13 (2)試験2 --- 14 1.4.3 干渉の有無の判定 --- 15 (1)干渉の判定 --- 15 (2)電磁的環境による影響度合いの分類 --- 16 1.4.4 試験手順のフローチャート --- 18 (1)シングルチャンバー型ペースメーカ/ICDフローチャート --- 18 (2)デュアル、トリプルチャンバー型ペースメーカ/ICDフローチャート ---- 19 (3)シングルパスVDD型ペースメーカフローチャート --- 20 第2章 試験結果に基づく植込み型心臓ペースメーカ等への影響の分析 --- 21 2.1 ハンディタイプRFID機器が及ぼす影響 --- 21 2.1.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 --- 21 2.1.2 植込み型除細動器が受ける影響 --- 21 (1)ペースメーカ機能への影響 --- 22 (2)除細動機能への影響 --- 22 2.2 据置きタイプRFID機器が及ぼす影響 --- 22 2.2.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 --- 22 (1)影響発生の頻度 --- 22 (2)影響を受けた距離 --- 23 2.2.2 植込み型除細動器が受ける影響 --- 23 (1)ペースメーカ機能への影響 --- 24 (2)除細動機能への影響 --- 25 2.3 モジュールタイプRFID 機器が及ぼす影響 --- 26 2.3.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 --- 26 2.3.2 植込み除細動器が受ける影響 --- 26 (1)ペースメーカ機能への影響 --- 26 (2)除細動機能への影響 --- 26 ii

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-第3章 影響発生防止のための対応について --- 27 3.1 試験結果 --- 27 3.1.1 試験対象機器 --- 27 3.1.2 試験結果 --- 27 (1)ハンディタイプUHF 帯 RFID 機器の場合 --- 27 (2)据置きタイプUHF 帯 RFID 機器の場合 --- 28 (3)モジュールタイプUHF 帯 RFID 機器の場合 --- 28 3.2 植込み型心臓ペースメーカ等への電波の影響を防止するための指針 --- 29 3.2.1 ハンディタイプUHF 帯 RFID 機器の対応策 --- 29 3.2.2 据置きタイプUHF 帯 RFID 機器の対応策 --- 29 3.2.3 モジュールタイプUHF 帯 RFID 機器の対応策 --- 31 3.3 産業界の対応 --- 31 3.3.1 社団法人日本自動認識システム協会の対応 --- 31 3.3.2 ペースメーカ協議会の対応 --- 32 3.4 次年度へ向けての課題 --- 32 参考文献 --- 32 第Ⅱ編 1.7GHz帯W-CDMA方式携帯電話端末の電波が植込み型心臓ペースメーカ等 へ及ぼす影響の検討 --- 33 第1章 1.7GHz 帯 W-CDMA 方式携帯電話端末から発射される電波による植込み型 心臓ペースメーカ等への電磁干渉試験 --- 35 1.1 試験対象機器 --- 35 1.1.1 植込み型心臓ペースメーカ等 --- 35 1.1.2 携帯電話端末 --- 37 1.2 試験装置の構成 --- 39 1.2.1 人体ファントムと植込み型心臓ペースメーカ等の設置方法 --- 39 1.2.2 測定装置類の接続 --- 40 1.2.3 試験実施場所 --- 41 1.3 試験条件 --- 41 iii

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-1.3.1 植込み型心臓ペースメーカ等のプログラム設定 --- 41 1.3.2 植込み型心臓ペースメーカ等の動作状態 --- 45 1.3.3 発射電波と変調フォーマット --- 45 1.3.4 植込み型心臓ペースメーカ等と電波発射源の配置 --- 47 1.4 試験の実施方法 --- 48 1.4.1 植込み型心臓ペースメーカ等の感度設定 --- 48 1.4.2 試験手順 --- 48 (1)試験1 --- 49 (2)試験2 --- 49 1.4.3 干渉の有無の判定 --- 50 (1)干渉の判定 --- 50 (2)電磁的環境による影響度合いの分類 --- 50 1.4.4 試験手順のフローチャート --- 53 (1)シングルチャンバー型ペースメーカ/ICDフローチャート --- 53 (2)デュアル、トリプルチャンバー型ペースメーカ/ICDフローチャート ---- 54 (3)シングルパスVDD型ペースメーカフローチャート --- 55 第2章 試験結果に基づく植込み型心臓ペースメーカ等への影響の分析 --- 56 2.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 --- 56 2.1.1 試験結果 --- 56 2.1.2 影響分布 --- 57 2.2 植込み型除細動器が受ける影響 --- 58 2.2.1 ペースメーカ機能への影響 --- 59 2.2.2 除細動機能への影響 --- 59 第3章 影響防止のための対応について --- 61 3.1 現行指針 --- 61 3.2 今回の調査結果 --- 61 3.3 現行指針の妥当性 --- 61 参考文献 --- 62 iv

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-第Ⅲ編 携帯電話の電波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼす影響の要因分析電磁 干渉試験及びRFID 機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響 の要因分析 --- 63 第1章 携帯電話端末の電波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼす影響の要因分析 電磁干渉試験 --- 63 1.1 植込み型心臓ペースメーカ・植込み型除細動器の設定等 --- 63 1.1.1 試験対象植込み型心臓ペースメーカ等 --- 63 1.1.2 試験装置の構成 --- 65 1.1.2.1 人体ファントムと植込み型心臓ペースメーカ等の設置方法 ---- 65 1.1.2.2 測定装置類の接続 --- 66 1.1.3 試験条件 --- 67 1.1.3.1 植込み型心臓ペースメーカ等のプログラム設定 --- 67 1.1.3.2 植込み型心臓ペースメーカ等の動作状態 --- 70 1.1.3.3 植込み型心臓ペースメーカ等と電波発射源の配置 --- 71 1.1.3.4 植込み型心臓ペースメーカ等の感度設定 --- 71 1.1.3.5 干渉の有無の判定 --- 72 (1)干渉の判定 --- 72 (2)電磁的環境による影響度合いの分類 --- 72 1.2 電磁干渉試験の基礎試験 --- 74 1.3 周波数試験 --- 74 1.3.1 試験方法 --- 74 1.3.2 使用測定機器の基本諸元 --- 75 1.3.3 設定・固定パラメータ --- 76 1.3.4 試験結果 --- 76 1.4 アンテナ入力電力試験 --- 79 1.4.1 試験方法 --- 79 1.4.2 使用測定機器の基本諸元 --- 79 1.4.3 設定・固定パラメータ --- 79 1.4.4 試験結果 --- 80 v

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-1.5 断続波形試験 --- 81 1.5.1 試験方法 --- 81 1.5.2 使用測定機器の基本諸元 --- 81 1.5.3 設定・固定パラメータ --- 82 1.5.4 試験結果 --- 82 1.6 断続時間試験 --- 85 1.6.1 試験方法 --- 85 1.6.2 使用測定機器の基本諸元 --- 85 1.6.3 設定・固定パラメータ --- 85 1.6.4 試験結果 --- 85 1.7 立上り/立下り時間試験 --- 89 1.7.1 試験方法 --- 89 1.7.2 使用測定機器の基本諸元 --- 89 1.7.3 設定・固定パラメータ --- 90 1.7.4 試験結果 --- 90 第2章 RFID 機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響の要因分析 --- 93 2.1 RFID 機器の種別 --- 93 2.2 試験パラメータの選定 --- 94 2.2.1 周波数試験 --- 96 (1)電磁誘導方式R/W --- 96 (2)電波方式R/W --- 96 2.2.2 アンテナ入力電力試験 --- 96 (1)電磁誘導方式R/W --- 96 (2)電波方式R/W --- 97 2.2.3 断続波形試験 --- 97 (1)電磁誘導方式R/W --- 97 (2)電波方式R/W --- 98 2.2.4 立上り/立下り時間試験 --- 98 (1)電磁誘導方式R/W --- 98 vi

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(2)電波方式R/W --- 99 2.3 試験方法 --- 99 2.3.1 人体ファントムの構成 --- 99 2.3.2 RFID 機器のシミュレーションシステム --- 100 (1)電磁誘導方式 --- 100 (2)電波方式 --- 100 参考文献 --- 101 第Ⅳ編 電車内での携帯電話の電波が植込み型心臓ペースメーカ等に及ぼす影響 --- 102 1 背景 --- 102 2 電波産業会電磁環境委員会での調査研究 --- 102 3 調査研究会の見解 --- 103 参考文献 --- 103 付録1 要因分析調査実施のための基礎試験 --- 104 付録2 微弱無線局・誘導式通信設備の電界強度の許容値及びARIB 標準規格と 空中線電力 --- 107 付録3 植込み型心臓ペースメーカの感度変更試験 --- 109 おわりに 附属資料 (1)「電波の医療機器への影響に関する調査研究会」設置要綱 --- 附 1 (2)「電波の医療機器への影響に関する調査研究会」ペースメーカ分科会 設置要綱 --- 附 4 (3)「電波の医療機器への影響に関する調査研究会」審議経過 --- 附 10 vii

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-第Ⅰ編

UHF 帯 RFID 機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影

響の調査検討

RFID機器から発射される電波が医療機器に及ぼす影響調査については、平成15年度に 「ゲートタイプ」及び「ハンディタイプ」を対象とし、平成16年度では「据置きタイ プ」及び「その他のタイプ」を対象とした干渉実験による詳細な調査を実施した。 RFID機器に対してはその後新たにUHF帯域での利用が平成17年に認められ、UHF帯域 の周波数を利用した機器の市場への投入が開始されている。そこで、RFID機器の運用に対 する指針の妥当性及び同指針の下でRFID機器を安心して利用できる電磁環境が維持され ていることの確認を目的に、UHF帯RFID機器から発射される電波を植込み型心臓ペース メーカ及び植込み型除細動器を網羅するように選択された機種に照射する方法で電波が及 ぼす影響に関する調査を行った。 本編は、上記のUHF帯RFID機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細 動器に及ぼす影響に関する調査結果を取り纏めたものである。 1

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-第 1 章

UHF 帯 RFID 機器から発射される電波による植込み型心臓ペースメーカ等へ

の電磁干渉試験

RFID機器から発射される電波による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器 への影響に関する調査方法は、平成16 年の総務省報告書[1]及び平成17 年の総務省報告書 [2]で扱われているデータとの整合性を考慮し、これら調査研究での試験方法と原則同じと した。植込み型心臓ペースメーカ等が人体内に装着された状態を再現するのに用いる人体 ファントムは、前述の調査研究に用いた人体ファントムと同様のものを今回も使用した。 試験対象としたUHF帯RFID機器は、社団法人電波産業会のARIB STD-T89[3]又はARIB STD-T90[4]に準拠した機器である。 1.1 試験対象機器 1.1.1 植込み型心臓ペースメーカ等 植込み型心臓ペースメーカ等の平均寿命は5~7年であり、新世代機種の市場投入は2年 以上の周期が通例となっている。新世代機種が市場投入される場合、シングルチャンバー 型、デュアルチャンバー型、レート応答機能の有無などの機能的な区分に従って数機種が 1つのグループとして同時に投入されるのが常であるが、同一グループ内の各機種は機能 的にサブセット構成をなすものであり、電気的な性能には差がないと考えられる。従って、 市場に投入されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器の網羅性は、各世 代の代表的な機種を選定すれば確保することができ、平成12年度の調査以降、Ⅰ期(平 成7年以前)、Ⅱ期(平成8~10年)、Ⅲ期(平成11~14年)、Ⅳ期(平成15年以降)か ら、電気的性能の面から実際に市場で動作しているすべての機器を網羅していると解釈さ れる代表的な機種を試験対象とし、その後新たに輸入販売承認が得られたものを試験対象 として追加している。 試験対象とした植込み型心臓ペースメーカ等は日本医用機器工業会ペースメーカ協議会 から提供を受けた。試験に用いた植込み型心臓ペースメーカ等の機種と販売時期の分類を 表Ⅰ-1-1に示す。 2

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-表Ⅰ-1-1 植込み型心臓ペースメーカ等の機種と販売時期と試験台数 SSI DDD VDD CRT-P (TDD) ICD-S ICD-D CRT-D Ⅰ期 (H7以前) 2 0 0 0 0 0 0 Ⅱ期 (H8~H10) 3 2 0 0 1 0 0 Ⅲ期 (H11~H14) 1 8 3 0 2 2 0 1 Ⅳ期 (H15以降) 0 10 0 2 0 7 2 2 6 20 3 2 3 9 2 国内販売時期 機 種 (台) 植込み型心臓ペースメーカ 植込み型除細動器 合計 合 計 45 31 14 2 6 6 1 この表において、表記されている略称は以下のとおりである。 SSI :シングルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ DDD :デュアルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ VDD :シングルパスVDD型植込み型心臓ペースメーカ CRT-P(TDD) :心不全治療用トリプルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ ICD-S :シングルチャンバー型植込み型除細動器 ICD-D :デュアルチャンバー型植込み型除細動器 CRT-D :心不全治療用トリプルチャンバー型植込み型除細動器 植込み型心臓ペースメーカ等では多くの機種が、複数のペーシングモードを設定できる。 本調査研究では、それぞれの植込み型心臓ペースメーカ等においてペーシングモードを変 えて試験を行った。 以下に植込み型心臓ペースメーカ等の機種及びペーシングモードについて解説する。 AAI:心房電極を使用。設定された期間内に心房自己リズムがない場合、電気刺激を発生 して心房の収縮を促す。心房自己リズムがあった場合には刺激を発生することを抑 制する。 VVI:心室電極を使用。設定された期間内に心室自己リズムがない場合、電気刺激を発生 して心室の収縮を促す。心室自己リズムがあった場合には刺激を発生することを抑 3

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-制する。 SSI:AAI、VVIに用いるペースメーカ本体は、同一であるため製造販売業者の呼称とし て用いられる。 DDD:心房及び心室の電極を使用。AAIとVVIが合わさった機能をもち、AVディレイと 呼ばれる心房心室のタイミングのずれを有した状態で作動する。複雑な作動状態 を示すが、生理的ペーシングが可能である。 VDD:心房内に感知専用電極をもった1本の電極を用いて心室へ到達させ、AVディレイ と呼ばれる心房心室のタイミングのずれを有した状態で心室ペーシングを行う。 心房内電極は心腔内に浮遊するため通常より高感度の設定が可能である。 CRT-P(TDD):左心室と右心室の収縮タイミングがずれている心不全治療用で、両心室を 刺激して収縮の同期化を図るペースメーカで、動作の基本原理はデュアルチャン バーペースメーカと同一である。 ICD-S:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(SSIペーシング機能付き) ICD-D:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(DDDペーシング機能付き) CRT-D:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(CRT-Pペーシング機能付き) 1.1.2 RFID 機器 (1)RFIDの概要 RFIDは、RFタグの小型化等によりその利用分野が製造管理や物流管理、在庫管理、商 品等の精算、製品の履歴管理、位置検出、盗難防止、事故防止等々近年劇的に広がってき ている。RFタグは、いつでも、どこでも、誰でもがネットワークに接続可能なユビキタス ネットワークを実現する主要構成要素の一つと考えられている。RFIDはリーダライタとR Fタグから構成されており、その間の通信は電波によって行われる。植込み型心臓ペースメ ーカ等への影響は、一般的に電波の強度が高いほど大きくなる。本調査研究では、RFIDリ ーダライタから発射される電波を植込み型心臓ペースメーカ等へ照射する方法により実施 した。 4

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-表Ⅰ-1-2 各タイプの用途例 タイプ 用 途 ゲートタイプ 図書館、入退出、店舗、 アミューズメント ほか ハンディタイク 回転寿司、イベント、物品管理、 流通、トレース ほか 据置きタイプ ガソリンスタンド、 アミューズメント ほか モジュールタイプ プリンタ、本棚、 その他に内蔵し使用 (3)試験対象RFID機器 今回試験に用いたRFID機器は高出力型 950MHz帯パッシブタグシステム(ARIB STD-T89[3]に準拠)又は低出力型950MHz帯パッシブタグシステム(ARIB STD-T90[4]に準拠) であり、試験対象RFID機器は市販製品及び市販予定品の中から選定した。選定したRFID 機器のタイプ別一覧を表Ⅰ-1-3に示す。なお、据置きタイプの機器でアンテナの設置 (横方向に向ける)によってゲートを構成しているタイプについては、本調査研究では据 置きタイプに含めることとした。また、試験ではRFID機器本体が同一であっても電波の送 信方法を変えた場合には別機種として扱っている。 表Ⅰ-1-3 試験対象RFID 機器一覧 タイプ 台数(台) 備 考 ハンディ 3 ARIB STD-T90 に準拠 据置き 12 ARIB STD-T89 に準拠 モジュール 2 ARIB STD-T90 に準拠 合計 17 ― 試験対象としたRFID 各機器は、(社)日本自動認識システム協会の会員企業より提供 を受けた。 ARIB STD(標準規格)は、周波数の有効利用及び混信の防止を図る目的から定められる 「国の技術基準」(強制規格)と、無線設備の互換性の確保、適正な伝送品質等、無線機 器製造業者、利用者等の利便を図る目的から定められる「民間の技術基準」(任意規格) とを含み、電波を利用するシステムに関する標準的な規格である。 6

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-その他の項目 … その機種の標準設定 ② デュアルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカの場合 動作モード … AAI(R)及びVVI(R)の双方で試験を行う。 使用電極 … 人体ファントムの心房電極及び心室電極を通常のDDD接続で 使用する。 電極極性 …極性を選択できる場合、心房側、心室側の双方について、単極、 双極の順で試験を行う。 レート … 60ppm 不応期 … 心房、心室とも最短設定 感度 … 測定手順に従う。 その他の項目 … その機種の標準設定 ③ シングルパスVDD型植込み型心臓ペースメーカの場合 動作モード … VVI(R)及びVDD(R)モードの双方で試験を行う。VDDモード での試験では、同期信号として、レート60ppmで振幅がその機 種が応答しうる最小振幅の約2倍の擬似心電位信号を心房側に 注入しながら試験を行う。 使用電極 … 専用電極 電極極性 … 極 性 を 選 択 で き る 場 合 、 単 極 、 双 極 の 順 で 試 験 を 行 う 。 VDD(R)モード時の心室側は双極とする。 レート … VVI(R) モード時60ppm、VDD(R)モード時50ppm 不応期 … 心房、心室とも最短設定 感度 … VVI(R)モード時の心室側、VDD(R)モード時の心房側は測定手 順に従う。VDD(R)モード時の心室側は標準設定とする。 その他の項目 … その機種の標準設定 ④ トリプルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカの場合 動作モード … AAI(R)及びVVI(R)の双方で試験を行う。 使用電極 … 人体ファントムの心房電極及び心室電極を通常のDDD接続で使 用する。 電極極性 … 極性を選択できる場合、心房側、心室側の双方について、単極、 双極の順で試験を行う。 10

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-レート … 60ppm 不応期 … 心房、心室とも最短設定 感度 … 測定手順に従う。 その他の項目 … その機種の標準設定 ⑤ シングルチャンバー型植込み型除細動器の場合 動作モード … VVI(R)で試験を行う。 使用電極 … 人体ファントムの心室電極 電極極性 … 極性を選択できる場合、単極、双極の順で試験を行う。 レート … 60ppm 不応期 … 最短設定 感度 … 測定手順に従う。測定手順で指定した感度が選択できない機種 では、その機種で選択できる指定感度に最も近い感度において 試験を行う。 その他の項目 … 植込み型除細動器の頻拍・細動検出機能をONに設定する。こ の時、実際の治療機能をOFFにできるものはOFFにする。頻 拍・細動の検出規準は、その機種の標準設定とする。 ⑥ デュアルチャンバー型植込み型除細動器の場合 動作モード … AAI(R)及びVVI(R)の双方で試験を行う。ただし、AAI(R)モー ドでの試験の場合、心室側を標準設定感度に設定する。 使用電極 … 人体ファントムの心房電極及び心室電極を通常のDDD接続で 使用する。 電極極性 … 極性を選択できる場合、心房、心室側の双方について、単極、 双極の順で試験を行う。 レート … 60ppm 不応期 … 最短設定 感度 … 測定手順に従う。測定手順で指定した感度が選択できない機種 では、その機種で選択できる指定感度に最も近い感度において 試験を行う。 その他の項目 … 植込み型除細動器の頻拍・細動検出機能をONに設定する。こ の時、実際の治療機能をOFFにできるものはOFFにする。頻 11

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-拍・細動の検出規準は、その機種の標準設定とする。 ⑦ トリプルチャンバー型植込み型除細動器の場合 動作モード … AAI(R)及びVVI(R)の双方で試験を行う。ただし、AAI(R)モー ドでの試験の場合、心室側を標準設定感度に設定する。 使用電極 … 人体ファントムの心房電極及び心室電極を通常のDDD接続で 使用する。 電極極性 … 極性を選択できる場合、心房、心室側の双方について、単極、 双極の順で試験を行う。 レート … 60ppm 不応期 … 最短設定 感度 … 測定手順に従う。測定手順で指定した感度が選択できない機種 では、その機種で選択できる指定感度に最も近い感度において 試験を行う。 その他の項目 … 植込み型除細動器の頻拍・細動検出機能をONに設定する。こ の時、実際の治療機能をOFFにできるものはOFFにする。頻 拍・細動の検出規準はその機種の標準設定とする。左心室と右 心室への刺激は同時とする。 1.3.2 植込み型心臓ペースメーカ等の動作状態 ① 植込み型心臓ペースメーカ等が無信号入力で、設定レートでのパルスを発生してい る状態で試験する(Inhibit 試験)。この試験はシングルパスVDD型植込み型心臓 ペースメーカのVVIモード時にも適用されるがVDD モード時は適用しない。 ② 植込み型心臓ペースメーカ等がその設定レートより10~20% 高いレート(75ppm)の 擬 似 心 電 位 信 号 を 感 知 し 、 出 力 パ ル ス が 抑 制 さ れ て い る 状 態 で 試 験 を 行 う (Asynchronous 試験)。この時、擬似心電位信号の振幅は、植込み型心臓ペース メーカ等が応答する最小振幅の約2倍とする。この試験はシングルパスVDD型植込 み型心臓ペースメーカのVVIモード時にも適用されるがVDDモード時は適用しない。 ③ シングルパスVDD型植込み型心臓ペースメーカの機種を、VDDモードで試験する 場合は、同期信号として、レート60ppmで振幅がその機種が応答しうる最小振幅の 約2倍の擬似心電位信号を心房側に注入する。 12

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-④ 植込み型除細動器の場合は、Inhibit / Asynchronous 試験中に影響を受けた場合、 細動の誤検出(False Positive)が生じたか否かを点検する(False Positive 試験)。 ⑤ 植込み型除細動器の場合は、Inhibit / Asynchronous 試験に加え、除細動器の細動 検出範囲内の周期である擬似心電位信号(240ppm)を加えながら、支障なく細動が 検出されるか否(False Negative) かを試験する(False Negative 試験)。ただし、 前記④で細動の誤検出が生じた(False Positive)植込み型除細動器の場合は、本試験 (False Negative 試験)をしない。 1.3.3 植込み型心臓ペースメーカ等とRFID機器の配置 ① RFID機器と人体ファントム間の距離は、アンテナ部からの距離を基準に測定した。 ② 人体ファントムの床からの高さ(図Ⅰ-1-5;H)は床面から人体ファントムの 中央までの距離とし、110 cmで一定とした。 ③ 人体ファントムとRFID機器の間隔(図Ⅰ-1-5;L) は、RFID機器のアンテナ 部表面から人体ファントムの表面までの距離とした。 1.4 試験の実施方法 1.4.1 植込み型心臓ペースメーカ等の感度設定 植込み型心臓ペースメーカ等の感度は、周囲の電磁環境の状態に最も敏感である最高感 度に設定した状態で試験は実施した。但し、植込み型心臓ペースメーカにおいて影響の発 生距離が 15cm 以上の場合、また、植込み型除細動器で不要除細動ショックの発生が現れ た場合は、感度を 1.0、2.4、5.6mV 及びその植込み型心臓ペースメーカ等で設定できる 最低感度に順次変更して試験を実施した。 1.4.2 試験手順 (1)試験1 試験は最初に、RFID機器のアンテナ部を人体ファントム内の植込み型心臓ペースメー カ等の表面上に配置し、アンテナ部と人体ファントムの距離(図Ⅰ-1-5;L)を密着 した状態で影響の有無の状況を確認する。影響が現れた場合には、影響の無くなる距離ま でアンテナ部を遠ざける。その距離からアンテナ部を回転させる等して電波の偏波方向や 強度を変化させながら、アンテナ部と人体ファントムの距離(図Ⅰ-1-5;L)を小さ 13

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-くして影響が現れる距離を記録する。なお、その時、アンテナ部を人体ファントム内の植 込み型心臓ペースメーカ等の上から電極に沿って移動させ、また、アンテナ部を床面に対 して鉛直方向にして電極から植込み型心臓ペースメーカ等の上まで移動させるなどして、 最も影響の大きくなる状態を見いだす。影響の現れた状態において植込み型心臓ペースメ ーカ等の動作記録を最低5秒間程度残す。 (2)試験2 試験1において、植込み型心臓ペースメーカで15cm以上の距離で影響が現れた場合、 また、植込み型除細動器では不要除細動ショックが現れた場合に以下の試験を行う。 植込み型心臓ペースメーカ等は、最高感度の次に指定された感度に設定して、試験1と 同様に再度の試験を行う。更に影響が現れた植込み型心臓ペースメーカ等に対しては、感 度を順次指定された感度に設定して、試験1、試験2を繰り返し行う。 植込み型心臓ペースメーカ等の感度が最低感度に達した場合は、必要な記録が残された 時点で試験終了とする。 14

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-おいて、ショック電流のための、コンデンサーの充電が開始された場合、あるいは 不整脈が検出された場合には、影響を受けたと判定する。 ⑤ 植込み型除細動器の False Negative 試験では、細動検出機能が失われた場合、影 響を受けたと判定する。 (2)電磁的環境による影響度合いの分類 今回の調査研究での電波の影響度合いの分類は、平成 17 年の総務省報告書[2]との整合 性を考慮して、平成 17 年の総務省報告書で示された分類と同様とした。影響度合いの分 類を表Ⅰ-1-4に示す。今回の調査研究で認められた影響はこれに従って分類した。植 込み型心臓ペースメーカに見られる具体的な異常は表Ⅰ-1-5、植込み型除細動器に見 られる具体的な異常は表Ⅰ-1-6のようになる。 表Ⅰ-1-4 影響度合いの分類 レベル 影響の度合い 0 影響なし 1 動悸、めまい等の原因にはなりうるが、瞬間的な影響で済むもの。 2 持続的な動悸、めまい等の原因になりうるが、その場から離れる等、 患者自身の行動で原状を回復できるもの。 3 そのまま放置すると患者の病状を悪化させる可能性があるもの。 4 直ちに患者の病状を悪化させる可能性があるもの。 5 直接患者の生命に危機をもたらす可能性があるもの。 16

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-表Ⅰ-1-5 影響度合いの解説(植込み型心臓ペースメーカ) 不可逆的影響 影響状況 物理的現象 正常状態 可逆的 影響 体外 解除可 要交換手術 生体への 直接的傷害 正常機能の維持 レベル 0 1周期以内のペーシング/センシング 異常 (2秒以内に回復) レベル 1 1周期(2秒)以上のペーシング/ センシング異常 レベル 2 ・ペースメーカのリセット ・プログラム設定の恒久的変化 レベル 3 持続的機能停止 レベル 5 恒久的機能停止 レベル 5 リードにおける起電力/熱の誘導 レベル 5 表Ⅰ-1-6 影響度合いの解説(植込み型除細動器) 不可逆的影響 影響状況 物理的現象 正常状態 可逆的 影響 体外 解除可 要交換手術 生体への 直接的傷害 正常機能の維持 レベル 0 1周期以内のペーシング/センシング 異常 (2秒以内に回復) レベル 1 1周期(2秒)以上のペーシング/ センシング異常 レベル 2 一時的細動検出能力の消失 レベル 3 不要除細動ショックの発生 レベル 4 プログラム設定の変化 レベル 4 持続的機能停止 レベル 5 恒久的機能停止 レベル 5 リードにおける起電力/熱の誘導 レベル 5 17

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-第2章

試験結果に基づく植込み型心臓ペースメーカ等への影響の分析

UHF帯 RFID 機器から発射される電波が植込み型心臓ペースメーカ等に与える影響に ついて試験した結果を以下に述べる。植込み型心臓ペースメーカ等では多くの機種が複数 のペーシングモードの設定ができるので、植込み型心臓ペースメーカ等の各機種において ペーシングモードを変えて試験を実施した。本編では、ペーシングモードを変えて試験を 行った条件毎の試験を試験モードと称している。なお、ここでは、植込み型心臓ペースメ ーカ等が周囲の電磁環境の状態に最も敏感な状態である最高感度に設定した時の結果を示 している。 2.1 ハンディタイプUHF帯RFID機器が及ぼす影響 ハンディタイプ UHF 帯 RFID 機器(低出力型 950MHZ 帯パッシブタブシシテム) 〔以下、ハンディタイプUHF 帯 RFID 機器(低出力型)という〕から発射される電波が 植込み型心臓ペースメーカ等に与える影響について試験を実施した。試験はハンディタ イプUHF 帯 RFID 機器(低出力型)2 台を用いて行った。なお、RFID 機器が同一であ っても異なる種類のアンテナを接続した場合には別機種としてカウントしているので、試 験実施機種数は3 機種となった。 2.1.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 ハンディタイプUHF帯RFID機器(低出力型)3機種と植込み型心臓ペースメーカ31台 を組み合わせて実施した。植込み型心臓ペースメーカの各機種ではペーシングモードを変 えて試験を実施しており、試験モードの総数は645となった。 試験の結果、影響を受けた試験モード数は0であり、ハンディタイプUHF帯RFID機器 (低出力型)は植込み型心臓ペースメーカに影響を与えなかった。 2.1.2 植込み型除細動器が受ける影響 ハンディタイプUHF帯RFID機器(低出力型)3機種と植込み型除細動器14台を組み合 わせて試験を実施した。植込み型除細動器は複数のペーシングモードが設定可能であると 共に、ペースメーカ機能と除細動機能を切り替えることも可能である。各々の機能に対す 21

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-る試験の結果を以下に示す。 (1)ペースメーカ機能への影響 試験モードの総数は144であるが影響を受けた試験モード数は0であり、ハンディタイ プUHF帯RFID機器(低出力型)は植込み型除細動器のペースメーカ機能に影響を与えな かった。 (2)除細動機能への影響 試験モードの総数は144であるが影響を受けた試験モード数は0であり、ハンディタイ プのUHF帯RFID機器(低出力型)は植込み型除細動器の除細動機能に影響を与えなかっ た。 2.2 据置きタイプUHF帯RFID機器が及ぼす影響 据置きタイプ UHF 帯 RFID 機器(高出力型 950MHZ 帯パッシブタブシシテム)〔以 下、据置きタイプUHF 帯 RFID 機器(高出力型)という〕から発射される電波が植込み 型心臓ペースメーカ等に与える影響について試験を実施した。試験は据置きタイプ UHF 帯RFID 機器(高出力型)9 台を用いて行った。なお、RFID 機器の本体装置が同一であ っても接続されるアンテナ数や放射される電波の時間的特性を変更した場合には別機種と してカウントしているので、試験実施機種数は12 機種となった。 2.2.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 据置きタイプUHF帯RFID機器(高出力型)12機種と、植込み型心臓ペースメーカ31 台を組み合せて実施した。植込み型心臓ペースメーカの各機種ではペーシングモードを変 えて試験を実施しており、試験モードの総数は2,580となった。 (1)影響発生の頻度 最高感度に設定した植込み型心臓ペースメーカで、影響を受けた試験モード数は163で あり、総試験モード数の6.32%であった。影響は全て可逆的で、影響度合いがレベル1は1 試験モード、レベル2となった試験モード数は162であった。影響のレベルと試験モード数 の関係を表Ⅰ-2-1に示す。影響度合いのレベルについては第1章を参照のこと。 22

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-(2)除細動機能への影響 据置きタイプUHF帯RFID機器(高出力型)と植込み型除細動器の除細動機能に係わる 試験モードの総数は552である。 植込み型除細動器の除細動機能が影響を受けた試験モード数は 17 であり、総試験モー ド数の約3.08%であった。この影響は False Positive 試験で不要除細動ショックが発生す る現象(レベル 4)であった。影響を受けた度合いと試験モード数の関係を表Ⅰ-2-3 に示す。 表Ⅰ-2-3 据置きタイプRFID機器(高出力型)による植込み型除細動器の 除細動機能への影響 試験モード数 552 535 0 17 0 17 割合 (%) 100 96.92 0.00 3.08 0.00 3.08 総数 影響なし 影響あり レベル3 以下 レベル4 レベル5 以上 合計 最も遠く離れた位置で影響(False Positive 試験で不要除細動ショックを発生:レベル 4)を受けた機器の距離は 10cm であった。なお、影響を受けた植込み型除細動器は、本 調査研究において国内販売時期がⅢ期と分類される平成12 年の 1 機種のみであった。 影響を受けなくなる距離の累積分布を図Ⅰ-2-3に示す。 影響あり レベル4 3.08% 影響なし 96.92% 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0 cm以 上 5 cm以 上 10 cm以 上 15 cm以 上 影響消滅距離 影響 を受け たモー ド数( 累積) レベル4 総試験モード数:552 図Ⅰ-2-3 据置きタイプRFID機器(高出力型)による植込み型除細動器の 除細動機能への影響割合と影響消滅距離の関係 25

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-2.3 モジュールタイプUHF帯RFID機器が及ぼす影響 モジュールタイプUHF帯RFID機器(低出力型950MHZ帯パッシブタブシシテム)〔以 下、モジュールタイプUHF帯RFID機器(低出力型)という〕から発射される電波が植込 み型心臓ペースメーカ等に与える影響について試験を実施した。試験はモジュールタイプ UHF帯RFID機器(低出力型)2台を用いて行った。なお、RFID機器が同一であっても放 射される電波の時間的特性を変更した場合には別機種としてカウントしているが、試験実 施機種数は台数と同じ2機種となった。 2.3.1 植込み型心臓ペースメーカが受ける影響 モジュールタイプUHF帯RFID機器(低出力型)2機種と植込み型心臓ペースメーカ31 台を組み合わせて試験を実施した。植込み型心臓ペースメーカの各機種ではペーシングモ ードを変えて試験を実施しており、試験モードの総数は430となった。 試験の結果、影響を受けた試験モード数は0であり、モジュールタイプUHF帯RFID機 器(低出力型)は植込み型心臓ペースメーカに影響を与えなかった。 2.3.2 植込み型除細動器が受ける影響 モジュールタイプUHF帯RFID機器(低出力型)2台と植込み型除細動器14台を組み合 わせて試験を実施した。植込み型除細動器は複数のペーシングモードが設定可能であると 共に、ペースメーカ機能と除細動機能を切り替えることも可能である。各々の機能に対す る試験の結果を以下に示す。 (1)ペースメーカ機能への影響 試験モードの総数は96であるが影響を受けた試験モード数は0であり、モジュールタイ プUHF帯RFID機器(低出力型)は植込み型除細動器のペースメーカ機能に影響を与えな かった。 (2)除細動機能への影響 試験モードの総数は 96 であるが影響を受けた試験モード数は 0 であり、モジュールタ イプUHF 帯 RFID 機器(低出力型)は植込み型除細動器の除細動機能に影響を与えなか った。 26

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-第3章

影響発生防止のための対応について

3.1 試験結果 RFID 機器は、各種物品の管理や商品の精算、また、盗難防止装置としてや図書館での 図書管理、アミューズメント施設などでの電子マネーとしてなど、幅広い分野での利用が 見込まれている。今回の調査研究では、様々な周波数帯域を用いている RFID 機器の中か ら、UHF 帯を用いている RFID 機器についてそれらから発射される電波が、植込み型心 臓ペースメーカおよび植込み型除細動器に及ぼす影響について試験を行った。 3.1.1 試験対象機器 今回の試験で対象としたUHF 帯 RFID 機器及び植込み型心臓ペースメーカ等は以下の とおりである。 ① UHF 帯 RFID 機器は、ハンディタイプ 3 機種と据置きタイプ 12 機種及びモジュー ルタイプ2 機種の合計 17 機種であり、市販製品及び市販予定品の中から網羅的に選定 して試験に用いた。 ② 植込み型心臓ペースメーカは現在導入されている機種を網羅するために、国内販売時 期をⅠ期(平成 7 年以前)、Ⅱ期(平成 8~10 年)、Ⅲ期(平成 11~14 年)、Ⅳ期 (平成 15 年以降)に分類し、それぞれの販売時期から選定した。選定した植込み型心 臓ペースメーカは合計31 台である。 ③ 植込み型除細動器についても、植込み型心臓ペースメーカの場合と同様に網羅性を考 慮して国内販売時毎に分類して選定した。試験に用いた植込み型除細動器は合計 14 台 である。 3.1.2 試験結果 (1)ハンディタイプUHF帯RFID機器の場合 ① 最高感度に設定した植込み型心臓ペースメーカに対する試験(試験モード総数は 645)を実施した結果、影響が現れた試験モード数は 0 であり、ハンディタイプ UHF 帯RFID 機器(低出力型)は植込み型心臓ペースメーカに影響を与えなかった。 ② 最高感度に設定した植込み型除細動器のペースメーカ機能及び除細動機能に対する試 27

(38)

-験(それぞれの試験モード総数は 144)を実施した結果、いずれの試験においても影響 が現れた試験モード数は0 であり、ハンディタイプ UHF 帯 RFID 機器(低出力型)は 植込み型除細動器に影響を与えなかった。 (2)据置きタイプUHF帯RFID機器の場合 ① 最高感度に設定した植込み型心臓ペースメーカに対する試験(試験モード総数は 2,580)を実施した結果、影響が現れた試験モード数は 163 であった。最も遠く離れた 位置で影響を受けた機器の距離は75cm、次に遠く離れた位置で影響を受けた機器の距 離は13cm であった。発生した影響は全て可逆的であり、影響度合いの分類はレベル 1 が1 試験モード、レベル 2 が 162 試験モードであった。レベル 3 以上に相当する植込 み型心臓ペースメーカのプログラムリセット等は発生しなかった。なお、影響の発生 する距離が 15cm を超える距離となった植込み型心臓ペースメーカは、本調査研究に おいて国内販売時期がⅡ期と分類される平成8 年承認の 1 機種のみであった。 ② 最高感度に設定した植込み型除細動器に対する試験(ペースメーカ機能及び除細動機 能それぞれの試験モード総数は 552)を実施した結果、ペースメーカ機能に影響が現 れた試験モード数は 17 であり、最も遠く離れた位置で影響を受けた機器の距離は 10cm であった。これらの影響は全て可逆的であり影響度合いはレベル1若しくはレベ ル2 であった。また、除細動機能に対して影響が現れた試験モード数は 17 であり、最 も遠く離れた位置で影響を受けた機器の距離は 10cm であった。これらの影響は影響 度合いの分類でレベル4となる不要除細動ショックの発生であった。なお、影響を受 けた植込み型除細動器は、本調査研究において国内販売時期がⅢ期と分類される平成 12 年承認の 1 機種のみであった。 (3)モジュールタイプUHF帯RFID機器の場合 ① 最高感度に設定した植込み型心臓ペースメーカに対する試験(試験モード総数は 430)を実施した結果、影響が現れた試験モード数は 0 であり、モジュールタイプ UHF 帯 RFID 機器(低出力型)は植込み型心臓ペースメーカに影響を与えなかった。 ② 最高感度に設定した植込み型除細動器のペースメーカ機能及び除細動機能に対する試 験(それぞれの試験モード総数は 96)を実施した結果、影響が現れた試験モード数は 0 であり、いずれの試験においてもモジュールタイプ UHF 帯 RFID 機器(低出力型) は植込み型除細動器に影響を与えなかった。 28

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-3.2 植込み型心臓ペースメーカ等への電波の影響を防止するための指針 RFID 機器は幅広い分野での広範な利用が見込まれており、植込み型心臓ペースメーカ 等の装着者が安心してUHF 帯 RFID 機器と共存できる電波環境の確保に努める必要があ る。このため、UHF 帯 RFID 機器の電波が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響を 出来る限り防止するための対応策を示すことは重要である。 本調査研究で得られた結果に基づく対応策としてハンディタイプと据置きタイプ及びモ ジュールタイプのUHF 帯 RFID 機器に係る指針を以下に示す。 3.2.1 ハンディタイプUHF帯RFID機器の対応策 ハンディタイプUHF帯RFID機器(低出力型)は、植込み型心臓ペースメーカ及び植込 み型除細動器に対して影響を与えなかった。しかし、ハンディタイプUHF帯RFID機器 (低出力型)の外観は、他の周波数帯域を用いたハンディタイプRFID機器と同等で区別 する事が困難である事から、植込み型心臓ペースメーカ等の装着者への対応策は、平成 17 年の調査研究会[2]にて示されたハンディタイプRFID機器への対応策に準じて以下のと おりとする。 ◆ ハンディタイプUHF 帯 RFID 機器(低出力型)のアンテナ部を植込み型心臓ペース メーカ等の装着部位から22cm 以内に近づけないこと。 3.2.2 据置きタイプUHF帯RFID機器の対応策 据置きタイプUHF 帯 RFID 機器(高出力型)は、植込み型心臓ペースメーカに対して 可逆的であるがレベル2 の影響が最大で 75cm の距離で発生する事例が確認された。また、 植込み型除細動器に対しては、最大10cm の距離でレベル 4 の影響である不要除細動ショ ックの発生が確認されたため、据置きタイプUHF 帯 RFID 機器(高出力型)の対応につ いては、以下のとおりとする。 ◆ 従来の据置きタイプRFID 機器の指針値である 22cm 以上で影響のあった植込み型心 臓ペースメーカが1機種あったため、ペースメーカ協議会は当該植込み型心臓ペースメ ーカの取扱い会員会社に対し、全ての装着者に対して患者会、医療機関等を通じ情報提 供及び注意喚起を行うよう指導する。なお、植込み型心臓ペースメーカの装着者が安心 して据置きタイプUHF 帯 RFID 機器(高出力型)と共存出来るよう、その方策の作成 に当たっては必要に応じて患者会、医療機関等と協議する。 29

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-◆ 社団法人日本自動認識システム協会(JAISA)は UHF 帯 RFID 機器の使用方法等に 係わる情報提供体制を構築し、植込み型心臓ペースメーカ等の装着者等からの照会に対 応する。 ◆ 従来の据置きタイプRFID機器の指針値である 22cm以上で影響のあった植込み型心 臓ペースメーカ1機種を除くペースメーカ等の装着者においては、平成 17 年の調査研 究会[2]にて示された据置きタイプRFID機器への対応策に基づいて、「RFID機器運用ガ イドライン」の据置きタイプRFID機器に対する運用規定に従う。 ◆ UHF帯RFID機器(高出力型)をゲートタイプとして使用する場合には、平成 17 年 の調査研究会[2]にて示されたゲートタイプRFID機器への対応策に基づいて、「RFID機 器運用ガイドライン」のゲートタイプRFID機器に対する運用規定[注]に従う。 [注] 1.植込み型医療機器装着者は、ゲートタイプ RFID 機器が設置されている場 所及び RFID ステッカが貼付されている場所では、立ち止まらずに通路の中 央を真っ直ぐに通過すること。 2.植込み型医療機器装着者は、ゲートタイプ RFID 機器の周囲に留まらず、 また寄り掛かったりしないこと。 3.植込み型医療機器装着者は、体調に何らかの変化があると感じられる場合 は、担当医師に相談すること。 ◆従来の据置きタイプRFID 機器の指針値である 22cm 以上で影響のあった植込み型心臓 ペースメーカの1機種の装着者が、据置きタイプUHF帯RFID機器(高出力型)か ら1m以上離れれば安全であることが確認されたので適切な対応策をとること(付録 3)。 30

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-3.2.3 モジュールタイプUHF帯RFID機器の対応策 モジュールタイプUHF帯RFID機器(低出力型)は、植込み型心臓ペースメーカ及び植 込み型除細動器に対して影響を与えなかった。従って植込み型心臓ペースメーカ等の装着 者への対応策は、平成17 年の調査研究会[2]にて示されたモジュールタイプRFID機器への 対応策に準じ以下のとおりとする。 ◆ モジュールタイプUHF 帯 RFID 機器(低出力型)のアンテナ部を植込み型心臓ペー スメーカ等の装着部位から22cm 以内に近づけないこと。 本調査研究会は、植込み型心臓ペースメーカ等へのRFID 機器の影響を軽減するために、 以下のことを推奨する。 ◆ 「RFID 機器運用ガイドライン」に基づいたステッカを、RFID 機器に貼付すること。 ◆ 今後も更なる安全性向上のための検討を関係団体等において行っていくこと。 3.3 産業界の対応 3.2項の指針を受けて、社団法人日本自動認識システム協会(JAISA)と日本医用機器 工業会ペースメーカ協議会は、安全確保の観点から以下の対応を行うこととした。 3.3.1 社団法人日本自動認識システム協会の対応

① 現在運用している「RFID 機器運用ガイドライン」に基づいて、UHF 帯 RFID 機器 にもステッカの貼付を徹底するように会員企業に対して指導する。また、必要な関連部 署等へ「RFID 機器運用ガイドライン」を配布する。 ② 非会員企業に対しても、ホームページや広報誌、セミナー等によって「RFID 機器運 用ガイドライン」の周知を図る。 ③ 新たに開発される機種について植込み型心臓ペースメーカ等への影響の低減を図るた めに、JAISA はペースメーカ協議会、大学等の研究機関と情報交換及び調査研究を実 施し、更なる安全性の向上に努める。 ④ ユーザ等からの問い合わせに対して「RFID 機器運用ガイドライン」に基づいた説明 を行う。 31

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-3.3.2 ペースメーカ協議会の対応 ① 植込み型心臓ペースメーカ等装着者や医師、医療機関に対して、UHF 帯 RFID 機器 に対する指針として、3.2項の対応策についてペースメーカ協議会のホームページ等 への記載などによって周知徹底を図る。 ② 従来の据置きタイプのRFID 機器の指針値である 22cm 以上で影響のあった植込み型 心臓ペースメーカが1機種あったことから、当該機種及び当該機種により網羅される機 種の取扱い会員会社に対し、全ての装着者や医師、医療機関に対して、試験結果に基づ く情報提供及び注意喚起を行うよう指導する。 ③ 据置きタイプUHF 帯 RFID 機器(高出力型)によって 22cm 以上の距離で影響を受 けた植込み型心臓ペースメーカが 1 機種存在したこと、植込み型除細動器においては 22cm 以内ではあったが、レベル 4 に相当する不要除細動ショックが確認されたことか ら、影響を受けるメカニズムの解明について(社)日本自動認識システム協会、大学等 の研究機関と共に研究実験等を実施し、更なる安全性の向上に努める。 3.4 次年度へ向けての課題 電波が植込み型心臓ペースメーカ等に与える影響のメカニズムの解明に向けて、モデ ル等を用いた実験による詳細な要因分析試験を更に行い、電波が医療機器に及ぼす影響 の低減に努める必要がある。 【参考文献】 [1] 総務省、“電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書”、平成16年 [2] 総務省、“電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書”、平成17年 [3] 構内無線局950MHz帯移動体識別用無線設備 [4] 特定小電力無線局950MHz帯移動体識別用無線設備

[5] ANSI/AAMI PC69:2000、”Active implantable medical devices-Electromagnetic compatibility-EMC test protocols for implantable cardiac pacemakers and implantable cardioverter defibrillators”

ANSI: American National Standards Institute.

AAMI: Association for the Advancement of Medical Instrumentation.

(43)

-第Ⅱ編

1.7GHz 帯 W-CDMA 方式携帯電話端末の電波が植込み型心臓ペースメ

ーカ等へ及ぼす影響の調査検討

携帯電話端末から発射される電波が医療電気機器に及ぼす影響調査については、平成7 年度から平成8年度にかけて不要電波問題対策協議会(現電波環境協議会 http://www. arib.or.jp/emcc/)が、携帯電話端末の実機及び標準ダイポールアンテナを用いて詳細な 実証実験調査を実施し、その調査結果をもとに平成9年3月に「医用電気機器への電波の 影響を防止するための携帯電話端末等の使用等に関する指針」が策定[1]された。その中で、 植込み型心臓ペースメーカに対しては、“携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携 帯電話端末を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離すこと”、などの 指針が示された。更に平成12年度から13年度にかけては、前述の調査以降に発売された 新機種の植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器を対象に、平成13年度時点で 実用化されていた各種携帯電話サービスで用いられる携帯電話端末の実機及び標準ダイポ ールアンテナから発射される電波が及ぼす影響に関する調査が実施され、前記指針の妥当 性が確認された[2]。さらに、平成16年度には平成13年度以降に市場投入された新方式の携 帯電話サービスや、新たな機種の植込み型心臓ペースメーカ等も含めて、「22cm」指針 の妥当性及び同指針の下で携帯電話端末を安心して利用できる電磁環境が維持されている ことの確認を目的に、平成16年度に新たに実用化された携帯電話サービスで用いられるカ ード型を含む携帯電話端末の実機及び標準ダイポールアンテナから発射させた電波を、平 成16年度時点で導入されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器を網羅す るように選択された機種に照射する方法で電波が及ぼす影響に関する調査研究が行われ、 「22cm」指針が妥当である事が確認された[3]。また、平成17年度にも、新たに実用化さ れた携帯電話サービスの携帯電話端末の実機及び標準ダイポールアンテナから発射させた 電波を、平成17年度時点で導入されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動 器を網羅するように選択された機種を用いての調査が実施され、「22cm程度以上離すこ と」とした指針が妥当である事が示され[4]、国民が安心して携帯電話端末を利用できる電 波環境の確保に寄与してきたところである。 しかし、上記の調査時以降にも新たな周波数帯域を用いての携帯電話サービスが開始さ れている。そこで、これまでの調査と同様に「22cm程度以上離すこと」とした指針の妥 当性及び同指針の下で携帯電話端末を安心して利用できる電磁環境が維持されていること 33

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-の確認を目的に、平成18年度に新たに運用が開始された周波数帯域での携帯電話サービス の携帯電話端末の実機及び標準ダイポールアンテナから発射させた電波を、平成18年度時 点で導入されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器を網羅するように選 択された機種に照射する方法で電波が及ぼす影響に関する調査を行った。 本編は、上記の携帯電話端末の電波が植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器 に及ぼす影響に関する調査結果を取り纏めたものである。 34

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-第1章

1.7GHz 帯 W-CDMA 方式携帯電話端末から発射される電波による植込み型心臓

ペースメーカ等への電磁干渉試験

携帯電話端末から発射される電波による植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動 器への影響に関する調査方法は、平成9年4月の不要電波問題対策協議会報告書[1]、平成14 年の総務省報告書[2]、平成17年の総務省報告書[3]及び平成18年の総務省報告書[4]で扱われ ているデータとの整合性を考慮し、これら調査研究での試験方法と原則同じとした。植込 み型心臓ペースメーカ等が人体内に装着された状態を再現するのに用いる人体ファントム は、前述の調査研究に用いた人体ファントムと同様のものを使用した。また、携帯電話端 末の実機による試験に加えて、前述の調査研究で最悪条件を設定するために採用した標準 ダイポールアンテナによる試験も行った。 1.1 試験対象機器 1.1.1 植込み型心臓ペースメーカ等 植込み型心臓ペースメーカ等の平均寿命は5~7年であり、新世代機種の市場投入は2年 以上の周期が通例となっている。新世代機種が市場投入される場合、シングルチャンバー 型、デュアルチャンバー型、レート応答機能の有無などの機能的な区分に従って数機種が 1つのグループとして同時に投入されるのが常であるが、同一グループ内の各機種は機能 的にサブセット構成をなすものであり、電気的な性能には差がないと考えられる。従って、 市場に投入されている植込み型心臓ペースメーカ及び植込み型除細動器の網羅性は、各世 代の代表的な機種を選定すれば確保することができ、平成12年度の調査以降、Ⅰ期(平 成7年以前)、Ⅱ期(平成8~10年)、Ⅲ期(平成11~14年)、Ⅳ期(平成15年以降)か ら、電気的性能の面から実際に市場で動作しているすべての機器を網羅していると解釈さ れる代表的な機種を試験対象とし、その後新たに輸入販売承認が得られたものを試験対象 として追加している。 試験対象とした植込み型心臓ペースメーカ等は日本医用機器工業会ペースメーカ協議会 から提供を受けた。試験に用いる植込み型心臓ペースメーカ等の機種と販売時期の分類を 表Ⅱ-1-1に示す。 35

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-表Ⅱ-1-1 植込み型心臓ペースメーカ等の機種及び販売時期 SSI DDD VDD CRT-P (TDD) ICD-S ICD-D CRT-D Ⅰ期 (H7以前) 2 0 0 0 0 0 0 Ⅱ期 (H8~H10) 3 2 0 0 1 0 0 Ⅲ期 (H11~H14) 1 8 3 0 2 2 0 1 Ⅳ期 (H15以降) 0 10 0 2 0 7 2 2 6 20 3 2 3 9 2 合 計 45 31 14 国内販売時期 機 種 (台) 植込み型心臓ペースメーカ 植込み型除細動器 合計 2 6 6 1 この表において、表記されている略称は以下のとおりである。 SSI :シングルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ DDD :デュアルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ VDD :シングルパスVDD型植込み型心臓ペースメーカ CRT-P(TDD) :心不全治療用トリプルチャンバー型植込み型心臓ペースメーカ ICD-S :シングルチャンバー型植込み型除細動器 ICD-D :デュアルチャンバー型植込み型除細動器 CRT-D :心不全治療用トリプルチャンバー型植込み型除細動器 植込み型心臓ペースメーカ等では多くの機種が、複数のペーシングモードを設定できる。 本調査研究では、それぞれの植込み型心臓ペースメーカ等においてペーシングモードを変 えて試験を行った。 以下に植込み型心臓ペースメーカ等の機種及びペーシングモードについて解説する。 AAI:心房電極を使用。設定された期間内に心房自己リズムがない場合、電気刺激を発生 して心房の収縮を促す。心房自己リズムがあった場合には刺激を発生することを抑 制する。 VVI:心室電極を使用。設定された期間内に心室自己リズムがない場合、電気刺激を発生 して心室の収縮を促す。心室自己リズムがあった場合には刺激を発生することを抑 36

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-制する。 SSI:AAI、VVIに用いるペースメーカ本体は、同一であるため製造販売業者の呼称とし て用いられる。 DDD:心房及び心室の電極を使用。AAIとVVIが合わさった機能をもち、AVディレイと 呼ばれる心房心室のタイミングのずれを有した状態で作動する。複雑な作動状態を 示すが、生理的ペーシングが可能である。 VDD:心房内に感知専用電極をもった1本の電極を用いて心室へ到達させ、AVディレイ と呼ばれる心房心室のタイミングのずれを有した状態で心室ペーシングを行う。 心房内電極は心腔内に浮遊するため通常より高感度の設定が可能である。 CRT-P (TDD):左心室と右心室の収縮タイミングがずれている心不全治療用の、両心室 を刺激して収縮の同期化を図るペースメーカで、動作の基本原理はデュアルチャ ンバーペースメーカと同一である。 ICD-S:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(SSIペーシング機能付き) ICD-D:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(DDDペーシング機能付き) CRT-D:心室細動(VF)・心室頻拍(VT)を自動的に認識して電気刺激によりこれを治 療する。(CRT-Pペーシング機能付き) 1.1.2 携帯電話端末 本年度の調査研究では、平成 17 年度に新たにサービスが開始された表Ⅱ-1-2に示 す方式の携帯電話端末を対象とした。なお、本サービスに対応した全ての携帯電話端末は ARIB標準規格に準拠しているが、試験の電波発射源として用いる携帯電話端末は従来か らの調査研究の場合と同様に、調査実施時点において入手可能であった機種から選定した。 なお、実際の携帯電話端末のアンテナ利得は、-2dBd(完全半波長アンテナに対する相対 利得)程度とされている[5]。そこで、参考として携帯電話端末に規定されているのと同じ 電力を給電した標準ダイポールアンテナによる試験も実施した。 携帯電話端末の実機の送信出力や電波の出力形態(連続出力、断続出力)、周波数など の設定は、擬似基地局からの指示により行った。また、標準ダイポールアンテナによる試 験の電波発射源としては、標準ダイポールアンテナや擬似携帯電話信号発生器などから構 37

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-成される装置を用いた。使用した標準ダイポールアンテナの基本諸元を表Ⅱ-1-3に示 す。本調査研究では、表Ⅱ-1-4に示す2 種類を電波発射源として用いた。なお、本報 告書では携帯電話機の実機をハンディ型、ダイポールアンテナをDP と称する。 表Ⅱ-1-2 本調査研究の対象とする携帯電話端末の無線諸元 ARIB標準規格名 (規格番号) IMT-2000 DS-CDMA システム (STD-T63) 方式名 W-CDMA サービス名又は通称 FOMA 送信周波数帯域 1700MHz帯 アクセス方式 デュープレクシング CDMA FDD 1キャリア当たり のチャンネル数 可変 キャリア占有 帯域幅 5MHz (200kHz単位で可変) 変調方式 1次変調:PSK 2次変調:直接拡散 キャリア変調速度 3.84Mcps(チップレート) 最大出力 250mW 送信電力制御 -1,-2,-3dBステップ65dB以上 表Ⅱ-1-3 調査研究に用いた標準ダイポールアンテナの基本諸元 名 称 製造メーカ 型名 周波数範囲 利得 (公称) VSWR 接栓及び公称入力 インピーダンス 1700MHz帯ダイ ポールアンテナ アンリツ MA5612B2 1700-1950MHz 2dBi 2.0以下 SMA-J 50Ω 38

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