• 検索結果がありません。

2019年家政学原論部会夏期セミナー シンポジウム 報告7 「家政学原論部会が当面取り組むべき課題 ~前日の報告を受けて~」   岸本 幸臣

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2019年家政学原論部会夏期セミナー シンポジウム 報告7 「家政学原論部会が当面取り組むべき課題 ~前日の報告を受けて~」   岸本 幸臣"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

― 50 ―  「SDGs」に対するポジション・ステートメン トを巡る議論は,2018年の「部会設立50周年記 念夏期セミナー」で正保正恵先生から問題提起 がなされ,原論部会として作業会議が設置され, 2019年の3月26日と5月25日の2回にわたり, 作成に向けた作業会議が開催されました。それ を受けて,今年(2019年)の夏期セミナーの統 一テーマ「日本の家政学のポジション・ステー トメントの構築に向けて」が設定されています。 従って,今回の原論部会では構築に向けての意 義や具体的内容を確認する必要があります。そ のため,このセッションでは,これまでの報告 を踏まえ,それらの議論の過程で提起された諸 課題の整理を試み,ポジション・ステートメン ト構築に向けた基本的な枠組みの共有化を図れ ればと思います。  過去2回のポジション・ステートメントの作 業会議では,その具体化を探る論議よりも現在 の我が国の家政学の現状を考えた場合,ステー トメントの策定が必要なのかどうかの「要・不 要」の声も基本的論点としてあったように思い ます。「必要」論からの指摘としては,私達の 生活を取り巻く諸条件が自然環境としても社会 環境としても,大きな質的変貌を遂げようとし ている中にあって,家政学の立場から独自の行 動目標や課題を提起すことの意義と必要性が指 摘されていたように思えます。また,その取り 組みの実践を通してこそ,家政学の理解を深め 存在意義を学会内外に発信出来るとする期待論 もありました。他方「不要」論としては,「屋 上屋」的な作業になるのではとの懸念が基調で, 既にIFHEからのステートメントや,日本家政 学会の「将来構想の定義」,原論部会の「ガイ ドライン」がある中で,新たなステートメント を出すことは,内容面での重複を疑問視する指 摘が多かったようです。ただ,国連の「SDGs」 の問いかけは,地球上の全ての人達に求められ ている「世界を変革するために必要な持続可能 な開発を実現するための行動課題」です。その 要請に対して,日本の家政学が「学の定義」の 確認とその普及活動の促進だけで「SDGs」への 対応を善しとするのであれば,実践的科学として の責務を果たしえるのかという疑問も残ります。  本来「ポジション・ステートメント」とは, ある事象に対するその組織としての基本的な対 応姿勢に関する科学的根拠に基づく「公式声明」 的なものだといえます。「SDGs」で提起されて いる諸課題が,21世紀の私達の基本的な生活行 動の原理や目標になろうとしている今,IFHE の意見表明に加え,日本の家政学としても我が 国の生活実態に即した具体的な行動原則の表明 が問われているようにも思います。  今年の夏期セミナーでは,改めて「この10年 の活動から考える家政学としての取り組むべき 課題」として,「SDGs」への私達の対応策を議 論することになりました。議論のための素材提 供として,昨日から5人の先生方からの話題提 供の報告がなされています。①工藤由貴子先生 からはIFHEの2つのポジション・ステートメ ン ト( IFHE Position Statement 2008 と2016 年 の Home Economics in the 21th Century ) 制定の背景と成立過程の報告を頂き,IFHE の ステートメントが「MDGs」や「SDGs」に対 して人間の暮らしという視点に立って,私達家 政学の活動をエンパワーメントし,今後の活動 基盤を提供する目的で策定されていることの紹 介を頂きました。②東珠実先生からは「家政学 的研究のガイドライン」の報告があり,原論部 2019年家政学原論部会夏期セミナー/日本の家政学のポジション・ステートメント構築に向けて――

報告7 家政学原論部会が当面取り組むべき課題

∼前日の報告を受けて∼

岸 本 幸 臣

(羽衣国際大学)

(2)

家政学原論研究 No.54 ― 51 ― 会50周年に向けた「家政学原論部会行動計画 2009 ∼ 2018」での取り組み目標である「家政 学とは何か」「家政学研究とは何か」の視点か ら対応視点への説明頂きました。ガイドライン 制定の取り組みを受けて,私達がどのような未 来を想定し,そのための予想される社会的課題 への対処方針を示すことの必要性についての提 言がありました。③八幡彩子先生からは「やさ しい家政学原論」の紹介を頂き,「家政学原論 部会行動計画2009 ∼ 2018」に謳われた家政学 原論の研究・教育・普及(社会貢献)活動を充 実させるための原論教育に重点を置いた諸課題 について紹介がありました。そして,この取り 組み自体が原論部会の当時のポジション・ス テートメントであったとの説明を頂きました。 ④小倉育代先生からは,これまで関西が取り組 んできた「 家政学の時間 ・ 今こそ家政学 ・ 楽しもう家政学 」の各出版事業が家政学の普 及を目指し,読む人にとって親しみやすく身近 に関心を抱かせる一般向けの家政学専門書の刊 行活動としてなされて来たことが紹介されまし た。そのことを通して,将来を見通し生活の「今」 を創造してゆく観点を,身近な生活に引き寄せ て提示してゆくことの必要性が提起されまし た。最後に,⑤井元りえ先生からは「IFHEの SDGs ポジション・ステートメントから見る日 本の家政学」の視点として,国連の「MDGs」 の後継としての「SDGs」について,IFHE が 当面取りあげている5つの目標へのIFHE の意 見表明に至る取り組み過程について紹介を頂き ました。そして,それを我が国の社会・経済状 況にどのように適応させてゆくべきか,日本の 家政学のこれまでの実績を踏まえて解決策を分 かり易く提起してゆくことの必要性の提案があ りました。  特に我が国においては,政府の新たな開発戦 略「Society5.0」と絡めての「SDGs」 政策推進 を目指しており,これからの国民生活に大きな 影響を与えることが予想されます。このような 現状を考えると私達原論部会は,「個人・家族・ コミュニティ」にとって安心・安全な持続可能 な生活実践を目指す家政学の視点に立つ基本的 対処方針を,どのように発信してゆくべきかが 問われているのではないでしょうか。  そのことを考えると,ポジション・ステート メントを巡る本日の議論では,下記の課題の整 理が改めて問われているのではないでしょか? 《ポジション・ステートメント策定上の課題》 ①なぜPS必要なのかを明確にする(社会環境 が大きく変わる中,家政学のガイドラインで対 応するだけでは一般解的過ぎるのでは)? ② 「SDGs」をどう捉えるのか(IFHEが提起して いる5つの目標だけでよいのか。日本版「SDGs」 政策に対して,日本の生活実態に即した好まし い生活目標を対峙させる必要はないのか)? ③ 「Society 5.0」をどう捉えるのか(サイバー空 間とフィジカル空間が融合した人間中心の新し い社会にどのような生活矛盾が想定されるの か)? ④どのような組織で「ポジション・ステー トメント」を策定するのか(原論部会での原案 作成が好ましいのか。家政学会の各部会間での 連携作業が好ましいのか)? ⑤策定・公表時期 はいつ頃を目標にすべきか?  これらの課題を踏まえ,ポジション・ステー トメント策定に向けて闊達で実りのある議論を お願いしたいと思っています。  参照:5人の先生方からの話題提供に関連した文献 1)国際的な取り組み

         「IFHE in the 21th century」2008(工藤)

      「MDGs」2011(井元)

 IFHE      「Position Statements on the UN DEVELOPMENT」        UN       「SDGs」 2015(井元)

         「Drafts IFHE Position Statements on the UN SDGs」2016(工藤) 2)我国での取り組み

         「ガイドライン」2013(東) → 研究者向け(論旨の明確化)

 原論部会    「やさしい家政学原論」2018(八幡) → 教育者向け(内容の平易化)          「楽しもう家政学」他2011 ∼ 2017(小倉) → 学生市民向け(印象の魅力化)

参照

関連したドキュメント

青年団は,日露戦後国家経営の一環として国家指導を受け始め,大正期にかけて国家を支える社会

(評議員) 東邦協会 東京大学 石川県 評論家 国粋主義の立場を主張する『日

笹川平和財団・海洋政策研究所では、持続可能な社会の実現に向けて必要な海洋政策に関する研究と して、2019 年度より

Ross, Barbara, (ed.), Accounts of the stewards of the Talbot household at Blakemere 1392-1425, translated and edited by Barbara Ross, Shropshire Record series, 7, (Keele, 2003).

 模擬授業では, 「防災と市民」をテーマにして,防災カードゲームを使用し

「イランの宗教体制とリベラル秩序 ―― 異議申し立てと正当性」. 討論 山崎

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月

 日本一自殺死亡率の高い秋田県で、さきがけとして2002年から自殺防