源氏物語「月立つ」考 : 古代人の時間意識に関連して
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(2) 色 あ り てな や み け り ︵ 明 石 ノ御 方 懐 妊 ︶ ⋮ ⋮京 よ り も 御 迎 へに人 々参 り 、心地 よ げ な るを 、あ る じ の入 道 涙 にくれ て、月 も 立 ち ぬ 。 明 石 一一 ︱ 一九 四. 四 か く て ︵玉 髪 ハ︶ 御 服 ︵ 祖 母 大 宮 ノ死 ニヨ ル喪 服 ︶ な ど脱 ぎ 給 ひ て、月 立 たば な ほ参 り 給 り給 はむ こと忌 あ る べ し 。十 月 ば か り に 、と ︵ 源 氏 ガ ︶ 思 し宣 ふを ⋮ ⋮ 藤 袴 一 千上 一 七一. 働 九 月 にも な り ぬ 。 ⋮ ⋮大 将 殿 ︵ 髭 黒 ︶ に は 、 ﹁な ほ ︵ 九月 ハ忌月 故 玉 童 ノ出 仕 ハア ル マイ ト︶ た のみ こしも 過ぎ・ ゆ く空 の気 色 こそ 、 心 づ く し に 、 か ず な ら ば いと ひも せま し 九 月 に命 を かく る ほ ど ぞ は か なき 月 た た ばと あ る定 め を 、 いと よ く聞 き給 ふなめ り 。 藤 袴 一 二︱ 二七 六. 0 正月 廿 日ば か り に な れ ば 、 空 も を かしき程 に 、 ⋮ ⋮霞 みわ たり け り 。 ︵ 朱 雀院 五一 源 氏︶ ﹁ 月 た たば 、御 いそぎ ︵ 十 ノ御 賀 ノ準 備 ︶ 近 く ⋮ ⋮ 若 菜 下 四︱ 一四 四. 姫宮 ︵ 女 三 ノ宮 ︶ は あ や し かり し事 ︵ 柏木 ト ノ密 事 ︱ 四月 ︶ を 、お ぼし嘆 き し より 、 や が て例 のさ ま にも お は せ・ ず 、 な や まし く し 給 へど 、お ど ろ お ど ろし く はあ ら ず 、立 ち ぬ る月 ︵ 今 ハ六 月 デ 五月 ト ト ルー吉 沢 ︶ 物 き こじ め さヽ で、 いたく そ こな は れ 給 ふ。 若菜 下 四︱ 一八 九 例 のた たむ 月 の法 事 の料 に ⋮ ⋮﹂ ︵ ﹁ 女 三宮 ヨリ薫 ヘノ詞︶ 宿 木 五︱ 一八 五. 匂 宮 ハ︶ か う 思 し 焦 ら るれ ど ︵ 宇 治 へ︶ お は し ま す こと は いと わ り な し 浮 舟 七 ︱ 一五 月も立ち ぬ ︵. 宇 治 へ︶ わ たら ま し 、と 、 思 ひ 出 で給 ふ 日 のゆ ふぐ れ 、 いと も のあ は れ なり 。 蜻 蛉 七 ︱ 月 たち て、今 日ぞ ︵. む﹂. 夢 浮 橋 七 ︱ 三 二八. ︵ 横 川 ノ僧 都 ヨリ薫 ヘノ詞︶ ﹁ま かり 下り む こと 、今 日明 日は障 り侍 る。月 たち て の程 に 、御 消 息 を 申 さ せ侍 ら′. 一〇 八. (101 (9) (8) (11). 源氏物語「月立 つ」考 アイ (2イ ).
(3) (25) /3 義 一 村 竹. 右 の例 文 の中 で、 解 釈 に つい て諸 註 釈書 の間 に意 見 の違 い のな いも のは 、. ″来 月 ″ の意 と し て いる。 〃月 が か ゎ ったら ″ 〃新 し い月 に な った ら ″ の意 で、 四 問 問 の月 ″た たば ″ は 、 来 月 ″ の意 と し て いる。 国 の 〃た たむ 月 ″も 、 これ か ら 立 つ月 で ″ 〃先 月 ″ の意 と し て いる。 m m の 〃た ち ぬ る月 ″ は 、す で に た って いる月 で、. 次 に解 釈 に つい て 、 意 見 の相 違 や 問 題 点 のあ る のは 、 、 月 が過 ぎ て″ と 〃過ぎ 側の 〃 月 た っ″ の 〃た つ″ は側 の例 でいえ ば ≦ 一 月 た ち て″ 田 〃月 た ち て の程 に″ の ″ ″四月 にな って″ と 〃新 し い月 にな ったら ″ と 解 す るも の ︵ 池 田 o全 書 ︶ と・ 山 岸 ・大 系 ︶ と 、 る ″ 意 と す るも の ︵. 000. あ る こと は 、 現 代 のわ れ わ れ の意 識 にも 、 連 綿 と し て続 い てき て いる の であ る。 私 たち は今 でも. 、 生活用語とし て. ″日″ と いう 概 念 を得 た であ ろ う。 ″日″ は 天 体 と し て の太 陽 であ り 、暦 日と し て の日 で り と し て知覚 し 、 認 識 し 、. 日、 太 陽 が東 か ら昇 り 高 く な り 西 に沈 む 、 そ し て暗 い夜 が来 て、 や が てま た朝 と なり 太 陽 が昇 る 。 これ を 一つの区 切. いか にし て時 間 の推 移 を 知覚 し 認識 す るよう にな った の であ ろう か。 ま ず毎 そも そも 、 わ れ わ れ の祖 先 た ち は 、. ″月 た っ″ と ぃう 表 現 に つい て考 え てみ た い。 そ の前 に、. 〃月 が始 ま る″ のか ″月 が過 ぎ る″ の であ るか の問 題 に つい て考 究 を 進 め た いが、 右の 〃 月 た っ″ の ″た つ″ は 、. が 、諸 註 と も ″過 ぎ てし ま う ″ と し て い て意 見 の相 違 は 見 ら れ な い。. が あ る。 、 前 の月 が過 ぎ る と いう のと 、 〃新 し い月 0 0 の ″月 も た ち ぬ ″ に つい ても 、 い の 〃月 立 ち て″ と 同 じ よう に 〃 ″ が始 ま る″ と いう のと 二 つの考 え 方 が あ る。 因 な お ② の紅 葉 賀 巻 の藤 壺 御 産 の事 に関 す る条 は 〃こ の月 は″ の次 に言 葉 がは さ ま って 〃た ち ぬ″ と続 く のであ る︶. 0.
(4) 源氏物語「月立 つ」考. /2 (26). 太 陽 の照 って いる場 合 と 日数 の余 裕 があ る場 合 の両 は 、 ご く自 然 に 〃日が出 た ″ 〃日が暮 れ た″ 〃ま だ 日があ る″ ︵ 方 に使 う ︶ な ど と 言 う のであ る 。. 〃月 ″ に つい ても 全 く同 じ であ る。 二十 九 日乃 至 三十 日を 周期 と し て満 ち 欠 け る 天体 の変 化 の 周期 を 一単 位 と し. て 、暦 の月 が でき る の であ る。 私 たち は今 でも 、天 体 の月 も 、暦 の月 も 、全 く 同 じ よ う に 〃 月 ″ と呼 ぶ。. そ し て春 夏 秋 冬 の季 節 のめ ぐ り を 周期 と し て 〃年 ″ と いう概 念 を 獲 得 す る 。 ︵ト シは年 に 一度 の稲 の収穫 に基 づ い た名 称 と いう 。︱︱ 三省 堂 o時 代 別 国語 大 辞 典 。上 代 篇 ﹁と し﹂ の項 ︶. 日 ・月 o年 と いう 、 わ れ わ れ の祖 先 の考 え 出 し た時 間 単 位 の中 でも 、月 は特 に人間 の生 活 や心情 に深 いか か わ り を. 持 つ。 も ち ろ ん 、 ″日″ は熱 と 明 るさ によ って人間 に生 命 を 与 え て いる点 で、 は か り 知 れ ぬ重 要 さ を 持 つ の であ る. が 、 そ の 日 の沈 ん だ 夜 のや みを 照 ら す月 は 、 それ に劣 ら ず 人間 の暮 ら し と 心 に深 く は いり こむ 。 それ は 、潮 の満 ち 干. と 結 び つい て い て船 旅 や漁 業 に は重 大 な関 係 を持 つ。 特 に、暦 のな か った未 開 の時 代 、 のち に暦 が出来 ても 一般 に普. 及 し な か った時 代 に は 、月 の満 ち 欠 け によ って、わ れ わ れ の祖 先 た ち は 、月 の改 ま る のを 知 り 、 そし て、月 の形 に よ. って 日を 知 った であ ろ う 。 ︵ 古 代 人 は月 を実 用 的 に見 て い て、生 活 と の関 連 の深 か った こと 、し た が って月 の改 ま る. 感 慨 は 、後 世 より 、 は るか に強 か ったら し い こと は 、時 代 別 国 語 大 辞 典 o上 代 篇 ″つき ″ の項 が指 摘 し て い る︶. 〃暦 の月 が改 ま る″ と いう 抽 象 的 な そ の こと に関 連 す る が、 こ の小 論 で問 題 と し て いる ″ 月 立 つ″ と いう 言 葉 も 、 認 識 のほ か に、自 然 現 象 と し て、 天体 の月 の具 体 的 な姿 を表 現 し て いる 。. 何 日か月 のな い夜 を 経験 し た 人 々は 、新 月 がま だ夕 映 え の色 を 残 す 西 空 に 、眉 の如 き細 身 の姿 を く っき り と 浮 き 立 立 つ″ と いう感 じ を 与 え る。 せ る情 景 は 、 た し か に ″. 巻 六 ・九 九 二 ・坂 上 郎 女 の初 月 の 万 葉 集 にも 、月 立 ち てただ 三 日月 の眉 根 掻 き 日長 く恋 ひし 君 にあ へる か も ︵.
(5) 歌︶. 〃経 過 す ″ の意味 に はと り 難 い。 B A の 〃た つ月 ″ は 、岩 波 大系 本 の ﹁万 葉 集 ﹂ の解 釈 でも 〃来 る月 ″ でぁ って、 ″錦 を断 つ″ を かけ てあ る から や や特 殊 な場 合 と いえ よ う 。 は 〃秋 のた つ のが惜 し い″ で、 ﹁経 過 ﹂ の意 と な る が 、. 陽 成院 歌 合 ︶ B も み ぢ 葉 の錦 と 見 ゆ る秋 な れ ば た つを惜 し と や鹿 のな くら ん ︵. A 君 を 思 ひ あ が恋 ひま く は 、 あ ら た ま の多 都 ︵ タ ツ︶ 月 ご と によ く る 日も あ ら じ ︵ 万葉 三六 八 三︶. 〃た つ ︵ 立 ︶ と いう 動 詞 の意 味 で、 こ の場 合 に関 係 のあ る項 目を 見 る こと と す る。 ″ ︲ 田 大 日本 国 語 辞 典 が 一 田 一一﹁ 月 日過 ぐ 、経 ︵フ︶。 経 過 す ﹂ の例 と し て次 の歌 を あ げ て いる。 ︲. こ こ で辞 書 の類 を 探 ってみ よう 。. 〃月 も 改 ま った ″ と し な い の であ ろ う かと いう 疑 間 が 、 な か な か消 え な い のであ る。 ど う し て、 これ を 、. 池 田 ・全 書 ︶ に は 記 述 が な い。 ︵. 細 ︶ 正 月 も 過 ぐ る也 。 4湖 月 抄 ︵. 山 岸 ・大 系 ︶ ″月 も ″ の ﹁ 2 ︵ 月 ﹂ を ﹁正月 ﹂ と 註 す 。 3 ︵玉 上 o評 釈 ︶ 月 も 終 った。. 吉 沢 o対 校 ︶ 正 月 も す ぎ た。 l ︵. こ こ の解 釈 と し て、管 見 に入 った註 釈 を 引 く と 、次 の如 く であ る。. 、 な ど と 詠 ま れ て いる 。 〃 月 立 つ″ と いう 表 現 の発 想 は 、 新 月 の出 現 す る姿 か ら 出 て いる の では な いか と 、 考 え ら れ る 。 ″晦 日″ が ″月 隠 り 〃 か ら 出 た よ う に。 私 が ″ 月 立 つ″ を 取 り 上 げ た直 接 のき っかけ は 、前 にあ げ た 源 氏 物 語 の 用 例 の中 の回 の 〃月 も 立 ち ぬ″ の解 釈 に つい て であ る。 薫 の年 齢 二七 才 の二月 が始 ま る時 点 で の表 現 であ る。. (27) /ゴ 義 ニ 村 竹.
(6) 源氏物語「月立つ」考. こ θ). 辞. 血. 、 次 2 田 日て あ げ て い る. ヽ. が. のは 一つも 見 当 ら な い。 間 中 田 ・新 選 古 語 辞 典 ﹁つき ︵ 月 と の項 。 ﹁月 立 っ﹂ の意 は 、 あ げ てな い︶. ⑨ ︵ 月. 。 ︵ 万 用 例 ︶ Aむ月 立 ち ︵. 男 に 、 こ の月 を た て てと 、 いひ つか は す と て 万 代 二︶ /. 経 過 せ しむ 。 過 ご さ す 。 ︵ 用 例 五月 の頃 いひわ たり け る 下 三段 ︶ 一 日目 一 立 ︶ の他動 詞 ︵ 圃 大 日本 国 語 辞 典 た つ ︵. ① 月 が変 わ る。 ② 月 が出 る。月 が上 る。 ︵〃経 過 す る ″. 時 間 が到来 す る﹂ 意 であ って ﹁経 過 す る﹂ の意 のも 注 ︶ 右 の⑤ の用 例 AI E は私 の解 す る と ころ では 、 す べて ﹁ ︵. 続 後 紀 嘉 祥 二年 ︶ 万 葉 一九 六 五︶ E オ キ つ波 た つ毎 年 に ︵ ずとも ︵. 万葉 一八 一三︶ D⋮秋 立 た 万 葉 九 九 二︱ 前 出 ︶ C⋮春 立 つら し も ︵ 葉 八 一五︶ B月 立 ち て た だ 三 日月 の⋮ ︵. 。 二省 堂 ・時 代 別 国 語 大 辞 典 上 代篇 ④ 月 が姿 を 現 わ す ⑤ 時 間 が到来 す る 経 過 す る 四 一. 用 例 は 、今 私 が 問 題 にし て いる 0 の ″月 も 立 ち ぬ ″ を あげ て いる︶ 日が︶ 過 ぎ る 。 経 過 す る 。 ︵. 蜻 蛉 日記 の 〃立 たむ月 ″ の例 ︶ 季 節 や月 が︶ ゃ ってく る。始 ま る。 ︵ 0 中 国 祝 夫 編 ・新 選 古 語 辞 典 ③ ︵. ﹂の意 は あ げ て いな い。 過 ぐ。 経 過 す 。. る 日 の例 を あ げ て いる 。 ″ 、 ″春 立 つ″ の用 例 を あ げ て いる。 ﹁ 月日 十 九 ︶ に 〃来 る ・到 る ・其 時 に な る″ の意 を あ げ 〃秋 立 つ″ ② 大 言梅 ︵. 万葉 四〇 八九 大 伴 家持 長 歌 ︶ A 卯 の花 のさ く月 立 てば め づ らしく鳴 く 雹 公鳥 ⋮ ⋮ ︵ 。 秋 立 ちけ これ は 〃卯 の花 の咲 く月 ︵四月 ︶ にな る と ⋮ ⋮ ″ の意 で問 題 は な い 他 に万 葉 集 の 〃春 た たば ″古 今 集 の ″. 来たる。到る。 一 田国一. ″来 た る 。到 る ″ の意 であ る。. 、 、 月 に関 し て言 え ば 、 こ の用 例 は ﹁経 過す ﹂ の意 には当 ら な いし 明 ら か に. (28) 7θ.
(7) (29) 69 義 一 村 竹. 注 ︶ 右 引 用 書 万 代 和 歌 集 は 、大 体 平 安 期 か ら鎌 倉 初 期 の歌 人 を 主 と し て い て、宝 治 二年 ︵一二四 八︶ 撰 定 と され ︵ て い る。 し た が って源 氏物 語 よ り は 、 か なり 後 のも の であ る。. m 雅 言 集 覧 た つ 月 日 のタ ツ也 た ゝん月 来 月 を いふ た ち ぬ る月 去 月 を いふ。. ︵ 用 例 ︶ 後 拾 遺 、恋 一、 道 綱 、 なき 人 は音 づ れ も せ で琴 の緒 を た ち し月 日ぞ か へり 来 にけ る ︵ 注 ︶あ と は﹁た た ん月 ﹂. ﹁た ち ぬ る月 ﹂ の用 例 を あ げ 、最 後 に 、源 氏 の用 例 、本 稿 の最 初 に掲 げ た例 例 ︵ 紅 葉 賀 巻 ︶ を あ げ て いる。. さ て右 の道 綱 の歌 の ﹁た ち し月 日﹂ に つい て考 え てみ る に、 そ の詞書 によ れ ば 、 母 の 一周忌 を 終 え て、 つれ づ れ の. 夕 暮 に 、 塵 の積 った琵 を お し ぬ ぐ い、服 喪 も 終 った の で折 々鳴 ら し たと ころ 、相 住 み し て いる叔 母 か ら ﹁琴 のね き け. ば 物 ぞ悲 し き ﹂ と 言 ってき た の への返事 に詠 ん だ 歌 で、 喪 あ る時 は琴 の絃 を断 つのが礼 であ った。 し た が って、 こ こ. は ﹁ 琴 の緒 を 断 つ﹂ と ﹁た ち し月 日﹂ を か け た も の で、 や や特 殊 な場 合 であ る が 、 ﹁経 過 す る﹂ 意 の用 例 であ ると 言 わ ね ば な る ま い。. 右 に見 てき たと ころ では辞 書 の類 の用 例 は 、 ﹁月 が か ゎ る 、始 ま る﹂ の意 が多 く 、 ﹁経 過 す る﹂ の意 は少 な く 、特. 殊 な場 合 の例 が多 い こと を 見 いだ す 。 さ て こ こ で、 源 氏物 語 の用 例 に かえ る こと と す る。 ま ず 、 さ き に取 り 上 げ たD. の浮 舟 巻 の ″月 も 立 ち ぬ ″ に つい て、 ど のよ う な場 合 の叙 述 であ る か を 見 てみ よ う 。 こ の年 の正月 下旬 ︵ 正月 二十 一. 日ご ろ 行 な わ れ る内 宴 な ど を 過 ぐ し て後 ︶ 匂 官 は夜 陰 宇 治 へ赴 き 、薫 を装 って浮 舟 に逢 う 、翌 日宇 治 に強 引 に逗 留 し. 浮 舟 と 過 し 、 そ の翌 暁 心 を 残 し て帰 京 す る。 匂 宮 浮 舟 を 思 い続 け 、宇 治 に文 と 使者 を 遣 わ す 。 宇 治 では右 近 が 、事 態 を つく ら う た め 、自 分 への使 い であ ると 周 囲 を ご ま かす 。. よ ろ づ 右 近 ぞ 、 そら ご と し な ら ひけ る。 月 も た ち ぬ。 か う 思 し焦 ら るれどお は し ま す こと は 、 いと わ り なし。 か う. のみも のを 思 はば 、 さ ら に え な がら ふ ま じ き 身 な め り 、 と 、 心 ぼ そさ を添 へて嘆 き 給 ふ。 ⋮ ⋮.
(8) 源氏物語「月立 つ」考. 68 (3θ ). 、 京 では匂 宮 が浮 舟 を恋 う て焦 慮 の日を 送り 、宇 治 では右 近 が真 相 を 隠 す ため苦 労 す る場 面 であ る。月 も 立 ち ぬ と ″意味 を強 め 感 情 を 含 め て表 現 す る助 詞〃 のも が は い って いる のは 、 こ のよ う な事 情 が 切 迫 し て いる中 で、月 が改 ま 、 。 り 、 いたず ら に 日 が 過 ぎ ゆ く と いう感慨 が こめ ら れ て いるも のと 解 さ れ る ″正月 も 過 ぎ た″説 は 月 の終 った こと. 。 に感 慨 を こめ る と 取 る の であ ろ う 。 し かし 、特 に こ の場 合 正 月 に重 点 を置 かね ば な ら な い 理由 は な い し い て いえ ば. 〃 と ぃぅ意識 があ る のだ ろ う か。 し か し それ ほど の月 意 識 を 作 中 人物 たち が持 って いたと う た忘 れ 得 ぬ 舟 に 逢 浮 月 ″ 〃 立 つ の発 想 か ら く る ″月 が改 ま る と いう 自 然 な意識 で、 こ の文 を解 月 主 張 でき る積 極 的 な材 料 は 見 当 ら な い。 ″ ″ 。 む し ろ 〃正月 が過 ぎ た ″ と いう よ りも 、 〃 月 も改 ま っ 釈 す る のが 、 き わ め て素 直 で、妥 当 な考 え方 では な か ろ う か. 、 〃あ あ も う 新 し い月 にな った ″と いう方 が 、焦 慮 の中 に 日 の過 ぐ る感 慨 が こも り 匂 宮 の煩 悩 は さ ら にはげ し く た″. 、 ⋮ ⋮﹂ と 続 く と ころ であ る。. 、七月 廿 余 日、 源 氏 召 還 の宣 旨 下 る、女 は 思 い沈. 募 って行 く の では な か ろ う か 。 。 、 月 も 立 ち ぬ﹂ に つい ても 、 諸 註 釈 は 右 の0 と 同 じよ う な考 え 方 を 示 し て いるも のが多 い 場 用 例0 の明 石 巻 の ﹁ 面 は源 氏 二九 才 、 須 磨 にあ り 、 六 月 頃 より明 石 の御 方 懐 妊 の兆 あ り. む 。 ﹁あ る じ の入 道 涙 にく れ て、月 も 立 ち ぬ。 程 さ へあ は れ な る空 の気 色 に. 。 山岸 ・大 系 ︶ ﹁ l ︵ 月 ﹂ の傍 註 に ︹七月 ︺、 ﹁ぁ は れ な る 空 の﹂ の傍 註 に ︹八月 ︱ 秋 の半 の︺ と あ る 玉 上 ・評 釈 ︶ そ の月 も 終 った。 2 ︵. 註︶ 月 も 立 ち ぬ 八月 にな ってし ま った。 花 鳥 余 情 ・明 星抄 な ど は六月 松 尾 ・全 釈 ︶ 月 も 代 ってし ま います 。 ︵ 3 ︵. も 過 ぎ て七 月 に な った の意 と 解 し ている。 た し か に ﹁程 さ へあ は れ な る ⋮ ⋮﹂ は秋 に な った ば か り の自 然 描 写 と し. 、 て見 た方 が よ い よ う であ る が 、前 に、 ﹁七月 廿 よ 日 の程 に﹂ と あ る から や は り 八月 に な ったと 見 る のが穏 当 であ ス了つ。. 、 、 阿部 ・秋 山 ・今井 小学館 ・日本古典文学 全集 ・源氏物語×入道は涙 にくれ ている中 に そ の月も果 て 八月 4 ︵.
(9) δ/. (31) 義 一 村 竹. と な った。 ︵ 註 ︶ ﹁く れ て﹂ は 、 涙 に昏 れ て、 の意 と 七 月 が暮 れ て、 の意を かけ る。 ﹁ 月 立 ち ぬ﹂ は 、 八月 にな る。. 5 ︵ 湖月 抄 ︶ ︵ 細 ︶ 七 月 の事 に や 花鳥 に は六月 云 云 程 さ へあ は れ な る空 のけ しき と い へり 。 初 秋 のさ ま也 。 ︵ 瞬︶同. ︹私 ︺瞬細 等 の儀 は 、七 月 のた ち て八月 にな ると い ふ か 。 七 月 廿 余 日か さね て宣 旨 と あ り 、 さ て八月 に帰 京 と見 え た 。 ハロソ. 6 眠 江 入楚 ︹花 ︺ 六 月 も た ち て、 七 月 に成 なり 。 ︵ ﹁湖 月 抄 ﹂ と 重 複 部 分省 略︶ 7 ︵ 花鳥 余 情 ︱ 国 文 註 釈 全 書 に よ る︶ ⋮六月 も た ち て七 月 にな る也 8 ︵ 細 流 抄 ︱ 国 文 註 釈 全 書 に よ る︶ 湖 月 抄 の︵ 細 ︶に同 じ 。 9 池 田 ・吉 沢 に は 記述 が な い。. 右 の諸 註 釈 を 見 る に 、花 鳥 等 の ″六月 が過 ぎ て七 月 ″ に つい ては松 尾 氏 の判 断 が妥 当 であ る。 最 近 の註 では、大 系. ・評 釈 が 〃そ の月 ︵ 七 月 ︶ も 終 った ″ と 、 ﹁ 経 過 ﹂ 説 であ り 、松 尾 氏 、小学館 は 〃八月 に な る。月 が改 ま る″説 であ る 。場 面 と し ては 、 明 石 方 の物 思 い、悲 嘆 の中 に 、 日 が 過 ぎ て月 が か わ ると いう境 遇 であ る 。月 が かわ ると いう こと は 、 源 氏 の帰 還 が 近 づ く こと を 意 味 す る。 こ こは 、月 改 ま る説 の方 が穏 当 であ る。小 学 館 の 〃涙 にく れ て を 〃七月 ″ が 暮 れ て″ に か け て、 ﹁ 月 立 ち ぬ﹂ を 〃八月 にな る ″ と し て いる のは 明 快 であ る。 こ こ で注 意 を ひく のは 、花鳥 の 一. 条 兼 良 ︵一四〇 二 ︱︱ 一四 八 一︶ の時 代 には 、 ∠ハ月 も た ち て七月 に な る″と 、 ﹁た つ﹂ を 〃経 過 ″ の意 に は っき り と 、 わ れ わ れ が 現 在 用 いる よ う に用 い て いる こと であ る 。. 次 に用例 Ш 蜻 蛉 の ﹁月 立 ち て﹂ に つい て。 1 ︵ 吉 沢 ・対 校 ︶ 二月 が 過 ぎ て四月 に な って 池 田 ・全 書 ︶ 四月 にな って 2 ︵.
(10) 浮 舟 ガ︶ 存 命 し て いる な らば 、浮 舟 が いか にも 今 日 ︵四月 十 日︶ 山 岸 ・大 系 ︶ 二月 が 過ぎ て、も し も ︵ 3 ︵ 玉 上 o評 釈︶ 月 が か ゎ って四月 にな って 4 ︵. 経 過﹂ 説 と と れ る が 、 2 o4は 、月 改 ま る説 で、 は っき り し て いる。 1と 3 の 〃二月 が 過 ぎ て″ が ﹁ 国 の ﹁月 立 ち の程 に﹂ に つい て。 ︵ 吉 沢 ・対 校 ︶ 四月 に入 って の頃 池 田 o全 書 ︶ 月 が変 り ま し た時 分 に ︵ 山 岸 ・大 系 ︶ 月 が 過 ぎ て の来 月 頃 に ︵ ︵玉 上 ・評 釈︶ 月 が か ゎ って のころ に 抄 ︶来 月 と ぃふ か隙次 第 御 案 内 申 さ ん と 也 。 ︵湖月 抄 ︶ ︵. 。 経 過﹂と考 えざ るを得な い。 それ にし ても十 一例中 八例 は、月改まる説 で解釈 でき る こと になる これは ﹁. この場 先月﹂ の意となる。 立ちぬる月﹂ は、 最初 にも記したように、 ﹁ 紫 の上 の祖母 の逝去 の項︶ と岡 の ﹁ 田 ︵ 、 、 、 、 ″ 立 つ″は、 月 が改 まる″ の意ととれな いかどうか なお考究し てみた いが このたび は見送り 一応 合 、 この ″ 立 ちぬ″とあり 正月X が何事も なく て 〃 経過する﹂ 意とし ておく。0 の藤壺御産 の事 の項 は、〃この月 ︵ これは ﹁. 。 、 右 を 見 ると 3 の 〃月 が 過 ぎ て の″ が気 に な る が、他 は す べ て 月 改 ま る説 であ る. 54321. 岩 波 大系 本 ﹂ のペ ージ数 を示 す 。 こ こ で他 の作 品 の用 例 を 見 てみ る こと と す る。数 字 は特 に 記 さ な いも のは ﹁. ・. 解 釈. 源氏物語「月立 つ 」考. (32) δδ.
(11) δ5. (33) 義 一 村 竹. は 原 則 と し て、 そ の本 に よ った。 l 落 窪 物 語 A か く て月 立 ち て ︵ 十 二月 ニナ ッ一 ⋮ 上 二八 こ ・ ・ B 月 立 ち ぬれ ば ︵ こ ・ 月 が ヵ ヮ ッテ六月 ニナ ッタ ノ 一 ⋮ ︰〓 ハ九 2 蜻 蛉 日記. A ゃ ぅ ゃ ぅ月 立 ち て 日も 行 け ば ︵ ダ ンダ ン死 ヌトイ ワ レタ月 、 即 チ 八月 ニナ ッテ 日 モ過 ギ テ ユク ノ デ︶ ⋮ 天暦 二 年 八月 一九 日柿 本 奨 ・全 注 釈 下 一〇 三 B う べも な く九月 も 立 ち ぬ ︵ 予 想 が当 ッテ九月 ニナ ッタ︶ ⋮ ⋮ 同右. C ﹁ ﹃こ の月 日あ し か り け り 。月 立 ち て ︵ 来 月 ニナ ッテ カ ラこ と な ん暦 御 ら んじ てた だ いま も のたま はす る﹂ ⋮ ⋮ 天 延 三年 ニー 四月 同 右 下 一五 七. D か く て月 果 てぬ れ ば 、 は る か に な り 果 てぬ る に、 思 ひ憂 じ ぬ る に やあ ら む 、音 なう て月 た ち ぬ 。 ︵コウ シ テ四. 月 ガ ス ンデ シ マ ッタ ノ デ話 ハ遠 イ先 ノ コト トキ マ ッタ タ メ、 右 馬 頭 ハ憂 ウ ツ ニナ ッタ ノダ ロウ カ 、音 沙 汰 ナ ク テ 翌 月 ニナ ッタ︶ ⋮ 天 延 二年 四︱ 五月 同 右 一八 五 3 古 事 記 中 巻 旦示行 天 皇 ・小 碓 命 の東 伐 一一一七 ︱ 二 一九. 離 にぜ ぽ ぞ ぽ ぽ ヽ其 れ ず 雰 r の権 に 、っ 鵬 続 が き たり き o故 、其 の月 経 を 見 て御 歌 計 みし た ま ひし く 、. ひ さ か た の⋮ ⋮汝 が着 せ る襲 の裾 に月 立 ち にけ り ︵ 月 立 ツ ハ新 月 ノ現 ワ レ ル意 。 コ コ ハ月 経 ノ血 ノ ツイ テイ ルノ ヲ新 月 ガ 現 ワ レタ ノ ニタ ト エタ。 ︶. と う た ひ た ま ひき 。 面 に美 夜 受 比 売 、御 歌 に答 へて日 ひし く 、 ︵ 注︶ 年 が着 亀 ふ れ ば あ ら た ま の 月 はォ 静響 く 淑 な 諾 な 諾 な 君 待 ち難 高 光 る ⋮ ⋮ 我 が大 君 あ ら た ま の.
(12) 源氏物語「月立 つ」考 δイ (3イ ). 。. 新 月 ガ 出 ルデ アリ マシ ョウ ョー月 経 ノ血 モ ツキ マシ ョウ ョ︶ に 我 が着 せ る襲 の裾 に 月 立 たな む よ ︵. 注 ︶ 年 ガ 経 過 スル ニツ レ テ月 モ経 過 ス ル意 ︵ 、 、 っ 右 の ″月 立 つ″ は 、 註 にも あ る よう に、 表 に新月 が出 ると い って 裏 に月 経 の血 も つき ま し ょう よ と 言 て い ZO. 。 、 、 4 万葉集 は、前述 の辞書類 の引用したも のをはじめ きわめ て多 いので ここには省略す る 5 栄花物語 巻廿 八 わ かみづ 大系本 下⋮二七七︱八. 中 宮威子 ノ御産 ノ準備 ヲ スル︶ま いてこの月 になりぬれば待 たせ給 ふ事 そひて⋮ かく いふ程 に霜月 になり ぬれば ⋮︵ 、 ⋮はかなく て月 も立ちぬ。十 二月 になりぬれば 立ちぬる月 にだ にお はします べかりしに ︵スデ ニ去月十 一月 ニオ. 産ガ アルベキ ハズ デア ッタ ノ ニ︶ ⋮⋮ 、 〃 月 がかゎ った″と解す る こと が でき 右 の月も立 ちぬも前掲 の源氏物 語 の用例00と同じようなケー スであ るが. 〃立 ちぬる月 ″は先月 でぁ る。栄花物語は、偶然目に ついたも のをあげ たにとどまる。 る。 〃月 立 つ″ の用 例 の見 つか ら な か った作 品. 1竹 取 物 語 2土 佐 日記 3大 和物 語 4落 窪 物 語 5枕 草 子 6和泉 式 部 日記 7更 級 日記 8浜 松 中 納 言 物 語. 9堤中 納 言 物 語 、 さ て、 これ ま で見 てき た と ころ では 、 万 葉 や 源 氏 等 の用 例 で は ″月 た っ″ と ぃう のは 新 し い月 が始 ま る意 が多 、 、 、 、 。 く 、経 過 す る意 の用 法 は 、 き わ め て稀 であ る こと を 見 出 だ す それ では 月 日 年 が経 過 す る場 合 は ど う いう表 。 経 ︵ふX が多 く用 いら れ て いる。 現 を し て いる か を み ると 、 ﹁経 ︵ふと ﹁過 ぐ﹂ と いう 語 を と る こと が多 い 特 に ″. 。 月 ″ が ぁ ら わ れ る こと は稀 であ る 。 そ のと き は月 日 o年 月 と ぃぅ形 を と る 私 の な ほ 、経 過 す る場 合 には、単 独 に 〃.
(13) δ3. (35) 一 義 村 竹. 調 べた と ころ では 、 ﹁ 月 ﹂ が源 氏 物 語 に 三十 五例 出 てく る中 で ﹁経 ︵ふ と ﹁過 ぐ﹂ が つく のは 一例 も 見 当 ら な い。 も っ. と も 一月 二月 と いう 月 名 の場 合 は 、 ま だ 一々当 って いな いが 、今 ま で のと ころ は 、 ﹁過 ぐ﹂ は出 てく る が 、 経 ﹂ は ﹁ 珍 し いよ う であ る 。. 〃か く ても 月 日 は経 にけ り 〃 ″ 月 日経 て″ 〃は か な く 日ご ろ 過 ぎ て⋮ ⋮″ ︵いず れ も 桐 壷 巻 ︶ な ど多 く 出 てく る。 〃あ ら た ま の年 が来 経 れば 、 あ ら たま の月 は来 経 往 く は年 の経 過 を 現 わ し 上 代 では 、前 記美 夜 受 比 売 の項 の、 月 ″ て いる好 例 であ る 。 万 葉 集 に な る と 、月 が ﹁経 ︵ふ と を と る形 の例 は き わ め て多 い。 ″ 九 九 二 。一 月 ぞ経 にけ る″ ︵ 〇 三 二 ・二〇 九 二 ・三六 六 三︶ のほ か 、 〃 〃 ″ 月 の経 ぬ ら む ″ 月 の経 去 け ば ″ 月 の経 去 れ ば ″ な ど枚 挙 に いと ま が な い ほ ど であ る 。. ま た ﹁年 ﹂ も 〃経 にけ る″ ″経 ぬ れ ば ″ ″経 ゆ け ば ″ な ど ﹁経 ﹂ を と る例 はき わ め て多 い。 そし て ﹁月 日﹂ ﹁年 月 ﹂ と 重 ね る熟 語 が あ ら わ れ る 。 ︵ 古事 記 に は 、 ﹁月 日﹂ ﹁ 年月 ﹂ は 見 当 ら な い︶ な お 万 葉 集 に は ﹁ 数 か月 月ごろ ︵ ﹂ は み ら れ る が ︵四例 ほ ど ︶、 年 ご ろ ︵ 来︶ 長 年 の間 ・ 多 年 来 ︶ ﹁日ご ろ ﹂ ︵ 多 く の日数 ・数 日来 ︶ は見当 ら な い。 な お 、 これ ら の調 べは 、 不 十 分 であ る の で、 さ ら に後 日を 期 し た いが、 お お よ そ の趨 勢 は察 す る こと が でき よ う 。 万 葉 集 に は、 〃月 立 つ″ ″ 月 経 ︵ふ ソ ″ 月 ご ろ″ な ど ″ 月 ″と いう時 間 単 位 を よ く使 って いる こと は注 目 に値 す る。 〃日ご ろ ︵ 現 在 私 た ち は、 平生︱ ﹁ 多 く の 日数 の継 続 し て今 に至 る﹂ の意 か ら 出 るソ 〃 年 来 ︵の宿 願 ソ な ど と 、 〃 時 の連 続 を あ ら わ す 単 位 ″︱︱ そ れ は時 間 に対 す るわ れ わ れ の感 覚 の仕 方 であ り 、 認識 の単 位 であ る︱︱ に ″日 ″年 ″ と を 用 いる が、 ″月 ご ろ ″ と いう 語 は ほと ん ど用 いな い。 源 氏物 語 に は、 〃 月 ご ろ ″ は ″年 ご ろ ″ ″日ご ろ ″ と と も に よ く 出 てく る。 吉 沢 対 校 源 氏 の索 引 によ ってみ ると 、月 ご ろ は 五 五例 ほ ど 、 日ご ろ は 八〇 ぐら い、年 ご ろ は 最 も 多 く. 二 八 一ぐ ら いあ る。 こ の こと は 古 代 人 の生 活 に 、月 が ︵ 天体 の月 も 、 暦 の月 も ︶ 深 く は いり こん で いた こと を 示 し て. い ると 言 え よ う 。 そ し て現在 では 、 それ が希 薄 に な ってき て いる。 現在 のわ れ わ れ の生 活 の時 間 単 位 は 、都 会 的 生 活.
(14) (36) δ2. で は 〃週 に な り つ つあ ると 言 え よ う。 つい昭 和 の初 め ま で、私 た ち の経 済 生 活 は月 を単 位 と し て い て、 み そ か ︵三 ″ あ る いは盆 と暮 れ︶ に なさ れ て いた が︱︱ 。 十 日︶ に、 そ の決 済 を し て いた。 も ちろ ん 、 さ ら に大 き い決済 は年 末 ︵. 、 〃 し か し ま だ わ れ わ れ は 、 週給 でな く 、 月 給 ″ を も ら い、電気 ・ガ ス ・水 道 代 家 賃 等 は月 を単 位 と し て支 払 って い る 。 こ のよ う な 、 わ れ わ れ の暮 し に密 接 な 関 係 のあ る ″ 月 ″ と いぅも のを 、 わ れ わ れ の祖 先 が受 容 し た 一つの特 徴 的. な パ タ ー ンが 、夕 映 え の西 空 に浮 き立 つ新 月 に よ る 〃 月 ″ の更 新 であ った。 そ う し たわ たし たち の祖 先 た ち の ″月 ″ の認 識 の仕 方 を 万 葉 集 か ら 源 氏物 語 ま で辿 る こと が でき る。. 、 一々 こと わ る こと は省 略 さ せ て頂 いた 。 付 記。 用 例 調 べは 、 お お か た各 作 品 の公 刊 さ れ て いる索 引 によ った。 な お 古 事 記 と 万 葉 集 は 、古 事 記大 成 o万 葉集 大 成 に よ った 。.
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