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認知症初期症状と診断

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Academic year: 2021

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認知症初期症状と診断

兵庫県立リハビリテーション西播磨病院 高次脳診療科医長 樫林 哲雄 高齢者の認知症を診療する際、せん妄は、薬物選択を含む治療方針を決定するうえで重要な鑑別 疾患である。しかし、認知症にせん妄が合併する事もあり、レビー小体型認知症のように臨床症状 ではもともと区別できない場合もある。本演題では、認知症の各疾患、特に変性疾患の中で最も頻 度が多いアルツハイマー型認知症(AD)と次に頻度が多いレビー小体型認知症(DLB)での臨床 症状の特徴を概観し、実際の発表では認知症との鑑別を必要とするせん妄の特徴を説明し、具体例 を提示する。 AD の臨床診断には、DSM-Ⅳあるいは NINCDS-ADRDA の診断基準が用いられるが、要点は① 記憶障害の存在、②失語、失行、失認や遂行機能障害等の記憶以外の認知機能障害の存在、③緩徐 な発症と進行性の経過、④社会生活や日常生活の障害、⑤非AD 型認知症の鑑別・除外、⑥せん妄、 うつ病等の精神疾患の鑑別・除外に要約される。これらの診断基準にはAD の主要な特徴を網羅し ているが、実際の診療ではそれよりも多くの情報を考慮して鑑別診断が行われる。AD で認められ る認知機能障害として最も早期に出現し中核となる症状は近時記憶障害である。日常生活では身の 回りの物の置き場所が分からなかったり、同じ内容を繰り返し話したりする症状で気付かれる。近 時記憶の障害と対照的に遠隔記憶は比較的保たれる。その後、AD の変性過程の進展に対応するよ うに、記憶障害に引き続き、頭頂側頭葉障害の症状である視覚構成障害、言語障害、計算障害、書 字障害等の認知機能障害が出現する。精神症状・行動障害は比較的初期から自発性低下・無関心が 出現する。妄想も病初期からみられることが多い症状であり、その内容としては物盗られ妄想が最 も多い。一方で幻覚の出現頻度は妄想と比べるとはるかに少ないとされる。 DLB の場合、多くの症例で記憶障害から始まるが、AD と比較して記憶障害の頻度は軽く、また 記憶の保持よりも再生障害が目立つ(自発的に早期できなくてもヒントがあれば想起できる)とさ れている。一方で、視覚認知障害および視覚構成障害はAD よりも強いとされ、記憶障害があまり 目立たない段階でも視覚認知の障害が目立つ症例も少なくない。注意機能はAD よりも後半に障害 され、遂行機能などの前頭葉機能も障害されている。日常生活上ではぼんやりとして周囲への気付 きが悪い状態が頻繁に認められるなどの症状で現れる。繰り返し現れる幻視はDLB の中核症状で ある。幻視の内容としては人物や動物、虫などが多く具体的に表現されることが多い。幻視が見え ていない別の場所では幻覚である事は自覚していることが多い。また注意や明晰性の顕著な変化を 伴う認知機能の変動はDLB の中核的症状である。神経症状としてはパーキンソン症状がみられる が初期には認知機能障害や幻視等の症状が先行するが合いもある。せん妄の治療薬である抗精神病 薬は少量でもパーキンソニズムの悪化や意識障害、悪性症候群などの副作用を呈するとされている。 DLB では被害妄想、物盗られ妄想、嫉妬妄想、誤認妄想等多彩な妄想を呈し、その頻度も AD よ り高いとされている。この他うつ状態やREM 睡眠時に夢に合わせて大声を出したり、体を動かし たりするREM 睡眠行動異常症がみられることもある。このように DLB の多くの臨床症状がせん 妄で出現する特徴と重なっている。 認知症とせん妄は、基本的には鑑別すべき疾患であるが、鑑別が困難であったり複雑にオーバー ラップしていたりする場合も多い。症状の移行に伴い様々な可能性を考えて丁寧な症状把握と治療 方針の決定や環境調整、薬剤選択あるいは中止を行うことが重要である。 10

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