<書評・レヴュー>大森宣暁「 子育て世帯の多様なライフスタイルを実現する都市と交通のあり方」(『都市計画学会学会誌』,2013)
3
0
0
全文
(2) て世帯の日常生活を制約するバリアについて,交通システム,活動機会, 子育て支援サービス,子どもの存在によるスケジュール制約,子育て生活 に必要な情報,子育てや子ども連れ外出に対する人々の意識・理解の6つ に分類して整理し,各バリアを緩和するための環境整備や情報提供,コミ ュニティ形成,経済的支援など,対応の具体的内容の例を示している。こ の分類は,2011年に彼が共著として発表した「子育て中の女性の外出行 動とバリアに対する意識に関する研究」において初めて試みられ,以後の 研究において精査され,確立されたものである。 さらに著者は6つの分類の中で,「子育てや子ども連れ外出に対する人 びとの意識・理解に関するバリア」を緩和することが最重要であると主張 している。この主張の背景に,子育て経験の違いによる子育てや子ども連 れ外出に対する意識の違いによって,トラブルが生じているという現状が 存在するためである。特にベビーカー利用による外出について,著者は諸 外国との比較を通じて分析を行っている。たとえば,「ベビーカーで公共 交通利用時に周囲の乗客から親切な行為を受けた人の割合」について,諸 外国では乗降の際の配慮など何らかの親切な行為を受けている人の割合が 高い一方で,日本では特に親切な行為を受けていないとの回答が過半数を 占める。また,「公共交通車内でベビーカーを折りたたむかどうか」につ いて,日本と韓国では混雑時を含めると80%以上が折りたたむと回答し ているのに対し,特にスウェーデンとドイツでは常に折りたたまない人が 過半数を占めている。当然国民性や文化の違いはあるものの,日本ではこ のようにベビーカーで公共交通を利用しにくい状況を著者は指摘し,状況 改善のためには周囲の乗客の子ども連れに対する意識や理解の向上も必要 であると述べる。その点で,冒頭で触れたような国土交通省のベビーカー 論争への対応を当論文が促していることは言うまでもない。 こうした内容を踏まえた上で,本論は子育て世帯のバリアに関する6つ の分類や,子育て世帯の移動と活動に関する分類などの整理を通じ,交通 計画における子育てバリアフリーに関する研究をマクロの視点で捉え,ミ クロの視点での研究の位置付けの指針となる論文であるといえよう。ただ しマクロな研究とミクロな研究とは,それら自体が序列を持つものではな く,マクロの視点を持つ著者がミクロの視点での研究も行うことによる相. 子育て世帯の多様なライフスタイルを実現する都市と交通のあり方. 117.
(3) 互補完性に意義があると考えられるため,今後のさらなる研究に期待した い。また,今後の研究の指針として,著者がこの論文で指摘した「子育て や子ども連れ外出に対する人びとの意識・理解に関するバリア」の緩和に 着目していくことが最重要であるのは言うまでもない。公共交通機関にお けるベビーカー利用に関する意識調査については,西本らが乗客・ベビー カー利用者の双方の視点から既に実施しており,乗客の意識からは,子連 れ外出者を支援するという社会の風潮が徐々に浸透してきていることが明 らかになっている。一方で,現状として,移動弱者という点でベビーカー 利用者が高齢者や障害を抱える人よりも軽んじられている傾向があるよう に筆者は考える。今後は,移動弱者として相対的にベビーカー利用者に対 する意識・理解を向上していくことも必要であろう。. (都市イノベーション学府博士前期課程・都市地域社会専攻). 118. 書評・レヴュー.
(4)
関連したドキュメント
自動車や鉄道などの運輸機関は、大都市東京の
関西学院大学のミッションステートメントは、 「Mastery for Service を体現する世界市民の育成」にあります。 “Mastery for
年間約5万人の子ども達が訪れる埋立処分場 見学会を、温暖化問題などについて総合的に
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に
大都市の責務として、ゼロエミッション東京を実現するためには、使用するエネルギーを可能な限り最小化するととも
「PTA聖書を学ぶ会」の通常例会の出席者数の平均は 2011 年度は 43 名だったのに対して、2012 年度は 61 名となり約 1.5
大都市の責務として、ゼロエミッション東京を実現するためには、使用するエネルギーを可能な限り最小化するととも